~ プロローグ ~ |
「書籍の貸出促進を図りたいと思います」 |
~ 解説 ~ |
ナイトライブラリーでパートナーと読書を楽しもう! |

~ ゲームマスターより ~ |
皆さまお久しぶりでございます! |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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3階で読書 あれ?しまっ…! ひっ、ひざまくっ… 頭を撫でるのとからかうような言動は控えて下…!…あ。静かにせねば …眠ったおかげか大分楽になりました ちゃんと寝てますよ。適度な休息も仕事の内です 頂きます。…ところで何をお読みに? 毒薬の歴史…毒殺されたと思われる歴史上の人物の死因も書かれている本ですね 娯楽としては面白いですが、脚色も多く参考にはあまりなりませんし…名著とまではいかないかと …嗜み程度です 私は暗殺や殺人とは無縁の人間ですよ …色々? 頭を下げないでください。あとここで改まらないでください 何かくすぐったいです …とりあえず薬学の本を借りに行きましょうか ドクターの好奇心が満たされるまでお付き合いします |
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◆場所 ソファースペース ◆ソファーへ二人座って ・唯月はミルク入り紅茶、瞬は珈琲をサイドテーブルに添えて ・唯月は何冊か自分なりにピックアップしたものを用意 タイトルで選んだ為ジャンルは様々 ・瞬は教科書で一度読んだ事のあるタイプの話の単行本を見つける 唯「夜の図書館…少し怖い雰囲気かと思ってましたが 他の皆さんもいると思うとなんだかワクワクしてしまいます…!」 瞬「そうだねぇ〜あ、いづは何を読むのー?」 唯「わたしはタイトルで選んだこの本の数々を…! 瞬さんはどのような…?」 瞬「俺はねぇ〜昔教科書で読んだやつ見つけたよ〜」 唯「!良いですね…!」 ・唯月が選んだ本に恋愛ものが 唯(…ハッピーエンドが多い、ですよね…) |
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目的 ゆっくり読書 読む本 灰 竜や魔術に関する入門書 灯 はじめての恋愛入門 珈琲を飲みつつ読書タイム 灰 灯さん、その本 灯 恋愛入門(きぱ 灰 見ればわかりますが… 灯 ほぉ。壁ドンが胸きゅん。前にやったな 灰 ???(宇宙猫の顔 灯 お前が俺を好きだというが、俺はそういう感情を理解できなくてな。今まで義務で生きてきて、感情論は捨ててきた 色々あったがお前に生きろなんて啖呵きって、お前が告白してきた手前応えるのも悪くない 灰 え、あ?(宇宙猫~ 灯 ほぉ。こういうのがいいのか(真剣に読む 灰 本当に僕と 灯 俺が本当にお前に対して好きってもんを理解できるか、どうか賭けみたいなもんだ。どうせいっぺん死んだ身だ。俺とお前の人生を使った大博打だ |
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まぁ、一定数の常連は居るだろうけど 今回の場合、新規利用者を増やそうとしたんじゃないのかな 君の場合は常連の方だろう?まぁ、僕はある意味常連だけど、よく利用するって程じゃないし…それでも、小さい頃はよく来たよね。 さて ソファースペースの一画を席取りしたら、飲み物をオーダー 「ミルクティーを二人分、お願い」 ミルクティーを貰って席に置いたら、カグちゃんの所へ 「そうだな…毒草薬草とか、キノコの辞典とか、かな」 カグちゃんの案内で本探し。高い所にあったら僕がとるよ |
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やはりここは物理関連の本が読みたいな カンテラを掲げて本を探しつつ歩いているといきなり袖を掴まれ振り向く なんだ?こけたのか 何故こんな平らなところでこけるのか分からんが… まあ薄暗いからな、気をつけろ ん?ああ、まあ掴まるのは構わん 3階は個別のスペースがあるんだな じゃあ、あそこで…ああ、飲み物は私が取ってこよう またこけたら危ないだろう …?何でそんなむくれているんだ? ふふ。いい本が借りられた 先生の本棚にもあったんだ 名著らしくてな、根本原理から突き詰めるように書かれている 前に読ませてもらったことがあるが確かに……あ …むぅ。またヴィオラに一本取られたな まあ嬉しそうに笑ってるし、いいか こんな夜も悪くないだろう |
