~ プロローグ ~ |
砂漠とオアシスの国、サンディスタム。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
こんな時でさえどうして人は争いを止められないのか それが人の本質なのか すり潰されるような胸中 敵の混乱に乗じて数を減らす事に専念 ヨナは後衛で中威力のFN11や13 喰人は他の前衛と中後衛を守るように前へ出て隙のある者から昏倒させる 敵が本来の目的を思い出し街に攻め込むか逃亡するか分からないが状況次第で武器を捨てさせ街の中へ促す あれ(ベリアル)を目の前に 争っている場合では無いでしょう!? 今 死の縁に立たされているのはあなた達です 俺達に余力があるうち 決断は早くしろ(口調は強め それでも向かって来る敵には容赦しない。出来ない 敵と言えど目の前でベリアルに命を奪われるのを見 更に向かって来る者を手にかけ こんなのは ない |
||||||||
|
||||||||
え、ええと…… 突然現れた大元帥とベリアルの戦いに呆然 あ、は、はい!ボーっとしてる場合じゃ、ないですね 仲間達にリチェちゃんと一緒に禹歩七星を 少しでも早くこの状況を何とかできるように願いつつ 魔術真名詠唱 夜明け団がこちらに気付く前に禁符の陣で拘束・封印 今のうちに捕縛できてしまうと、一番いいと、思うのですけど…… クリスからなるべく離れないようにしつつ最初のうちは九字の印で攻撃 回復は魔術師さん達にお任せ、します 陣形を組んでからは前衛の中に入れてもらい、そこから拘束や九字の印で援護 魔術師さん達が大変そうなら、回復にも参加します 大元帥様、おひとりじゃ大変そう、です もし近づけたら禁符の陣や天恩天賜2での援護を |
||||||||
|
||||||||
大元帥様… 行方不明と聞いていたのに ご無事だったのね だけど、どうして ーええ 今は街を守らないと 傷つく人が一人でも少なくすむように 魔術真名詠唱 シアちゃんと協力して 周囲の人に禹歩七星を シリウスの言葉に瞬きひとつ あなたこそ 気をつけて 小さく笑って 魔術師さん達には前に出過ぎないよう声をかけながら 鬼門封印と天恩天嗣3で仲間の支援と回復 余裕がある時は九字で前衛のサポート 戦意を無くし 武器を捨て投降してくる人は受け入れ 夜明け団戦が落ち着けばベリアルへ 魔術師さんには街を守ってくださいと 禹歩七星と回復をもう一度前衛にかけ 中衛位置から 鬼門封印と回復で前衛のサポート |
||||||||
|
||||||||
今は大元帥の戦いに割って入るのは分が悪いわね 足手まといにならないようにして、当初の目的である夜明け団から叩きましょう 魔術真名詠唱し前衛に 街の魔術師に強化支援をもらったら 夜明け団のうち、ボストールから離れている奴から優先して攻撃 近づいたら巻き添えになりそうだしね 運が悪かったわね、憐れなカルトさん 命乞いなら聞くだけは聞いてあげる 夜明け団が全員片付いたら、息のある奴は捕縛して 私達はベリアルの方へ 無闇にこちらから攻撃はせず、敵の攻撃は回避に努める 大元帥がうまくタイミングを計って奥の手とやらを出してくれれば即座に退避 ところでトールの名前の由来、初めて聞いたわ ある程度成長してからもらった名前なのかしら |
||||||||
|
||||||||
■終焉の夜明け団 まず混乱する敵へ不意打ちで数を減らす 向かって来たら陣形を組み各個撃破を防ぐ ナツキは前衛として敵の接近を妨害、中・後衛と味方魔術師を守る 側面背面の攻撃も阻止 ルーノは後衛として支援と攻撃 敵行動を観察、同時に包囲・挟撃を警戒 側面と背面への攻撃には反撃&ナツキに対応指示 魔術師は後衛に位置取り、支援を頼む 通常は攻撃力強化 負傷者が増えたら回復 敵範囲攻撃に合わせて防御強化 ■ベリアル 団の対処後は魔術師に支援を受け浄化師のみベリアルに攻撃 大元帥との交戦を見ておき攻撃を通せるタイミングを見極め 味方と協力しMP惜しまず、SH8+最大火力を叩き込む 倒せずとも注意を引き、大元帥が奥の手を使う隙を作る為に |
||||||||
|
||||||||
サクラ:多いわよねぇ。 キョウ:多いからこそ頑張らなければいけないのでは? サクラ:ベリアルは1体だけみたいだけど。 キョウ:今!これは!!関係ないです!! サクラ:はいはい、そうね。やりましょうか 【行動】 サクラ 『ハイパースナイプ』で攻撃するわ。 遠いから投降するのかどうかわからないわぁ。間違って撃っちゃったらごめんなさいね。 近くにいたら聞いてあげる。生きたい? MPがなくなったら通常攻撃よ。 キョウ サクラを庇えるような位置をとり、HPが低い人を優先的に『天恩天賜』で回復させます。 必要がない時は通常攻撃をします。 敵が多いから投降させる……皆さん賢いですね。 今は殺すの方が面倒くさそうですし。 |
||||||||
|
||||||||
前半戦 敵が混乱してる内に攻めて減らす。魔術師達に攻撃役(ラファエラ含む)の攻撃力を上げてもらい、手あたり次第に狩る。DE10を2回惜しまず使え。MPは20残して。 俺は魔術師達を護衛する。敵の攻撃を俺が受け、魔術師達に通常攻撃で反撃させる。強化・回復の為に魔力は節約しろよ。複数の攻撃はGK9かGK10で受ける。 魔術師を狙う敵が増えてきたら信号拳銃で集合の合図。 後半戦 前衛アライブで中・後衛を囲って迎撃戦だ。俺は変わらずGK9、10で隣と後ろを守る。ラファエラは勿論後ろ。魔術師は主に回復役になる。 夜明け団の次はトールだ。敵が跳んだ時にラファエラのDE13を当てれば大元帥の為の隙を作れるだろうか。 |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
