~ プロローグ ~ |
「今回の指令は、ゴブリン退治だ。といっても一匹なんだけどな」 |
~ 解説 ~ |
成功条件・村の安全確保 |

~ ゲームマスターより ~ |
ごぶー!(こんな鳴き声なのかな?) |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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話を聞く限り 悪さをしているのじゃないみたい お腹がすいていたり 寒かったり…手当てが必要だったり?する誰かがいるのかな お話ができないらしいから まずは その荷物が必要な「誰か」を見つけましょう 誰も傷つかない解決方法を探したい シアちゃんと協力して おびき寄せ用荷物作成 非常食と包帯等をバスケットに詰めて ゴブリンの目撃情報のあった道に置く 現れたら気づかれないよう追跡 ばれないように、ね 見失わないよう望遠鏡も持っていく 探し人が見つかって 治療が必要なら手当て(医学3 簡易救急箱使用) わたしたち 敵じゃないわ 安心してねごぶちゃん 通じなくても笑顔で声をかける 怖がられるのは可哀そう 狩人さんが良いと言ったら 本当のことを伝えたい |
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この依頼を聞いて、狐さんが出てくる童話を、思い出しました… もしかして、このごぶちゃん、子供では、ありませんか? それと、狩人さん、怪我とか病気とかで、動けなくなってる気が… ごぶちゃんは狩人さんの所に、食べ物を運んでるのかなって… ごぶちゃんと、お話しできたら、良かったのに… バスケットにリチェちゃんと一緒に食べ物と包帯を入れて ごぶちゃんが出てきたと言う道に置いておきます みんなと一緒にこっそりごぶちゃんの後をついていって 予想通りだったら 滋養のあるスープでも、作りましょう 身体を治すには栄養、大事です 狩人さん、すぐ良くなりますから、大丈夫ですよ(ごぶちゃんに 危険な子ではないなら村の人の誤解、解きたいです… |
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目的 村の安全確保。 のために、狩人さんの安否確認と、ゴブリンの行動目的調査。 …理由がわかれば、対処の仕方もわかりますから…。 それに、狩人さんが無事で、元の森の安全を図る仕事に戻れば…。 村の人達も、安心なんじゃないかと思います…。 …たとえ、ゴブリンが一体森に住み着いたとしても…? 行動 道に荷物を置き、少し離れて待機(風下側?)。 ゴブリンが現れて荷物を持って行ったら、やっぱり少し離れてこっそり追跡。 途中、時々フェリックスが魔術通信で狩人さんに呼びかけ。 狩人さんの名前を出発前にロリクさんに聞いておく。 通信に答えがあったら、他のひとたちに知らせる。 周囲の地形や様子にも、変わったところが無いか注意。 |
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たったゴブリン一匹…? しかも村人が勝手に驚いたって…流石に放置してもいい案件では… まあ仕方あるまい。手がかりの為にも狩人を探すか… ドクターが気の毒がっているしな、退治する訳にもいかんだろう 村で狩人について聞き込み 狩人の名前も聞いておこう 最近姿を見てないらしいが、最後に見たのはいつか、前に見た時と何か違うか等を聞く アリシアたちが荷物を置いたら待機 ドクターと一緒に尾行する モンスターを警戒しながら進む 狩人に会ったら若いゴブリンについて知っていることを聞いてみよう 俺としてはゴブリンを退治するのは避けたいともな それと狩人としても何がしたいのかも聞こう ドクターに彼の意向も含めて村人に説明してもらうためにな |
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~ リザルトノベル ~ |