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◆アユカ せっかくだからふかふかソファーに座ろう こんなリラックスできる所で読書できるって、なんか贅沢気分だよね 魔術の本をいろいろ読ませてもらおうかな 人を楽しませるための魔術っていうのに興味があって …かーくんは難しそうな本読んでるね 勉強熱心なんだね、すごいなあ わたしのは、趣味みたいなものだから 読書は楽しいけど、ふかふかソファーが眠気を誘う だめ、抗えない…! ◆楓 普段読書は一人でするもので、一度読み始めたら没頭できる方だが… 視界の端にチラチラと入る彼女の姿が気になってしまい、あまり集中できない …ああ、これはアークソサエティに関する本ですよ 浄化師として身を置いている土地に関し、私はまだまだ無知ですから |
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ソファスペースにて 色々考えたのですガ、せっかくのナイトライブラリーですから 大好きな本を読もうと思いマス! (古ぼけた児童書を取り出し) マイナーな本ですカラ、知ってる人の方が少ないデス 魔王に攫われたお姫様を王子様が助けにいく話デスヨ ハイ、そっくりでショウ! ワタシが好きなのは仲間の魔術師の方デス 時に優しく、時に厳しく王子を導いてくれて でも最後は彼を庇って死んでしまうのデス… でも魔術師のことは王子や周りの人がずっとずっと覚えていて 何度も彼らの支えになるんデス! …そんな人に、ワタシもなりたいと思いまシタ ワタシも誰かの力になれる魔術師になりたいのデス この話を誰かにしたのは初めてデス(照 ハイ、頑張りマス! |
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学院の読み書きの宿題に読書感想文を出されたから、本を選んでたら嬢ちゃんがいやがった。 どんなもん読むんだ?随分分厚いようだが。 いや失礼。そいつがファッション雑誌とかじゃないのに感心したんでね。 「掟は罪か、勿論違う。だが掟から罪を知った私の中には、あらゆる罪への欲求が起こってしまった」 何だこれは。哲学書か? ほう、お前は無神論者の類かと思ってたが。 (追い払わずに喋ってる辺り、今夜は機嫌がいいな。ラム酒のせいか?) ところで案外読書家なお嬢さんよ。宿題の為の本を選ぶ当てがないんだ。協力してくれないか?未開人でもやりやすそうなの、知ってんだろ? (今夜限定で知的ぶってるだけかもしれんが、ここはおだてとこう) |
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~ リザルトノベル ~ |
● 書架の間をゆっくりと歩きながら、『杜郷・唯月』はカンテラを持って隣を歩く『泉世・瞬』に囁いた。 「夜の図書館……少し怖い雰囲気かと思ってましたが、他の皆さんもいると思うとなんだかワクワクしてしまいます……!」 唯月は本だけではなく他の訪問者たちにも視線を巡らせる。 「そうだねぇ~。あ、いづは何を読むのー?」 背の高い瞬は唯月が胸元に抱えた本の山を上から覗く。 「わたしはタイトルで選んだこの本の数々を……!」 あえて内容を確かめずに、コレだ!と感じたタイトルの本を数冊ピックアップしたのだ。 詩的な美しい言葉を綴ったタイトルもあれば、短くてもインパクトのあるタイトルのものもある。 「瞬さんはどのような……?」 唯月は瞬を見上げ問う。 「俺はねぇ~昔教科書で読んだやつ見つけたよ~」 さほど厚くない本を片手で掲げて見せる瞬。そのタイトルには唯月も見覚えがある。 「! 良いですね……!」 学生の頃目にした書物を、大人になってからじっくりと読むのもまた乙なものだ。 「そろそろ移動しよっか。