~ プロローグ ~ |
日ごとに気温が下がり、冬の足音がさらに近づいてきたと実感する今日。リュミエールストリートを歩く人々は厚手のコートを着たりマフラーをかけたりと、手を擦り合わせながら冷たい空気から身を守っている。 |
~ 解説 ~ |
ホットワインはアルコール分が残っており、大人向けの飲み物です。未成年は飲むことはできませんのでご注意ください。アルコールが苦手な方にもお勧めできません。 |

~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは。お久しぶりです、しらぎくです。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ふたりとも「2」を ホットドリンク、二つください 暖かな器を受け取って ありがとうと笑顔で 人だかりを抜け 少し離れたところで待っていたセシリアのところへ はい セラ、もらってきたよ 一緒に飲もう 手渡した時に触れた彼女の手の冷たさに驚く 寒かった? ごめん ストリートを歩いてみたいなんて言わなければよかった 眉を下げ 器ごとセラの小さな手を包み込む 人形、という言葉にむと口を結んで マドールチェは人形じゃないよ 柔らかな微笑みに ほっとしたような笑いを もう帰る? ライトアップ?風邪ひかない? そう言いながらも 姉のような少女が楽しそうにしているのに気づき うん じゃあもうちょっとだけ 青緑の瞳を見て にこり 肩を寄せ合って座ってドリンクを飲む |
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冬子2 メルツェル1 ホットワイン…美味しそうだけどお酒よね 飲めない…(しょぼん え?のんある? ジュースもあるの? 私はそれを貰うわ ありがとうメル いただきます ジュースの甘みに思わず頬が少し緩む …あれ メル どうしてワインも頼んでるの? お酒は成人してからでしょ? えっ成人?えっ(戸惑いの顔 …うん 私は未成年だよ 16だから……え? (微妙な空気) ご、ごめんなさい…!この話は無かったことに…!(あわあわ でもそっか メルは私が思ってるより大人なんだ …あのね まだそんなに長い間一緒にいるわけじゃないけど メルのことお姉さんみたいだなって思ってた …おかしいわよね こんな見た目の私が メルを姉のように思うなんて |
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1 酒はあんまり好きじゃないんだけど… その肴は断固拒否したいところだけど とりあえず一口飲んでみる ん?甘くて美味しい!これならいけるな! グビグビ飲んだせいで見事に酔っ払う うっうっ…リントはさぁ…いつもあの女の話ばっかりしてさあ… それで俺に自慢してるつもりなの!? 自分達はこんなに親密ですよーって? …何笑ってるんだよ! そんなに…ぐす…泣いてる俺を見るのが楽しいか…! 宥められて少しだけ落ち着く しゃくりあげながら そうだぞぉ…!アンタがどんなに言っても あの女とは絶対パートナーにはなれないんだからな… ぐすっ…ざまあ見…ぐぅ…ZZZ… 泣きついているうちに寝てしまい、運ばれて帰る もう絶対あいつの前で飲まない… |
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巡回の指令中設定 屋台の近くで飲みつつ立ち話 ヨ ノンアルのホットドリンク2つ下さい ベ (不服そうな顔 ヨ 何ですか。はいどうぞ(無視してカップ渡す ヨ 寒くなってきましたね サンディスタムは砂漠気候なので、冬らしい冬を過ごすのは初めてです ベ そういえばそうだったか。12月にはクリスマスというのもある ヨ 名前だけは知っていますが向こうでは馴染みのない文化ですね ベ ま、大事な人との団欒を楽しんだりする日だな ヨ 大事な人ですか…(考え込む ベ (しまったという顔 …パートナーも大事な人に入れてもいいんじゃないか ヨ そうなんですか ベ 恐らく ヨ んん、じゃあ、…します? クリスマスに、団欒? ベ …二人で?(目を丸め ヨ ? そういう話の流れなのかと |
