~ プロローグ ~ |
「今回の依頼はアークソサエティに住むエレメンツが比較的多く住んでいる森の集落に行ってのまぁ現地調査といったところだ」 |
~ 解説 ~ |
今回は現地調査だよ! 危険はほぼないのでご安心ください。 |
~ ゲームマスターより ~ |
浄化師はなかなかに世知辛い人生なので、きっと会いたい人の一人や二人いることでしょう。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
アドリブ◎ ラス視点 会う人はラス 故郷の町にいたラニとラスの幼馴染 そしてラスの初恋の人 …どうしてラニは会いたがらないんだろう 現れた彼女の姿を見て涙 君の前では格好よくいたかったのに …ごめん、ごめん 君を守れなくてごめん 忘れてしまってごめんなさい ずっと言いたかった謝罪 目の前の相手が幻影だとしても縋るように謝り続ける 自分を一番最初に受け入れてくれた人 誰よりも守りたかった人 でも君はヨハネの使徒に……あれ? 頭が痛い 「あの時」の光景がノイズ混じりで甦る 君はヨハネの使徒に殺され… 違う、違う、あの時はオレと君だけで 君と何か約束して 約束して、それから…君は、オレは あぁ、あたまがいたい (まるで、殴られたような) |
||||||||
|
||||||||
ハルはいいのか?ハルにだって会いたい人はきっと…… 分かった、そういうことなら行ってくる。 久しぶり、父さん。 いざ父さんを前にして、言葉が詰まって出てこない。 ……何が、「この刀を地下のコレクションルームに置いてきて欲しい」だ! 最初から逃げるつもりなんてなかったんだろ! おかしいと思って途中で引き返して、鍵のかかった扉の向こうで俺が一体どんな気持ちでいたと……! ああ、違う、父さんに会ってこんなことを言いたかったんじゃなくて。 違う、違うんだ、俺がもう一度父さんに会いたかったのは。 突然のことすぎて、父さんにありがとうも、さよならも言えなかったから。 ごめんなハル、俺ばかり喋って。 でもやっと、別れが言えたよ。 |
||||||||
|
||||||||
38話での約束がてら二人で喰人の前パートナーに会う 可愛らしい方だったんですね 率直な感想に笑い それを聞いたら喜ぶような 食えない爺さんだった 記憶を辿りつつ話す 15歳位の時 人生の中で一番禄でもない目に合い 教団に保護された際 契約したのがこの人物 共同生活が始まるも荒れに荒れたスラム育ちの悪たれ 口より手が出る方が早い 小柄な年寄り一人張り倒して何度も逃げようとしたが 逆に酷い目にあった 肩を掴んだと思った瞬間自分が地に伏して 爺さんは笑顔で見下ろす 万事その調子で逃げる気力も失い この爺さん並に強くならないと一生這いつくばる事になると 渋々ながら師と仰ぎ教えを乞うた それから様々な地をまわり 戦い方を学んだが結局勝てず |
||||||||
|
||||||||
雲羽 相方が一夜の逢瀬をしている間僕は湖が見える場所とかでお茶を飲もう 逢瀬を遠目で見つつ ついでに演奏と歌で集落の皆様と交流 ライラ 会いたい人 私を作ったご主人様 現れたその姿を見た時 胸の奥が張り裂けそうで苦しくて あ、ああ…ご主人、様…!クラド様…!! 駆け寄って跪く 突然発生したアシッドで変わってしまった人 同僚も殺戮と混乱の中全員行方知れずになった 何もかも変わる前の姿が、ここに 私は…貴方の為にこの命を散らせる覚悟だったのに…最後の最後に、怖くなって…逃げてしまいました…っ 私はっ…貴方から授かったこの命を、貴方の為だけに使い果たせなかった…!! 嘗ての主に懺悔する 優しかった元主に 泣いて泣いて泣き腫らして謝った |
||||||||
|
||||||||
