~ プロローグ ~ |
寝静まった林道に水気を帯びた靴音が続く。 |
~ 解説 ~ |
【指令】 |

~ ゲームマスターより ~ |
このたびは渡航成功おめでとうございます。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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対八百万の神 オケアノスの言葉もあり協力したい それと彼らをよく知りたい 様々な姿形なので最初は少しおっかなびっくり 雨降小僧の案内に感謝伝え まずは鬼に手紙を届け 洞窟での様子 心配事を聞く 質問の為 制服のヨナと頭から黒色の雨合羽を被った喰人で並び 終焉の夜明け団の可能性があれば警戒 雨降小僧に頼み洞窟の大体の地形と人が目撃された場所をメモ取り 調査へ 目撃頻度多い場所あればその付近 複数ならその内数か所 付喪神の伝えたい事を汲み取る努力もしつつ 仕掛の形跡 増えたり無くなった物の有無 魔力感知も使い変化を徹底的に調べる 私達の話している事自体は分かるのですよね? 付喪神への質問は 〇 音を鳴らしたり回って貰う × 反応しない で判断 |
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ミズナラ様の心配事を解決したい 雨降小僧さんは何を見たの? 並んで立つヨナさんたちを示し 目線を合わせ質問 小僧さんが見たのは どちらに似ていましたか? どこで見かけたのか 教えてくれませんか? 洞窟までの道のり ヨナさんたちとお喋り 他愛のない世間話をにこにこ 気配り…できているかしら シリウスの呟きにぷくり膨れて シリウスの意地悪 ヨナさんたちは仲良しさんで羨ましいです 連携攻撃もとってもかっこよくて 鬼さんに会ったら笑顔で挨拶の後 最近洞窟にくる人間について詳しく聞く 付喪神さんたちが何を言いたいのか知りたい ジェスチャーや簡単な質問 筆談等で意思疎通を目指す 隣人愛情使用 真摯な態度 人がいた場所がわかれば周知 皆でそこに |
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~ リザルトノベル ~ |
●カルスト台地~四人の愉快な旅路~ 轍の残る細道を、明るい世間話がなぞっていく。 薄紫の花弁が揺れ、高原の上を薫風が通り過ぎた。 遠くには積み木細工のような星見櫓が並んでいる。卵の殻に見える石灰岩や、長身を更に伸ばしている白樺。なだらかな柳緑の丘も。 ミズナラの頼みを快諾した一行は、鬼の住む洞窟へと向けて出発していた。 「そういえば二人とはじっくり話した事なかったな」 互いが顔見知りであったこともあり、道中、弾んだ会話が途切れることはない。 麗らかな天気のような穏やかな声で『ベルトルド・レーヴェ』が目を細めた。穏やかな空の下、雑談を交わす機会に恵まれた幸運をゆっくり噛み締めているようにも見える。 「リチェの細やかな気配りにはいつも頭が下がる。シリウスも、この間の指令では危険な役を買って出てくれて助かった」 賛辞を呈するベルトルドの隣で『ヨナ・ミューエ』が深く頷いた。 怨嗟の声の中で『終焉の夜明け団』の企みを打ち砕いた者同士、思う所があるのだろう。 嵐のような苛烈さと不動の胆力で敵の渦中へと飛び込んだ『シリウス・セイアッド』。 囚われた魂、そして己が身を顧みずに傷ついていくシリウスに心を痛めていた優しき少女『リチェルカーレ・リモージュ』。 戦端を切り開いた迷いなき鋭い剣戟を、安寧の旅路を願った優しき鎮魂歌を、ヨナは覚えている。 しかしベルトルドとヨナから賞賛を向けられた二人は、キョトンと大きな目を一層丸くする。 特にシリウスは聞き役に徹していたところ、突然会話の主役へと引っ張りあげられたことに戸惑っていた。彼にしては珍しく、わずかばかりの困り顔を表に出して、首を振っている。 「気配り……できているかしら」 リチェルカーレは自分への評価が正当なものであるか。冷静に考えていた。 「え?」 零れた自問に、驚き交じりの疑問符が差し込まれる。リチェルカーレは己のパートナーを見た。シリウスは単純に驚いているようだ。 じわじわと膨れゆく自分の頬を自覚しながらも、リチェルカーレは止めることができない。