~ プロローグ ~ |
その稲荷神社では、七夕祭りが真っ最中だった。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
お祭り会場に爆弾なんて… 大変なことになる前に止めないと 境内から遠い魔法陣の解除 襲撃の知らせがあれば広場へ移動 現場についたら魔術真名詠唱 無茶はしないで シリウスに 中衛位置 参道への道を塞ぐ形に 特に魔術師達を魔法陣へ近づけない 回復と支援担当 シアちゃんやシルシィさんと連携 倒れる人のないように天恩天嗣2で回復 ウボーさんたちにも 怪我をしたら無理せずひいてくださいねと 参道へ近づいてくる敵>魔術師の順に鬼門封印 余裕があれば 九字や退魔律令で近くにいる敵を攻撃 浪人たちへ ここに仕掛けられた爆弾が起動したら 沢山の無関係の人が傷つくんです それを知っているんですか? 刀を持つ人は…剣を持つ人は 誰かを守る為に戦うのではないの? |
||||||||
|
||||||||
襲撃対応班と魔方陣解除班のうち、魔方陣解除班を担当 襲撃により2班が分かれる前に、セパルさんに土属性付与をお願いする 全員一度にかけられる場合は全員に 1人ずつの場合は魔方陣解除班を優先かつ土属性手段を持つヨナさん・鈴理さんにはかけない、とお願いする セパルさんに、行動は令花に同行しつつ、解除班の効果切れ都度かけ直しするよう依頼 解除は、境内にある最大のものを第一優先に、それが終わったら参道の小さいのを解除 担当分一つ解除したら他解除者、襲撃対応班を補助 令花はアルカナソード等で魔方陣にダメージを与える 和樹は、万一の伏兵等に備え周囲を警戒しつつ、盾で通常攻撃。襲撃に対しては絶対防御の誓いで令花と仲間を警護 |
||||||||
|
||||||||
目的 爆破魔方陣を起動させない。 行動 襲撃対応班。 最初は、鳥居近くの魔方陣を参道入り口から解除。 セパルさんに魔力属性を変える魔法を、他の皆と一緒にかけてもらう。 襲撃の連絡が来たら移動。 魔術師に抜かれて神社へ近づかれないように注意。 他の人たちと協力して足止めの戦線を構成。 マリオスは前衛で攻撃。 アライブスキルも積極的に使用。 シルシィは中衛、アライブスキルで援護と回復。 余裕があれば通常攻撃。 それから、浪人たちに話しかけて動揺を誘えないか試す。 普通の人たちを犠牲にして何を企んでいるのか、とか。 禁忌魔術である、あの魔方陣を使うあなたたちは何?(魔術師たちに向かって) |
||||||||
|
||||||||
魔方陣解除班 属性変更してもらい魔術真名詠唱後、まずは一番大きい魔方陣を皆で協力して解除 三身撃連発して一刻も早く解除したいわ 大きいの解除後、鳥居の小さい魔方陣へ 手分けして、私達はとりあえず手近な所から解除していく 自分達のノルマ(小二つ)を解除したら、残りは他の解除班に任せて襲撃者の方へ向かう 追いつけたら、前衛に突っ込んで戦踏乱舞で支援しつつターゲットをばらけさせるよう動く 危険なのは魔術師の方よね…できれば撤退される前に捕まえたいところね おはよう、憐れな襲撃者さん、そしてさようなら 回避重視、前衛で敵を攪乱しつつ隙があれば攻撃 仲間の呼びかけに答えない人は何も喋る気無しとみて優先的に狙うわ |
||||||||
|
||||||||
ヘルヘイム・ボマーを改良した魔方陣…何てものを… 罪の無い人が、巻き添えになってもいい、と本気で、考えてるのでしょうか… 止めたい、です 誰も傷ついて欲しくない、です 魔術をこんな事に、使わないで… 敵襲の連絡が来るまでは手前の魔方陣解除を行います 属性変えて頂かないとですね 敵襲の連絡が来たら、他の陰陽師のお二人と一緒に、クリス達前衛組の後方に 天恩天賜Ⅱでの回復、鬼門封印で敵を後退させる支援を中心に クリス達を抜けてきた敵には、蠱霧散開で攻撃を 相手も人間ですから、あまり酷い事は、したくないです、けれど… 後ろの魔術師さんはともかく 浪人の皆さんは、自分の国の人々を傷つける、こんな罠 どうして仕掛けられるんですか… |
||||||||
|
||||||||
集合した時点で挨拶と作戦を相談し準備。 味方と協調し作戦を成功させるために装備や能力を全力で使い動く、敵の接近を知った時点でニコライは敵背後から攻撃するために移動して急襲。リサは正面から防衛戦に参加。 二名とも敵を打ち倒すのが目的ではなくあくまでも妨害、撹乱を念頭に行動する。 また、ニコライはウィッチ・コンタクトの能力で最も魔力の高い者に奇襲を行足回りや顔への攻撃などで動き回る。リサは盾を相手に押し付けつつ相手の体に鎌を引っ掛けて相手を引き倒す、味方を盾でかばったり味方を攻撃する敵をカウンター的に攻撃する。 |
||||||||
|
||||||||
目的 テロの阻止 知らせを受け二組に別れ魔方陣の解除 新人に気をかけつつ大きな魔方陣を解除班全員で解除したのち 残りの7つを手分けして解除に向かう 自分達の受け持ちは2つ 土属性が付与されている間は最大火力のスキル 切れればFN6で対応 ヨ 情報源の不明瞭さとは逆に魔方陣の場所が記された詳細な地図… 誰の、どういった思惑があっての事でしょうか …私達は動かされている? ベ 気に入らないか ヨ ええ、大いに気に入りませんね(不機嫌そうに ベ そんな顔 皆の前ではするなよ ヨ しません 2つの魔方陣を解除した後は他の魔方陣の解除手伝いや確認 殿を務めるつもりなので状況により解除を引き継ぐ 万が一襲撃者と対峙した際は喰人で対応 ヨナは解除に専念 |
||||||||
|
||||||||
目的:全ての魔法陣解除 まずは大きな魔法陣から解除 小さな方も二つは解除しないと。 属性が土なので属性変更魔法をうける必要がない分、率先して動きます。 マヤ、お願いね。 力の出し惜しみはしません。全力で行きます 小さい魔法陣の解除も素早く確実に。二人で一つを攻撃 終わったら次です、えっ…はい! イザークさんにつかまって障害物を飛び越えて次の魔法陣までショートカット イザークさん、そのまま一気に降りてください! 落下の勢いも上乗せしてそのまま攻撃します! 解除次第、終わってない魔法陣の解除へ向かいます。 いえ、イザークさんなら怪我しないよう絶対私を守ってくれるので思ったので …何か変な事いいましたか、私? |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
