~ プロローグ ~ |
技術革新特区として、商業に栄える街、ブリテン――。 |
~ 解説 ~ |
■敵NPC |

~ ゲームマスターより ~ |
存在理由が強く影響するシナリオとなります。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ナツキ:何が神だ、勝手な事言いやがって…!大丈夫かルーノ…ルーノ? ルーノ:平気、だ…それより敵を討伐しなければ…排除しなければ…! ルーノは術者の言葉で衝動が強まり、ナツキの声で少し引き戻される 術者に敵意と殺意を向け、防御を捨て術者とベリアルを執拗に攻撃 ナツキは衝動を気力で抑え交戦 ルーノへの攻撃を庇い、これ以上暴走しないよう声をかける ■交戦 猪へ遠距離攻撃、突進をSH10で迎え撃ち立て直す前に額へJM11 術者にもSH10 討伐後に追撃しようとするルーノをナツキが制止 ナツキ:ルーノ、もう十分だ! ルーノ:まだ、排除しないと…全て失う前に ナツキ:…失ったりしねぇよ。一緒に守ろうぜ、いつもそうして来ただろ? |
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まずはベリアルだ。脅威度が高く、術の核でもあるからな。 俺がGK6で引き付け、ラファエラの攻撃で仕留めてもらう。 ……はずだったが、嬢ちゃんの攻撃が一向に来ない。完全に術者に釣られてやがる。 俺とは碌に話そうとしないくせに、悪党への罵詈雑言はすらすら出るようだな。どう見ても聞く耳がねぇ。 畜生め、こんな堅ぇ奴は墓守だけじゃ仕留めれねぇんだ。攻めてくる猪を鎌で受けるより流し、曲がった刃に引っかけて体制を崩したい。 そしてGK1で嬢ちゃんと術者の間に押し出すんだ。生意気で不貞腐れた小娘にこう言うのもなんだが、言うしかない。 「助けてくれ、俺だけじゃだめだ!」 DE10でまとめて射貫け。 |
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サクリファイス、何を企んでいるの? 貴方の思想に興味はない 私は私のやるべきことを… …メル?ねぇ、何してるの? メルの使命は知ってる…でもメル、そいつは敵…! ベリアルへDE3 弱点である額や顔を狙って攻撃 信者へは足元や手を撃ち抜くことで妨害を試みる 妨害しようとしながら苦しむメルを見て 私はいつもメルに助けられてるのに… こんな時に私は…私は…! お願いメル、しっかりして! ……そうだよね、嫌だよね…決めた 貴女は私を、他の皆を守って 貴女が刃になる必要はない 貴女は「善き人々を守る盾」 なら私は、貴女を守る弾丸になる 悪意は私が撃ち落とす! メルを悪意から守るように抱きしめながら銃を構え できる、私なら出来る! |
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誰かがずっと私を否定している 違う、誰にも頼らなくても自分で立てる、戦える 浄化師として危険な任務でもこなせる わたしは……あ…さんのように……なら…い そうだった、私はイザークさんのパートナーなんだ こんな私をずっと支えてくれた、だから私も支えたいと思った イーザ・イーザ・イーザ できる事もできないことも全部ひっくるめて 共に戦うと誓ったんです 術の影響で動けなくても…マヤ、力を貸して スキルでベリアルの隙をつくり、イザークさんの攻撃のチャンスを。 戦闘後 ご迷惑かけてすみません その…困る、という発言は誤解を招きやすいです |
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~ リザルトノベル ~ |
