~ プロローグ ~ |
薄花色の秋空の下。『教皇国家アークソサエティ』全域は、ハロウィンムードに彩られていた。『エトワール』の中心街にあるメインストリート、リュミエールストリートでは街路樹が赤や黄色に衣替えし、街の至る所にかぼちゃの中身を切り抜いた顔の置物やコウモリを模った紙や金属の看板を掲げていた。露店ではハロウィン仕様のカボチャ料理やスイーツがたくさん売り出されている。オバケや十字架の貴金属も売られていたり、頬や腕や足などに様々な要望に応えて絵を描く変わったお店もあった。それが意外と人気らしく、若者を中心に長い行列になっている。 |
~ 解説 ~ |
【目的】 |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして十六夜あやめです。はじめてではない方、お世話になっております。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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仮装は動きにくい 私はいつもの格好のままでいい 捜す対象は魔女らしいがまだ子供なのだろう? ハロウィンくらい楽しませてやってもいいと思うんだがな 捜し出した後 私達で付き添って少し街を回ってやってはどうだろうか ヴィオラにトリックオアトリートと言われ一瞬「?」 ああ、菓子を渡すんだったな と言ってもこれはヴィオラが用意した物だが…いいのか? 誘い出す為なんだから、まあいいのか 魔女が見つかったら マドールチェ通信で情報を共有し集合 話す時は怖がらせないようにしゃがんで目線を合わせよう 祭りを楽しみたいなら私達が付き合うがどうだ? 保護者がいれば怪しまれないだろう? みんなの中で一番年長に見える外見を利用 保護者の振りで見守る |
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アドリブ歓迎 セラくらいの見た目なのかな? 悪い奴に連れて行かれたりとかしていないかな 明るい緑の目に軽く睨まれて 慌てて首を振る や、そういうわけじゃなくて… うん 危ないことに巻き込まれてしまうかも 小さい子みたいだし 心配だよね ランタンを持ちながら 事前にきいた外見の少女を探す 目当ての魔女以外にも 子どもが寄ってきたら笑顔でお菓子を渡す 少女が見つかったら 「あ」と小さく あ お菓子だね ええとー 手渡そうとして 姉の言葉に目を丸く セラ!何を勝手に… 慌てた顔をしても 最後は笑顔 膝をついて視線を合わせ お祭に参加したかったの? 良かったら 僕たちと一緒に行かない? きっと楽しいよ 笑顔で少女に手を差し出す 他の浄化師と一緒に 祭を見て回る |
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目的 魔女さんを見つける まりかは魔女 「ぶたのライカンスロープが魔女を?」 「本物か?」 いつものことなので気にしない 黒蛇さんはゴシックな貴族衣装 目は布で隠す 「テーマは?」 「孤独の、王子?」 顔だけはいいので教団職員に着飾られたご様子 仕上げにまりかが角に銀のチェーンをつける ご満悦 「魔女さんのために用意した私の御菓子たべ」 魔女さんを見つけるために用意したまりかの秘蔵(寮部屋に隠してあったお菓子)をもってきた 「これは並ばないとない料理長プロデュースのちょーちょーおいしいクッキーの集め合わせ」 魔女さんのためといいながらちまちま食べるまりか 黒蛇も食べる 魔女さんの特徴を聞いて探す 他の方と情報・協力など歓迎 |