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~ リザルトノベル ~ |
●赤が見つめたその温もり エトワールにあるリュミエールストリート。冬の時期を迎えたその街に、ホットワインの屋台が姿を現した。木枯らしがひゅうと鳴き、街路樹の枯葉たちをさらっていく。冷たい空気に肩をすくめた人々は、待っていました、とばかりに屋台へと歩みを進めていく。 「飲み物をもらってくる」 そう言って『リューイ・ウィンダリア』も人だかりに囲まれるホットワインの屋台へ駆け出した。そんな彼を見送るパートナーの『セシリア・ブルー』の表情には微笑みが浮かんでいる。 ウィンダリア家に長く眠っていたマドールチェのセシリアは、リューイのことを小さな頃から知っている。 (あの幼かった子が浄化師になるなんて……時間が流れるのって早いわね) しみじみとそんなことを思っているセシリアに見送られたリューイは、大盛況でごった返す屋台の注文台へとやっとの事でたどり着いていた。 「ホットドリンク、二つください」 「ホットドリンクだね。あいよ、お待ちどう!」 「ありがとう」 注文してからすぐに売り子からホットドリンクが注がれたカップを渡された。それを笑顔で受け取ったリューイは、湯気をあげるその熱い飲み物をこぼさないように、慎重に人だかりを抜けていく。そして人混みを避けて少し離れたところのベンチで待っているセシリアの元へとようやく戻った。 「はい、セラ。もらってきたよ。一緒に飲もう」 「ありがとうリューイ」 微笑みながらセシリアがリューイからカップを受け取ろうとすると、彼女の伸ばした手がリューイの手に触れた。その瞬間彼はとても驚いた表情をしたので、セシリアは小首を傾げた。 「どうしたの、急に」 「寒かった?」 リューイはカップを手渡しするときに触れたセシリアの手の冷たさに驚いたのだ。 「ごめん、ストリートを歩いてみたいなんて言わなければよかった」 その後悔のためか、リューイは眉を下げて、自分のカップをベンチに置くと、器を持ったままのセシリアの手を自分の手で包み込んだ。 セシリアの冷たい手は彼女が持つホットドリンクの器の熱とリューイの手の温もりに挟まれてじんわりと温められていく。 「ああ、それは気にしなくていいわ。私は元々体温が低いのよ。人形ですもの」 「マドールチェは人形じゃないよ」 間髪入れずに返された、少し尖ったリューイの言葉にセシリアは大きな目をゆっくりと瞬かせた。いつもは人懐こい優しげな容貌のリューイだが今は、むっと唇を真一文字に引き結び、怒りをにじませるその金色の瞳の中には悲しみの色も混じっている。 マドールチェは魔術師によって作られた魔術人形ではあるが、人間と同じように食事もするし、怪我をすれば血を流す。喜怒哀楽も表情が淡白なものも多いというが、ないわけではない。 現にリューイの前でセシリアは微笑んだり驚いたりと表情を変えている。それなのにセシリアは淡々と、まるで自分を感情を持たないモノのように言う。そのことがリューイは悲しかった。 「ふふ、ごめんなさい。後半部分は取り消します」 そう言って柔らかな微笑みを浮かべるセシリアに、リューイもほっとしたような笑いを浮かべた。そしてセシリアから手を離すと自分のカップを持って彼女の隣に腰を下ろした。 「これ飲んだらもう帰る?