~ プロローグ ~ |
夜を迎えたルネサンスの孤島、ローゼズヘブン。 |
~ 解説 ~ |
ハロウィンシナリオ、夜バージョンとなります。 |
~ ゲームマスターより ~ |
ハロウィン、ダークファンタジー好きとしては心躍りますね。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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仮装:シスター(細部お任せ 行先:街 雑貨屋→道すがらお菓子貰いながらレストラン 雑貨屋 素敵な仮装が沢山ありますね どれにしようかと心なしかうきうきとした気持ちで見て回る 割と大人しめなのを選んだつもりではありますが 私浮いてたりしないでしょうか… いざ外へとなると実際そんな事なくとも気恥ずかしく 道中 え、ええと、その…。トリックオアトリート…、です 人見知り発揮しかなり消極的 相方に隠れるようにしながら小さな声で アロイスくんはすごいですね どんどん知らない人にも声を掛けていく相方が羨ましくもあり 私も頑張らなくちゃと密かに決意 レストラン 見た目にも味にも満足 気の早い相方にくすりと笑いつつも 来年もまた楽しく過ごせればと |
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お祭りだもの いつもと違う特別なことをしたいっていう気持ち、わかるな 僕たちも一緒に楽しもう 仮装 リ:三角帽子を被った小人 セ:薄い羽をつかた妖精 魔女や街の人と交流するのが目的 バスケットに詰めたクッキーやキャンディを配る リューイは屈託なく セラは穏やかに微笑んで >魔女の青年と リ:魔法のお菓子? セ:魔女の魔法というのは 楽しいものが多いのね ふたり顔を見合わせ ありがとうございますと笑顔 食べたら少しの間だけ 体が浮かぶクッキーをリクエスト ふわりと宙に浮かび リューイは歓声 リ:すごい!本当に浮かんでる! セ:風に飛ばされて迷子にならないでね、リューイ リ:セラも食べてみてよ。一緒に飛ぼう 満面の笑みでの誘いに目をぱちくり |
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~ リザルトノベル ~ |
●シスター&吸血鬼 催しものの楽しみとは準備から始まる。ハロウィンにおける特色、仮装の楽しみとは。 すなわち『衣装選び』である。 さっそく雑貨屋に立ち寄ったフレデリカ・アスターとアロイス・フェガリは、そう広くはない空間を埋め尽くす衣装の数々に感動していた。熱意は着る側のみにあらず――埋もれたカボチャおばけのかぶりものの光景が証明していた。 「すごい、これって全部衣装だよね?」 「そう! アドバイスもらって張り切って揃えちゃった」 店主のお兄さん……口調や仕草はどこかお姉さんめいたお兄さんは、見立てがいのある客が来て嬉しそうだ。 仕立て屋の息子であるアロイスは、あれやこれやと衣装を手に取り興味津々。普段遣いには派手すぎるものもあるが、そのまま服としても着られそうで、着心地が良さそうだ。 「素敵な仮装が沢山ありますね」 フレデリカもひとつ手に取って、鏡の前で身体に合わせてみる。 滅多に着ない服は、楽しくも気恥ずかしい。フレデリカのうしろから、アロイスが顔を覗かせる。 「決まった?」 「ま、まだ……アロイスくんは?」 「俺もまだ! かっこいいのがいいなーって」 「そっか。私はどうしようかな」 次にフレデリカが近づいた衣装の列は黒を基調とした、クラシックなものが多く並んでいた。他よりも落ち着いた色合いで、自然と目がいったのだ。 相方の衣装とのバランスも考えておこうとアロイスもそばへ来る。 「店長さん、オススメある?」 「そうね。ちょうどそのあたりだと……」 店主が手際よく見繕ったものをつぎつぎピックアップしていく。 その中からそれぞれ衣装を手に取って、ふたり顔を見合わせたタイミングが、ちょうど重なった。 仮装が決まったふたりはいざ街へ。 慣れない格好で躊躇するフレデリカを、アロイスが「似合っているから大丈夫!」と手を引いてあっという間に連れ出した。 ふっと、心配が薄れる。気恥ずかしいのは変わらないのだけど、嫌な気持ちではなかった。 大人しめのものを選んだフレデリカは、黒の修道服に身を包んだシスター。 まっさらな白の襟元に、ベールの間から雪色の髪がこぼれおちる。雑貨屋の店主がぜひにと持たせた、白銀の十字架ネックレスは、首から提げることにした。 アロイスは漆黒のマントを身に纏う吸血鬼。 