「話を聞く限り悪さをしているわけじゃないみたい」 『リチェルカーレ・リモージュ』が光を浴びた湖のような瞳を緩めて小首を傾げる。 「あ、はい。……この依頼を聞いて、狐さんが出てくる童話を、思い出しました……悪さをした狐が、罪滅ぼしにその人に、……クリや御魚を持っていくんです」 『アリシア・ムーンライト』が両手をあわせておずおずと言葉を放つ。 アリシアとリチェルカーレは何度か指令で同じくして親しい間柄だ。二人ともただ討伐という考えにはならなかった。 「お腹がすいていたり 寒かったり……手当てが必要だったり? する誰かがいるのかな」 「うーん、まだそうだと決める証拠がないね」 二人の会話にくわわった『レオノル・ペリエ』が小首を傾げる。眼鏡の奥の瞳が知的に煌めき、一つにまとめた月色の髪が揺れる。 「わからないまま退治っていうのはあんまりね。何でゴブリンは群れからはぐれちゃったんだろうね? いじめられてはぐれたとか? だとしたら退治するのは気の毒だなぁ……」 「レオノル先生も……そう思いますか? よかった」 ほっとアリシアが微笑む。 「まず、状況を把握しなくちゃね。ジークリートちゃんたちはどう?」 髪も瞳も明るい銀色の『ジークリート・ノーリッシュ』がぼんやりしている。琥珀色の瞳を持つ『フェリックス・ロウ』が腕を引っ張る。 ジークリートははっと目を瞬かせて。 「あ、は、はい。すいません……理由がわかれば、対処の仕方もわかりますから……」 「リートに僕は従います」 二人の返答にレオノルがうん、うんと頷いた。 「ショーンは?」 「構いませんよ。ドクター。シリウスも、クリスもそのつもりのようですから」 片目は漆黒、もう片方が雨色の瞳を持つ『ショーン・ハイド』がレオノルを見下ろして、きっちりとした声でこたえる。 その後ろではアリシアがゴブリンに対して同情的なのを苦笑い気味に見つめている『クリストフ・フォンシラー』が太陽色の目を細めて愛想よく笑って手をふり、横にいる『シリウス・セイアッド』の脇を軽くつついた。つつかれたシリウスは少しばかりもの言いたげに、明るい緑の瞳でクリストフを睨んだあと、小さく頷いた。 リチェルカーレがぱっと笑顔になる。 今回、ショーンにしろ、シリウスにしろ、ゴブリン一匹、そのうえ村人が驚いて逃げている、という内容からたいした脅威ではないと考えていた。 ただ教団からもらっている情報だけで判断するわけにもいかず、まずは村へと一行は訪れた。 森の道を通る際、リチェルカーレはきょろきょろと周りを見た。 「リチェ、転ぶぞ」 「シリウス……ありがとう。ただ討伐にならなくて良かったわ。悪い子じゃないと思うの」 リチェルカーレの言葉にシリウスは言葉を返さず、ただ苦笑いを零した。 ここに来る前に指令を受けたリチェルカーレはシリウスと共に教団がまとめてあるゴブリンの生態について調べられるだけ調べた。 何も知らないままでは良いことも悪いことも判断は出来ない。 ゴブリンは痩せた体をした小人のような見た目。人里離れた場所に隠れるようにして集落をつくって集団生活をしている。臆病な性格からあまり人と関わることはないが生き残るために人を襲ったり、村を襲って食糧を盗むことがある、とされている。 ゴブリンはたいして強くないが、その集団性が大変危険だ。数に押されれば手練れの冒険者でも命を奪われる可能性は高い。 「お話は出来なくても、私たちの気持ちは通じるといいわ」 「意思疎通はある程度ならできると思うが」 集団生活をするなら意思疎通はある程度は可能と予想できるが、人と共存が出来るかは曖昧だ。教団にあるのは討伐された記録ばかりなのだ。 ヒューマンが他生物と共存し、多くの種族が生まれた経緯はある。しかし、未だにゴブリンなどの意思疎通が困難と思われる生物との共存を危険視する人間は存在する。 ジークリートは仲間たちの一番後ろについていた。 浄化師となってから彼女はいろんな指令をこなし、最近は考えることが多かった。指令の間は失敗しないためにも気合をいれているため、その反動で指令をしないときはつい、意識がぼんやりとしてしまう。 