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目的 『魔女』さんを保護する 行動 『魔女』さんの特徴情報をもとに、警備しながら探す。 飴玉やクッキーを準備していく。 歩いている間に「トリック・オア・トリート!」と言われたら、誰でもお菓子を渡す。 『魔女』さんを見つけたら最初はこっそり様子見。 その後、声をかけるかかけられるのかわかりませんけど…。 お菓子を渡しつつ、露天のスイーツで一緒にお茶しませんか?なんでも好きなものご馳走しますよ、と誘ってみる。 警戒されないように、目線を合わせて控えめに…。 断られたら無理には言わない。 了解してもらえたら、スイーツと飲み物を買って、『魔女』さんが警戒しなくていい所でお話を…。 (ウイッシュに続きます) |
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~ リザルトノベル ~ |
・二コラ・トロワ/ヴィオラ・ペール 「指令によると探す対象は魔女らしいが、まだ子供なのだろう?」 「えぇ。そのようですね」 金色の瞳を細めながら顎に右手を添え、二コラはパートナーであるヴィオラを横目に小さく溜息を吐いた。 「ハロウィンくらい楽しませてやってもいいと思うのだがな……。魔女と言えど子供だ。捜し出した後は私達で付き添って街を回ってやってはどうだろうか」 4組の浄化師達が一か所に集まり、今回の指令について話し合っている。中でも一番年長に見える二コラが中心となって話を進めていく。各浄化師達から意見を集約、二コラの提案に全員賛成してくれた。 魔女のような黒いローブを着たヴィオラはエレメンツの特徴である尖った耳がよく見えるよう、髪を後の方で軽く纏める。顔を上げてハロウィンムードに彩られた『エトワール』のメインストリートであるリュミエールストリートを眺める。 「ふふっ、そうですね。それはいい考えです。その魔女もハロウィンのこの雰囲気に釣られて遊びに来たんですよね、きっと。それにもしかしたら何も知らないのかもしれないし。私の見た目15歳くらいですし、仲間だと思ってくれないでしょうか」 ヴィオラは実年齢よりもかなり若いように見える。確かに外見は15歳程でまだ子供でも通る感じだ。だが今回目撃された魔女はヴィオラよりも遥かに幼い容姿らしい。同世代の友達には流石に見えない気がした二コラだった。 「それで出てきてくれれば苦労しないがな」 「ですよね。ところで二コラさん……仮装しないんですか?」 ヴィオラは横に立つ二コラの足元からゆっくりと視線を上げていく。ハロウィンだというのに普段と何一つ変わらない。周囲の賑わいなど微塵にも気にしていない様子だった。 「仮装衣装は動きにくい。それに任務の邪魔にもなり兼ねない。私はいつもの格好のままでいい」 仮装に一切の興味を持たない二コラに少し悲しげなヴィオラ。それを知ってか知らずか、二コラは先ほど手渡された指令書に目を落とし、魔女の特徴を再度確認していく。 「体にそぐわない大きめの黒衣。仄暗いランタンを灯し、何も入っていないバスケットを所持か。おまけにサイズの合わない帽子を深々と被っていると。捜索は容易そうだな」 「ふふっ。この人混みという環境を除けばそうですね。街の人が危険なことに巻き込まれる前に保護しに行きましょう」 「そうだな。幸い4組の浄化師達が集まった。魔女を発見したら魔術通信(マドール・コール)で情報を共有しよう」 魔術通信はマドールチェ同士なら交信が可能だが、まりかと黒蛇ペアはマドールチェではないから一方的にしか情報の発信を行えない。その事を説明すると無言でまりかと黒猫は頷いた。 「各自菓子を所持してくれ。魔女の悪戯には十分気を付ける必要がある。それでは手分けして出発だ」 浄化師達は人混みを掻き分けて違う方向へ捜しに歩き出した。 「私達はどうやって捜し出しますか?」 「闇雲に歩き回っても効果は薄そうだな……」 顎に右手を添えて考え込む二コラにヴィオラは笑顔で話し掛ける。 「二コラさん、トリックオアトリート!」 あまりにも突然なヴィオラのトリックオアトリートに一瞬疑問符が浮かんだ二コラ。少ししてようやく思考回路が復活した。 「ああ、菓子を渡すんだったな。……と言ってもこれはヴィオラが用意した物だが……いいのか?」 ヴィオラに手渡されたものをそのまま返す。すると。 