~ プロローグ ~ |
冬を間近にひかえた晩秋、海より魔が来たるという。 |
~ 解説 ~ |
寒い海に膝までつかりつつ、大量のベリアル相手に大活劇を演じるという戦闘エピソードです。とにかく敵の数が多いので、休む間もなく戦い続けることになります。 |
~ ゲームマスターより ~ |
一年ちょっとくらいのご無沙汰となります。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【目的】 敵の殲滅 【行動】 スコアを盾に遠距離から『リンクマーカー』で敵を補足 狙撃する また、包囲しようとするという事なので囲まれないように後ろから観察して急所を狙う 味方に攻撃しようとする敵が居たら銃で撃ち攻撃阻害する 終わったら海鮮鍋にする為にはりきる 蟹鍋は美味しい 【心情】 あはっ! 私から逃げようなんて100年早いのよ! 雑魚が1杯だから撃ち放題ね! スコア!私の前に居て盾になりなさいな! 良いでしょ?このくらい 終わったら海鮮鍋食べ放題なんだから! 少しは役に立ちなさいよ! …はいはい、分かってるわよ 終わったら、貴方の作曲した奴聞いてあげるから だから今は! 私の役に! 立ちなさいな!(楽しそうに高い所から狙撃して |
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潮魔がこんなに… 今は平気でも 人里に被害が出てはたいへん 海の八百万の神様の手助けが 少しでもできますように 光源用にランタンを所持 寒そうなレオノル先生に お仕事が終わったら 暖かいものを飲みましょうねと 魔術真名詠唱 シリウスに 水も冷たいし、気をつけてねと心配顔で 初手でシリウスや周りの仲間に禹歩七星 支援します 皆さん、無理はしないで 中衛位置から 天恩天嗣3での回復と鬼門封印で仲間の支援 シアちゃんやルーノさんと連携 効率よく回復を 余裕がある時は九字で攻撃 遠距離攻撃の仲間への攻撃は庇う 自分への攻撃は式神召喚・雷龍で対応 光(式神) お願い 呪符に祈り 現れた龍を一撫でし放つ 厳しいけれど静かな海へ戻して 皆で暖かな春を待てるよう |
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すごい数の、蟹さん、ですね 援護、します クリスも皆さんも気をつけて… 魔術真名詠唱後 クリスからあまり離れないように気をつけながら少し後方に位置取り 鬼門封印で蟹の機動力を削いでいきます 味方が傷ついたときは天恩天賜3で回復を 回復の必要がないときは慈救咒にて攻撃します 敵がクリス達前衛陣を囲みにそうになってるときは そちらへ向かって駆け付け攻撃、私の方に引き付けて禁符の陣を発動 辺りにいる蟹をできるだけたくさん巻き込んで拘束するように 今、です……! 拘束できてる内に攻撃、を……! クリスの言葉に 無茶じゃ、ないですよ だって、ちゃんと来てくれる、倒してくれるって、分かってました、から 信頼してます、とほんの少し微笑んで |
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ドクター、お気持ちは分かりますが、仕事ですし終われば暖かい場所に行けますから…今はどうか我慢して下さい とはいえドクターは俺と比べて身体も小さいからな…さぞかし寒かろう …とっとと終わらせるぞ 俺はドクターと共にベリアルを狙っていく 固まる形で動きつつ、囲まれないよう注意しながら削っていくぞ 銃はいいな。撃った時の音は最初こそ喧しいが、火薬の匂いが妙に懐かしく感じる …それにしても、前衛より動かんからな…ドクターが寒いようなら上着を貸そう ドクター、カニが気になるのですか? そこまで気になるのなら持ち帰って食堂で調理してもらいましょう 大変美味しいと思いますよ スープにすればきっと身体も温まります |
