~ プロローグ ~ |
● |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、または、こんばんは鞠りんです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
◆目的 【A案】参加 パートナーと親睦を深める ◆プレイング ・基本的に神楽と一緒に回る ・シャムロックは料理の知識がある程度あるので、料理関係の話を理解する可能性あり【料理Lv1】 ・シャムロックはベタベタする性格ではないが、神楽はベタベタしたい性格なので付かず離れずしながら回る ・料理は持って回らず、食べ始めたら食べ終えるまでその場に留まる ・城の中を見学する時は、基本的に腕を組むor手をとったまま移動する ・他の人とすれ違ったら、挨拶や立ち話をする ・話をしている間も神楽はくっついたままの可能性あり ◆備考 間違われるかもしれないので補足 藤枝 神楽(ふじえだ かぐら) (かぐら ふじえ ではありません…) |
||||||||
|
||||||||
B案 魔法陣の謎か… 観光地扱いになってるなら謎っていっても危険なものじゃないはずだ 気楽に、ただし本気でチャレンジしてみるか よし、行くぞリント! まずは中央広場をじっくり探索 描かれた魔法陣の形などをしっかり記憶してメモ …といっても、魔術には詳しくない リントは何か分かるか? …そうか、研究の資料とか残ってるかもしれないし あと隠し部屋とかもあったりして!?早速行ってみよう! 答え聞かずにダッシュ その後も怒られない程度に色々くまなく見て回ってから え、落とす?何を……あっ!!(今気づいた 推理を楽しみすぎてそれどころじゃなかった そんなに笑うなよ…というか今日は俺ばっかり楽しんでて、アンタは退屈じゃなかったのか? |
||||||||
|
||||||||
A案 【場所】 大広間で食事を取った後空き部屋に移動。食事の後は庭園を散策。 【目的】 城でのパーティーを楽しむ。 【行動】 「成には以前自主訓練に付き合ってもらったので今度は私が成に付き合いますね。」 大広間で食事を取ってから空き部屋に移動して成と談笑しながら2人きりの食事を楽しむ。 今日は私から成に付き合うと言ったのにまたあの日の事を考えてしまっていたようで成に連れられて夜の庭園で一休みすることに。 庭園) 成と一緒に夜の庭園を散策。 成にダンスに誘われて手を取る。 「音楽も無いのにダンスですか?」 (でも音も無い静かな所でダンスも悪くないかもしれません。) (今だけは何もかも忘れてダンスに集中してもいいですよね。) |
||||||||
|
||||||||
【A案】 淡い桜色のドレスワンピ 誕生日に彼からもらった髪飾りをつけ(依頼67) 色の道を探索 まるで光の回廊ね 後ろを歩くシリウスを振り返る 光に映える黒髪 眇められた翡翠の双眸 見慣れたのに慣れない 彼の表情に胸がどきり 美しいステンドグラスに小さく歓声 来てシリウス ここに立つと虹の中にいるみたい 手を差し伸べる 沈黙に首を傾げ振り返る 僅かに苦し気な彼の顔 どうしたの? 彼の言葉に目を見開く 同時に思い出す 小さなシリウスの言葉(依頼78) 「僕といると危ない」から? わたし そんな風に思わない シリウスの側にいられるのが嬉しい 酷い言葉に囚われないで シリウスの気持ちは?わたしといるのは嫌? まっすぐ彼を見る 伸ばされた手に頬を染め 笑顔 |
||||||||
|
||||||||