○爆破魔方陣を解除せよ! 祭り会場に仕掛けられた爆破魔方陣によるテロ。 それを防ぐため、浄化師達は全力で急いでいた。 (お祭り会場に爆弾なんて……) 仲間と共に目的地に走りながら『リチェルカーレ・リモージュ』は呟く。 「大変なことになる前に止めないと」 決意を込めた彼女の呟きに『シリウス・セイアッド』は並走しながら、ある疑惑を抱く。 (ただのテロ組織が禁忌魔術まで使うだろうか) 自らの考えに眉を顰めながらも、リチェルカーレの決意を込めた表情を見て気持ちを切り替える。 そうしてテロに対して思うのは『アリシア・ムーンライト』も同じだ。 「ヘルヘイム・ボマーを改良した魔方陣……何てものを……」 発動した際の被害を想像し、アリシアは呟く。 「罪の無い人が、巻き添えになってもいい、と本気で、考えてるのでしょうか……」 これに『クリストフ・フォンシラー』は返す。 「止めたい?」 「止めたい、です」 応えは即座に。 決意を込め返す。 「誰も傷ついて欲しくない、です」 それは傷つく誰かを想っての言葉。 そして、魔術に強い想いを抱く彼女だからこそ、続ける。 「魔術をこんな事に、使わないで……」 「大丈夫」 クリストフは、アリシアの想いを肯定し、受け止めるように返す。 「ここにはシリウスやリチェちゃん、他にも仲間が居るんだ。絶対に、防いでみせる」 「はい……」 力強いクリストフの応えに、アリシアは勇気と力強い意志を貰いながら、目的地に走っていく。 そうしてパートナーと言葉を交わしながら走り続けるのは、『リサ・パーカー』も同じだ。 「初任務が危険な依頼ですか、ニコル?」 浄化師として初めての指令受諾。 あえて危険な物を選んだパートナーに、リサは尋ねる。 それは疑問ではなく、確認するように。 リサは、パートナーである『ニコライ・パーカー』の意志を少しでも知り、自分が出来る最大限の支援をするために。 二コルの目として、盾として。 自らを規定する彼女に、あえてニコライは軽い口調で返す。 「大きく賭けるから大きな見返りがあるのよ。それにこの方が面白いだろ?」 リサの、余計な力が抜けるように。 そして彼女が必要なのだというように、ニコライは続ける。 「それよりリサ、お仲間への挨拶は任せたぜ」 「……分かりました」 「頼りにしてるぜ」 「はい。頼って下さい。二コル」 そうして皆は走り続け現地に到着。 先に現地に就いていたセパル達を神社の関係者が呼ぶ間に、改めて挨拶をする。 「……ニコライ・パーカー、リサ・パーカー着任します。よろしくお願いします。作戦の遂行を第一にお互い力を尽くしましょう」 本人は自覚できていない、緊張と体の強張り。 それをほぐすように、ニコライは続ける。 「あー、すんませんねぇ、無愛想なもんでさ……。俺たちはなるだけ邪魔にならないよう努めるんで、作戦を詰めましょうよ」 これに元気良く返したのは『桃山・和樹』だ。 「よろしく! 俺は、桃山・和樹ってんだ。こっちが、ねーちゃんの令花」 和樹の後に続けて、『桃山・令花』も挨拶を。 「桃山・令花です。戦闘系の指令は初めてですけど、皆さんの足手まといにならないよう頑張ります」 これに緊張をほぐすよう、余裕のある応えを返したのは『ベルトルド・レーヴェ』。 「ベルトルド・レーヴェだ。和樹と令花は、この前ぶりだな」 以前の指令で顔を合わせた2人に声を掛け、続ける。 「これだけの仲間が居るんだ。お互いを助け合うことが出来る。だから気負わず、皆を頼りながら、指令をこなしていこう」 ベルトルドの言葉に、皆は頷く。 それを横で見ていた『ヨナ・ミューエ』は。 (私も、何か言えることは) ベルトルドだけに頼らず、自分も何か言おうと悩んでいたが、その間にセパル達が来て断念する。 そして即座に話し合い。 手順を決める。 「それじゃ、セパルさん。みんなに魔法を頼むよ!」 和樹の元気の良い呼び掛けに、セパルも元気良く返す。 「うん! 任せて!」 魔力属性の一時的な変換魔法。 離れていると無理とのことだが、集まっている今ならまとめて掛けられる。 効果は、長くて数分とのことだが、切れる度に掛け直すとのことだった。 最初に目指すのは、境内にある最大の魔方陣。 そこに行く途中、『マリオス・ロゼッティ』は『シルシィ・アスティリア』に声を掛ける。 「犠牲が出る前に、対処できて良かったね」 「ん、そう思う」 シルシィは、走る速度は落とさず返す。 「犠牲を防ぐのが浄化師の仕事だから。それに、お祭り、楽しかったし」 「うん。そうだね」 七夕祭りに参加した2人は、その時のことを思い出しながら走り続ける。 境内が見え始めた頃、シルシィは尋ねる。 「解除する魔方陣、興味がある?」 「少しね。でも――」 魔術に興味を持つ自分としてよりも、浄化師としての自分を優先して返す。 「被害者が出るなら、そんな事は言ってられない。傷つく誰かが出る前に、解除しないと」 「ん、頑張ろう」 シルシィが同意の声を返す。 それとほぼ同時に、皆は境内に着いた。 即座に解除に動く。 同行していたセレナが戦踏乱舞で皆を強化しつつ、次々魔方陣を攻撃。 地図に記された場所を攻撃すると、魔方陣が浮かび上がり、攻撃をする毎に薄れていく。 参加している人数の多さ。そして間断ない連続攻撃で、短時間で破壊する。 解除すると、即座に手分けして残りの魔方陣の解除に向かう。 ここまでの流れは、非常に良い。 この時点では知り得ないことだが、神社の境内にある魔方陣が最大であると同時に、他の魔方陣の統制も行っている。 そのため、それを最初に破壊することで、一度に全部の魔方陣が同時に爆破することも避けられるようになった。 戦力を下手に温存したり、最初から戦力をバラけさせたり、そういったことをしていないが故の結果である。 合理的かつ全力を尽くす行動を取れたからこそ、最良の結果に繋がった。 