終焉の夜明け団とスケール5べリアル。 そして大元帥クロート・アクィナス。 三つ巴の混戦を前にして『エフド・ジャーファル』は呟いた。 「何が起ってるんだ?」 これに返したのはパートナーである『ラファエラ・デル・セニオ』。 「何が起こってるか? 単純明快よ。完全に割に合わない任務になったって事」 その声の響きには恐れも怯みもない。 たとえ予想外の敵だろうと排除する、という意気込みが感じられる。 その上で、損得勘定を口に出来るのは彼女らしい。 そんな彼女の様子に、エフドは余計な力みが消え失せて、いつものように軽口を交わす。 「確かに割に合わないな。あとで報酬引き上げの交渉でもするか?」 「それより必要な物が、今はあるわよ」 「そうか?」 「ええ。今必要なのは風呂とベッドだけよ。あいつらを仕留めるのに、どれだけ砂埃で汚れて疲れるか分かったものじゃないもの」 ラファエラの応えにエフドは苦笑しながら返す。 「それぐらいなら、俺が後で交渉するさ。豪勢な所を用意して貰うためにも、あいつらをどうにかしないとな」 「ええ、分かってる」 2人は敵の動きを見ながら、自分達が動くべき最善を組み上げていく。 目の前の光景に声を上げるのは他の浄化師も同様だ。 「え、ええと……」 突然現れた大元帥とベリアルの戦いに『アリシア・ムーンライト』は呆然とした声を上げる。 彼女の横では『クリストフ・フォンシラー』がべリアルに視線を向けていた。 (あれは……この間の女と同じような奴か? 一体、何体いるんだ) 明らかに通常のベリアルとは格の違う相手に、どう戦うべきかを思い悩む。 だがすぐに、まずは自分達が対処するべき相手に意識を切り替える。 「とりあえず大元帥が戦ってくれるなら、俺達はまず夜明け団への対処だ」 クリストフの言葉に、呆然としていたアリシアは我に返ったように応える。 「あ、は、はい! ボーっとしてる場合じゃ、ないですね」 意気込むアリシアにクリストフは返す。 「頑張ろう。街を守らないといけないからね」 頷くアリシア。 2人の隣でも、同じように戦いの意志を固める者も。 「大元帥様……行方不明と聞いていたのに、ご無事だったのね。だけど、どうして」 今も激戦を続ける大元帥に視線を向け『リチェルカーレ・リモージュ』は呟く。 彼女の隣では、『シリウス・セイアッド』が大元帥と戦うべリアルに視線を向けている。 「あのベリアル、夜明け団を追ってきたのか」 ベリアルの動きを観察しながら呟くと、そちらよりも先に対処すべきは終焉の夜明け団だと判断する。 「リチェ。最優先は街の防衛だ……行けるか?」 この呼び掛けにリチェルカーレは、しっかりした応えを返す。 「ええ、今は街を守らないと。傷つく人が一人でも少なくすむように」 リチェルカーレの応えにシリウスは目を細め、戦闘態勢を整えていく。 そして皆はどう戦うべきか素早く話し合う。 「今は大元帥の戦いに割って入るのは分が悪いわね」 終焉の夜明け団を見詰めながら『リコリス・ラディアータ』は提案する。 「足手まといにならないようにして、当初の目的である夜明け団から叩きましょう」 これに皆は頷き、その後の対処も話し合う。 「数が減って来れば、あのスケール5べリアルに向かうのも良いかもしれないわね」 そこまで言って、パートナーである『トール・フォルクス』に視線を向け続ける。 「そういえば、あのベリアル、トールって名前だったわよね?」 「トール、かぁ……なんか複雑だな。俺の名前は背が高いから、なんだけどな」 「そうなの? トールの名前の由来、初めて聞いたわ。ある程度成長してからもらった名前なのかしら?」 リコリスは、くすりと小さく笑うと、続けて言った。 「気になるなら、あのベリアルはボストールって呼びましょう」 これに苦笑しながら頷くトール。 戦闘の大枠を決め、次に細かい流れと役割を。 「まずは混乱している終焉の夜明け団に奇襲を掛けて数を減らそう」 ボストールと大元帥の戦いに巻き込まれ混乱状態の終焉の夜明け団を観察しながら『ルーノ・クロード』は提案する。 「敵が多くてもやり方次第だ、敵が混乱している好機、逃す手は無い」 これに『ナツキ・ヤクト』が応える。 「おう! やってやろうぜ、ルーノ! みんなやっつけてやるぜ!」 ナツキの様子に苦笑しながらルーノは続ける。 「終焉の夜明け団はまだしも、ベリアルは脅威だが……私も行こう、止めても無駄だろう?」 これに力強くナツキは返す。 「街を守る為にここに来たんだ、逃げるなんて冗談じゃねぇ。それに――」 皆に視線を向け続けて言った。 「仲間もいる。理由はわかんねぇけど大元帥も来てくれたし、なにより相棒が一緒だからな。強敵だって望む所だ、俺は一歩も退かねぇぞ!」 「ああ、分かった、ナツキ」 ルーノは笑顔を浮かべ、拳を突き出し言った。 「大元帥という心強い味方も居る事だしね。やろう、ナツキ」 「おう!」 2人は拳を合せ戦いに意気込む。 戦いには街の魔術師達も同行してくれるので、彼らには援護を頼む。 これに魔術師達は同意。 援護に集中する魔術師達は守りが手薄になるので、エフドが護衛を申し出る。 それぞれが役割を口にする中で『ヨナ・ミューエ』は、ひとつの提案を。 「終焉の夜明け団を、殺害するのではなく捕虜に出来ないでしょうか?」 その提案には、どこか思い詰めた響きがあった。 (納得できないんだろうな) ヨナの提案を聞き、パートナーである『ベルトルド・レーヴェ』は思う。 ヨナの提案は、単純に命の重さを説いているのではない。 その根幹にあるのは不条理に対する怒りだと、ベルトルドは感じ取った。 神の使いだというべリアルに人が殺される中、人間同士で争っている。 そんなことをしている場合ではない筈だ! 恐らくは、そうした怒りが、終焉の夜明け団の命を奪うという安易さを嫌っているのだ。 (自覚してないかもしれないが、理屈や理性の前に、感情があるのがヨナだからな) これまでの付き合いで、ベルトルドはヨナの本質を感じ取っている。 まず第一に感情があって、それを乗りこなすために理性的であろうとしている。 それがヨナだと。 ある意味それは危なっかしい側面だ。 けれどベルトルドは好ましいと思う。 (そうであるからこそヨナは、俺が踏み越えられない所を越えていける) ベルトルドは思う。 自分は感情よりも理屈や理性で動く側面が強いと。 感情を軽んじているのでも、薄いのでもない。 だがどこかで、振り回されないよう、理屈や理性で自分を制している。 それが悪いとは思わない。 けれどそれでは、ここぞという所で踏み止まり、突破するべき機会を逃すことになる。 それを突破できるヨナを、ベルトルドは好ましいと思っていた。 だからこそ皆に頼む。 「無条件で捕虜にするのは難しいと思う。だが状況によっては可能な筈だ。だから頼む。協力して欲しい」 これに皆は、同意をする者、あるいは積極的には関わらない者と別れるが、可能ならば捕虜を取ることに同意することに。 「助かる。なら捕えた捕虜は、拘束した上で街で捕えることにしよう。そのための見張りは俺達で受け持つ」 行動指針は固まった。 そして皆は行動に移す。 それぞれ役割に沿った配置に就き動く中、戦場に近付きながら呆れたような声を上げる者も。 「多いわよねぇ」 自分達の数倍以上の敵を確認し、『サク・ニムラサ』は呆れたように呟く。 そこに合いの手を入れるように返したのは『キョウ・ニムラサ』。 「多いからこそ頑張らなければいけないのでは?」 戦闘を前にして意気込みをみせるキョウに、サクラは笑みを浮かべ返す。 「ベリアルは1体だけみたいだけど? そっちから行ってみる?」 これに慌てた様子で返すキョウ。 「今! これは!! 関係ないです!!」 べリアルと戦うことを恐れている訳ではないが、何事も物事には順番がある。 そう主張するように、キョウは続けて言った。 「まずは終焉の夜明け団の数を減らさないと! べリアルは、その後です!」 「はいはい、そうね」 くすりと笑いながら、サクラは戦闘態勢を整えていく。 「それじゃ、やりましょうか」 リンクマーカーにより視界に浮かぶ、魔術のマーカーを目印にして、敵に狙撃銃の狙いをつけた。 そしてサクラが引き金を引くより速く、戦いの火蓋は落とされていた。 アリシアとリチェルカーレの禹歩七星により移動速度が上がっていた浄化師達は、尋常ならざる速さで戦場へと跳び込む。 真っ先に踏み込むのは前衛組。 その中でも先陣を切るのはシリウスだ。 「黄昏と黎明、明日を紡ぐ光をここに」 リチェルカーレと共に魔術真名を詠唱し、敵陣に踏み込む。 「無茶だけはするな」 別れ際にリチェルカーレに囁くと、彼女は瞬きひとつと言葉を返す。 「あなたこそ、気をつけて」 シリウスのことを想い、小さく笑顔を見せて。 それに応えるようにシリウスは頷くと、敵の間合いに一気に跳び込む。 あまりの速さに敵は反応できない。 踏み込みの勢いも込めたソードバニッシュは、不意を突いた敵を一撃で沈める。 だが敵の数はあまりにも多い。 1人を倒したとしても、数の差は圧倒的。 だからこそ必要以上に踏み込まず、仲間との連携を意識した配置に動く。 そこに連携するため歩みを合わせるのはクリストフ。 「月と太陽の合わさる時に」 魔術真名を唱え魔力回路を開放。 膨れ上がった戦力を叩きつけるように、クリストフはアリシアと踏み込む。 狙う相手は、シリウスを横手から斬り掛かろうとした敵。 敵の斬撃を制裁により捌くと、カウンターで足を斬り裂く。 傷で動きが鈍った敵は、体勢を整えようと一歩下がる。 そこにクリストフは跳び込んだ。 敵の動きを制するように踏み込むと、袈裟がけに斬り裂き、即座に背後にまわり連撃。 堪らず膝を屈した敵に、剣の柄を叩きつけ昏倒させる。 (捕縛できるよう、殺さないようにしないと) そう思いながらも、もちろんそれは状況次第だという気持ちもある。 「なるべく、ね」 それはアリシアが敵の捕縛を望んだから。 けれどそれでアリシアや、他の仲間達が傷ついて良い訳じゃない。 仲間のことを第一に思いながら、前に出るシリウスと連携し敵を削っていく。 クリストフの動きに合わせるようにして、アリシアも前に出る。 禁符の陣を発動し敵を拘束する。 気付かれる前に踏み込んだことが功を奏し、同時に2人を拘束した。 だがそこに新手の敵が攻勢に動く。 避けようとした所に、リチェルカーレは援護する。 「シアちゃん!」 アリシアに呼び掛けながら、リチェルカーレは鬼門封印を発動。 鬼門封印により敵の動きが鈍っている間に、一連の動きに気付いたシリウスとクリストフが連携攻撃。 アリシアに近付こうとした敵を、瞬く間に沈めた。 「ありがとう、ございます、リチェちゃん」 アリシアは礼を言うと、リチェルカーレと連携し動く。 リチェルカーレが鬼門封印を発動し敵の動きを鈍らせた所で、アリシアが距離を詰め禁符の陣。 敵が拘束されると、そこをシリウスとクリストフの連携で沈めつつ、他に近付こうとする敵に牽制攻撃。 その間に、リチェルカーレとアリシアのコンビが敵の動きを鈍らせ拘束する。 一連のコンビネーションは、敵としては逃れようがない。 逃れることが出来るとしたら、よほどの実力があるか、あるいは数で押す必要がある。 だからこそ敵は数で押そうと、仲間に呼び掛け援護を求める。 それを許す浄化師ではない。 「闇の森に歌よ響け」 トールとリコリスは魔術真名を唱えると、敵の援軍を止めるべく動く。 敵に踏み込むのはリコリス。 戦踏乱舞で皆の戦力を強化すると、敵の動きを見極め走り出す。 (まずは、ボストールから離れている奴から) 敵の戦力を確実に削ぎ、なおかつ余計な巻き添えを受けないよう意識しながら、敵の間合いに跳び込む。 「運が悪かったわね、憐れなカルトさん」 声を掛けると同時に素早い斬撃を加える。 「命乞いなら、聞くだけは聞いてあげる」 一撃一撃を容赦なく。 だが命を狩り獲ることには固執せず。 可能なら捕縛できるよう意識しながら、絶え間ない斬撃。 刃を振るいながら、その動きは止まることなく。 舞い踊るような動きで敵を翻弄する。 一連の動きで、多くの敵の引きつけに成功する。 だがそれでも敵の数はあまりにも多い。 