~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティ、薔薇十字教団司令部。 |
~ 解説 ~ |
・概要 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、駒米たもと申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【目的】 敵の殲滅 【行動・心情】 事前に「簡易救急セット」の消毒液に「簡易工具箱」に入ってるネジや釘を中にいれて簡易クラスター爆弾を作っておかなきゃ 銃の火薬で消毒液に引火させ釘を飛び散らせるつもりだけど 人間ならともかくベリアル相手には多分効かないわよね 人質が居ない状態なら物陰に隠れ暗殺する方向で行くわ 〔リングマーカー〕で命中率を上げて 部位狙い『喉』で狙い狙撃してみようかと思うわ 人質が居た場合は背中から奇襲をかけるわ この時も攻撃はさっき言ってた通りよ 引き剥がし次第簡易クラスター爆弾を女性に投げて撃つわ 女性を倒し次第スコアと一緒にベリアルを倒しに行くわよ スコアにベリアルの魔法陣を探させないと |
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いかれてやがる。 ベリアルを進化させないためにまず人を逃がさなきゃならん。俺はすぐにベリアルと交戦。DE8で守りを強化、DE6で奴を引き付け続ける。尻尾は早いとこ切り落としたいな。 その間にラファエラが人々を避難させる。 信号拳銃でベリアルの上に赤い信号、そこから離れる一番広そうな方向へ青い信号を撃ち、本番用マイクで「青い方に逃げて」と誘導するだろう。 避難が軌道に乗ったらいくらか高い所に行って、そこからDE9とDE6で敵を遠くから撃ってもらう。 ベリアルか信者のどっちを撃つべきかはその時に判断してもらうしかない。 |
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ニオくん、どーどー ちゃんと役目を果たさないと 避難誘導 青い煙を確認後、青い方へ行くように誘導 万が一住民が迷わないようにかつ 必要以上にベリアルをひきつけないように 練習用マイクで適度避難場所へ誘導 状況に応じてニオが囮になった際は ニオに代わり殿へ 逃げ遅れた者へ付き添い避難場所まで まぁ怖いよね でもだいじょーぶ おれ達が体張ってでも守るから だからさっさと逃げようね 避難完了後はニオやほかの仲間の援護へ 人形で主に足元を狙い攻撃 攻撃時はなるべく仲間とタイミングを合わせて 女信者が避難中の住民を人質に取ろうとした場合 人形で攻撃 おばさん、おれ元々そういうことしてたんだよ ニオくんじゃないだけマシだと思ってね? |
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処刑しなければベリアルが手に負えなくなる 状況を天秤にかけ 禁忌魔術を止めないならば速やかに女信者の抹殺 共通 女への足止め 女信者を戦闘不能にしたのちベリアルの討伐へ加勢 ヨナ 人質がいれば交代を申し出る ベルアルに食らわせるのなら強い魂の方が良いでしょう? 仲間の不意打ちを待ち まだ息があるなら攻撃に転じ近距離からFN11 禁忌魔術を完成させない為 手は緩めない ベルトルド 私情は挟まず被害を最小限に抑える それが俺達のやる事だ しかしヨセフ室長がよく思い切ったな それ程にサクリファイスという組織が脅威になっているとは 人質が確保出来れば安全圏へ連れていき 交代に時間がかかるようなら隙を見つけ多少無理やりにでも奪還 |
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~ リザルトノベル ~ |