● 『エフド・ジャーファル』と『ラファエラ・デル・セニオ』の作戦は本来、最初から決まっていた。 もとより、標的に対する姿勢は似通っている。今更、改まって言葉を交わさなくとも、互いにやるべき事を把握している。 脅威度が高く、敵の核でもあるベリアルを優先して倒す――術者とやらのくだらない戯言に付き合うような性格は互いにしていない――そのはずだった。 (クソ、嬢ちゃんの攻撃が一向に来ねぇ。完全に釣られてやがる) 墓守のアライブスキルである『亡者ノ呼ビ声』をベリアルに行使し、攻めて来る猪の注意を一身に引き付けるも、エフド一人では決定的な一撃に欠ける。 こういう時のパートナーなのだ。ラファエラの攻撃があればこうまで苦戦しない。 だというのに、彼女は。 「ハハハッ、いい調子だ! 君には効果がてきめんのようだね、可愛いお嬢さん!」 術者の下品な笑い声が響く。身の内を苛む殺意と、痛む頭を抑え込んで、ラファエラは顔を上げた。 「……カルトで腐った脳味噌を、生で見てみたいと思ってたのよ」 ラファエラの正気を失った瞳を確認し、術者は更に口角を吊り上げた。 彼女には今、エフドもベリアルも眼中にない。犯罪者の娘として育ち、不正で養われてきた引け目から、犯罪者を憎んで生きてきた。 初仕事で逃がした犯罪者、雨の中で大敗を喫した憎き魔女――それらが綯い交ぜになって、術者への殺意へと変換される。 整った顔が深い憎悪に歪む。艶めいた唇からは、普段以上に毒の混じった言葉がつらつらと滑り出す。 「それは互いに好都合のようだ。やれるものならやってみるがいいさ!」 「ああそう。……そんなに死にたいなら、望みどおり殺してやる!」 弓矢を手に、ラファエラは術者へと単身襲い掛かった。 *** 「サクリファイス、何を企んでいるの?」 『相楽・冬子』は険しい表情で一言呟く。 術者はそんな彼女の言葉にニヤリと笑った。 「僕らの高尚な計画を知りたいなら、武器を捨てて我々の一員となるといい」 「……貴方の思想に興味はない。私は私のやるべきことを――」 術者に向け銃口を向ける冬子の声が、何かに気付いたように止まった。 「メル……?」 隣に立っていた筈のパートナー『メルツェル・アイン』が。 術者と冬子の間に――まるで術者を庇う様にして、両手を広げて立ち塞がったからだ。 *** ――誰かがずっと私を否定している。 一人では何も出来ない。教団に尽くすことも、立ち上がることすら。 ――違う、誰にも頼らなくても自分で立てる、戦える。 本当に? どんな指令でも絶対に? ――……浄化師として、危険な任務でもこなせる。 「わたしは……あ……さんのように……なら……い」 不意に聞こえた『鈴理・あおい』のか細い声に、『イザーク・デューラー』は怪訝そうに眉を顰めた。 「……あおい?」 イザークの声にはっとして、あおいは顔を上げた。 額に冷や汗が滲んでいる。まだ戦闘は始まったばかりなのに。 「すみません、なんでもありません」 「なら良いが……顔色が」 「大丈夫です。……大丈夫、戦えます。一人でも」 イザークが何かを言う前に、あおいは敵に向かい駆け出してしまった。 *** ――頭が、割れそうだ……。 ズキン、ズキンと、響く様な痛みと共に。 意識を蝕む抗い難い衝動。 ――サクリファイスがいると面倒事ばかり、平穏な暮らしなど不可能だな……。 ――これでは、やっと手に入った居場所までいつか奴等に壊される、全て失ってしまう。 強く、どこか甘美な誘惑は、彼に語りかける。 大切なものを守る方法、そんなの簡単だ。お前なら出来るだろう?『ルーノ・クロード』。 ――……そうか、そうだな、全て排除してしまおう。 「何が神だ、勝手な事言いやがって……!」 信者とベリアルを前に、嫌悪の眼差しをあらわにするのは『ナツキ・ヤクト』。 イレイスに影響するという言葉は真実のようだ。ナツキ自身にもその症状は顕著に現れていたが、気力を振り絞りなんとか持ちこたえている。 ただ、隣で膝をつき、頭を抑えているパートナーの事が心配だった。 「大丈夫かルーノ、……ルーノ?」 「ああ、平気、だ……」 くらくらと霞む意識を、ナツキの声がほんの少し引き戻してくれる。 頭を振って立ち上がり、ニタニタと下卑た笑みをたたえる術者を正面きって見据えれば、身のうちを苛む衝動は強くなる。 