他に向かおうとする敵の動きに気付いたリコリスは、そちらへの対処を求めトールに呼び掛ける。 「トール!」 「任せろ!」 トールは敵の動きを見極めるとマッピングファイアを放つ。 連続した射撃は、まとめて敵の足を止める。 集団で襲撃しようとした敵は、それがあだとなりまともに食らう。 腕を、あるいは足を撃ち抜かれ、敵の動きは止まる。 その停滞を逃さず、トールは精密射撃。 マッピングファイアから逃れた敵の足を撃ち抜き、敵の動きを停滞、あるいは分断する。 そこに同じように遠距離攻撃手段を持った仲間が追撃。 「死ななければ良いわよね」 サクラは正確な狙いをつけ、肩を撃ち抜く。 狙撃で動きが鈍った所に、間髪入れず足を撃ち抜く。 撃ち抜かれ蹲り動きを止める敵を一瞥しながら、新たな獲物を探す。 次々と撃ち抜きながら、狙撃の手を止めることは無い。 撃ち抜きながら、ふと思う。 (そういえば、投降する気のある相手は、捕縛するのよね?) 思い出しながら、冷たい笑みを浮かべ呟く。 「遠いから投降するのかどうかわからないわぁ。間違って撃っちゃったらごめんなさいね」 サクラの気持ちとしては、生きてるなら殺す気は無いし、なるべく生かそうとは思うが、べリアルの攻撃に巻き込まれて死ぬならそれはそれ。 (ドンマイって所よね) 連続して狙撃しながらサクラの脳裏に浮かぶのは、少し前の指令で子供達を殺してエリクサーを得ようとした終焉の夜明け団のこと。 (子供を殺そうとした罪は重いわよ) 熱さと冷たさ、ふたつの意志を同時に抱きながら、サクラは狙撃を続ける。 そんな彼女を守るように前に立ちながら、キョウは味方の援護に動く。 (敵が多いから投降させる……皆さん賢いですね) 味方の動きを把握しながらキョウは思う。 (今は殺すの方が面倒くさそうですし) 合理的な考えを心に浮かべながら、同時に情も深いキョウは、生かせるものなら生かしたいとも思う。 ただしそれは仲間を、そして姉であるサクラを、傷付けさせない前提ではある。 敵からの攻撃から身体を張ってサクラを守りつつ、攻撃を重ねていった。 敵の分断と個別撃破を加速するように他の浄化師達も動く。 「呆れるほど数が多いわね」 敵の動きを見極めながら、ラファエラは照準を付ける。 (分断は、みんながしてくれる。なら私は――) ラファエラが狙いをつけるのは、ボストールとの戦闘から離れようとしている敵。 魔術師達により強化された威力を込め、スウィーピングファイアを放つ。 容赦なく肩を貫くと、更に背後に居たもう1人に突き刺さる。 動きが鈍る敵。 そこにボストールが、邪魔だと言わんばかりにまとめて薙ぎ払う。 (せいぜい、共倒れして貰いましょう) 折角、潰し合ってくれるのだ、この好機を逃す理由がない。 ラファエラは連続で狙撃。攻撃で敵の動きが鈍り固まった所で、再度のスウィーピングファイア。 まとめて2人が撃ち抜かれ、そこにボストールと大元帥の攻撃の巻き添えを食らい、終焉の夜明け団は数を減らしていく。 それを確認し、さらに敵の動きを観察。 「打ちもらしがこっちに来てる! 後衛に向かってるから抑えて!」 これに応えるように動くのはナツキとルーノ、そしてエフド。 「ここは通さねぇ!」 後衛の魔術師を潰しに向って来る敵をナツキは迎え撃つ。 ナツキは向って来る敵に獣の如き勢いで踏み込むと、獣牙烈爪突を放つ。 鋭い刺突を、突き刺すと同時に回転を加え、大きく傷を与える。 大きく傷を受け出血した敵は動きが鈍り蹲る。 そこに横合いから、新たな敵の攻撃。 魔力で形作らた大剣の薙ぎ払いを、ナツキは避けない。 薙ぎ払いの瞬間、ナツキは間合いを詰める。 間合いを殺し威力を減らした上で受け、制裁を放つ。 カウンターの鋭い一撃が敵を斬り裂いた。 ナツキは身体を張って敵の進撃を食い止める。 だが数が多い。どうしても横手から後衛の魔術師に向かおうとする者も出て来る。 そちらにナツキの意識が向きそうになった瞬間、ルーノは大きく声を上げた。 「こちらは気にするな! ナツキは目の前の敵だけに集中しろ!」 力強い呼び掛けに、ナツキは笑みを浮かべ返す。 「おう! 頼んだぜルーノ!」 信頼し言葉を返すナツキに、ルーノは行動で応える。 「ここは通さない」 向かって来る敵の内、指示を出している相手を見極め、攻撃魔術を放つ。 素早く詠唱を終わらせ慈救咒を発動。 魔力により生まれた炎の蛇は敵へ向かって疾走すると、首に食いつくように命中し、一瞬で炎に包む。 指示役が攻撃を受け、敵が動揺した隙を逃さず魔力弾を叩き込み、あるいは鬼門封印を放つ。 2人の活躍で敵の足止めが行われるが、敵は数の多さを頼みにさらに踏み込んでくる。 そこに立ちはだかるのはエフド。 (援護を呼ぶ必要があるな) 敵の動きを見極め、エフドは信号拳銃を空に向かって撃つ。 それにより味方の援護が来る時間を稼ぐために動く。 魑魅魍魎ノ壁、あるいは慈愛の天蓋を張り魔術師達への攻撃を防ぎながら、手にした大鎌を大きく振う。 正確さよりも、敵を近づけないよう大きく振り抜き、敵の接近を防ぐ。 剣や、あるいは矢による攻撃は、手にした大鎌を盾にするような動きで捌き。 攻撃魔術は、慈愛の天蓋を利用して威力を削り防いでいく。 身体を張るエフドに、魔術師達が援護するために攻撃をしようとする。 だがエフドは、それを止めた。 「魔力は取っとけよ。攻め時が終われば、お前達が命綱だ」 それは仲間の浄化師達の実力を信じているからこその言葉。 それに応えるように援軍がやって来る。 「ヨナ、先に行くぞ」 思い詰めたような表情を見せているヨナを引っ張るように、ベルトルドは前に出る。 疾風の如き勢いで間合いに跳び込むと、打突から掴み、そして足払いで体勢を崩してからの投げへと繋げる。 背中から叩きつけるような一撃は、敵を戦闘不能に叩き込む。 その瞬間、敵は味方も巻き込むようにして魔力弾を放つ。 気配で気付いていたベルトルドは、地面に叩きつけた敵を戦場の外側に投げると、その反動を利用して回避。 