だからこそ、襲撃者の連絡が来た時点で、かなり残りの魔方陣の耐久度を削れていた。 その状況で、襲撃対応と魔方陣解除の班に分かれ行動する。 「魔方陣の解除は引き受けたわ!」 襲撃者の連絡を受け、『リコリス・ラディアータ』は、襲撃犯に向かう仲間に告げる。 そしてパートナーである『トール・フォルクス』にも呼び掛けた。 「トール、一刻も早く解除しましょう。少しでも早く、手助けに行けるようにしないと」 「ああ、もちろんだ」 力強くトールは応え、2人は今まで以上に、苛烈に魔方陣に攻撃する。 リコリスは華麗に、舞うような優美さを見せながら、絶え間ない連続攻撃を。 トールは的確に、素早い連続射撃で。 途中、襲撃犯に向かうセレナに戦踏乱舞を掛けて貰い、強化された能力を駆使し、短時間で受け持ちの魔方陣を解除した。 「これで、終わり! 行きましょう! トール!」 「ああ。こんな事しでかす奴らに、思い知らせてやらないとな」 そう言うと2人は、並走して襲撃犯の元に走り出した。 同様に解除していくのは、『イザーク・デューラー』と『鈴理・あおい』も。 (木々や障害物を走り抜けるより、飛び越えた方が速そうだ) 先行する、あおいを追い駆けるイザークは周囲を見て確認する。 あおいは土属性だったので、セパルによる属性変換を受ける必要がなかったので、率先して動いている。 その分、少しだけ出遅れたイザークは、その差を埋める以上の速さを見せた。 天空天駆による飛翔。 木々を乗り越え、あおいに追い付くと呼び掛ける。 「あおい、つかまれ!」 「えっ……はい!」 あおいが頷くと同時に、イザークは抱き上げ飛翔。 1人の時よりも高さと速さは低下するが、それでも木々を越えショートカット。 目指す場所が視認できると、あおいは言った。 「イザークさん、そのまま一気に降りてください!」 あおいは、自らの人形であるマヤの準備をしながら続ける。 「落下の勢いも上乗せして、そのまま攻撃します!」 この思い切りの良さに、イザークは驚く。 (一気に降りる!?) 普段、天空天駆に慣れている自分ならともかく、あおいにとっては初めての行動。 だが、あおいは微塵の不安も見せていない。 (俺の『飛翔斬』スキルと同じ理屈なんだろうが、自分ならともかく……でも彼女の目に迷いはない、ならば行くしかないだろう) 「行くぞ、あおい」 「はい、イザークさん」 目的地を確認し、一気に急降下。 落下に近い速度で高度を下げ、地面に激突するギリギリで回避。 「マヤ、お願い」 主である、あおいより先んじて、マヤが跳び出す。 降下の勢いも加わった、虚身投の一撃。 それは動き回る敵であれば命中させるのは難しかったかもしれないが、固定目標ならば問題ない。 会心の一撃となって、魔方陣に大きな打撃を与えた。 その勢いを殺すことなく、2人は連続攻撃を。 イザークによる戦踏乱舞で強化された戦力を駆使し、魔方陣を破壊した。 破壊し、即座に次の魔方陣へと向かう。 その道中、イザークは言った。 「しかし、あおいも無茶を言うな」 「なにがですか?」 不思議そうに尋ねるあおいに、イザークは苦笑するように続ける。 「俺が君を支えきれず地面に落下とか考えなかったのかい?」 「いえ、イザークさんなら怪我しないよう、絶対私を守ってくれると思ったので」 「……」 あおいの応えに、思わず言葉に詰まるイザーク。 「……何か変な事いいましたか、私?」 聞き返すあおいの表情は、当たり前のことを、当然だというような確信があった。 イザークを信頼する、あおいの眼差し。 それを向けられ、イザークは思わず横に顔を逸らす。 「いや別に。ただそんな当然の表情で言われると、だな……」 あおいの信頼が嬉しくて。 けれど同時に、くすぐったさにも似た照れを感じ。 喜びの浮かぶ表情を見られるのが恥ずかしくて、顔を逸らしてしまうイザークだった。 そうして次々に魔方陣が破壊される中、令花と和樹も頑張っていた。 (ねーちゃんは、俺が守るんだ) 和樹は不測の襲撃に備え、盾を構え周囲を警戒しながら魔方陣を攻撃する。 隣で共に攻撃を重ねるのは令花。 そこにセパルが魔法を掛けに来る。 「ありがとう! セパルさん!」 元気よく礼を返す和樹に、追加で援護が。 襲撃犯に向かう途中のセレナが、戦踏乱舞を掛け戦力を強化。 強化された戦力を全力で魔方陣に叩きつける。 その間に、セパルは他の浄化師の属性変換の魔法を再度かけるため、一時的に2人から離れる。 向かう先はヨナ達の元。 そこでヨナは、ひとつの賭けに出ていた。 (根幹属性は火気。収束と輪転の術式を相互付与。そこに連環魔方陣をもたらす木気の蓄積術式が結合してる) ヨナは魔方陣を攻撃しながら、ウィッチ・コンタクトも使った構造解析を行っていた。 目的はラーニング。 魔方陣を再現することではなく、教団が定める禁忌に触れることが狙いだ。 (私の今の状態と、これだけ魔方陣のある今なら可能な筈) 禁忌魔術は使用すれば捕縛か処刑を免れない。 それほどの物に触れようとするのは、自らの信念ゆえ。 (大事なことは知らないまま、いつの間にか何者かに駒のように扱われている) それは魔方陣に向かう途中、ベルトルドとの会話の中でも思ったこと。 「情報源の不明瞭さとは逆に、魔方陣の場所が記された詳細な地図……誰の、どういった思惑があっての事でしょうか」 それは疑問ではなく、疑惑。 (……私達は動かされている?) 不審ゆえの自らへの問い掛け。 言葉として口に出た思いに、ベルトルドは返してくれる。 「気に入らないか」 「ええ、大いに気に入りませんね」 不機嫌そうに返すヨナに、ベルトルドは苦笑するように応えてもくれた。 「そんな顔、皆の前ではするなよ」 「しません」 「そうか。なら、いい。だが――」 少しだけ言葉に迷うような間を空けて、ベルトルドは続けた。 「腹の中に溜めたままじゃ、よくないだろ。だから、今みたいに、偶には吐き出せ。2人の時なら、問題はない。それぐらいはするさ。パートナーだからな」 その言葉が、ヨナの背を押したのか? ヨナは禁忌魔術の解析という危険な賭けに出ていた。 (盲目的に決定に従う事は己の信念に反するのではなかったか) 自らに問い掛けながら解析を続ける。 (ここで禁忌に触れることに大した意味はない) ヨナは自覚している。それでも―― (でも、だからこそ踏み込んで、ただの駒ではないと示したい) それは過去の指令の中で、自らの血肉と化すほどに刻まれた想い。 その想いの切っ掛けとなる指令に、共に居たベルトルドは、それゆえにヨナの行動に気付いた。 「どういうつもりだ」 責めるのではなく、想いを吐き出させるように。 ヨナの言葉を待つベルトルドに、迷わず応えは返ってきた。 「『教団の敵』への処遇改善の布石です。そのためなら、私の運命を賭けます」 「お前ひとりの運命じゃ、止まらんぞ」 「ぁ……」 掠れたように、ヨナから声がこぼれ出る。 「ベルトルド、さんは……」 関係ない。 そんな理屈が通るだろうか? 否。 (私は……) なぜ思いつけなかったのか? こんな当然のことを。 それは甘えか? 信頼か? 歪む心と思考に、何も言えないヨナに。 ベルトルドは、ぽんっと、頭に手を乗せて。 「共犯だ」 安心させるように、くしゃりと頭を撫で言った。 「パートナーだからな」 「……」 言葉を返せないヨナ。そこに―― 「じゃ、ボクも共犯にして貰うね」 セパルが、ひょいっと現れて。 「……セパルさん?」 ぱちぱちと、目を瞬かせるヨナに、口元に指を当ててみせ。 「秘密のひとつぐらい、あった方が、女は魅力的ってものだよ」 そしてベルトルドに。 「ベルくんも、そう思わない?」 悪戯めいた声で言った。 「ああ、そうだな」 苦笑するように頷いて、ベルトルドは今するべき事に向き合う。 「魔方陣を、破壊するぞ」 応えは、少しだけ間を空けて。 「……はい!」 力強く返し、ヨナは魔方陣の破壊に全力を尽くした。 かくして魔方陣は次々破壊される。 破壊すると即座に、担当していた浄化師は襲撃犯の元に。 令花と和樹も、セパルと協力して破壊する。 「行こう! ねーちゃん!」 「うん!」 七夕祭りを台無しにしたやつらを、絶対に許せない! 同じ思いを胸に、令花と和樹の2人は、セパルと共に仲間の元に。 その頃、すでに戦いは大きく進んでいた。 ○襲撃者に対処せよ! 清明の使い魔である烏の誘導に従い、浄化師達は先を急ぐ。 この時点で浄化師達は、敵の大まかな人数と配置が分かっていた。 これは、シルシィが事前にウボーに頼んでいたことが大きい。 「解除している途中で、襲われたら大変だから。周囲を見ていて欲しい」 この申し出に、周囲の警戒に動いていたウボーは、襲撃の知らせを受けると即座に斥候として移動。 望遠鏡なども使い、先んじて得た情報を浄化師達に伝えていた。 これを受け浄化師達は、それぞれの考えに基づき動き始める。 「後方からの撹乱を、試してみようかね」 移動しながらニコライは、リサに戦術を告げる。 「それなら私も」 「いや、撹乱するなら分けた方が良い。俺は後ろを、リサは前を。乱戦になれば、そこから合流。それでいこう」 「……はい」 不安を飲み込むような間を空けて、リサは頷く。 そうしてパートナーに指示を出す者も居れば、同行するウボーとセレナに指示を出す者も。 「引きつける。数を減らしてくれ」 シリウスの要請に続けるようにして、クリストフもウボーとセレナの2人に頼む。 「ウボーにセレナちゃん、敵撃退に協力願っても? 敵の人数は多いみたいだし、前衛を抜けていこうとする敵を遊撃で討ち取って欲しい」 同じように、シルシィも頼む。 「遊撃として、抜けられそうなのを牽制してもらえたら嬉しい、かも」 3人の指示に、ウボーとセレナは頷く。 現場に赴くまでに、即興の打ち合わせを終わらせ、襲撃犯が見える場所まで移動する。 先に気付いたのは浄化師達。 それから少し遅れて襲撃者達が、近付いてくる相手に気付く。 ほぼ同時に、襲撃者達の一団の内、後方に居た毛色の違う一人が大きく声を上げる。 「浄化師だ! 気を付けろ! 我らの邪魔をするつもりだぞ!」 扇動するような、その声に、ニホン人の侍と思われる20人ほどが殺気立つ。 「この騒がしさ、敵の臭いがしてきたか。鬼が目を開く時間かね……」 「やはり私もついていくべきでは?」 殺気を感じ取り、撹乱に動くため、敵の後方を目指そうとするニコライに、リサが思わず声を掛ける。 だが、ニコライは制止する。 「乱戦になれば合流、それが俺の立てた作戦だろ。正面に目が行けば行くほど俺は楽になる。できるな?」 その言葉には、信頼が込められている。 だからこそ、リサは頷いた。 敵との戦線は瞬く間に近づく。 火蓋が切り落とされる、その寸前。 リチェルカーレは、先陣を切るシリウスに、願うように囁いた。 「無茶はしないで」 「お前も」 応えるシリウスの言葉にも、願うような響きが込められていた。 お互いの願いを受け止めるような間を空けて、高らかに魔術真名を響かせる。 「黄昏と黎明、明日を紡ぐ光をここに」 魔力回路解放。 ほぼ同時に、他の浄化師達の魔術真名も響き渡る。 「月と太陽の合わさる時に」 前に出るクリストフの動きに合わせ、アリシアは後衛に動き。 「我らの意志の元に」 マリオスとシルシィも、同様の動きを見せる。 そしてニコライとリサも魔術真名を唱えると、リサは前に動き、ニコライは敵の側面から後方を目指し動く。 浄化師達の動きに合わせ、ウボーとセレナの2人も駆ける。 セレナは、前衛で動くシリウスやクリストフ。そしてマリオスとリサに、戦踏乱舞を掛けていく。 その間、ウボーは敵陣に吶喊。 口寄せ魔方陣で大剣を召喚すると、あえて大振りで敵の中央を突っ切る。 これにより、敵は左右に分断。 分断され動きが鈍った所に、前衛組が先制を仕掛けた。 シリウスは、スキルで引き上げられた膂力を最大限に駆使し、一気に駆ける。 目指す相手は、侍を扇動するため声を上げたひとり。 それを止めるべく、侍達が刀を振るう。 だが、当たらない。 閃く刃のことごとくを紙一重で避け、傷のひとつも許さない。 そこにウボーの支援が。 大剣を大きく振り、シリウスから侍達を遠ざける。 シリウスは、ウボーの撹乱で動きが鈍る侍達をすり抜けて、瞬く間に、魔術師の間合いに踏み込む。 