「リート、指令です」 「……うん」 「僕は村でどうすればいいですか?」 「……え……? ……あ、ええと……、そう、ね……村の安全確保のためにも、ゴブリンの行動の目的を見つけないと、あと狩人さんについても調べないと、いけないわよね……?」 「わかりました」 フェリックスをジークリートはぼんやりと眺める。今回の指令をとってきたのは彼だ。 狩人もマドールチェで気になっているのだろうか? とフェリックスの背中を見て小首を傾げた。 本当はジークリートのために、彼はこの依頼をとってきたのだが、それが伝わることはなかった。 ● 村は規模としては決して大きくはない。 村人たちは浄化師を歓迎してくれ、協力的で聞き込みにも喜んで応じてくれた。 レオノルが気になっているのはゴブリンの大きさと村人がどう思っているかをまずは聞くことにした。 「えーと、こんくらいの」 空中に手でしめされるのはボール二つ分くらいの大きさ。 「ちんちくりんだった気がする」 「ひょっとしたら若いって言うより子供のゴブリンなのかもしれない」 「けど、ゴブリンって小人なんだろう?」 「ゴブリンは小人で痩せている見た目をしているけど、ただ話を聞く限りだと子供で、一匹だけだけど……それが怖いの?」 レオノルは思い切って聞いてみた。 (こういう不安とか安全って一番厄介なんだよね……) レオノルの言葉に村人は渋面を作る。 「生物だし、ゴブリンは襲ってくるものでしょう?」 と村人たちは口々に言う。 一番厄介なものは形もなく、しかし確実に村人たちのなかにあるものだとレオノルには理解できた。 (論理的にちゃんと説明してるのに、不安に思っている人間って納得しづらいんだよね……目の前の分かりやすさに釣られちゃって、さ) 小さな嘆息が漏れた。 (たったゴブリン一匹……しかも村人が勝手に驚いたって……流石に放置してもいい案件では) ショーンは内心、そう結論をつけていた。 なぜ教団がこの指令を発行したのか。受付口では「どう判断するかは任せるし、責任はこちらにあるから」「村人を納得させるなら好きにしていいぞ」と言われている。 狩人を最後に見たのはいつか、そのとき普段となにか違いがないかと聞くが、件の狩人は世捨人よろしく、最低限にしか村に訪れず、最後に会ったのは三か月くらい前と曖昧だ。更にいつもフードを身に着けているため見た目もあまり変化らしいものはなかった、という。 ただ気になるのが。 「そういえば、布を少し多めに持っていったわ」 普段はそんなものを欲しがったりしない為、珍しいので覚えていたそうだ。 村での聞き込みをだいたい終えて各自が成果を話すと、やはりゴブリンは一匹だった。それもどうやら子供の個体らしい。 聞き込みをして、アリシアとリチェルカーレ、レオノル、ジークリートは退治ではなく、ゴブリンの行動を追求したいと希望した。 「特に脅威を感じる案件とも思わないが……何をしようとしているのか突き止めるのが先決か。対処法はその後だな」 とシリウスが告げるとリチェルカーレが顔を綻ばせた。 「ありがとう、シリウス」 「俺は……みんなの判断に合わせているだけだ、お礼を言われるようなことはしていない」 「ふふ」 ちらりとレオノルはショーンを見上げる。 「なんですか。ドクター」 「ショーンも構わないの?」 「……聞き込みの結果からも討伐はしなくていいと思っています」 それはレオノルが気の毒がっている、というのが大きいが、それを口にする必要はないだろう。 さっそく、アリシアたちはゴブリン用の荷物作りに勤しんだ。 「非常食と」 「はい……包帯も」 詰め込めるだけ詰め込んだバスケットは中々の重みと膨らみとなった。 「ごぶちゃん……持てるでしょうか?」 「もう少し軽いほうがいいのかしら?」 「ごぶ、ちゃん?」 聞きなれない呼び名にクリストフが怪訝な顔をする。 「はい……ごぶちゃん。ゴブリンだから……」 「可愛いでしょう?」 二人の無邪気な命名にクリストフは苦笑いした。 これで本当に討伐になったなら大変だ。出来たら自分たちの予想があたってくれたら、と心から思う。 ゴブリンが目撃された場所へと赴き、荷物を置いてアリシアとリチェルカーレは一生懸命、身を隠す。 