~ プロローグ ~ |
指令を終えた夕暮れ。 |
~ 解説 ~ |
大切なこと 参加したプレイヤーはみんなまぜこぜ交流します |
~ ゲームマスターより ~ |
他の方との交流性の強い遊びシナリオです。マナーとルールを守って楽しんでください。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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衣装…狼の被り物 仮面も狼 通り名…『狼男』 (ダンス相手とダンスするが、リードされ 恥ずかしくて真っ赤に) あ、あの、僕…ダンスは、その… (おかしいな、僕もダンスはできる筈なんだけど、 彼のペースにつられてしまう) (ダンスの後、ユギルに近付き) ユギ…いや、狐の君よ。これ…宜しかったら。 ララ…いや、猫たんと選んだんです。 (日本酒を手渡す) (はにかみつつ笑い) はは…貴方に撫でられた頭の感触が忘れられなくて。 以前、弱音を吐いた時に貴方に諭されて 僕なりに考えたんです。 僕は強くあると誓います。猫たんの為にも。 僕に世界を変える力はなくとも、猫たんの未来を 変える事はできる。 見ていてください。いつか貴方に追い付きます。 |
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ヨナ 巫女+狸の仮面 もたもたしていたらママにぱぱっと着付けされこの姿 巫女ってお稲荷様の狐というイメージでしたが 狸…? 解せない顔でいると成り行きでママと踊る ふと思い立ち 聞く ママさんは辛いなって思うの どんな事がありますか? そんな時どうやって解決してます? 軽く煽られてニホン酒を一杯 少しだけですからね 飲めないのではなくて飲まないようにしてるだけですしっ ん、美味しい… 眠気と戦いながらの会話 呂律が怪しく話題が飛ぶ 何だかふわふわしてきました ベル…烏さんは尻尾が結構可愛いんですよ この前なんてもふもふで温かくて…ん、ん~(色々思い出して黙る。自爆 困った時の返事は鳴き声のつもりの「…たぬ」 いよいよ世界が回り始める |
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二度目まして、マリアの夜ーっ! 前来た時は湿っぽくなっちゃったし 今日はとことん楽しむわよー! ・コスチューム 兵隊服アレンジのドレス ハートを散りばめたオレンジと黒が基調 下はフリルのついたスカート 仮面は黒を基調としたシンプルなもの ・名乗る名前 ラニ…ディー ラス…ダム 踊る前にママの料理を堪能 前はお酒しか飲んでなかったしね! 折角だから新作を食べるわ ご機嫌よう!素敵なお方 一緒にダンスでもいかが? 音楽に合わせてくるくると回るように踊り ねぇあなた、歌は好き? どちらでもいいわ、あたしは好きよ! (楽しそうに歌いながら) 聞くことは大好き 歌うことも本当は大好きよ でも一人じゃ歌えないの 一緒に歌ってくれる? |
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・エフド おお、ミスター・ユギル。またこの指令か?ありがてぇ。 飲んで金もらえるならもちろん受けますぜ。しかも新作の試食ってことはタダで食えるのかい? 仮装は戦列歩兵、呼び名は「兵長」とでもしておこう。 この前食ったものは美味かったからな。新作には期待しよう。アラックはあるかい? ……ラファエラの奴、何やってんだ。渋々っぽく見せて実は楽しんでんのか? ・ラファエラ またここ?まぁいいわよ、美味しかったし。 仮装はありきたりだけど吸血鬼。ヴァンピールだし。 血のごとく赤い酒を持て。そなたの血には代えられまい。なんてね。 |
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~ リザルトノベル ~ |
