縁と絆を深めて・その1
とても簡単 | すべて
8/8名
縁と絆を深めて・その1 情報
担当 春夏秋冬 GM
タイプ ショート
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 通常
相談期間 5 日
公開日 2019-12-20 00:00:00
出発日 2019-12-28 00:00:00
帰還日 2020-01-05



~ プロローグ ~

 浄化師は、家族に会いに行けない。
 これは浄化師の身内であることが知られることで、危険が及ぶことを考慮してだ。

 間違えではない。
 だが、いささか言葉が足らない。

 教団の本音としては、戦力であり、貴重なサンプルとなり得る浄化師が他所に行かないようにする目的もある。
 外部との関係性を断ち切り、教団のみに従属する便利な駒として確保する意味合いの方が大きい。

 それを是としない者も居る。
 例えば、教団本部室長であるヨセフ・アークライトも、その1人だ。

◆   ◆   ◆

「浄化師の諸君が、家族と会えるようにしたいと思う」
 ヨセフは室長室で、部屋に集めた皆に告げた。
「いいんじゃない。むしろ遅いぐらいだし」 
 軽い口調で返したのは、魔女セパル。
「浄化師だからって家族に会えないの、おかしいよねー」
 この言葉に、部屋に集まった皆は賛同しながら、それぞれ言葉を返していく。
「会いに行けるようにするのは良いと思いますけど、普段から会いに行けるようにするのですか?」
 死んだふり浄化師のセレナが問い掛けると、ヨセフは応える。
「いや。あくまでも指令として会えるよう、便宜を図るということだ」
「それと同時に、護衛の手配を行う、という流れで進めていくのが、今回の目的ですね」
 死んだふり浄化師のウボーの言葉に、ヨセフは応える。
「そうだ。浄化師の家族に万が一が無いよう、今の内から護衛の手配をしておく。
 これから教皇を含めて国の中枢と事を構えるからな。
 我々に協力してくれる浄化師の諸君が、後顧の憂いなく動けるようにしておきたい。その主体は――」
「魔女と冒険者、でしょ?」
 セパルがヨセフの言葉を引き継ぐように続ける。
「ボクの方で、魔女の手配はしておくよ。気付かれないように、皆の家族を守れるよう、動いて貰うよ」
 セパルに続けて、ウボーが言った。
「私の方は、アークソサエティの冒険者ギルド、そしてノルウェンディ出身者で作る冒険者ネットワークに動いて貰います。
 必要な経費は、私の家とノルウェンディ王家が捻出するので、資金面で外部から手繰られることは無い筈です」
「そうして貰えると助かる」
 ヨセフは頭の中で目まぐるしく状況を組み立てながら言葉を返していく。
「家族が明確に判明している浄化師については、それで良いと思う。
 だが、それだけでは足りない。中には何らかの事情で、家族と離れている者も居るだろう。
 それだけではない。アンデッドの者に顕著だが、過去の記憶が無いせいで、家族のことを思い出せない者も居るだろう。
 そういった者達には、教団本部で集めた情報を照らし合わせて、過去を取り戻す助けが出来ると良いと思っている。
 しかし中には、それだけでは足らない者も居るだろう。だから――」
「私に協力して欲しい、ということね」
 ヨセフの言葉に、カルタフィリスであるマリエルが応える。
「終焉の夜明け団が持っていた情報は、幾らか知っているつもりよ。生き残るために、色々と調べていたから。
 だから、力になれることもあると思う。みんなには助けて貰ったから、協力させて」
 マリエルの言葉に賛同するように続けて言ったのは、少し前までマリエルの内で魂だけの存在であったマリー・ゴールドだった。
「私にも、協力させて下さい。調べ物をしたり、誰かを守るために必要だというのなら、戦います」
 これにヨセフは、マリーの姿を見詰める。
 黒猫のライカンスロープに見えるマリーは、マリエルと同じく10代半ばの少女の姿をしていた。
「その気持ちには感謝するが、君達は、黒炎魔喰器の製造に必要な人材だ。危険な場所に行かせるには、それだけの実力がなければ――」
「大丈夫です、室長」
 ウボーがヨセフの懸念を晴らす。
「大元帥のお墨付きです。試しで、少し模擬戦を行われたんですが、十分な実力があると判断されています」
「クロートが、そう言ったのか?」
「はい」
「そうか……」
 少し考えるような間を空けて、ヨセフは言った。
「分かった。正直、使える人材は使いたい。協力して貰おう。マリエル・ヴェルザンディ。マリー・ゴールド」
「ええ」
「はい。お願いしますね」
 2人の返事を聞いて、ヨセフは話をまとめるように言った。
「浄化師の諸君の、縁と絆を守るために、力を貸して欲しい。そのために必要な書類作成や手続き、根回しや裏工作はこちらでする。
 楽な仕事にはならんだろうが、よろしく頼む」
 ヨセフの頼みに、皆は応えるのだった。

 そんなやり取りがあった後、ある指令が出されました。
 それは浄化師が家族に会えるよう、指令の形で便宜を図るので、希望者は申請して欲しいというものです。
 それだけでなく、離れ離れになってしまった家族が居るのなら、その家族を探す手助けをしてくれます。
 また、記憶を無くしたりなどで、家族のことが分からない場合は、その記憶を手繰ることから協力してくれるとの事でした。

 縁と絆を手繰る、この指令。
 アナタ達は、どう動きますか?