「魔女の格好してる子~! このお兄さんがお菓子くれるそうですよ~!」 魔女を誘い出すようにヴィオラは声を出してみる。その声に反応して魔女の格好をした子供達が集まって来た。その中に本物の魔女がいないか、指令書の特徴と照らし合わせつつ、顔を覗き込んで確認する。子供達はお構いなく四方八方から「トリックオアトリート!」とすごい勢いだ。 「誘い出す為なのだから、まあいいのか」 捜し回るのではなく呼び掛けるのも一つの方法だと二コラは思いつつ、ヴィオラが今日に向けて用意していた手作りクッキーを手渡していく。 「ふふっ、みんな嬉しそう。魔女ちゃんにクッキーあげたら喜んでくれるといいな」 嬉しそうに微笑むヴィオラを見て二コラの口角も少しだけ上がった。 ・リューイ・ウィンダリア/セシリア・ブルー 魔女捜索保護の指令が出て4組の浄化師達が集まった。各浄化師達は指令書を受け取り、最年長とみられる二コラの指示に従い、手分けして捜索に出発した。 「セラくらいの見た目なのかな? 悪い奴に連れてかれたりとかしていないかな?」 人混みを掻き分けながら進むリューイとセシリアは話しながら魔女を捜していた。 「ねぇ、私が危なっかしいと言っているの?」 ロウソクやランタンの灯りに照らされ輝くセシリアの明るい青緑の目に軽く睨まれ、慌てて首を横に振るリューイ。 「や、そういうわけじゃなくて……」 「ふふ、冗談よ。見た目が子どもに見えるのはわかってる」 幼い少女の外見をしたセシリアはどこか寂し気に応えた。外見に似合わない大人びた口調と冷めた表情のアンバランスさが一層儚い雰囲気を漂わせる。 「……うん。危ないことに巻き込まれてしまうかも」 「そうね。安心して出てきてくれたらいいのだけれど」 「小さい子みたいだし……心配だよね」 歩いては立ち止まって周囲にいないか確認し、魔女の特長に該当する子供を捜していく。 前後左右どこを見ても人だらけ。ハロウィンイベントだけあって普段の何十倍もの人が街に溢れ返っていた。通りを埋め尽くす人々は普段着と違って仮装をしている人達が大半を占める。子供ももちろん仮装しており、本物の魔女を見つけるのは相当骨の折れる作業だった。 「魔女の耳もエレメンツのような形なのよね?」 「そうだね」 「リューイの耳に親近感を持ってくれたらいいわね」 ハロウィンのお菓子を入れたバスケットを手にリューイと通りを歩いていく。目当ての魔女ではない子どもが寄ってきて「トリックオアトリート」と言われる度にリューイは笑顔でお菓子を手渡した。子供と一緒に無邪気に笑顔でお菓子を配るリューイを見て、セシリアの表情は穏やかに緩んでいた。 そこへまた一人の仮装をした子供がやってきた。ぶかぶかの黒衣に帽子、いくつかお菓子の入ったバスケットとランタンをを持っている。リューイは指令書に書かれていた魔女の特長によく似ていると思った。 子供はぶかぶかの帽子から顔を覗かせる。 「トリック・オア・トリート!」 まん丸いお目目を輝かせ、ふわふわと靡く繊細な長い銀髪が揺れている。少女だった。 「あ、お菓子だね。ちょっと待ってね。ええと……」 「今日は大サービスでお菓子をもらっても悪戯してもいいのよ?」 セシリアは悪戯っぽく笑って少女に耳打ちをした。その言葉に目を丸くするリューイ。 「セラ! 何を勝手に……!」 慌ててセシリアを止めようと耳打ちをする。その姿を不思議そうに見つめている少女に向かって笑顔で返した。 「セラ、この子『魔女』かもしれない……」 「この子が?」 リューイは膝をついて視線を合わせ、お菓子を手渡す。 「お菓子ありがとう! お菓子もらったからイタズラはしないであげる!」 少女はもらったお菓子をバスケットへ入れて立ち去ろうとする。 「ねえ待って。貴女は魔女?」 その言葉にぴくっと反応し半歩足を引いた。 「あ、怖がらないで。私たちは浄化師です。貴女が危ないことに巻き込まれてないか心配しているの」 さらに半歩引き下がる少女にリューイはそっと手を差し出す。 「怖がらなくても大丈夫だよ。お祭に参加したかったの? 良かったら僕たちと一緒に行かない?」 