「以前、かくれんぼしたときみたいですね、レオノル先生」 「確かにそうだね」 がざ。 茂みのなかから出てきたのは擦り傷をいっぱい作った、ややふっくらとしたゴブリン。 見た目だけいえば人間の子供の三歳くらいだ。 ゴブリンは通常服など着ないのだが、誰かの手製のシャツを着てよちよちと歩いている。 「あ、まだ荷物のほうがでかい」 ぼそりとクリストフがつっこむ。 残念なことにあれもこれもとまだ見ぬゴブリンのために用意した荷物は少しばかり大きかった。 それでも果敢にゴブリンは荷物を両手に掴み、運ぼうとする。 ころん。 重みに負けて地面に転がり、若干泣きそうだ。 「ごぶちゃん、がんばって、ください」 「なにかちっちゃなものにいれなおしたほうがいいのかな?」 「さすがにあれは運べないよね」 「……今出ていったら逃げちゃいますよね?」 はらはらと見守る女性陣をよそに男性陣はこれに村人が逃げたのかと、一応の警戒をこめて周囲を見回した。 何度目かのチャレンジをしてすっころんだゴブリンはとうとう途方に暮れた。 「このままだとごぶちゃん、運べないわ。助けに出ていっちゃだめかしら」 「なんとかするだろう。ほら」 シリウスが顎をしゃくるのを見れば、ゴブリンは大量の荷物を運ぶことは諦めたらしくなかを物色し、いくつかとりだして、それを手に抱えると歩き始めた。 ゴブリンは小柄さを利用して獣道をずんずんと進んでいく。途中で転がったり、木にぶつかったりしてはアリシアたちをはらはらさせた。 「だいじょうぶ、でしょう、か?」 「転がって傷、いっぱい作ってるわ」 「あの小さな体だと、この山道はなかなかに険しいね」 「……けど、一生懸命、運んでますね……」 心配をよそに進むゴブリンを見失わないためにリチェルカーレは望遠鏡を使用し、シリウスが記憶力とコンパスで位置を確認するのをクリストフがメモをしてきっちりとマッピングを行う。 仲間たちが追跡に専念できるようにショーンが周囲の生物の警戒をしっかり行うので、安全に進むこともできた。 「あ、どう? 呼びかけに返答は……」 「呼びかけてみます」 フェリックスが魔術通信を使用する。 調べておいた名前――リーンと呼びかける。 ちなみに魔術通信はその場にいる全員に聞こえる――返答がマドールチェ同士でしか出来ないというだけだ。 「あ、びっくりして転げてる」 荷物を落としてきょろきょろしているが、ゴブリンにはそれがなんなのかを理解する知恵はないらしく、不思議そうにして荷物を再び運び始めた。 「どうしますか、リート」 フェリックスが尋ねる。 「そう、ね。……ごぶちゃんを驚かせて警戒させちゃいけないし……離れたところからは難しいかしら? あ、あの、ここから先のルートを予測は……できますか? レオノル先生」 「地図はもらっているからある程度なら」 「では、それを基準にして先行して呼びかけてみます」 レオノルが地図を広げてある程度の予想されるルートを教えられたフェリックスが進むのをジークリートが見つめた。 ――リーン。 ――……だれ? ――助けに、きました。 ――たす、け? あの子を……きず……ないで……わたしの……。 二つの声が響きわる。 「あ、あれ! ごぶちゃんがいなくなっちゃった?」 「どこに、いったの……かしら?」 見守っていたのに、瞬いた瞬間に消えてしまったゴブリンにリチェルカーレとアリシアが困惑する。 「先まで、いたのに?」 クリストフとシリウスが周囲を見回すが、いない。 「上です」 と先行していたフェリックスが指さす。 見上げると、太い木の上に小さな小屋があった。 まず危険はないかクリストフとショーンたちが協力して登り、なかを確認した。そのあとにレオノルたちが続く。 「落ちないでくださいね、ドクター」 木登りにショーンがレオノルに手を貸した。 なんとか無事にたどり着いた小屋のなかは全員が入るとやや手狭だ。 その部屋のベッドの上で、ぐったりとしたマドールチェの女性が眠っていた。見ると額に汗をかいて、呼吸も浅い。 突然現れた闖入者にゴブリンは驚いたように一度ベッドの下に隠れたあと、恐る恐る出てきた。 