「おお、ミスター・ユギル。またこの指令か? ありがてぇ。飲んで金もらえるならもちろん受けますぜ。しかも新作の試食ってことはタダで食えるのかい?」 「もちろん、試食ってことでタダよぉ。おいしかったらまた通って食べてくれたら嬉しいわぁ」 二回目の「マリアの夜」にやってきた『エフド・ジャーファル』は普段よりもずっと砕けた口調で尋ねるのに、ママがにこにこと答えてくれた。 「またここ?」 相棒の『ラファエラ・デル・セニオ』が眉根をつりあげる。 「なんだよ、趣味じゃないっていうのか」 「別に。まぁいいわよ。……料理、美味しかったし」 最後のところだけ、ぼそりとラファエラが囁くように口にする。素直ではない彼女がこの店を少なからず気に入ったらしいとエフドは理解した。 「じゃあ、カードに仮装を楽しむぜ」 「ええ」 二人のあとにつづいたのは鏡写しのようにそっくりな『ラニ・シェルロワ』と『ラス・シェルレイ』の二人だ。 「二度目まして、マリアの夜ーっ! 前来た時は湿っぽくなっちゃったし、今日はとことん楽しむわよー!」 両腕をあげてはしゃぐ笑顔のラニは楽しむ気満々だ。 「お前というやつは……しかし、記憶はないが湿っぽい?」 おっといけない。 「あのね、前はあんたが酔っぱらって介抱して、それはそれは大変だったのよ! その苦労とかいろいろがねぇ湿っぽいっていうか、本当に苦労したなぁって愚痴よ、愚痴」 「あのあとカメラ買おうとしてたよなお前……本当になにがあったんだ」 「……。ママー、仮装するから衣装おねがーい!」 「オイ!」 笑顔でラニはラスを無視して着替えることにした。 そしてそのあとに続いたのは渋面の『ヨナ・ミューエ』と酒が飲めると尻尾をひらひらとふって機嫌のいい『ベルトルド・レーヴェ』の二人だ。 お酒や他の人々と無暗にかかわることが苦手であるヨナは踏ん切りがつかない顔だが、それを無視してベルトルドが先に向かってしまうので仕方なくついていくしかない。 「じゃあ、あとでな」 「え、あ、ベルトルドさん」 置いていかれた。 「仕方ありませんね」 ヨナは衣装を選ぶために一人で歩きだす。 そして。 ずっと行ってみたいと希望していた店にようやく訪れることのできたまだ幼さのある二人は目をきらきらさせていた。 今回の店の内容を聞いたあと。 「是非ユギルさんと踊りたいです!」 店でカードを受け取るとき『ラウル・イースト』と『ララエル・エリーゼ』の声が見事に重なった。 「あら、モテモテぇ。そうねぇ、パートナー同士なら細工もできるけど、あいつはねぇ」 マリアママが頬に手をあてて苦笑いする。 「ちょっとぉ難しいかも~。ダンスとか嫌いだからぁ」 その言葉に二人はがっくりと肩を落とした。 それでもユギルのために二人の感謝の気持ちをこめたニホン酒を渡したいと口にすると、ユギルが好んで飲むニホン酒をキープとして置いておくと約束してくれた。二人で酒瓶にユギルの名をしたためる。 「じゃあ、またね、ララ」 「はい!」 二人は楽しそうに衣装選びに向かった。 今日だけはステップを踏みたくなる洒落たジャズの音楽に、甘く、酔わせてくる酒と料理に楽しそうに囀る仮面の人々は相手が誰とも知らずに一夜の悪戯を堪能していた。 「ニホン酒と南瓜の料理を頼む」 山伏衣装に漆黒の鴉の面をかけた全身黒い獣人の男がカウンター席でママに声をかける。 透明な、美しい液体とマヨネーズで味付けした南瓜にカッテージチーズをあわせたものが届いた。 まろやかな味わいに強めの酒が実によくあう。 「うまい」 「なんだ、いいもん食ってるな。ニホン酒か、俺は……そうだな。アラックはあるかい?」 戦列歩兵衣装の男がにやりと厚い唇を吊り上げた。 強烈な酒には辛いものがよくあう。一緒にだされたつまみはトルティーアというトウモロコシをすりつぶして作られた生地の上にチキンとかぼちゃをトマトソースをベースに煮込んだものだ。酒と一緒に噛めば肉汁と辛さが舌の上で踊る。 「うまそうだな」 「辛いのが平気ならいけるぞ」 「ほぉ」 「この前食ったものは美味かったからな。新作も期待したがこれはいいな」 水のように酒を飲む兵長に山伏がにやりと牙を見せた。 