遂にシリウスは気まずげに視線を逸らした。その反応にリチェルカーレはすねたように唇をとがらせる。 「シリウスの意地悪」 じわり、じわり。綿毛のように溜まっていく不穏な気配に耐えられなくなったのか、ベルトルドが静々とシリウスの隣に並んだ。 「おい、シリウスだっていつも助けられているだろう」 声を潜めつつ、助け舟を出す。しかし脇腹を肘でつつかれても、シリウスは心底不思議だ、と言う表情を崩さない。 「……助けられているのは事実だが、『気配り』……?」 別に冗談を言っている訳ではなさそうだ、と判断したベルトルドはヨナと視線を交わす。ひょいと肩をすくめた黒豹の獣人に、ヨナもシリウスの呟きが聞こえたのか、小さく同様の反応を返してきた。 一方、シリウスは思案に耽る。 (気配り。リチェの『あれ』はそういうものなんだろうか。もっと自然な、本人の在り方というか……) 彼の考えが少しでも声に、顔に出ていれば、二人の関係は変わっていただろう。不幸なことに、鉄壁の表情筋と無口さは誤解を生んだままだ。 「ヨナさんたちは仲良しさんで羨ましいです。連携攻撃も、とってもかっこよくて……」 「そうか」 「そうですか」 リチェルカーレの呟きにベルトルドが目を丸くした。ヨナは淡々と答えたが、相手の反応を見ようと顔を合わせたタイミングが同じで、驚きに少しだけ眉が上がっていた。 (ふふふ。ほら、やっぱり仲良しさんです) リチェルカーレの機嫌がふわりと浮かび上がる。 「リチェ」 「シリウス? どうしたの」 先程まで拗ねていたことが嘘のように、名前を呼ばれてキョトンとリチェルカーレは首をかしげる。 先導する雨降小僧は静かに道案内役として職務を全うしていた。 最初こそ、黒い服を纏った浄化師たちを警戒していたが、主であるミズナラへの敬意を忘れず、和気あいあいとした空気を持つ浄化師たちを、臨時の配達人として認めたようだ。 いつしか道の脇には紙垂がぶら下がり揺れている。 「ここが、鬼さんのいる洞窟なんですね」 「案内をありがとうございました。雨降小僧さん」 立ち止まった小さな案内人に祓魔人の二人が声をかける。 前を歩いていた傘がてててと暗い穴の中へと消えて行く。 彼らの前には、常連縄を掲げた巨大な地下洞穴への入り口が口をあけていた。 ●鍾乳洞入り口~鬼~ 「おう、小僧。お前の主は元気か?」 噂の鬼はすぐに見つかった。鍾乳洞の入り口で縮れ毛の巨体が、雨降小僧の頭を乱暴に撫でている。足元には付喪神らしき影が纏わりついていたが、雨降小僧が浄化師たちを指さすや否や、洞窟の暗闇へ逃げこんでしまった。 「こりゃあ珍しい客人を連れてきたな。お前さんはヒューマンだろう?」 一つ角がリチェルカーレを見て親し気に微笑む。 「こんにちは。ミズナラ様からお手紙を預かってきました」 親愛の情をこめてリチェルカーレは微笑んだ。 隣で会釈をするシリウスは、何やら天井に隠れたコウモリたちが自分達に野次馬丸出しの視線を向けていることに気づき、そっとリチェルカーレの姿を自分の身体で隠す。 「もしかして、お前さんたちか? 最近洞窟に来るという人間たちは」 「いいえ」 鬼の指摘をヨナはきっぱりと否定した。 「実はミズナラ様に頼まれて、洞窟を訪れる人たちについて調べに来ました」 話を聞いて、鬼は少しだけ驚いた様子だったが、得心がいったようにニカリと牙を剥きだした。 「そりゃあ助かる! あの出無精の代わりに、お前さんたちが知恵を貸してくれるんだな? チビたちもピリピリして困っていたんだ。立ち話も何だ。付いて来てくれ」 爪の先に提灯を掴むと、鬼はのそりと立ち上がった。 ●付喪神の歓迎 「そうか。あんた達が噂の、海を越えてきたという浄化師なのか。使い走りみたいな真似をさせちまって悪かった」 ――カラカラ。 巨体の前を白い茶器や徳利たちが横切り、座布団を掲げて戻ってくる。 食器が洞窟内を颯爽と駆けていく光景は中々に珍妙だ。ミズナラの所と違い、ここの付喪神は元気が有り余っているらしい。いちいち挙動が大きいのだ。 歩く太鼓や三味線が持ってきた座布団に、ヨナはあくまで見た目は冷静に、内心ではおっかなびっくり腰をおちつけた。隣を見れば、ベルトルドも似たり寄ったりの反応で胡坐をかいている。 