~ プロローグ ~ |
「実験に協力して欲しいの」 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
動物に変身できる植物なんて、あったんですね…知りませんでした どんな感じなのか、私、試してみたいのです、けど… クリス、どんな感じだったか、見てて下さいね 薬草とは違う意味で怪我人の回復に役立ちそうな植物に興味津々 とりあえず一粒…と、珍しく積極的に手を出す 黒猫に変身 わたし…なにをして… 声を掛けられ見上げて …そう、わたし、このひとがだいすき… そう思った瞬間クリスの腕の中に飛び込みスリスリ 記憶が曖昧、精神的に幼児化した為の行動 頬に鼻先を近づけてチュ 戻ってみて どうだったか聞いてみたら赤い顔で目を逸らされ え、私、そんな事を… 違います いくら記憶が曖昧になってても 好きでもない人にそんな事… (ハッとして口を押さえ |
||||||||
|
||||||||
【小動物になる方】 祓魔人 【種の数】 1粒 【パターン】 2 【動物】 白銀の毛並みをした蒼い瞳のモルモット。 【行動】 「実験に協力?」 「ルイがなんて言っても未来の為になるなら勿論協力するよ。」 ルイに止められるものの未来の為になるならと反対するパートナーに無理を通してその場で自ら積極的に魔法の種を1粒食べる。 変身後) 魔法の種で白銀の毛並みのモルモットになってそのまま外に飛び出す。 外に飛び出して馬車に轢かれそうになりながら走りまわる。 思考が子供の頃に戻ったからか子供の頃苦手だった大きな犬に吠えられてびくびくしている所に追いついたルイに捕獲されてルイのポケットの中で眠りに落ちてそのまま教団に連れ帰られる。 |
||||||||
|
||||||||
ヨ ベルトルドさん どうします…? ベ 俺はパス ヨ ええ…(残念そう ベ とにかく 今回は勘弁してくれ 見ろ あの顔 何を考えているか手に取るように分かる ただでさえ獣人変身している時は扱いが雑なのに それが小動物になればどうなることか 俺の名誉にかけてそれだけは避けたい ヨ むぅ では私が食べるので後の事はお願いしますね と二粒 それが少し前の話 そして今は頭を抱えている 面倒を見る為に自室に連れ帰った1匹の猫 この茶色のハチワレ 元気があり余りすぎる 非常に猫らしい行動(控えめな表現)の洗礼を受け よじ登ったカーテンに爪をとられ降りられず声をあげているヨナを剥がしながら お前な… とぼやく 叱った所で猫のヨナには理解できないだろう 続 |
||||||||
|
||||||||
目的 魔法の種の研究に協力する。 シルシィ 「…これで、変身…?」(パートナーの掌の上の種を取ってぱくり) その場ですぐ種を食べる。 食べる種は一つ。 パターンは、2小動物に変身。変身している間は、思考力がお子さまになり、記憶もあいまい。 ほぼ実際の茶トラの子猫の姿。 しばらく部屋の中を動いた後、開いていた窓からするりと外へ。 木に登ったり下りたり、教団の敷地をあちこち探検。 パートナーは置いてきぼり。 思いっきり遊んだら戻ってきてパートナーにご飯をねだる。 お腹一杯になってお昼寝。 余計な事を気にせず一杯遊んで満足、だった気がする。(元に戻ってから) |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
