~ プロローグ ~ |
東方島国ニホンでのお正月。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |

~ ゲームマスターより ~ |
明けましておめでとうございます。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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サクラ:セリと七草という草を見つけるのでしょ? キョウ:話を聞かずに何をやっていたのですか? サクラ:キョウヤを見ていたわよ。 キョウ:耳を傾けてやって下さいよ…… サクラ:冗談じゃないのに。 【行動】 サクラ そういえばニホンにきてから楽しそうね。 他には? 嬉しいかと聞かれれば嬉しいけど見つけた時どう反応すれば良いかわからないわぁ。 いつも通りって言われても……私達変わりすぎたでしょう? あ、面白い草がある。 キョウ まあ楽しいですね。甘味が多いですし。 ヤシェロ兄様がいるらしいからかもしれない所とか。 サクラは嬉しくないの? わからないなんて珍しい事言いますね。いつも通りにすれば良いのに。 あ、その草だめです。 |
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食べれる草… ふと 自分の親がこういうものに詳しく 色々教えてもらったことを思い出し アンタは鍋とか食器とか調達してくれ でかい木の皮剥いで加工して枝で固定しろ 鍋も食器ももうそれで 俺らの手元には米と塩とセリしかない サバイバルで合ってる シキ ひとまず俺の言うようにやってくれ こんなもんか 水は…太陽に晒せば川のでも飲めるけどもう沈みかけだし煮沸させるか、その前に火だな 夜 七草粥って…こんな和風なもんなのか…?(実物を知らないので不安) …訊いても良いか なんでアンタは契約直後から俺にくっつくんだ はあ? それが理由か…? 一目惚れ…アンタな は? 好きにって まあ アンタにそういう所あんの分かってるし 今更驚かな、 抱きつくなって…! |
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ステラ:いつもマーにうまい料理食わせてもらってるからな、逆にマーに作って喜ばせてやるんだ だからマーの力を借りずにオレ一人でななくさを集めるぞ! お、広くてあったかいところを見つけたぞ! このちっこい葉っぱ見たことあるな……確かマーがさんどいっちぃとかいうのに乗っけてる…… パセリ……そう、パセリだ あ!せりはパセリのことだったのか!おーオレ頭いいなー お?こっちにあるはなんだ? 面白いかたちのねっこだなー、たぶん珍しいやつだろ! ねっこはからだにいいって聞いたことあるぞ、マーもやくぜんってのに使ってたっけ 集め終わったらマーと合流してオレが料理するぞ マーが水を入れた鍋にオレの魔術で火をばばーだ! マー喜ぶかな! |
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~ リザルトノベル ~ |
● 「セリと七草という草を見つけるのでしょう?」 ニホン支部を出る前に、鍋と皿を借り支給された米と塩を、その灰色と紫の瞳で『どうすれば良いの?』と言いたげに見ている『サク・ニムラサ』。 「話を聞かずに何をやっていたのですか?」 一方、支部でしっかりと説明を聞き、セリを持ちサクラの言葉にやや驚きと、少しの呆れの瞳で、サクラを紫と漆黒の瞳で見つめているのは『キョウ・ニムラサ』。 「キョウヤを見ていたのよ」 サクラは面倒な話より、キョウを見ているほうが良いと本気で思っている。 「耳を傾けてやって下さいよ……」 本当に何も聞いていなかったのかと、サクラを見ながら心配になるキョウ。 「冗談じゃないのに」 ――余計に悪いと思う。 指定された山中は、木とも草ともつかない植物が溢れている。 そんな山深い場所を歩きながら、サクラは最近キョウが元気になったと考え見ていた。 「そういえば、ニホンに来てから楽しそうね」 「まあ楽しいですね。甘味が多いですし」 弟が元気な事は、姉としては喜ばしいこと。でも……。 「他には?」 サクラの追い打ちに、少し考えキョウは口を開く。 「ヤシュロ兄様がいるらしいかもしれない所とか。サクラは嬉しくないの?」 逆にキョウに聞かれ、ほんの少しだけ戸惑うサクラ。 