リューイとセシリアは優しく微笑んで少女を見つめる。 「きっと楽しいよ」 少女が手を出してくれるのをじっと待つ。ハロウィンムードとは裏腹に静かな時間がそこには流れていた。そして少女はバスケットを抱えてリューイとセシリアを見た。 「だめ! お菓子をもっともらうの!」 そう言ってさっと人混みの中へ紛れ込んでいった。 「セラごめん……逃げられちゃった」 「お菓子もっとあげればよかったかしら。でもリューイの言う通りあの子は魔女で間違いないわね。他の浄化師達に魔術通信(マドール・コール)するわ」 他の浄化師達に魔女と遭遇したこと、そして逃げられてしまったことを説明した。 「捜しに行きましょう。まだそう遠くへは行ってないと思うわ」 ・まりか・白月/黒蛇・無衛 魔女を捜しに歩き出して約40分が経過した。その間も『エトワール』の中心街にあるメインストリート、リュミエールストリートではハロウィンイベントで非常に盛り上がっていた。行き交う人々は魔女や吸血鬼、かぼちゃの着ぐるみなど様々な仮装をしながらご飯を食べたりお酒を飲んだり、踊ったりして楽しんでいた。 浄化師のまりかと黒蛇も仮装をして雰囲気を楽しんでいた。喰人のまりかは魔女の仮装をしている。すれ違った人が「ぶたのライカンスロープが魔女を?」「本物か?」など、ひそひそと話をしていることに気が付いていた。しかし、まりかは酷いことを言われるのはいつものことで、特に気にはしていなかった。露店で売られていたパンや肉串を両手に持って食べながら、辺りをきょろきょろして魔女を捜していた。 「どれもうんめぇなぁ! あっちのもうまそうだべ!」 「まりか、俺も食う」 表情には出ないもののまりかから食べさせてもらって黒蛇はご満悦だ。そんな黒蛇はゴシック調の貴族衣装に仮装していた。目元は布で隠している。自身の好みでこのような仮装になったわけでなく、教団職員に着飾られた様子だった。テーマは孤独の王子らしい。仕上げはまりかが頭から生えている角に銀のチェーンを付けてくれた。背中に生えている細く鋭い三日月型の黒翼に黒い鱗の尻尾も相まってか、悪魔の様な格好になっていた。まりかは正直その格好に初めは結構びくびく怯えていた。 すれ違う人達に魔女の特長を伝え、見なかったか聞いていく。殆どの人は首を横に振って見ていないという。中には魔女を見たという情報もあった。だがどれもこれも手掛かりになるものはなかった。 歩き疲れてきたまりかと黒蛇は一旦通りから外れ、設置されているベンチに腰を掛けた。 「どこ捜してもいんねぇなぁ」 黒蛇は無言のまま首を縦に振って応えた。 「魔女さんのために用意した私の御菓子たべ」 魔女を見つけるために用意した、まりかの寮部屋に隠してあった秘蔵のお菓子をもってきていた。 「これは並ばないとない料理長プロデュースのちょーちょーおいしいクッキーの詰め合わせ!」 魔女のためといいながら膝の上に広げられたクッキーをちまちま食べ始めるまりか。黒蛇も一枚取って食べた。まりかが隠し持っていたクッキーは料理長プロデュースなだけあって絶品だった。上品な甘さで何枚でも食べられるような軽い口触りにまりかの頬は幸せに満ちていた。 休憩していると捜索に出ていたセシリアから魔術通信(マドール・コール)が届いた。内容は魔女と遭遇したこと、そして逃げられてしまったことだった。まりかと黒蛇はマドールチェではないため、内容を把握しても一方的に聞くしかできなかった。 「なぁなぁ私たち見つけられてねぇべ。そろそろ再開するべ」 膝の上の残ったクッキーを片付けてしまおうとした時、一人の少女が目の前に現れた。その子は先ほど魔術通信で聞いた容姿と一致していた。おまけに手にはお菓子の入ったバスケットとランタンを持っている。 「トリック・オア・トリート!」 まりかに向けて黒衣に隠れた状態の手を出している。まりかは魔女のために持ってきたクッキーなのに取られることを嫌がった。すると少女は「お菓子をくれなきゃイタズラするよ!」とまりかの膝の上に置いてあるクッキーを全て奪った。 「え、あ、お菓子があぁー! すべて食べてないべさ! きゃー!」 