~ プロローグ ~ |
ユーリ、シグマ、ハンナ、……シグルド。 |
~ 解説 ~ |
めっちゃうるさい人からの依頼がきました。(本当にうるさい) |

~ ゲームマスターより ~ |
本当にうるさい依頼人ですねー。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■悲しい記憶 囚われるのはナツキ ヨハネの使徒に育った孤児院を襲われた事、その時の悲しみ、恐怖、無力感を思い出す 膝をついて震え、殺された一緒に育った子供達や先生に何度も謝る ルーノが言葉をかけ、引き戻す ルーノ:孤児院の思い出は悲しい記憶より楽しい事の方が多いと、君は私に言ったじゃないか。 しっかりしろ、ナツキ・ヤクト。君にはやるべき事があるんだろう? 契約時(25話)と同じ言葉にナツキが顔を上げ、ルーノが差し出す手を取り立ち上がる ■魔女 事前に魔女の情報収集 ロリクと過去の指令を調査、案内人にも尋ねる 情報から魔法の媒体や要等の有無を確認 媒体破壊を狙い、解決しなければ本体を破壊 火は使わず、JM9+JM6で破壊 |
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【目的】 スクートゥムの知ってる情報を開示する 魔女が何をしたいのか知りたい 【行動】 仲間にスクートゥムの知ってる情報を開示 樹を剣で斬り倒す 『悲しい思い出』 「お前は20歳で殺す」と小さい頃に言われながら暗い部屋に閉じ込められ、ご飯を与えられ、最後に両親に首を絞められる 【心情】 …スクー…トゥム? あの…気のせいかな? 確か前の任務の時に資料でそんな名前見た気がする 殺すって要ってたけど、最終的に魔女に助けられる形になったからあの人をどういう位置で定義したらいいのか未だに良く判らない とりあえずお狐様の後ろに居るね …殺されるのはしょうがない 死ぬのはしょうがない 一人ぼっちが一番嫌だ |
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・ディルク 12歳の頃……生まれ育った孤児院がベリアルに襲撃されたときの悲しみに囚われる。 お前は自分の命惜しさに家族を見捨てて逃げた腰抜けだと、心の中で自分自身を責めて動けなくなる。 ・シエラ 動けなくなったディルクさんを正気に戻す為、慢心したフリをして挑発します。 恐怖で震えないよう意識しながら、気が緩み切ったような声でサボる発言をしますよ。 「ディルクさんが動けないなら、ちょっと休憩しても大丈夫ですかねー? あははー」 こんな風に慢心してたら、ディルクさんは条件反射で殺しにかかってくるはずです。 銃口がこっちを向いたら、銃弾を咄嗟に剣で防ぎます。 その後は樹に対して、二人それぞれの武器で攻撃を行います。 |
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~ リザルトノベル ~ |
「ロリク、この魔女について事前に調べておきたいのだが」 『ルーノ・クロード』が指令を受けてわいのわいのと『ナツキ・ヤクト』の尻尾をとって騒いでいるスクートゥムを横目に見つつ告げる。 「過去に討伐依頼が出ているなら、いくつか資料が残っているのでは?」 「うん。いい心がけだな。ちょっと待っていてくれるか? 古い資料だから」 「ありがとう。ナツキたちにここは任せて、私も手伝う……ナツキは……なじんでる」 「わーわー、ふっわふっわー。俺っちの姉様もふわふわなんですよー。わー、どんなシャンプー使ってるんですかー」 「おう。くすぐってぇ」 仲間に気軽に尻尾を触らせてくれる心優しいナツキは怒るよりも、この無邪気な依頼人の様子に笑っている。 その様子に『ユーベル・シュテアネ』、『灯火・鴇色』はどうも浮かない顔だ。 『ディルク・ベヘタシオン』は険しい顔で、横にいる『シエラ・エステス』は苦笑いしている。 