冷えたらよくないし」 もう尖った気配のないリューイの問いにセシリアはふるりと首を振った。 「平気。折角だもの。もう少しすると並木通りのライトアップが点灯するそうよ。見ていきたいわ」 ニッコリと微笑みながらセシリアは並木通りを彩る飾りを指差した。 クリスマスが近づいて来ているため、街はどこもかしこも華やかに飾り付けられ、ウキウキした空気が漂っている。雪だるま、星、リボン、キャンドル。並木通りのライトアップもそのクリスマスに関連した飾りの1つであり、リュミエールストリートの華でもある。 並木通りの木々には電飾が取り付けられており、日が沈んでからまもなく迎えるその時を、このリュミエールストリートにいる多くの人も期待に満ちた笑顔で見上げている。 だが日はだいぶ翳り、空のほとんどはもうオレンジ色から深い藍色に変化している。完全に日が沈んだらさらに冷え込むだろう。 「ライトアップ?風邪ひかない?」 セシリアの体を心配したリューイだが、隣に座る彼女が並木通りのライトアップ後の風景をどんな風になるのだろう、と期待を込めた様子で見上げているのを見て、彼にとって姉のような存在でもあるが楽しそうにしていることに気づいた。 「うん、じゃあもうちょっとだけ」 リューイの言葉に、並木通りを見上げていたセシリアがリューイに視線を戻した。その青緑の瞳をみてにこりとリューイが微笑むと、嬉しそうに彼女も微笑んだ。 セシリアはリューイから渡されたホットドリンクを一口飲むと、隣に座るリューイにそっと身を寄せた。夕日で伸びた二人の影法師が1つの影のようになっている。 そして、ほのかに香るドリンクの甘い香りと、赤くなったリューイの頰に笑みを零してもう一口、とセシリアはホットドリンクを飲んだ。 空に星が姿を現し始めた空の下、二人は肩を寄せ合って、並木通りに光が灯るその時を待つのであった。 ●赤に明かされ リュミエールストリートの広場にやってきた『相楽・冬子』と『メルツェル・アイン』の二人を甘い香りが出迎えた。何があるのだろうかと二人が香りを辿って視線を向けると、広場の中央にホットワインの屋台を見つけた。 今日は特別に底冷えのする日だからか、屋台には芯から温まろうとホットワインを求める人々が並んでいる。 「ホットワイン……美味しそうだけど、お酒よね。飲めない……」 しょんぼりする冬子とは対照的にメルツェルはパン、と嬉しそうに両手を叩いた。 「寒かったし、ちょうどいいですわ。トーコも飲みましょう。ノンアルコールのものもあるみたいですわよ」 「え?のんある?ジュースもあるの?私はそれを貰うわ」 冬子の言葉に嬉しそうに頷くとベンチで待つよう言ってからメルツェルは夕焼け色の髪を揺らしながら屋台へと向かって行く。やがて彼女は人ごみを抜け、ベンチで待つ冬子の元へカップを両手に持って戻ってきた。 「熱いから火傷しないように気をつけてね」 「ありがとうメル。いただきます」 メルツェルからホットドリンクを受け取った冬子はフーッと湯気を吹き飛ばし、カップを傾ける。 途端に口の中に広がる葡萄の甘さと温かさに思わず頰が緩む。そんな冬子の様子を満足そうに目を細めて、メルツェルもホットワインに口をつけた。 「いただきます……あら美味しい!」 シナモンのスパイシーな香りが鼻を抜けていく。ワインに溶け込んだリンゴとオレンジのほんの少しの酸味と甘みにメルツェルは頬に手を当てて目を輝かせた。 「うふふ、ほかほかですわーワイン飲むのも久しぶりね」 「あれ?」 メルツェルの嬉々とした言葉に冬子は首をかしげた。 「どうなさったの?」 「メル、どうしてワインも頼んでいるの?お酒は成人してからでしょ?」 外見からだとメルツェルは冬子と変わらないか、背が低い分それよりも幼い容姿にも見える。だがそれは彼女がマドールチェという種族だからであり、冬子が思うよりも実際の年齢はもっと上なのかもしれない。