少女はあっという間にクッキーをたいらげてしまった。あまりにも突然の出来事にびっくりするしかできないまりかはただ立ち尽くしていた。 「まりかのための、クッキー、栄養バランスばっちり。お前は、魔女?」 その言葉に反応して立ち去ろうする少女。 「大丈夫。敵、違う。楽しみたい、一緒行く」 呆然としていたまりかだったが、悪戯されたことが今更楽しくなってきて笑顔になった。 「さっきはごめんさ。一晩だけならきっと平気だべ? なぁなぁ私たちお友達になろうべ?」 少女は首を横に振り、何も言わずに去って行った。 黒蛇はお菓子を持っていないまりかを見る。 「まりか、とりっくあーと」 「黒蛇さん、もうお菓子ないべ……」 「……悪戯」 尻尾と翼のなかに包み込み、抱きしめて鼻先に噛み付く。 「もっと、おいしくなれ。パオペイ」 ・ジークリート・ノーリッシュ/フェリックス・ロウ 「いったい何処にいるんでしょうね?」 「わたしにはわからないです」 魔女を捜し始めて1時間近くが経過していた。ジークリートとフェリックスはその間に多くの子供達から「トリックオアトリート」と言われ、準備してきた飴玉やクッキーなどのお菓子を渡していた。多めに準備したお菓子だったが、魔女を発見する前に無くなってしまいそうな勢いだった。とにかく来る子供には悪戯をされない様にお菓子を渡していたせいかもしれない。 「お菓子が無くなったあとに魔女と遭遇したら大変ですね」 「そうですね。イタズラがどんなものかわからないですし。フェリックスさんがイタズラされる分にはわたし平気ですけど」 「リートってば酷い事を言いますね」 特徴がはっきりしていたため捜すのは容易だと思っていた2人。でも実際に人混みの中から子供の魔女を一人捜すとなると大変なんてものではなかった。 数十分前に浄化師のセシリアから魔術通信(マドール・コール)で連絡が入っていた。魔女との遭遇、そして逃走を把握した上で捜しているのに手掛かりもなく、途方に暮れ始めていた。 「トリック・オア・トリート!」 フェリックスは今まで通りしゃがみ込んでポケットからお菓子を取り出そうとする。しかし、どこのポケットを探してもお菓子が入っていなかった。 「お菓子をくれなきゃイタズラするよ!」 「えっと、待って待って! お菓子ならあげるから!」 フェリックスはジークリートからお菓子を分けてもらって少女へ手渡す。 「お菓子ありがとう!」 そう言う少女を見てようやくフェリックスは気が付いた。目の前にいるのが本物の『魔女』だということに。無言のまま振り返りながら見上げるとジークリートも魔女の存在に気が付いていた。互いに頷いて魔女の保護に取り掛かった。 「こんなお菓子しか持ってなくてごめんね。一緒に露店のスイーツでも食べながらお茶しませんか? なんでも好きなものご馳走しますよ」 警戒されないように、目線を合わせて優しく笑顔を見せる。断られたら無理には言わないで様子を見ようと思っていた矢先。 「なんでも好きなものを買ってくれるの?」 魔女はフェリックスの言葉に食いついた。 「ええもちろん。今日はハロウィンですからね。スイーツと飲み物を買ってもっと静かな所でお話でもしましょう」 ジークリートは魔女とはぐれない様に手を繋いだ。普通の女の子と変わらない感じがしているジークリートは話し掛ける。 「ねぇ、わたしはジークリート・ノーリッシュというの。リートと呼んでくれればいいわ。あなたのお名前を聞いてもいいかしら?」 その間にフェリックスは露店へ駆け出していた。ジークリートに魔女を任せてはいるが、心配でならなかった。一秒でも早く買って戻りたいフェリックスは手あたり次第お菓子や飲み物を購入していく。 「わたしはメイメイよ。こう見えても立派な……」 「ん? 立派な何かしら?」 「なんでもない! そう、立派なレディっていいたかったの!」 きっと立派な魔女とでも言いたかったのだろうとジークリートは推測した。でもあえて刺激しない様に聞くことはしなかった。 