◆瞬が会いたい人 ・誰:瞬と見た目年齢が同じくらいの青年 ・関係:瞬の前のパートナー 瞬「流れ的には…いづの、会いたい人…がいいかなぁ?」 唯(わ、わたしが会いたい人は…父さんと母さん… でもそれじゃあ悲しみで溢れてしまいそう… まだ二人を見て泣かない自信ない…) 唯「あ…あの、瞬さんの前のパートナーさん、は…?」 瞬「え?」 唯(あっ…ま、瞬さんだって辛いはずなのに酷な提案を…っ) 瞬「…いいかも。 そう言えば彼も『会いたいのに会えない人』だったね」 唯「瞬さん…」 瞬「そんな顔しないで、大丈夫だよ〜」 ◆守ってあげられなくて、ごめん ・気休めでも謝りたくなって 瞬「…あれから15年だって 俺も…オジサンになっちゃったよ…」 |
||||||||
|
||||||||
迷ったけど結局ついていく トールの前の相棒を見てみたい …ずいぶん可愛らしいおじさんね? それにとても優しそう、トールが言った通りの人に見えるわ 一人で喋るトールを見て、ふと気づく もしかしてトールは、罰を求めているんじゃないかしら 昔相棒を守れなかった、だから今度こそって自分を追い込んで 私の保護者ぶってるのもその影響じゃないの? あのね、確かに私はあなたから見ればまだ子供で、危なっかしいかもしれない でも、共に戦うパートナーよ 守るだけじゃなくて、少しは信じて、背中を預けて欲しい 夜が明けてファットが消えたら、彼の顔は少し朧気になったような気がする でもトールにとっては、大切な思い出がひとつ増えた… きっとそうよね |
||||||||
|
||||||||
・ツバキ ワタシが会いたい人……会いたいのに、思い出せない でもこの湖ならって、期待してるのよ 目の前に映るキミの姿が正しいかも分からないわ ……でも、これでいいって、何だかそんな気がするのよ 多分、記憶喪失を恨んだのは、これが初めてかしら ワタシの中で作り出されたキミが本当なのか思い出せなくて、とってもむず痒くて…… もう!全部キミのせいよ!いつか本物のキミを見つけて思い出すって目標ができちゃったじゃないのよー!(ぷんすこ ……ふぅ、分かっていても反応がないのは寂しいわね 夜も長いし、ワタシの話聞いていって欲しいわ (サザーの事とか依頼の事とか) ありがとう、今度は本物のキミにこの話を聞かせてあげる だから、またね |
||||||||
|
||||||||
■会いたい人と間柄 喰人の会いたい人 母親(故人) ■一晩をどう過ごすか ナツキがルーノを半ば強引に連れて湖へ 両親に会える事を期待しているが、一人で行くのは少し不安 湖では母の姿を前にしばらく呆然 ルーノに背中を押されてやっと近づく ナツキ「…母さん、なんだな」 話そうとしていた事の半分以上が頭からふっとびつつ、伝えたい事はしっかり伝える ナツキ「色々あったけど、今はちゃんとやれてるぜ。良い仲間もできたんだ!…だから、もう心配しなくても大丈夫だからな」 今度こそ母の顔を覚えていられるように長い時間見つめてからルーノに帰ろうと促す 最後にもう一度振り返り、目元を少し乱暴に拭ってから手を振り ナツキ「じゃあな、母さん!」 |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
「あたしは、待ってる」 一緒にと口にした『ラス・シェルレイ』に『ラニ・シェルロ』は強い口調で言い切った。いつもはうるさいラニの態度にラスは怪訝な顔をしたが、それ以上突っ込むのも憚られて一人で向かうしかなかった。 (どうしてラニは会いたがらないんだろう?) 月の光に照らされて現れた会いたい――幼馴染はあの時と何一つ変わっていなかった。 太陽に照らされた海色の瞳、短い髪のシィラ。 息が詰まり、手を伸ばす前にはらはらと瞳から涙が溢れた。 「……ごめん」 絞り出す声が、ひしゃげた。 「ごめん、ごめん。君を守れなくてごめん」 シィラは笑ったままで動かない。 ラスはふらふらと自分が濡れることも構わず、湖のなかへと入った。ざはざはと水の音が響くなか、駆け寄って、腕を伸ばして、触れると、冷たくて。それでも。 「ごめん」 それ以外の言葉がなくて。 