●到着 上天に太陽が差し掛かる時間になっても、灰色の冬雲はぼんやりと空を霞ませたままだった。子供たちの歓声。寒さ避けの毛糸帽子。手を繋いで昼食を求める家族連れ。かき分けるように黒が混じったのは、その頃だ。 公園の入口に現れたコート姿に、あちこちから好奇の視線が飛んだ。通り過ぎていく教団服の一行に声をかける者はいない。伝わる緊張感や怒気を無意識のうちに感じとったのだろう。口を閉ざしたまま道を開け、何事だろうと囁きあった。 「この公園か」 群衆に紛れた異物を炙り出すように『ベルトルド・レーヴェ』の鋭い視線が走った。 「そうだ。この道を、まっすぐ行けば、中央広場に、出る」 ここまで案内役をかったレヴェナントの男が頷く。急行したためか答える息がきれている。まっすぐ前へと向けた人差し指の先には、遠く天頂を出した常緑樹の緑が重なっていた。 「思っていたよりも人が多いですね」 お祭りですから仕方ありませんが、と『ヨナ・ミューエ』が整った眉をひそめた。ここまで駆けてきた事実など微塵も感じさせない。たおやかな足取りのまま中央広場へ向かって歩きだす。 「こんなところで魔術を発動させようってか」 いかれてやがる、と。『エフド・ジャーファル』が囁くように吐き捨てる。精悍な顔に動揺の色はない。しかし苛立ちを表に出すことの少ない彼が感情を吐き出した事実こそ、手段を選ばないサクリファイスの卑劣さに怒りを感じている証左だった。 「おじさんの意見に同感ね。まったく」 隣を歩く『ラファエラ・デル・セニオ』もまた、苦い顔を隠そうとはしない。言葉途中で半歩ほど体をずらした彼女のすぐ傍を、じゃれあって遊ぶ姉妹が通り過ぎた。 「邪教の徒め……!」 「ニオくん。どーどー。まだ何も起こってないから」 それもそうだな、とコホンと小さな咳払い。 「女が見ていたのはクリスマスツリーだったか」 「とにかく中央広場に行ってみよーよ」 『ニオ・ハスター』が強い意志をこめた瞳で遠くに見える目標を見定めれば、頭の後ろで腕を組んだ『カリア・クラルテ』が飄々とした表情のまま頷いた。 「何も無ければいいけど」 ふわ、と欠伸混じりで『スコア・オラトリオ』は後に続こうとしたが、隣にいるはずのパートナーの姿が見えないことに目を瞬かせた。視線をさまよわせれば、物売りテントの前に見覚えのある赤い髪が揺れている。 「何してるの?」 「何って、ただの買い物よ?」 小さなホットワインの木杯を『リロード・カーマイン』は振ってみせる。軽い足取りでスコアの横へ並ぶと悪戯じみた笑顔で片目を瞑ってみせた。 「せっかくのクリスマスマーケットなんだもの。ホットワインを飲んだってバチは当たらないでしょう」 スコアは呆れたように視線を下げると長い溜め息を吐いた。 「で、収穫は?」 「全然ダメね。信者の女について、情報があればと思ったんだけど」 リロードの横顔に壮絶な笑みが浮かぶ。 「いいわ。弱味は後から見つけるから」 「しっ。今、何か聞こえたよね」 周囲を包んでいた小さなざわめきが静まりかえる。遠くで悲鳴が響いた。 ●判断 走りながらテントの合間を抜けると、唐突に開けた場所に出る。 所々枯れた芝。見通しの良い広場の中心に尖塔のような樅の大樹が立っている。その根元には巨大な体躯を持ち上げる獣の姿があった。 鼠だ。それも巨大な。 色彩鮮やかな贈り物を前脚で無残に踏みつぶし、棍棒のような太さの尾を振り回している。潰れた顔をあげると亡霊のような声で空へと啼いた。 混乱が始まった。逃走は濁流のように人を動かす。何人かが倒れ 、躓き、嵐のような喧噪が広場を覆う。 「遅かった……?」 「いや、樹の根元を見ろ」 呟くヨナにベルトルドが答える。 遠く、遥か視線の先に女の姿をとらえた。ベリアルの近くに居ながら逃げる素振りすら見せない白服の異端。 痩せた手から放られた瓶がまた一つ、地面へ転がる。 「口寄せ以外、まだ発動していない」 「でも定式陣はほぼ書き終わっているわ。それに、あれ、不味くないかしら」 スコアの沈黙とリロードの舌打ち。標的と思わしき女の足元には倒れ伏した子供の姿がある。 「奇襲は、可能ですか?」 一刻の猶予もない。ヨナからの問いかけにリロードの瞳が思案に沈む。 「可能ね。ただ人質との距離が近すぎる。大がかりな物だと巻きこんでしまうわ」 「ならば私が囮になります」 淡々と告げるヨナにリロードは目を丸くした。 