「事前準備をするなら手伝う」 怠慢を嫌悪しているディルクがルーノに声をかけ、シエラに一瞥を向ける。びくっとシエラは肩を揺らしたあと、こくんと頷いた。 「森に入る前に事前準備しておきます!」 「俺も手伝うな。二人はどうする?」 「え、ええ。資料集めを手伝いますっ」 「なら俺は買い物かな」 とユーベルと灯火が答える。 それぞれ分かれての準備となった。 古い資料はロリクとともに手分けをして、いくつか探して見つかった。 トゥレーンの森は昔、明るく豊かな森だったそうだ。そこに春告げの魔女の一家が住んでいた。 魔女が唄を捧げ、花を咲かせ、実をもたらしていた。しかし、人を食べたと言われる魔女を人々が恐れ、迫害した。それから森は静まり返り、閉ざされた。 幾度とない討伐の指令が下され、魔女の一家は一人、また一人と殺されていった。 娘のユーリ、シグマ、ハンナ。 そして魔女の夫であるシグルド・スクートゥム。 魔女の名前――。 集めた資料でわかったのはそこまでだ。魔女の名前のところはどうにも掠れて読めないのにルーノは眉をひそめた。 ただ、これでこの魔女が唄を魔法の媒体に使っていることはなんとなくだが見当がついた。 「耳を封じれば魔法の効果を防げるかもしれないな」 とディルクが眉根を顰める。もし防げるなら打てる手はすべて打ちたい。 「魔法となると耳を閉ざしたところでかかる恐れはある。むしろ、耳を封じての奇襲されたときの危険性を考えるなら下手に小細工しないほうがいいかもしれない」 ルーノも思考する。 「スクー……トゥム? あの……気のせいかな? 確か前の任務の時に、この盾の紋章を見た気がするの」 小さな声でユーベルが告げる。 今回の煩い依頼人を見たときから彼女はなにかひっかかるものがあったのだ。今回資料のなかでシグルド・スクートゥムの名前は今回の依頼人と同じだ。しかも、そのシグルドは盾使いという、資料に書かれている盾の紋章――花と鳥をモチーフにしたそれは以前の指令の際に見たことがある。 今回は魔女に関わる指令だ。 ユーベルは過去にアクイの魔女に関わり、ひどい目にあったことを思い出してルーノとディルクにそのことを告げた。 「……アクイの魔女の、使い魔、かもしれない……姿は違うけど……」 殺すって言って、最終的に魔女に助けられる形になったからあの人をどういう位置で定義したらいいのか未だに良く判らないが、灯火のところにいようと決めた。 ちょうど資料回収にきた指令部の者にもその旨は報告をした。 (お狐様、大丈夫だといいな) エントランスに戻ると、シエラとナツキはちゃんと下準備を整えていた。その傍らでは煩い依頼人は今度は灯火の尻尾をもふったり、街で買ったおいしい串焼きを食べて呑気なものだ。 「お狐様、大丈夫ですか」 「……しつこくもふられそうになったが無事だぞ」 「実は」 ユーベルが小声で説明する。 串焼きを食べ終えて満足したスクートゥムがにこりと笑う。 「じゃあ、行きましょうか、森へ」 森は鬱蒼としていて肌寒さがあったが、歩いているとうっすらと汗をかくほどに険しい道のりであった。 獣などに注意をして、先頭に案内人とルーノ、ナツキ、真ん中にユーベル、灯火、シエラ、ディルクが続く。 「聞いても構わないかな」 ルーノが案内人に声をかける。 「なんっーかー?」 「今回の魔女について、君が知ってることを」 「……悲嘆の魔女としか」 「調べたんだ」 ルーノが教団の資料で知りえたことを口にするとスクートゥムは少しだけ意外そうな顔をした。 「わざわざ調べたんですね。ただ燃やすだけかと思ってましたー」 「火は使わない。他の木々に燃える可能性がある」 「この森は魔女に手を貸しているのに?」 「救えるなら、救いたい」 絞り出すようにルーノが口にする。なにもかも救えるわけじゃない。けれど何もしないままはいやなのだ。そうナツキと誓ったのだ。 