「嬉しいかと聞かれれば嬉しいけど、見つけた時どう反応すれば良いかわからないわぁ」 「わからないなんて珍しい事を言いますね」 あまり話さなかった兄の話が出来て、キョウはちょっと嬉しいが、消極的な事を言うのは、サクラらしくないとも感じてしまう。 「いつも通りにすれば良いのに」 キョウの言葉にサクラは、 「いつも通りって言われても……。私達変わりすぎたでしょう?」 自分達は浄化師。兄の事はセパルが言った『冒険者か神選組』に居る可能性。 シャドー・ガルデンの時とは違う、変化してしまったそれぞれの立場。 「変わってしまったかもしれませんが、ヤシュロ兄様ですから絶対に自分達の事を受け入れてくれます」 「そう? そうね、ビャクヤ兄ですもの」 幾年月、幾つもの国を渡ろうとも兄弟の絆は変わらない、そう思いたいキョウ。 そんなキョウの思いなど知らないように、サクラは目の前にある草を見てしゃがみ込んだ。 「あ、面白い草がある」 目の前の怪しい草を見て、キョウはすぐ毒草だと気づく。 「あ、その草はだめです」 危険だからとサクラを止めるのだけど聞いてくれない。 「赤色がいいわぁ」 草……というのか、イチゴに似たような実をつけた植物。 野イチゴに似ているが、これはヘビイチゴという毒のある山の野草。 「あっちにも。この花の茎なんて美味しそうよ?」 「どうして不正解ばかり選ぶのですかサクラ?」 ヘビイチゴ、トリカブト、ビャクタン。 どれも猛毒を持つ草ばかりを見つけ刈り取るサクラと、危機感だけが増すキョウ。 「大丈夫よぉー。食べれば何とかなるわ」 「食べたら毒に当たります」 サクラに任せると危ない。そう感じたキョウは、残りの植物を探す。 ニラと間違い、スイセンを収穫しているとは気づかないで……。 「火、ないわね?」 かなり怪しいが六種類の草を集め、七草粥を作ろうと枯木も集めて来た。 ……が、火おこしする道具を持って来なかった事に気づくサクラとキョウ。 「どうしますかね……。サクラ、ショットライフルの銃弾をバラして、火薬で火を点けたほうが良いです」 「その手があったわぁー」 手早く銃弾を一つ抜き、中の火薬を木にかけた後、銃の引き金を引いた摩擦熱により、火薬から木へと火が燃え移る。 「これで調理が出来ます」 「水は鍋に入れて来ているもの、お米と草を入れれば良いのよね。……ほーーれ!」 ポイっと、全ての材料をサクラが鍋の中に放り投げた。 「ああ! まだ毒味もしていないのに!」 サクラを止めようとしたキョウだが……時既に遅し。 材料は全て鍋の中に収まってしまっている。 「これに塩を入れて……ほら、これで良いわ」 煮立つ鍋を覗けば普通のお粥と……七草粥というものを見た事がないキョウにはそう見える。 「……食べてみますかサクラ?」 「ええ、美味しそうよ?」 ――本当に美味しいのか? 皿に盛り付けた、サクラとキョウの七草粥。 互いにスプーンですくい上げ、一口食べてみた。 「……あ、あまり美味しいものじゃないわね」 その味は苦味と雑味と、謎の口内に残る食感。 「サクラ……舌がピリピリしませんか?」 「痺れ……というよりも……」 話の途中で、言葉が切れてしまったサクラ。 キョウも、痺れふらつく体を何とか動かしサクラを見れば、 「サ、サクラ!?」 完全に意識が飛んでいるサクラの姿がそこにあった。 「こ……こんな時は」 キョウは慌てて呪符を取り出し力を込める。 「……四神浄光」 やっとの思いで発動させた浄化の符。 毒消しならばこれで良いはずと、サクラと自分の体を確かめながら待つこと数分。 「……?? どうかしたのキョウヤ?」 「……良かったです」 食べる前と全く同じ雰囲気のまま。どうやらサクラには気を失った記憶が無いよう。 「七草粥はここまでにしませんか?」 (これ以上は、どちらの身も危ないです) 「もう少し食べたかったのに」 「だめです」 食べられたら適わないと、さっさと鍋を片付け始めるキョウ。 サクラは、『そこまで嫌がらなくても』などと言っているが、キョウは一切聞こえない振りを貫き通した。 「まあ良いわ、今夜はここで野宿。こうして何もないのに、キョウヤと星を眺めるのはいつぶりかしら?」 「指令の時は沢山ありますが、シャドー・ガルデンを出てからを考えると、ほとんど記憶にはないです」 山中から見上げる空は満天の星。 揃って寝転がりながら、自分達のためだけにあるような星空を堪能。 「……こんなのも良いわぁー」 そうサクラは言ったが、キョウは疲れきり、ぐっすりと眠りに入ってしまっていた。 ――教団員記録。 七草粥、中身。 ハコベラ、ホトケノザ、ビャクタン、トリカブト、ヘビイチゴ、スイセン。 