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…ああ ・魔術真名詠唱 潰すぞ。…ベリアルを 分かってる アルトナきゅんはやめ、 …いやもう好きにしろ(あだ名については諦めモード) はいはい 来る。…シキ、さっさと顔戻せ (ベリアルを前に、なんで笑ってられるんだ…?) ・前衛で通常攻撃 ・前に出すぎない ・間で「クロス・ジャッジ」を叩き込む ・手前の敵を優先的に戦闘不能 ・狙撃専門のシキが囲まれることを想定して、囲まれていたら、「通常攻撃」で救出に向かう 数が多ければ、対一匹、二匹に「クロス・ジャッジ」使用 (普段騒がしくてもやはり相方なので放っておけない模様) 戦闘後 まあ…こんな季節だし …持ち帰って平気、なの、か…? (シキに曇りない眼差しを向けられ) …なんとかなる、か… |
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今日は絶好のダンス日和ね 敵の群を見渡し微笑み 魔術真名唱えて前へ トールの手を取ったまま共踏円舞 エスコートするわ、ダンスは得意なの クローズホールドの体勢から一旦離れて敵を切りつけ 敵の攻撃はパーフェクトステップⅢで回避を高めてかわし ブレイキングステップで速力を上げる 哀れな蟹さん、食べやすい大きさに捌いてあげるわ! 共踏円舞の効果が切れたら再びトールに近づきかけ直し さあ、テンポを上げるわよ! しっかりついてきてね? ヒット&アウェイを繰り返し ラストはトールの所に戻って腰に手を絡め トールを支えるように上体を反らしてフィニッシュのポーズ ふふっ、言ったでしょ?エスコートするって 何だか蟹が食べたくなってきたわ |
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ナツキが前衛として前へ出て中衛、後衛への接近を防ぐ ルーノもナツキの近くで行動、仲間への包囲を警戒する 互いに背を守るように位置取り、死角からの不意打ちと孤立を防ぐ ナツキ:ルーノが前に出るなんて珍しいな、あんまり無理すんなよ! ルーノ:君にそれを言われるとは…それより、よそ見をしている暇はないようだ 敵に釣られて突出する事を防ぐ為、まずは向かってきた敵を倒す 敵が減ったら積極的に前に出て残党の殲滅を試みる ルーノは攻撃の合間に体力が減った味方を天恩天賜で回復 接近されたら退魔律令、多数なら禁符の陣で足止め ナツキは裁きを常時使用 中・後衛やルーノ向かう敵はソードバニッシュで先制して倒す 敵の攻撃には制裁で反撃する |
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海の幸もベリアルもわらわら 経験積むにはちょうどいいよねぇー? ・目的 敵をたくさん倒して経験を積もう あと海の幸も貰おう ・行動 戦闘中の位置は中距離 ニオと共に行動、連携を意識して 自分達に近い敵にはニオと同時に攻撃して確実に撃破を狙う 敵が密集している地帯を見つけた際は一番戦闘にいる敵へMA3 片方の足を拘束し、もう片方の足はニオが攻撃 敵の態勢を崩すことでそのまま周囲の敵も巻き込んでみようと 孤立しないよう注意 ニオくん何持って帰る? おれさぁ、あの黒いとげとげのヤツほしい! 醤油かけたプリンとそれ、おんなじ味するんだってぇ |
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~ リザルトノベル ~ |