踏み込むと同時に、双剣を振り抜く。 ソードバニッシュ。 閃光の如き速さで、斬撃を叩きつけた。 同時に、重い音が響く。 魔術師と思われる敵は、全力防御。 シリウスの斬撃の速さに避け切れぬと判断し、全方位を防御する魔術を展開し斬撃を受け止める。 だが、動けなくなる。 それほどに、シリウスの攻撃は隙がない。 緩急をつけた止まらぬ斬撃に、防御を解除する余裕がない。 (防御を解除した瞬間、やられる!) 魔術師は肌で追い込まれていることを感じ、侍達に助けを求める。 そこで立ちはだかったのは、クリストフ。 (敵の数が多いな、鬱陶しい) クリストフは数で勝る侍達に、どう動くか即座に判断する。 敵の間合いにあえて踏み込み、攻撃を誘導。 敵が誘導された動きで放つ斬撃を捌き、それにより制裁を発動。 足を浅く切り裂き、さらに近付いてきたひとりには、磔刺を駆使し、足の甲を刺す。 「貴様!」 クリストフを手強いと見て、一端距離を取り体勢を立て直す侍達。 その隙をとらえ、クリストフは言葉による揺さぶりを掛ける。 「何の為に悪の手先に? 武士としての誇りはないのかな?」 この問い掛けに、侍たちは激昂する。 「ふざけるな!」 「幕府の狗め!」 「爆破テロを目論む悪鬼共が!」 (なるほど。そういう筋書きか) 心理学を高いレベルで学んでいる故か、侍たちは嘘を吐いていないと判断し、クリストフは彼らを騙し扇動している者達が居ないか見極める。 (明らかに侍とは違うのが……5人。魔術師かな?) 毛色の違う者達を見極め、そちらに踏み込む。 その瞬間、攻撃魔術を放とうとする敵魔術師。 しかし死角からセレナが近付き、背後から連続刺突。 「ありがとう、セレナちゃん」 礼を一つ返し、クリストフは容赦のない一撃を。 魔術師が防御魔術を展開するより早く、磔刺を発動。 踏み込みの勢いを乗せた刺突を、地面に剣が突き刺さる勢いで、魔術師の足の甲を貫いた。 敵の機動力を奪った所で、素性を調べるためカマかけを。 「神社に仕掛けられた魔方陣、かつて見た物とそっくりだねえ、進歩無いなあ」 しかし魔術師は、そのカマかけには反応せず攻撃魔術を放つ。 だがクリストフは、危なげなく回避。 即座に叩き込んだ連続攻撃で、魔術師の制圧に成功する。 シリウスとクリストフの活躍により、敵魔術師の2人は動けない。 それを見た、後方に居た魔術師の1人は、戦場を横に大きく迂回する形で、この場を離れようとしていた。 だが、そこにニコライが立ちはだかる。 「どこに行くんだい?」 ゆらりと、ニコライは魔術師との間合いに踏み込む。 手にしたウッドソードを振り抜き、敵の顔を掠めるような一撃を放つ。 それを回避しながら、魔術師は侍達に援護を求める。 踏み込む侍。 対しニコライは、魔術師に顔を向けたまま。 しかし、その切っ先は侍に。 ウッドソードから、ジェントルロッドに武器を切り替え。 逆手からの抜刀斬撃。 クロス・ジャッジによる2度の振り抜きは、侍に防御をさせ動きを止める。 「抜刀術だと!? 貴様、剣豪の真似事のつもりか!」 「さて、どうでしょうね?」 演技も駆使し、敵を撹乱。 戦いの最中、あらぬ方向に顔を向け。 そちらに敵が意識を向けた瞬間、合流したリサが吶喊。 手にした盾を構え、突撃の勢いをそのまま乗せた体当たり。 「頼もしい援軍が来たね」 「安心して、攻撃に専念してください。私は、二コルの盾なのですから」 2人でひとつのように息を合わせ、敵の撹乱を目的に動く。 時折、ウボーの援護を受けながら、ニコライとリサの2人は、後方での撹乱をこなしていった。 戦闘は激しさを増す。 それは当然、後衛組にも。 侍達が切り崩しのために突進して来れば、マリオスが身体を張って止めに入る。 「ここは通さないよ」 背には、守るべきシルシィも居る。 決死の覚悟で、全力をふり絞り戦う。 突進してくる侍に、自ら跳び込む。 飛ぶような勢いで踏み込み、その勢いも乗せた疾風裂空閃。 疾風の如き速さで放たれた突きは、侍の肩を斬り裂き。 そこから間髪入れず放たれた横なぎの斬撃は、さらに1人の侍を斬り裂く。 だが、敵もさるもの。 傷を受けようとも、斬撃を放って来る。 幾つかを受け、即座に癒しの魔術の援護が入る。 「マリオス」 「大丈夫だよ。シィ」 視線は敵である侍から離さず、天恩天賜で回復してくれるシルシィに礼を返すマリオス。 そんなマリオスの援護をするべく、シルシィは鬼門封印で動きを阻害する。 息の合ったコンビネーションを見せ、侍達を捌いていく。 だが、敵の数は多い。 前衛を抜け、後衛に向かう者も。 それをセレナとウボーが対処する。 さらに援護するように、後衛組は動く。 (あまり酷い事は、したくないです、けれど……) 苦渋の思いで、アリシアは蠱霧散開を使う。 それにより侍達の動きが鈍った所で、鬼門封印を使いウボー達の援護を。 アリシアの動きに合わせ、リチェルカーレとシルシィも鬼門封印を。 後衛組は連携してサポートをこなしていく。 そんな中、リチェルカーレは退魔律令も使い、仲間の援護のためにあえて身の危険をさらすように前に出ることも。 「怪我をしたら無理せずひいてくださいね」 後衛を守るように動くウボー達やマリオス、彼らが場合によっては体勢を立て直せるよう、場を見極めようとしていた。 戦いの趨勢は、浄化師達に傾き始めていた。 けれど敵の数は多い。 味方である筈の侍達を捨て駒にして、すり抜けようとする魔術師。 しかし、一条の矢が、それを防ぐ。 「逃がすか!」 トールのハイパースナイプ。鋭い一撃が、魔術師の肩を抉る。 動きが止まる魔術師。 その隙を逃さず、トールとリコリスは魔術真名を唱え全力攻撃。 「闇の森に歌よ響け」 解放された全戦力を込め、リコリスは吶喊。 「おはよう、憐れな襲撃者さん、そしてさようなら」 魔術師がリコリスの動きに気付いた時には、すでに攻撃が放たれている。 右肩、そして右脇腹への刺突。 攻撃を放った瞬間、軽やかなステップで死角に移動。 最後の一撃は、動きを封じるように、右足の腿を深く抉る。 全ての攻撃は、一呼吸の内に。 停滞なき鮮やかな動きは、舞い踊るかのように。 華麗な戦舞は、魔術師に大きく傷を与えていた。 