~ 解説 ~

○目的

自由設定を深める形のエピソードになります。

深まったな、と思えるプランでしたら成功以上になります。

○選択肢

以下の選択肢から、1つ選んでください。

1 家族に指令の形で会いに行く

家族から依頼を教団が受けたという名目で、それを指令としてこなすことになります。



実家で何らかの人手が必要になったので、その手伝いをする指令。

理由などは、自由に決めて頂けます。

家族では無くても、家族に近いと思える相手なら、可能です。

2 離れてしまった家族に

どこに居るのか分からない家族を捜索することが出来ます。

教団本部の情報と、NPCの協力により、捜索が出来ます。



PCが持っている情報を照らし合わせ、教団本部の資料を調べたり、NPCから聞き込みが出来ます。

プランの内容によっては、NPCが自発的に情報提供をしてくれる流れになります。

3 無くした記憶を探る

何らかの理由で無くしてしまった記憶を手繰り、縁のある相手や集団を探ることが出来ます。



PCが持っている情報を照らし合わせ、教団本部の資料を調べたり、NPCから聞き込みが出来ます。

プランの内容によっては、NPCが自発的に情報提供をしてくれる流れになります。

○NPC

セパル 魔女関連や、その他諸々の情報を知っている可能性があります。
ウボー&セレナ 貴族や冒険者関連、その他諸々の情報を知っている可能性があります。
マリエル&マリー 終焉の夜明け団関連、および、終焉の夜明け団を経由した教団の情報を知っている可能性があります。

必要ならばプランで自由に出せます。

○その他

今回の自由設定を深めるエピソードは定期的に出す予定ですので、シリーズ的な物として進めることもできます。

シリーズ物として進める場合、展開によっては、個別シナリオとして進む場合もあります。

PCの家族などには、秘密裏に、魔女や冒険者の護衛が就くことになります。プランでその辺りを書くことも可能です。


~ ゲームマスターより ~

おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、PCの自由設定を深める形のエピソードになります。

家族との団らんをパートナーと過ごすほのぼのとした物でも良いですし、行方の知れない家族や、無くした記憶を手繰るサスペンス調に進める形でも、自由に進めて頂ける物になっています。

また、定期的に出すつもりですので、シリーズ物として進めるのも可能ですし、進める展開によっては、個別エピソードになる場合もあります。

展開次第では、PCに関わるNPCとして登場してくる可能性もあります。

それと舞台に出来るのは、今まで出てきた舞台限定になります。ですので、アルフ聖樹森と機械都市マーデナクキスは、今回は舞台として出て来ません。

年が明けてから、この2か所は開始予定です。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ショーン・ハイド レオノル・ペリエ
男性 / アンデッド / 悪魔祓い 女性 / エレメンツ / 狂信者

どうかしましたか?ドクター
人祓いまでして、改まった顔をして
私の死因を調べた…?
…え?私が嘘をついている?

…理由は、そうですか
生前と今の性格はほとんど変わっていないにもかかわらず、あまりに没個性的過ぎた、と…
なのに見せしめのような殺され方をしたから、と
根拠が薄いんじゃないですかね?

…え?証拠を見せ…ってしまっ…!!
ドクター!狙われ…って!!
あの人は死後も俺が監視されているって事実に気づいていたのか…
俺が記憶喪失の演技を終えれば、その監視役が始末の為にくると思って敢えてここにおびき寄せたと…

しかもこんなあっさりと倒して…!
貴女に危害が及ぶ可能性だってあるのに…!
リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者

邪魔だろうというシリウスを 引っ張るようにして帰省
邪魔じゃないわ 家族は皆シリウスのことが大好きよ
不安げに揺れる翡翠の双眸に笑いかける

新年用のプーケを作ったり 弟妹にねだられて部屋に飾るサシェを作ったり
気付いたら母とシリウスの姿がなくて
小さな居間でふたりを見つける
背を向ける彼は気づかない
苦し気に零れる言葉は 聞けなかったシリウスの本音
背中からぎゅっと抱きしめる
ーそんなことない

驚いたように跳ねる肩に手を置いて
側にいてくれてありがとう あなたがいてくれて嬉しい
言葉には力が宿るのですって
あなたを縛った酷い言葉は これで打ち消したわ
リチェのおまじないよ 効きそうでしょう?
向けられた彼の笑顔に息をのんだ後 自分も笑顔
ラニ・シェルロワ ラス・シェルレイ
女性 / 人間 / 断罪者 男性 / 人間 / 拷問官
2 シィラという少女について

帰る故郷はきれいさっぱり消えてますっと
家族、家族ねぇ…あたしのお母さんはいないしなぁ
そういやラス あんた今更だけど「実家」はいいの?
…あー(言葉を聞いて気まずそうに
え?シィラ?あたしが小さい頃からあの姿よ
あの姿で、ずっと年上
エレメンツだったんじゃない?

