~ プロローグ ~ |
枢機卿。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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柔らかなシフォンの水色ドレス わあ… 綺麗な人たちが沢山 (1) ファウスト様?初めまして にっこり笑顔でおしゃべり 恋愛関係疎いので 褒められれば照れて「ありがとうございます」 つきあわない?には「どこまで行けばいいでしょう?」 後ろに下げられ 瞳をぱちぱち クリスさん シアちゃん 仲の良い二人に嬉しそうに笑顔 シリウスへの勧誘に 何かお困りですか?ご領地や親しい方が使徒やベリアルの被害にあっているとか? (2) 軽やかな円舞曲に目をきらきら 差し出されたシリウスの手に頬を染め ぱっと笑顔 ホールの隅で踊りながら ファウスト様 優しそうな方ね だって わたし達が嫌いならあんな風に話しにこないでしょう? 皆で優しい世界が作れたらいいのに |
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ラベンダーのような薄紫色のドレスと同色のリボンで髪を纏め クリスの腕に捕まり半分隠れるように ごめんなさい…こう言う、華やかな場所…慣れてなくて…… 1.友人達がいるのを見つけて、若干表情が明るく あ、クリス、リチェちゃん達が… でもお話中、みたいです、ね え、行くんですか…? リチェちゃん(小さく手を振って) お知り合い、ですか? なんだか、クリスの表情が…すごく楽しそう、なんですけど… クリスと同類…? このファウストさんって方が…? 2.差し出された手に俯きつつ手を重ね 踊るのヘタですけど…お願い、します… ドキドキするのは仕方ない、ですよね 笑顔の人は信用できないとさっき言ってましたけど 私はクリスの笑顔、信じてます |
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目的 舞踏会を楽しむフリをしつつ貴族の思惑を探る 少しでも教団内通者の手掛かりが欲しい 煌びやかな貴族たちの舞踏会に少々圧倒され壁際族 ベ …この間の古城でのパーティも豪華だったが こちらは流石貴族の催しと言ったところか ヨ 次期当主のお披露目ですし、ね(少し複雑な顔 それにしてもウボーさん、立派な家柄の方だったのですね ノルウェンディ王にお会いした時もいらっしゃいましたし (今日はどうして魔法で姿を変えているのでしょうか) ファウストと接触 ヨナ ナンパなお誘いには笑顔のまま冷えた空気 第一印象は非常に悪い ベ ヨナがあまり感情的にならないよう宥めつつ 浄化師としてファウストの下に付く利点など詳しく聞く その中で どちら側か も探る |
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おじさん、今夜は酒はダメよ。失言で嫌な注目集めたくないから。あと、前のパーティー(16話)みたいに移民団体の宣伝とかしないでね。出自知られると足元見られるかも。 「わかったよ、お喋りはお前任せにして、自分がどう見られてるかだけ気にしながらタダ飯かっ食らってるさ」 ・ファウスト ラファエラは冗談めかしてどこか挑発的な対応(ナンパ) エフドは受動的にしか話さない。貴族的料理になれないので、無礼なマナーをしてないかファウストに聞いてみるなどして新参っぽく振る舞う その後ラファエラはファウストにダンスの手ほどきをいただけないかと提案してみる。 今後のこういう場面のためにと言いながら、勿論彼に何かを感じて。 |
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~ リザルトノベル ~ |
●舞踏会に参加しよう 心地好い交響曲が、静かに流れていた。 少人数の室内楽ではなく、オーケストラによる演奏。 ダンスホールでの演奏ということもあり、10数人と小規模だが、交代要員も含め用意されている。 だからこそ、途切れることなく音楽が満ち、人々のお喋りと混ざり合っていた。 周囲を見渡せば、女性は艶やかなドレスに身を包み、男性は引き立てるように落ち着いた身なりに固めている。 そんな舞踏会に、浄化師達は参加していた。 「わあ……綺麗な人たちが沢山」 華やかなドレスを着こなす女性たちに、『リチェルカーレ・リモージュ』は感嘆の声を上げる。 けれどその言葉は、彼女だって例外ではない。 