黒衣を翻すたびビロード生地の真紅の裏地が目をひく。こだわって仕立てられた立襟がシャープなイメージを加え、柔らかな髪質のピンクブロンドを引き立てる。 シスターと吸血鬼。物語のなかなら相対する立場だろう。けれども中身はいつものふたり。 そして次の目的地のレストランに着くまでに、やるべきことはといえば。 「トリック・オア・トリート! 吸血の貴公子、今日は甘いお菓子も大歓迎!」 陽気で積極的な吸血鬼が、一気にひとびとの注目を集めたのは言うまでもない。 「店の奥で焼きたてのビスケット、持っていって」 「すごい美味そう、ありがとう!」 「今日は何も無い予定だったんだけどな。たまたま在庫が余ったから。たまたまだぞ」 「じゃあ俺たちラッキーだね、ありがとう!」 あちらこちら声をかけるアロイスにフレデリカは感心しつつも、その後ろを控えめに歩いている。 「そっちのお嬢さんは?」 と声をかけられれば、 「え、ええと、その……。トリックオアトリート……、です」 と、アロイスに隠れるようにして応える。 「初対面で恥ずかしいわよねこういうの。この島に来てくれてありがとう、楽しんで」 「こ、こちらこそ。ありがとうございますっ」 顔を慌てて上げ、ベールが頭に被さってしまうほど深々とお辞儀をする。手を振る女性に再度小さく頭を下げ、先で待つアロイスのもとへと駆け寄った。 「どうだった?」 とこちらの様子を気にかける彼を見上げると、緊張している自分とはとても対照的だ。 「アロイスくんはすごいですね」 大量の収穫(お菓子)が入った木籠を見せ、アロイスはご満悦。 「でしょー?」 自分自身を褒められているとも知らず勘違いしているようで、あくまで自然体な彼。知らない人にどんどん声をかけることのできるところが羨ましくも。尊敬、憧れ、そんな言葉に近い、心をつかむなにか。 (私も頑張らなくちゃ) 密かに決意し十字架をギュッと握る。 「おっ。そのポーズ、シスターらしくて決まってるね」と吸血鬼は臆面もなく告げるのであった。 あちらこちらと寄り道をして、ようやくレストランに辿り着いた頃にはすっかりお腹が空いていた。 オープンテラスの席に案内され、さっそくハロウィン限定のメニューを頼む。 自分たち以外にも仮装した客が見られ、店員ですら仮装をする気合いの入りよう。聞けば、去年は客が遠慮して仮装したままでは来てくれなかったから、今年は店側が全力で形から入ったのだとか。 そんな店の本気はもちろん料理にも反映されている。 「「うわぁ、すごい……」」 思わずふたり一緒に声をもらす。限定メニューのカボチャのまるごとアソートは、テーブルのど真ん中を陣取って圧倒的な存在感を放っていた。 カボチャのヘタを持ち上げると蓋になっており、中身がくり抜かれ、外皮をそのまま器にしてしまっている。 カボチャをマッシュしたサラダ、ベーコンと合わせたバター焼き、薄いスライスを揚げたチップス、パンプキンプティングには生クリームが添えてある。 サービスの紅茶でひと息ついた頃にはお腹がいっぱいだったけれど、美味しくてすべて食べられたのだから、もちろん満足だ。 「色んな人と話せて楽しいしお菓子も貰えるって最高だよね」 今度はどんな仮装する? と食事のために外していたマントを羽織り直しながら、はやくも来年のことに思いを巡らせるアロイス。気が早いけれど彼らしくもあり、フレデリカは暖かな気持ちでクスリと笑う。 次もきっと、ふたりで。 ●小人と妖精と このローゼズヘブンは絶海の孤島と呼ばれている。 加えて、夜の海は何もかも飲み込みそうな黒へと変貌する。 その只中に集まる灯り。人間の営みを象徴するともいえるその場所。 けれどそこに、加わろうとは思ってもいなかったとしたら。 今日この日の出会いがなければ未来はどうなっていただろうか。 また、これまでと同じように独りの日々に戻るだけだ。 けれど――。 「お嬢さん達本当にいいのかい? こんな島まで来て手伝ってくれるなんて……もちろん嬉しいけどね」 リューイ・ウィンダリアとセシリア・ブルーがハロウィンの盛り上げ役を買って出ることを、街のひとびとは歓迎した。 文化は、多方からも時に刺激を受けることで、形を変え受け継がれてゆく。 遠洋はるばる渡航してきたエクソシストの協力は願ってもないことだった。 道ゆくひとびとにお菓子を配るなか、お揃い衣装の親子や個性豊かな友達同士が多く連れ立って声をかけてくる。普段の自分を知る人と、普段の自分と違う姿を共有している。 「お祭りだもの。いつもと違う特別なことをしたいっていう気持ち、わかるな」 一緒に楽しもうと、いっぱいのお菓子を詰めたバスケットを抱える羽根つき三角帽子の小人は、仮装したリューイ。 