煌びやかなパーティを抜け出し灯り片手にBの謎解き 手掛かりはないかと歩き回るうちに人の気配が少ない場所へ 靴音がやけに響く ベ 豪華なのもいいが 人の手で丁寧に守られてきたという建物そのままの雰囲気もいい ヨ そういうの好きですね 壁に違和感があり隠し通路的なものを発見 人の手が入っていないのか違い暗く埃が積もり 光の照らす先は闇に埋もれ不安誘う ヨ 行ってみます?(びびり顔 ベ ん 嫌ならやめておくか? 古い建物だし 出るかもな(にこ ヨ 嫌だなんていってませんけど やめてくださいそういうの 可愛げがあるんだかないんだか という言葉は飲み込み歩いてると いつぞやのように尻尾を握り気を紛らわせようとするヨナに 少々呆れ気味の目線を送ってみる |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
●私はくっつくのじゃ! 教団主催のパーティに参加した『シャムロック・ヴァルチャー』と『藤枝・神楽(ふじえだ かぐら)』は、大広間に置かれた数々の料理に興味深々の様子。 「あ、あれはなんじゃ?」 シャムロックの腕を少々強引に取りながら、神楽は今まで見たことのない珍しいお菓子を指差し、シャムロックに質問。 「あれは、カイザーシュマーレンという、パンケーキの一種ですね。確かこのカルテス・モンテ・デル城で愛されているスイーツと聞いたことがあります。ところで神楽はなんで腕を組むの?」 「私が組みたいからに決まっとるじゃろ。シャムロック様は嫌か?」 そうは言われても、シャムロック自身は、あまりベタベタする趣味はない。 でも、それを神楽に言ってしまうと、神楽が傷つくという思い。 だから、これもまた言い出せない。性格が優しい男の悲しいところとも言う。 シャムロックと神楽は、カイザーシュマーレンを取るべく会場内を移動するが、神楽の手は、そのままシャムロックの腕の中にある。 そんな浄化師は珍しいものではないので、周りに居る浄化師たちの妨げにもならず、神楽はご機嫌にスイーツを取り分け中。……そんな最中。 「仲がいいな?」 そう声をかけて来たのは、大広間の外に移動しようとしていた『ベルトルド・レーヴェ』、それに。 「野暮ですよ、ベルトルドさん」 駄目でしょうと言わんばかりに、ベルトルドを止める『ヨナ・ミューエ』の二人。 「いえ、いつものことですから」 なんとか場を保とうとするシャムロックに、あまり構わない神楽の追い撃ちが炸裂。 「いつものことなのじゃ!」 あーとは思うが、困るシャムロックに対し、ベルトルドは軽く笑い、ヨナは二人を見て少し羨ましそう? 「あのーヨナさん?」 「え?ああ、仲がいいことは、良きことですよね」 慌てるヨナに、なぜか呆れるベルトルドという変な構図。 「そうなのじゃ。仲よいは良きことなのじゃ、のうシャムロック様?」 「あまり神楽を煽らないで下さい。それでなくとも、パーティということで余計にはしゃいでいますので」 これは本当。神楽はパーティや沢山の料理にテンションが高めで、シャムロックの言うことを中々聞いてくれない。 「それは悪かった。ほら行くぞヨナ」 「はい、ベルトルドさん。お二人ともパーティを楽しんで下さいね」 「ありがとうございます」 「楽しむのじゃシャムロック様と」 ベルトルドたちが行ってしまうのを見送ったら、今度こそ神楽はスイーツに突進。 王様のパンケーキのトッピングに選んだのは、ストロベリーソース。甘い匂いが、シャムロックの鼻をくすぐるのは言うまでもない。 「神楽、そんなに夢中に食べると、キモノにソースがついてしまうよ?」 「え?ああ、大丈夫じゃ。キモノには『タスキガケ』といものがあるのじゃよ」 食べていた皿を一旦テーブルに置き、神楽が袖口から取り出したのは、一本の紐みたいなもの。 それを器用に袖から肩に回し、反対側を通して最初の袖辺りで結べば、キモノの袖口が邪魔にならないように出来た。 シャムロックはそれを見て、なるほどと思ってしまう。 「ニホンのやり方ですか?」 