そういえばそんなこと言ってたわね…
教団と何かあったのかしら 昔の教団ってまっくろくろすけだったみたいだし
よく考えたら あたしもそんなに知らない
自分のことはあんまり話してくれなかったし
…そうね だって連れて行くつもりだったって
よっぽどのことがあったのよ、きっと

例えば浄化師だったとか?んな訳ないかー!
あと考えられるのは…まさかね
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
【目的】
1.クリスの実家へ
「履歴第55話」にて見えたアリシアの過去にいたクリスの父親
その話を聞きに行く

ア:以前見えたクリスのお父様…
私を知ってる、のでしょうか…

私が悪魔と、呼ばれたことや
姉が…狂気をはらんだ人々に…突っ込んでいったこと…

ク:もしかしたら良いことではない可能性もある
何があっても良いようにアリシアを支えないと

【話を聞いた後】
ア:私の本当の姓はカートライト…お姉ちゃんの名はエルリア…
遺体は、見つからなかった、のですか…

ク:教団に頼んで捜して貰おう
アリシアのように記憶を失ったまま生きてる可能性だってある
希望の光はまだ消えてない

ア:もし、本当に、お姉ちゃんが生きてるなら…会いたい、です…
ルーノ・クロード ナツキ・ヤクト
男性 / ヴァンピール / 陰陽師 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
■2
ナツキの親族・血縁者を捜索する
両親は既に亡くしていてもその他の親族や血縁者がまだ存命かもしれない、とルーノが提案した為
ルーノの方がより積極的に行動を起こし、始めは降って湧いた親族探しに戸惑っていたナツキも意欲を見せる

ナツキの母親がニホンの着物を着ていた事から、ニホンの出身か、もしくは何らかの関わりがあると推測する
ニホンに当たりを付けて聞き込みと資料から情報収集を行う
セパル、ウボー、セレナにナツキの母親の形見である根付けを見せ、似た物をどこかで見たことがないか聞いてみる

ナツキ:や、やっぱ手掛かり少なすぎねぇか…?
ルーノ:しかし全くゼロでもない、教団が協力してくれるこの機会を逃す手はないだろう
サク・ニムラサ キョウ・ニムラサ
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い 男性 / ヴァンピール / 陰陽師
【行動】2
サクラ
強いかったわぁ
真面目で丁寧
悪く言えば神経質だと思う
髪の長さは私くらい。顔はー、キョウヤをかなり真面目にした感じ。
キリッとしててカッコいいわ。間違ってもぼんやりはしてない
古いからあてにならなえっ?
そうだったかしら?まあいいや。
不思議な所もあったからねービャクヤ兄は

キョウ
親友は候補にも入っていませんでしたか(小声)
何も言ってませんよ何もー!
兄様強い方です
実はちょっと髪型も似せたりしています
そうですね、ぼんやりなんかしてないです
穏やかでいつも誰かの考えていました
自分の情報が一番新しいかと
え、出て行った後また戻ってきましたよ
おかしいな。サクラに会ったと言っていましたよヤシェロ兄様
アルトナ・ディール シキ・ファイネン
男性 / 人間 / 断罪者 男性 / エレメンツ / 悪魔祓い
ラ:貴方がアルトナ君ね?
 シキ母ライラに名を呼ばれ眉を顰め
俺を知って…?
ラ:貴方の養父の『ツェーザル・ディール』君。うちの魔術師だったの。エレメンツでブロンドの髪、翠の瞳。忘れもしないわ
村がベリアルに滅ぼされたと聞いたから貴方達親子が気がかりだったの
それが私達の末子のパートナーだなんて
 世間は狭いわ。と、ふんわり笑むライラ
その話はまたの時でいい。仕事の話を始めてくれ(シキ父ヒューベルトに目を向け)
ヒ:話の分かる祓魔人で安心した。では、始めるか

 二人に案内され、ベリアルが出現するという森に
ヒ:低スケールだ。お前達浄化師ならこれくらい簡単だろう?
 眼前には二体のベリアル

…赦しはしない
ベリアルはこの手で潰す
ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
お前達、そっちはどうだ?
今にも降り出しそうな空の下 花束を持って訪れたのは町はずれの共同墓地
血の繋がりこそ無いが間違いなく家族と呼べる仲間達が眠る場所
随分、間が空いてしまったな。俺はまあ、何とかやっているよ
そうそう。新しいパートナーが出来てな…
記憶が少し朧げになってきた仲間達の顔を思い浮かべ
一人で来たというのについ饒舌になってしまう
ひとしきり報告をして 来た道を戻りながら感傷に浸る

家族、か
俺といえば物心ついた時にはもうあのスラムにいた
ベリアルへの有効な対抗手段も確立されていなかった頃だ、俺みたいな親のいない子はさして珍しくも無かった
いまさら実の親への執着なんて沸きもしない