ソファーでゆっくり読みたいな」 これ以上は唯月が本を持ちきれなくなりそうなのを見てとった瞬が促し、2人はソファースペースへと向かう。 サイドテーブルに本を積み上げてから、2人でカフェへ飲み物を貰いにいく。 唯月はミルク入り紅茶、瞬は珈琲をサイドテーブルに並べて、本を手に取る。 唯月は瞬の隣にちょこんと腰を落ち着け、美しい装丁の表紙を捲る。 唯月が本に夢中になっていると、ふいに肩に重みがかかる。 「瞬さ……ん!?」 (瞬さんの頭が肩に!?) 唯月の戸惑いをよそに、瞬はごしごし目を擦る。 「んーごめん……いづ……眠気が限界……なんだぁ……」 そういえば、今日は舞台の仕事を終えてから来たと言っていた。 (……来た時からお疲れのようでしたし、休ませてあげましょうか) 「少し寝ても大丈夫ですよ……?」 唯月が申し出ると。 「へへーありがとー……じゃー」 「えっ!?」 瞬は躊躇いもせずに唯月の膝の上に頭を預ける。 (こ、これは……膝枕……では?!) 思わず硬直した唯月を、瞬は 「だめ……?」 と見つめ上げる。 そんな目で見られると……許すしかない。 「うぅ……こ、今回だけ……ですよ……?」 唯月は真っ赤になって唇を噛み締める。 「へへ、やったー……ありがと……」 瞬はいつもの人懐こい笑顔を見せたかと思うと、すぐに微睡み始めた。 そのあどけない寝顔に、唯月は苦笑する。 瞬を起こさないよう、静かに本のページを捲る。一冊読み終えると、そうっと次の本を手に取る。 選んだ本の中には恋愛小説もいくつかあって。 (……ハッピーエンドが多い、ですよね……) 思って、唯月は瞬を見やる。 願わくば2人の行く末もハッピーエンドでありますように。 ● 『灯・袋野』と『灰・土方』がそれぞれ目当ての本を探し当てソファースペースに戻ってきたのはほぼ同時だった。 灰はほくほくした顔で竜や魔術に関する入門書を数冊抱えている。 サイドテーブルに2人分の珈琲もセッティング。 さあ読むぞ、という段階で灰は(そういえば灯さんはどんな本を読むんだろう)と素朴な疑問を持った。 ちらりと灯の方を見る。なんだか……桃色の可愛らしい表紙が見える。気のせいでなければタイトルは『はじめての恋愛入門』である。 「灯さん、その本」 「恋愛入門」 『秘剣奥義の書』という台詞のほうが似合いそうな声と表情できぱっと言われる。 「見ればわかりますが……」 困惑気味の灰にはお構いなしに、灯は本を読み進めていく。 「ほぉ。壁ドンが胸きゅん。前にやったな」 こちらに話をふられるが、灰は未知のものを見る猫のような顔で首を傾げるしかなかった。 「???」 カベドンガムネキュン。きっと異星の呪文に違いない。 そのくらい、灯の言ったことを理解していなかった。 宇宙からやってきた猫状態の灰に、灯は穏やかに語りかける。 「お前が俺を好きだというが、俺はそういう感情を理解できなくてな。今まで義務で生きてきて、感情論は捨ててきた。色々あったがお前に生きろなんて啖呵きって、お前が告白してきた手前応えるのも悪くない」 「え、あ?」 宇宙猫、灯の言わんとしていることをすぐには理解しきれない。彼の発した言葉をひとつひとつ、胸の中で反芻する。 やっと思考が追いついた頃には、灯の視線は再び本に落とされていた。 「ほぉ。こういうのがいいのか」 相変わらず剣術指南書でも読んでいるかのような真剣な表情の灯。 「本当に僕と」 問いかけた灰に、灯が再び視線を向けてくくっと笑う。 「俺が本当にお前に対して好きってもんを理解できるか、どうか賭けみたいなもんだ。どうせいっぺん死んだ身だ。俺とお前の人生を使った大博打だ」 「……あなたがわからない場合、僕のこの気持ちはただの現実逃避と切り捨てられる。わかりました」 灰は灯を見つめ返し宣言する。 「僕は全力で貴方に自分の気持ちわかっていただきます。灯さん、僕と恋愛してください。好きと思っていただけたら結婚して頂きますからね」 無意識に灰は灯との距離を詰めていた。 「これが世に言う求婚か」 冷静に言われ、灰は耳まで真っ赤になる。 灯は苦笑すると、ソファーの上に毛布を広げる。夜は長い。ゆったりと過ごそう。 「ほら」 と毛布の片側を空けてやると、まだ頰に赤味が残ったままの灰が2、3秒の逡巡ののちいそいそと潜り込んで灯に身を寄せた。 