「そうじゃ、便利じゃろ」 「確かに便利です」 身軽になった神楽は、再びスイーツを食べはじめてしまう。 それを見て、無邪気で奔放だなと思うのはシャムロックのほう。自分はそこまで奔放にはなれないから。 「ほら、口端にソースがついています」 親指の腹でソースを拭ってあげれば、神楽は始めキョトンとし、そしてみるみるうちに顔が真っ赤になっていく。 「あ、あああ、ありがとう……なのじゃ」 尻窄みになる言葉に、クスクスと笑いながら。 「どういたしまして。そう、食べ終わったら、城の中を歩きませんか?」 「行く……。行くのじゃ!」 嬉しそうに残りのパンケーキを食べ終わるのを待ってから、シャムロックは神楽を大広間の外に連れ出した。 「……綺麗じゃ」 色の道の光の変化を楽しみながら、二人は近くにあったロココ調の長椅子に座りいい雰囲気。 勿論、神楽の手がシャムロックから離れることはなく、ずっと繋いだまま。 「光が装飾に反射して、古い物も新しく見えます」 「そうじゃの。それをシャムロック様と一緒に見られるのは幸せじゃ」 「そうですね」 少しだけシャムロックに寄り添う神楽に気づきながらも、今日くらいはとシャムロックは思う。 一日限りの、城でのパーティなのだから。 参加してよかった。そう思うシャムロックだった。 ●え?つき合いたい?? ロマン溢れる城の大広間。美麗なシャンデリアの灯りの中で、豪華な食事と少しのおしゃべりを楽しむ、浄化師や教団員たち。 そんな中で『ベルロック・シックザール』は、パートナーである『リントヴルム・ガラクシア』を連れ、パーティも早々に、大広間から飛び出していた。 「魔法陣の謎か。観光地扱いになっているから、謎といっても危険なものじゃないはずだ」 (ああ、なるほど。パーティより謎解き、元私立探偵のベル君らしいね) でも折角のパーティなのに抜け出したのだから、少しの意地悪も忘れていないよう。 「雰囲気のいい場所に行くのかと思ったら、そういうことね」 カルテス・モンテ・デル城の一番の見処である色の道を歩きながらも、この優雅な雰囲気を簡単に無視し、ベルロックは謎解きにご執心。 「気楽に、ただし本気でチャレンジしてみるか」 「はいはい。それじゃあ今日はベル君の助手役に徹するとしますか」 もっと言われると思ったのに、意外にあっさりと承諾したリントヴルムに驚きながらも。 「よし、行くぞリント!」 「キミに振り回されるのは、結構面白いからね」 こうして、ベルロックとリントヴルムの、カルテス・モンテ・デル城謎解きツアーが始まってしまった。 最初に基本中の基本である、噂されている中央の広間を、じっくりと捜索。 辺りの壁に広がる様々な絵画。床に浮き上がる不思議な魔法陣。ミスマッチに思えるが、こうして見ているとバランスが取れていて、魔法陣が先にあり、それに合わせて内装を施したようにも思える。 「なあ、この魔法陣なんだが、どんな使い道だとか、魔術の方向性だとか、リントはなにか分かるか?」 描かれた魔法陣を、しっかりと記憶して、更にメモを取りながらも、魔術にはあまり詳しくないベルロックは、知っていそうなリントヴルムに質問の嵐。 「うーん。僕の専門は、占星術とタロットだからねぇ」 お門違い。こう言いたいが、少々引っ掛かったのもあるよう? 「昔、魔術の取材をしたことが、あったような、なかったような気もするし……。城の主人の部屋とか書斎に、なにか手がかりが、あったりしないかな?」 浄化師になった今でも、私立探偵とフリー記者という間柄は、二人の中では変わらないもの。 「……そうか。研究資料とか残っているかもしれないし、後は隠し部屋とかもあったりして?」 「まあ確率論だけどね」 「早速行ってみよう!」 「あっ、待ってよー!」 