~ プロローグ ~ |
「うーん。たいくつ、たいくつなのよねぇ」 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
ギルドにありました『過去を掘り下げる』というキーワードで今回は作りました。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【行動】 「過去を思い出すキャンドル?」 ルイには止められるが忘れてしまっている事でも思い出せるだろうかそんな思いでキャンドルに手を伸ばす。 過去) 思い出したのは故郷を失い1人サクリファイスに追われて逃げる所。 命の危機に陥り寸前の所で助けてくれたのは何度か以前手を差し伸べたヴァンピールの少年。ルイ。 何度か手を差し伸べようとした時ルイが言った言葉は… 「サクリファイスだけどいいの?」 その言葉を聞いても助けたのはサクリファイスが何かは知らずただ困っていたから。 現在) 「あの時助けてくれた命の恩人はルイだったんだね。」 (憎む気にならないのは命の恩人だから?) 「どんな過去があったとしても我は今のルイを信じる。」 |
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※アドリブ歓迎致します ※過去を思い出すほう ※記憶は残る は、はは…久し振りに思い出したよ。 父上は小さな領地ではあったけれど、子爵だった。 母上はいつも、庭園で紅茶を淹れてくださった… 幸せだった…幸せだったんだ。なのに… ベリアルが父上を、母上を、領民を殺したんだ! 僕が子爵だ、誰にも邪魔させない。 僕は世界中のベリアルを殺し尽くしてやる…! 教団の兵士がもっと早く来れば、きっと違う結果になった。 でも僕はあの人に、それは傲慢だと言われた(30話) それでも僕は抜くしかなかったんだ、奴等を滅ぼす為に 剣を…! (ララエルに両手を重ねられ) バカ!そんな事できるわけないだろ! |
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アロマキャンドル?あら素敵! いいじゃないこれ 部屋に飾りましょうよ 見える幻はラニの過去 二人の故郷がヨハネの使徒に滅ぼされた時の記憶 彼女の目から見た 事実 「あの日 ヨハネの使徒が何匹も何匹もやってきた 家も燃やされた みんな殺された ラスは シィラは あの二人を探さなきゃ …そう思って、あたしが見たのは 喉から血を流すのあの子、泣き叫ぶあんた あんたは傍にあったナイフを手に取って、自分に向けた だから、あたしは」 全て見終わった後は静かに泣き 言ったじゃない、全部あたしのわがままだって 本当は置いて行かれたのが苦しかった 憎まなきゃ生きていけなかった ……これからも一緒にいてくれる? |
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今まで知らなかったセラの過去を聴く お互いのことをもっと知りたい アロマキャンドルをセラに 「ご自由に、だって。誰かからの差し入れかな?」 使ってみようよと笑顔 過去を見るのはセシリアの方 >会話 セ:(自分を見るリューイの顔に ずっと昔の誰かの面差しが重なり、目を見張って) 聞き取れないくらいの声で名を リ:…セラ?どうかした? セ:(軽く瞬き小さく微笑)-いいえ、ごめんなさい。 何でもないの リ:だけど…(心配気な顔) セ:(目を眇め笑みを深く)本当に、なんでもないのよ 少し昔を思い出しただけ ほんの少しの切なさはあるけれど 懐かしさのが勝る大切な記憶 過去があるから現在があると理解しているため 特に取り乱しはしない |
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~ リザルトノベル ~ |