額突き合わせ読みふけるのは恋愛入門。 朝まで恋愛のお勉強といきますか。 ● 背の高い書架の間、狭い通路を歩いていると、まるで迷路の中にいるような気持ちになる。今日みたいに、薄暗い中頼りない明かりを持って歩いていると特に。 「……本、何時も借りたり読みに来たり、してるつもりだったけど、利用する人、少ないのかな……?」 観覧者数は一定量居るとは思っていたのだが……。 『カグヤ・ミツルギ』にとって、書籍の予算が減らされるのは困る。だからこのイベントに参加した。 「まあ、一定数の常連は居るだろうけど」 『ヴォルフラム・マカミ』が小声で返答する。 「今回の場合、新規利用者を増やそうとしたんじゃないのかな。君の場合は常連の方だろう?」 カグヤはハッとし、ほんのり罪悪感にかられた。 「……そっか、新規の観覧者を増やしたかったのね」 それであれば常連の自分が来るのは逆効果だったのかもしれない。 「まぁ、僕はある意味常連だけど、よく利用するって程じゃないし……それでも、小さい頃はよく来たよね」 「……そうね、お勉強、よく二人でした」 懐かしい日々を思い出し、カグヤは微笑んだ。 出会ってから10年の月日が流れている。 その10年でヴォルフラムはカグヤの瞳を見るだけで彼女か訴えたいことの大部分を察することが出来るようになった。 「さて」 カグヤが本を選び終え、ソファースペースの一画を確保したところで、ヴォルフラムは 「飲み物を貰ってくるよ」 と、カグヤに告げる。 「ありがとう」 お礼を言えば、ヴォルフラムの尻尾が幸せそうにわさりと揺れた。 カグヤの飲みたいものは、聞かなくたってわかる。 カフェに着くとヴォルフラムは迷いなくミルクティーを2人分注文した。 その間、カグヤは先にソファーに腰掛け、その座り心地を確かめる。 (……ふかふか) 思わず顔が綻んだ。 「お待たせ」 戻ってきたヴォルフラムはカップをサイドテーブルに置くと、カグヤの隣に腰を下ろす。 「もう一冊読み終わりそうだね」 「うん……前にも読んだこと、ある本だから」 興味のある本は何度読んでも飽きはしない。 「……ヴォルは、何か見たい本、ある?」 自分ばかり楽しむのも申し訳なくて、カグヤが問う。 「そうだな……毒草薬草とか、キノコの辞典とか、かな」 「それだったら、実用書だから、2階にある……」 カグヤが立ち上がり、先導はまかせろと言うようにヴォルフラムの上着の袖を引く。 「えー……と、この辺りなんだけど……」 カグヤが指差したのは、書架の上段。彼女の身長では届きそうにない。ヴォルフラムがさりげなく腕を伸ばし、カグヤが指し示した本を取る。 書架の迷路を2人で導きあい支えあいながら過ごす。 それはこれまでの10年間にも似ていて。そしてきっと、これからもずっとこうして過ごしていくのだろう。 ● 「夜の図書館って何だか素敵ですね。1人だったら怖そうですけど」 『ヴィオラ・ペール』は潜めた声で言うと、傍らの『ニコラ・トロワ』を見上げふふっと微笑んだ。 「ニコラさんはどんな本が読みたいですか」 「やはりここは物理関係の本が読みたいな」 「私は農業関連の書籍が読みたいですね。お料理の為には素材から研究したいので」 2人はそれぞれ、目当ての本を探す。 カンテラの灯りに照らし出された背表紙の文字を確かめながら歩いていると、ふいに袖を引かれニコラは振り返る。 そこには、不安定な姿勢でバツの悪そうな顔をしているヴィオラが。 「なんだ? こけたのか」 状況から分析して答えを確認すると、ヴィオラは無言で首肯した。 「何故こんな平らなところでこけるのか分からんが……」 (そんな真面目に不思議そうな顔しなくても……) ヴィオラは恥ずかしさで頰が熱くなるのを感じた。 (薄暗くて良かった……赤いの気付かれないで済むもの……) 「まあ薄暗いからな、気をつけろ」 「また躓きそうなので……袖に掴まってもいいですか」 「ん? ああ、まあ掴まるのは構わん」 ヴィオラは礼を言うと控えめにニコラの袖を掴む。恥ずかしさはあるが、ヴィオラの胸にほっと安心感が広がった。 それぞれ好みの本が見つかると、ヴィオラの提案で2人は3階へ。 「3階は個別のスペースがあるんだな」 ソファースペースを見つけ、ニコラはその一画を指し示す。 