冬子は乾いた唇を潤そうとホットドリンクを一口飲んでメルツェルの言葉を待った。 「ワタクシ、とうに成人してます」 「えっ成人?えっ……」 メルツェルの言葉に冬子はやはりと思いながらも戸惑い、驚いて身を乗り出した。 「トーコは確か未成年ですわよね?ニホンは……20から成人だったかしら?」 そんな冬子にクスリと小さく笑うと、ホットワインを一口飲んでからメルツェルは質問した。 「……うん。私は未成年だよ。16だから」 「……えっ?」 冬子の実年齢を聞いたメルツェルの動きが止まった。 「……え?」 釣られて冬子の動きも止まる。そしてお互い同じ疑問符を頭に浮かべながら顔を見合わせ、二人の間に微妙な、気まずいような空気が流れる。ひゅう、と風が吹き、まだ残っていた街路樹の葉が弧を描いて舞った。 「ご、ごめんなさい!この話はなかったことに……っ!」 その空気に耐えられなかったのか、冬子が沈黙を破った。頭を下げて謝る冬子にメルツェルも慌てた。 「あ、謝らないで!マドールチェであるワタクシこそ、見た目で判断するなど不覚!とりあえずこの件は流しましょう。いいですわね!?」 メルツェルの迫力に冬子はコクコクと頷いた。 そしてお互いの気持ちを落ち着かせるように、2人はホットドリンクを無言で飲んだ。 「でも、そっか、メルは私が思っているよりも大人なんだ」 チラリと、冬子は隣でホットワインを飲むメルツェルに視線を向けて呟いた。まさか成人済みだとは、と意外な事実に冬子は驚くと同時に、彼女のしっかりしたところや自信家な部分についてやはり、と納得できるような気がした。 一方、メルツェルもまた、冬子の年齢に考えを巡らしていた。冬子は成人してはいないともともと思っていたが、見た目から想像していた年齢よりもだいぶ若かったため驚いてしまった。 (やっぱりこの子はワタクシが思うより幼い。大丈夫ですわ、ワタクシが守ります) そんな決意を密かにしているメルツェルに、冬子はおずおずと話しかけた。 「……あのね、まだそんなに長い間一緒にいるわけじゃないけど、メルのことお姉さんみたいだなって思ってた。……おかしいわよね、こんな見た目の私が、メルをお姉さんのように思うなんて」 冬子が視線をカップのホットドリンクに落とすと、濃い赤紫色に自分の姿が写っている。 冬子はツリ目が原因でキツイ性格だと周囲の人に誤解されることがある。感情表現も苦手で、中でも人とのコミュニケーションに一番大切とも言われる笑顔が苦手だ。 でもメルツェルはその反対で。彼女は自信に満ちた表情、言葉、仕草を自然に表すことができる。なにもかも冬子と正反対な彼女は冬子にとって眩しく、憧れなのだ。 「いいえ、ちっとも思いませんわ」 メルツェルはベンチの上にカップを置いて冬子の手を握った。 「あなたはとても魅力的で、素晴らしい女性ですわ。その謙虚なところも素敵ですけれど、もっと自分に自信を持ってくださいな」 「メル……」 まっすぐ見つめてくるメルツェルの金の瞳に、自信のなさそうな冬子の顔がみえる。 「だって、あなたはこの最高傑作たるワタクシのパートナーなんですもの」 メルツェルは立ち上がると大きな片目を瞑ってウインクをした。 「それに、ワタクシ、アナタの世話を焼くの好きですから」 微笑んだメルツェルがいつものドヤ顔で言うので、冬子はどこかくすぐったいような、嬉しい気持ちがこみ上げて来てはにかんだ。二人はリュミエールストリートを行き交う人々を眺めながらベンチで温かなひとときを過ごすのだった。 ●赤に惑いて 「わぁ、ホットワインだ。寒いから飲んでいかない?」 リュミエールストリートにできた人だかりの中央にあるホットワインの屋台を見つけ、『リントヴルム・ガラクシア』はパートナーの『ベルロック・シックザール』を振り返った。 「酒はあんまり好きじゃないんだけど……」 リントヴルムの提案にベルロックは渋い顔をした。 