避けながら敵の動きを誘導するベルトルド。 それはヨナの援護を信じているから。 その信頼に応えヨナは攻撃する。 エアースラストを発動。 ベルトルドの動きを援護するように、風の刃を振るい敵を牽制する。 だがそれを食らっても、敵の戦意は衰える様子が見えない。 (なんで、こんな……) 戦いの中でヨナは苦悩する。 (こんな時でさえどうして人は争いを止められないのか。それが人の本質なのか) すり潰されるように胸中で自問が繰り返され、溢れる言葉は敵へと向かう。 「あれを目の前に、争っている場合では無いでしょう!?」 凶悪な力をみせるべリアルを示し、ヨナは続ける。 「今、死の縁に立たされているのはあなた達です!」 ヨナの言葉を繋げるように、ベルトルドも声を上げる。 「俺達に余力があるうち、決断は早くしろ!」 常よりも強い語気で、ベルトルドは呼び掛ける。 だが敵は止まらない。 否、止まれない。 戦いの狂騒に侵され、本人達にも止める余裕がない。 止まれば死ぬ。敵を殺さなければ殺される。 それが世界の在りようだというように戦い続ける。 もし違うというのなら、示さなければならない。 戦いに負けたとしても命が取られず、共に歩み続けることが出来るのだと。そのためには―― (私は、何をすれば――) ぐるぐると渦巻く苦悩。何かを成さねば変わらない現実。 その只中にあってヨナの胸中に何かが浮かんでくる。 それは答えか? いや、違う。意志だ。 殺さない、死なせない。そのために自分が出来る全てを成すという意志。 それが明確な形として浮かび上がる前に咆哮が響く。 それはべリアルの遠吠えであり詠唱。 放出された魔力に形が与えられ、無数の雷球が生まれる。 一気に撃ち出され、それはヨナ達と戦う敵の元にも向って来る。 だが敵は気付かず、ヨナ達を倒すことだけを考え、雷球の軌道に突っ込んでいく。 そこにヨナはソーンケージを撃つ。 魔力で作られた茨に引き裂かれ敵の動きは止まり、すぐ傍を雷球が過ぎ去る。 一歩間違えば死んでいたかもしれないことに敵が気付き顔を引きつらせる中、ヨナは断言した。 「分かりました。止まれないんですね、貴方達は。なら――」 全力を惜しまない。 「まずは叩きのめします!」 死なせず殺さないために、まずはぶちのめす! そう宣言するように、ヨナは全力で攻撃魔術を連発し、敵を次々無力化していった。 浄化師達の攻撃で、終焉の夜明け団は次々無力化、捕縛される。 同時に、スケール5ベリアルと大元帥との戦いの巻き添えを食らい、続々と死んでいく。 その果てに趨勢が見え始める。 敵の残存勢力は数十程度。 それもベリアルと大元帥との戦いの巻き添えで、どんどん数が減っていく。 このまま守りに徹すれば、少なくとも終焉の夜明け団はどうにかなるだろう。 だがそれまでに大元帥が無事であるかは分からない。 援軍に向かうなら、今しかない。 「友よ! 勝利の時は近い! ここが踏ん張りどころだ!」 エフドは護衛する魔術師達を鼓舞するように声を掛ける。 途切れることなく浄化師達の援護に動いていた魔術師達には疲労の色が濃い。 だが戦意は途切れることなく、力強くエフドに応える。 (これならいけるか?) 戦いの援護なら頼めるだろう。 けれどべリアルとの戦闘にまで巻き込むつもりはない。 (俺達が離れた後、街を守れるのは彼らだけだ) 今だけでなく、この先のことも意識して。 エフドは、どう動くべきかを考え、仲間の浄化師達に呼び掛ける。 「べリアルに向かうなら援護する! 魔術師達には回復を頼むから、攻撃に専念してくれ!」 これに皆は応える。 捕縛した敵の街への移送はヨナ達に任せ、他の浄化師はべリアルと大元帥の元に向かう。 「そろそろ、投降してくる相手と、そうじゃない相手の見極めが出来そうです」 キョウは仲間の援護に動きながら、並走するサクラに言った。 「そうなの? なら、そろそろ全力を振り絞りましょう」 温存していた戦力を開放するべく、魔術真名を詠唱する。 「至高あれ、残花終影幻夢と消えよ」 魔術真名に込めた意味を体現するように、2人は戦いに身を投じる。 サクラが狙撃を繰り返し、味方の移動から注意を逸らす。 腕を、あるいは足を撃ち抜かれながら、敵は反撃の襲撃に走る。 狙いはサクラ。 その前に立ち塞がるのはキョウ。 魔力弾を撃ち、敵の接近を防ぎながら投降を呼び掛ける。 (生かせるものは生かしたいから) キョウの意をくむようにサクラも動く。 冷徹な狩人として敵を撃ち抜き戦闘不能にしながら、静かに問い掛ける。 「生きたい?」 不利を悟った敵は無言で頷いた。 仲間の援護に動くのはトールも同じだ。 (大元帥に援護するなら、べリアルだけに集中できる状況を作らないとダメだ) トールは敵の動きを見て判断する。 べリアルと大元帥の戦いは凄まじく、掠っただけでもただでは済まない。 避けるにしろ攻撃するにしろ、集中できる状況にしなければならない。 だからこそ、終焉の夜明け団が余計な邪魔が出来ないよう、攻撃し引き付ける。 (残ってる奴らのリーダー格は……あいつか) トールは敵の動きから推測すると、残りの魔力を費やしピンポイントショットを発動。 驚異的なほど高まった集中力で精密射撃。 的確に膝を撃ち抜き動きを止める。 狙撃に気付いた敵が一斉に視線を向けてくる中、連続して射撃を繰り返し、仲間と連携して攻撃できる場所に移動。 トールが敵の引き付けをしている間に、べリアルに向かう者も。 (掠っただけでも拙いわね) リコリスは距離を詰めながら、ベリアルと大元帥の戦いを観察する。 嵐と嵐がぶつかるような勢いの戦いに、攻撃よりも回避を意識すると、べリアルの気を逸らす事だけに集中する。 大元帥の大剣の振り降ろしをべリアルが腕で弾いた瞬間、べリアルの間合いに踏み込む。 反射的にべリアルは薙ぎ払おうとするが、回避に集中していたリコリスはギリギリで回避。 産毛が逆立つような危機感を飲み込みながら挑発する。 「遅いわね」 「ああ!?」 