だが、魔術師の戦意は無くならず、反撃を行おうとする。しかし―― 「させるか!」 トールのハイパースナイプが、魔術師の左足を深々と貫く。 これにより、動きが鈍る魔術師。 そこに後衛組が協力して、更に動きを鈍らせた所で、リコリスが止めの三身撃。 魔術師を倒すと即座に、リコリスは後衛組の仲間に告げる。 「私達は、前線の助けに行くわ。この魔術師の対応は、お願い」 「なら、私が。クリスが縄を持って来てくれていますから」 アリシアは、そう言うと仲間と協力して魔術師を拘束。 その間も、リコリスとトールの動きは止まらない。 「リコ、右側の人数が多い。加勢に行こう」 周囲の見極めをしていたトールの呼び掛けに従い、リコリスは共に向かう。 そこに居るのは、数人の侍達。 リコリス達に気付き構えるよりも、彼女達の動きの方が速かった。 戦踏乱舞でトールと自分を強化し、リコリスは駆ける。 気付いた侍達が陣形を取ろうとすると、リコリスは横に跳躍。 その瞬間、トールのスウィーピングファイアが。 侍2人の肩を抉るように射抜き、動きが止まった所で、リコリスは突進。 侍達を翻弄するように動き回り、次々斬り裂いていった。 魔方陣解除組が追い付くことで、浄化師達の優勢は、さらに確実になっていく。 その活躍は、イザークとあおいも同様だ。 「通す訳にはいかんな」 天空天駆で上空から情勢を見極めたイザークは、この場から離れようとする魔術師を発見。 即座に急降下。 魔術師は気付き、攻撃魔術を放つも、イザークは華麗に回避。 背中の羽を片方だけ羽ばたかせ、急速旋回。 地面に降り立つなり、一気に跳躍。 間合いを詰め、三身撃を叩き込む。 それを敵魔術師は、片腕を犠牲にして受け止める。 受け止めると、後方に跳躍。 魔術で無理やり傷を防ぐと、複数の炎弾を浮かべ間合いを取る。 そこに、あおいが追い付く。 「力の出し惜しみはしません。全力で行きます」 「ああ、当然だ」 魔術真名詠唱。 「イーザ・イーザ・イーザ」 苦難と安らぎ。そして運命を共にする2人は全力をみせる。 「マヤ、お願いね」 あおいの意志に応えるように、マヤは魔術師に突進。 同時に、イザークは戦踏乱舞により、あおいと自分を強化。 ゆるぎない信頼を胸に、絶妙のコンビネーションで、2人は戦っていった。 皆の活躍により、敵の内、魔術師はほぼ制圧を完了する。 だが、まだ侍である浪人たちは健在。 浪人達は、仲間だと思っている魔術師を助けるため、決死の勢いで突進して来ようとする。 そこに、大きな声で踏み込んできたのは和樹だ。 「なにやってんだ!」 同じニホン人が、テロに加担している。 それが和樹の心を熱くさせる。 「それでも侍かよ!」 和樹の憤りは、令花も同じだ。 「侍は、国を守るのが誇りでは無いんですか! なぜ、こんなことをするんです!」 これに浪人達も激昂したように返す。 「黙れ! 外国におもねる幕府の狗が! 幕府がこの地を見捨てたこと、忘れたとは言わせんぞ!」 それは義憤に駆られた怒り。 そこに込められた想いが誠だと、和樹と令花には伝わってくる。 けれど、いや、だからこそ。 2人は決して退かず、浪人たちを止めるように、全力を尽くす。 「ねーちゃん!」 「かずくん!」 2人は手を繋ぎ、誓約を告げるように魔術真名を詠唱する。 それは、かつての悲劇を忘れず。 乗り越え、2度と君を失わないという決意。 「大切な人を守る」 詠唱完遂。 魔力回路、完全開放。 途端、令花の胸に、力強い脈動が。 それは、和樹をアンデッドに変える原因となった魔導書、その息吹があるように令花は感じ取る。 あり得ないことだ。 封印され、なんの力もない筈の魔導書に、そんな力はない筈。 勘違いかもしれない。けれど、それでも。かつての罪と向き合うように、自らを駆け巡る力を受け止め、全力で行使する。 「行くぞ! ねーちゃん!」 先行するのは和樹。 盾を前面に掲げ、決して後ろの令花には近づけぬという気迫で、侍達に突進する。 迎撃するべく、刀を振るう侍達。 だが、その瞬間。令花は魔力を込めたタロットカードを投擲。 手の甲を。あるいは腕を。 切り裂き、傷を与え、侍達の動きを阻害する。 奮闘する令花と和樹。 連携した攻撃は、1人と1人の力を、2以上に跳ね上げる。 けれど、侍達も決して退かず。 2人を止めるべく、横合いから刀を振るおうとする。 そこに間に入ったのは、2人に同行していたセパル。 2刀を召喚。 攻防一体の2刀流を駆使し、令花と和樹の2人を援護する。 「こっちは任せて。だから2人とも、思う存分、やっちゃって」 「ありがとう! セパルさん!」 「ありがとうございます!」 侍達から視線を外すことなく、礼を返す令花と和樹。 侍達は、そこに踏み込もうとするも、セパルが立ちはだかり進めない。 「貴様、その構えは――」 「二天一竜。武蔵くんに習った技だけど、鍛錬は欠かしたことはないよ」 セパルの応えに、顔を引きつらせる侍達。 動けず、ある種のこう着状態になった所で、魔方陣解除組の殿を務めていた2人が援軍にやってくる。 「セパルさん、避けて下さい!」 ヨナの呼び掛けに、セパルは半歩下がる。 ほぼ同時に、それまでセパルが居た場所を走る、エアースラスト。 侍の1人に命中し、肩を切り裂いた。 ヨナは、令花と和樹、2人の元に駆け寄り。 「援護します。一緒に戦いましょう」 令花と和樹、2人と連携を取るべく動き出す。 「ありがとうございます! ヨナさん!」 「おう! 一緒に戦おうぜ!」 新人を気に掛けていたヨナは、令花と和樹の援護に動く。 同じように、新人を気に掛けていたベルトルドは、敵の後方で奮闘するニコライとリサの元に疾走。 風の如き速さと、ネコ科の獣の如き柔軟さで駆け抜け、リサに斬り掛かろうとした侍の一刀に掌打を放つ。 疾風裂空閃を発動。 スキルの威力を込められた一撃は、侍の刀を叩き折る。 そこから首を掴み、足払い。 磔刺の威力を込め、地面に叩きつけた。 衝撃で地面に身体を丸め、ろくに動けなくなる侍。 それを確認し、ベルトルドは、ニコライとリサの死角の位置を守るような配置に就く。 「援護させてくれ」 「そりゃ、助かるね」 ニコライはベルトルドに返すと、今まで以上にリサと連携を取れる位置に移動。 