~ プロローグ ~ |
少女は泣いていた。 |
~ 解説 ~ |
概要、 |

~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、留菜マナです。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■サクリファイス 発見次第交戦 ルーノが通常攻撃で足止め、隙を見てナツキがJM11 トドメを躊躇するナツキに代わってルーノがSH10で仕留める ■終焉の夜明け団 村に戻り報告 村人とルークス、リーファの手に注目 手の甲に十字架のある信者は多い 手袋で手を隠すリーファと、行動を共にするルークスを信者だと予想 騒ぎにしない為、人目が少ない場所で指摘し手袋の下を確認 ルークス、リーファの説得 教団に疑われたら隠し通すのは不可能である事と 討伐でなく捕縛指令の内に対処したいと本心を伝える もう一つ ナツキがリーファに違和感があると伝える 浄化師の素質が違和感の原因なら放置すれば魔力のパンクで死亡する 教団へ来れば防げる、と教団へ誘う |
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~ リザルトノベル ~ |
●灰色の世界 ルナリス村の奥へと進んでいくと、次第に観覧車が見えてきた。 教皇国家アークソサエティの技術を元にして作られた観覧車は、魔結晶を中心にした魔力の供給を施されてゆっくりと動いている。 華やかなイルミネーションを展開し、空を美しく彩っている姿は、まるで星空のように幻想的だった。 「誰もいねぇな」 『ナツキ・ヤクト』の言葉どおり、広々とした観覧車の前には誰もいなかった。 観覧車の周りには、明かりが灯っており、視界は良好だ。 だが、肝心のサクリファイスの信者の姿が見当たらない。 「リーファの話では、観覧車を爆破すると言っていたようだ。私達が来たことに勘づいて、近くに隠れているのかもしれない」 『ルーノ・クロード』は杖を構えると、警戒するように周囲を窺う。 観覧車の前には、生成される前の火気の魔方陣が描かれていた跡があった。 恐らく、シャドウ・ガルテンで発見された禁忌魔術『ヘルヘイム・ボマー』の爆破を模索していたのだろう。 「観覧車かー。意外と大きいよな」 「キル、分かってるとは思うけど、これから戦闘だからね」 「ん。了解」 観覧車を見上げた『キールアイン・ギルフォード』を見て、『ナニーリカ・ギルフォード』は人差し指を立てて嗜める。 その時、ゴンドラの奥から一筋の殺気が放たれた。 「神を汚す冒涜者どもよ! 死ね!!」 突如、ゴンドラから飛び出した男は、手にした短剣をルーノに向かって迷いなく振り下ろす。 サクリファイスの信者による不意討ちはしかし――、ルーノには見切られていた。 「やっと出てきたみたいだね」 男の斬擊を打ち払うと、ルーノはそのまま追撃とばかりに杖を叩き込んだ。 「――っ」 初擊の鋭さから一転してもたついた男は、苦悶の表情を浮かべる。 そこに、ナニーリカのボウガンの一撃が放たれた。 急速に反転する攻防を前にして、矢を避けた男は一旦、距離を取ろうとする。 「ナニカ、任せろー!」 しかし、キールアインが人形を操り、それを阻止した。 卓越されたルーノ達の連携を前にして、男は起死回生を込めて短剣をゴンドラの一つへと飛ばす。 「…‥…‥っ」 次の瞬間、ルーノは息を呑んだ。 ゴンドラがまるで狙いすましたかのように、自身へと落ちてくる姿を目の当たりにしたからだ。 「なるほど。私達が来た時のことを想定して、準備していたのか」 予測に反した反撃に、ルーノは落ちてきたゴンドラをぎりぎりのところで回避した。 イルミネーションによる点灯は、かろうじて観覧車にかかっていたため、引火の可能性がなかったのが幸いだった。 「なっ!」 男は、自身の奇襲を二度にも渡って凌がれたことに驚愕する。 「『磔刺』!!」 男の隙を見て、ナツキがここぞとばかりに攻撃を加える。 ナツキの攻撃が決め手となり、男はその場に崩れ落ちた。 「――くっ!」 だが、ナツキは息も絶え絶えの男の姿を見て、剣を振り下ろそうとしていた手が止まる。 (やはり、ナツキは討伐を躊躇うか) 剣を握りしめたまま、戸惑うナツキを案じるようにルーノは思う。 (……私は経験がある。彼が手を下す必要は無い) 「ぐあああっ!」 「……っ!」 倒れ伏せた男に対して、炎の蛇が襲いかかった。 炎の渦に飲み込まれた男が悲鳴を上げて、のたうち回る。 炎はルーノが放った『小咒』によるものだった。 