●王子様のファクト 『モナ・レストレンジ』が教団内の食堂に置いてあったアロマキャンドルを手に取り、周りから話を聞くと、過去を思い出すキャンドルだと教えられ興味津々。 (我の記憶は欠けている。あの時の記憶。これを使うと思い出すのだろうか?) そっと寮に持ち帰り、使ってみようとしたのだけど。 「なにしてんの、レストレンジ?」 戻る途中で『ルイス・ギルバード』に見つかってしまった。 「なにって……過去を思い出すキャンドルだと聞いて、我も試してみようと思った」 (過去を思い出す!? ……それは!!) 今すぐモナの手から、アロマキャンドルを奪い取りたいほど、ルイスに焦りと不安が押し寄せて来る。 (思い出せば、僕のことも一緒に……) だからこそ、ルイスはモナを止めるために動く。 この場所が消えないために。 「命の恩人だとか思い出したいんだろうけど、怪しい物に手を出すのは止めたら?」 「怪しいかは試してみないと分からないだろう? 我はやってみたい」 なんとしてでも止めようとするが、モナはルイスの意見に耳を貸さない。 思うことは多々あれど、なによりも怖いのは……モナの拒絶。 (なぜルイスはこんなに止める?) いつもであれば『好きにしたら?』など言うルイスが、今回に限ってこんなにも止めるなんて、モナは思ってもいなかった。 忘れてしまっていることでも思い出せるのだろうか。 そんな簡単な気分だったのにと、モナはため息混じりにキャンドルに火を灯してみた。 立ち込めるハーブの香り。 それを吸い込んだ時、モナの脳裏に自分ですら知らない……いや忘れていた、あの村の光景が現れた。 それは村がサクリファイスに襲われたあの日。 蹂躙される村から逃げ出したモナは、無我夢中で山道を走り続けていた。 必死に逃げつつも、心のどこかで追い付かれることを覚悟していたとは思う。 「はぁ、はぁ……。あれは廃墟、隠れられる?」 無駄だと分かってはいる。 サクリファイスがモナを見逃してくれることは無いと。 それでも走ることが限界だったモナは、廃墟に足を踏み入れ息を潜めてその時を待つ。 (助からない、殺されるんだ) ――諦めの感情。 (駄目。だって足音が近づいて来る) 足音はこの廃墟の中まで聞こえており、見つかり、殺され、それでモナは終わる。 ――そう思っていたのに。 『ザシュ!』 次に聞こえたのは……武器を振り下ろす音。 でもモナじゃない。モナは生きている。 「??」 薄暗い廃墟の中で、モナが見たもの。 それは村で何度か助けたことのある、あの人の姿。 でも! 今のあの人は、サクリファイスの中に居る。 そして……自身もサクリファイスの一員。 なのにモナを助けたのか? それが分からない。 「立てる? 安全な場所まで連れて行ってあげるよ」 「あ……うん」 ルイスの手がモナに差し伸べられるが、モナはその手を取っていいのか躊躇いが生じる。 (もし嘘だとしたら? ……うんん、村で何度か助けた時、この人は危害を加えることなんてしなかった) 葛藤はモナの手を鈍らせる。 その手を掴もうとしても、体が中々いうことを聞いてくれない。 「僕がサクリファイスだから?」 「ちがっ……」 (今この手を取らなければ、我は確実に殺されるのに) 追っ手はまだ沢山居るだろう。 逃げ切るのは無理に等しい。 素直にこのヴァンピールの少年の手を取ればモナは助かると、頭のどこかで分かってはいる。 「助けて……くれるの?」 「サクリファイスだけど、いいの?」 突きつけられた質問。でもモナは、 「貴方は大丈夫」 そう答えていた。 「分かった」 掴めずにいた手を握ったのはルイスのほう。 軽々とモナを担ぎ上げ、廃墟から抜け出し深い森を走る。 (大丈夫、この人は……怖くない) でも考えられたのはここまでで、極度の緊張から解放されたモナは、安心感に包まれ気を失ってしまった。 