イラついたべリアルはリコリスに攻撃を向ける。 それをギリギリで避けていくリコリス。 だが少しずつ追い込まれていき、まともに攻撃を食らう―― その瞬間、横手からの仲間の攻撃が、べリアルの攻撃を止める。 「させるか!」 ナツキが横手から一気に踏み込み、渾身の獣牙烈爪突。 脇腹に勢い良く突き当たるも貫くことはできない。 だが怯むことなく連続攻撃。 一撃で足らないなら、何度だろうと繰り返す。 闘志を見せるナツキに、べリアルは楽しげな笑みを浮かべる。 「ははっ! 楽しいな! お前!」 べリアルは片手でナツキの一撃を弾くと、一気に踏み込み引き裂こうとする。 その瞬間、ルーノの慈救咒が襲い掛かった。炎の蛇がべリアルの顔面を目掛け疾走する。 「ちっ!」 舌打ちをしながら素手で炎の蛇を掴むと、そのまま握り潰す。 一瞬動きが止まったべリアルにナツキは踏み込もうとするも、ルーノが制止する。 「避けろ! ナツキ!」 ナツキは反射的に反応し、大きく後方に跳び退く。 ほぼ同時に、それまでナツキが居た場所を、べリアルが死角から放った雷球が通り過ぎる。 「サンキュ! ルーノ!」 礼を言うナツキに、ルーノは力強く返す。 「全体の動きは私が見る! ナツキは目の前の相手にだけ集中しろ!」 「おう!」 ナツキとルーノ、そしてリコリスが連携する。 べリアルを倒すのではなく引き付けることに集中し時間を稼ぐ。 その猶予に大元帥と他の仲間が接触した。 「お怪我は、ありませんか」 「回復します」 アリシアとリチェルカーレは大元帥の元に駆け寄ると天恩天賜で回復。 「助かった」 言葉少なに大元帥は返すと、再びべリアルとの戦いに向かおうとする。 そこにアリシアが声を掛ける。 「一緒に、行きます。大元帥様、おひとりじゃ大変そう、です」 同じようにリチェルカーレも言った。 「回復だけでなく、鬼門封印も使えます。援護させて下さい」 2人の申し出に大元帥は返す。 「助かる。なら後方支援してくれ。だが――」 大元帥は、浄化師達に動きを抑えられている終焉の夜明け団を確認し続ける。 「後方支援に集中するなら、護衛が居る」 「その役目は俺がします」 クリストフは大元帥に返すと、横で戦闘態勢を取るシリウスに続ける。 「リチェちゃんとアリシアは、俺が身体を張ってでも守る。だからべリアルとの戦いに集中してくれ」 これにシリウスは、信頼するように短く言葉を返した。 「頼む」 そして大元帥と共にべリアルの元に向かう。 「援護する」 「任せる」 2人は短く言葉を交わすと、まずはシリウスが真正面から跳び込む。 それに合わせるようにリチェルカーレの鬼門封印が放たれ、動きが鈍ったべリアルに渾身のソードバニッシュ。 ナツキとルーノ、そしてリコリスに集中していたべリアルは避けられない。 斬撃をまともに食らい、うっすらと傷を受ける。 「はっ、お前、覚えているぞ」 歓喜を浮かべ、べリアルは言った。 「前に、俺に斬り掛かったヤツだな。そういえば他にも、その時の顔が居るな。ははっ、良いな。遊ぼうぜ!」 無邪気な子供のように言うと容赦なく攻撃をしてくる。 それを皆は避け、あるいは攻撃する。 ナツキとルーノが連携し攻撃を叩きつけ、リコリスが間合いに踏み込み翻弄する。 べリアルの僅かな隙を突き、シリウスの斬撃が刻まれ、絶え間ない攻撃が続く。 だがべリアルは強い。 攻撃をものともせず反撃をしようとした所に、大元帥の本命の攻撃が叩き込まれる。 それをまともに受ける気はないのか、防御に集中するべリアル。 大元帥はべリアルに攻撃を防がれると、浄化師達の動きに合わせて動く。 それは浄化師達の連携を崩さないような動き。その上でべリアルの攻撃が向かわないよう牽制もしている。 それでもべリアルの攻撃は苛烈。 魔術で生み出した雷球が、後方支援のリチェルカーレとアリシアの元に向かうことも。 それをクリストフは身体を張って受け止め2人を守る。 「クリス!」 アリシアの呼び掛けに、クリストフは心配させないよう、あえて穏やかな声で返す。 「俺は大丈夫。それより、みんなの支援の手を止めちゃダメだ」 クリストフの心意気に応えるように、アリシアとリチェルカーレは後方支援を続ける。 その間にクリストフは、べリアルの情報を得るために必死に観察する。 (何かないか、弱そうな所は。速さは? 賢さは? 命中率は?) 皆はそれぞれ、必死に自分の役割を果たしていく。 それをべリアルは煩わしそうな表情を浮かべると、宙に大きく跳び上がった。 「邪魔くせぇ! まずは数減らしてやるよ!」 全方位への攻撃魔法を放つため、周囲から魔力をごっそりと取り込む。 それを攻撃魔法へと変換しようとした瞬間、ラファエラの会心の一撃が邪魔をした。 (良い的ね) ラファエラは、いざという時のために取っておいた魔力の全てを使い、エアーズスナイプ。 べリアルの動きだけでなく風の動きすら読み切った精密射撃は、攻撃魔法を放とうとしたべリアルの右目に命中。 「があっ!」 完全なる不意打ちに、べリアルは右目を抑え墜落。 その好機を逃す浄化師達ではない。 リチェルカーレが鬼門封印で動きを阻害し、そこにシリウスが踏み込み表裏斬。 正面を斬り裂くと即座に背後にまわり連撃。 間髪入れず、リコリスが連続した斬撃を放つと、ナツキが全力の獣牙烈爪突。 連携攻撃は止まらず、ルーノの慈救咒がべリアルの顔を焼く。 最後の止めとばかりに大元帥が一気に踏み込み、大上段からの振り降ろし。 べリアルは他は無視して顔を両腕でガード。 がら空きの胴体を大元帥は斬り裂いた。 一連の動きを見ていたクリストフは声を上げる。 「弱点の魔方陣の核は頭部だ!」 それはある種のハッタリも込めた揺さぶり。 揺さぶりを掛けられたべリアルは、そうと理解しながら笑みを浮かべ返した。 「ああ、そうだ。俺の再生の核となる魔方陣は、ここにある」 浄化師達と、大元帥の攻撃を捌きながら、三強の1人、最強のトールは言った。 「良いな、お前ら。お蔭でやる気が出てきた。そろそろ真剣に、遊ぼうぜ!」 