「ルーノ」 振り返ったナツキが驚愕の表情を浮かべる。 「ナツキ、君が手を下す必要は無い」 「……っ」 ルーノのどこまでも優しい言葉に、ナツキは唇を噛みしめた。 (討伐しないと大きな被害が出るのは分かってるのに……ルーノに負担かけちまったな) 息絶えた男を見下ろしながら、ナツキは表情を硬く強張らせる。 「なんか悔しいな」 「……悔しい?」 「こういうカタチでしか、こいつらを救ってやれないことが悔しいんだ」 あくまでも彼らしい言葉に、ルーノは苦笑した。 「ああ、不要な血は流したくない。だから、夜明け団の信者と協力者(ブローカー)は無傷で教団へ連れ帰る」 観覧車の爆破を目論み、和解することさえ叶わなかったサクリファイスの信者。 だが、終焉の夜明け団の信者はあくまでも捕縛だ。 確信を持ってその結末を受け入れているルーノの静かな声が、確かな事実を突きつけてくる。 「団には、浄化師に捕縛されたと伝わるようにすれば村も恨まれない」 「おう、ありがとうな」 ルーノの提案に、ナツキは嬉しそうに頷いたのだった。 ●色づく世界 「ありがとうございました」 報告を受けたルナリス村の村長が、ルーノ達に丁重に頭を下げた。 「ゴンドラが壊れて悪いな」 「いえ、あのくらいでしたらすぐに直せます。むしろ、あの程度の被害で抑えて下さり、浄化師様達には感謝してもしきれません」 ナツキの謝罪に、顔を上げた村長は深々と誠意を伝える。 そのタイミングで、ルーノはこう切り出した。 「終焉の夜明け団の信者と協力者も、この村に隠れ潜んでいると聞いてたんだが?」 「終焉の夜明け団? い……いえ、そ、そのような者達は存じ上げませんが」 ルーノが促すと、村長は途端、焦ったように顔を歪めた。 「ふーん、なんか怪しくね」 「もう、キル!」 キールアインの指摘に、ナニーリカは困ったように狼狽える。 痛いところを突かれた村長は、平静を装って続けた。 「観覧車以外は何もない村ですから、サクリファイスはともかく、終焉の夜明け団は見向きもしないのではないでしょうか」 「こちらは、少し手がかかりそうだな」 村長のたどたどしい言葉に、ルーノ達はわずかな違和感を抱きながらも村長の家を後にした。 「よーう、リーファ」 「浄化師さん」 ナツキが声をかけると、ベンチに座っていたリーファは花咲くような笑みを浮かべた。 ルナリス村は穏やかな村だった。 村の一画は、一重咲の白いクリスマスローズの花畑に彩られている。 中央広場には、村人達の憩いの場所として、ベンチと噴水が設置されていた。 何でも村人達の話では、今回、サクリファイスの信者の侵入を許してしまったが、いつもは自警団としての役割を果たしてくれる人達が、この村を護ってくれているようだ。 「いつも手袋をしているんだな」 「この手袋は、ルークスお兄様が私にくれた大切なものなんです」 ナツキの問いかけに、立ち上がったリーファは鞄をぎゅっと握りしめたまま、恥ずかしそうに顔を俯かせる。 そこで、ルーノが核心に迫る疑問を口にした。 「お兄さんがいるのか?」 「はい。でも、本当の兄ではなくて……あっ、いえ、血の繋がりがなくても、私にとっては大切な家族です」 ルーノの言葉に、リーファは昔を懐かしむように穏やかな笑顔で語る。 すると、ナツキはそんな彼女の気持ちを汲み取ったのか、頬を撫でながら照れくさそうにぽつりとつぶやいた。 「家族っていいよな」 「はい」 顔を上げたリーファは胸のつかえが取れたように微笑む。 「そういえば、この村の明かりも、照明専門店のものだよねー」 前の指令で訪れた照明専門店『モーンガータ』を思い出しながら、ナニーリカは目を輝かせた。 「はい。後は、魔術で明かりを灯したりしています」 「魔術が使えるなら、一緒に戦ってもらっても良かったな」 「――っ!」 キールアインの何気ない一言に、近くの灯に火気の魔術を発動してみせたリーファは思わず心臓が跳ねるのを感じた。 知らず知らずのうちに、拳を強く握りしめてしまう。 (リーファって子、なんか妙な感じが……この違和感、もしかして浄化師の?) 気まずそうな表情を浮かべるリーファを見ながら、ナツキはふと座りの悪さを覚える。 魔術士である可能性も捨てきれないが、ナツキには今まで受けてきた指令の経験から、彼女は浄化師の素質を持っている――そんな予感がした。 (なら、勧誘するしかないよな!) 「リーファ」 「ルークスお兄様」 ナツキがそう判断すると同時に、彼女を呼ぶ声がした。 振り返ったルーノ達が目にしたのは、赤みのかかった髪の青年だった。 