魔法の種で動物変身指令。 浄化師達は、それぞれ実験に参加していた。 ○猫になっても好きな人 「動物に変身できる植物なんて、あったんですね……知りませんでした」 興味深げに『アリシア・ムーンライト』は小皿に乗った種を見詰める。 「動物に変身しちゃうだけで危険はないから、心配はしなくても大丈夫よ」 おっとりとした口調で、魔法の種を用意したリリエラは言った。 その視線は、魔法の種を見詰めるアリシアではなく、アリシアを気に掛ける『クリストフ・フォンシラー』に向いている。 クリストフは、アリシアを気に掛けるように見詰めていた。 (彼女に人体実験みたいな事は……と思ったんだけど) アリシアの魔法の種を見詰める熱心な眼差しに、苦笑するように声を掛ける。 「何だか積極的だね」 「はい……」 アリシアは、少しだけ高揚したように返す。 「どんな感じなのか、私、試してみたいのです、けど……」 薬草とは、違う意味で怪我人の回復に役立ちそうな植物に興味津々なアリシアは、魔法の種に手を伸ばす。 「とりあえず、1粒……」 「ちょっと待って」 そこで少し止めるクリストフ。 (植物や薬学が好きなアリシアだから、興味があるのは分からないでもないけど――) アリシアの興味を尊重しつつ、なにがあっても大丈夫なように用心する。 「リリエラさん。他の部屋で、実験はしても良いのかな?」 「ええ、大丈夫よ。後でレポートを出してくれたらいいから。私はここに居るから、もし何かあったら呼んでちょうだいね」 確認を取り、クリストフはアリシアと共に個室に向かう。 「では、試して、みます、ね」 部屋に入り、アリシアは1粒食べてみる。 カリッとした食感と、香ばしい味わい。 (歯応えが、ありますから、怪我や病気を、した人には、粉状にした方が、良いかも、しれませんね) そこまで冷静に判断し、所感をクリストフに伝えようとした所で、ふわりとした浮遊感が。 次いで、眠りに落ちるように意識が微睡み、魔法が発動する。 ぽんっ、という軽い音と共に、白煙が上がりアリシアを包み込む。 それが晴れるとそこには、艶のある毛並みの、綺麗な黒猫姿のアリシアが。 (わたし……なにをして……) 黒猫になったアリシアは、夢の中のように意識がおぼろげになる。 「へえ、アリシアは綺麗な黒猫になるんだね」 クリストフの声に、アリシアは見上げる。 いつもよりも高い位置にある、クリストフの顔を見て、アリシアは心地好い安堵感を得る。 それをより強く感じ取ろうと、じっとクリストフの顔を見詰め続ける。 2人は見詰め合い、クリストフは小さく笑みを浮かべ腰を落とす。 視線を近づけるとクリストフは、意識せずアリシアを撫でる。 温かな、クリストフの大きな手。 撫でられるだけで、ひとつの想いが浮かんでくる。 (……そう、わたし、このひとがだいすき……) 子供のように幼なく素直な気持ち。 その想いに促され、アリシアはクリストフの胸に飛び込むように跳び上がる。 「アリシア?」 クリストフは驚いて声を掛けるも、アリシアは聞こえていないのか、自らの想いに素直に従う。 親愛の情を示すように体を摺り寄せ、クリストフの頬に鼻先を、ちょんっと当てる。 そして口元を、頬に重ねるように摺り寄せた。 (えっと、これはキス……だろうか) アリシアの行為に気付き、かぁっと顔が熱くなる。 (いや、落ち着け俺) 混乱しそうな自分に、クリストフは言い聞かせる。 (これはおそらく精神が動物化、あるいは幼児化してるんだ。ひょっとすると、動物になってる時の記憶は無いのかもしれないし) そう言い聞かせている間も、黒猫アリシアは、大好きというように体を摺り寄せる。 そんな彼女を放り出すわけにもいかず、されるがままに時間が過ぎて。 効果が切れる時間が来ると、そっと床に降ろす。 黒猫アリシアは、寂しいというように「にゃん」と鳴くが、やがてぽんっと音をさせ、最初と同じように白煙に包まれる。 そして晴れた時には、人間に戻ったアリシアが。 寝起きのような、ぼんやりとした意識はすぐに戻り、黒猫になっていた時のことは、いまいち覚えていないアリシアが問い掛ける。 「どう、でしたか?」 「……覚えてない?」 