なお、毒は自分達で解毒した模様である。 ● 「食べられる草……」 その時『アルトナ・ディール』の脳裏に、自分の親がこういうものに詳しく、色々と教えて貰った事を思い出していた。 「俺が草を採取するから、アンタは鍋と食器とか調達してくれ」 「なになに? 俺って作業系?」 サバイバルナイフを取り出し、自分もアルトナと採取に行きたそうな『シキ・ファイネン』。 「でかい木の皮を剥いで加工して枝で固定しろ。鍋も食器も、もうそれで出来るだろう」 淡々と役割分担をするアルトナ。 記憶が正しければ、この方法で上手くいくはずと考える。 「俺らの手元には、米と塩とセリしかない」 アルトナの足元に置かれた、支給された数少ない物資。 「野宿だぜ? サバイバルじゃなく。なのにものはこれだけ」 見れば見るほど、野宿の装備ではないと思うシキ。と、そこに、 「サバイバルで合っている。俺達は必要なものを手に入れ揃え、快適に一夜を過ごす。シキ、ひとまず俺の言うとおりにやってくれ」 確信を得たようなアルトナの言葉に、シキは両手を上げ、おどけた仕草をみせた。 「まあ良いけどさ。勝算アリなんだろアル?」 「当たり前だ。道具は頼んだシキ」 「おう! 任せろだぜ」 アルトナは植物採取。 シキは手作りの道具を作る。 的確な分担作業の始まり。 (……にしても、アル詳しいな) 言われた通りに大木を探し出し、外側の皮だけちょいと拝借と、サバイバルナイフを上手く使い皮を剥いでみた。 「これを枝で固定?」 デコボコした部分を削ぎ落とした皮を、何重にも重ね枝で固定。 「水が漏れなきゃ良いじゃん。皿は丸めて底を潰せば大丈夫だろ」 綺麗に形を整えた鍋と皿を見て、シキはご満悦中。 アルトナは持って来た山菜図鑑を片手に、山中を探し歩く。 「葉がウサギのようなもの……。これはウサギの耳のことだろう」 ちょっとだけウサギの長い耳のような草を取り、図鑑と照らし合わせる。 「……当たりだな。ハコベラは見なくても分かるが、大根の葉とカブの根は探しにくいようだ」 名前こそ大層だが、全て身近にあるものとアルトナは認識。 「タンポポの葉に似ているホトケノザ、タンポポの亜科(あか)に属するか。これは広い意味で、もうタンポポだろう」 亜科とは、科と属の間に分けられる言葉。要はホトケノザもタンポポの一種ということ。 ――この世界の人間が、多種に分かれているのと同じ。 「あった。近くには大根……いや、これはナズナだな」 順調に草を集めるアルトナ。 しゃがみ込み、親とこうして草花について語り合ったのを思い出しながら、懐かしそうに残りの草も集めてゆく。 「これで全てだな。シキはどうなっているだろうか?」 六種類を集めきり、シキの元に戻ってみれば、火を使う準備は万端と草むらに寝転がっている始末。 「おおー! ルーくんが戻って来たぜ。どうだ、俺凄いだろう?」 「教えて行ったんだ、出来て当たり前と言うべきだと思わないかシキ?」 騒がしいシキと、冷静に返すアルトナ。 ――これが普通、仲の良い二人。 「水は……太陽に晒せば川のでも飲めるけど、もう沈みかけだし煮沸させるか」 火はアルトナが持っていたランタンで点け、辺りに米が煮立つ良い匂いが立ち込める。 「さっき川から直接飲んだけど、清んだ美味しい水だったし」 「飲んだのか? では大丈夫なのだろう」 「少しは信じてよアル」 「信じないとは言っていない」 「ほら、塩を入れないと」 「あ、ああ」 良い具合に米がお粥状になり、採取した草と塩を投入。 「七草粥って……こんな和風のものなのか?」 実物を知らないで、二人は教えられた通りに作っているだけ。 真っ白な米に草が混じったシンプルさが、アルトナの不安を煽る。 「どーだろ、聞いたことないし」 「これ以上どうにもならないのだから……食べてみるか?」 「お! やっと飯にありつけるぜ」 滑らかに潰した皿に盛り、互いに不安ながらも一口食べてみる。 「これはこれで悪くない」 思ったより普通の味に、ほっとするアルトナ。 「俺は好きだなー。シンプルだけど、ハーブ……じゃない、草の風味とか苦味が結構好みだぜ」 全ての草を引き当て、アルトナとシキの七草粥は満足のいくもの。 草が米がと言い合いながらも、すぐに完食してしまった。 お腹も満たされ、たき火だけを残しくつろぐ一時。 採取ついでに収穫して来た薬草茶を飲みながら、アルトナはある疑問を口にした。 「……訊いてもいいか」 「アルが俺に……!? やべ嬉し、何でも訊いて!」 訪ねられたアルは本気で嬉しそう。 少しだけ言いにくいアルトナだが、こうして二人きりというのは数少ないので、続きを口にする。 