座り方や礼儀もさることながら、嬉しげに尻尾を振るクッションに座る機会など、そうそう無い。 リチェルカーレは座布団を持ってきた付喪神たちに礼をのべた。彼女の笑顔に魅せられたのか、急須が茶を沸かしながら、デレデレと近づこうとしている。 シリウスは冷静に、淡々と、容赦なく、感謝の言葉を告げながら急須をリチェルカーレから遠ざけた。 しかしながら、大半の付喪神たちは鬼の背に隠れていた。チクチクとした何十もの視線が闇から浄化師たちを観察している。 「すまん、個性的なやつが多くてな」 頭を掻きながら、鬼は足元の徳利をつまみ上げた。ベルトルドに体当たりを目論み、失敗した一体だ。 「気にするな、慣れている」 愉快な微笑ましさを表情にのせたベルトルドが、空気を読んで話を本筋へと戻した。 「先ずは話を聞かせてほしい。黒服たちを見かけてから、何か変わったことはなかっただろうか」 鬼は腕を組み自身たっぷりに頷いた。 「特にない」 「!?」 岩屋内に騒々しい音が満ちた。一大ブーイングである。言葉はなくとも、それは伝わったようだ。 「あるそうだ」 「そのようだな」 頷いたシリウスの横では、雨降小僧が神妙に頷いている。呆れた気配を漂わせている小さな妖怪に、リチェルカーレは視線の高さを合わせた。 「雨降小僧さんが見たという人たちと、付喪神さんたちが見た人たちは同じ格好でしたか?」 こくりと傘が肯定し、食器たちもガチャガチャと煩い音をたてて同意した。 「見てもらいたいものがあります。少し待っていてもらえませんか」 ヨナが立ち上がり、ベルトルドに向かって何かを促した。喰人は得心したように頷き、クラッチバッグから黒い布地を取り出す。 それは黒の雨合羽だった。 深くフードを被り、ベルトルドは立ち上がる。その隣に教団の制服を着たヨナが並んだ。 よく似た二つの黒。怖がらせないよう、リチェルカーレは二人の装束を示しながら穏やかに問いかけた。 「小僧さんが見たのは、どちらに似ていましたか?」 おずおずと、雨小僧はベルトルドを指した。 また一体、また一体。雨合羽の足元に付喪神が集まる。 「俺にはさっぱり違いが分からんが……。確か、十字架を手の甲にはめこんだやつもいたんだよな?」 何気なく付け加えられた鬼の言葉に、浄化師たちに警戒が走った。 目深にかぶった黒のフード姿、埋め込まれた十字架は『終焉の夜明け団』の特徴だ。断言はできないが、この洞窟で何かしらを企んでいる可能性が高くなった。 その『何か』が起こる前に到着できたのは僥倖だ。 「で、お仲間かい?」 「恐らく違うでしょう。こちらの予想が正しければ厄介な相手です」 言葉を選びながらヨナが続けた。 「もしかしたら鍾乳洞の中に罠をはるために訪れていた可能性もあります。調査をしたいのですが、地図はありますか」 「手描きで良ければあるぞ。小僧、持って来てくれ」 「それから、どこで彼らを見かけたのかも、教えて欲し……」 リチェルカーレが続けようとした、その時だった。 ――ガチャガチャピィドンドン! わたし、みたよ。ぼくもみた。 あっちだよ。こっちだよ。 ところで、この服なぁに? あなたはなぁに? 一緒に行こうよ。 だめだよ。わたしといっしょにいくんだから。 「ひゃっ、あ、あの。動けません……」 賑やかを通り越してお祭り騒ぎの付喪神たち。 リチェルカーレに殺到する小物たちを、シリウスが手際よくさばいていく。 今日一番の騒音に間近で巻き込まれたベルトルドが足元に付喪神を纏わせながら器用に耳を折り畳んだ。 「話を聞くだけで苦労しそうだな」 「ベルトルドさんの声がよく聞こえませんが、別れて調査した方が良さそうですね」 きりりとした表情のまま、掌で両耳をしっかりと抑えたヨナが頷いた。 ●鍾乳洞探索~白い樹氷岩の部屋~ ヨナとベルトルドは渡された地図にメモ取る。 「私達の話している事自体は分かるのですよね」 ――コロコロ。 鈴が答える。 「では、皆さんが不審な影をよく見かける場所に案内してもらえますか」 コロンコロン。 揺れるランタンを先頭に、続く群れはまるで百鬼夜行。多くの付喪神たちがヨナとベルトルドを案内する。 そこは透き通った鍾乳石が垂れ下がる空間だった。乳白色の樹氷のような石灰岩が天や地から縦横無尽に生えている。死角の多いこの場所を手分けして調べて行く。 