「忘れてしまってごめんなさい」 はじめに受け入れてくれた優しい人。はじめて好きになった人。はじめて好きなれた人。 なのに、自分は、忘却し、のうのうと生きてる。 はじめて守れなかった人。 ヨハネの使徒に殺されて、 「あ、れ」 ラスは湖のなかに膝をついて困惑する。シィラは微笑んでいる。 「違う、違う、あの時はオレと君だけで……君と何か約束して、約束して、それから……君は、オレはあぁ、あたまがいたい」 シィラは変わらず微笑んでいる。 会いたいけど、きっと恨み言しか言えないとわっている。だからここで待つと決めた。 ラニは下唇を噛み締める。 「大好きよ、けど、それと同じくらい大嫌いよ」 勝手にあんな風に死んだあんたなんか。 空しい独り言にラニは力なく肩を落として、堪えきれず湖へと向かい。はっとした。シィラと崩れているラス。 慌てて駆け寄って、微笑む愛しいものを睨みつけて、ラスの耳を塞いだ。 「どうしてあんな死に方したの……絶対許さないからな」 微笑むシィラは優しくて、愛しくて、そして大嫌いだと胸を抉る。 (思い出すな。あんな光景忘れてしまえ。絶望を覚えているのは、あたしだけでいい) 必死にラスを抱えてラニはシィラから逃げ出した。恨み言を口にしても結局、逃げるしかできない自分が嫌いになりそうだ。 ぐいっと腕をとられてラニはぎくりとした。 「ラス?」 「キミは死んで……泣いていたオレの後ろに誰かがいて……あぁそうだ、ラニがいたんだっけ? それで……これ以上は思い出せない……ラニ! 思い出せないんだっ!」 「っ!」 同じ瞳が自分を縋るように見つめる。 嘘をついた。 ラスのために。違う、自分のために。小さな嘘がどんどん膨れて大きくなって、ラスの形をして自分に向かってくる。 許さないから、絶対に。誰を? 自分を? ラスを? シィラを? 「テオ君、行っておいでよ」 『ハルト・ワーグナー』が穏やかな声で背中を押すのに『テオドア・バークリー』は目を丸めた。 「ハルはいいのか? ハルにだって会いたい人はきっと……」 「俺のことは大丈夫。テオ君の会いたい人、きっと俺と同じだから」 びっくりするくらい優しい声にテオは口を閉ざし、頷いた。 テオが先に歩きだすのにそのあとをハルトはゆっくりとついていく。会いたい人は、同じ。 「久しぶり、父さん」 会いたかった、とても会いたかった、あのとき、笑って自分に嘘をついた父に。 口を開いて、閉ざして。 拳を握って、ひらいて。 父はずっと待ってくれている。だから。 「……何が、「この刀を地下のコレクションルームに置いてきて欲しい」だ! 最初から逃げるつもりなんてなかったんだろ! おかしいと思って途中で引き返して、鍵のかかった扉の向こうで俺が一体どんな気持ちでいたと……!」 洪水のように言葉が溢れてきた。普段はあまり多弁ではないのに、今だけは幼い子供のようにテオは胸の中に溜め込んでいた気持ちをぶつけた。たとえ父が何も言わなくても。受け止めてほしくて、咆哮のように。 「っ……」 震える拳に視界が歪むのを振り払うように、かたく目を閉じて、息を吐いた。 「ああ、違う、父さんに会ってこんなことを言いたかったんじゃなくて。違う、違うんだ、俺がもう一度父さんに会いたかったのは」 震える声でテオは父を見る。 「突然のことすぎて、父さんにありがとうも、さよならも言えなかったから」 自分たちのことを、命すら差し出して守ってくれた父。 感謝しているのにそれすら伝えられなかった。 「ありがとう、さようなら」 必死に笑顔を作ろうとして失敗して、それでもテオは笑う。 震える肩をハルトの両手が優しく包んで、支えた。その腕があるからテオは崩れずにいれるのだ。 「ありがとうとさよならを言えなかったのは俺も同じ。……重ねて俺からも感謝を。あなたがいなければ、俺は死んでいたかもしれないから。テオ君のことだって、永遠に失っていたかもしれないから」 穏やかなハルトの声にテオは息を吐いて、ゆっくりと拳を握る。自分の足でちゃんと立つ。 「ごめんなハル、俺ばかり喋って。