柔らかなシフォンの水色ドレスが、リチェルカーレの眼や髪の色と良く似合っている。 貴族達が参加している舞踏会の中であっても、彼女は一際愛らしく目を惹くほど綺麗だった。 それは、彼女と共にある『シリウス・セイアッド』も一役買っている。 アイスブルーのシャツに紺のジャケット、そして碧の石のついたループタイ。 リチェルカーレの装いに合わせているような服装は、2人で居ると一層人目を惹く。 その視線にさらされながら、シリウスは小さく呟く。 「……内面が『綺麗』な人間がどれだけいるか」 教団や貴族には不信感ばかり大きなシリウスとしては、そう思わずにはいられない。 そんな彼をリチェルカーレは、きょとんとした表情で見つめている。 「……なんでもない」 淡い苦笑を浮かべ、シリウスはリチェルカーレに提案する。 「これからどうする?」 これにリチェルカーレは、ふんわりと笑顔を浮かべ返した。 「次期当主様にご挨拶しようかと思うの。ウボーさんの甥御さんらしいし、お会いするのが楽しみ」 「そうか」 シリウスはリチェルカーレに賛同すると、共に5歳の少年の元に。 2人は和やかに迎え入れられると、元気の良い少年の相手をしてやった。 そうして舞踏会に参加しているのは『アリシア・ムーンライト』と『クリストフ・フォンシラー』も同様だった。 「落ち着かない?」 クリストフは、自分の腕に捕まり、半分隠れるようにしているアリシアに声を掛ける。 するとアリシアは、少し恥ずかしそうに返した。 「ごめんなさい……こういう、華やかな場所……慣れてなくて……」 これにクリストフは、アリシアを安心させるような優しい声で返す。 「アリシアは素直に楽しんでいればいいと思うよ。あまり無理はしないで」 「でも……」 すまなそうに言うアリシアに、クリストフは笑顔を浮かべ応えた。 「気にしないで。今日は、舞踏会に来たんだから。こういう時は、男がエスコートするものなんだ。リードさせて貰えると助かるよ」 茶目っ気を込めて口にするクリストフに、アリシアは安心するような笑みを浮かべ返す。 「はい……お願い……します」 そうして2人は、舞踏会を一緒に周っていく。 すると周囲の貴族たちは、時折視線を向けることも。 その視線にアリシアは気後れしたのか、ぎゅっとクリストフの腕を掴み身体を寄せる。 そんなアリシアをエスコートするようにして一緒に歩きながら、クリストフは貴族達を見極める。 (さて俺達にどんな反応するのかな、お貴族様達は) 笑顔を浮かべさりげなく視線を向けると、どこか微笑ましげに見られている気がする。 (敵意や蔑視、そういった物は感じられないな。今日は次期当主のお披露目の会ということだし、身内に近い貴族が集まっているってのも大きいのかもな) クリストフの見極めは正しかったが、それに加えて2人の装いも一役買っている。 アリシアはラベンダーのような薄紫色のドレスに、同色のリボンで髪を纏め。 クリストフは白いシャツに黒のタキシード、そしてアリシアのドレスと色を合わせたアスコットタイ。 女性であるアリシアは自分の魅力を際立たせながら、この場の雰囲気に融け込むような装いをし、男性であるクリストフはアリシアに合わせた服装。 舞踏会は社交場であると同時に記録に残らない政治の場でもあるので、装いは無言の意志表明としての役割も持つ。 アリシアとクリストフの装いは、この場に敬意を払う恋人達、といった印象を貴族達に与えていた。 しかも、アリシアを気遣いながらクリストフがエスコートしているので、初々しくて可愛らしいカップルで微笑ましい、と思われていたりする。 そんな視線を貴族達に向けられながら、2人は舞踏会場を巡っていた。 そうした微笑ましい視線を貴族達に向けられている浄化師達が居る一方、ご婦人貴族達に囲まれる浄化師も。 「すみません。少し離れます」 残念そうな声を上げるご婦人貴族達を背に、『ヨナ・ミューエ』は壁際に避難する。 「大変だったな」 先に避難していた『ベルトルド・レーヴェ』に、ヨナは気疲れした声で返す。 「幾つか話を聞けましたけど、正直疲れました」 ヨナは、今回の舞踏会に参加するにあたって、貴族達の思惑を知れないかと思い行動していた。 それはニホンへの航海の時にも感じた、教団内通者について、少しでも知ることが出来ないかと考えてのことだ。 だから舞踏会を楽しむフリをしつつ貴族の思惑を探っていたのだが、そこで思いっきりご婦人貴族達に捕まったのだ。 「なんというか……皆さんキラキラしてました」 服装もだが、纏う気配まで煌びやかな貴族達との会話に、ヨナは少々圧倒されていた。 