ベルロックはリントヴルムの話を最後まで聞かずに、主人の部屋へと猛ダッシュ! (……余計なことを言わなきゃよかったかな) と、少しだけ頭の隅で思ったが。 (まあしょうがない。今日の僕は助手だしね) そう思い直し、ベルロックの後を追いかけ始めた。 城の全てを使ってよいが、今の城主のプライベート空間も存在するわけで、後々怒られない程度に、様々な場所をくまなく見て回る二人。 主人の部屋には、手がかりらしき物は既に無く、中央の広間の真下になる、薄暗い地下部分に行っても、やはり魔法陣の手がかりになりそうな物や場所は何もなかった。 でも、それまでの過程が大切。思考を繰り返し、当たりがありそうな場所を、しらみ潰しに探す。それが探偵と記者というものだから。 ある程度探し回った後、一息を入れるリントヴルム。でもそこで『あること』に気づき、思わず笑いが込み上げて来る。 「ところでベル君。これもデートだと思うんだけど、今日は何も仕掛けて来ないね?ほら、僕のことを落とすとか言っていたじゃない」 「え、落とす?なにを……あっ!!」 リントヴルムに言われて、ベルロックも今更ながら気づいたよう。 二人きりで城の散策。デートと言えば、デートとも取れることを。 「推理を楽しみ過ぎて、それどころじゃなかった」 「……ぷっ。……あははは」 そのベルロックの答えに、リントヴルムは今度こそ吹き出して笑ってしまう。 久し振りに見る、リントヴルムの無邪気な笑顔に高笑い。 「そんなに笑うなよ……。というか、今日は俺ばかり楽しんで、アンタは退屈じゃなかったのか?」 「いったよね、今日はベル君の助手役に徹すると。それに昔に戻ったようで楽しかったよ」 リントヴルムの本音に安堵しながらも、ベルロックの悪戯の虫がムクムクと沸きだしてしまうのを隠し切れない。 「じゃ今から落としにかかろうか、リント?」 「えっ?」 ベルロックとリントヴルムの城での一夜は、まだまだ終わりが見えないようである。 ●薄明かりの舞踏会 教団主催のパーティに『神楽坂・仁乃(かぐらざか にの)』と『大宮・成(おおみや なる)』も、息抜きとしてやって来た。 それにはこんな理由がある。 成は仁乃を誘うか迷っていたが、仁乃の方がパーティに行くと言い出した。 「にのからパーティに付き合うなんて言うなんて、珍しいね?」 「成には以前自主訓練に付き合って貰ったので、今度は私が成に付き合いますね」 言われた成は、その大きな目を更に開いて驚いたが、仁乃が自分から付き合うと言うのに、断る理由なんて存在しない。と、二つ返事で頷いていた。 メインである大広間に入れば、沢山の教団関係者が入り乱れ、その四方を囲むようにある食べきれないほどの料理の数々に目が眩みそう。 「凄い……。でも」 「食事を取り分けたら、別の部屋で食べよう。どの料理が食べたいの?僕が取って来るから」 「えーと。あのピザのような見た目の物と、ギヨームさんが手作りしているスコーンがいいです」 「うん、分かったよ」 あまり人混みが得意ではない仁乃を、大広間の隅に置き、成は仁乃が言った料理を貰いに行く。 「へー。ピザ生地に生ハムトッピング、その上にサワークリームって美味しそう」 仁乃も見る目があるなと成は思い、次に料理長ギヨームの、お手製のスコーンを貰えば、出来立て熱々のまま。 このままを仁乃に食べて欲しくて、一目散で仁乃の元へと戻って来た。 「客間は好きに使っていいんだって。行こうにの」 「ええ。どの客間がいいんでしょうか」 そんなことを言い合いながら、大広間からまだ誰も使用していない客間へと移動。 客間も豪華で、一番奥の壁には巨大な絵画が飾られ、その下に丁寧に仕立てられたソファーセットがあり、回りはアーチ状の壁細工。家具は少なく細やかな装飾だけが目を惹き付ける。 「逆に居心地が悪くないですか?」 