でもやっと、別れが言えたよ」 「ううん。俺のこともだけどテオ君、エドワード様のこともずっと気にしてたでしょ? テオ君のことなら俺は何でもお見通し」 「そうか」 まだ零れる涙だけは見えないふりをする。 「星が綺麗だよ、座って空でも見ながら過ごそっか?」 夜は長い。星を見て、ゆっくりと気持ちを埋めていこう。 ありがとう。さようなら。 「可愛らしい方だったんですね」 『ヨナ・ミューエ』の率直な感想に『ベルトルド・レーヴェ』笑った。 「それを聞いたら喜ぶような。食えない爺さんだった」 二人の前に現れたのは淡い青色の東洋風衣装、背中に帽子をつけた小柄なアライグマの獣人だった。 ベルトルドの師だ。 「聞いて、くれるか」 「なにをですか」 「面白味のあまりない、昔話だ」 ゆっくりとベルトルドは語り始めた。それはヨナが知らない彼のことだ。 ……15歳位の時だ、人生の中で一番禄でもない目に合って、教団に保護されて、契約したのがこの爺さんだった。 共同生活が始まるも荒れに荒れたスラム育ちの悪たれは口より手が出る方が早い俺は小柄な年寄り一人張り倒して何度も逃げようとしたが、そのたびに自分が地に伏していたんだ。驚くだろう? 本当のことだ。もっとひどい目にも合ったぞ。いつも爺さんは俺のことを見下ろして笑顔でいるんだ。怖いと思ったが、何か俺に要求することもなくて、それでな、万事その調子で逃げる気力も失ったんだ。ただ馬鹿な俺でもわかったのは、強くならないと一生這いつくばる事になるってことだ。はじめは渋々ながら師と仰ぎ教えを乞うて……二人で様々な地をまわって、戦い方を学んだ。結局勝てずに……勝ち逃げされてしまったんだ。 一気にそこまで話してしまったベルトルドは目を伏せた。 ヨナはベルトルドを見つめて、言葉を零す。 「私と契約する前に亡くなったと聞いています。思い出しても悲しくはないですか」 「うーん……戦いの腕は確かだったが、金と女と酒にだらしない上面倒事にすぐ首を突っ込むわで……逆に開放感すらある」 尻尾が呆れたようにうなだれている。 「それは、また」 「元々歳だったのもあるし急に体力が衰えてきてな。それでも最期は穏やかなものだった」 「お別れがしっかり出来たんですね」 ベルトルドは頷いた。 「私は、……先に寝ます」 唐突にそれだけいうと、ヨナが離れた木の根元に毛布を広げてまるまった。不器用なやつ、とベルトルドは心の中でつっこむと、師と向き合う。 世界を憎むしかできなかった悪ガキを見捨てず、居場所でいてくれた。だからここにいられる。 ヨナもつれてこられた。 「糞爺め」 ベルトルドは腰から酒瓶を取り出した。 「あんたの好きだった酒だ」 喉を焼くアルコールの、苦みにベルトルドは一人で酔いしれた。ありがとう。 師であり、父であり、友であり、何もかも与えてくれた人。 冷たい空気に触れて湯気立つ紅茶を『空詩・雲羽』は目を細めて見つめた。彼は村人が淹れてくれた紅茶を味わいながら一心に、逸らすこともなく真っすぐにそこを見ていた。 リュートが優しい音を零す。 「あ、ああ……ご主人、様……!クラド様……!!」 目の前に現れた懐かしい人を見た『ライラ・フレイア』は鳴き方を忘れたカナリアのような声をあげ、引き裂かれそうな胸の苦しみに従って駆け寄り、その前に膝をついた。 突然発生したアシッドで変わってしまい、同僚も殺戮と混乱の中全員行方知れずになった。 何もかも変わる前の姿が、ここに、或る。 「私は……貴方の為にこの命を散らせる覚悟だったのに……最後の最後に、怖くなって……逃げてしまいました……っ! 私はっ……貴方から授かったこの命を、貴方の為だけに使い果たせなかった……!!」 優しかった元主。自分の胸にくすぐっいる後悔を花びらが散るように口から零していく。 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。 泣いて泣いて泣き続けて、目玉が溶けてしまうまで泣いて謝罪をし続けるしかなくて。 