~ リザルトノベル ~

 家族との縁と絆を深め、あるいは過去の自身を知るための指令。
 参加した浄化師達は、それぞれ動いていた。

○決着への始まり
(ショーンの記憶……)
 指令に参加するに当たって、『レオノル・ペリエ』はパートナーである『ショーン・ハイド』の過去について考えていた。
(仮に本当に記憶喪失なら辛い思いをさせるし、嘘なら嘘で嗅ぎまわっている訳だから慎重に調べようか)
 まずは手掛かりとなる記録を調べることから始める。
「これが、ショーンの死亡記録、か……」
 今回の指令の協力者であるウボー達から渡された死亡診断書を手に取り、中身を確認していく。
 直接的な死因は恐らく背後からの発砲。
(他にも前頭部、額から右目にかけて殴打の痕、背後からめった刺しに……うわぁ)
 確認し推測する。
(よっぽど恨まれていた? でも――)
 レオノルは続けて、死亡診断書に添付されていた、生前のショーンを知る者達からの証言を読む。
「生前の評判は……シリウス君と仲良かった程度か……あとは真面目だけど目立たない青年で……」
 全てを読み終わり確信する。
「妙だね」
(彼は何でここまで没個性的でありながら、ここまで酷く恨まれたかのような殺され方をしたんだろう)
 何故なのか? 知らなければならない。だからこそ――
「……あとは本人に聞こうか」
 ショーンに話を聞きに行った。

「どうかしましたか? ドクター」
 教団施設の外れ。
 容易く入り込むことが出来、それでいて死角となるような場所。
 呼び出されたショーンは、レオノルに尋ねた。
「人祓いまでして、改まった顔をして」
 ショーンの問い掛けに、レオノルは全てを話した。
「私の死因を調べた……? ……え? 私が嘘をついている?」
 ショーン以外の誰かにも聞こえるようにレオノルは推測を口にする。
 それにショーンは返していく。
「……理由は、そうですか。
 生前と今の性格はほとんど変わっていないにもかかわらず、あまりに没個性的過ぎた、と……。
 なのに見せしめのような殺され方をしたから、と。
 根拠が薄いんじゃないですかね?」
 疑念を口にするショーンに、レオノルは書類の束を取り出し言った。
「証拠はここにあるよ」
「……え? 証拠を見せ……――」
 ショーンは書類を手に取ろうとして気付く。
「――ってしまっ……!!」
 いつの間にか現れた人物が、背後から銃口をレオノルに向けていた。
「ドクター! 狙われ……って!!」
 ショーンが動くより速く、レオノルは攻撃魔術で襲撃者の意識を狩り獲った。
 あまりの手際にショーンは気付く。
「おびき寄せたんですね。死後も私が監視されているって事実に気づいていたから。
 しかもこんなあっさりと倒して……! 貴女に危害が及ぶ可能性だってあるのに……!」
 ショーンの言葉に、レオノルは導くような笑みを浮かべ応えた。
「うん。君に教団以外の監視がいることを理解してたよ。
 もう偽る必要はない。
 君の二重スパイの仕事は終わりってことだよ。
 君が恐れているものと決着を付けに行こうよ」
 決着の始まりを口にした。 

○あなたを言祝ぐ
「邪魔だろう」
「邪魔じゃないわ」
 やわらかな笑顔を浮かべ『リチェルカーレ・リモージュ』は『シリウス・セイアッド』に応える。
 いま2人は、リチェルカーレの実家に向かう途中。
「家族は皆、シリウスのことが大好きよ」
 安心させるようにリチェルカーレは言葉を掛け続け、不安げに揺れる翡翠の双眸に笑いかけていた。

 しばし歩き、到着する。

「おかえり! おにいちゃん!」
 シリウスはリチェルカーレの弟妹に、満面の笑顔で迎え入れられた。
 嬉しそうに飛びついてくる2人を、シリウスは壊れ物を扱うようにそっと受け止める。
「……久しぶり」
 一瞬息を止め、シリウスは応える。
 その様子を、リチェルカーレの母親は見詰めていた。
 