吠えるように声を上げると無数の雷球を発生させ、一気に放つ。 回避に集中しなければやられる。 即座に感じ取った浄化師達は回避に集中。 それでも幾らか食らい、浄化師達の動きが鈍る。 そこで攻勢に出るべリアル。 皆は必死に避け、それまで終焉の夜明け団に攻撃していた仲間も、全力で牽制の攻撃を叩き込む。 同時に回復手段を持つ者は、皆の回復を。 このままでは総崩れになる。 この状況で大元帥は、横手で連携していたシリウスに言った。 「少しで良い。俺が抜ける時間を稼げるか?」 返事は即座に。 「承知した」 シリウスは応えると、自分の身を省みないほどの全力攻撃。 それに合わせ、他の浄化師達も攻撃を重ねる。 浄化師達の連携攻撃で生まれた猶予を使い、大元帥は奥の手を発動した。 「黒炎解放をする。同化を解け、オーゾン」 「分かった」 大剣と同化していたオーゾンは応えると、大剣から自身を分離。 女性体の姿を取ると、大元帥と共に戦闘態勢を取る。 同時に大元帥は自らの黒炎魔喰器を開放するべく、解号を口にした。 「悪因悪果尽く薙ぎ払え、断罪大剣」 黒炎が、大元帥が手にする黒炎魔喰器から溢れ出る。 最初は刃を包み込むと、即座に大元帥の全身を覆う。 それが消え失せると、大元帥の肌には刻印を思わせる魔方陣が現れる。 肉体の変化はそれにとどまらず、瞳以外の白目部分が黒く染まり、牙の如く犬歯が伸びた。 それは浄化師の堕ちゆく先の姿である、アウェイクニング・ベリアルのように見える。 だが違う。 大元帥の眼には理性が保たれたまま、倒すべき敵としてべリアルを睨んでいる。 理性を保ったままアウェイクニング・ベリアル化を行う。 それが大元帥の持つ黒炎魔喰器の特殊能力であり、奥の手。 爆発的に膨れ上がった戦力を叩きつけるべく、大元帥はべリアルに勝負を挑んだ。 まさしく神速の速さで間合いを詰め、上段からの振り降ろしを叩きつける。 それをべリアルは右腕で弾こうとし、受け止めることすら出来ず叩き斬られた。 「なっ!」 驚きの声を上げるべリアル。 そこに大元帥は大声を上げ浄化師に呼び掛けた。 「一斉攻撃! この機を逃すな!」 大元帥の檄に応えるように、皆は全力を叩きつける。 シリウスは真正面から跳び込むと表裏斬。 顔面に斬撃を加えると、背後にまわり、首を薙ぐような横一文字を叩きつける。 「テメェ!」 シリウスの攻撃にべリアルが気を取られた瞬間、死角から踏み込んだリコリスが連続した斬撃を叩き込む。 「クソが!」 べリアルは左腕で薙ぎ払おうとするが、その時にはリコリスは退避している。 代わりに逆向きからナツキが跳び込み、渾身の獣牙烈爪突を放つ。 それをべリアルは、急速再生させた腕を伸ばし、掴むと固定する。 「くたばれ」 ナツキの心臓を貫こうと、べリアルは貫手を繰り出す。 だがナツキの動きの方が速い。 べリアルに掴まれた両手剣から手を離し、後方に跳ぶ。 ナツキの動きに合わせ、ルーノは慈救咒を放つ。 顔面に飛んで来たそれを、べリアルは殴り消し飛ばす。 それによって生まれた隙を逃さず、大元帥が斬り掛かった。 べリアルは回避に専念するが、全てを避け切れず少しずつ斬り刻まれていく。 このまま押し切れば勝てる。 そう判断した浄化師達が一斉攻撃をしようとした時、べリアルも奥の手を出してきた。 「来い! ミョルニル!」 べリアルは口寄せ魔方陣で戦鎚を呼び寄せると、大元帥の大剣に撃ち合わせるように振るう。 撃ち合った瞬間、雷撃が弾けた。 べリアルが手にする戦鎚は、攻撃を叩きつけると同時に雷撃を弾けさせる能力を持っていた。 大元帥は撃ち合うだけで雷撃のダメージを受ける。 武器の扱いならば大元帥の方がべリアルより巧く確実に傷を刻んでいくが、避けようのない雷撃で大元帥の動きは少しずつ鈍っていく。 数合、武器を撃ち合わせた所で、べリアルは大元帥の手にした大剣を弾き飛ばす。 「死ね」 退避しようとする大元帥に、追撃の戦鎚をべリアルは振るおうとする。 それを防ぐべく浄化師達が連続攻撃。 リチェルカーレが鬼門封印を放ち動きを鈍らせた所でシリウスが表裏斬。 リコリスが連続した斬撃を叩き込み注意を引いた所で、ルーノが残り少ない魔力を振り絞り慈救咒を叩き込む。 浄化師達の連続攻撃で、べリアルの動きは一瞬とはいえ止まる。 そこに大元帥のパートナーであるオーゾンが拘束の大魔術を叩き込んだ。 「陰陽不動縛鎖!」 虚空から現れた無数の鎖がべリアルを縛り上げ拘束する。だが―― 「なっ、めるなあぁぁっ!」 べリアルは魔力を放出し魔術の鎖を破壊していく。 拘束から逃れようと暴れながら、その視線は常に大元帥に向いている。 自分にまともに傷を与えられるのは大元帥だけだと判断し、他の浄化師の攻撃を無視していた。 それこそが決定的な隙となる。 大元帥はべリアルの背後に視線を向け、大声で言った。 「使え!」 それは大元帥が弾かれた大剣を届けようとしていたナツキに向けての物だった。 ナツキが大元帥の言葉の意味を理解するより早く、ナツキが手にした大剣から黒炎が溢れナツキを包む。 それが消えると、ナツキは理性を保ったままアウェイクニング・ベリアル化していた。 爆発的に力が膨れ上がったナツキは、べリアルの背に向け走る。 それに気付いたべリアルは逃れようとするが、魔術の鎖が許さない。 ナツキは心臓を貫くようにして獣牙烈爪突を叩き込む。 深々と突き刺さり、そこからさらに横なぎに叩き斬った。 その瞬間、ナツキのアウェイクニング・ベリアル化が終わる。 追撃が掛けられない中、べリアルは自分を縛る鎖を破壊すると空に飛び上がり、そのまま浮遊する。 アウェイクニング・ベリアル化が解けたナツキと、厳しい表情をした大元帥を見て、べリアルは言った。 「ああ、そういうことか。制限時間があるんだな。でも――」 玩具を前にした子供のような表情を見せながら、べリアルは続ける。 「アイツにも使えたってことは、あの武器は、誰にでも使えるってことだよな。