「アルコールが飛んでいるから、お酒に弱いベル君でも飲めると思うよ」 アルコールが飛んでいる、という言葉と、やはり寒かったのでベルロックは、「それなら……」とリントヴルムの誘いに乗ることにした。 「というわけで、今日もマリー捜索の話題を肴に一杯飲もう!」 「その肴は断固拒否したいところだけど……」 どう考えても陽気に飲める肴にはならない、とベルロックが困惑しているうちにリントヴルムは屋台へと飛んで行き、しばらくして二人分のホットワインを持ってきた。 「はい、ベル君のは蜂蜜を多めに入れて貰ったよ。僕のはシナモンたっぷりにして貰ったんだ」 リントヴルムからカップを受け取り、ベルロックはホットワインの匂いを嗅いでみた。カップから立ち上る湯気の中にほんのりとアルコールの匂いを感じ取ったベルロックは飲むのを少し躊躇った。 しかしせっかくリントヴルムが持ってきてくれたのだし、彼曰くアルコールも飛んでいるというのだから、ベルロックは勇気を出して一口飲んでみた。 「ん?甘くて美味しい!これならいけるな!」 やはりアルコールが飛んでいるのか、お酒のように飲んだあとカッと体が焼け付くような、炎が走る感覚はない。また、蜂蜜を多めに入れて貰ったことで、ワイン特有の渋みと苦味も感じられず、フルーツの甘みと蜂蜜の甘さがそれよりも優っていて、まさにこれは葡萄ベースのホットドリンクと言った感じだ。 ベルロックは美味い美味いとカップを傾けてグビグビとホットワインを飲んで行く。 「ちょ、ベル君、そんなハイペースで飲んで大丈夫……?」 実はホットワインは加熱するものの完全にアルコールが飛ぶ飲み物ではない。沸騰させてしまうとアルコールと共に葡萄の芳醇な香りも飛んでしまい、渋みだけが残って不味い代物と化すのだ。そのためホットワインにはアルコール分はどうしても残ってしまう。 そしてリントヴルムの心配は的中した。 数分後、顔を真っ赤にして出来上がったベルロックの姿がそこにあった。 「あわわ、こんな弱いお酒で酔っちゃうんだ?!」 リントヴルムは、アルコール分のだいぶ薄まったこのジュースのような飲み物でさえベルロックは酔ってしまうのだとは全く想像していなかった。 この程度で酔ったら面白そうだという、ほんの少しの悪戯心はあったけれど。 「うっうっ……リントはさぁ、いつもあの女の話ばっかりしててさぁ……それで俺に自慢しているつもりなの!?自分たちはこんなに親密ですよーって?」 (しかも僕じゃなくてマリーに嫉妬してる?あれ……なんか、ちょっと嬉しいぞ) ベルロックの意外な本音に、思わずリントヴルムの頰が緩んできた。 「何笑ってるんだよ!」 頰を緩めるリントヴルムに、ベルロックが真っ赤な顔で睨みをきかせる。だがベルロックはアルコールのせいで頭がぼんやりとするのか、目もとろんとしていて必死に目を覚まそうと頭を振ったり頰を叩いているが、全く効果はないようだ。 (やだ、やっぱりベル君可愛い。嘘でしょ?この俺がマリー以外にこんなこと思うなんて) 「リント……またあの女のことを考えているな?」 マリーとは2人に共通する因縁の女性で、リントヴルムにとっては初恋の、ベルロックにとっては憎い相手で、行方をずっと追ってきているのだ。 ベルロックの鋭い指摘に驚き、そして嫉妬の色を隠さない彼の言葉に、リントヴルムの頰はさらに緩んでしまう。 「そんなに……ぐす……泣いている俺をみて楽しいか……!」 嬉しさに頰を緩めるリントヴルムを誤解してか、ベルロックは顔を赤くして涙をぼろぼろに流し、胡乱な目でリントヴルムをにらみ、叫ぶ。ほかの客や通行人は何事かと思いながら視線を向けてくる。 (とりあえず宥めよう。このままだとご近所迷惑になるかもだし) リントヴルムは背中を丸めて涙を流し鼻をすすっているベルロックを抱きしめた。 