ベッドを庇うように立つゴブリンにリチェルカーレが屈みこんで、笑いかけた。 「私たち、敵じゃないわ。安心してね、ごぶちゃん」 言葉はわからなくてもゴブリンは安心していいと判断したのかすぐにまたベッドの下に隠れてしまった。 ベッドのそばにいくと、気配を察したのかリーンが目を開けた。 「きみ、たちは?」 「助けに来ました。傷をみてもいいですか? 手当をしなきゃ」 見ると脇腹を怪我したうえ、毒に苦しんでいた。 「……医者を、呼んだほうがいい、でしょうか?」 「大丈夫。これなら私でも対応できそうだから、手伝ってもらえる?」 心配するジークリートにリチェルカーレが言葉をかける。 「私は……スープを作ります、ね。レオノル先生、手伝っていただいてもいいですか?」 「任せて!」 てきぱきとアリシアとリチェルカーレがやるべきことをこなしていく。 と。 「シリウス、ゴブちゃんを落ち着かせてあげてね」 「……」 手当などはすべて任せるつもりでいたシリウスは困惑した。ベッドの下から這い出して、今度はどこに隠れようかとすみっこにいるゴブリンをどうやって扱えばいいのか。 ショーンとフェリックスは周囲の警戒にあたっている。 クリストフを見れば、にっこりと笑顔。 「笑いかけてみたらいいんじゃないかな?」 「……」 笑いかける……無表情で見つめるとゴブリンは首を傾げた。 「……悪いようにはしない」 ゴブリンがちょこちょこと近づいてシリウスの足にしがみついた。 「すごい! 懐いたね」 「……」 「……その服は、教団の人たちか」 適切な手当とスープを飲んで狩人リーンは少しばかり元気を取り戻して呟いた。 「狩人さん、すぐ良くなりますから、大丈夫ですよ」 アリシアがゴブリンに語ると、安心したらしくベッドの端っこに座り込んでいる。 対してリーンは少し緊張した顔をして口を開いた。 「この子を殺しにきたのか? 私が動けなくなってから、この子は定期的に人の食べ物をもってきていた。もしかしたらと思ったが」 「あ、あの、待ってください。ごぶちゃんは、リーンさんのことを心配して、一生懸命、だったんです」 「叱らないであげて。この子が誰かを襲ったわけじゃないの」 アリシアとリチェルカーレが慌ててゴブリンを庇う。 「俺たちは、出来ればゴブリンを討伐はしないようにしたいと思っている」 とショーンが告げた。 「何がしたくて、ゴブリンを育てているんだ」 「……おかしなことをきく人たちだね。……自然のなかで生き物は共存するものだ。たとえ生物であっても」 リーンは慎重に言葉を選んで続けた。 「自分たちに都合の悪いものをすべて殺して平和になるなら……それに私もこの子も……独りぼっちだったんだ」 「あなたは親代わりとして? いや、言い方をかえる。家族として扱っているのか聞きたい」 クリストフの言葉にリーンは静かに頷いた。 「よかったら、それを村人に説明したいんだけど、構わないかな」 「村人に……私は、構わない、が……君たち、いいのかい?」 リーンが困惑した顔で問いかける。それに感心した顔のクリストフが頷いた。 「育ての親には懐くんだなって思って、それにアリシアたちがね」 「あ、あの、出来たら、危険な子ではないなら村の人の誤解、解きたいです……」 「怖がられるのは可哀そう。リーンさんがいいなら本当のことを伝えたいです」 真剣なリチェルカーレとアリシアにレオノルも付け足すように言葉をつづけた。 「私も、二人の言葉に賛成だよ。自分たちが理解できないっていうだけで否定するのは後退と同じことだよ」 「わたしも……狩人さんが無事で、元の森の安全を図る仕事に戻れば……村の人達も、安心なんじゃないかと思います……たとえ、ゴブリンが一体森に住み着いたとしても……?」 ジークリートは少しばかり最後のところは自信なさげだが、それでも説得に賛成した。 ● 村の代表にあたる数名を呼び、会話に長けたクリストフとレオノルが狩人のことゴブリンの行動理由などについて危険性はないと語った。 村人たちの顔は話を聞いて、だんだんと険しいものへと変わっていく。 