錆びたバールに似た鋏(ハサミ)が、コンマ数秒前まで『リコリス・ラディアータ』の頭があった場所をかすめる。 しかしまるでそんなもの、最初から存在しなかったかのように、 「エスコートするわ、ダンスは得意なの」 リコリスは優雅な微笑をうかべ『トール・フォルクス』に手をのばす。 「ダンスはあまり経験がないけど」 トールも落ち着いたものだ。 「リコがリードしてくれるなら問題ないよ」 槍状の前脚が突き出されるを軽くかわし、リコリスの冷たい手を、自分の手で温めるように包み込んだ。 舞う。手に手を取り合ってふたり、息を合わせて。 舞う。それは共踏円舞、互いの力を高め合う華麗にして危険な輪舞曲。 冬の海に水飛沫蹴立て、近づく潮魔を紙一重、回避しながらリコリスとトールは舞う。 海のベリアル――潮魔たちは、ふたりに触れることができない。たとえ舞踏の残像であろうとも。 「これ、社交ダンスの構えみたいだな?」 トールは笑った。 戦いは既に始まっている。 煮立てた血のごとき夕陽、小雪ちらつく遠浅の海。当初少なく見えた潮魔は、浄化師たちが水に足を踏み入れるや次々、水平線の彼方より押し寄せた。まるで波濤だ。表面に海草や藻を貼り付けた甲殻類どもが、あるものは二足歩行、あるものはうずくまったような姿勢で群れなして来る。 いくら敵が多くとも、『シキ・ファイネン』は恐れを感じなかった。むしろ逆、獅子の仔のような不敵な笑み浮かべ『アルトナ・ディール』に呼びかけている。 「よーし、やろーぜ! アル」 魔術真名詠唱完了。身を切るような寒さ吹き飛ばし、ふつふつとたぎってくるのは気か魂か。 「……ああ」 返答とともに片手剣で、アルトナは潮魔の一体を斬り伏せた。ざぶっと西瓜でも割るような手応え、両断されたベリアルはたちまち影のように消えた。 「飛ばすねえ!」 口笛でも吹くようにしてシキは言った。 「落ちついていこうぜ。な? アルトナきゅん!」 俺はずっと落ちついている――とでも言うかのように、無論だ、と短くアルトナは返した。思いだしたように、 「『アルトナきゅん』はやめ……」 言いかけて溜息をついた。 「……いや、もう好きにしろ」 シキにそう呼ばれることについてはもう諦めかけている。 「はーい、好きにするっ!」 (アルトナきゅんのそーゆートコ、やっぱ良いなー) 心がはずんでしまうじゃないか。敵がすぐ目の前だとしても! ライフルを構えシキは迫り来る潮魔に向き直った。 まったく、とアルトナは独りごちた。銃の構えはいい。だがシキの頬は緩みっぱなしなのだ。 「来る。……シキ、さっさと顔戻せ」 閃く刃、うなる銃声、砕ける散るは甲殻の鎧。 波、静かなれど海には、戦の嵐が吹き荒れる。 「ベリアルがわらわら」 と『カリア・クラルテ』は唇をつり上げた。 「経験積むにはちょうどいいよねぇー?」 カリアの放ったドールは飛翔したかと思いきや、射られた小鳥のように落下し、海面に落ちる直前、反転急上昇して潮魔の脇をすり抜けた。 くん、とカリアはドールの操り糸を引く。 同時に、目視できないほど細い操り糸が潮魔の胴に絡みつき、これを締め上げ、さらにぼきりと砕いたのである。 「ここ最近は手伝いばかりだったからな」 呼応するのは『ニオ・ハスター』だ。氷水のような波に膝を洗わせながら、炎の球を投じベリアルを灼く。火に包まれた魔は波に身を沈め、そのまま二度と浮き上がらなかった。 「強大な敵が増えていると聞く、先のことを考えれば経験は必要だ」 「うわ、ニオくんまじめー」 茶化すようにカリアが言うも、ニオはちらと視線を向けただけで抗弁しない。こうやってカリアがカリアらしくいるのは、作戦がうまくいっている証拠だからだ。 自分は占星術師、カリアは人形遣い――ニオは知っている。 立つ場所は同じでも役割が違うのだと。 だが今回は、共に戦うことを意識しよう。 右手に剣、左手にも剣、翼を広げた猛禽のごとく『シリウス・セイアッド』は左右の剣で潮魔を断つ。 斬る。斬る。いくら斬っても新手が出てくる。開戦当初より加速度的に、敵の数が増えている。 当初聞いていた数より多い。見た渡す限り潮魔ではないか。 しかも連中は日、一日と数を増しているという。 これがあふれないという保証はない、とシリウスは思う。 やはりここで殲滅するほかない。 剣をふるうシリウスの背を見つめながら、『リチェルカーレ・リモージュ』は彼、そして周囲の浄化師を支える。 