瞼のなかではらはらとクラドが笑う。優しかった人。自分のことを愛してくれた人。生きなさいと口にしてくれた。責めることなんて一つもなくて、笑って背中を押してくれた。 こんな自分が生きてもいいのでしょうか? まだ歩き続けてもいいのでしょうか? クラドの顔に雲羽の顔が重なった、気がした。 涙は枯れてしまい、しじまのように沈む気持ちでライラはゆっくりと息を吐く。もうすぐ夜明け。 一晩中苦しんだ。もう苦しめないほど。夜明け。青い空。雲さん。 「クラド様……私をこの世に作り出してくれて……今まで育ててくれて、ありがとうございました!」 ライラは立ち上がるときれいにお辞儀をする。この世を教えてくれてありがとう。 「満足した?」 戻ってきたライラを雲羽はいつもの笑顔で迎えてくれた。腫れた目を緩めてライラは頷く。 「うん。私ね、あの人を護れなかった分、雲さんの為にこの命を」 「ちょーっと待った」 ライラはきょとんとする。 「過去は過去、君の命は君の命、今の君は確かに僕の所有物だけれど君の心は尊重したいのさ。どこに行くのも自由。君は君のやりたいようにすれば良い。だけど過去の使命を今に持ち込むのは良くない事さ」 「過去の、使命」 自分が雲羽といるのは。 「僕は君に犠牲になってほしくない。だから誰かへの使命感に執着せず、もっと広い世界を知ると良い」 「自由……もし私が離れたいと言ったら従うの……?」 「君が望むならね♪」 優しい笑みにライラは不安を覚えて拳を握る。もっと別の言葉が欲しいと思う自分がいたからだ。 「いづ、一緒に、来てほしいんだ」 『杜郷・唯月』は目を見開いて『泉世・瞬』を見つめた。 この指令を受けて向かうとき、瞬は当然のように唯月に切り出した。 「流れ的には……いづの、会いたい人……がいいかなぁ?」 少しだけ歯切れの悪い笑顔の提案に唯月は言葉がすぐに返せなかった。 (わ、わたしが会いたい人は……父さんと母さん……でもそれじゃあ悲しみで溢れてしまいそう……まだ二人を見て泣かない自信ない……) だから。 「あ……あの、瞬さんの前のパートナーさん、は……?」 「え?」 きょとんとする瞬に唯月はすぐに後悔した。 (あっ……ま、瞬さんだって辛いはずなのに酷な提案を……っ) 「……いいかも。そう言えば彼も『会いたいのに会えない人』だったね」 「瞬さん……」 「そんな顔しないで、大丈夫だよ~」 笑って告げる瞬に唯月は拳を握りしめて、自分の弱さを恨んだ。自分が悲しみたくないから瞬に辛いことを押し付けてしまった。笑顔で受け止める瞬に自分はまた守られてる。強くなろうと決めたのに。 「ごめん、いづ……傍で手を握ってて欲しいんだ。自分を保つ為に……過去に引き摺られないように」 湖に向かうとき、瞬は唯月に真剣な顔で切り出した。すぐにいつもの笑顔になる。 「瞬さん……」 (やっぱり辛い事……だったのかも……) 好きな人をこんな風に追い込んでしまう自分がいやだ。 「そんな顔しないで、大丈夫。いつかは乗り越えないといけない事なんだ。でも今はいづの力を借りたくなっただけなんだよ」 「瞬さん……辛い時は泣いてもいいんですよ?」 (この人はいつも笑ってるけど、無理して笑ってるのは……漸く気づけるようになりました) 笑顔の瞬は目を見開いて、唯月を両腕に抱きしめる。 痛いくらい、けれど震えるその腕が愛しいと思う。 何か言おうとしてまた傷つけてしまいそうで怖くて、唯月は黙っていた。 現れた彼は赤髪の、瞬よりも背の低い青年だった。 「ガイ」 震える声で。 「あれから15年だって、俺も……オジサンになっちゃったよ。ごめん、ごめんっ」 応えることのないガイに瞬は泣きそうに笑う。唯月はしっかりと瞬を抱きしめた。 まだ二人とも失ったものが大きすぎて乗り越えられなくて。進もうとして進めなくて。けど。 「ガイさん、わ、わたしが……いまのパートナーです。瞬さんと会えて、つよくなろうって、いっぱい失敗します、けど……強くなって、彼を、守ります。