「こちら側はどうだ」 ――。 「この辺りは」 カチカチ。 音を鳴らしたり、回ったり。無機物相手の会話に慣れてきたヨナが手を翳す。無造作に放られているのは祭りで使われていた小さな神輿だろうか。そこから僅かに感じる小さな魔力の澱み。慎重に解除を施し、ベルトルドは地図に、ヨナはメモ帳に印や雑感を記していく。 これで異常な魔力を感知したのは三回目。不確かに見えていた魔力の点が何かの線を結ぼうとしている。そんな不気味な予感を感じながら、二人は次の部屋へと向かった。 ●鍾乳洞探索~黒い地底湖~ 地底湖へと連れられたリチェルカーレとシリウスは人の痕跡や気配に注意しながら周囲を探っていた。 簡単な聞き取りから作った見取り図。そこには既に真っ黒になるほどのメモが書かれている。 リチェルカーレは手書きの五十音表を書き、指で示しながら会話を試みていた。 「この辺りで見失うんですね」 『はい』 『よにん』 暗い洞窟内に幻想的な灯が浮かんでいる。 赤や橙色の鬼火、紫や青色の狐火、緑や白の蛍火。 ランタンの周りに浮かんでは消え、五十音の上に置いた丸いコインを動かすことでリチェルカーレと会話を試みていた。 『ここ』 『よくいる』 シリウスは鍾乳洞の岩肌に背をつけ、地底湖の全体像把握に努めていた。地下水が溜まっているためか、空気は水を含んでひんやりと冷たい。 シリウスは真剣な眼差しで意思の疎通を試みているリチェルカーレの様子に目を細めた。 彼の隣では雨降小僧が不安そうにリチェルカーレと狐火の会話を見守っている。不安そうな傘に手を置くと、シリウスは地面に膝をついて雨降小僧と視線を合わせた。 「安心しろ。お前の主に問題は解決したと報告することだけ考えておけ」 頭を撫でながら彼が浮かべる柔らかな笑みは、シリウスが見る彼女の顔とよく似ていた。 おずおずと、雨降小僧がシリウスの袖をつまんで上を向く。 「何かあるのか?」 雨降小僧につられ、シリウスは剣山のような天井を見上げた。 「あそこに何かある」 「狐火さんたち。あの辺りを明るくできますか?」 ふわりと浮かんだ狐火が天井近くを照らす。 天井に隠れるようにあいた穴。その先から黒く塗られた縄梯子が垂れ下がっていた。 ●情報共有~捕縛までのカウントダウン~ 「これは、書きかけの巨大な魔方陣に見えますね」 「間違いないです」 互いの情報を共有すれば地図に浮かび上がったのはほぼ完成された円形の魔方陣。六芒星の最後の点が、地図上に空白地点となって抜け落ちている。 「次に相手が向かうのは、この場所しょう」 偵察に出ている付喪神たちの話では、今日は未だ姿を見せていないという。ならば、チャンスはある。ヨナたちの存在も、魔力の澱みを解除したことも、相手はまだ知らないはずだ。 油断したところを捕縛する。話はまとまった。狙うは暗闇にまぎれての捕縛だ。 外に出ていた付喪神たちが慌てて話し合いの最中に飛び込んできた。怪しい人影が上の台地に現れたと騒いでる。 「では、始めよう」 彼らは静かに行動を開始した。 外は夕暮れ。しかし陽の光が射しこまぬ鍾乳洞の中は、篝火として壁面に浮かぶ鬼火の明りで薄暗い。 「妖怪どもにも、なめられたものだ。我々の存在に気づいているだろうに、何の対策もしてこないとは」 人影。目深に下ろされた闇色のフード。埋めこまれた十字架ごと手の甲を振れば、音もなく新たに三体の影が現れる。 「順調なのだから文句を言うな。下手に感づかれて抵抗でもされたらどうする」 前を歩く男が笑う。 「心配しすぎだ。この調子では陣を完成させたとしても気づくまい」 「仕事は早い方がいい。今日中に完成させるぞ。あれを正攻法で捕縛するのは骨が折れるが、罠にかけてしまえば、こちらが有利だ」 「ついでに拠点としてこの場所を譲り受けようではないか」 「そうだな、薔薇十字教団がニホンでの活動を始めたと聞く。姿を隠す場所が多いにこしたことは無い。教団の犬に冤罪をかければ我等に自由に動けるだろう……む?」 先頭を歩いていた男が立ち止まった。 「おい、一人足りなくないか?」 「はぁ? そんな訳はないだろう。一本道だぞ」 フードの男達は口をつぐんだ。 「いや、待て。普段は鬱陶しいほどに付きまとってくる付喪神の姿が見えない。何かがおかしいぞ」 ――トン! 思わず立てたその音に、空気が揺れた。 