「じゃあ、あそこで……ああ、飲み物は私が取ってこよう」 「あ……」 「またこけたら危ないだろう」 「………」 ヴィオラの「ありがとう」と言おうとしていた口は、むむぅと結ばれてしまった。 (ニコラさん、気遣ってくれてるのは分かるけど一言余計です……) 「……? 何でそんなむくれているんだ?」 ニコラは首を傾げながらカフェへと向かう。 こけたり、不機嫌な顔をしたり。これではお姉さんとしての面目が立たない。 ヴィオラは気持ちを切り替えようと、深呼吸してソファーに座る。 戻ってきたニコラは飲み物のカップが載ったトレイの他に、本を一冊持っていた。 「ふふ。いい本が借りられた」 嬉しそうなニコラは手早くカップを置いてソファーに座ると、すぐに本を読み始める。 「先生の本棚にもあったんだ。名著らしくてな、根本原理から突き詰めるように書かれている」 ページを捲りながら熱弁するニコラの声は徐々に大きくなっていった。 「前に読ませてもらったことがあるが確かに……」 ヴィオラはふふっと笑い、話し続けるニコラの眼前で、しーっと唇の前に指を立てる。 「ニコラさん、ここは図書館です、お静かに」 「……あ」 ニコラがはっとすると、お姉さんの面目を保てたヴィオラは嬉しそうにくすくす笑った。 「……むぅ。またヴィオラに一本取られたな」 (まあ嬉しそうに笑ってるし、いいか) こんな夜も悪くない、と、ニコラも唇に笑みを浮かべた。 ● とにかくふかふかである。 座る部分はもちろんのこと、背もたれ部分も肘掛け部分もふっかふっかである。 「こんなリラックスできる所で読書できるって、なんか贅沢気分だよね」 『アユカ・セイロウ』は嬉しそうに、隣に座る『花咲・楓』に笑顔を向ける。 サイドテーブルのアユカ側には紅茶と魔術関連の書籍が積んであり、楓側には珈琲と、アークソサエティの歴史や文化、過去の事件についての本が積んである。 「魔術の本をいろいろ借りてきたの」 そう言うアユカは、中でもエンターテイメントに特化した本を選んでいた。 「人を楽しませるための魔術っていうのに興味があって」 なにしろ季節はハロウィンだ。それを彩るために魔術が使われているかに興味があった。 きっと記憶を失う前の自分はそんな風に誰かを楽しませていたかもしれない、と思ってのことだった。 「……かーくんは難しそうな本読んでるね」 アユカは楓の手元を覗き込む。 「……ああ、これはアークソサエティに関する本ですよ」 楓が心なしかそわそわしている様子に、アユカは気づいていなかった。 楓がいくら本に集中しようとしても、視界の端にチラチラと入るアユカの姿が気になってしまうのだ。 「浄化師として身を置いている土地に関し、私はまだまだ無知ですから」 平静を装って話す楓に、アユカは素直に感嘆する。 「勉強熱心なんだね、すごいなあ」 「アユカさんこそ」 「わたしのは、趣味みたいなものだから」 アユカは照れ笑いして、再び自分が借りてきた本に視線を落とす。 2人寄り添って本を読む。その状況をアユカは特別に意識していない様子だが。 (………集中できない) 楓はそうはいかないようだ。普段一人で読書している時には、一度読み始めたら没頭できるというのに。 視界の端で揺れるアユカの髪、近くに感じるアユカの息遣い。 (意識してはいけない意識してはいけない。本に集中本に集中……) そう思えば思うほど、内容が全く頭に入って来ない。 楓の苦悩など知る由もなく読書を楽しんでいたアユカであったが。 (……ね、眠気が……) ふかふかソファーは心地良すぎたようだ。 紅茶を飲んだり目をこすったりしてみるが、効果は薄い。 (だめ、抗えない……!) やがて、アユカの体はくたりと肘掛けにもたれ、すーすーという規則正しい寝息が聞こえてくる。 「……アユカさん」 気づいた楓が小声で呼ぶも、アユカに起きる気配はない。 楓の目元が優しく綻び、そっと、アユカにブランケットをかけてあげた。 ● 『エフド・ジャーファル』がここに来たのは、読み書きの宿題に読書感想文を出されたためであった。 さて、どんな本を選ぼうかと書架の間を徘徊していた彼だったが……。 「いやがった」 月明かりを受けながら本に目を落としている少女。エフドの喰人、『ラファエラ・デル・セニオ』。 