「うーん、ちょっと豪華過ぎるかも」 でも食事はちゃんと食べよう、という成の言葉に、仁乃もソファーに腰を落ち着けて食べる気にはなったよう。 「見た目はほぼピザなのに、サワークリームに変えただけで、こんなに美味しいなんて」 フラムクーヘンを一口食べれば、パリパリのピザの生地に生ハムの塩分、そしてサワークリームの酸味が絶妙なハーモニーを生み出す。 更にスコーンが温かく、少し溶けたクリームとジャムのトッピングがまた美味しい。 「こんな凄い部屋で美味しい食事。やっぱりパーティに参加してよかったね、にの」 「……え?ええ、そうですね成」 仁乃の思考の行き先は、やはりあの日のこと。 仁乃が成を誘ったのに、幸せに近づけば近づくほど、あの日のことが鮮明に思い出されてしまう。 消えない罪悪感は、仁乃の本当の心を隠す。 それを成が気づいているとも知らずに。 「ねえにの、一休みがてらに庭園を散策しようよ」 突然の成の言葉に、仁乃は首をかしげ。 「庭園……ですか?」 「うん庭園。僕少し食べ過ぎちゃったから動きたいんだ。駄目?にの?」 成の提案を断る理由もなく、仁乃は成に手を引かれ、色の道を抜けて庭園へと連れ出されてしまう。 庭園も全て手入れが行き届き広大。そんな庭園には昔ながらの蝋燭が灯されたランプが等間隔に置いてあり、仄かな明かりが通る人たちを照らす。 成は蝋燭に仄かに色づく仁乃の顔が綺麗だなと思う。 漆黒の髪が照らされ、穏やかな蝋燭の炎の色が、仁乃の赤い瞳を優しく映す。 「にの、片手を出して?」 「??」 不意に立ち止まり、仁乃に手を差し出すように言う成を不思議だと思うが、成のその小さな手を、仁乃は無意識の内に取ってしまっていた。 「パーティなんだから、もっと楽しまないと損だよ。だから一緒に踊らない?」 「でも音もないのにダンスですか?」 仁乃が考えごとを忘れられるように、忘れて楽しめるように。 そう思い成は仁乃をダンスに誘った。……音はないけれど。 「音楽なんていらないよ」 (にのとダンスを踊るのに、音楽なんて必要ない) 「そうですね、踊りましょうか成」 (音のない静かなところで、ダンスも悪くないかもしれません) 成が仁乃の手を引き動き出す。 ダンスは簡単なワルツ。広い庭園を、まるで二人だけのものと言わんばかりに、仁乃と成はダンスを続ける。 (今だけは……。今だけはなにもかも忘れて、ダンスに集中してもいいですよね) 淡く灯るランプの元で、踊り続ける仁乃と成。 今はなにもかも忘れた二人だけの時間。 その魔法は、暫くの間仁乃の心を解放してくれた。 ●礼拝堂の奇跡 優美と機能美をかねそなえた、カルテス・モンテ・デル城。 そんな城の優美な場所を歩くのは、ドレスワンピに身を包み、大切な髪飾りを水色の長めの髪につけた『リチェルカーレ・リモージュ』。 そして、その少し後ろに、紺色のフロックコートのようなジャケットに、アイスブルーのシャツを身につけた『シリウス・セイアッド』が、大切な宝物を見るような目で見詰めているのを、リチェルカーレは気づいているのだろうか。 今は夕暮れ時。色の道が昼の金色の光から、夕方の黄昏色に変わっていく時間。そんな優雅な時を、歩きながら楽しむリチェルカーレとシリウス。 「まるで光の回廊ね」 嫌みにならない程度の、胸元から腰ちかくまであるフリルと、ふわっとしたスカートを翻し、シリウスの方へと振り返るリチェルカーレは、満面の微笑み。 「あ、ああそうだな」 青と碧の二色の瞳に魅入られたように、息を呑み言葉が上手く出て来ない。 そしてまたリチェルカーレも、いつも以上に光に映える黒髪と、その細められた翡翠の相貌に目が会ってしまい、見慣れたのに見慣れないシリウスの表情に、胸がどきりと高鳴る。 「もう少し向こうに行ってみないか?」 「ええ。