「飲めるクチなら奢るぞ。山伏とよんでくれ」 「ニホン酒をか? なら、俺はアラックをあんたに奢ってやるよ。そうだな、兵長で頼む」 ふふっと二人の男は囁くように笑いあう。 互いのすすめあう酒のグラスを差し出し、乾杯をして味わう。言葉はなくとも、すする酒が二人の言葉になった。 「ん? あっちが騒がしいな」 「あれはラファエラか……なにやったんだ」 ぼそっと兵長の呟きに山伏は黒猫耳をぴこんと動かしたが、聞こえぬふりをした。 「ほら、飴を出せ。吸血鬼の私に献上せよ」 黒いマントに、黒い胸の部分がV型にあいた妖艶なドレスの吸血鬼は楽しそうに牙を剥く。 餌食になっているのはダイヤがちりばめられた兵隊服をアレンジしたスーツを着た青年だ。あわあわと慌てている。 吸血鬼はすでにお酒を好きなだけ飲んだらしい。彼女の色香には微かにアルコールの甘い匂いが混じっている。 せっかく悪戯と遊びの夜なのだから、とわざと酔っぱらったようだ。彼女の片手にあるシャンパンは宝石のようにきらきらと弾けている。 彼女は一気にシャンパンを煽る。 「ほら、どうした? 餌食になるか?」 にやにやと意地悪く笑う。 「え、あ、名乗りからだよな? オレは、ダムだ。……飴? あ、あー! 持ってないけど……え、わ、わっ!」 「飴も持たず吸血鬼に近付くとは、愚かな」 シャンパンのグラスを店をまわるボーイにさりげなく渡した吸血鬼はいきなり体を密着させる。白い仮面をつけた青年が頬を赤くする。 「さぁ、私を満足させろ」 耳元で甘く囁かれた言葉にダムがぎくしゃくしている。 「あー、なんか楽しそう!」 明るい声がしたのにダムが振り返るとハートをちりばめたオレンジと黒が混ざった兵隊服のドレスの少女だ。スカート部分にはフリルがついて動くたびにひらひらと揺れている。 「あっは、あたしは、ディーっていうの。よろしく。あっ。あたしは飴があるわよ」 「なんだつまらん奴だ、眷属にも値せん」 差し出されたハート型の飴をちゃつかり吸血鬼が受け取って肩を竦める。 「おい、その、オレの分の飴は!?」 「んなもんないに決まってるでしょ。さぁ、美しい吸血鬼さまにいただかれちゃいなさい!」 「!!」 思いっきり背中をおされて柔らかな胸に包まれてダムが大いに慌てる。 「ふふん、楽しませてもらおう!」 とディーは去っていく。 白状なやつ! とダムは心のなかで悪態をつく。 「~~。ど、どうしたらいいんだ」 「もちろん、お前の血で、といいたいところだが、私は機嫌がいい、ダンスの相手で勘弁してやろう」 「わ、わかった」 「ただし」 耳たぶに触れるか、触れないかの柔らかさ。胸があてられ、甘い匂いにダムは石のようにかたまった。 「満足させてね」 あ、これ、弄ばれるやつだ。 「ぷはははは。やだ、かちんこちんになってるぅ~。あ――、かわいい!」 ディーがチョコを食べたときのようにとろけた顔をする先には頭からすっぽりと被る猫の着ぐるみ――上品なペルシャ猫のようだ。 仮面もかわいい猫ちゃんだ。 その猫ちゃんの手をひくのは同じように狼の被り物をした青年で、顔も狼のものをつけている。 「ふふ、ハロー! いい夜ね! 私はディー! 二人は」 「私は猫たんです!」 「あっ、ら……僕は、狼男です」 猫たんががおーと襲う真似をする横で狼男は品よく微笑む。 「きゃー、かわいい。あ、よかったら南瓜料理はどう? みてよ、あっちでは食べられちゃってるのがいるの」 にししっと笑って指さす方向を見て猫たんが。 「吸血鬼の餌食ですね」 「……すごいことになってますね」 狼男が苦笑いする。 「んふふ。カメラをもってきたらよかったわ。まぁ、一夜限りの夢をおさめる無粋はだめよねぇ」 「ふふ、そうですね」 ジレンマに悶えるディーに狼男が笑って答える。それに猫たんが声をあげた。 「よかったらあっちで食べませんか? ほら、呼んでるみたいですよっ!」 「えー? あ、本当だ」 カウンターにいる山伏がひらひらと手をふるのに三人がいそいそと向かう。 「わぁ! おいしそう! ママ! 私はジュースで!」 