普段の穏やかな表情に、陰りが落ちた。 「それより今は、敵を討伐しなければ……排除、しなければ……!」 むきだしの殺意と敵意。 明らかにいつもとは違う表情に、傍らのナツキは目を見開いた。 ● 「畜生め、こんな堅ぇ奴は墓守だけじゃ仕留めれねぇんだ……ッ!」 執拗に突進を繰り返す猪を、エフドは鎌の刀身を使い受け流し、刃に引っ掛けて敵の体勢を崩す。 それ以上のダメージを中々与えることが出来ず、離れた場所で術者を相手取るラファエラへと呼びかけた。 「嬢ちゃん、しっかりしろ! 聞こえてねぇのか!?」 喧騒を割くエフドの大きな声は届いているはずだ。それなのに、彼女の瞳がこちらを見る事は無い。 厄介なベリアルをなんとなしなければ術者を倒す事はままならない。なんとかしてラファエラの注意をこちらに向けたい。俺とはろくに話そうとしない癖に、悪党への罵詈雑言はすらすら出るんだな、と妙な感慨にふけった。どう見ても聞く耳がない。 ――否、引き付けるのがダメなら押せばいいのだ。 そうと決めたエフドは、頃合を狙いベリアル目掛けてシールドタックルを繰り出した。 「はああっ!」 「っ!」 ドォン、と大きく、猪とエフドの突進がぶつかり合い、せりまけた敵の体が術者とラファエラの間に押し出された。 虚を突かれたようなラファエラをエフドは見逃さない。生意気で、こじらせて不貞腐れて、どこか自分と似ている彼女に言うのも癪な言葉だけれど、敵を倒すために今は己の沽券になどこだわっていられない。 「ラファエラ、助けてくれ! 俺だけじゃだめだ!」 弾かれたように、ラファエラの瞳がばちりと見開かれる。 普段なら絶対に口にしないようなエフドのその言葉は、彼女の意識を引き戻すには十分だった。 「――ッ、おじさ……!」 「手がかかる小娘だ、まったく……!」 先ほどの猪とのぶつかり合いで、エフドも少なからずダメージを負っていたが、パートナーの瞳に輝きが戻った事に小さく、勝気に笑う。 当初の予定通り、『亡者ノ呼ビ声』で再度猪の注意を引き付けると、術の影響から頭を抑えるラファエラを支えるように、再び叫んだ。 「まとめて射抜け、嬢ちゃん!」 「うる、さいわねっ……言われなくたって!」 『スウィーピングファイア』でベリアルを射抜く――貫通効果のある攻撃はそのまま、術者にも通った。 「ぐああっ! く、クソッ……!」 術者はそのまま、他の浄化師たちの攻撃をまとめて浴び息絶えた。 敵の殲滅を見届け、戦闘終了後、ラファエラは何も言わずエフドに背を向け立ち去ろうとしていた。 「おい、待て」 「……」 その手をすかさずエフドが掴む。ラファエラは振り返らない。 何か言ってやろうとも思った。冗談でも慰めでも、いつもの憎まれ口が返れば、何となく安堵できるような気がした。 けれど、共にした指令の数だけ、今抱えているであろう彼女の気持ちには察しがついてしまう。 今、ラファエラに自分が何を言ってやっても、それはきっと恥じの上塗りをするだけだ。 敵の術中にはまり、視野狭窄に陥って、周りが見えなくなっただなんて――。 「……っ」 掴まれた手を振り解く。 泣きそうな顔を見せまいと、エフドに背を向け立ち去るラファエラを、エフドはただ何も言わず見送ってやる事しかできなかった。 *** 「……メル、ねぇ、何してるの?」 彼女の行動を怪訝に思うも、猪と術者がいつ攻撃に転じるかわからない今、冬子に武器を下ろすことはできない。 けれども敵を討つために、彼女が間に居ては――。 「ワタクシの使命は、人々を守ること……」 「メルの使命は知ってる……でもメル、そいつは敵で……!」 「ダメですダメですダメですっ!!」 冬子の言葉を遮るように、彼女はかぶりを振って叫んだ。 ――『ヒト』に武器を向けるなどと! 続いたその言葉に、冬子は愕然とする。 術者を庇いながら、目を見開いて叫ぶメルツェルが、一体何に葛藤しているのか、彼女の使命を知る冬子には瞬時に理解出来てしまった。 「行け、ベリアル!」 「くっ……!」 