 歓迎が終れば、幼い2人は久しぶりに帰って来た姉に甘えてくる。
 部屋に飾るサシェをねだられたリチェルカーレは、優しい笑顔で応えてあげた。
「先に新年用のプーケを作りましょう。手伝ってくれる?」
「うん!」
 手を繋ぎ、弟妹と一緒に作業に向かう。
 それを眩しげに見つめていたシリウスに、リチェルカーレの母親は声を掛けた。
「娘がご迷惑をかけていますか?」
 リチェルカーレに似た柔らかな声に、シリウスは目を見開く。
 そんな彼を優しく見詰めながら、彼女は続けた。
「それともシンティ達かしら。ごめんなさい、悪戯ざかりで」
 シリウスは慌てて首を振る。
「……迷惑なんて。そんなこと」
 優しい眼差しに、遠い日の母の姿が重なって、思わず本音が零れてしまう。
「――俺と関わると、皆死ぬんです」
 一度零れ出た言葉は止まらなかった。
「両親も、友人も。……子どもの俺を可愛がってくれた人も。
 お前が災いを撒くのだと、ずっと言われてきた。
 だから、貴女達といたら駄目だと」
 懺悔するような告白に、応えてくれたのは温かさ。
「――そんなことない」
 シリウスの苦しさに気付いたリチェルカーレが、背中からぎゅっと抱きしめる。
「側にいてくれてありがとう。あなたがいてくれて嬉しい」
 シリウスの心を守るように言った。
「言葉には力が宿るのですって。
 あなたを縛った酷い言葉は、これで打ち消したわ」
 そう言うと、迎え入れるような笑顔を浮かべる。
 リチェルカーレの言葉を繋ぐように、彼女の母親も言祝ぐように言った。
「リチェのおまじないよ。効きそうでしょう?」
 2人の言葉に、シリウスは憑き物が落ちるように力を抜く。
 そんな彼に、リチェルカーレの母親は言葉を贈る。
「いつでも帰ってきて。ここはもう、貴方の家ですよ」
 シリウスの心に、あたたかさが広がる。
「ありがとう」
 2人に応えるようなシリウスの笑顔に、リチェルカーレは息をのんだ後、笑顔を浮かべ応えた。

 その日シリウスは、リチェルカーレと彼女の家族と共に、穏やかな一日を過ごした。

○彼女の正体は?
「家族、家族ねぇ……」
 帰る故郷はきれいさっぱり消えていると応えながら、『ラニ・シェルロワ』は家族について問われ考える。
「あたしのお母さんはいないしなぁ。そういやラス。あんた今更だけど『実家』はいいの?」
 これに『ラス・シェルレイ』は、ラニと同じさばさばとした口調で返す。
「浄化師になっても何の反応もないんだ。向こうは死んだとでも思ってるんだろ。戻りたいとも思わないしな」
「……あー」
 返事を聞いて気まずそうにするラニに、ラスは続けて言った。
「それよりシィラのことなんだが――」
 当時を思い出しながら続ける。
「思い返せば、初めて出会った時から姿が変わってなかったような……」
「え? シィラ? あたしが小さい頃からあの姿よ。あの姿で、ずっと年上。エレメンツだったんじゃない?
 でも……そうね、よく考えたら、あたしもそんなに知らない。自分のことはあんまり話してくれなかったし」
 ラニの応えに、ラスは記憶を掘り起し返した。
「シィラ、あの時言ってたじゃないか。

 ――教団に連れていかれるなら連れて行こうと思ってた、って。

 どういうことなんだろう?」
「そういえばそんなこと言ってたわね……教団と何かあったのかしら? 昔の教団ってまっくろくろすけだったみたいだし」
 ラニは当時を思い出し、考え込むように言った。
「……そうね。だって連れて行くつもりだったって。よっぽどのことがあったのよ、きっと。
 例えば浄化師だったとか? んな訳ないかー! あと考えられるのは……まさかね」
 ラニは、同室している魔女のセパルを見て言葉を濁す。
 それを引き継ぐようにラスは言った。
「……魔女? 確かに町一つヨハネの使徒諸共吹き飛ばすなんて、命と引き換えにとはいえ……。
 他の魔女の人は何か知ってるか?」
 これにセパルは応えた。
「話を聞いた限りだと、2人が住んでいた場所の近くには魔女は居なかった筈だよ」
「……そんな『魔女』はいない、か」
 考え込むラスに、セパルは続けて言った。
「魔女じゃなかったとしても、関係ないとは限らないけどね」
「どういうこと?」
 ラニの問い掛けにセパルは応える。
「魔女の禁術を伝える一族の可能性もあるよ。命と引き換えにしたなら、ありえるし。
 そうでなかったら、カルタフィリスみたいな人を超える魔力を持った子だったのかもしれないね」
 真相は闇の中。
 だが、知りたい。できれば、彼女に何があったのか。
 2人は調査を託し、その日は寮に戻るのだった。

○彼女の過去
「以前見えたクリスのお父様……私を知ってる、のでしょうか……」
 指令を受け『クリストフ・フォンシラー』の実家へと向かう道中、『アリシア・ムーンライト』は不安を滲ませ呟く。
「私が悪魔と、呼ばれたことや、姉が……狂気をはらんだ人々に……突っ込んでいったこと……」
「安心して」
 クリストフは、不安を滲ませるアリシアの手を、そっと繋ぎ、安心させるように柔らかな声で言った。
「なにがあっても、一緒だから」
「……はい」
 アリシアは繋いだ手を静かに握り返し、幾分落ち着いた声で応えた。
 そんな彼女を見て思う。
(もしかしたら良いことではない可能性もある。何があっても良いようにアリシアを支えないと)
 クリストフは決意した。