「彼女、本気?」 リロードはベルトルドに尋ねた。輝く緑の双眸が動じずヨナを肯定する。 「いつものことだ」 「そう」 真紅の眼差しが挑戦的に輝き、赤い舌が唇を舐めた。 「ならアタシも失敗できないわ。ねぇ、スコア?」 「どうしてそこで僕に振るのさ」 寝ぐせの抜けない銀髪が顔をあげる。 「でも、そうだね」 動かない子供。サクリファイスという宗教の思想。魔術。 「失敗できないってのは、同感」 ベリアルを見てパニックを起こす者。 何が起こったのか分からず呆然とする者。 親を見失い、涙を浮かべる迷い子。 「ならば住民の避難は、自分たちが引き受けます!」 「ニオくんもこう言ってるし、任せといてー」 胸に手を当てたニオの隣でカリアが手を振る。 「私は安全な避難経路を探してみる。その間、おじさんはベリアルの足止めをお願い」 ラファエラは腰に差していた二丁の信号拳銃を引き抜いた。 「赤の信号弾が見えたら、そこが戦場よ。ベリアルから離れた、一番広い道の上で青の信号弾を打つ」 「逃げ遅れている人や怪我人は、青の信号弾の方へ誘導すれば安全ということですね」 ニオとラファエラが互いに頷き合う。思いは一つ。自分のできることを全力でやり遂げるまでだ。 「俺の担当は決まったな」 エフドの手元に魔力が収束し巨大な魔方陣が現れる。 鉄壁の守護。不動の城塞を彷彿とさせる巨大な鎌を手に、エフドはベリアルへと視線を送る。 「それでは、行きますよ」 ヨナの声を合図に、浄化師達は三方へ散会する。 ●避難誘導 混乱が伝播する。 逃げろと告げる本能に反した眼が、近づく恐怖を視認する。 『……エ、サ。エサ』 ベリアルの耳が立つ。巨大な尾が嬉し気に揺れる。 本能のまま、ベリアルは駆けた。あちこちで悲鳴が聞こえ、一番大きな声に向かって巨体は突進した。 「どういうことだ?」 人の多い方ではなく、悲鳴の大きかった集団へ向かったベリアルにニオは首を傾げる。近くには親とはぐれた女の子が泣き続けている。焦る気持ちを覆い隠すと安心させるように抱き上げた。 「ベリアルは、悲鳴が大きい方へ引き寄せられているわ!」 ベリアルの行動を分析していたラファエラが叫ぶ。 足の弱い者や子供を支えるニオの元には助けを求める大勢の人が詰めかけていた。カリアも話しかけてくる住民を落ち着かせ、必死に誘導をしているが捌ききれていない状況だ。自然と、彼らの周りには悲鳴が多く集う。 「悲鳴、か。ならば話は早い。カリア、彼女を頼む!」 「おっぷ、早く戻ってきてよねー」 緊張感の欠けるのんびりした声色。子供を託されたカリアは走り出す金髪の後ろ姿を見送った。 ベリアルが間近に迫る。まとまり始めていた列が脆く崩れはじめた。自分の数倍はあろうかという巨体が近づいてくるのを見ながら、カリアは笑みを崩さない。 「まぁ怖いよね」 腕の中で震える少女の背を叩き、落ち着かせるように言葉を選ぶ。 久しぶりの地面の感触に少女は戸惑った。 「でもだいじょーぶ。おれ達が体張ってでも守るから」 言葉に嘘はない。ニヤニヤ笑いを崩さず、飄々としたまま少女に背を向ける。託されたのは子供だけではない。住民を逃す、殿という役目。両の指から魔力で編まれた糸が踊り、南瓜や蕪の頭を持つ人形たちが盾のように周囲を囲む。 「だから、さっさと逃げようね?」 「いやっ、来ないで!」 『ギイ?』 「んっ?」 カリアは声の主を探した。 離れたところで木霊した悲鳴。 美味しく、弱く、生命力にあふれた声が戸惑っている。声を求めたのはベリアルも同じであった。 人形に囲まれたカリアの目前で立ち止まる。 再び『本番用』と書かれたマイクが口元に近づいた。さくらんぼのような口から飛び出すのは可憐で怯えた少女の声。 「怖いっ」 ベリアルの狙いが自分へと移ったことを確認し、ニオは心労と自嘲の交じった笑みを浮かべた。 「我ながらよくもまぁ、こんな声が出る」 マイクを離したニオは走り出した。背後を振り返れば速さの違いか。ベリアルの巨体はすぐに追いつく。 ニオは前方に灰色の姿を見た。ラファエラの手にはマイク。