「シリウス。水も冷たいし、気をつけてね」 少し前にリチェルカーレはそう呼びかけた。その様子があまりに不安そうだったからか、シリウスは微苦笑して、 「お前こそ あまり前には出るな」 と言ったのだった。 そんなシリウスのことだから信頼している。禹歩七星もかけてあるし、まさかの事態はないと思いたい。それでもやはり数倍する敵に向かう彼の姿に、無事で戻ってきてとリチェルカーレは、祈るがごとく願うのだ。 蟹と海老、その両者の凶悪なところだけを寄せ集めたような異形の集団、これが潮魔だ。いくつも形状のバリエーションがあった。 自分より頭一つほど背が高く、しかも腕が六本もある潮魔を切り倒し、『クリストフ・フォンシラー』の前の視界は開けた。 日の入りが見える。 開戦当初の集団を一掃したのだ。 だが海水に濡れた眼鏡を拭ういとまもあらばこそ、クリストフは溜息つくことになる。 「また新手か……しかも前より多い」 波状攻撃、うんと数を増した新手が押し寄せてくるではないか。 「あれ全部倒すのか。やれやれ、骨が折れそうだ」 言葉こそ不平気味だがクリストフの口調は若干楽しげで、唇もうっすらと笑んでいた。 先頭の潮魔はかなりの大型、ヤドカリに似ている。動きも速く、じゃぶじゃぶと水を逆立てながら走ってくる。 しかし大型潮魔の頭部の真芯に、どすっと矢が突き立った。怪物は叫んで崩れ落ちる。後続が立て続けにヤドカリの背中に激突して崩れた。さらに矢を中心とした爆炎が巻き起こり、転倒した潮魔ことごとくを包む。 「ま、こちらもまだまだ体力は万全だ」 トールはすでにボウガンに、新たな矢をつがえようとしている。 文字通りこれが嚆矢(こうし)となり、最前に増して大きな激突となった。 腰を落としクリストフは剣を構える。体当たりしてきた巨体を盾でしのぎ、押し返して一刀をくれた。返す刃で振り向きざま、別の敵の鋏を吹き飛ばす。 「負ける気はないけどこの数だからなあ」 クリストフが思うまま暴れられるのは後方に、『アリシア・ムーンライト』の姿があるから。 「クリス、気を、つけて……!」 夕陽に染まりあかあかと、アリシアの黒髪が艶を帯びている。 「うん。アリシアは回復と支援頼むね。あと、あまり俺達から離れすぎないように気をつけて」 アリシアが守ってくれる限り、クリストフの心に恐れはない。 増援と呼ぶには多すぎる。最初を上回る第二破を見て、『ルーノ・クロード』は頭に手をやった。前髪の乱れを直しながら、 「おかわりは大盛りって話か。前よりずっと多いじゃないか」 とは言ってはいるもののルーノの表情は、五月の薫風の中にいるかのように余裕のある笑みなのだ。しかも前衛に駆け出した。 以心伝心、ルーノが動き出す頃にはとうに、パートナーの『ナツキ・ヤクト』は彼と肩を並べていた。 「ルーノが前に出るなんて珍しいな、あんまり無理すんなよ!」 「君にそれを言われるとは……それより、よそ見をしている暇はないようだ」 効率を考えて後方支援に回るのが、本来のルーノの戦い方だ。それがあえて前に出るからには相応の理由があるのだろう――そうナツキは思う。いちいち真意を問うたりはしない。 ルーノのことだ、ちゃんと考えがあるはず、そう信じているからだ。 それに、 (なにかあっても俺がフォローするだけだ!) と決めているから。 まだ来るんだ、と増援を見て『レオノル・ペリエ』は両腕で我が身を抱きしめた。雪の量が増している。海風の冷えたるや痛いほどだ。 「ますます寒くて冷たくなってきたよ。早く帰って暖炉で温まりたいなぁ……」 動いているとはいえ、体温の上昇を海水と風が阻害しているように思う。 「ドクター、お気持ちは分かりますが、仕事ですし終われば暖かい場所に行けますから……今はどうか我慢して下さい」 弾倉をライフルに装填し、撃鉄を引いてリアサイトを目に当てる。この動作がわずか二秒、『ショーン・ハイド』は両脚を開いて息を吸い、引き金に指をかけ息を吐いた。 