 そして実家である農村地帯唯一の診療所に辿り着き、クリストフの父親に会う。

「エルリア? いや、アリシアの方か? クリスのパートナーがまさか君だったとは」
 クリストフの父親は、アリシアを見て驚き、続けて言った。
「アリシアは二つ隣、もう無くなった集落の長の次女。私は長の主治医だった。
 姉のエルリアは時々うちに遊びに来ていて、クリスと仲が良かったが、覚えてないか?」
 クリストフの父親は、アリシアの家族について話し続ける。
「アリシアが祓魔人となった際、集落が使徒に襲われ、恐怖に狂った人々がアリシアを悪魔の子として断罪しようとしたんだ。
 そして家に火を掛け、その火が村中を焼き尽くし滅びた」
 クリストフの父親は、当時の凄惨な過去を思い出し、苦しげに言った。
「私が気付いた時には、火の中からアリシアを助けるのが精一杯だった。
 記憶を失った彼女の安全を考えると教団に預けるしかなかった」
 沈黙が落ちる。
 クリストフの父親から聞かされた事実を、アリシアとクリストフは噛みしめるように受け止めていく。
 短くない時間が過ぎた後、アリシアは呟いた。
「私の本当の姓はカートライト……お姉ちゃんの名はエルリア……」
 そして、縋るような想いで尋ねた。
「お姉ちゃんは、どうなったのですか?」
 この問い掛けに、クリストフの父親は視線を合わせ応えた。
「エルリアの行方は分からない。遺体は見つからなかった」
「遺体は、見つからなかった、のですか……」
 不安と共に、僅かな希望を抱きながら、アリシアは呟く。
 その声の響きに込められた想いに、クリストフは気付く。
 だから、言った。
「教団に頼んで捜して貰おう。アリシアのように記憶を失ったまま生きてる可能性だってある。
 希望の光はまだ消えてない」
「……はい」
 アリシアは、涙が溢れそうになる自分を必死に抑えながら応えた。
「もし、本当に、お姉ちゃんが生きてるなら……会いたい、です……」
 叶うかは分からない。
 だが彼女の想いを受け、教団及び魔女、そして冒険者の伝手を使い、捜索が始まった。

○家族の手掛かり
 家族を探す手助けを教団がしてくれるかもしれない。
 この千載一遇の機会に『ナツキ・ヤクト』の親族や血縁者を捜索するべく、『ルーノ・クロード』は手掛かりとなる物は無いかナツキに聞いた。
 全てを聞き終え考え込むルーノに、どこか及び腰でナツキは言った。
「や、やっぱ手掛かり少なすぎねぇか……?」
「しかし全くゼロでもない」
 返事は即座に。
「教団が協力してくれるこの機会を逃す手はないだろう」
 やる気をみせるルーノに、ナツキは驚く。
 しかしすぐに、笑みを浮かべ返した。
「……そうだよな、今を逃したら見つからないかもしれない。少しでも何か情報見つけねぇと!」
 積極的なルーノにナツキは感化され、意欲を見せていく。
 2人は、ナツキの母親がニホンの着物を着ていた事から、ニホンの出身か、もしくは何らかの関わりがあると推測。
 ニホンに当たりを付けて聞き込みと、資料から情報収集を行う。
 情報収集を行う中で、ルーノは思う。
(出過ぎた行動かもしれないが、親族がいるなら会わせたい)
 その思いは、自分の身の上も反映されているのかもしれない。
(……ナツキの場合は私と違って、拒絶されて離れた訳ではないのだから)
 懸命な思いを抱きながら、2人は調べていく。
 その中で色々と事情通のウボー達に尋ねてみる。
「これは、ナツキの母親の形見なんだ」
 ルーノは、以前ナツキの故郷で渡された犬の根付けを手渡す。
「似た物をどこかで見たことがないだろうか?」
 これをセパル達3人は静かに見つめた後、それぞれ口を開く。
「前に、見たことがあるな」
「ドリーマーズ・フェスじゃない?」
 ウボーとセレナは、浄化師達の協力も得てニホンで行われた祭りを口にする。
 そこでは各地の物産を集め展示することも行われていたのだが、そこで目にしたと説明した。
「それってどこで作られたもんなんだ!」
 身を乗り出さんばかりに聞いてくるナツキに、セパルが応えた。
「昔は、ムサシの国って呼ばれていた辺りだよ。今はエド幕府直轄地だね。
 大口真神っていう狼の八百万の神を信奉している一族が居るんだけど……」
 そこまで言うとナツキに尋ねる。
「ナツキくんって、名字は『ヤクト』なんだよね?」
「ああ、そうなんだけど……知ってるのか?」
「ん~、確証は無いんだけど、そういう名前の一族が居たんだ。八狗頭、いや、他の名前だったかな?
 でも今だとあそこは、分家筋の斉藤家が武士団として取り仕切ってる筈だし……ん~?」
 100年以上前に、ニホン各地を放浪していたセパルは、当時の記憶を引っ張り出して考え込む。
 そんなセパル達に、ルーノは言った。
「調べて欲しい。頼む」
 申し出を受け、調査に動くセパル達だった。