「さて、まだやれるな? リサ」 「はい、もちろんです。二コルに戦う意志がある以上、貴方の盾である私は折れません」 「頼りになるね」 リサの言葉に笑みを浮かべ、ニコライは戦いを重ねていった。 魔方陣解除組の浄化師達も合流することにより、形勢は一気に傾いた。 もはや、浄化師達の優位は覆ることなく、勝利へと向かうだろう。 そう判断したシリウスは、一端、リチェルカーレの傍に。 「怪我はないか?」 「大丈夫。シリウスこそ」 「俺のことは気にするな。それより、今なら侍達に言葉が届く。言いたいことが、あるんじゃないか?」 それはシリウスだからこそ気付いた、リチェルカーレの想い。 戦うだけではない、他の方法も求めるリチェルカーレを、認めるようにシリウスは、彼女の言葉を促す。 それを受けリチェルカーレは、自分を守ってくれるように前に立つシリウスに礼をひとつ返し、侍達の元に近付き言った。 「この先のお祭り会場に仕掛けられた魔方陣が起動したら、沢山の無関係の人が傷つくんです。それを知っているんですか?」 必死な想いが込められた呼び掛け。 戦いの趨勢が決まり、死を覚悟していた侍達だからこそ、その言葉は届く。 「何を言っている。それは、貴様らが――」 反論する侍達に、アリシアも問い掛ける。 「後ろの魔術師さんはともかく、浪人の皆さんは、自分の国の人々を傷つける、そんな魔方陣を、どうして仕掛けられるんですか……」 動揺する侍達。 そこにシルシィも問い掛ける。 「普通の人たちを犠牲にして、何を企んでいるの?」 そして続けて、魔術師たちにも問い掛ける。 「禁忌魔術である、あの魔方陣を使うあなたたちは何?」 魔術師たちは、何も返さない。 代わりに、戦闘を呼び掛ける。 「耳を傾けるな! それよりも戦え! 反政府軍に入るためなら命も賭けると言ったのは与迷い事か!」 扇動する魔術師。 その足元に、矢が突き刺さる。 「それ以上、余計なことを喋ったら、次は心臓を撃ち抜く」 トールの警告に、黙る魔術師。 そんな魔術師を見て、リコリスは肩を竦めるように言った。 「元凶が誰か知らないけど、貴方たち魔術師が関わってるのは間違いなさそうね。全部、喋って貰うわよ」 これに魔術師たちが、さらなる戦意を見せた時だった。 「そこまでだ」 突如、余裕のある声が聞こえてくる。 視線を向ければ、そこに居たのは、1人の半鬼のデモン。 警戒する浄化師に笑みを浮かべると、そのデモンは仲間に呼び掛けた。 「豪鬼。魔術師と浪人達を連れて行け。えんら。邪魔されないよう、煙で覆え」 途端、濃い霧のような煙が周囲に充満する。 異変を感じた浄化師達は、仲間の元に合流。 即座に戦闘態勢を整える。 その時点で、謎のデモンと浄化師達をぐるりと囲むように、壁のような密度となった煙が覆っている。 外からは中が見えず、中の音は外にこぼれない。 「こいつは、やっかいだね」 「……ニコル」 いつでも斬り掛かれるよう、タイミングを見計らうニコライに、そんな彼を守るよう前に出るリサ。 他の浄化師達も同様に、謎のデモンに対して警戒する。 そんな浄化師達に、謎のデモンは両手を上げ言った。 「待った。やり合う気はねぇよ」 「どういうことですか?」 あおいの問い掛けに、謎のデモンは返す。 「そのまんまの意味さ。戦う気はねぇってこった」 「……この状況で、そんなことを言われてもな。そもそも何者だ?」 イザークの問い掛けに、謎のデモンは応えた。 「東ニホン反政府軍の実質的頭目、芦屋道満。そして――」 謎のデモンは芦屋道満と名乗り、口寄せ魔方陣を発動。 金棒に見える魔喰器(イレイス)を召喚し続けて言った。 「お前さんらの、お仲間だ。薔薇十字教団ニホン支部長、安倍清明のパートナーでもある」 道満の告白に、リチェルカーレが返す。 「支部長さんの、パートナーさんなんですか?」 「おう、そういうこった」 笑顔で返す道満。童顔なこともあり、どこか見ていて気の抜ける笑顔だった。 けれど、それでも警戒は解かず、シリウスが問い掛ける。 「なぜ、邪魔をする? これでは、奴らの仲間のようだぞ」 「ああ。そういうこった。獅子身中の虫ってヤツだけどな」 道満の応えに、クリストフは返す。 「ひょっとして、スパイってヤツかな?」 「大正解。いま反政府軍には、海外勢力が食い込んでてな。それを探るにゃ、内部に入り込むしかないってわけさ」 「そのために、スパイを? 支部長さんは、そのことを、知っておられるのですか?」 アリシアの問い掛けに道満は返す。 「知ってるっつうより、アイツの策略だからな」 この答えに、浄化師達の間には不信感が広がる。 それをなだめるように道満は言った。 「悪いな。そっちがこっちのこと信じられないのも、分かるぜ。 だがな、海外勢が食い込んでるって言っただろ? お前さんら、本部の浄化師だって、そういう点じゃ、どこまでこちらの味方か分からなかったんでな。 それに支部は支部で、どうも何人か内通者が居るらしくてな。 それを完全に探り出すまでは、お前さんらにも大っぴらに事情を話せないってことさ。 どこから話が漏れるか、分からねぇからな」 「だったら、なんで今ここで、俺達に事情を話したんだ?」 トールの問い掛けに、道満は笑みを強め応える。 「お前さんらが、思ってた以上に強かったからだよ。これなら隠すより、話した方が、先のことを考えると良いと思ったんでな」 「独断ってこと? パートナーに怒られるんじゃない?」 リコリスが呆れたように言うと、道満は肩を竦めるように返す。 「その辺は、あとで俺の方からアイツには言っとくさ。少なくとも、お前さんらの不利益になるようなことが無いようにするよ」 そこまで道満が言うと、ニホン人である和樹は、焦燥感に駆られた表情を見せながら言った。 「なぁ、何が起こってんだよ。海外勢が関わってるって……」 「戦火に包んで、植民地にしたいらしい。それだけなら、まだマシなんだが」 えげつない事実に浄化師達が表情を強張らせる中、道満はさらにのっぴきならない事実を告げる。 「最悪、この国は滅ぶ。