ジャスト一秒後乾いた音が立ち、サイト越しに潮魔の頭が破裂するのをショーンは見ている。 とっとと終わらせる、とショーンはつぶやく。 (ドクターは俺と比べて身体も小さいからな……さぞかし寒かろう) か細いレオノルの体が凍える姿を思うだけで、ショーンはいたたまれないのだ。 「よければお使い下さい」 そこで彼は上着を脱ぎ、レオノルの肩にそっとかけたのである。 ショーンの頼もしさ、上着に残るほのかな温もりを心強く感じ、 「ありがとう。頑張って早く終わらせるよ……」 レオノルはこくりとうなずいて、エアースラストの力を解き放った。風の刃の鋭さは、外骨格などものともしない。 (部屋においしい茶葉があるんだ) そう思えば寒さもやわらごうというものだ。 (終わったらリチェちゃんたちに紅茶淹れてあげよう……) 海から飛び出し、アルトナの首筋に食らい付こうとした長い海老状の潮魔が、ぴしゃっと空中で破裂した。 「あはっ! 残念でした! そんな姑息な手が通用するとでも!?」 助かった、という仕草をするアルトナに”No problem.”という意味のハンドサインを返して、『リロード・カーマイン』は真紅の三つ編みを背中にはらいのけた。ライフル。立射の姿勢。スコープを巡らせ、敵を順々に撃ち抜いていく。 「ほらほら、私から逃げようなんて百年早いのよ!」 面白いように当たる。雑魚がいっぱい、まさに撃ち放題だ。縁日の射的だって、潮魔よりいくらか歯ごたえがある。 (リロード、ちょっとハイになってない?) 振り返って『スコア・オラトリオ』はモノクル側の目を細めた。あんまり飛ばし過ぎないでね、と言いたい。 「……今ここで、リロードを殺さなきゃならないとか僕嫌だからね」 小声でぼそりと言う。その瞬間、 「スコア!」 リロードの声が上がったので、聞こえたのかとスコアは飛び上がりそうになった。 「あー、何でもない」 ごまかすべく返事するも、違ったようだ。 「動きすぎ! ちゃんと私の前で盾になりなさいな!」 リロードはスコープから目を離さず、元の位置に戻れとスコアに手で示しているのである。 「ああ、はいはい、盾役に徹しろってことね。おおせのままに」 聞こえるように大きめに告げて、スコアはリロードと敵集団を結ぶ直線上に戻った。 「わかればよろしい! 少しは役に立ちなさいよ! 終わったら海鮮鍋食べ放題なんだから!」 という声を背に浴びながら、 (お酒でも飲んでそうな張り切りっぷりだよなあ……まぁ、リロードだから飲むんじゃなくて燃やすのに使いそうだけど) スコアは肩をすくめずにはおれない。 第二破は重い。 最初の混戦など予告編だったと言わんばかりに、ますます大量の潮魔が攻め寄せた。複数の群れで。 十数頭はあろうか、群れのひとつがニオに迫る。 「なかなかいい密集具合じゃない? ニオくん」 呼びかけたカリアの語尾には、いたずらっ子のような響きがあった。 「だったら、こんな具合に料理してみたくなるよねぇ」 カリアは悪魔的なほどに愛らしい笑みを見せると、いくよ、とニオに目配せして先頭にいる潮魔、二足歩行する大型の片足に傀儡の糸を絡ませた。 相手の力を利用して巧みに引く。巨大な潮魔はつんのめった。 「理解した」 疾走。同じ敵にニオは急迫し、仕込み刀を抜く。 白刃は潮魔の、拘束されていない側の足を断ち切った。 狙い通りだ。 甲羅をかついだ潮魔はたまらず後方に倒れ、後続の同類を押し潰して自身も事切れたのだ。同時にざぶんとニオは頭から海の水を浴び、カリアも濡れずにはすまなかったものの、策が成就した高揚感からともに、冷たさは感じなかった。 「ニオくん、どう? いいアイデアだったろー?」 「そのようだな」 ふとニオは思う。 (さっきカリアに『まじめー』とからかわれものだが……カリアもなかなかの真面目ぶりだな) ふっと可笑しみを感じるも、言わないでおくことにした。 いい獲物とでも思ったか、ルーノとナツキめがけ右の鋏だけ巨大な蟹型潮魔と、その鏡像みたいな左鋏の潮魔が推参する。 