素朴な服を纏い、リーファと同じく手袋をしている。 「行くぞ」 真っ先に状況を把握したルークスは、リーファの手を取った。 そして、そのまま、何事もなかったかのように、その場から立ち去ろうとする。 そんな二人を、ナツキとキールアインが慌てて呼び止めた。 「おい、待てよ!」 「ってか、お前、手袋、取れそうになっているぞ!」 「どうも」 短く、けれど確かな拒絶の意思に、ルーノは目を見張った。 ルークスは手袋を戻すと、警戒するように鋭い眼差しで睨み付ける。 手の甲に十字架のある信者は多い。 今回の指令の依頼者の一人であるリーファと、行動を共にする義兄であるルークス。 二人に共通することは、どちらも手袋で手を隠していることだ。 (まさか、彼らが終焉の夜明け団……?) まるで手先を見られることを拒んでいるような立ち振る舞いに、ルーノの思考は一つの推論を導いた。 「待ってくれないか。リーファ、それにルークス、話したいことがあるんだ」 「話したいこと、ですか?」 「ああ」 ルーノの言葉が、不意に意味深な響きに満ちる。 しかし、リーファの戸惑うような、悲しむような表情は、ルークスの言葉によって遮られた。 「行く必要はない!」 悲痛な声は、夜空に吸い込まれて消える。 ルークスの訴えに、ルーノは推測を確信に変えた。 「ここは人目がある。場所を変えよう」 「……っ」 「……そ、その」 ルーノから告げられた提案に、ルークスとリーファは表情にわずかな亀裂を入れる。 その理由について、もう疑念を差し込む余地はなかった。 彼らは終焉の夜明け団の信者だ――。 状況説明を欲するルーノの言葉を受けて、ルークス達はルーノ達とともにその場を後にすることになった。 ●星焔のアリア 話がしたい。 そう言ってルーノ達が向かった先は、先程、戦闘を繰り広げた観覧車の前だった。 サクリファイスの信者が立てこもっている噂があったためか、村人達や観光客は用事がない限り、まず近づくことがない。 ルーノはそれでも人影がないか確認してから、ルークス達に視線を戻す。 「ルークス、リーファ、手袋を外してもらえるかい?」 「くっ……」 「……っ」 決定的な言葉に、ルークスとリーファは明確に表情を波立たせた。 それでも、彼らは頑なに手袋を外そうとしない。 ただ、微かに寂しさのようなものを漂わせて、リーファは遠くを見つめる。 その理由を慎重に見定めて、ルーノは続けた。 「君達は、終焉の夜明け団の信者か」 「……っ!」 ルーノの指摘に目を見張り、息を呑んだリーファは明確に言葉に詰まる。 「教団に疑われたら、隠し通すのは不可能だ。討伐でなく、捕縛指令の内に対処したい」 「黙れ!」 「ルークスお兄様……」 事実を告げるルーノに、リーファを庇ったルークスは声を震わせた。 「ルークス、リーファ、頼む。終焉の夜明け団に与したとしても、命さえあればやり直せるはずだ」 「でも、私はもっと最悪だから……」 ルーノの重ねての説得に、リーファは躊躇うようにつぶやく。 「最悪?」 「私は、サクリファイスに属する貴族の娘でもあるから」 言葉に詰まったリーファは顔を真っ赤に染めてぽつりと俯いた。 リーファの瞳からは、涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。 「なぁ、リーファ。話せることだけで構わねぇから、リーファのことを俺達に教えてくれないか?」 「……はい」 ナツキに促されて、リーファは自身の過去のことを滔々と打ち明けた。 自分が、サクリファイスに属する貴族の娘だったこと。 両親の手によって神の生贄として捧げられた後、ルークスによって救われたこと。 そして、ヨハネの使徒によって、アジトが壊滅したため、ルナリス村へと移り住んだことを。 胸に染みる静寂の中、ナツキは確信を持って言う。 「そういや、アジトが壊滅したのはヨハネの使徒のせいって言ってただろ。それって、リーファが浄化師としての素質を持っているからじゃねぇか?」 「浄化師……」 「浄化師の素質」 次第に、ルークスとリーファの声が悲哀を帯びていく。 ナツキの言葉を引き継いで、ルーノは静かに告げる。 「ああ。浄化師の素質が原因なら、ルナリス村にもヨハネの使徒の襲撃があるかもしれない。それに放置すれば、魔力のパンクで死亡することになる」 「なぁ、ルークス、リーファ。教団へ来れば防げるし、一緒に行こうぜ!」 ナツキの誘いに、リーファは顔を伏せたまま、何も答えなかった。 ルークスに至っては、リーファを護るように壮絶な眼差しを浮かべている。 