「甘いなぁ、それだといずれ足元を掬われる」 「君は」 「けど、そういうところ、俺っちは好きだな。ふふ、浄化師は嫌いだけど、ルーノさん? あんたのことは好きになりそうです。 森が手を貸すのは悲しいから、魔女も悲しいから」 スクートゥムは目を細めた。 「春告げの魔女が唄っていたころの、笑いあい、命が広がりを森は知っている。幸せだったんです。きっと。だからその幸福が忘れられない。けど時間が経って忘れていくから、忘れないように悲しみを抱え続けることを選んだ」 「幸せを忘れないために、悲しみを抱え続ける」 「記憶ってね、幸せなものほど忘れやすいんです。だから森は悲しみを選んだ。ずっと忘れないように、魔女も同じです。幸せはあっさりと消えていくから、悲しみを選んだ。それほどに忘れたくなかった。大切な人たちのことを……ただその結果、魔法が暴走して、他者まで悲しみに囚われてしまった」 「それではまるで」 「俺が知っているのは春告げの魔女の名前です……エアル、と」 遮るように説明され、ルーノは拳を握りしめる。 「スクートゥムと言ったな。アクイの魔女は健在か?」 きょとんとした顔でスクートゥムは灯火を見つめる。 ユーベルが与えてくれた情報からカマをかけたのだ。アクイの魔女の使い魔はしゃべれなかったし、魔女も使い魔を名で呼ぶことはなかったが紋章のこと、さらに今回名前が同じことが気になったのだ。 「一応確認しておくが今回は、人を殺すのが目的ではないんだな?」 「うーん、俺っちは気にしないんですけどぉ、忠告っすー。確信がないままぶつかるのは失礼にあたりますよー? カマかけられるのは嫌いじゃないっすけどねぇ」 灯火は警戒の眼差しを向ける。前回のこと、そして今回のこと結局目的がわからないので探りをいれるのが目的だ。 「しらばくれるか。仲間や教団にはすでにお前のことは告げてあるぞ」 「ふぅん。まぁおいおいわかるんじゃないっすかー」 灯火の言葉に少しばかり目を見開いたあと、スクートゥムはにこりと微笑んだ。 ● 忘れないで、忘れないで、どれだけ悲しくても……歌が響き渡る。 ● 気が付いたとき、ナツキは孤児院にいた。笑いあう子供たちと見慣れたシスター……自分が育ったそこにいることに驚いて瞠目する。 と。 何もかも破壊しようとする音がする。 響く、響く、響く。 あ、と思ったときにはヨハネの使徒が建物を破壊し、逃げ惑う子供たちを、シスターを踏みつけていく。 ナツキは幼い子供に戻ってしまい、ただ茫然と立ち尽くす。 どこかでなにかに引火したのか炎が広がる。 だめだ、だめだ、逃げて! ――お前のせいだ ――お前がいなければ 怨嗟の声が、倒れた人々の目が、口からナツキに向く。 自分のせい。 自分がいるから、膝をついてナツキは頭を抱える。涙がいくつも零れていく。 「ごめんなさい、ごめんなさい」 浄化師になって楽しい経験を経て、さら仲間たちを得て、薄れていた顔がいくつも浮かぶ――忘れてない、絶対に忘れることのできない。だって、後悔と無念と今自分が生きている理由。 ごめんなさい。 「ナツキ!」 膝をついて頭を抱えて小声で謝り続けるナツキにルーノは声をかける。 彼が見ているものがなんなのかはすぐに察しがついた。 一番辛く、浄化師になった理由。 (ナツキはこれで折れる程脆くない) ルーノは拳を握りしめた。優しい言葉をかければいいのかもしれない、けれど自分はナツキを心から信じている。だから。 「しっかりしろ、ナツキ・ヤクト。君にはやるべき事があるんだろう?」 腕を掴んで自分を向けさせる。 「孤児院の思い出は悲しい記憶より楽しい事の方が多いと、君は私に言ったじゃないか!」 「けど、俺の、俺のせいで」 「……ナツキのせいだというなら私も背負っている!」 びくりとナツキが目を見開く。 「その牙は己の為に、それが私とナツキ、君が決めた言葉だ。意味は……わかるはずだ」 透明な涙を零して、ナツキが目を伏せる。死者の顔が、優しい笑った顔に戻る。