ふたりには、声を合わせる必要すらない。 退魔律令効果発現、ルーノが印を結び放つやいなや、右鋏の潮魔は体を『く』の字に曲げて吹き飛ぶ。その勢いに巻き込まれ、中小織り交ぜて別の潮魔が、あるいは砕けあるいは倒れた。 制裁、カウンター攻撃の名はシンプルにして最良。巨大な段平(だんびら)ナツキがふるえば、もう片方の潮魔とてひとたまりもない。積み木細工さながらに粉砕された。 「やるじゃないか、ルーノ」 「ナツキこそ、あいかわらずだ」 夕闇の訪れを悦んでか、偃月の短剣は冴えと切れ味を増していくかのようにリコリスは思う。 「哀れな蟹さん、食べやすい大きさに捌いてあげるわ!」 一太刀くれて前脚を退け、いま一太刀で甲殻を砕く。リコリスの戦術はヒット&アウェイだ。 トールの矢はリコリスのために天翔る。射倒し射倒し、魔を彼女に触れさせない。 「すごいな、リコのやつ、どんどんステップが速くなっていく」 トール自身、回り込んできた敵に距離を詰められたが、すぐに矢を手に握って甲羅の隙間を狙って叩き込んだ。一撃必殺のクリムゾンストックだ。 このときリコリスが、トールの手をしかとつかんだ。 「共踏円舞のかけ直し、いかが?」 「任せるよ」 「いい返事ね。テンポを上げるわよ!」 えっ、とトールは返す暇も得られず、リコリスの高速舞踏に巻き込まれる。 「しっかりついてきてね?」 「できるかわか……うわっ」 これまで共踏円舞をかけなおすたび、結末部でトールはリコリスを支え、遠心力を利用して再び敵の群に送り出すようにしていた。 だけど今回はこれまでで最速、ついていくのがやっとだ。 「さすがにもう受け止めきれな……えっ?」 唐突にトールは気がついた。 「これ、ダンスの役割的に男女逆なのでは……!?」 このとき、時間が停止したかのように、美しい姿勢でリコリスはトールを支えた。トールの上体は悩ましく仰け反り、顔は気高く冬空を見つめている。 「言ったでしょ?」 リコリスの囁きがトールの耳朶を撫でた。 「エスコートするって」 そして共踏円舞は、見事に発動したのである。 「なぁアル、コイツら弱点とかってあんの?」 弾んだ声で問うてくるシキに、 「あるとすれば」 告げてアルトナは剣を振るった。十時を描くクロス・ジャッジ、これを浴びて立っていられる潮魔はいない。 「統率が取れていないところだろうな。数は多いがバラバラだ」 それにしても、とリロードはつぶやいた。 「ずいぶんシーフードがあるじゃない?」 足元には新鮮な魚、それに貝などが大量に打ち上げられているのだ。終わったら海鮮鍋ね、とリロードは決めた。 同じ頃スコアも心に決めたことがあった。 敵の叫びに波音、加えて鏘々戟々(しょうしょうげきげき)たる戦いの音から、スコアは音楽を紡ぎだし心の楽譜に起こしている。 (アレンジ次第では、ちょっとした管弦楽曲にできそうだよ) 完成したらリロードに聴いてもらおう、そう決めている。 忽然と茨の檻が現れ、潮魔たちをまとめて捕らえた。 「包囲なんてさせないから」 一網打尽のソーンケージだ。狙い通りにいったとレオノルは、ブルーの怜悧な瞳を細めた。敵の動きに注意し、味方を包もうとする集団があるたびにこうやって防いでいる。 檻の中の潮魔に、とどめをさすのは鉛弾、すなわちショーンのライフルだ。発砲するたび火の粉が四散し、海面がびりびり震えるほどの音が立つが、威力はそれを補って余りある。 (銃はいいな) 硝煙に包まれながらショーンは思う。 (撃ったときの音は喧しいが、火薬の匂いが妙に懐かしく感じられる) 過去の記憶と関連があるのだろうか。 銃は武器、しかも殺傷を目的とした武器。だというのに銃がもたらす匂いに安らいでしまうのはなぜなのか。 ライトスタッフをさばくルーノは、禁符の陣で敵を足止めし、近づく魔には退魔律令を喰らわす。手当たり次第ではない。包囲されないよう考えて動いている。 いつもの退いたポジションとは違い、肉体的な負荷は高いはずだ。