そして彼女を守るように立ち塞がるのは体躯ほどもある巨大な鎌を持ったエフド。 「ここまで来てくれれば充分よ。私の声も届くはず」 マイクを通した悲鳴が広場に響き渡る。ベリアルが次の獲物の位置を把握した。 「さぁ、追いかけっこはおしまい。後は任せたわよ、おじさん」 「了解だ。俺が倒れる前に戻って来い」 「あら、こんな時に冗談が言えるのね」 空に打ちあげられた信号弾。赤い煙が空にたなびく。 地では巨大な鎌が回転し風が巻き起こる。エフドは死神のようにベリアルの前へと立ち塞がった。 ●人質交渉 「おばさん」 壊れたプレゼントの中に女はいる。人々が逃げまどう中で、この女だけは広場から動こうとはしない。年輪のような皺だらけの顔に不似合いな赤い口紅。生きたまま干からびた顔をした、年嵩の女が顔をあげた。 「おや、まぁ。良いものが来た」 女は手を止め、スコアへ微笑む。 「この前のあれは質が悪かったからね、仕方なく絵の具にしたけれど、今回は使えそうなのが来た」 サクリファイスの信者は無感動な目で空き瓶を見ると立ち上がった。 足元には鉄錆色をした魔方陣が描かれている。 レヴェナントの男が「危険」と言っていた意味を三人は理解した。 これは人間を生き物とは思っていない。家の隅にたまった邪魔な埃と、同じ目を向けている。 ヨナとスコアは女から目を逸らさない。いかに激昂させず、意識を此方に向けようかと頭を回転させる。女の手には瓶に代わって包丁が握られていた。もう片方の手には幼い少年の頭。ベルトルドの耳は少年の呼吸音を確認していたが、同時に、それがいつまでも安心できる状況ではないと理解していた。 書き終えた魔方陣が禍々しい姿を横たえている。 「人質なら私にしなさい。ベリアルに食らわせるなら強い魂の方が良いでしょう?」 ヨナが一歩、進み出た。意識を失っているのか。子供は髪を掴まれ持ち上げられても動く様子を見せない。 おかしくてたまらないといった様子で女は笑う。 「あはは、何とも勿体ないことだ」 「勿体ない?」 訝し気なスコアの質問に、女は嬉しそうに微笑んだ。折れそうな指が真っ直ぐヨナへと向けられる。線をなぞるように横へ滑りベルトルドの前で止まった。 「あんたは、いいや。あんたたちはきっと……っ!?」 興奮気味の言葉は途中で途切れる。女が外へと、意識を逸らしたのだ。 パラパラと金具の雨が降る。大樹の陰に隠れていたリロードが工具箱から取り出した釘を放り投げたのだ。 女が気を逸らした隙をベルトルドは逃さなかった。閃光のような身のこなしで女の元へ駆けると女の腕から意識のない子供の身体を奪い取る。 「畜生!」 女は迷わずに詠唱を始めた。魔方陣に光が奔り魔力が噴出する。 「させないわよ」 釘を投げた腕を支柱に、黒い銃口が狙いを定める。 「ここからなら、流石に避けられないでしょ」 リロードのブロンズライフルが、女の額に黒々とした穴を開けた。 仰向けに倒れた女の目に光は無い。機能を果たせなかった魔方陣が光を失い、元の地面へ戻る。 「その子、大丈夫?」 「命に別状はないが、頭を強く打っているようだな」 小さな発射音と共に空に青色の煙が流れた。 「この子を安全な場所へ」 「分かっている。応急処置が済んだらすぐに俺も合流しよう」 「ベルトルドさんの腕なら安心ですね」 子供を背負ったままベルトルドは力強く頷いた。 ●戦闘 世界が無音となる。集中。狙いすまされた一射。ラファエラの蒼穹は正確無比に標的の眉間を貫いた。 ギイと鳴いて頭を振るベリアル。長い尾が鞭のようにしなり、地面を抉った。 「効いてるけど」 飛来した礫を受けた前方の鎌がぐらりと傾ぐ。前衛で一人、ベリアルの打撃を受け続けてきたエフドが肩で息をしていた。 「おじさん!」 「平気だ」 走り寄ろうとするラファエラを、エフドは手で制する。 「あの尻尾が邪魔だな」 話を逸らすように向かう視線の先。無秩序に動く蛇のような尾を、ラファエラも睨みつける。 「どうしたものかしら」 「斬ってみましょうか」 ヨナの胸元に霞月が浮かんだ。穏やかな乳白色の光は魔術書の表紙を柔らかく照らす。 紡がれる魔力が編むのは荒れ狂う風。圧縮された数多の風刃が暴風となり解き放たれた。 