その笑顔を守れなかったが、もう二度と失わないために、その幸せを愛しているからこそ自分は浄化師になったのだ。 顔をあげてナツキはルーノに手を伸ばす。ルーノがナツキの手を握りしめた。 「もう大丈夫。ルーノのおかげで大事な事思い出せた」 ルーノは黙って唇に柔らかな笑みを作った。 ユーベルは幼い子供になっていた。じめついた部屋は光はなく、暗いばかり、臭くて、汚くて、寒くて、それが幼いユーベルの世界のすべて。 二十歳になったら殺す。 繰り返し、繰り返し、夢物語のように囁かれた。刷り込まれたそれはユーベルにとっては当たり前のことで。 暴力という名の痛みもまた日常だった。 ただどうしてそれが行われるのかわからなかった。それに名もなくて。 粗末な食事のあとになにか失敗をしてしまい、二十歳になって首をしめられる苦しみのなかで胸が張り裂けそうなほどに苦しくなった。 それが悲しみだとユーベルは知らない。抱擁も、愛も知らない娘はこれが当たり前だとしか思わなかった。感情に名があることも知らなかった。ただ苦しくて、苦しくて早く終わってほしいと思った。 ……殺されるのはしょうがない。 死ぬのはしょうがない。 一人ぼっちが一番嫌だ。 だから暴力であってもいい。パパとママが会いにきてくれる、その一時だけは一人ではないから、それだけでいいや、と心から思った。 けれど、死にそうになる自分を見て笑う二人を見ると、自然と涙が溢れた。 ああ、ああ、ああ。 どうして、そのあたたかい手は自分に痛みしかくれないのだろう。 けど瞬きすら惜しくて、目を開く。 パパとママ。 その顔を見つめて、もう息もできない。 倒れこんでしまったユーベルに灯火が近づく。抱き上げると酸欠のように口をぱくぱくさせている。 どんな悲しみの夢を見ているのか。虚ろな瞳を見つめてしばし迷って強く腕をまわして抱きしめる。 きっと、あれだろうと検討をつけて。耳元で囁く。 「ここにお前の両親は居ない。お前は一人じゃない」 とあやすように背中を軽く叩く。 「……お狐様」 「そうだ、俺がいる。お前には俺がいるだろう」 死にかけた自分を救い上げてくれた。 汚いばかりの自分を求めてくれた。 「うん、……うん、お狐様が、いる」 小さな、甘える声で、ユーベルは力ない手を伸ばして灯火の肩を掴んだ。 ディルクの日常は豊かで、騒がしい。 孤児院を営む優しい両親。集められた子供たち一人ひとりに愛情を向ける様子。まだ十二歳のディルクは少しだけの羨ましさと誇らしさを抱えていた。 それが燃える。 紅の炎。 逃げ惑う人々を嘲笑うベリアル。 獣のように息を吐いて、吸って、ディルクは転がりながら、無力のまま逃げた。逃げ続けた。 逃げながらディルクは今の年齢になっていた。武器を探すがない。どうして、孤児院は見晴らしがよかった。だから奇襲されても平気だと――怠慢だ。そうだ自分は、自分たちは根拠のない平和の上で怠慢したのだ。だからこんなめにあうのだ。 ――見捨てた 幼いディルクが吐き捨てる。 ディルクが足を止めて幼い自分を睨みつける。違うと叫ぼうとして出来なかった。武器がない、なにももってない、怠慢していたのは誰でもない――自分じゃないか。 ――家族を見捨てて生きる自分は、怠慢の塊じゃないか! 叫ぶことも出来ない、ああ、そうだ、正しい。それが正しい。 怠慢したうえ、見捨てる汚い自分に吐き気がした。悲鳴が聞こえる、悲鳴が――それは誰の怠慢のせいだ? 「ディルクさん……っ!」 シエラはディルクが囚われたことに驚いた。 「……っ」 震えが走る己をシエラは拳を握りしめて叱咤する。 「ディルクさんが動けないなら、ちょっと休憩しても大丈夫ですかねー? あははー」 わざと緩んだ声を出して欠伸をして、体を伸ばす。 震えそうになることも声のトーンが高くなりそうになるのも必死に抑え込む。こんな風に恐怖することは今までさんざんあった。だから今回だって。 ディルクが無意識に動いたのにシエラは短剣を握りしめた。 