クリストフは顔を赤くして、思わず目を逸らしながら事情の説明を。 「え、私、そんな事を……」 アリシアは、クリストフと同じように赤面しながら慌てる。 そんな彼女の様子に、ふっと、どこか安心するようにクリストフは言った。 「まあ幼児化してたからあんな事したんだろうし」 「違います」 返す言葉は即座に、断言するようにアリシアは言った。 「いくら記憶が曖昧になってても、好きでもない人にそんな事……」 そこまで言うと、はっと口を押さえ、今まで以上に顔を真っ赤にするアリシア。 その言葉に、クリストフは目を瞠る。 2人とも同じように顔を赤くして、気持ちの整理をつけるように言葉は口にせず。 けれど気持ちは通じ合えている。 そう思える、見ていて心地好くなる2人だった。 ○差し出された優しい手 「実験に協力?」 指令内容をリリエラから聞いた『モナ・レストレンジ』は思わず聞き返す。 「この実験が成功すれば、多くの人が助かるのだろうか?」 これにリリエラが返す。 「すぐには無理だけど、そうなる未来を目指しているわ」 続けて、安全性も口にする。 しかし、それを聞いて『ルイス・ギルバート』は言った。 「試験段階の怪しい種なんて食べれない」 それは自分のことではなく、モナのことを気に掛けての言葉。 けれどそうとは気づかないモナは、キッパリと言い切った。 「ルイがなんて言っても、未来の為になるなら勿論協力するよ」 「好きにすれば。僕は責任とらないけど」 本当は止めたいルイスだが、積極的なモナに強く出れずにそんなことを言ってしまう。 そうとは気づけないモナは、勢い込んで種を1粒とる。 「うん。好きにするよ」 そう言って、ルイスが止める暇もなく食べる。 カリッとした食感と香ばしさを感じ、同時に、ふわりとした浮遊感を。 次の瞬間には、ぽんっという軽い音と共に白煙に包まれ、モナは白銀の毛並みと、蒼い瞳をしたモルモットに変身する。 「レストレンジ……?」 変身した途端、周囲をきょろきょろと見回すモルモット姿のモナに、心配するようにルイスは声を掛ける。 その声にすら、びくりっ、と身体を震わせるモルモット姿のモナ。 今の彼女の気持ちは、こうである。 (え、えっ、なになに? みんな、おっきい) 今のモナからすれば、誰も彼もが巨人のようで。 部屋の調度類さえも、見上げるほどの城塞に感じてしまう。 (怖い!) モルモットに変身し、思考が子供のようになってしまったモナは、小さな頃のように、怖がりに戻ってしまう。 堪らず、その場から逃げ出すモナ。 「レストレンジ!」 思わず追いかけるルイス。 そんな2人に、ひょいっと加護の魔法を掛けるリリエラ。 一方モナは部屋の外に出て、さらにパニックになっていた。 (怖いよー!) 教団から外に出て、広がっているのは巨人の国。 モルモット姿になったモナにとっては、お伽の国に迷い込んでしまったようなもの。 誰も彼もが見上げるほどの大きさで、踏み潰されまいと右往左往。 勢い込んで、道の中央に出てしまうと、ガラガラという大きな音が。 (なに!?) 慌てて視線を向ければ、それは馬車。 「危ない! レストレンジ!」 轢かれそうになるモナに、血の気が引くルイス。 しかし間一髪。モナは猛然と走り出し、一目散にその場を後にする。 追いかけるルイス。けれど追い付けない。 「小さいのに、なんでそんなに速いんだ!」 懸命に追いかけるが、差は縮まらない。 そうして追いかけっこが続き、しばらくすると、モナの前に散歩に連れられた1匹の大きな犬が。 モナに気付くと、ひと吠えする。 「バゥワゥ」 尻尾をふりふり、興味深げに。 敵意は無いのか、噛みついてきそうな気配はない。 だが、モナにとっては青天の霹靂。 子供の頃苦手だった大きな犬に吠えられて、びくりっ。 そのまま、ぷるぷる身体を震えさせ、じっと固まってしまう。 