「待ってくれ。そいつがいることで他の生物を呼ぶかもしれない。そいつが本当に悪さをしないなんて保証どこにもない。あんたたちは……そいつを殺すことのできる力があるからそう言えるんだろう」 村人の言葉は、ひどく切実だった。 「村を襲わない保証なんてないだろう」 「それは人間同士も同じなんじゃないのかな? 俺たちだってなにか理由があれば争うみたいに」 とクリストフが口にした。 「人と生物を同じに扱わないでくれ、こいつらは言葉が通じないんだぞ。俺たちはここで生活をするんだ。家畜を襲われたり、畑が荒らされたら飢えてしまうんだ! 自分だけじゃない、家族を守らなくちゃいけない! だから教団に頼んだんだ」 生物がいることを認め、一緒に暮らすリスクを背負うのはあくまでも村人だ。ただ無害だと言われてもすぐに納得できるものではない。村人ははじめから討伐してくれるものだと思っていたのも大きいのだろう。 言葉が通じない恐怖と不安は強い。 村人が欲しいのは安全であり、その保障だ。 また戦うことのできるシリウスやショーンが危険性を感じないと判断するが、村人たちの危険と思う価値観や環境等は異なってもいた。 今回はゴブリンの行動を追跡するため、村にあまり滞在できなかったため、村人たちの生活の安全を願うゆえの恐怖心を払拭する言葉が足りないと全員が痛感した。 「指令があれば浄化師はまたここにきます。何も起こってなくても、巡回でも、考えてみてほしいんです! だから、お願いします」 「お願い、します……誰かのために一生懸命、がんばって、いたんです」 リチェルカーレとアリシアの言葉に村人たちは困惑した表情のままだ。 「少しだけ時間を自分たちにあげると考えればいい。物事を正しく判断するために、間違ってしまわないために」 レオノルがゆっくりと言葉を紡ぐのに村人たちは小さく息を吐いた。 村人たちは今回様子を見る、という結論をつけた。 真意に説得してくれた浄化師たちの言葉が、少しだけとはいえ村人たちの心を動かしてくれたようだ。 帰り道、リーンとゴブリンが浄化師たちを見送りに、森の入り口で待っていてくれた。 「この手紙を、本部の人に渡してほしい。あなたたちがいかに優しく勇敢であったのか、私からの手紙だ。生物というだけで、この子を殺さないでくれて、ありがとう。優しい人たち、さようなら」 それだけリーンは言うとゴブリンとともに森へと帰っていく。 ゴブリンは名残惜し気に何度もふりかえり、手をふって、いる。それにアリシアとリチェルカーレも手を振り返した。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[12] アリシア・ムーンライト 2018/10/14-21:15
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[11] リチェルカーレ・リモージュ 2018/10/14-19:33 | ||
[10] アリシア・ムーンライト 2018/10/14-13:59 | ||
[9] レオノル・ペリエ 2018/10/14-00:35 | ||
[8] ジークリート・ノーリッシュ 2018/10/13-21:44
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[7] リチェルカーレ・リモージュ 2018/10/12-23:54
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[6] リチェルカーレ・リモージュ 2018/10/12-23:34 | ||
[5] ジークリート・ノーリッシュ 2018/10/12-22:17 | ||
[4] アリシア・ムーンライト 2018/10/12-21:29 | ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2018/10/11-21:46 | ||
[2] アリシア・ムーンライト 2018/10/11-00:13 |