○兄を探して
「誰を探しますか?」
 弟である『キョウ・ニムラサ』の問い掛けに『サク・ニムラサ』は応える。
「え、兄以外にいる? やっぱり恋人がい――」
「いません!」
 慌ててキッパリ否定するキョウに、くすりとサクラは笑みを浮かべ言った。
「じゃあ決まりね。手伝ってもらいましょう」
 これにキョウは小声で呟く。
「親友は候補にも入っていませんでしたか」
「あら? 何か言ったかしらー?」
「ふぁひも、ひってまへんーっ」
 むにゅりとキョウの頬を摘まんで笑顔で引っ張るサクラは、そのまま歩き出す。

 かくして弟は姉に連れられて、捜索協力をしてくれるセパル達の元に。

「2人のお兄さんって、どんな子なの?」
 手掛かりを尋ねるセパルに2人は応えていく。
「強かったわぁ」
「兄様強い方です」
 誇るように、2人は兄について語り出す。
「性格は、真面目で丁寧。悪く言えば神経質だと思う」
「穏やかで、いつも誰かのことを考えていました」
「顔はー、キョウヤをかなり真面目にした感じ。キリッとしててカッコいいわ。間違ってもぼんやりはしてない」
「そうですね、ぼんやりなんかしてないです」
 2人は丁々発止に小気味良く、兄について語る。
 ここまでは、2人の語ることは同じ。
 けれどその先は違った。
「髪の長さは私くらい」
「髪型は、自分みたいな髪型です。実はちょっと髪型も似せたりしています」
「えっ? そうだったかしら? まぁ、私の情報は古いからあてにならないかも」
「自分の情報が一番新しいかと。出て行った後、また戻ってきましたよ。その時に――」
 続けて話す内、決定的な差が出て来る。
「私と会ってる? 会ってないわよ?」
 驚くサクラに、キョウは不思議そうに返す。
「おかしいな。サクラに会ったと言っていましたよ、ヤシェロ兄様」
「そうだったかしら? まあいいや。不思議な所もあったからねー、ビャクヤ兄は」
 2人の話を聞き終り、セパルは言った。
「なるほど。そういう子なんだ、ビャクヤくんは」
 くすりと笑みを浮かべ言った。
「誰かのために動ける強い子で、そのために必要な嘘なら、つけるんだ。となると――」
 居そうな場所の候補を上げる。
「生きていく糧を、誰かのために動いて手に入れられる場所に居そうだね。
 となると、冒険者みたいなことをしてるか、十分な強さがあれば、神選組に居るかも」
 八百万の神に選ばれた護国志士のことを言い、続けて言った。
「まずはその線で探してみるよ」
「お願いするわぁ」
「頼みます」
 セパルに頼み、その日は寮に戻る2人だった。

○帰郷は過去を知ることの始まり
 指令でパートナーと共に実家に訪れた『シキ・ファイネン』は、緊張した声で両親に帰郷を告げた。
「父様、母様。お久しぶりです」
 聞くなり、父であるヒューベルトは言った。
「仕事の話をするぞシキ」
 そこに母であるライラが、やんわりと間に入るように続ける。
「失礼よ? お友達もいるのだから――
 貴方がアルトナ君ね?」
 ライラは『アルトナ・ディール』に視線を合わせ名前を呼んだ。
「俺を知って……?」
 名を呼ばれ眉を顰めるアルトナに、ライラは続ける。
「貴方の養父のツェーザル・ディール君。うちの魔術師だったの。
 エレメンツでブロンドの髪、翠の瞳。忘れもしないわ。
 村がベリアルに滅ぼされたと聞いたから貴方達親子が気がかりだったの
 それが私達の末子のパートナーだなんて。世間は狭いわ」
 ふんわりと微笑むライラに、アルトナは過去を思い出したのか目を伏せる。
 そんなアルトナを見たシキは、小さく声を上げる。
「え……ツェーザルさんの子供って……」
 疑問の声を上げるシキを遮るように、アルトナはヒューベルトに視線を向け言った。
「その話はまたの時でいい。仕事の話を始めてくれ」
 これにヒューベルトは、面白そうに目を細め返す。
「話の分かる祓魔人で安心した。では、始めるか」
 言うなり、振り返ることもなく現場に向かう。
 即座に後を追うアルトナ。
 シキは慌てて、2人について行く。
(アルのことは気になるけど、今は浄化師として戦わないと)
 意識を切り替え2人に追い付くと、べリアルの出没する森へと辿り着いた。
 ヒューベルトに案内され奥に進むと、2体のべリアルを見つける。
「低スケールだ。お前達浄化師ならこれくらい簡単だろう?」
 そう言うと、シキに視線を合わせ言った。
「メイナードはつまらんが、お前はどうだろうな」
 金の双眸が細められ、口角が上がった。
(父様が笑った……? けど、やっぱメイナードに厳しい)
 父の真意は分からない。けれど、どうするべきかは分かる。
(父様が見てる。下手したら後で怒られるヤツ。ちょーこわ……)
 失敗するわけにはいかないシキが、アルトナに視線を向けると、殺意に滾る視線に気づく。
「……赦しはしない。ベリアルはこの手で潰す」
「アル。落ち着いて、な?」
 シキはアルトナが冷静に戦えるよう声を掛けながら、背中に向けられる父の視線を痛いほど感じる。
(俺も落ち着いて戦わないと)
 幸い、戦闘は既に経験している。
 その経験を活かし、積極的に前に出るアルトナを援護射撃し、危なげなくべリアルを倒した。
「戦えるようだな」
 2人の戦いを見ていたヒューベルトは2人に近付き言った。
「戻るぞ。今日は泊まっていけ」
 そう言うと、1人で進み出す。
 アルトナは戦いの熱を醒ますようにしばらくその場に居たが、後を追う。
 そんな2人について行くシキだった。
 家に戻るとライラお手製のシチューを食べ、その日はゆったりと過ごすのだった。