「レストレンジ!」 そこで追い付いたルイスは、犬から庇うようにモナの前で腰を落とす。 「レストレンジ、もう大丈夫だから」 優しい声。 (……だれ?) びくびくしていたモナは、そっと声の主を見上げる。 視線の先には、心配そうな表情が。 「帰るよ、レストレンジ」 そっと、ルイスは手を差し出す。 (あれ……?) いつか、どこかで。 モナは、差し出された手に、覚えがあるような気がした。 だから、モナは差し出された手に、ゆっくりと近づく。 恐る恐る、近付いて。最初は、ちょんっと触れて、体を離し。 それでも待っていてくれるルイスに、ちょこん、と身体を乗せる。 「お願いだから大人しくしてよね」 安堵したルイスは、いつものように素っ気ない言葉で。 けれど込められた優しさは、包み込むようで。 たとえルイス本人は自覚していなくても、モナは気付いた。 だからモナは、ぎゅっとルイスの手にしがみ付く。 「心配しなくても良いよ。離さないから」 苦笑するようにルイスは言うと、そっと服のポケットにモナを導く。 するとモナは、ポケットに自分から入ると、身体を丸める。 「帰るよ、レストレンジ」 ルイスは、ポケットの中のモナが揺れないよう、出来るだけゆっくりと歩き出す。 どこか揺りかごのような心地好さを感じながら、走り疲れたモナは寝てしまう。 「まったく……心配させないでよね」 寝てしまったモナに苦笑しながら、そっと優しく、モルモット姿のレストレンジの白銀の毛並みを撫でるルイスだった。 ○ベルトルド、にゃんこなヨナに振り回されるの巻(タイトルの時点でネタバレと言ってはいけない) 「ベルトルドさん、どうします……?」 「俺はパス」 まったく溜めも迷いもなく、『ベルトルド・レーヴェ』は『ヨナ・ミューエ』に返した。 「ええ……」 とてつもなく残念そうに声をあげるヨナ。 「とにかく、今回は勘弁してくれ」 キッパリはっきりクッキリと、ベルトルドは断る。 何を断るかといえば、もちろん魔法の種で小動物に変身することだ。 理由? そんなもの、ヨナの表情を見れば一目瞭然。 (見ろ、あの顔) 今も残念そうにしているヨナを見て、ベルトルドは考えていることが手に取るように分かる。 多分、他の人間でも見てて分かるぐらい、ヨナの表情は雄弁だった。 もふらせろ! 一言で言えば、こうである。 (ただでさえ獣人変身している時は扱いが雑なのに、それが小動物になればどうなることか) 考えるまでもない。 (俺の名誉にかけてそれだけは避けたい) 戦々恐々とするベルトルドだった。 戦闘中でもないのに。 「むぅ、では私が食べます」 「む、そうか」 割とあっさりと退いたヨナに、安堵するベルトルド。 ちなみにその様子を見ていたリリエラは、この後のオチが読めるのか、おっとり笑顔で2人を見詰めていた。 ヨナは2粒を手に取り、後を任せる。 「では、後の事はお願いしますね」 「ああ、分かった」 ベルトルドは鷹揚に頷いた。 それが少し前の話である。 そして今は頭を抱えている。 「うにゃにゃにゃにゃにゃ、にゃー!」 茶色のハチワレ猫が、ベルトルドの自室を駆け回る。 多分、見る者が見れば分かる筈だ。 それは侵略行為。領土の主張。 この部屋は貰ったにゃー! そうとでも言いたげに、至る所を見て回る。 その行動のすべてを言語化すれば、こうなるだろう。 ここには何があるのにゃー! こっからここまで私のにゃー! でも特別に入って来ても良いにゃー! ベッド発見にゃー! 転がるにゃ転がるにゃー! 元気があり余りすぎるヨナにゃんこは、走り回ってお気に入りの場所を見つければ、体をすりすり。 ここは私のものにゃー! とでも言うように自己主張。 控えめに言って、ベルトルドの部屋はしっちゃかめっちゃかである。 (なぜ、気付かなかった、俺は――) 暴れ回るヨナを前にして、遠い目をして心の中でベルトルドは思う。 (気付けただろう。このオチは……なのに何故、俺は――) 残念ながら、気付けても無駄である。 猫になって被害者になるか。猫になられて被害者になるか。 指令を受けた時点で、逃れられぬ運命である。 という訳で、ベルトルドは運命を受け入れる。 「にゃー! にゃー! にゃー!」 た~す~け~てー! とでも言うように鳴き続けるヨナに意を決して近付く。 見れば、よじ登ったカーテンに爪をとられ降りられず声をあげている。 「お前な……」 ぼやきつつ、軽くため息ひとつ。 (叱った所で猫のヨナには理解できないだろう) とは思いつつも、抱き上げたヨナにゃんこに、ベルトルドは鼻を近づけ言い聞かせるように言った。 「せめて思考力が残っていればよかったんだが、なあヨナ」 「にゃん」 名前には反応し、ついでに猫パンチをお見舞いするヨナにゃんこだった。 そして時間は過ぎ。 遅くなっていたので、部屋で食事を。 食堂で買っておいた、身がほぐれるほどに煮こまれた甘塩っぱい豚の角煮を軽く温め。 食べ易いよう解したものに、角切りにしたトマトを添えてヨナに出し。 自分はそれをパンに挟んで食べる。 ご飯を食べれば、あとは寝るだけ。 「よし、お前はここだ」 ソファにタオルやクッションを敷き寝床を作る。 「今日は疲れた。片付けも明日にしよう」 いつも以上に振り回された気がして早々にベッドに入るベルトルド。 すると胸の上に、やわらかな重みが。 「お前の寝床はあっちだ」 ため息ひとつ。 戻すこと、5度目で諦めた。 暗がりの中、聞こえてくるのは、喉を鳴らす甘い鳴き声。 ベルトルドの存在を確かめるように、首に擦りつき。 こうしていたいのだと、傍に居たいのだというように。 にゃんこなヨナは、訴えかけて来るように伝えてきた。 それは人の時の余計な羞恥や見栄が抜け落ちた、非常に単純で根源的な感情。 そうであるように、ベルトルドは感じ取る。 「しかたない……今日だけだぞ」 苦笑するように言って、にゃんこなヨナの額を撫で、再び微睡みに身を委ねるベルトルド。 ここから先のオチは、書かぬが華というものである。 朝、元の姿に戻ったヨナに、同衾した男女の如し状況で枕を投げられるかどうかは、夢の微睡みの向こう側。 今はただ、安らかに寄り添い眠る2人だった。 ○子猫シルシィの小冒険 「……これで、変身……?」 興味深げに『シルシィ・アスティリア』は、『マリオス・ロゼッティ』の掌に乗った魔法の種を見詰める。 部屋に訪れ指令内容を聞いたマリオスは、シルシィに実験台のような真似はさせられないと、自分から率先して魔法の種を手にしていた。 食べる前、魔術に強い興味があるマリオスは、詳しいことをリリエラに聞こうとする。 それが、ちょっとした騒動を引き起こすことになる。 「この種の元になる木はどんな外見……、って、シィっ……?!」 マリオスが質問に気をとられた隙に、ひょいっとシルシィが魔法の種を摘まみ取る。 止める間もなく、食べてみるシルシィ。 「ん……美味しい」 「シィ! 大丈夫!」 「そんなに慌てなくても、大丈――」 言葉の途中で、眠りに落ちるような微睡みを感じ取り、ぽんっという軽い音と共に白煙に包まれるシルシィ。 パニック状態になりそうになるマリオスだが、煙が晴れたあとに姿を現したシルシィに言葉を無くす。 「あら、かわいい」 リリエラの言葉通り、可愛らしい姿だった。 それは手の平に乗りそうなほど小さな、茶トラの子猫の姿。 「シィ……シィ、なんだよね。その、大丈夫かい? 苦しい所とかない?」 心配するマリオスに、子猫シルシィは小首を傾げ。 「にゃん」 心配しなくても大丈夫。 とでも言いたげに、ひと鳴きする。 そしてゆっくりと、部屋を見て回る。 (ん、なんだか、みんなおっきい) 子猫になり、思考が子供のようになったシルシィは、興味深げに周囲を見渡す。 悠然と歩き回るシルシィの様子に、マリオスは胸を撫で下ろす。 (変身しても命の危険は無さそうだな) とは思っても心配なのか、念のためリリエラに聞いてみる。 そうして目を離した隙に、子猫なシルシィの冒険開始。 (ん、ここ、もう、ぜんぶみた) 子猫姿とはいえ、1部屋だけでは見る物はすぐになくなり、興味は外に。 (あそこから、でれらるかも) 開いていた窓を目ざとく見つけ、すぐ傍にあった本棚を足場に駆け上がる。 さすが猫。 とでも言いたくなるような身軽さで、マリオスが気が付いた時には、すでに体の半分以上が外に出ていた。 「シィ!」 慌てて追いかけるマリオス。 その直前、子猫なシルシィに加護の魔法を掛けるリリエラ。 こうしてシルシィの小冒険と、マリオスの追いかけっこが始まった。 「シィ! どこに居るんだい、シィ!」 (あんなに小さいのに。踏み潰されでもしたら大変だ!) 慌てて駆け回るマリオス。 一方、子猫なシルシィは、ゆっくり周囲を見て回る。 (ん、おしろみたい) 子猫なシルシィにとって、何もかもが見上げるほど大きくて。 まるでおとぎ話の巨人の国を歩いて回っているかのよう。 ゆっくりと見て歩いていると、彼女に気付く者も。 「見て見て~」 「かわいいー」 女性教団員に見つかれば、黄色い声を掛けられて。 気が向けば、サービスとばかりにひと鳴き。 そうして人が集まった所で、走り出す。 「にゃにゃん」 (おいかけっこ、する?) 遊ぼう、とでも言うように、ひと鳴きして。 教団員の間を走り抜ける。 偶に追いかけようとする相手には、捕まらないよとばかりに、壁や階段の縁に跳び移り。 そうして走り回っていたので、マリオスはシルシィの目撃情報を手に入れるが、追い付けるかは別問題。 「シィ、待って!」 ようやく見つけたかと思えば、子猫の身軽さで逃げ回る。 そうして遊び回っていると、やがて教団の一角に生えている、1本の大木に辿り着く。 (ん、のぼる) 見つけた瞬間、決定。 ひょいっと幹に跳び移り、そこから、よいしょよいしょと登っていく。 そうして、木の天辺に。 (すごい、とおくまで、みえる) それは絶景な光景。 大木の頂きからは、教団内で働く多くの教団員の姿が見える。 そうして絶景を堪能していると、小さくお腹が鳴る。 (おなか、すいた) そう思いながら周囲を見下ろしていると、走り回っているマリオスの姿が。 見つけると、子猫なシルシィはひょいひょいっと木を降りて。 一目散にマリオスの元に。 「シィ?!」 走り続けて少し休んでいたマリオスは、子猫なシルシィに気付き声をあげる。 「にゃあにゃあ」 鳴き続ける子猫なシルシィに、何かをねだられているような気がしたマリオスは、試しに非常食を差し出してみる。 すると子猫なシルシィは近付いて、食べさせて、というように口を開ける。 「分かったよ、シィ」 苦笑しながら、マリオスは子猫なシルシィを抱き上げて。 非常食を食べさせてあげながら、最初の部屋に戻る。 お腹一杯になってお昼寝をする子猫なシルシィを、マリオスは、そっと撫でてやれやれと。 「戻ってきてくれて良かった……、っていうかシィは僕のところに戻って来るんだ……」 苦笑するように呟いた。 そうして実験が終わり、人の姿に戻ったシルシィは、レポートの最後をこう括った。 余計な事を気にせず一杯遊んで満足、だった気がする。 変身と小冒険を楽しんだシルシィだった。 かくして、魔法の種実験は終わりをみせる。 それぞれ楽しみつつ、新しい技術に繋がる指令だった。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||
該当者なし |
|