思考する間もなく猪が冬子に向け突進を繰り出す。 攻撃を避けると共に『チェインショット』を弱点である魔方陣目掛けて的確に繰り出し、猪をいなしたタイミングで術者へも狙いを定める。 足元や手を撃ちぬく事で、術を妨害出来ないかと試みる――が。 「何をするのです、トーコ!」 術者を庇う様な足取りの彼女に、冬子は叫び掛けた。 「お願いメル、しっかりして! そいつはっ」 「ワタクシは! 守らねばならない!」 「っ!」 「……お父様から継がれた使命を……! 果たさねば、ならないのにっ……!」 彼女の強い口調に、冬子は何も言えなくなる。 メルツェル自身の使命は『善き人々を守る盾』足りうること。 それは彼女の言う『お父様』から託された最期の願い。 冷静に考えれば術者を守る事が使命に矛盾していると分かるはずなのに、メルツェルは術の影響から倒錯するあまり、守るべき『ヒト』が敵にも重なって、混乱している。 金色の眼から、ぼろぼろと涙が溢れた。 「ひとに、ヒトに武器を向けるなんて……! ワタクシにはできないっ!」 「……っ」 メルツェルが苦しんでいる。 何と言ってやるべきなのか、言葉の選び方すらわからず唇を噛む。 (私はいつもメルに助けられてるのに……こんな時に私は……私は……!) 無力さにただ拳を握り締め、どうするべきか必死に考えて――決意した。 「……そうだよね。嫌だよね……決めた」 刺激しないよう、一度、武器を下ろして。 メルツェルのもとに歩み寄った冬子は、彼女を正面から抱き締めた。 「はは、何を決めたんだ? 二人で自決することか?」 「黙って。メルを苦しめるあなたは絶対に倒す。でも――」 ぎゅう、とメルツェルの体を強く抱き締める。 術者に向ける銃口が、彼女の目に入らないように。 悪意から彼女を守るように、冬子は銃を構える。 「トー、コ……? 何を……」 「貴女は私を……皆を守って。貴女が刃になる必要はない」 メルツェルの使命は『善き人々を守る盾』――ならば今この瞬間、自分に出来る事は。 「それなら私は、貴女を守る弾丸になる。純粋な貴女の使命を利用する、そんなものは全部――」 「チッ……! 何をしている、いけ! ベリアル!」 自身に向けられた銃口の標準が、冬子の瞳の動きに合わせて定められた事に気付き、術者は舌打ちと共に身構えた。 「悪意は、私が撃ち落とす!」 叫びと共に術者へと発射された弾丸は、正面から突進を繰り出してきたベリアルによって防がれた。 メルツェルを守りながら何とか体を翻し回避するも、動けない彼女を抱えたままではいつまで戦えるかわからない。それでも。 「できる……私なら出来るっ!」 猪の触手が腕をかすって血が滲んでも、オッドアイに秘めた煌きは損なわれない。 再度、猪が二人に狙いを定めた――その瞬間、メルツェルの心に掛かった黒い靄が霧散した。 「……っ冬子!!」 「!」 ベリアルの攻撃が二人に向かった瞬間、メルツェルのアライブスキル『魑魅魍魎ノ壁』が発動し、二人を守った。 「バカな、お前、平気なのか!?」 術者の言葉を聞き、メルツェルは震える声を振り絞る。 「平気ではありません……っですが、冬子は決意してくれました」 「メル……!」 「……ならばワタクシも、覚悟を決めます!」 「くそ、二人まとめてやってしまえ!」 ベリアルの執拗な突進を、積極的な姿勢でメルツェルが防いでいく。 合間に冬子が弾丸を打ち出し、魔方陣に蓄積されたダメージで次第にベリアルの動きは鈍っていった。 「これで……終わりっ!」 「ブモオオッ……!」 トドメの一撃が決まり、猪は呻きながら地に伏せた。 身を翻し後退しようとした術者は、すぐさま他の浄化師の追撃で討伐された。 「メル、大丈夫? 意識は……」 「もう、もう平気です。……トーコ」 ありがとう。殊勝な一言に、冬子は少しだけ困ったような顔で「どういたしまして」と微笑んだ。 *** (やれやれ、出会った頃に戻ったかのようだな) そんな風に考えて、イザークは肩を竦める。 明らかに、これまでの彼女とは態度が違う。 