その記憶と共に―― 「あの時、村がサクリファイスに襲われ、我一人が村から逃げた」 遠くに座り、モナのほうを見ようともしないルイス。 「我に今みたいな力があったら、あんなことにはならなかったのに、我は幼すぎた」 (僕が元サクリファイスだったのは思い出していない?) その後ルイスは、モナに気づかれぬように彼女を追う。 モナの記憶の琴線に触れるのを恐れて。 (なのに教団に入るし。他の奴がパートナーになるのが許せなかった) パートナーの座は死守したけれど、空いた距離はそのまま。 彼が少々過去にふけっているうちに、モナの言葉は更に続く。 「出来るだけ遠くに逃げるように走り、でも心のどこかで我は殺されるという思いもあり、力尽きて廃墟に隠れた」 「……!」 ルイスの動揺をよそに、モナは静かに立ち上がり、ルイスに向かって歩く。そして―― 「あの時助けてくれたのはルイだったんだね」 (僕は恐れていた。レストレンジが僕の過去を知ってしまうことを) ずっとそんな日が来なければいいと願っていたのに、とうとうモナがルイスの真実を知ることが現実となってしまった。 「そうだよ、驚いた?」 思い出してしまったのであれば、もう言い訳なんて通用しない。 「命の恩人だとしても、元サクリファイスだった僕を、まだ王子様だと言える?」 (ルイを憎む気にならないのは、命の恩人だから?) ルイスが元サクリファイスだと知っても、モナはルイスに憎しみなどは持てない。 それは助けてくれたから? それともルイスだから? 理由は分からないが、ただ一つだけ分かることは、 「どんな過去があったとしても、我は今のルイを信じる」 「……そう」 言えない、モナの言葉が嬉しいなどと。 素っ気なく言葉を返したが、互いの心の在り方が少し変わったひと時でもあった。 ●ララエル君は 「ララエル! ……ララ!!」 ふらふらと教団内をさ迷う『ララエル・エリーゼ』を探して歩く『ラウル・イースト』。 最近はこんなことが度々あるがゆえに、ララエルから目を離せられない。 寮、エントランス、回廊、そのどこにもララエルは居らず、ずっと登って最上階の時計台にララエルは……居た。 「こんな場所に……。さっ、戻ろうよララ」 この時計台から、街並み綺麗なアークソサエティを見ていたのか、それとも全く別なのかは、ラウルには分からない。 だけどラウルの声を聞いたララエルは、なにかを手にラウルの元に駆け寄って来た。 「フフフ……。これ……」 「ん?」 ララエルの小さな手の中にあるのは、可愛らしいアロマキャンドル。 「これをどこで? いや、使いたいって意味だよね」 「ラウルと……フフフ……ラウル、ラウル!」 ララエルの変調。 それは心因的だと言われたが、心のどこかでは理解している『アウェイクニング・べリアル』の前触れだと。 「寮に戻って、そのキャンドルを使おう。ララの心が少しでも落ち着くようにだよ」 「……うん」 アンバランスなララエルの手を掴み、ラウルは寮への道を辿る。 このキャンドルが、ララエルの心を和らげてくれることを信じて。 ララエルを連れて来たのは、広い教団寮の共有スペース……の端っこ。 二人きりで甘いひと時を。というより、不安定なララエルを思いこの場所を選んだ。 ――それに。 「こうしてカーテンを閉めたほうが、キャンドルの炎も映えるだろ」 薄暗くなった室内の真ん中にキャンドルを置き、ラウルはそっと火を灯した。 暗い中に輝く炎。 ララエルは虚ろに炎を見つめ、ラウルは仄かに香る匂いに心地よさを感じる。 「へぇ、ハーブの香りか。……え?」 いい匂いに包まれたと思った時、ラウルの脳裏に浮かぶ過去の思い出。 幸せで、そして辛い、昔の記憶。 「は、はは……。久しぶりに思い出したよ」 ラウルの過去の記憶、それは。 (父上は小さな領地であったけど、子爵だった) 有名な土地とは言いがたいが、小さいながらも平和を保ってきたラウルの両親。 領地内にある屋敷でラウルは育った。 子爵であることが誇りである父。 父に寄り添うように、穏和で優しい母。 「母上はいつも庭園で紅茶を淹れてくださった」 綺麗に手入れが行き届いている、屋敷内の庭園。 ラウルは勉学のために本を読みながらも、母が淹れてくれる紅茶が大好きで、ほぼ毎日というくらい、本を片手に庭園に行っていたのを思い出す。 穏やかに笑い差し出される紅茶を飲みながら、母と一緒に昼のひと時お送る日々。 「幸せだった。幸せだったんだ。……なのに!」 だが、崩壊は突然やって来た。 領地にべリアルが出現し、父を、母を、領民を、次々と殺戮してゆく。 なすすべなく殺されていく人々。 荒らされる領地。 こんなことが許されていいのか? 両親が大切にしてきた領地を、領民を、誰が守る! 一族が亡き今、あの場所を継げるのはラウルだけだ。 「僕が子爵だ、誰にも邪魔はさせない。僕は世界中のべリアルを殺し尽くしてやる!」 荒れ果て、人が来ることがなくても、あの領地は、子爵の地位はラウルのもの。 もう一度この手に―― そのためには、憎いべリアルを根絶やしにしなければ! これが教団に入団した頃のラウルの思い。 騎士であるラウルに残された選択はただ一つ……だったのに、それは違うと否定されてしまうことになる。 「でも僕は、あの人にそれは傲慢だと言われた」 教団の兵士がもっと早くに来れば、きっと違う結果になっただろう。 ラウルはそう思っていた。 だがそれは、彼の傲慢、責任転換、自身への言い訳。 その全てを見透かされたようなあの言葉。 でもラウルは後には引けない。 「どんなに思い直しても、僕は抜くしかなかったんだ。彼奴らを滅ぼすために」 勝手な我が儘、ラウルの正当性を守るため。 今はそう気づいている。 だけどあの時出来たことは、 「剣を……! 剣を抜くしかなかった」 ――守るために!! 過去を思い出し、揺れ動くラウルの心。 記憶の幻に捕らわれ、抜け出せない苦しみ。 それを遮ったのは……虚ろな瞳でラウルの話を聞いていたララエルが、彼の手に自分の手を重ねたから。 「……ララ」 なにも写していなさそうだった瞳が、ラウルを捕らえる。 ララエルはラウルに向けて、僅かに微笑みを湛えた。 「本当なら……私が……ラウルのかぞく、に……なりたかった……」 精神を犯される苦しみの中、同じく苦しむラウルに伝えたかったララエルの言葉。 持てる力を寄せ集めてでも、ラウルに伝えたいララエルの思い。 「私が……べリアルになったら……ラウルが私を殺してくださいね」 他の誰でもない、ラウルにこの身を貫かれるのが、ララエルの叶えて欲しい願い。 「バカ! そんなことできるわけないだろ!」 幻から現実に引き戻される。 ララエルの悲痛な訴えだが、絶対に頷く気などないラウル。 「ララエル君は僕が守る。たとえべリアルになっても、僕だけはララエルを守るよ」 「ラ……ウル……」 「僕は騎士だ! この剣にかけて誓う。なにがあろうともララエルを守り抜くと」 「ラウル……私は……」 知らず涙を流すララエルを守るように、ラウルはララエルを抱きしめ、何度も背中を優しく擦る。 「僕は諦めない。僕は必ずララを治してやるんだ!」 恨みより復讐より、今大事なことは腕の中の大切な存在を守ること。 教団を裏切ろうとも、ラウルはララエルを守るだろう。 ――どんな結末が待ち受けていても。 ●過去よりも 『ラニ・シェルロワ』が教団寮に入ろうとした時、入口に置いてあった沢山のアロマキャンドルを見つけてしまった。 「アロマキャンドル? あら素敵!」 『ご自由にどうぞ』というプレートを見て、これは誰かの差し入れだと思い込んだラニは、キャンドルを一つ手に取ってみた。 