そんなヨナに、ベルトルドは返す。 「この間の古城でのパーティも豪華だったが、こちらは流石貴族の催しと言ったところか」 「次期当主のお披露目ですし、ね」 ヨナは少し複雑な顔をすると、続けて言った。 「それにしてもウボーさん、立派な家柄の方だったのですね。ノルウェンディ王にお会いした時もいらっしゃいましたし」 (今日はどうして魔法で姿を変えているのでしょうか) 自分の存在を隠そうとするようなウボーに、ヨナが気にしていると、メイド姿のセパルがひょいっと近付く。 そして魔法で、ここでの会話が周囲に聞こえないようにしてから言った。 「ノルウェンディの王さま、伯父さんらしいし、枢機卿クラスでも下手に手を出せない家だよ。ウボーの家」 「そうなんですか? でも、それなら……」 言いよどむヨナに、セパルは返した。 「死んだふりして裏で動いてるからね。現体制にバレると拙いし。だからウボーの家としたら、何かあればウボーの独断ということで切り捨てられるようにしてるんだよ。もう廃嫡されてるし」 えぐいことを言いつつ、さらに付け加える。 「しょうがないんだよ。ウボーの家に何かあったら、万単位で領民に影響でるし。それをウボーも、ウボーの家族も分かってるから。そういう所、貴族なんだよ。ウボーの家は。あ、でも家族仲は良いんだよ。すごくね。だから甥っ子の晴れ舞台に来てるのがバレないよう魔法を使ってここに来てるってわけ。もちろん家族は知ってるから、舞踏会が終わったあと会いに行く予定なんだ」 「……色々あるんですね」 セパルの説明を聞いたヨナは、再び貴族達から情報を得るために向かおうとする。 「ヨナ?」 ベルトルドの呼び掛けに、ヨナはやる気をみせた。 「私達に、出来ることをしましょう」 「……そうだな」 苦笑するようにして、ベルトルドはヨナと共に貴族たちの元に足を進めた。 そうして貴族達から情報収集をする者達が居れば、この場に馴染もうとする者達も。 「おじさん、今夜は酒はダメよ。失言で嫌な注目集めたくないから」 ホール内に設けられたバーに視線を向ける『エフド・ジャーファル』に、パートナーである『ラファエラ・デル・セニオ』が嗜めるように言った。 これにエフドは肩をすくめるようにして返す。 「ああ、分かってる。今日は仕事で来てるからな。タダ酒は諦めるとするさ」 「それだけじゃ足らないわよ」 念を押すようにラファエラは続ける。 「あと、前のパーティーみたいに移民団体の宣伝とかしないでね。出自知られると足元見られるかも」 「わかったよ、お喋りはお前任せにして、自分がどう見られてるかだけ気にしながらタダ飯かっ食らってるさ」 エフドはラファエラに応えると、用意されている料理を覗いてみる。 「見たことのない料理が多いが……」 立食形式なので、一品ごとが小皿に盛りつけられた料理がいくつもある。 貴族達を見れば、思い思いに手に取って、食べれば周囲に控えているメイドと執事たちが皿を受け取り片付けるらしい。 エフドは試しに、小さなグラスをひとつ手に取ってみる。 中身は、とろみのあるスープだった。 飲んでみると、魚のようでいて肉のようでもある旨味が味わえる。 「美味いな……とはいえ、なんのスープだ?」 「……海亀でしょ、多分」 ラファエラも飲んでみて、エフドに応える。 「よく分かったな」 「……昔、飲む機会があったのよ」 「そうか」 元々がお嬢さまなラファエラは、貴族が口にするような食材も口にしたことがある。 だが、それは昔のこと。 今を共にあるパートナーは、そのことには触れず、いつも通りにふるまった。 「貴族相手は任せる。俺はサポートだ」 「戦いの時とは逆ってことね」 「浄化師の仕事は荒事だけじゃないからな。適材適所で行こう」 「ええ、良いわよ。おじさん」 どこか遊ぶような響きを込めラファエラは返すと、エフドと共に舞踏会を巡って行った。 こうして浄化師達が舞踏会に参加していると、枢機卿のひとり、ファウストが声を掛けてきた。 ●貴族は笑顔の仮面を張り付ける 「初めまして」 にっこり笑顔で、リチェルカーレは声を掛けてきたファウストに返した。 これにファウストは感激したように返す。 「ああ、姿だけでなく声も愛らしくて美しいねキミは!」 美辞麗句を並べ立て、たて続けにリチェルカーレを褒めるファウスト。 恋愛関係に疎いリチェルカーレは、褒められて照れながら礼を返す。 「ありがとうございます」 素直なリチェルカーレに、ファウストはさらに感激したように言った。 「可憐だ。