「『いやがった』とはご挨拶ね」 彼女はエフドの声に気がつき、顔を上げる。 ふと興味がわいて、エフドは彼女に近づき本に目を向ける。 「どんなもん読むんだ? 随分分厚いようだが」 「人が読んでるものを覗くのは失礼だって知らないの? 見た目通り文明化されてないのね」 ラファエラの持つ本の表紙にはなにやら小難しげな文字が並んでいた。 「いや失礼。そいつがファッション雑誌とかじゃないのに感心したんでね」 「ここは無礼な未開人のいるとこじゃないわよ」 そう言うラファエラからは、ほんのりラム酒の香りがした。 「申し訳ないが、読書感想文のための本を選ばなくてはならなくてね」 エフドは肩を竦めてみせる。 「読書感想文?」 と、ラファエラは聞き返す。 「ふーん。カクテル言葉なんて知ってるから、もうそれなりに読めるんでしょ。試しにこれ読める?」 ラファエラは自分が読んでいた本をエフドに手渡した。 「『掟は罪か、勿論違う。だが掟から罪を知った私の中には、あらゆる罪への欲求が起こってしまった』」 読むこと自体は問題なかったが、何を言わんとしているのかが見えてこない。 「何だこれは。哲学書か?」 「これ、ラグナロク以前の聖典よ。神を讃える道を選んだ人達の、理想と苦しみの集大成ってとこ」 「ほう、お前は無神論者の類かと思ってたが」 「私はね、これでも神っていう概念は嫌いじゃないの。少なくとも無神論者をわざわざ自称する自惚れ屋よりはね」 (追い払わずに喋ってる辺り、今夜は機嫌がいいな。ラム酒のせいか?) ラファエラの言葉を聞きながら、エフドはそんなことを考えていた。 「神が敵に回ったって、この世から信仰がなくなるわけじゃないのよ。金、才覚、科学、魔術、意志、絆……。相手が変わるだけ。それなら、自分より上の者がいるとしてる連中の方がマシよ」 何かを嘲るようにそう言い捨てるのは、自身の経験や見聞きしたことに基づいてなのか、それとも単に世間を知った風を気取っているだけなのか。エフドには計りかねた。 (今夜限定で知的ぶってるだけかもしれんが、ここはおだてとこう) そう決めたエフドはラファエラに本を返しながら言う。 「ところで案外読書家なお嬢さんよ。宿題の為の本を選ぶ当てがないんだ。協力してくれないか? 未開人でもやりやすそうなの、知ってんだろ?」 自虐的嫌味を交えた言葉ではあったが、ラム酒の効力なのかラファエラはすんなりと引き受けてくれた。 2人の夜更かしはもう少し続きそうである。 ● いつもと、枕が違うような気がする。 そんなことを考えながら、『ショーン・ハイド』の意識は徐々に浮上していく。 「おはよー」 『レオノル・ペリエ』の声でショーンは完璧に覚醒し、自分が何処にいるのかを思い出した。 「あれ? しまっ……!」 ソファーに身を起こしたところで、レオノルからの追い討ち。 「ぐっすり寝てたね。私の膝枕は寝心地よかった?」 「ひっ、ひざまくっ……」 「ふふふ。真っ赤になっちゃって。案外可愛いところあるね」 レオノルは余裕の笑顔でショーンの頭を撫でる。 「頭を撫でるのとからかうような言動は控えて下……! ……あ。静かにせねば」 ショーンは口元を押さえた。 「今朝から忙しそうだったもんね。お疲れだった?」 「……眠ったおかげか大分楽になりました」 ショーンは懐中時計を取り出し時間を確かめる。深夜12時。 「……寝ない人なんじゃないかと不安だったんだけど、寝顔が見られてちょっと安心したよ」 レオノルは冗談とも本気ともつかぬ口調で言う。 「ちゃんと寝てますよ。適度な休息も仕事の内です」 顔を上げたショーンと目が合ったレオノルはサイドテーブルからカップを持ち上げて訊く。 「良かったら紅茶飲む?淹れたのはいいんだけど飲みそびれちゃって」 「頂きます。……ところで何をお読みに?」 受け取った紅茶はかなりぬるくなっていて、長い時間膝枕状態であったことを物語っていた。 「毒薬の歴史、だって」 「毒薬の歴史…毒殺されたと思われる歴史上の人物の死因も書かれている本ですね」 「ちょっと物騒なタイトルが気に入っちゃった」 悪戯っぽく笑うレオノルに、ショーンは至極真面目に答えた。 「娯楽としては面白いですが、脚色も多く参考にはあまりなりませんし……名著とまではいかないかと」 「ショーン、詳しいね?」 