「なんでアンタは、契約直後から俺にくっついているんだ?」 それに対して、シキは予想外の真面目な表情。 「……何か気になったんだアルのこと」 あの不思議な感覚を、どう表現して良いのか分からず、シキは曖昧な答えになってしまった。 「はあ? それが理由か?」 理由にもならない理由に、思わず声を荒上げてしまう。 ……それがシキの火を点けると気づかずに。 「まさか……! アルトナきゅんに一目惚れ」 調子に乗ったシキ。だが、あながち嘘ではない。 あの時、一目で『アルトナ・ディール』という人物に興味を持ったのだから。 強烈に眉間にシワが寄っても、アルトナの美麗さは変わらない。 (ルーくん可愛いー!) 「……いやん、好きになっちゃいそ」 「は? 好きにって」 「えっ、俺口に……?」 思った事を、そのまま言ってしまったシキ。 でも、アルトナの口からは意外な言葉が出て来た。 「まあ、アンタにそういう所があんの分かってるし、今更驚か…………」 その言葉は最後まで続かず。 「何でアルは不意打ちがうまいの? もー! アル大好き」 遮ったのは、嬉しさいっぱいのシキの体。 そう、シキがアルトナに抱きついたがため。 「抱きつくなって……!」 「またまたー! アルトナきゅん!」 ……アルトナとシキの野宿は、好きオーラ全開のシキを止める、アルトナの攻防で終わりをみせた。 ――教団員記録。 七草粥中身、七種類全て成功。 特筆すべき事、特になし(多分)。 ● 鍋と皿の当てがないので、ニホン支部で借り山へとやって来た『ステラ・ノーチェイン』はウキウキ気分。 「いつもマーにうまい料理を食わせてもらってるからな。逆にマーに作って喜ばせてやるんだ」 張り切るステラを見て不安なのは『タオ・リンファ』。 「ステラ、私も手伝いますから……」 「マーの力を借りずに、オレ一人でななくさを集めるぞ!」 ――全く聞いていない。 当てもなく、どんどんと山中深くわけ入るステラ。 こんな時、猟犬のような瞳がキラリと光る。 「あ、広くてあったかいところを見つけたぞ!」 木々が少なく温かなこぼれ日が差す、しっかりとした場所を見つけた。 「良いところですね。見張らしも良いので、もし野生動物が襲って来ても冷静に対処出来ます」 「だろ、だろー! まってろ! オレがななつ全部集めてきてやるからな」 「あっ、ステラ待ってくださ……行ってしまいました。セリはもうここにあるのですが……」 タオが声をかける余裕もなく、ステラはもう遠くまで行ってしまっている。 「本当に大丈夫か……不安です」 手伝ってあげたい。 だけど、ステラはタオに頼らず一人で探す気満々。 ――どんな結果になるとしても。 一方、ステラは山の中を散策中。 「いろんな草があるんだな」 人の手が入っていないこの山は植物の宝庫。 食べられる草を探すステラの目に、見覚えのある草が飛び込んで来た。 「このちっこい葉っぱは見たことがあるな。確かマーが『さんどいっち』とかいうのに乗せている『パ』セリ。……そう、パセリだ」 野生のパセリを摘み取って、ステラはにっこり笑顔。 「あ! セリはパセリのことだったのか! あーオレ頭いいなー」 止める者が居ないステラ。その暴走は止まることを知らない。 「これも見たことがあるぞ! マーがお茶だと持って歩いていたんだ」 ……それはドクダミ。 「あー! そっちはネギに似てるだろー」 ……それはヒガンバナ。 次々と怪しい草ばかりを選ぶステラの才能。 だが、まだほんの序章に過ぎない。 「おー犬! オレと遊ぼう」 目先の草よりも、山中はうろつく二匹の野犬に興味を示し、警戒心の強いはずの野犬をなつかせ歩く。 「お? こっちにあるのはなんだ?」 かなり変わった二種類の草。形そして根は深そう。 「面白いかたちのねっこだなー。たぶん珍しいやつだろ!」 両方を引っこ抜いた時、ステラは強烈な悲鳴を聞かなかったのだろうか? 「ねっこは体にいいって聞いたことがあるぞ。マーも『やくぜん』ってのに使っていたっけ。……おい、どうした犬?」 ステラの側に居た犬が、倒れるように眠ってしまっている。 そう、ステラは知らない。この根がニホンオニマントラゴラと、その亜種であるラウラウネであることを。 犬達は、ステラの身代りに叫び声を聞き倒れてしまった。 「変なの。……ああ! このねっこに似た草がある。これもマーのところに持っていくんだ」 次にステラが見つけたのは……人面草。 人の顔に似ており、花も葉も毒性が高い。 「むっつ見つけたけどなー、あとひとつはなんだ?」 普通の草には目もくれず、その直情的な感性だけで草を選ぶ独特な方法。 