「いいじゃないこれ。部屋に飾りましょ、そうしましょ」 いい物を見つけた。そんな気持ちでキャンドルを持ちつつ廊下を歩いていれば、向こうから来るのは、パートナーである『ラス・シェルロイ』だ。 「どうした? ずいぶんと機嫌よさそうだな」 「ふふー! そうなのよ。これ見てー! アロマキャンドルよ、部屋に飾ったら素敵だと思わない?」 そういえば、教団のいたるところに山と置いてあったなと、ほのかに思い出したラス。 ついでに言えば、アロマキャンドルを使用して、いい噂は聞いていない。 「使うのか、それ?」 「使わないと意味がないんじゃない?」 (……なぜか嫌な予感がするが、まぁいいか) ラニが使いたいと思うのであれば、無理に止める理由もなく、だけど少し引っかかるものを感じるので、ラスも一緒について行くことにした。 「んー。炎が揺れて素敵。もっと貰ってくればよかったかしら?」 「部屋中をキャンドルだらけにするのか」 「それもいいわね」 ラスが一緒に来たので自室とはいかず、寮の共有スペースでキャンドルを灯しお試し中。 「やっぱり後でもっと貰い……あ、あれ?」 キャンドルから放たれるハーブの匂いを嗅いだら、急に目の前が霞んだように見えてくる。 それはラスもラニも同じ。 霞んだ先に見えたのは、封じ込んだ思いである、あの日の光景。 (あの日、ヨハネの使徒が、何匹も何匹もやって来た) 慎ましいながらも、ラニは平和に暮らしていた。 小さな町だった。 でもそこに住む皆は優しく、ラニとラス、そしてシィラは、この町で幸せにしていた。 ――なのに!! ヨハネの使徒が全てを――!! (家も燃やされた。みんな殺された) なんの力も持たない普通の人間が、ヨハネの使徒に対抗する術は……無い。 無慈悲に破壊される町並み。 虫けらのように殺されてゆく町人。 ヨハネの使徒に慈悲なんて言葉は持ち合わせておらず、ただ本能のままに滅ぼしてゆくのみ。 なんとかヨハネの使徒の攻撃から逃げていたラニだったが、ふと気づけばラスとシィラからはぐれてしまい一人きり。 「ラスは? シィラは? あの二人を探さなくちゃ!」 怖さが勝るが、それよりも大切な二人のことが心配と、ラニは破壊された町に足を踏み入れ、ラニとシィラを探して歩く。 「どこに居るの? ラス、シィラ」 歩きながら、命亡き町の人たちを見た。 助けてあげたくても、自分の身ですら危険なこの状態で、助ける余裕なんてありはしない。 絶望と危機感を胸に、ラスとシィラを探していたラニ。 二人が居れば、まだ希望がある。そう信じていたのに。 ――探しあてたラニが見たのは、より深い絶望。 「あ……あぁぁーー!! シィラ! シィラー!!」 まずラスの泣き叫ぶ声が聞こえ、その側に喉から血を流すシィラの姿が、ラニの目に飛び込んで来た! 「シィラ!? ……なんで、なんでっっ!!」 (どうして! あたしたちを置いて自刃を選ぶの!?) ずっと一緒だと、ラニは思っていた。 なのに、ラニが見たのは……シィラの死。 しかも泣き叫んでいたラスが、おもむろにシィラが使っただろうナイフを手に取り、刃先を自分に向けた。 それを目の当たりにしたラニは、無意識に近くにあった少し大きめの石を拾い上げ、ほぼ衝動的に走る! 「おまえもおいていくのか!!」 そう叫び振り向いたラスの頭を石で殴り……ラスはナイフを地面に落とし、その場に倒れた。 ――ラスが覚えているのは、ラニの『おいていくのか!!』、その言葉まで。 「…………」 一番辛い過去を見、ラニは言葉すら出ずに、ただ静かに涙を流す。 嫌な予感が当たったと思いながらも、ラスはラニに向かって口を開いた。 「そうか。だからあの時言ったんだな」 ――全部思い出しても、いかないで……と。 「言ったじゃない、全部あたしのわがままだって。本当は置いていかれたのが苦しかった。