「そこかっ!」 隠れていた鼓がバランスを崩し、岩陰から転がった。しかし洞窟の暗闇に紛れていたのは侵入者だけではない。反対側の岩陰から飛び出したシリウスが先頭を歩く男を抑えこみ、流れるような動きでベルトルドが後続を無効化していく。 「おいっ、貴様ら! 私たち『終焉の夜明け団』に手を出して無事に済むと思っているのか?」 気絶をしている内に、付喪神たちが手際よく縄を巻きつけていく。 目が覚めたのか、衝撃が浅かったのか。声を荒げる団員の前にヨナが進み出た。 答える代わりに黒い教団服を見せつけてやる。 「ご丁寧にありがとうございます。聞く手間がはぶけました」 過剰なまでに捕縛された侵入者たちはフクシマ藩へと送られ、事態の深刻さを重く見たミズナラによって念入りに尋問するように申し伝えられた。 ●歓待~祭りと酒宴~ 「この度は友の窮地を救ってくれたこと、礼を云う。今後、我は汝ら薔薇十字教団に力を貸そう」 「色々と世話になったな。何かあったら俺も力を貸すぜ」 社の前に鬼とミズナラが並んだ。八百万とその眷属である妖怪たちは、わいわいと、好き勝手に騒いでいる。その騒音からは紛れもない感謝と、賞賛がこめられていた。 「俺たちは友好の為に来たんだ。そこまで堅苦しく考えないでくれ」 深く頭を下げるミズナラ。隣で強引に頭を押さえつけられている鬼。同情を誘う光景だったのか、ベルトルドとヨナが苦笑しながらフォローにまわる。 「皆さんが無事で本当に良かったです」 「そうだな」 リチェルカーレの隣でシリウスが頷く。二人の周りでは雨降小僧がはしゃいでいた。 「捕まえた終焉の夜明け団はどうなりますか?」 「恐らく、藩の総力をもって取り調べを受けることになるだろう。場合によってはエドに送られる。我が言うのも何だが、あの鍾乳洞には何も無い。だが夜明け団とやらが何らかの思惑を以て動いていたのは確かだ。それをつきとめねば」 浄化師たちの気配に鋭さが加わったのを感じたのか、ミズナラは『さて』と明るく仕切り直した。 「せっかくだ。今から一献、どうだ?」 「良かったな。よな、べるとるど。無料酒だぞ!」 「いえ、私は」 「りちぇー、しりうすー」「こっち、こっち!」 「ずるい」「はやいものがち」「じゅんばんにしよう」 鬼が手招き、狐火が暗闇に文字を描く。 徳利たちははりきって足並みを揃え、雨降小僧が傘の上で皿を回す。鼓が拍子をとり、炎たちが踊る。 石畳の上に涼しい夜風が吹いた。季節外れの祭囃子が、夜の社に響いている。
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*** 活躍者 *** |
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[12] ヨナ・ミューエ 2019/06/19-22:20
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[11] リチェルカーレ・リモージュ 2019/06/19-21:23
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[10] ヨナ・ミューエ 2019/06/19-02:26 | ||
[9] リチェルカーレ・リモージュ 2019/06/18-21:25 | ||
[8] ヨナ・ミューエ 2019/06/18-17:36 | ||
[7] リチェルカーレ・リモージュ 2019/06/17-22:25 | ||
[6] ヨナ・ミューエ 2019/06/17-17:53 | ||
[5] リチェルカーレ・リモージュ 2019/06/16-20:06 | ||
[4] ヨナ・ミューエ 2019/06/16-16:25 | ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2019/06/15-23:39
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[2] ヨナ・ミューエ 2019/06/15-17:02
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