「お待たせしました! それじゃどこかゆっくり話せるところに行きましょうか」 歩きながら自己紹介をしたりイベントの感想を聞いてみたり、好きなお菓子など当たり障りのない話をした。それから、他の人達を呼んでもいいか聞いてみた。 「お菓子をたくさんくれるならいいよ!」 無邪気にそういう魔女を見て安心する2人。フェリックスは魔術通信で連絡し、集合場所を指定する。 「……あなたはどうして大きめの服を着ているのかな。ただの衣装? それとも……」 「それともなんですか?」 「……え、あ、ううん。ええと、その……子供になる魔法とか……考え過ぎかも」 「これはおばあちゃんからのおさがりなの! わたしが立派なレディになる頃にはきっと上手に着こなせれるって! どう?」 楽しそうにはしゃぐ魔女はパタパタと両腕を上げて黒衣を広げて見せる。まだまだ子供なんだなとジークリートは微笑んで優しい気持ちになった。 「ええ、とっても立派ですよ。あなたも黒衣も」 「そうですね。とってもお似合いです」 「ありがとう!」 そうして話しているうちにフェリックスが指定していた場所、教団の施設へ無事着いた。 4組の浄化師達が集まった。無事に魔女を保護し戻ってきた4組はほっと胸を撫で下ろす。 「そこの2人以外にはさっきお菓子をもらった気がするよ!」 魔女はお菓子をもらった人の顔を覚えていた。 「私達は君に初めて会ったからな。これは君にあげようと用意していた菓子だ。このヴィオラが焼いた」 「手作りなんです。良かったら食べてみてね」 「ありがとう!」 もらったクッキーを割れない様に慎重にバスケットへしまった。 「あのときあげられなかったお菓子が余っているの。あげるわ」 セシリアも魔女へ余っていたお菓子を全て渡した。 「お姉ちゃんもありがとう!」 「これ、隠していたお菓子あげるべ」 「いいの?」 魔女はお菓子を受け取って戸惑っている。 「それ、美味い。まりかの、絶対」 「ありがとう!」 「たくさんもらえてよかったですね」 ジークリートは魔女の頭をそっと撫でる。 「お姉ちゃんたちもありがとう!」 「いえいえ。喜んでもらえて僕達は嬉しいですよ」 フェリックスは満面の笑みで答えた。 後程、教団から4組に労いの感謝状と報酬が届いた。 『皆さんお疲れさまでした。何事もなく無事に魔女を保護していただきありがとうございます。魔女との関係を壊さずに済みました。今後も期待しております』
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[10] ジークリート・ノーリッシュ 2018/10/25-23:28 | ||
[9] ニコラ・トロワ 2018/10/25-22:28
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[8] リューイ・ウィンダリア 2018/10/25-20:58
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[7] まりか・白月 2018/10/25-17:47 | ||
[6] ニコラ・トロワ 2018/10/25-16:36
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[5] ジークリート・ノーリッシュ 2018/10/24-20:33
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[4] まりか・白月 2018/10/24-08:54
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[3] リューイ・ウィンダリア 2018/10/23-22:23
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[2] ヴィオラ・ペール 2018/10/23-21:50
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