ガラクタを恨まなきゃ生きてこれなかった」 苦しさを全てヨハネの使徒のせいにした。 そうすることで、ラニはラスと苦しさを共有し生きてこられた。 ヨハネの使徒が憎いのは嘘じゃない。 ただ、ほんの少しだけ、ラニのわがままが入っただけ。 それを誰が批難出来るだろうか? いや、口を出せるのは、たった一人。 「つまりは……その、オレの自業自得ということか」 苦笑いを浮かべながらも、ラスは本音を吐露する。 ラニが大人しく聞いてくれるのは、今しかないと思うから。 「ずっとお前に置いていかれるって苦しかった。苦しかったけど、最初にそう思わせていたのは、オレのほうだったんだな」 ずっと涙を流し続け、ラスを見上げるラニ。 ラスは分からせるように、ラニを温かく抱きしめた。 「ごめんな、本当に」 「……ラス」 近くで涙を見せたくないように、ラスの胸に顔を埋めるラニ。 でも一言だけ、大事な一言だけは、ラスに伝えたいラニの思い。 「……これからも一緒に居てくれる?」 「当たり前だ。それに言っただろう。今のオレにとって、一番大切で手放したくないのはお前だけだって」 「うん。……うん!」 ――互いが大切だから。 あの子のことを胸に歩いていける。 アロマキャンドルが見せた、つかの間の奇跡は、ラニとラスの心を、よりいっそう結びつけるものになった。 ●同じ瞳の人 教団寮へ帰ろうと、エントランスを歩いていた『リューイ・ウィンダリア』の目に入ったのは、『ご自由にどうぞ』と書かれたアロマキャンドル。 「ご自由にだって。誰かの差し入れかな?」 沢山あるキャンドルの中から一つだけ手に取り、リューイは『セシリア・ブルー』に渡したら喜んでくれるかな、なんて考えながら、嬉しそうにセシリアが待つ教団寮へと歩き出した。 「セラ、アロマキャンドルを手に入れたんだよ。使ってみようよ」 「アロマキャンドル? まだハロウィンには少し早いのに、もうあるのね」 「ハロウィンだけとは限らないよセラ」 「それもそうね」 寮内でセシリアと合流したリューイは、早速アロマキャンドルをセシリアに渡し、にっこりと微笑んだ。 「綺麗なキャンドル。それに仄かにいい香りがするわね」 「うん、きっとリラックスできるよ」 近くにあった小さなサイドテーブルにキャンドルを置き、セシリアはマッチを片手に火を灯してみた。 「かすかに炎が揺れて綺麗。それにハーブの匂いも……」 続きを言いかけた時、セシリアは自分を見つめるリューイの顔に、ずっと昔に見た誰かの面差しが重なった感じがする。 ――それは。 「あ……」 目を見張ってリューイを……違う、リューイの瞳を見つめてしまうセシリア。 そして聞き取れないはどの小さな声で、あの人の名を呼んでいたことに気づく。 「セラ? どうかした?」 不思議そうな顔をしているリューイに、セシリアは幻でも見たかのように瞬き、そして少しだけ微笑む。 「……いいえ。ごめんなさい、なんでもないの」 (マスターと……同じ瞳。私を生み出した人) 記憶と現実が交差する。 リューイと同じ、金色の優しい目をしたセシリアのマスター。 あの屋敷で、彼はセシリアに色々なことを教えてくれた。 この世界のこと。 生きていく上で必要なこと。 笑うこと。 喜ぶこと。 そして、人の手の温もりも。 なに一つ知らなかったセシリアに、全てを教えてくれたのは……マスター。 長い時をかけて、セシリアに世界と喜怒哀楽という感情をくれた人。 今でも鮮やかな記憶と『彼』の笑顔に、セシリアはそっと目を伏せる。 対してリューイは、思い悩むようなセシリアを見て、心配と不安にかられていた。 このキャンドルを灯した時から、セシリアの様子がおかしいと。 「……だけど」 先ほどの続きを言おうとしても、上手く言葉が出て来ない。 それはセシリアがリューイに向かって、笑みを深くしたから。 「本当に……なんでもないのよ。