「はいはい僕のパートナーは君だけだよ」 リントヴルムはそう言うとベルロックの背を優しくポンポンと叩いた。 すると落ち着いてきたのか、上下に叩きつけるように動いていたしっぽの動きも緩やかになっている。 「ヒグッ……そうだぞぉ……!アンタがどんなに言っても……ゥッ、あの女とはパートナーになれないんだからな……ッ」 「そうだねぇ……だって僕のパートナーには、もうベル君がいるもんねぇ」 しゃくり上げるベルロックにリントヴルムが答えた。事実、その通りなのだから。 「ぐすっ……ざまあ見……ぐぅ……ZZZ……」 やがて、ベルロックは泣き疲れたのかいびきが聞こえてきた。 「寝ちゃった……全くしょうがないな、部屋まで送るよ」 苦笑してベルロックを背負うと、リントヴルムは教団へと戻った。 翌日、目を覚ましたベルロックが周囲を見回すと、そこは見慣れた自分の部屋だった。 (確かリントとホットワインを飲んで……) 二日酔いのせいか重い頭痛に眉をしかめながら記憶をたどっていく。 「もう絶対あいつの前では飲まない……」 そして思い出した記憶に大きなため息をついたベルロックは、そう固く決意するのだった。 ●赤が結ぶ約束 エトワールでの巡回をしていた『ヨナ・ミューエ』と『ベルトルド・レーヴェ』の二人はリュミエールストリートに差し掛かると、ふわりと鼻をくすぐってきたワインの香りに足を止めた。 「美味しそうですね」 興味を惹かれた風に呟いたかと思うと、ヨナの姿は忽然とベルトルドの前から消えていた。 「ノンアルのホットドリンク二つください」 「あいよ!ノンアル2つ!!はいおまち!」 聴覚の優れた黒豹のライカンスロープであるベルトルドの耳に、ヨナと売り子の声が聞こえてきた。どこへ行ったのかとおもったが、彼女がいつのまにかホットワインの屋台に並んでいたことを知り、ベルトルドは相変わらずのヨナの無鉄砲さにやれやれと頭を掻いた。 やがて涼しげな表情でホットドリンクを2つ持ったヨナが現れ、いきなりいなくなったことを責めるようにベルトルドは不服そうな顔をして鼻にしわを寄せた。 「何ですか、はいどうぞ」 しかしヨナはそんな彼の様子を無視してカップを手渡してくる。ベルトルドも不服そうな顔をしながらもちゃんとそれを受け取った。 共に成人済みの二人であるが、職務である巡回の途中でもあったことから、ヨナはノンアルコールを選択したらしい。ホットドリンクからはアルコールの香りはしなかった。 二人は人だかりが増えてきた屋台から離れ、花壇の前へと移動した。ベンチは埋まっているため、二人は立ったままで休憩を取ることにした。 「寒くなってきましたね。サンディスタムは砂漠気候なので、冬らしい冬を過ごすのは初めてです」 ヨナの故郷であるサンディスタムにも冬はあるが、砂漠気候のため乾燥しており、気温は下がるけれど雪は滅多に降らない。だから雪の結晶を模した紙細工のガーランドや、マフラーと帽子をつけた雪だるまなどが町のあちこちを飾っている華やかな景色は新鮮に感じられた。 サンディスタムほどではないが、それでも冷気は堪えるものだ。白い頰と鼻の頭を赤くしたヨナは、カップを両手で持って、まだ熱いドリンクを少しずつ飲んだ。シナモンが効いた温かなそれは冷えた体を芯から温めてくれる。 「そう言えばそうだったか。12月にはクリスマスというものもある」 「名前だけは知っていますが、向こうでは馴染みのない文化ですね」 ヨナはベルトルドの言葉に頷くと、リュミエールストリートのクリスマスツリーを見上げた。この活気づいている空気はそのクリスマスという行事のためでもあるのか、と思いながらまた一口ホットドリンクを飲む。 「ま、大事な人との団欒を楽しむ日だな」 「大事な人ですか……」 ベルトルドの言葉にヨナは考え込むように俯いた。それを見て「しまった」とベルトルドは慌てた。