「私はおさ」 「君はジュース! 僕は……」 「狼男、せっかくだ。酒を飲め、酒を。奢るぞ」 「狼らしくワインでも煽るか?」 やや酔っ払って気前のいい山伏と腹を酒と料理で満たして上機嫌の兵長の言葉に狼男は少しばかり迷った。 「お二人に合わせると確実に飲まされますね」 「らう……ううん、狼男、せっかくですよ!」 と猫たんがそそのかすのにディーもくわわった。 「そうそう、こんなチャンスないんだからぁ」 「ママ、優しいお酒で、お願いします」 仕方ないわねぇとアルコール度の低い、甘いワインが出されて狼男は舌つづみを打った。 「たぬ」 巫女衣装にたぬきのお面をつけた彼女は取り残されていた。 衣装選びでまずつまづいて、見るに見かねたママが見立ててくれたのだ。普通、巫女なら狐ではないのだろうか? たぬきはむぅと考える。 楽しそうな世界を少しばかり羨むように見つめるたぬきにママが近づいてきてくれた。 「どうしたのぉ。たぬきちゃん」 「たぬ」 「ふふ、踊る? カウンターは今は知り合いに任せちゃったから」 「たぬたぬ」 「人の言葉をしゃべりなさいぉ。ほらほら」 「たぬっ!」 腕をひっぱられたたぬきはびっくりする。憧れた世界は一歩踏み出せば間近にあった。 色香をふりまく吸血鬼にたじたじの青年。狼男と猫の着ぐるみも楽しそうにステップを踏んでいる。 きらきらした世界はきれいだ。 「たぬ。……これは、独り言のようなものです、だから、無理して答えなくていいです。ママさんは辛いなって思うのどんな事がありますか? そんな時どうやって解決してます?」 「あらあら、どうしたの」 「なんとなく、です」 「そうねぇ~。思いっきりその気持ちに溺れるわ。好きなだけ沈んで、底までいって、そうしたら浮かぶしかないでしょ? 私みたいなのぉってずぶとくないとやっていけないからぁ」 「……たぬ」 「ふふ。お酒もいいわよ。飲みたい気分になってきた? ほらほらいらっしゃい」 手をひかれてやってきたカウンターには銀のお面をつけた真っ白いタキシードの青年がいた。 「お酒ですか? わかりました。どうぞ。あちらにいる紳士があなたによかったらと言っていたところです」 見れば山伏が尻尾をひらひらさせている。 差し出された酒を手にとる。 「少しだけですからね。飲めないのではなくて飲まないようにしてるだけですしっ……ん、美味しい」 水みたいな見た目なのにアルコール度が強いらしく、眠気が押し寄せてきた。 「あっれー、たぬきさん? 私はディー、よろしく!」 明るい声がしたのに顔をあげればにこにこと笑っているディーがいる。 「ご機嫌よう! 素敵なお方。一緒にダンスでもいかが?」 「先ほど踊りました。ひどい踊りだったでしょう?」 「そうかな? 楽しそうだった」 「たぬ」 「たぬって」 くすくすとディーが笑う。 「何だかふわふわしてきました。ベル……あそこにいる烏さんは尻尾が結構可愛いんですよ。この前なんてもふもふで温かくて……ん、ん~」 いろいろと思い出してしゃべりすぎたと押し黙る。それにディーは興味津々で食い入るように聞いている。 「……たぬ」 いよいよ世界が回り始める。 「あら、あなた、ダンスがうまいじゃない」 「まぁな……ダンスと歌は嫌いじゃない」 ぼそりと言い返すダムに吸血鬼はふふんと満足そうに笑う。 一曲踊り切った二人がカウンターに行くと兵長が片手をあげた。 「山布さんから、お前にだ」 「え、あ、どうも」 透明な液体のグラスを受け取ると、舌で舐める。柔らかな甘さだ。けど、ほどほどにしよう。記憶を無くしたくない。 「ワインじゃないの? ふーん、のど越しがいいわね」 のど越しのよいニホン酒を吸血鬼は嘗めた。 「たぬたぬたぬ」 「えー、鳴いてるばっかりじゃわかんない! 話してくれないの?」 「おい。何言い出してるんだ? ……狸はそんな鳴き方しないだろうに」 「たぬ……うぇ」 「え、大丈夫!」 気持ち悪そうにするたぬきにディーが慌てる。 これはだめだ、と山伏はたぬきをつれてトイレへと走る。 吐けるだけ吐くたぬきの背中を撫でてやる。 「悪かった。