そんなステラのお眼鏡に叶う草などそうはなく、とうとう山道まで出てしまった。 「どうしたのかねお嬢さん?」 村への帰りだった、優しそうな老人がステラ一人でこんな場所に居るのを不思議に思い声をかけてくれた。 「マーに料理をつくって食べさせてやるんだ!」 「それでこんな山の中に来たのかえ?」 「そうだ今日は野宿だぞ。だけど、あとひとつが見つからない」 探してもステラが『これだ』と思うものには出会わない。 「料理のう。そうじゃ、これなどはどうだ」 老人が取り出したのは……コンニャク。 「?? これ草かねっこか? 違うものだろ」 「いいや、これはコンニャク芋の根から作った、立派な植物じゃ」 プルンとした謎の感触にステラは驚くが、これが根だとすれば条件に当てはまる。 「これがいい!」 「一つ持っていきなされ」 コンニャクを手渡され、これで七種類集めたとステラはタオの元に急ぐ。 「マー! 集めてきたぞ!」 タオは待っている間に枯れ木を集め回り、綺麗な川を見つけたので、鍋に水を汲み戻って来たところ。 「さあオレが料理をするぞ。マーが水を入れた鍋に、オレの魔術で火をばばーだ!」 力任せに魔術を発動すれば、木は消し炭寸前。 「ちょっと失敗しただけだぞ」 それでも使えるので、調理はそのまま続行。 「どうしてこんな独特な草や根を見つけられるのでしょうね?」 タオが持っていた調理道具でドスン! と根を切るステラ。 一番頭を悩ませるのは、コンニャクをどこで調達したかのほう。……ステラは料理に夢中で教えてくれないが。 「出来たぞマー!」 「そ、そうですね」 鍋の中は……紫か赤かというほど凄まじい色と、異臭と言っても過言ではない、嗅いだだけで痺れるような匂い。 「マー?」 「食べましょう」 毒と気づいているのに七草粥を一口……。 みるみるとタオの顔色が青くなっていくのを、不安な気持ちで見つめるステラ。 「……正直言って、かなり酷いです」 「…………」 言われなくても、ステラだって分かっている。 作れば作るほど、危険な料理が出来上がってしまったのだから。 「しっぱいした……んだ」 落ち込むステラに向かい、タオはゆっくりと首を横に振る。 「失敗? いえ、ステラの目的通りなら大成功ですよ」 「でも!!」 「だって私は今とっても喜んでいますから。あなたが私のために初めて料理を作ってくれた、それが何より嬉しいんです」 そう諭した途端、タオは鍋を掴み抱え、中のお粥を一気に食べ出した。 「マー!?」 「ステラが作ってくれたものを、残すはずはないです」 無茶なのは理解している。でもステラのために食べてあげたいタオの想い。 「はあ……はあ……ごち、そうさまでした」 全て完食してしまったタオ。朦朧とする意識の中でステラに笑いかけ、 「ありがとうステラ」 (初めてあなたが料理を作ると言った事、私は忘れません) そう思いながら、数々の毒に堪えきれなく、その場に倒れ込んでしまった。 「マー! 返事をして! オレのせいでマーが!!」 獣のように大声を出し叫ぶステラ。 それに応えたのは……影から見守っていた教団員達。 即座に毒消しの処置を施し、これ以上は無理と判断。二人は山中に設えた仮小屋で一夜を過ごすことになる。 ――勿論、ステラは眠るタオから、片時も離れる事はなかった。 ――教団員記録。 七草粥中身。 パセリ、ドクダミ、コンニャク、人面草、ラウラウネ、オニマントラゴラ、ヒガンバナ。 なお指令続行不可能と判断、救助手当てする。
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*** 活躍者 *** |
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[5] サク・ニムラサ 2020/01/18-22:47
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[4] ステラ・ノーチェイン 2020/01/15-11:50
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[3] シキ・ファイネン 2020/01/15-05:41
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[2] シキ・ファイネン 2020/01/15-05:40
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