道はずっと繋がっているんですもの、行ってみたいです」 城の中は広く、目視では見切れないほどの道が永遠と続いている。 迷路みたいな城内を散策していた時、回廊の行き止まりに差しかかり、そこに中に入れる両開きの大扉を二人は見つけた。 「入ってみようかリチェ」 そう言い、シリウスが扉を開けたその先には……。 「うわあー綺麗!」 真っ先に目に飛び込んで来るのは、美しく大きなステンドグラスの数々。次に隙間なく描かれた天井。その下には祭壇。 そうここは、カルテス・モンテ・デル城の礼拝堂。 「来てシリウス、ここに立つと虹の中に居るみたい」 ステンドグラスから差し込む光の中に立ち、シリウスに向かって手を差し伸べるリチェルカーレに、シリウスは応えようとして……でもすぐに、その動きは止まってしまう。 (触れられない。触れてはいけない) 何度も思ったことが、シリウスの頭の中を駆け抜ける。 「……駄目だ」 思いの力が強すぎて、シリウスはそれだけを言うのがやっと。 「どうしたの?」 駄目という言葉と共に見える、シリウスの苦しげな顔。 駄目と言われ、なぜという思いと一緒に、目を見開き驚くリチェルカーレだったが、それと同時に小さなシリウスの言葉が脳裏を掠めてゆく。 『だって、ぼくのせいでみんな死んだって。あぶないから、ここでかくりするんだって』 あの時のシリウスが言った言葉。 小さいながらも、傷ついていた言葉。 リチェルカーレは思わず口に出してしまう。シリウスさえ知らない、彼が語った言葉を。 「……『僕といると危ない』から?」 「なぜ……!?」 驚きに、リチェルカーレを見ることしか出来ないシリウス。なぜそれをリチェルカーレが知っている? シリウス自身は、リチェルカーレにそれを言ったことはない……はずなのに。 「わたし、そんな風に思わない。シリウスの傍にいられるのが嬉しい。酷い言葉に囚われないで」 「…………」 真摯に告げられるリチェルカーレの言葉に眼差しに、どこか呆然と、信じられないという表情で聞いているシリウス。でも最後にリチェルカーレが。 「シリウスの気持ちは?わたしといるのは嫌?」 そう言われ、誰よりも大切な少女を見詰め。 「……俺、は」 リチェルカーレがああ言ってくれても。シリウス自身が災いを招くのだと、その意識は拭えないけれど。 真っ直ぐにシリウスを見るリチェルカーレの瞳に、シリウス迷いながらも、その小さく細い手を取り、初めて自分の意思で、そっとリチェルカーレを抱き締めた。 「俺も……。俺もお前の傍にいたい」 「シリウス……。はい」 伸ばされた手。抱き締められ感じるシリウスの温もり。そして掠れながらも告げられた言葉。 その全てに心臓がどきっとし、頬が熱くなるのが分かるほどに赤らめながら、リチェルカーレがシリウスに向けたのは……笑顔。 リチェルカーレの笑顔に、更に抱き締める手に力が籠るシリウスは、この幻想的な空間で、リチェルカーレを離すことが出来ず。 言葉は出ないが、ただずっと温もりを確かめ合うように、リチェルカーレとシリウスは抱き締め合っていた。 ●怖いものは怖いんです! 教団主催の城でのパーティなのに、『ベルトルド・レーヴェ』は、パーティもそこそこに、城の中を奥へ奥へと進む。 歩き回るうちに、いつの間にか人の気配が少ない場所に向いてしまったらしく、靴音だけがやけに鳴り響く。 「豪華なのはいいが、人の手で丁寧に守られて来たという建物そのままの雰囲気もいい」 優雅と堅牢をあわせ持つ、カルテス・モンテ・デル城。 優雅な部分は、観光客やパーティに。 堅牢な部分は、一部の専門家に人気が高いのも特徴の一つ。 「そういうの好きですね」 ベルトルドの後ろを、キョロキョロしながら歩く『ヨナ・ミューエ』は、華やかな装飾の世界から離れ、石と漆喰ばかりの場所に少々戸惑い気味。 