家族や友人がいる故郷を離れて過ごすヨナにとってはあまり触れられたくない話題だったかもしれない。 「……パートナーも大事な人に入れてもいいんじゃないか?」 「そうなんですか?」 「恐らく」 付け足されたベルトルドの言葉にヨナはしばらく何かを考えているようだった。 「んん、じゃあ……します?クリスマスに、団欒?」 「二人で?」 意外なヨナの申し出に、ベルトルドは緑色の目を丸くした。 「?そういう話の流れなのかと」 ベルトルドの反応が予想外だったのか、ヨナは首を傾げた。 パートナーを大事な人に入れてもいい、とベルトルドは言った。だから、ヨナはクリスマスという行事はパートナーであるベルトルドと過ごすものだと思ったのだが。 「……ところで飲まないですか?冷めてますよ」 ベルトルドの、その意外そうな反応に何だか気まずくなったヨナは話題を逸らした。 それにベルトルドのカップのホットドリンクからは湯気がもう立っていない。せっかくの温かい飲み物がこれではやがて普通の冷たいジュースになってしまう。 「冷ましていたんだ」 「あ、そうでした」 その言葉にベルトルドが猫舌だと言うことを思い出したヨナは、普段は大雑把なところもある彼が、わざわざドリンクが適温まで冷めるのを待っていたことが何だか微笑ましく思えて。なんとか笑いを堪えようとしたのだが、こらえきれずに肩を震わせた。 そんなヨナに構わず、ようやく彼にとっての適温になったのか、ベルトルドはホットドリンクの温度を慎重に、確かめるようにゆっくりと口をつけた。 「しかし、ヨナにクリスマスを祝うつもりがあるとは」 ちゃんと適温だったのか、グビ、と一口飲んでからベルトルドが心底意外そうに言ったので、ヨナは驚いてベルトルドを見上げた。 「え、全員参加という訳ではないんですか?」 「人によりけりだな」 「そういうことは先に……あっ、だからさっき変な顔したんですね」 後から出てくるクリスマスに関する情報の数々に、ヨナはもう「クリスマスに団欒しよう」と提案した言葉を撤回をしたい気持ちになり掛けていた。 「いやいやせっかくその気になったんだ。気の利いたことは思いつかないが俺たちなりに楽しむか」 ははは、と豪快に笑うベルトルドの白い息が冷たい空気に紛れていく。 「……ベルトルドさんがそういうなら、し、仕方ないですね」 つん、とそっぽを向いたヨナのその声には怒りが混ざりつつも、照れたような表情は何だか嬉しそうだ。 「ではお互い予定は空けておくということで」 「ああ」 ほんの少しウキウキが混ざったようなヨナの言葉に頷くと、ベルトルドはカップの残りを一気に飲み干した。 そして二人は屋台にカップを返却すると、クリスマスの準備が始まり、色とりどりに飾られたリュミエールストリートの雑踏へと紛れていった。 クリスマスまではもう少し時間がある。どう過ごそうか、とあれこれとお互い考えながら。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[5] ヨナ・ミューエ 2018/11/28-19:41
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[4] ベルロック・シックザール 2018/11/27-21:35
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[3] 相楽・冬子 2018/11/26-17:15
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[2] リューイ・ウィンダリア 2018/11/25-22:10
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