それでも、想いがそのまま形になるように、止めどなく、言葉はナツキの心に溢れてくる。 「魔力パンクなんて脅しみたいだけど、ほっとけねぇよ」 もう、ナツキが幸せを願った孤児達は、隣にいないのかもしれない。 だけど、同時に思う。 大切なパートナーは、そして、仲間達は、いつも自分を支えてくれている。 「リーファに何かあったら、悲しむヤツもいるだろ」 「……なれる、かな?」 リーファの声が、嗚咽に遮られ、虚空に溶ける。 「ルークスお兄様を護れる存在になれる、かな? ……また、お父様とお母様みたいに、見捨てられない、かな?」 歌うように言葉を紡ぐリーファは、疑問を口にしながら決して答えを求めていなかった。 求めているのは、問答というダンスのパートナー。 目の前に不可解な問いを提示されて、ルーノは知らず思考を刺激される。 浄化師としての素質を持ちながらも、サクリファイスに属する貴族の娘で、終焉の夜明け団に身を置いている少女。 (もしかして彼女も、私と同じように、浄化師としての素質を持っていたため、家族から拒まれていたのか) 異質であることで両親から排除されたという点では、彼女もまた、ルーノの境遇に似ていた。 リーファ自身は知らなくても、彼女の両親は何らかの方法で、そのことを知っていた可能性がある。 だからこそ、リーファを神の生贄として捧げようとしたのだろう。 「うーん。ヨセフ室長なら、悪いようにはしないと思うし、少なくとも殺されることはないんじゃないかな」 「うん、確かにそうだね。私も手伝うよ」 キールアインから想いのこもった眼差しを向けられて、ナニーリカは強く頷いた。 シャドウ・ガルテンの夜空は、他の国のそれよりどこか深く見える。 暗い夜空を見上げていると、ルークスの脳裏に、リーファの言葉が閃光のように蘇った。 『現実は夢へと変わり、夢は現実になり得るかもしれない』 今にも壊れてしまいそうな繊細な声が、言葉を紡ぐ。 どうやら、自分はどこまでもリーファに甘いようだ。 村の安全についても、これからは他の村の自警団に頼む必要がある。 少なくとも、協力者であるルナリス村の村長は、足掻くだろうが…‥。 いろいろと諦めたルークスは、様々なしがらみが今後、自分にのしかかってくることも、とりあえず思考の俎上からどかした。 今は、目の前のことを考えるだけだ。 「リーファは相変わらず、言葉遊びが好きなようだな」 「……はい」 返ってきたのは、初めて出会った時と同じ、透き通るような小さな声。 触れただけで溶けてしまいそうな、雪を彷彿させる繊細な声だった。 「一緒に探そう。リーファの居場所を」 「……はい、ルークスお兄様」 全てを吹っ切るように口にしたルークスの言葉に、リーファはこくりと頷いた。 「よーし、決まりだな。行こうぜ!」 「ああ、行こうか」 周囲に光を撒き散らすような笑みを浮かべるナツキを、ルーノは眩しそうに見つめる。 「せっかくだし、教団生活、楽しむように頑張ってみようよ。時計台から遠くを見れば、景色も綺麗だぜ?」 「ふふ、確かに」 先程までの緊迫した空気など、どこ吹く風で、今か今かと出発の言葉を待っているキールアインに、ナニーリカは思わず顔を緩めた。 「浄化師さん達、ありがとうございます」 言葉には出来ない感謝の想いが、リーファの胸に広がる。 止まっていた時間に再び、息吹きを灯す。 運命の刻が……すぐ目の前にまで迫っていた。 サクリファイスの信者が、この村に犠牲を求めた日。 間違いなく、世界は変わってしまった。 だけど、それは私達が望んだことだ。 あの日に途絶えた日々が、未来がこうして続いてくれている。 月明かりに照らされた村の観覧車。 私達の未来を変えてくれるかもしれない浄化師さん達が、確かにそこにいた。 あなたを探している。 何度も何度も、名前を呼んで――。 いつの間にか、満天の星空は終わりを告げていた。 空には一つだけ、淡く光る星が残っている。
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*** 活躍者 *** |
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[4] ナツキ・ヤクト 2019/01/12-22:03 | ||
[3] キールアイン・ギルフォード 2019/01/12-21:09
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[2] ルーノ・クロード 2019/01/11-13:43 |