少し昔を思い出しただけ」 「昔のこと?」 セシリアの過去について、リューイはなにも知らない。 聞いても、はぐらかされてばかりで、セシリアが答えをくれることは無きに等しい。 ただ一つ知っていることは、リューイの産まれる前から、セシリアはウィンダリア家で眠るように封印されていたこと。 子供の頃から、何度も見に行った。眠れるお姫様を見に。 そのたびに両親に怒られたけど、リューイはセシリアが気になって仕方がなかったのだと思う。 セシリアの『少し昔を……』という言葉のせいなのか、それともキャンドルの影響なのか、リューイまで懐かしいことを思い出していた。 「ずっと昔、私のマスターのことを思い出したの。……貴方によく似た目をしていた」 ほんの少しの切なさはあるけれど、懐かしさが勝る大切な記憶。 この過去があるからこそ、今のセシリアがあると理解している。 だから、懐かしさはあれど、セシリアに取り乱すような動揺はない。 「……大切な人?」 「ええ、とても」 ――リューイに似ていて、リューイじゃない、とても大切な人。 でもその言葉に動揺するのはリューイのほう。 もしかすると、セシリアがそのマスターの元に行ってしまうのではないか。……リューイを置いて。 (でもずっと昔ってセラは言った。もしかしたら) 口に出してはいけない気はする。 だけどセシリアが自分の過去を話してくれることは、ほとんどないので、リューイは思いきって言葉に乗せる。 ――今なら答えてくれそうな気がするから。 「……その人はまだ生きてるの?」 「いいえ。ずいぶん前に死んでしまったわ」 「……セラは寂しい?」 「いいえ? 『生きる』ことが彼との約束だし、貴方に会えた。なにも寂しくない」 セシリアのマスターが、すでに居ないこと。 リューイに会えたから寂しくないこと。 その二つを聞いて、心のどこかで、ほっとした気持ちになるリューイ。 セシリアが自分から離れることはないという安心感。 「私はリューイを守るよ?」 辛そうで、それでいて安堵したような表情をしているリューイの髪に手を伸ばし撫でながら、安心させるように笑うセシリア。 姉とも思うセシリアの手に、今度こそ安心の笑みを浮かべるリューイ。 ――でも。 (さて誰かしら、こんな悪戯を仕掛けたのは?) 片手でリューイの髪を撫で、空いた片手でキャンドルを包み込みながら、その子供のような見た目からは想像がつかない黒い笑みを浮かべていたのを、リューイは知らない。 ――パートナーでも知らないほうがいいこともあるらしい。 ●過去の業、未来は? 「うふ、そうクラウディアちゃんが見たかったのは、これよ!」 アロマキャンドルを使用した波動を追い、教団内を自由にのぞき見していたクラウディア。 「過去は変えられないわ。でもね、未来は変えることが出来るの。……あなたたちの選択次第でね」 一通り見終わり、満足そうに近くで踊る妖精と戯れ……でもその瞳はまだ悪戯が足りないと言っているよう。 「次はどんなことがいい? ね、浄化師さんたち?」 彼女はまだ悪戯を狙っている。 ――ご用心ですよ?
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*** 活躍者 *** |
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[4] リューイ・ウィンダリア 2019/09/11-20:53
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[3] モナ・レストレンジ 2019/09/09-01:55
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[2] ララエル・エリーゼ 2019/09/07-04:30 |