あのアホ共、自分達がしちゃならん事に手を出そうとしてるのに気がついてないからな」 「そんな……」 顔を青くする令花に、道満は安心させるように言った。 「心配すんな。そうなっても、俺と清明が命を捨てりゃ、最悪は回避できる。それによ――」 浄化師達を見詰めながら道満は続ける。 「お前さんらみたいな、頼りになる若いのが居りゃ、なんとかなるさ。期待してるぜ」 そう言うと、道満は一歩下がり。 「じゃ、これからは悪いが、少し茶番に付き合って貰うぜ。お前さんらが相手をしたアイツらに関しちゃ、悪いがこっちで引き取る。今スパイしてる所に、借りを作らせる材料にするんでな。そうそう、ここで話したことは、教団の信用できる相手以外には黙っといてくれ。まだ広められる段階じゃねぇからよ」 そこまで言うと、肌で感じ取れるほど濃密な魔力を放ちながら続ける。 「今から、煙の壁を解除するぜ。これがある間は、外から中のことは分からねぇけど、無くなるとそうじゃねぇからな。解除するのに合わせて、見た目が派手な技を使う。外で監視されてるとは限らねぇけど、お前さんらと戦ってたってことにしたいんでな」 説明が終わると同時に、煙が薄れ出す。 それに合わせるようにして、道満は漆黒の炎を生み出した。 「ヨナ、あの炎は――」 ベルトルドに言われるまでもなく、ヨナも気付く。 (私達がアウェイクニング・ベリアルを発症した時に、メフィストさんが使った炎と同じ) どういうことなのか? ヨナが問い掛けの声を上げる余裕はなく。 「やるな、お前ら! 今日の所は、これぐらいで済ませてやるよ!」 黒炎を腕から放ち、浄化師達を遮る巨大な壁を作る。 それが晴れた頃には、道満も、浪人や魔術師たちも消えていた。 かくして、爆破魔方陣によるテロを防ぐ指令は終わりをみせる。 幾つかの謎を残しながらも、浄化師達の活躍により、誰一人として犠牲の出ない解決となった。 浄化師達は、すべてが解決したことを、神社に戻ると関係者に告げる。 喜ぶ神主達は、何度も何度も、浄化師達に礼を言った。 そのあと、清明の使い魔である烏が、周囲の警備に人を配置することを浄化師達に告げる。 それを聞いた浄化師達は、警備が来るまで、お祭りの手伝いを。 また、怪我をしていた浄化師達は、簡易救急箱を持って来ていた仲間に手当てをして貰ったりもした。 「シィ、手伝うよ」 簡易救急箱を持って来ていたマリオスは、仲間の手当てを終えたあと、先に祭りの手伝いをしていたシルシィの元に。 手伝いをしながら、マリオスは言った。 「誰も犠牲者を出さずにすんで良かったよ」 「ん、そう思う」 シルシィは頷く。 それはきっと、他の浄化師達も、同じ気持ちだったのだろう。 皆は、祭りの手伝いをしながら、これからのことも考えつつ、ひとつの指令の終わりを見せた。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||||||||||||||
|
| ||
[37] 桃山・令花 2019/08/15-21:47
| ||
[36] ヨナ・ミューエ 2019/08/15-20:29 | ||
[35] リコリス・ラディアータ 2019/08/15-11:19 | ||
[34] 桃山・令花 2019/08/15-06:19
| ||
[33] 鈴理・あおい 2019/08/15-00:08
| ||
[32] 桃山・和樹 2019/08/14-22:35 | ||
[31] リチェルカーレ・リモージュ 2019/08/14-21:55 | ||
[30] ヨナ・ミューエ 2019/08/14-19:16 | ||
[29] クリストフ・フォンシラー 2019/08/14-18:51
| ||
[28] クリストフ・フォンシラー 2019/08/14-18:44 | ||
[27] リコリス・ラディアータ 2019/08/14-13:58 | ||
[26] 桃山・和樹 2019/08/14-06:12 | ||
[25] シルシィ・アスティリア 2019/08/14-01:12 | ||
[24] クリストフ・フォンシラー 2019/08/13-23:51 | ||
[23] リチェルカーレ・リモージュ 2019/08/13-22:30 | ||
[22] ヨナ・ミューエ 2019/08/13-14:51 | ||
[21] 桃山・和樹 2019/08/13-03:56 | ||
[20] 桃山・令花 2019/08/13-03:33 | ||
[19] シルシィ・アスティリア 2019/08/13-00:38 | ||
[18] 鈴理・あおい 2019/08/12-23:29
| ||
[17] リチェルカーレ・リモージュ 2019/08/12-23:21 | ||
[16] クリストフ・フォンシラー 2019/08/12-22:37
| ||
[15] クリストフ・フォンシラー 2019/08/12-22:35 | ||
[14] リコリス・ラディアータ 2019/08/12-18:06 | ||
[13] 桃山・令花 2019/08/12-08:06 | ||
[12] 桃山・令花 2019/08/12-06:24 | ||
[11] シルシィ・アスティリア 2019/08/11-23:13
| ||
[10] リチェルカーレ・リモージュ 2019/08/11-22:21 | ||
[9] クリストフ・フォンシラー 2019/08/11-22:13 | ||
[8] ヨナ・ミューエ 2019/08/11-13:43 | ||
[7] ニコライ・パーカー 2019/08/10-23:54
| ||
[6] シルシィ・アスティリア 2019/08/10-22:24
| ||
[5] リコリス・ラディアータ 2019/08/10-21:43
| ||
[4] クリストフ・フォンシラー 2019/08/10-21:03 | ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2019/08/10-14:50
| ||
[2] 桃山・令花 2019/08/10-02:13
|