キミが許してくれるなら、付き合って欲しくなるよ!」 これにリチェルカーレは、小首を傾げながら返した。 「どこまで行けばいいでしょう?」 ファウストを気遣うような、やさしい声。 これにファウストが目を細めていると、すっとシリウスが前に出る。 それまで社交はリチェルカーレに任せ、貴族達の視線や会話を冷ややかに見つめ人間観察に集中していたシリウスだが、さすがに今のこの状況を黙ってみていることはできない。 内心では、リチェルカーレの無邪気な態度に頭を抱えながら、守るように前に出たのだ。 するとファウストは、芝居がかった態度でシリウスをスカウトする。 「強そうだね、キミ! キミみたいに強い人がいると心強いよ! 私の所で働いてみないかい?」 これにシリウスは、それまでの無表情から眉を顰める。 明らかに不穏な空気が漂う中、そんな様子に気付いた人物が。 「あ、クリス、リチェちゃん達が……」 友人を見つけ、若干表情が明るくなったアリシアだが、すぐに今の状況に気付いて続ける。 「でもお話中、みたいです、ね」 これにクリストフは視線を向ける。 (シリウスに話し掛けてるのは――) ファウストを見詰め、その立ち振る舞いから判断する。 (随分と、クセのある人物みたいだな) 精神科医を目指し、心理学を高い水準で修めているクリストフの分析は、的を得たものだった。 (馴れ馴れしいようでいて、パーソナルスペースを気遣ってる。距離は詰めるけど踏み込まない感じだな) 「クリス?」 面白そうに笑顔を浮かべるクリストフにアリシアが尋ねると、すぐに応えは返ってくる。 「うん、知ってる顔がいて良かったね、行ってみよ」 「え、行くんですか……?」 「シリウスの仏頂面、あのまましといたらマズイよ、きっと」 くすっと笑い、シリウスの元に向かう。 一緒にアリシアも向かうと、まずは友人に声を掛ける。 「リチェちゃん」 小さく手を振って挨拶する。 これにリチェルカーレは嬉しそうに返す。 「シアちゃん。クリスさんも」 仲の良い2人に、嬉しそうに笑顔になる。 そんな女子の微笑ましさの一方、男性陣の方は、少しばかりキナ臭かった。 「勧誘してたみたいだけど、是非詳しく話を聞きたいなあ。ねえ、シリウス?」 クリストフはシリウスの肩にポンと手を置いて、ひょっこり顔を覗かせる。 その表情には、笑顔が浮かんでいた。 (なんだか、クリスの表情が……すごく楽しそう、なんですけど) アリシアには、そう思えた。 それが何でなのかをアリシアが考えている間に、シリウスがクリストフの言葉の後を続けるようにして、ファウストに言った。 「……俺たちは浄化師だ。貴族社会で役に立つと思えないが?」 これにファウストは応えた。 「役に立つとも! キミ達だからこそ役に立つことはいくらでもあるんだ!」 笑顔のまま美辞麗句を並べるファウストに、クリストフは言った。 「終始笑顔な奴はあまり信用しないと決めてるんだ。俺と同類だと思うんでね。だから本音で頼むよ」 笑顔で言うクリストフ。 そのやりとりを見ていたアリシアは思う。 (クリスと同類……? このファウストさんって方が……?) アリシアが見比べるように見詰めていると、ファウストはクリストフに言った。 「同類だなんて! それは友達になろうってことかい? 素敵な申し出だね!」 韜晦するような言葉を口にし続けるファウストに、リチェルカーレが心配するような声で言った。 「何かお困りですか? ご領地や親しい方が使徒やベリアルの被害にあっているとか?」 これにファウストは、瞬くような一瞬だけ、酷く優しい表情を見せた。 けれど、あくまでも一瞬。 すぐに軽薄な表情で言った。 「私を心配してくれるのかい? 女神のようだねキミは! ぜひダンスに誘いたい所だけど――」 ファウストの言葉の途中で、周囲には軽やかな円舞曲が流れ出す。 そしてファウストは続けて言った。 「パートナーがいる相手に、ダンスの申し出が出来る度胸は無いんだ。残念!」 そう言うと、ダンスに誘う相手を探しにどこかに行った。 (なんだったんだ……) 不得手な探り合いに疲労を感じたシリウスが息を吐き、リチェルカーレに視線を向けると、軽やかな円舞曲に目をきらきらさせているのに気付いた。 「……リチェ」 悩んだあと、シリウスはリチェルカーレに手を差し出す。 差し出された手に、リチェルカーレは頬を染め、花咲くような笑顔を見せる。 その笑顔に、シリウスは見惚れてしまう。 高鳴る鼓動を抑え、頬を染めながら、2人は手を重ね踊り始めた。 最初は静かに、少しずつ軽やかな円舞曲に合わせ、2人はダンスを楽しんでいく。 