そんなヨナを知ってか知らずか、ベルトルドは歩みを止めることはなく……いや止まった? 「ここだけ石の色がおかしくないか?」 石の壁に触れれば、確かにある違和感。その周辺をくまなく探せば、隠し扉のような仕掛けを見つけた。 ゴゴゴと動く石壁が開けば、中は人の手が入っていないかのような、薄暗く埃が積もった通路のような道。 開いた部分が照らす光の先は、深い闇に埋もれたように見えて、ヨナの不安を更に誘う。 「い、行ってみます?」 「ん、嫌なら止めておくか?古い建物だし……出るかもな」 (恐いと顔に書いているんだが) ヨナの様子を見て、確信犯のようにベルトルドは笑う。 「嫌なんて言ってませんけど。止めてくださいそういうの」 (こ、怖くなんてないんだから) そう思い込もうとしても、暗闇は廃墟の町を思い出す。 あの一人残された心細さを。ベルトルドを探し求める必死さを。 ベルトルドは通路に足を踏み入れるが、それと同時に、可愛げがあるんだかないんだか、という言葉を飲み込んでしまった。 なぜならヨナが廃墟の町で見せたように、またベルトルドの尻尾を握り、気を紛らわせようとしているため。 (尻尾を掴まれるのは痛いと言ったんだが、すっかり忘れているな) 立派に生えた尻尾は、感覚があるのだから痛いのは当たり前。 少し呆れ気味にヨナに目線を送れば、しっかりと目が合ってしまう。 「な、なんですか?」 「そんなに強く握るな。こっちにしてくれた方が動きやすい」 ヨナに差し出したのは、空いているベルトルドの片腕。 一瞬どうしようと迷ったヨナだけど。 「……むぅ」 そう小さな唸り声を出し、尻尾を離しベルトルドの腕にしがみついた。 歩いても、歩いても続く通路。いや、迷宮なのだろうか? 時々扉があり、開いて見れば小さな部屋に朽ち果てた家具が残っていたりもする。 「この場所で実験でもしていたのだろう」 「べっ、ベルトルドさん、鼠!」 ベルトルドは面白そうに、この闇の通路に想像を膨らませるが、ヨナは闇の現実面に悲鳴を上げてばかり。 「やっぱり恐いんだろお前」 「お化け屋敷は大嫌いです!」 「ははは、お化け屋敷な、いいことを言う」 「冗談じゃありません、もう!」 余裕を見せるベルトルドに、ヨナは更に腕を強く握り、その漆黒の毛に覆われた腕を、少しだけつねってみたりと、ベルトルドには分からない行動ばかり。 ただしベルトルドの腕から離れないが。 闇の迷宮を歩いて、ほどよく歩き疲れた頃、とうとう行き止まりに出くわした。 そこにはまた隠し扉らしきものが存在し、開いたその先は……まぶしいほどの光の海。 「…………」 目が光に慣れた頃、周りをよく見れば、そこは最初に居た、魔法陣がある中央の広間の端っこに、揃って調子抜け。 あれだけ歩き捜索したにも関わらず、元の位置に戻ることになろうとは、ベルトルドでさえ想像しておらず。 「謎は謎のままか。それとも昔に調べ尽くされてしまったのか。これもまた古代のロマンなんだろう」 束の間のラビリンス。でもほどよい緊張感。中央の広間に吹く風が、心地よくベルトルドの髭を撫でてゆく……のだが、問題が一つ。 「で、いつまでこうしていようか?」 くっついたままのヨナに、ベルトルドは声をかけてみた。 慌てて離れると思いきや、俯いたまま更にベルトルドに身を寄せるヨナ。 「……もう少しだけ」 「???」 いつもと様子が違うヨナに、ベルトルドは不思議顔。 そして、心の中では首を傾げ『?』と、ヨナの行動が理解出来ず、途方に暮れるのは言うまでもない。 「も、もう少しだけでいいですから」 「あ、ああ」 (本当に恐がらせてしまったか?) などと考えながらも、ベルトルドはヨナの手を離すことだけは、決してしなかった。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||
|
|