「同感」 木の杖にスコアの魔力を帯びた風が纏わりつく。 指揮棒のように振り下ろせば、追う暴風が五線の刃となりベリアルの体表に傷をつけていく。 「お待たせ」 「リロードさん」 隣に並んだリロードに、弓をつがえながらラファエラは問う。 「サクリファイスの信者は?」 「終わったわ」 「……そう」 陰ったラファエラの顔からリロードは目を逸らした。 「それよりも、今は目の前のベリアルを倒さなきゃね! スコア、魔方陣はあった?」 「ちょっと待ってよ。頭上、胸元、右側部、左側部、脚。他に視認していないところは……」 小柄な体格が災いしたのか。鳴動する地に足をとられ、ぐらりとスコアはバランスを崩す。否、バランスを崩したように、地に伏せた。手をつき、低くなった視界を持ち上げた。 「腹部に光が見えた気がするけれど確実とは言えない!」 「見えるようにすればいいんだな」 発勁。芝が散り、紅が走る。飛び込んだ懐より、狙うは巨獣の顎。鳴らすは踏鳴。掌底、短打。 抜けた衝撃が頭蓋より大気を震わせる。 逃さぬとばかりに舞うのはカードの刃。疾風と化し巨鼠の尾を切断する。 悲鳴を上げてのけぞったベリアルの上半身、その腹部には淡く光る魔方陣が刻まれていた。 風に撓んだ魔力糸。南瓜頭が滑空し、陣へと鈍い打撃を与えた。 ベルトルドの横に、カリアとニオが並ぶ。 「皆様、遅くなって申し訳ありませんでした」 「避難終わったよー」 誘導と応急処置が終わった三人が戦闘へと加わった。それぞれに疲労の色は見えるが、目に宿る戦意は衰えていない。 『ギ、キィー!』 断末魔。エフドは重心を落とした。自暴自棄に至った殺気を纏い鼠型のベリアルはエフドを食らわんと大きく顎を開ける。 『ジャマ、ダ!』 憎い。憎い。小さい癖に食事の邪魔ばかりする餌が憎い。 憎い。憎い。自分の邪魔をした、目の前の、魂が憎い。 「ほう、そうか」 ベリアルは殺意を込めた爪を振りかぶる。 「奇遇だな。俺もだ」 ベリアルへ飛び込み、エフドは相手の腹部へ曲刃を叩きつけた。 弾き飛ばされるように飛んだ巨体は砂となり、やがて芝の土に埋もれるように消えていった。 ●アフター ラファエラは物言わぬ女を見下ろしている。 レヴェナントの男は転がっていた瓶だけを拾い、さっさとどこかへ行ってしまった。今頃墓でも作っているのだろうか。 鎮魂の黙祷を捧げる気にもなれず、ラファエラはじっと、穴の開いた額を見つめていた。 「分かってる。分かってるわよ」 呟きながら、ラファエラは己の身体を抱きしめる。 恐れているのだ。行く先を。選択を。悔恨の情すら湧いてこない自分自身を。 こいつは大勢の罪もない人を殺めようとした。だから死んで当然だと思う自分が、酷く、恐ろしい。 死体の傍でエフドもまた、黙考する。 人は死ぬものだ。弱者ほど早く消えるものだと、学が無い自分でも知っている。 生まれた時から生命の淘汰はエフドの身近で行われていた現象だ。だから殺人を命じられても頭では理解できる。 できた、つもりだった。 「ベリアルを倒し、禁忌魔術も止められた。幸い、大きな怪我人も出ていない」 認められたと安堵した。ようやく自分の居場所を見つけたと思った。 確固たる足場であった場所が揺らぐ。心に残る一点の淀みが、疑念が、内面に広がっていく。 本音を覆い隠し、エフドは告げた。 「万々歳じゃないか」 樅の木には沢山の残骸が転がっている。 リボンの海に座り込みながらヨナは考える。 「あの時、彼女は何と言おうとしたのでしょう」 『浄化師は強いベリアルになって沢山の人間を殺してくれる』 聞こえる声は幻聴。けれど、全て終えたというのに眩暈が止まらない。 「他種族と歩み寄る事は出来たのに人間同士が争うなんて、皮肉なものですね」 ヨナは目を伏せる。 「宗教以外に、彼女を救うすべは無かったのでしょうか」 「思想だけなら自由にすればいいが、他者の運命を決める権利はどこにもない」 幹に背を預け、答える声は低く優しい。あれだけの騒ぎであったが奇跡的に死傷者はいない。いや、奇跡などではない。ベルトルドの応急処置によって一命を救われた者もいる。