他の人達の邪魔にならないように、ホールの隅で踊りながら、リチェルカーレはシリウスに言った。 「ファウスト様。優しそうな方ね」 「……優しそう? 俺には何を考えているのかわからなかった」 「だって、わたし達が嫌いならあんな風に話しにこないでしょう?」 やさしさと聡明さを見せながら、思いの強さも口にする。 「皆で優しい世界が作れたらいいのに」 リチェルカーレの言葉に目を見張るシリウス。 (お前は、そう思えるんだな。リチェ) リチェルカーレの強さと優しさを改めて想いながら、シリウスはダンスを続けていった。 そんな2人と同じように、アリシアとクリストフもダンスを楽しんでいた。 「せっかく来たんだし楽しもう」 クリストフは手を差出し、ダンスに誘う。 「お嬢さん、俺と踊ってくれませんか?」 アリシアは、差し出された手に俯きつつ手を重ね、クリストフの誘いに応じる。 「踊るのヘタですけど……お願い、します……」 信頼して体を預けるようにしながら、アリシアはクリストフのリードに合わせ踊っていく。 手を重ね、合わせる指にお互いの体温が混ざり合い、共にある近さを感じ取る。 (ドキドキするのは仕方ない、ですよね) 高鳴る鼓動を感じながら、アリシアはクリストフに視線を合わせ言った。 「クリス」 「なんだい?」 「笑顔の人は信用できないとさっき言ってましたけど」 アリシアは、淡い笑顔を浮かべながら続ける。 「私はクリスの笑顔、信じてます」 これにクリストフは、心からの笑顔で返した。 そうしてパートナーとダンスを楽しむ浄化師達が居れば、ファウストにナンパされている浄化師も居た。 もっとも、本人はまっぴらごめんだったが。 「他にどなたか誘われたらどうですか?」 鉄の笑顔で、ヨナはファウストのダンスの誘いを断った。 これは男女で対応が違ったことに憤慨していることが大きい。 最初、ベルトルドをスカウトするようなことを言っておきながら、ヨナに気付くと今度はナンパに素早く切り替えたのが気に喰わない。 元々ヨナは、世界の救済のために浄化師を志し、今では少しその辺りは柔軟さを見せたとはいえ、女性である前に浄化師である。 だというのに、浄化師であることを無視されて、ナンパである。 険悪にもなろうというもの。 その空気を和らげるように、ベルトルドは口を挟む。 「話を戻すが、俺達が貴方の下に就くとして、どんな利点があるのだろうか?」 これにファウストは底抜けに明るい声で返した。 「すごいよ! 色々便利なことがあるさ! なにしろ私の家は大貴族だからね!」 「できれば、家ではなく貴方個人の美点を教えて貰えませんか?」 変わらず冷えた鉄の笑顔でヨナはファウストに返す。 その機嫌の悪さに、思わずベルトルドは耳をうなだらせながら、ヨナがあまり感情的にならないよう宥めつつファウストを探っていく。 「悪いが貴族のことはうとくてな。例えば、今回の舞踏会を開いた家とは、どういう関係なのだろうか?」 「さぁ?」 笑顔を浮かべ平然とファウストは言った。 「そういうのは全部、爺がやってくれるから! そんなことよりダンスをしよう! お互いのことを知ることが出来る筈さ!」 「ならベルトルドさんと踊られたらどうですか?」 「いいね! そうしよう!」 「……え?」 「……は?」 ヨナとベルトルドが呆れ声を上げる中、ファウストはベルトルドの手を取ってダンスに誘う。 「いや、待っ――」 ベルトルドが止める間もなく、引っ張るファウスト。 とっさに足を踏ん張り留まろうとするも、その瞬間、力の向きを誘導された。 (――化勁、か?) 触れ合った相手の動きを察する聴勁。それにより相手の力の向きを変える化勁。 熟練の武芸者でなければ不可能な動きをみせ、ファウストはベルトルドの動きを誘導。 踊っているように動かす。 それに対抗するようにベルトルドは動く。 当事者以外には踊っているように、しかし実態は、攻防の試し合いを行う推手を行った。 「楽しかったよ! じゃあ!」 一曲踊り終えると、手を振って去るファウスト。 「ふざけた人ですね」 ベルトルドの傍に寄り、憤慨するように言うヨナ。 「ふざけては、いるのかもしれんが……食えない人物かもしれんぞ」 これにヨナは、少し考え込むような間を空けて言った。 「それだけ思惑が渦巻いているのかもしれません。この場だってそうですし、教団も……現在のヨセフ室長の体制にだって、色々と思惑があるんでしょう」 そう言うと、ベルトルドに尋ねる。 「十数年前 教団が現体制に変わった時 強引な交代もあったのだと思います。