彼の銃口が火を噴く。 短剣で弾いてしゃがみこむ。 手がじりじりと痛む。一番恐ろしい死が迫ってきたことに体が大きく震えて腰が抜けてしまいそうだ。 ディルクが歩み寄ってきたのにシエラはぎょっとして顔をあげた。 ぽん、と頭に手がのる。 「すまん、助かった。だが二度とするな」 「あ、ディルクさん! 目が覚めたんですねっ……え、あ、はい」 ディルクが目覚めてほっとしたのもつかの間、頭を撫でられたことや謝罪に驚いたが二度とするなと言われ、眉間の皺が深く刻まれているのに気が付いてシエラは俯いた。怒らせた。 「すいません、ディルクさん」 「いや、立てるか」 怠慢を嫌う彼がこのまま座っていれば、さらに怒られると思ってシエラはふらつきながら立ち上がった。 ディルクはそんなシエラの腕をとってしっかり立つようにさりげなく支えた。 細い腕に小柄な肉体だ。 今まで二人のパートナーとしての関係は、足をひっぱれば殺す――物騒だが、そんな関係でもうまくやってきていた。 それはディルクの不器用ながら真っすぐさとそれを恐れるシエラの――シエラを以前保護していた暴力的な男を射殺し、契約時は恐怖に昏睡するというほどの強い恐れのなせる技だった。 だから。 シエラが最も恐れるものが死であることすら差し出して自分を助けたことにディルクは少なからず動揺していた。 自分のために危険を冒させてしまったという自責の念もあるが、それ以上に自分のためにシエラが動いてくれた。 どうしていいのか迷いすぎて言葉も出てこない。 ようやくたどり着いたそこにある木は人のようだった。 人間がそのまま人になったような姿だ。二メートルほどの女――彼女が口を開いて囁くように歌っている。 「燃やすのはなしだな? 一気に攻撃するか?」 ディルクがルーノに声をかける。 「それぞれの攻撃が届けば倒れるはずだ」 「あ、あのさ、悪ぃ! 声をかけたいんだけど、いいか?」 ナツキが全員を見る。 このまま破壊することはきっと容易いはずだ。けれどこのまま倒していいのかと、夢を見たナツキは考えていた。 ただ悲しみのなかでしか大切なものを思い出すことができないのはあまりにも悲しすぎる。 「ナツキ……私も声をかけたい。構わないかな?」 尋ねると全員が頷くのに、ルーノはナツキを見た。 ディルクが後方で武器を構え、いつでも飛び出せるように灯火とユーベル、シエラが待機する。 ナツキが前へと進み出る。 「なぁ、もうやめようぜ。ほんとに忘れたくないのは悲しみそのものじゃないんだろ。大事な人の忘れたくない思い出、もっと色々あったはずだろ?」 さらさらと木が揺れる。 「このままではその魔法で森が枯れてしまう。そうなる前に貴方を止めに来た」 二人の声に木は沈黙する。 そして。 どうして、どうして、どうして、悲しみでも構わない、忘れたくない、忘れたくない忘れたくない! ヒステリックな声が叫ぶ。 切実な声とともに鞭のように撓った枝が飛んできたのにナツキとルーノが武器を構えるより先に飛び出してきた人物がいた。 透明なシールドが枝を弾き飛ばす。片腕を――輝く魔女の紋章を晒したスクートゥムが二人を庇ったのだ。 「あれは……やっぱり、魔女の使い魔……!」 ユーベルが緊張した声を灯火の背後であげた。 その一瞬の隙をついてディルクが魔弾を放ち、枝を弾き飛ばす。 シエラが飛び出し木を切るのにユーベルがシエラの守りにはいり、灯火が後に続き幹を斬る。 ディルクの放つ魔弾はシエラのつけた傷をさらに深くさせる。 「あーあ、ばれちゃった。まぁいいんですけどね、まさか説得するとは思いませんでした~。うんうん、浄化師も案外、捨てたもんじゃないですねぇ」 ナツキとルーノにスクートゥムは微笑んだ。 「名前を呼んであげてください。本当はなんの魔女であったのか思い出させてあげてください」 ナツキは剣を手に取ると、大きく頷いた。 「わかった。名を呼ぼう」 ナツキが大地を蹴って飛び出す。 「うおおおおお!」 