例え神だとしても、他人を害する権利など、どこにも無いのだ。 「俺はもう一度怪我人の様子を診に行く。お前はどうする?」 ベルトルドを見上げ、ヨナは差し出された手を取った。 「私も、お手伝いします」 「助かる」 「ベルトルドさんって意外とマイペースですよね」 「……そうなのか?」 「はい」 俯いた肩が僅かに震えている。 不器用な黒豹は困ったように頬を掻き、細い手を握った。願わくば彼女がこれ以上傷つかないようにと願いながら。 「敵も殲滅したことだし! 勝利の美酒は気持ちがいいわねー!」 「また飲んでるし」 ぐったりとしているスコアの肩にリロードは手を置く。 「スコアもお疲れ様」 「別に疲れてはいないよ。曲作りの合間の良い休憩になったし、外に出るのは題材探しにもなるし」 笑い声。ほっとした表情。寒い冬空に白い息。 「こういうのも、悪くないかなって」 「そうね。作曲ばかりじゃ肩こっちゃうわ……って、体冷えてるじゃない!」 「いや、別に」 「いいから、いいから。温かいとこに移動しましょう」 「いや、べつに」 服に土をつけ、リロードに引っ張られて行くスコア。 戦闘が終わった今、彼らの姿はお節介やきの姉に困惑する弟にしか見えなかった。 「おにいちゃーん! お母さんに会えたよー」 「娘を助けてくれたという浄化師の方ですね!?本当に、ありがとうございますっ」 ニオとカリアの元へ両手を広げた少女が突進してくる。 スタート地点には母親らしき女性の姿。目には涙を浮かべ、二人に感謝の礼を告げている。 「いえ、自分は当然のことをしたまでで……」 感謝は嬉しい。本当に嬉しい。しかし、なぜお兄ちゃんと叫び、自分の元へやってきたのだろう。 まぁ、いいか。いつものことだ、とニオは半笑いで小さな熱い抱擁に応えた。 少女はニオから身体を離し、カリアへも抱きついた。 「おねえちゃんもありがとー!」 「えー、おれがおねえちゃん?」 首を傾げながら、少女へとハグを返す。ぼんやりとしたカリアの黒い瞳がいつもより更に遠くを見ている、ような気がした。 「そっかー。ところでニオくん、いま笑ってない?」 「ふ、フフッ、カリアがおねえ、いや、笑ってない」 「ほんと~?」 少女の笑い声。妙に震え気味のニオの優しい声。 まぁいっかと。気の抜けた声でカリアは空を仰いだ。
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*** 活躍者 *** |
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[12] ヨナ・ミューエ 2018/12/29-20:17
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[11] リロード・カーマイン 2018/12/29-11:16
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[10] ヨナ・ミューエ 2018/12/29-08:01 | ||
[9] ニオ・ハスター 2018/12/28-22:48 | ||
[8] ヨナ・ミューエ 2018/12/28-03:02 | ||
[7] ラファエラ・デル・セニオ 2018/12/28-02:13
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[6] カリア・クラルテ 2018/12/27-12:15 | ||
[5] リロード・カーマイン 2018/12/27-09:11
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[4] リロード・カーマイン 2018/12/27-08:50 | ||
[3] エフド・ジャーファル 2018/12/26-00:54
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[2] リロード・カーマイン 2018/12/25-13:38 |