だったら、もっと数を増やしたら、もっともっと遊べる奴が増えるってことだよな。好いなぁ」 夢見るように言いながら、すぐに沈んだ声で言った。 「ああ、でも、ダメだよなぁ、そんなの。強くなる前に殺さないと……つまんないなぁ」 そう言うと、今まで以上の殺気を撒き散らし、浄化師達に殺意の目を向ける。 そこに天から声が響いた。 許すよ。好きにしなよ。 それは子供のような声だった。それを耳にした途端、べリアルは歓喜の表情を浮かべ言った。 「あぁ……感謝します。偉大なる御方」 そして浄化師達に宣戦布告するように続けた。 「機械都市マーデナクキスで決着をつけてやる。俺と殺る気があるなら、そこに来い。あそこは今、面白いパーティ準備の真っ最中だからな。たっぷり遊べるだろうぜ」 そう言うと楽しそうに笑い、そのまま空を飛んで消え去った。 かくして戦いは終わる。 激戦を生き延びた浄化師達は、共に戦った魔術師達と喜び合う。 「友よ、俺達は虐殺集団を大虐殺したようだぜ。補助役だとしてもな」 エフドの言葉に魔術師達は喝采する。 喜びの声を上げる者も居れば、大元帥と言葉を交わす者も。 「ナツキに、なにか悪影響はないんでしょうか?」 黒炎魔喰器を使用したナツキを心配し尋ねるルーノに大元帥は返す。 「大丈夫だ。時間制限がある代わりに、リスクなくアウェイクニング・ベリアル化できるのが、黒炎魔喰器の能力だからな」 応える大元帥にサクラが尋ねる。 「その、黒炎魔喰器? それって、他にも作れるの?」 この問い掛けに大元帥は応える。 「現状では特殊な素材が多く必要だから無理だ。だが、いま俺が探している条件に合う人物が見つかれば、ある程度は量産化できる筈だ」 「人を、探しているんですか?」 クリストフの問い掛けに大元帥は返す。 「ああ、そうだ。メフィストにオーゾンを人の姿に戻して貰ってから、あいつの求める人物を探している」 「それって、どんな人物なんですか?」 リコリスの問い掛けに大元帥は応えた。 「卓越した魔道具作りの能力を持ったカルタフィリスだ。詳しい理由はメフィストが話さないから知らんが、その条件にあてはまる人物が必要らしい」 これを聞いてリチェルカーレは、以前の指令で知った人物の名を口にする。 「以前の指令で、カルタフィリスの女性が居ました。彼女は――」 詳細を聞いた大元帥は思案したあと言った。 「……そうか。なら、その時の報告書を確認する必要があるな。久しぶりに戻るとしよう。それと――」 終焉の夜明け団を見て続ける。 「事情を知っているかもしれんから、こいつらは出来るだけ生き残ってると良いのだが」 これに皆は、街で多くの捕虜をヨナ達が見張っていると返した。 「そうか。なら、何か知ることが出来るかもしれんな」 そんな事になっているとは知らないヨナ達は、街で捕虜達に殺意を向ける住人達を言葉で止めていた。 「貴方達の気持ちは分かります。私だって、終焉の夜明け団を憎んでいない訳がない。今すぐここで引導を渡したって構わないんです、でも、それでは……」 「人間同士奪い殺し合い、憎悪を深めていくことは、かの神の行いを是とするのではないか」 「それに抗うため、人は、手を取り合わないと……私達は、悲劇を繰り返す訳にはいかないのです」 2人の言葉に、街の住人は殺意を抑える。 この決断が、どう未来に関わっていくのか? その答えは分からずとも、確実に何かは変わっていく。 指令は、そう思える終わりをみせた。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||||||||
|
| ||
[27] エフド・ジャーファル 2019/10/24-23:34
| ||
[26] ヨナ・ミューエ 2019/10/24-23:13
| ||
[25] クリストフ・フォンシラー 2019/10/24-23:11
| ||
[24] シリウス・セイアッド 2019/10/24-22:54
| ||
[23] リコリス・ラディアータ 2019/10/24-22:42
| ||
[22] ルーノ・クロード 2019/10/24-19:42
| ||
[21] エフド・ジャーファル 2019/10/23-23:23
| ||
[20] ルーノ・クロード 2019/10/23-22:32 | ||
[19] シリウス・セイアッド 2019/10/23-22:23 | ||
[18] クリストフ・フォンシラー 2019/10/23-21:59 | ||
[17] クリストフ・フォンシラー 2019/10/23-21:50 | ||
[16] ヨナ・ミューエ 2019/10/23-02:18 | ||
[15] ルーノ・クロード 2019/10/22-23:00 | ||
[14] シリウス・セイアッド 2019/10/22-22:50 | ||
[13] リコリス・ラディアータ 2019/10/22-21:59 | ||
[12] クリストフ・フォンシラー 2019/10/22-21:10 | ||
[11] ラファエラ・デル・セニオ 2019/10/22-17:18 | ||
[10] リチェルカーレ・リモージュ 2019/10/21-21:09
| ||
[9] ルーノ・クロード 2019/10/21-12:46 | ||
[8] ヨナ・ミューエ 2019/10/21-04:20 | ||
[7] サク・ニムラサ 2019/10/21-00:37
| ||
[6] リチェルカーレ・リモージュ 2019/10/21-00:19 | ||
[5] クリストフ・フォンシラー 2019/10/20-23:22 | ||
[4] リコリス・ラディアータ 2019/10/20-17:16
| ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2019/10/20-12:50
| ||
[2] クリストフ・フォンシラー 2019/10/20-00:29
|