まさか、吐くとはな……俯いたままなのでまだ気分が悪いのか?」 「違うんです。その……失敗した夜の、ことを思い出してしまって、人に話してしまって……自分がどういう顔しているのか分からないというか。だからお酒は駄目だと」 「みなまでいうな」 「……たぬ」 ギクシャクしながらたぬきと山伏は戻っていく。 カードに書かれた相手とのダンスの時間となった。 「っ」 狼男の前に出てきたのは真っ白いドレスに、銀色の髪、面は棘の蔓を伸ばした薔薇が彫られている。 くすと唇を吊り上げて笑い、手を差し出してくる。 「白薔薇と呼んでちょうだい」 「僕は狼男です。よろしくお願いします。えっと、わ」 ぐいっと腕をとられた。 「あ、あの、僕……ダンスは、その……」 自分よりもやや背が低そうな相手だから、当然リードするものだと思っていた。が、相手は女性パートを踊っているのに、巧みにリードされてしまう。足が先へと動き、手が離れ、ステップを踏み、手を叩く。くすくす。薔薇は笑いスカートの裾を翻し狼男の腕に戻ってきた。 (おかしいな、僕もダンスはできる筈なんだけど、この人のペースにつられてしまう) 思わず足がもつれそうになった狼男の足に細く、白い脚が割り込んで壁まで追い込まれた。 狼男の顎がそっと細い人差し指で持ちあげられる。 「ごめんあそばせ、狼さん、そんなのだと薔薇の棘に囚われて、腹ペコな意地悪な魔女に食べられてしまうわよ?」 すっと薔薇は離れていく。 「ふふ、楽しかったわ。ラウル、ご指名ありがとう」 「え。あ、あの、待ってください! 間違っていたらすいません。……貴方に撫でられた頭の感触が忘れられなくて。以前、弱音を吐いた時に貴方に諭されて、僕なりに考えたんです」 狼男ははにかんで笑う。 「僕は強くあると誓います。猫たんの為にも。僕に世界を変える力はなくとも、猫たんの未来を、変える事はできる。見ていてください。いつか貴方に追い付きます」 「……あら残念。口説かれると思ったら惚気られちゃったわ。ごきげんよう」 スカートを持ちあげて白薔薇は去っていく。 「あら、山伏が私の相手なのね」 「そのようだな」 山伏は肩を竦めると、吸血鬼は唇をつりあげて笑った。すっと腕を出す。 「悪いけど、リードしてよ? 男でしょ?」 「そうだな……希望に沿えばいいが」 差し出された華奢な手に山伏の毛に覆われて大きな手が重なり合い、ゆっくりと引っ張っていく。 「ああ、そうだ。ダンス中でも悪戯は当然するわよ?」 「お、おい!」 「さぁ、堪能させてよね? あなたのリードを」 体を密着され、甘い言葉を囁く吸血鬼に山伏は表情こそかえないように努めたが、尻尾は太くなっていた。 くすくすと甘く笑う吸血鬼が獲物を弄んで楽しんでいる。 「よろしく頼む」 「こっちこそ!」 兵長の相手になったディーはにこにこと笑い、二人はダンスをする。兵長の太い腕と軽やかなステップがディーを楽しませてくれる。 「あっは。楽しい! ねぇあなた、歌は好き? ああ、うん、どちらでもいいわ、あたしは好きよ!」 花咲くようにディーは笑うのに兵長はふっと唇を持ちあげる。 「歌ってくれるのか?」 「聞いてくれるなら!」 ダンスの曲は、古い民謡で、それはディーの知っているものだった。 「聞くことは大好き。歌うことも本当は大好きよ。でも一人じゃ歌えないの。一緒に歌ってくれる?」 お菓子がほしいとねだるこどものような誘いに。 「俺でいいなら」 「ありがとう!」 低い声の囁くような歌声に、楽しそうにはしゃぐ歌声が重なり合う。 「お、踊る……たぬ」 「……よろしく。本当に平気か?」 先ほどたぬきが山伏にトイレに連れていかれるのを見た。若干顔色が悪いように見える。 が。 「たぬ!」 強気の鳴き声にダムは肩を竦めて、ゆっくりとたぬきの肩をとった。 ゆっくり、ゆっくりのリード。 音楽の激しいリズムよりも相手と楽しむことを優先したステップ。それに体を動かしてたぬきは心が落ち着くのを感じた。 「うまい、たぬ」 「どうせなら楽しんだ方がいいだろ? ……オレもこういう大勢で楽しむイベント好きなんだ。