しかしルーノの悠揚たる様子は、まるで無人の野で演習をしているように見えるのだった。 「減ってきたように思わないか?」 「え?」 まさかルーノに見とれていたとは言えず、ナツキは聞こえなかったふりをした。 「敵だよ。数が減っている。勢いも」 「そういや……それに、もう増援はなさそうだ」 「なら残党の殲滅戦だ。積極的に前に出よう」 さらに積極的に? とナツキは驚くもルーノを支持する意志だ。 「今日って、潮魔を退治するのが目的だよな」 「もちろんだよ」 「でもうひとつ目的見つけた! 動いて腹減ってきたし、魚も持って帰るぜ!」 「この寒い中で元気だな」 ほどほどに頼むよとルーノは苦笑した。 だが戯れ言はここまで、数を減じた敵の、死に物狂いの反抗がはじまったのだ。 リチェルカーレも事態を察した。手近な味方に呼びかける。 「先生、シアちゃん、なんだか敵が……」 みたいね、とレオノルは言葉を継いだ。 「乾坤一擲の大反撃、ってところだろうね。ここからが正念場かな」 「ええ、窮鼠猫を噛む、のたとえも、あります」 アリシアもうなずき、傷ついた仲間への回復を開始した。 シリウスは振り向いた。 (数が減ったとは言え潮魔が、結集して寄せてくればこれまで以上の脅威だ) 「シリウス聞こえた? 突出してはだめ」 リチェルカーレの髪が、強い雪風に吹き上げられるのが見えた。 「わかってる」 と言いながらも言葉に反し、シリウスは駆け出していた。 制止しようとするリチェルカーレの声は聞こえる。もちろん理解はしている。 (これは無謀な突出じゃない。足止めだ……!) なかば賭けだ。それでもシリウスは試した。 「先手必勝っ!」 左右の剣を振り上げ、出会い頭の潮魔に浴びせた。斬り下げてそのまま叩きつける。海面まで! 剣が描いた軌跡をなぞり、氷の白い線が奔った。 氷結斬。瞬間的に潮魔は凍結状態となり、その巨体とあいまって後続を妨げるバリケードとなる。 同時に反撃を受けていたが気にしない。じりじりと安全圏まで後退して、おもむろに自身の肩にシリウスは触れた。手を見れば真っ赤だ。 (あとでリチェに叱られそうだ) 一気に反撃する意図が潮魔軍にはあったと思われる。しかしシリウスに機先を制され、さらに、これまで最大級の個体もいたのだが、 「ずいぶんと硬そうだな。ならこれで」 とクリストフが薙いだ爆裂斬にあっさりと粉砕されてしまったことで、見事に浮き足立ってしまった。 これぞ好機とクリストフはそのまま追撃に入る。一体、二体、たてつづけに斬り伏せたところで足首に痛みを感じた。 「うん……っ!?」 倒したと思っていた潮魔が、必死の形相でクリストフの足をつかんだのである。ダメージは軽度だが足止めされた格好だ。 これを見て逃げかけていた潮魔どもが、わっとクリストフを包み込まんとした。 だがそれもわずかなこと、クリストフを中心にするように禁符の陣が発動したのだった。 一足で届くほどの距離、そこにアリシアが立っている。 懸命に駆けてきたのだろう。肩で息をしている。服は水浸しで、髪は垂れて右目を半分隠していた。 「今、です……! 拘束できてるうちに攻撃、を……!」 「……任せろ」 アルトナの大剣が潮魔を次々、唐竹割りの要領で仕留めていった。 「ほーら、とっておきのエナジーショットだ!」 呼応するようにシキの銃弾が、潮魔の目を貫いて絶命させる。 リロードの銃も絶好調だ。 「残る潮魔はあとわずかよ! ほらほら、進め進め!」 と盾役のスコアをけしかける。 「わかったよ……でも、終わったら僕がいま、この戦いからインスピレーションを得て作った曲を聴いてよね」 「はいはい、分かってるわよ。たっぷり聴いてあげるから!」 だから今は! とリロードは声を上げた。 狙いを付けて射撃して、 「私の役に!」 また狙いを付けて射撃、 「立ちなさいな!」 もう一度狙いを付けて射撃! 言い方こそぶっきらぼうだが、リロードの言葉に嘘がないことをスコアは知っている。 (僕の曲を聴いてくれるのは君くらいだ) 感謝したい。リロードが、リロードでいてくれることに。 まもなく、浅瀬に立つ姿は浄化師たちだけとなった。 最後の一体から剣を引き抜くと、水滴を落としてアルトナはこれを鞘に収めた。 まるで嘘のよう。潮魔は跡形もなく消え失せ、足元には打ち上げられた魚や貝だけが残っている。 「うう、ちょーさむい……」 と体をこすっていたシキが急に声を上げた。 「すっげ、海の食べもの……! なあ、アールー!」 続く言葉はアルトナには容易に想像が付く。 持って帰ろー! だろう。間違いなく。シキはきらきらした目で語っている。 「……持ち帰って平気、なの、か……?」 と言いかけてアルトナは言葉を引っ込めた。 「なんとかなる、か……」 逆らえないのだ。シキの曇りない眼差しには。 ねえ、とレオノルがショーンに問う。手には大きなタカアシガニを手にしていた。 「カニって美味しいの? 昆虫とかクモと同じ節足動物だよね? 節足動物は食べたことがないんだ」 「カニが気になるのですか? ええ、大変美味しいと思いますよ」 スープとか、と言ったショーンに、 「あと鍋な!」 とナツキが合わせて笑いを誘った。 「おれさぁ、あの黒いとげとげのヤツほしい!」 カリアが指さしたものを見て、 「あぁ、ウニか」 ごく平然とニオはこれをつまみあげた。 「構わないが……食材を無駄にはするなよ……」 戦闘の疲れも吹き飛んだ様子で、わいわいとシーフード集めに没頭する仲間たちから少し離れたところで、クリストフはアリシアの肩に、自分の上着をかぶせている。 「さっきはどうして無茶したんだ。あれくらいなら自力でなんとかできた……前に出ては危ないだろ」 「無茶じゃ、ないですよ。だって」 アリシアはクリストフを見上げた。 「ちゃんと来てくれる、倒してくれるって、分かってました、から」 「そうか」 クリストフは笑った。これ以上何が言えよう。 「ならこれからも、背中は任せたよ。俺の」
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*** 活躍者 *** |
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[10] レオノル・ペリエ 2019/12/04-21:43
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[9] スコア・オラトリオ 2019/12/04-15:59 | ||
[8] シキ・ファイネン 2019/12/03-18:59
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[7] アルトナ・ディール 2019/12/03-18:59
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[6] カリア・クラルテ 2019/12/03-18:19
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[5] リコリス・ラディアータ 2019/12/03-12:55
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[4] ルーノ・クロード 2019/12/02-23:46
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[3] リチェルカーレ・リモージュ 2019/12/02-22:44
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[2] クリストフ・フォンシラー 2019/12/02-22:12
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