○過去と現在(いま)を語らう
 曇天の冬空を頭上に仰ぎながら『ベルトルド・レーヴェ』は町外れの墓地にいた。
 今日は『ヨナ・ミューエ』は傍に居ない。
 持参した花束を供え口を開く。
「久しぶり。俺はまあ、何とかやっているよ」
 血の繋がりは無い、けれど間違いなく家族と呼べる仲間達が眠る場所で語り始めた。
 それはいつもより若い口調で。いつもより饒舌に。
 記憶が少し朧げになってきた仲間達の顔を思い浮かべ、当時の自分と同じように喋り続けた。
 想い出ではなく、現在(いま)を語る。
 自然と、ヨナのことが多くなっていった。
「そうそう。新しいパートナーが出来てな……」
 語る声の響きは柔らかく、それでいて楽しげに。
 いまを生きる喜びを過去(かぞく)に伝えるように、ベルトルドは語り続けた。

 ベルトルドにとって家族とは、過去である。
 それは顔も知らない実の両親ではなく、ベリアルへの有効な対抗手段も確立されていなかった頃、スラムで孤児として共に生きた仲間達。
 彼ら、あるいは彼女達との想い出を、忘れた訳でも無くした訳でもない。
 血肉として、この身と魂に刻まれている。 
 だがそれだけに、身近にあり過ぎて、気付くことが出来ない時もある。
 過去(かぞく)があり、現在(いま)がある。
 そのふたつは断絶しているのではなく、繋がっている、と。
 だから、現在(いま)、ベルトルドは家族(かこ)が眠るこの場所に来ている。
 ヨナを、あるいは教団の誰かを。
 いまを共に生きる皆のことを、かつて共に生きた過去(かぞく)に伝えるために。

「……雪、か」
 ふと気付けば、はらりはらりと、冬空から雪が舞い落ちる。
 周囲を見れば、積もるほどではなく、けれど融けることなく、まばらに白が散っている。
 随分と、語り込んでしまったようだ。
(ヨナなら、こういう時、なんて言うかな?)
 過去から、現在(いま)に引き戻るように、ベルトルドはヨナの顔を思い浮かべ苦笑する。
「また来るよ」
 過去(かぞく)との別れは、笑顔を浮かべ。
 来た道を、静かに戻る。
 降る雪は、その強さを少しずつ増していった。
「しまったな。まだ向かう先があるのに」
 それは、もうひとつの家族である師の墓。
 ここからそう遠くはない。
(ああ、でも……)
 ふと思い、笑みが強まる。
(雪見酒が出来るからちょうど良い。なんて言いそうだな)
 だとすれば、酒のひとつでも持ってくれば良かっただろうか?
(まぁ、また来た時に持って来よう。向こうにも行く事だし)
 師の娘である彼女に、久しぶりに会いに行くと伝えてある。
 彼女の所なら、師の好きな酒もあるだろう。
(さて、どんな顔で迎えて貰えるだろうか)
 過去に現在を伝え、未来を楽しみにしながら、ベルトルドは歩き続けた。

 かくして浄化師達は絆を深める指令を遂行した。
 それを更に深めるために次なる指令に繋ぐかは、またのお話。


縁と絆を深めて・その1
(執筆:春夏秋冬 GM)



*** 活躍者 ***

  • リチェルカーレ・リモージュ
    どんな時でも、側にいる
  • シリウス・セイアッド
    …何が正解なのか、わからない。

リチェルカーレ・リモージュ
女性 / 人間 / 陰陽師
シリウス・セイアッド
男性 / ヴァンピール / 断罪者




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2019/12/20-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[6] ナツキ・ヤクト 2019/12/27-23:35

よーう、みんなよろしくな!

にしても、家族かぁ……
探してみるとか会えるかもとか、正直考えた事もなかったな(期待半分困惑半分、頭をかいて首をかしげる)  
 

[5] サク・ニムラサ 2019/12/27-22:12

他の家族も探してみないとねぇ。
サクラとキョウよ。よろしく。  
 

[4] シキ・ファイネン 2019/12/27-06:56

 
 

[3] クリストフ・フォンシラー 2019/12/26-21:24

家に帰れる日を待っていたんだ。
これでやっと、アリシアの事を親父に聞ける……

ああ、クリストフとアリシアだよ。
みんな、家族との再会が良い物になるといいね。  
 

[2] リチェルカーレ・リモージュ 2019/12/26-20:21