剣が煌めき、仲間たちが削った傷へと打ち込むと幹を叩き切る。 「エアル……春告げの魔女っ! 思い出してくれ!」 ルーノが声の限り呼ぶのに、倒れていく木に――悲鳴が止み、女の顔に懐かしさと愛しさが零れ落ちる。 囁くような歌声が広がる。 浄化師達は、その場で見たのは一瞬の夢――優しい花が咲き乱れ、人々が笑いあう優しい森の姿。 それは泡沫に、消える。 スクートゥムが倒れた木に近づくと、手元から小さな芽を取り出す。 「あなたたちが燃やさないでくれたおかげっすねぇ、死なずに済んだ。 もう悲しまなくていいですよ、俺の春告げの魔女、ずっと、ずっと想い続けてくれて、おつかれさま」 スクートゥムが差し出したそれをナツキが受け取った。魔法の犠牲によって枯れてしまった木々は多いが、新しい命を再び埋めてやれば、きっとまたここは豊かな緑を生むだろう。 「……さて、目的は果たせたかい?」 ルーノが口にするのにスクートゥムは微笑んだ。 「俺っちは大満足です。調べてくれたアンタたちには感謝しましょう。んで、ばれたんでー、俺っちアクイの魔女様の僕なので連れていっていいですよー。本当はこのあと色々ある予定だったんですけどぉ、教団本部に言いまくっちゃったから逃がしてくれないっすよねー? だからこの首、感謝の証にあげまーす!」 スクートゥムは教団に戻り次第、確保された。 危険分子であるアクイの魔女の居場所を吐かせ、討伐に赴いた。 結果、アクイの魔女及びその一派の業火の魔女、凍氷の魔女、呪いの魔女、毒姫の魔女の討伐に成功。 魔女との和解もだいぶ進展が迎えた世で恨みを持った危険な魔女の排斥は平和への大きな一歩となった。
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*** 活躍者 *** |
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[12] ナツキ・ヤクト 2018/11/26-22:42
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[11] ユーベル・シュテアネ 2018/11/26-21:32
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[10] ユーベル・シュテアネ 2018/11/26-21:31
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[9] ユーベル・シュテアネ 2018/11/26-21:31
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[8] ユーベル・シュテアネ 2018/11/26-21:31
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[7] ユーベル・シュテアネ 2018/11/26-21:31
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[6] ルーノ・クロード 2018/11/26-21:00
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[5] ルーノ・クロード 2018/11/25-22:34
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[4] ユーベル・シュテアネ 2018/11/25-21:11 | ||
[3] シエラ・エステス 2018/11/25-18:36
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[2] ユーベル・シュテアネ 2018/11/25-17:29 |