「……嗜み程度です」 「……嗜み、ね。まるで『プロ』の発言だと思ったけど」 ショーンは意外そうに瞠目した。 「私は暗殺や殺人とは無縁の人間ですよ」 少なくとも、記憶の中では。 「私は君が元プロでも一切冷たい目で見ないよ。むしろ色々教えてほしいし」 「……色々?」 「いつも色々教えてるから今夜はショーンが先生だね。先生、よろしくお願いします」 向き直ってお辞儀をするレオノルにショーンは少し焦る。 「頭を下げないでください。あとここで改まらないでください。何かくすぐったいです」 ショーンは小さな咳払いで気を取り直すと、 「……とりあえず薬学の本を借りに行きましょうか」 と提案した。 「ショーンのおすすめの本か、楽しみだな」 レオノルの瞳が好奇心で光る。 「ドクターの好奇心が満たされるまでお付き合いします」 ショーンは柔らかく微笑んだ。 ● 『レイ・アクトリス』が選んだのは数冊の旅行記。 レイがソファーに座ってどの本から読もうかと表紙に目を通しているところへ。 軽い足音と共に、『エリィ・ブロッサム』が姿を現した。 「色々考えたのですガ、せっかくのナイトライブラリーですから大好きな本を読もうと思いマス!」 じゃん、とエリィがレイに見せたのは、古ぼけた児童書だった。 「児童書ですか……見たことのないタイトルですね」 レイは意外そうにその本を見る。魔術オタクのエリィのことだから、魔術関連書籍を借りてくるかと思いきや。 「マイナーな本ですカラ、知ってる人の方が少ないデス」 「どんな話なんですか?」 「魔王に攫われたお姫様を王子様が助けにいく話デスヨ」 エリィはレイの隣に座り、本をぱらぱらと捲る。中の挿絵を見て、レイは思い当たることがあった。 「あぁ、もしかして僕に似ているといってた王子様とはコレですか」 「ハイ、そっくりでショウ!」 当たりだったらしく、エリィから満面の笑みが返ってくる。 (似ているといっても、本に出てくる王子って大体が金髪碧眼だからなぁ) レイは苦笑しつつ、訊いてみた。 「で、レディはこの王子が好きだったんですか?」 「ワタシが好きなのは仲間の魔術師の方デス」 即答であった。 なるほど、過去にレイのことを「タイプじゃない」と言ってのけたのもこの辺りに原因があるのかもしれない。 夢見るようにエリィは語る。 「時に優しく、時に厳しく王子を導いてくれて……でも最後は彼を庇って死んでしまうのデス……」 肩を落とし瞳を潤ませるエリィだったが。 「でも魔術師のことは王子や周りの人がずっとずっと覚えていて何度も彼らの支えになるんデス!」 胸の前で両手を組み、きらりと光る瞳で空を仰ぐ。まるでそこに件の魔術師が見えるかのように。 「……そんな人に、ワタシもなりたいと思いまシタ」 「だから、魔術師になろうと思ったんですね」 レイが言うと、エリィはこくりと頷いた。 「ワタシも誰かの力になれる魔術師になりたいのデス」 レイは瞳を細め、エリィを見つめる。 普段から彼女は世界一の魔術師になる!とか、魔術の開祖を超える!とか言っているが、それよりもこっちのほうが彼女らしい理由だ、と思った。 「この話を誰かにしたのは初めてデス」 話し終えて、エリィは頰を染めて照れ笑いを浮かべた。本の登場人物に憧れて、なんて、他人に言うとからかわれそうだ。 だが、レイはからかったりなんかしなかった。 エリィ自身にも、レイならからかったりなんかしないんじゃないかという気持ちがどこかにあった。 「……エリィなら、なれますよ」 レイは優しく言った。 「貴方の夢が叶うよう、僕もお手伝いします」 それは、その場に流されて言ったものではなく、心からの言葉。 「ハイ、頑張りマス!」 思わず大声を出してしまい、エリィは慌てて自分の口を押さえるのであった。
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*** 活躍者 *** |
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[2] 灯・袋野 2018/10/12-18:02
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