ようやく最近、打ち解けてくれるような素振りも増えたと思っていたのに。 そういった、互いへの信頼と言うのは、戦闘時の連携において深く直結するものだ。 「どうしたお嬢さん。足許が覚束ないなぁっ?」 「っ……! ちょっともつれただけです、マヤ!」 術者の言葉には気丈に返しつつも、単調な猪の攻撃すら人形を使い回避するのが関の山だ。 更には術の影響だろうか、周りが見えていない。このままではベリアルの格好の餌食だ。 「あおい、前に出過ぎては……!」 「……いいえやれます! イザークさんは攻撃を、……くっ!」 意識がそれて、突進された際ベリアルの触手があおいの足を掠めた。 二人で向かえばそれほど手強くもない相手だというのに、やはりこのままでは埒があかない。 頃合を見て繰り出された猪の突進から、イザークはあおいを庇う様に前へと駆け出た。 「――イザークさんっ!?」 庇った際に傷を負い、僅かに呻いたパートナーにあおいは目を見開いた。 「大丈夫ですか、傷は……!」 「……ああ、ようやく俺の方を見てくれた」 「っ、今はそんな話は!」 「はは。多少の怪我は承知の上だ、直撃に比べればなんてことはない。あおい、このまま少しだけ聞いてくれ」 「……?」 「……確かに君は1人で戦えるのかもしれない。それでも――」 ――君がいてくれないと、俺は、とても、困る。 優しく言い聞かせるような声に、あおいの。 淀んだ心の霧が少しずつ晴れていく。 (そうだった、私はイザークさんのパートナーなんだ) 改めて再認識する。それがどれだけ彼女を支えているのか。 (こんな私をずっと支えてくれた、だから私も支えたいと思った) 『イーザ・イーザ・イーザ』。 それは悩みながら、二人で決めたアブソリュートスペル。 苦難を、安らぎを、運命すら共に。 ただの文字列だったそれは、いつからかしっかりとした意味を持って、二人を繋ぐ強い絆となった。 裏切らず、隣で戦うと。……見放されぬよう、無様な姿を見せまいと誓ったのは、自分だったのに。 「――……できる事もできないことも全部ひっくるめて、共に戦うと誓ったんです」 顔を上げたパートナーに、イザークが再度名を呼びかける。 「あおい……?」 「もう、大丈夫です。まだ体は上手く動かないけど……マヤ」 お願い、力を貸して。 言葉と共に人形を繰り出し、ベリアルの体を『絡縛糸』で縛り上げた。 あおいが作った隙を見逃さず攻撃に転じたイザークが『ステップスマッシュ』を駆使し、的確にベリアルへとダメージを与えていく。 「ブモオオッ」 「なんだ、突然……!? 術は解けていないはずなのに!」 困惑する術者の前で、見る見る内にベリアルは体力を削られていく。 あおいの意識がはっきりと呼び戻されたことが、決定的なダメージを与える切欠となった。 「私はもう……一人じゃないから!」 「ああ。その通りだ、あおい!」 「ぐああああぁ……!」 ベリアル諸共、術者へも攻撃を繰り出し、やがて他の浄化師の攻撃も相まって、術者は息絶えた。 全てが終わったあと、あおいは殊勝な態度でイザークへと頭を下げた。 「ご迷惑かけてすみません」 「構わない。こんなときの為のパートナーだ。……吹っ切れたようで、よかった」 ぽん、と頭を一つ撫でられて、顔を上げられないまま、少しだけ気恥ずかしそうにあおいが眉をひそめる。 「イザークさん。その……困る、という発言は、誤解を招きやすいです」 「嘘は言ってないよ。パートナーの君がいないと困るのは本当だ」 穏やかに微笑んで、なんだか上手く煙に巻かれたような気もしたけれど、それ以上は墓穴を掘りそうで何も言わなかった。 あおいと離れたあと、彼女の背中を見つめて、イザークはふと最初に耳にした彼女のかぼそい呟きを思い起こした。 (『私はお母さんのようにはならない』……そう聞こえたが、今は何も聞かずにおこう) いつか彼女が話せる日が来たら、きっとそのときに。 打ち解けたようでいて、まだまだ先は長そうな彼女との付き合いを思い、イザークもまた帰路へついた。 *** 「ルーノ!」 猪の突進を避けようともしないパートナーに見かねて、庇うように突き飛ばしたナツキの腕に血が滲む。 ナツキが傷を負った事で、ルーノの中の衝動が一層増した。 「居場所、守らなければ……!」 「待てって、そんな戦い方じゃ……うわっ!」 ベリアルの突進が再びルーノに向かった事で、懸命な呼び声は封じられる。 一切の防御を捨てたような動きで、執拗に術者とベリアルを攻撃しようとするルーノに、ナツキの呼びかけはまるで聞こえていないようだった。 「そうだ、それでいい! 神の放った使徒を、あろうことか反旗の刃と変容させるなど、蛮行を行ったお前達の業だ!」 「……っだまれ!」 ベリアルの突進を『小咒』で迎え撃ち、炎に焼かれた猪が苦しむ隙をナツキが見逃さない。 「くそ、先にこっちをなんとかしねえと……! 『磔刺』!」 ナツキの攻撃がベリアルに命中するものの、スケール2となると一筋縄ではいかない。 ダメージを負いつつ再びナツキたちを狙いすまし、蹄を打ち付ける猪よりも、傍らのルーノのダメージ――目には見えない心のうちのそれが、ナツキにはずっと気がかりだった。 (ちくしょう、かなりキツイな……でも俺よりルーノの方が辛そうだ) あんな戦い方、普段のルーノなら絶対しない。 いつもの穏やかな微笑みはどこにもない。術の影響に苦しんでいることは明白だった。 (このままじゃ、本当に――) 以前、互いがベリアル化してしまったら、と議論を交わした日を思い起こし、ぞっと背筋が冷えた。 ルーノがベリアル化してしまったら討伐出来るのか? その問いに、ナツキは答えることが出来なかった。 だって彼の中に、万が一の選択肢なんてないのだ。 (……ベリアル化なんてさせてたまるか。神ってヤツが本当に望んだって俺は嫌だ! あの時言ったみたいに――) 真っ先に告げた答え。ナツキの意思は揺るがない。 「俺が絶対引き戻す!」 決意の叫びと共に再度猪の額にナツキの一撃が決まり、ベリアルは大きく体を仰け反らせ、呻きをあげながら地に伏せた。 術の影響は未だ健在で、息を切らし術者を向き直れば、他の浄化師らに加えられたダメージも相まって、その体は満身創痍だ。 傷だらけになりながらも神への誓いを口にし続ける術者を炎の蛇が襲った。 「ぐああああっ!!」 「……っ!」 身を焼く一撃にもんどりうつ術者を見て息を呑む。 炎はルーノが放った『小咒』によるものだ。生身の一般人には相当なダメージになる。 「倒さなくては……排除を」 炎の中で、術者が動かなくなってもなお追撃を加えようと、濁った瞳で杖をかざすルーノの腕を、ナツキが掴み引き止めた。 「ルーノ! もう十分だ!」 「排除しないと……全て失う前に」 「……失ったりしねぇよ。一緒に守ろうぜ、俺たち――」 いつもそうして来ただろ? 一緒に――いつも。 その言葉に、その声に。 共にこなした過去の指令や、過ごした日々が脳裏に蘇って。 ようやく、ルーノの瞳に光が戻った。 「……私は、今何を考えた? 何をしようとした?」 目の前に倒れ伏した術者と、かざした己の武器を見て状況を把握し、愕然とする。 ルーノの瞳に、次に映ったナツキの表情はけれど、安堵したように微笑んでいた。 「……守ろうとしただけだ。ルーノの、大事なものを」 「ナツキ……」 彼の全身を見る。傷だらけだ。 戦闘中の記憶がないわけじゃない。庇ってくれた。声をかけてくれた。 相変わらず、自身を顧みないパートナーだ。でもその想いが、今はただただ暖かい。 そんな彼が居る今だからこそ、守りたいと強く願ったのだ。 「すまなかった……ありがとう。傷を、治そう」 「ん、サンキュ」 アライブスキルの光を穏やかに煌かせて、ルーノはナツキの傷に手を当てた。
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*** 活躍者 *** |
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