その時のいざこざでヨセフ室長を恨む人間がいてもおかしくはないでしょう。ベルトルドさん 何か知りません?」 「生憎その時期は教団に所属していたものの、師にあちこち連れまわされていてな。教団の権力争いをを見せたくなかったのかもしれん」 「むぅ……」 悩むように声を上げるヨナは、ファウストが新たにナンパしているのを見て、呆れたように言った。 「ファウスト家では不自然な死が立て続けにあったと聞きました。で。今の当主が『あれ』なら利用するのに丁度いいのかもしれませんが」 「いくらなんでもあれ扱いはしてやるな」 変わらず憤慨するヨナに、尻尾をくねらせながら宥めるベルトルドだった。 そうして憤慨する浄化師が居る一方で、積極的に対応する浄化師も。 「なら、ここでは、それほど食事のマナーは気にしなくても良いと?」 「相手を不愉快にさせなければ十分さ」 声を掛けてきたファウストに、エフドとラファエラは対応していた。 ラファエラは積極的に、エフドは受動的に会話を重ねる。 新参者として慣れない貴族料理のマナーを聞いたエフドに、ファウストは続けて言った。 「場所によってマナーは変わるからね。煩い所は、誰が最初に料理を食べるか、そんな所まで決まってるよ」 「詳しいのね、セニョール」 ファウストの言葉の途中で、ラファエラが声を掛ける。 「でも、誘いを掛けた女を、1人にするのはいただけないわ」 艶やかな視線を向け、ねだるように言った。 「ダンスの手ほどきをいただけないかしら。貴方なら上手そうだし、教えて欲しいわ」 「もちろんだよ! 嬉しいね!」 能天気な声を上げ、手を差し出すファウスト。 それをラファエラは笑顔で手に取ると、僅かにエフドへ目配せをする。 エフドは視線で返し、少し離れる。 そして2人と周囲に注意を払い観察役に徹した。 ファウストの動きに合わせ、ラファエラは踊っていく。 「積極的だね」 「今後のこういう場面のため。ふふ、でも、それだけではないのよ」 視線を合わせ、ラファエラは言った。 「セニョール、私は自意識過剰だから、あなたの視線を感じてましたわ。ヴァンピールを見慣れてないの? 大丈夫、眷属の物色とかしてないから」 誘うように。そして挑発するように続ける。 「私のどこを見てたの? 耳? それとも……ふっ、失礼。育ちがよくないもので、つい下品な表現に頼りそうになるの」 「眼だよ」 静かな声でファウストは返した。 「熱く滾るような抗う眼に、私は惹かれたんだ」 「……情熱的ね。貴族なのに、荒々しい言い方だわ」 「そうでもないさ。貴族の始まりなんて、盗賊のなれの果てなんだから」 「随分、卑下するのね」 「そんなことはないよ。生まれや出自、親兄弟がどうだろうと、貴族らしい生き方は出来るって言いたいだけだよ」 「……そう。やっぱり、情熱的なのね、セニョール」 一瞬だけファウストが瞳の奥に見せた、どろりとした情熱。 それを感じ取ったラファエラは返した。 「踊りましょう、セニョール」 ファウストに何かを感じ取ったラファエラは、僅かな一時ではあるが、舞踏に身をゆだねた。 こうしてそれぞれの舞踏会は幕を閉じた。 表には出ない思惑も蠢きながらも、浄化師達の参加により、静かなメッセージが広がった一夜であった。
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*** 活躍者 *** |
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[6] アリシア・ムーンライト 2019/05/28-20:12
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[5] ヨナ・ミューエ 2019/05/28-20:09
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[4] リチェルカーレ・リモージュ 2019/05/27-21:02
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[3] アリシア・ムーンライト 2019/05/26-23:57
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[2] リチェルカーレ・リモージュ 2019/05/26-21:50
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