幸せにしますっ」 「いづ」 震えて泣きながらしゃくりあげる唯月を今度は瞬が抱きしめる。 「わた、しがもっとつよかった、瞬さんに、こんな顔、させなかったのに」 「いづは強いよ。俺、ようやくちゃんと過去と向き合えたんだから、ありがとう」 『リコリス・ラディアータ』は少しばかり後悔していた。 結局、ついてきてしまった自分がいる。トールは……一人で会いたいと思っているかもしれないのに。 ここには『トール・フォルクス』の会いたい人に会いに来た。彼が会いたい人が誰なのか、リコリスにはもうわかっている。 「ファットだ!」 二人の目の前に現れたのはずんぐりむっくりの、人のよさそうな男だった。 「……ずいぶん可愛らしいおじさんね? それにとても優しそう、トールが言った通りの人に見えるわ」 「おじさんって……老けて見えるだけで俺とあまり変わらないぞ?」 トールが苦笑いしてリコリスに言い返し、ファットを見る。彼はただいるだけ。その姿にトールの唇が寂し気に歪む。 「でも本当に何も喋らないんだな。恨み言の一つでも言ってくれればまだ気も晴れるのに 「お前のせいで死んだんだぞ!」ってさ。まあ、喋れたとしてもそんなことを言うような奴じゃないが……」 無理して明るく茶化すトールを見てリコリスは、あることに気が付いた。それを口にしていいのか迷って、それでも彼女は口を開いた。 「ねぇ、トール」 「ん?」 「もしかしてトールは、罰を求めているんじゃないかしら……昔相棒を守れなかった、だから今度こそって自分を追い込んで、私の保護者ぶってるのもその影響じゃないの?」 リコリスの言葉にトールは息を飲み、ファットを見たあと、リコリスと向き直る。 「罰を求めている……か。そうかもしれないな」 力なくトールは笑う。 「あいつに詰られることで、少しでも楽になりたいのかも。リコを守りたいと思っているのも、今度こそって気持ちからの。代償行為かもな」 「あのね、一度しか言わないわよ? よく聞いて」 「え、リコさん?」 「確かに私はあなたから見ればまだ子供で、危なっかしいかもしれない。でも、共に戦うパートナーよ。守るだけじゃなくて、少しは信じて、背中を預けて欲しい」 腰に手をあててリコリスが真剣に言葉を向けてくるのにトールは瞠目し、はっと笑った。 「リコ……いつの間にかずいぶんたくましくなったな。俺もその信頼に応えられるよう、頑張ってみるよ」 頭をくしゃりと乱暴にかいてトールは告げると、ファットに向き直る。 「すごいだろう、今の俺の相棒」 ファットが、笑ったような気がしてトールは目を細めた。 「一人に、させて」 『ツバキ・アカツキ』の言葉に『サザーキア・スティラ』は可愛らしい尻尾が不満を表すようにぶんぶんと振る。 「わかったニャー」 ツバキは苦笑いを零して、サザーキアの頭を撫でた。 「一緒に行きたかったニャー」 大切なおやつを人質にとれては仕方がないと、サザーキアは尻尾をたれさせるがすぐに好奇心からぴーんと尻尾と耳をたてる。 「ボクだけ元気でも困るのニャー、だれかー、一緒に遊んでくれる人いないのかニャー?」 うろうろ周りを歩けば人のよいエレメンツたちが、あたたかいミルクを振る舞ってくれた。 ほっこりとした優しさに包まれて欠伸が漏れた。 用意してもらったあたたかなベッドに文句を口にしながら潜り込む。 「起きたらツバキに思いっきり甘えてやるニャー! 覚悟するニャー!」 (ワタシが会いたい人……会いたいのに、思い出せない。でもこの湖ならって、期待してるのよ) 曖昧な記憶で、本当に会えるのかだってわからない。不安と期待に胸が締め付けられるように痛む。 それでもツバキは一人で、そこへと向かった。 拳が震える。 現れたのは――デモンの青年だった。髪は夜を薄めた青、ツギハギ痕の残る顔。少しばかり険の強そうなかんじもあるが、瞳だけは優しい。年齢はツバキとあまり変わらず、服装はシンプルだが動きやすさを重視している。少しばかり背の高い彼はツバキを見下ろしていた。