バスケットからこぼれ落ちたお菓子を慌てて拾おうとするが、透き通る丸羽の妖精姿のセシリアが拾って渡してくれた。 「ありがとうセラ」 「気をつけて、リューイ」 そこへひとりの青年が近寄ってきた。お菓子が欲しいのかと思いふたりは「こんにちは」と声をかける。 「ま、魔法のおかしなお菓子はいかが……ですか?!」 声が裏返っている。緊張しているのだろうか。 「魔法のお菓子?」 「俺がちょっとした魔法を、このクッキーにかけます。すると少し……ほんの少しだけ驚くようなことが、起きるんです」 フードのせいで顔はハッキリとは見えないが、年齢はリューイやセシリアよりも少し上に見える。 近年、ハロウィンでは世俗派の魔女が魔法を使ってイベントを盛り立てる手伝いをしている。 彼もそのつもりで来たのだろうと察したのはセシリアだ。 「魔女の魔法というのは、楽しいものが多いのね」 リューイとセシリアは顔を見合わせ、「ありがとうございます」と青年に笑顔を向けた。 青年は俯いてしまったけれど、リクエストがあれば言ってほしい、と声が聞こえた。 「それじゃあ……少しの間でいいんだけれど、身体を浮かせることはできるかな?」 青年はクッキーの包みに手をかざす。ふわりと一瞬、彼の手から風が出た気がした。 「どうぞ」 おそるおそるリューイがクッキーを頬張る。 セシリアが見守るなか、リューイの身体がたしかにふわりと浮かび上がったのだ。何度も、足下を確認して。 「すごい!本当に浮かんでる!」 「風に飛ばされて迷子にならないでね、リューイ」 あくまで冷静なセシリアに、リューイは満面の笑みを向けるばかり。空を飛ぶには低すぎるが、地面を蹴らず、乗り物にも乗らず、景色が移動していく。 「セラも食べてみてよ。一緒に飛ぼう」 無邪気な誘いにセシリアは思わずキョトンとする。 青年もセシリアに、そっとクッキーを差し出した。 「……いただきます」 遠慮がちに口にひとつ。ふわふわ浮かび上がったセシリアの表情そのものにあまり変化はない。確かめるようにして、身体を動かしバランスをとってみると、比較的すぐにコツが掴めた。 背中の羽が揺れ、手足をゆるりと伸ばし浮遊するセシリアに、リューイのほうが感動している。 「まるで本物の妖精だね」 「そう見える? たしかに、悪くない浮き心地だわ」 青年がふたりを見つめ、ホッと息をついたことに気づくセシリア。このようなお菓子なら、とひとつ提案をしてみる。 「目的がハロウィンを盛り上げることなら一緒にやりませんか」 魔女とは友好的になってきたとは言え、まだ道半ば。お祭りに参加することで、少しでもお互いが友好的になれたら。 (リューイも楽しそうにしているし、ね) 「僕たちもこの街は初めてなんです」 「人数が多い方が、よいアイデアが出ないかと。いかがでしょう?」 あきらかに青年は戸惑っていたが、しばらく迷ったのち、こくりと頷いた。 「僕はリューイ、こっちはセラ……セシリアです」 「よろしくお願いします」 「オレは……ヒーロ」 小人と妖精と魔女の3人組は、往来でひときわ目立つこととなった。 「トリック オア トリート!」 「不思議な魔法のクッキーはいかが?」 リューイは溌剌と。セシリアは穏やかに。 声をかけられたひとも、「魔法?」「どんな効果があるんだ?」と、最初こそあれこれと警戒はしているが。楽しそうにしている人を見ると「それなら」と試す者も次第に増えていった。 魔法の効果が切れ、ふわふわと地面に降り立った小さな女の子がヒーロに手を振る。 「ありがとう、魔女のお兄ちゃん」 ヒーロはリューイとセシリアの間でクッキーに魔法をかけ続けながら、ぎこちなく肯く。いま、目にする光景が、自分の行動が。不思議でならないようだ。 「……頭のなかで魔法を使うひとりぼっちの自分を思い描き続けていたけど」 今日初めて会ったふたりに自分は「驚き」を与え、そのふたりから「驚き」が広まっていった。 考えていたことは、「自分がなんとかしなくちゃ」。そんなことばかりだったけれど。 魔法の力で喜ぶひとびと。少なくとも今この瞬間。ここに恐れによる壁はない。 「オレ、わかったよ。ヒトとオレたちの心を渡る力を使う、『魔法使い』になりたかったんだ」 リューイは笑顔で首肯し、セシリアは静穏な瞳でしっかり見据える。 孤島の夜に、灯がすこし、増えた。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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