歌とダンス、好きだよ」 「たぬ」 この相手が誰かと、探るのは無粋だよな、とダムは唇をつりあげる。だが、不意に響く歌声にはっと顔をあげる。 楽しそうに踊る兵長とディーの姿がある。 彼らの歌声が耳をひっかく。 「……」 「あの、大丈夫ですか? 私が下手だから、たのしめな」 「違う。……うん。オレも好きなんだ。歌が、ダンスが」 「たぬ?」 「今夜はいっぱい踊ろぜ? たぬきさん」 「いいですね、たぬ」 「たぬきの鳴き声じゃないよな。それ」 ぷっと噴き出してダムはゆっくりと、聞こえてくる優しい曲と歌声に身を預ける。 「私のダンスのお相手さん、ですか」 「そうだ。さっさとこい猫が!」 「え、あ、きゃ!」 黒い手袋をはめた大きな手は力強いがホールへと乱暴に猫たんを連れ出す。 猫たんよりもずっと高身長に、鍛え上げられた紳士はなでつけた黒髪に立派な耳とふさふさの尻尾をさせていた。その顔を隠すのは棘の蔓を伸ばした薔薇の面。 「えっと、あなたは」 「通り名か、面倒な……『狼ノ王』」 鼻を鳴らして狼ノ王は笑った。 「くだらん名だ」 「は、はい、ひゃ、あ」 軽やかなダンスの音楽が鳴る。ステップを踏もうにも猫たんは踊ったことがない。目の前の人の足を踏んでしまう。 「あれ? きゃー、ごめんなさい、ダンスってした事なくって!」 猫たんが慌てると、狼ノ王が舌打ちした。 (ひゃ、怖いです!) ぐいっと胸に引き寄せられる。狼男くらいとしか密着したことのない猫たんは真っ赤になって慌てるが、それでも強引でいて優しいリードに身を委ねた。 「力を抜け、そして楽しそうに笑っていろ。今宵だけはオレがリードする」 「は、はい」 力を抜けばダンスは驚くほどに楽しいものだった。歌うように軽くステップを踏む。 ダンスの終わり強く引き寄せられ、狼ノ王がとびっきりのレディにするように床に片肘をついてスカートの端にキスをしてくれた。 「フッ、楽しませてもらったぞ。ララエル、ご指名分は満足したか?」 下から見上げられる形で囁かれた言葉に猫たんはびっくりした。すぐに去ろうとする狼ノ王のマントを掴む。 「え! あ、あの! 待ってください。私、生きますよ! 『死を安らぎとするには、大切なものを慈しんでからでも遅くない』って、ある、美しいドラゴンさんから貰った言葉です。私まだ、大切なものを慈しんでません! 好きですって伝えてません! だから、生きるんです。そうしなきゃ、自分のこの脚で歩かなきゃ、生き返ったのが勿体ないもの!」 狼ノ王はマントを翻し笑った。 「フン、自分は自分の王になりえるものだ。オレがそうであるように、貴様がそう望むならそれでいいだろう」 美しい毛並みを揺らして去って行った。 酒とダンス、楽しい声を響かせて、夜は深けていく。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[7] ヨナ・ミューエ 2018/10/30-18:03
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[6] ララエル・エリーゼ 2018/10/30-17:17
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[5] ラニ・シェルロワ 2018/10/30-12:55
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[4] ラウル・イースト 2018/10/30-04:33
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[3] ヨナ・ミューエ 2018/10/29-23:48
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[2] ラウル・イースト 2018/10/28-03:35
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