それがいつものこと、のように。 「……っ」 手を伸ばして、ひっこめる。正解なのか、間違いなのかもわからないが、今、生きている理由は目の前にある。 「目の前に映るキミの姿が正しいかも分からないわ……でも、これでいいって、何だかそんな気がするのよ」 少しばかり震える声でツバキは言葉を漏らす。 「多分、記憶喪失を恨んだのは、これが初めてかしら。ワタシの中で作り出されたキミが本当なのか思い出せなくて、とってもむず痒くて……もう! 全部キミのせいよ! いつか本物のキミを見つけて思い出すって目標ができちゃったじゃないのよー!」 わざと明るく怒ってみせる。それに彼はただ、視線を向けてくれていて。 生き返った理由すら最近曖昧になりはじめていたが、確かに自分は強い気持ちで戻ってきた。 胸の奥から湧き立つ気持ちを飲み込んで。 「ふぅ、分かっていても反応がないのは寂しいわね。夜も長いし、ワタシの話聞いていって欲しいわ」 ツバキは浄化師となってからの冒険を、命だって失いかけた危険な指令もあった、楽しいこともあった。 彼は見つめている。優しい目を細めて。もしかしたら頷いてくれるかもしれないと思えるくらいに。 「ありがとう、今度は本物のキミにこの話を聞かせてあげる。だから、またね」 さようならは言わない。 「頼むよ、ルーノ!」 「まったく、仕方ない」 いつもならば『ルーノ・クロード』が暴走する『ナツキ・ヤクト』を嗜めるのだが、今日ばかりは勝手が違った。 今日、ここにナツキは母に会いに来た。けれどいざ一人で向かうとなって足が竦み、ルーノに同行を求めてきたのだ。 村で待機する予定だったルーノは半ば強引に引かれていくことになった。 冷たい夜の空気のなか、音もない湖に立つ。 現れたのは美しい漆黒の髪と瞳、それに耳と尻尾のある狼犬のライカンスロープの女性だった。ニホンで見られる着物は鮮やかな黄色で花を散らし、長い髪を一つに結わえた彼女は慈愛深い微笑みを浮かべていた。 ナツキは息を飲み、瞬きも忘れた。 孤児院で両親はなくなっている、とだけは聞いていた。けれど親の記憶がないナツキにはいまいち実感がなかった。 けど。 その人が自分のことを愛情深く抱いてくれたこと、名を与えてくれたこと、記憶になくても心が覚えている。 この人が。 この人が自分のことを愛してくれたから自分は今、ここにあるんだとわかる。 放心するナツキの背をルーノが優しく押した。 「母さん、なんだな」 言いたいことは山のようにあるのにうまく言葉に出来ないナツキはだから黙って母の顔を見た。忘れたくないから。 「色々あったけど、今はちゃんとやれてるぜ。良い仲間もできたんだ!……だから、もう心配しなくても大丈夫だからな」 何も言わない母を、それでも優しい眼差しに含まれる愛をナツキは感じることができた。 いつもは元気なナツキはそのときだけは大人びた青年の顔で、黙って母を眺めた。 もう二度と、この人を忘れないために。 長く見つめ、ナツキは振り返るとルーノを促して帰ろうと誘う。もうすぐ朝で母が消えてしまう。その前に。 歩き出そうとして振り返る。 「母さんが最期まで俺を心配してたって先生に聞いた。だから頑張って安心させてやらないとってずっと思ってたんだ。……幻でもなんでも、会えてよかった。じゃあな、母さん」 笑って声をあげて、乱暴に目尻を拭う。それをルーノは知らないふりをして、目礼した。 (小柄ながら芯の強そうな女性だ。ナツキは母親に似たんだな……貴女の息子は立派に生きています) 先を歩くナツキをルーノはゆっくりと追いかける。 森を抜けるとナツキはいつもナツキに戻っていた。ただ晴れやかな朝日のような笑顔がまぶしくルーノには映る。 「あったことちゃんと報告しなといな」 「ああ」 けど、最後の泣いたことは内緒でもいいよな、とナツキは心のなかで呟いた。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||
該当者なし |
|