~ プロローグ ~ |
アルフ聖樹森の各地で、終焉の夜明け団が八百万の神を捕縛する作戦を遂行していた。 |
~ 解説 ~ |
〇目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、留菜マナです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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しまっ…ドクター! …どうすれば…?ドクター、何か笑ってる…? 賊に拘束された状況で思いっきり賊のつま先を踏んづけるドクターに唖然 とはいえぼうっともしてられん クリムゾンストックで顔面を殴って賊から解放するぞ ドクター…恥ずかしいことを思い出させないでください あれ、本当に痛かったんですから… 名前つけるのはいいんですが…なぜそんな名前を…? 可愛いから…? 俺達は夜明け団の一掃をするか スウィーピングファイアで巻き込むよう狙っていく とりあえず俺達の火力が高ければあいつらも俺達に注意が引くはずだろうさ お膳立ては終わりだ 後は好きなように動いてこい! |
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刃物が付きつけられていることに気づく え…? 低く響く彼の声に 今にも壊れそうな危うさを感じ ーシリウス待って!それ以上は駄目! 振り上げられた腕に縋って推し止める わたし 平気よ? だからもうやめて そんな顔しないで カノンちゃん この人の見張り、お願いできる? 魔術真名詠唱 禹歩七星を仲間に まず終焉の夜明け団の捕縛を 武器を捨てて投降してください わたし達の目的はこの森を 集落を守る事 あなたたちを殺す事じゃない 回復と鬼門封印で仲間の支援と声かけ 余裕があれば九字で援護 シリウス達とイヴルさん側へ カタリナさんの姿をした貴女は誰? カタリナさんじゃないわ カタリナさんじゃなくていいの 誰だって自分の好きな姿で 自由に話すことができるのよ |
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最初は怯えたように いやっ…トール、助けて…! …ふふっ、なんてね! トールをちらっと見て 喉元を切られないように拳を当ててガードし、背後の足を踏み 拘束が緩んだら思い切り肘を後ろに振り相手を突き飛ばし逃れて、距離を取る 哀れな負け犬さん、その程度の腕前じゃ、ダンスのお相手は無理ね! 後で詳しいお話を聞かせてもらうわ その後魔術真名詠唱 前衛に立ち味方に戦踏乱舞で支援してから 夜明け団の襲撃者優先で攻撃 夜明け団ができた真相を知れば、本当に哀れな人達 ある程度片付いたら、サクリファイスの方に向かう味方の援護 撤退しようとしてたらスポットライトで足止め カタリナやイヴルは無理でも他の一人くらいは捕まえて欲しいところね |
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! 不覚を取りましたか…… ステラ、私なら大丈夫です 合図でステラに隙を作ってもらい、そこを突き振り返り際三つ編みによる目潰しで怯ませ、そこから峰打ちで背後の敵を無力化します ドッペルには私に化けてもらい奴を監視してもらいましょう 終焉の夜明け団を狙って戦います。峰打ちや柄打ち等で殺さず無力化していきましょう、彼らは法の下に裁かれるべきです 後方の魔術士達には私はエッジスラストで一気に接近し距離を潰して攻撃しましょう ステラはクラッシュスイングで前衛の敵を後方へ吹き飛ばし巻き込むように戦います 着実に夜明け団の数が減ったらサクリファイスに向かう方と手分けしましょう 私はここで、残りの夜明け団を相手にします |
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リチェちゃんが、ドッペルちゃんに名前を付けたと聞いて 素敵だと思って、私もつけてみました ルウちゃん…どうでしょう? (捕まる方) だ、誰?離して、くださいっ このままじゃ、足手まといに… 思いっきり腕に噛みついて 怯んだ隙に慈救咒を 見張りは、ルウちゃんにお願いします、ね 魔術真名詠唱 終焉の夜明け団を捕縛するように 禹歩七星で皆さんの速力上げ 天恩天賜で回復 回復の必要がない時は慈救咒で攻撃 サクリファイスの方へ向かったら禁符の陣で拘束を試みて カタリナ、さん… ほんとにそっくり… イヴルさん、は、もしかしたら、カタリナさんを…… 私達は、仇… 大丈夫、分かってます 私は、むしろクリスが心配です 一人で背負わないで、ください、ね? |
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戦闘になれば危険ですから前には出ないでください 付いて来たドッペルにそう声をかけながらヨナの姿になって貰う 比較的安全と言われていたアルフ聖樹森にも終焉の夜明け団が… 以前メフィストにかの集団の成り立ちを聞き 彼らの未来に光は無いのを知っている サクリファイスにしてもカタリナの復活の為に大勢の同胞を犠牲にしようとしている それをいきなり相手に説いても到底理解されないでしょうし… それでも…とつい考えを巡らせていると不意を取られ振り向けが喰人が人質に いつの間に…っ いつでも攻撃できる構えを取りながらも ベルトルドさんがこうも簡単に背後を取られるだろうか疑問を感じ 相手に聞こえないようヨナドッペルに耳打ち |
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人質 っ… (気づけなかった…どう、するか…) そっとシキへ視線を向けると突然の発砲 ・団員が驚いて武器を離したらすぐさまシキの元へ お、おい 離せってシキ… …アンタ突然撃っただろ。それ止めろ アンタの言い分は分かった けど、もう少し周りを見てくれ 分かれば良い。とりあえず、 (先にこいつだ) ・団員が攻撃してきたら反撃はするが峰打ちで動けなくする→捕縛 ドッペ、ル? …いたのか 見ててくれるって? じゃあシキになれるか? アンタの顔が怖かったんで丁度良い ☆敵は捕縛(ただし深追いはしない)、自分たちは「終焉の夜明け団メイン」 ・捕縛した団員の見張りをシキ(ドッペル)に一任 ・アル:前衛 シキ:後衛 ・捕縛が狙いなので 峰打ちで攻撃 |
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終焉の夜明け団の討伐か捕縛って話だったのに同士討ち? え、サクリファイスも居る? うーん…潰し合ってくれるなら、どっちか潰れてから… …ひくり、と耳が音を拾う 動物ではない 仲間でもない それ以外の人物 第三者の足音 「…カグちゃん、後ろ!」 突然現れた様な人物に逡巡する 匂いも音もなかったと思ったの、に……弱っ! カグちゃんの肘鉄でダウンなの?! え、戦闘員じゃないの?あれ、ドッペル?? …あ、思わず大声で突っ込みいれちゃった… え、えーと、同行してくれたドッペルは僕の姿になって見張ってて それじゃ本来の仕事しようか 近くの終焉の夜明け団を死なない程度に攻撃するよ 終焉の夜明け団が粗方片付いたらサクリファイスも攻撃するよ |
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~ リザルトノベル ~ |
森を抜けた先にある平原では、激しい戦闘が行われていた。 指令対象である終焉の夜明け団の一団と、イヴル達、サクリファイスの残党達と終焉の夜明け団の離反者達が組んだ混成部隊との戦い。 周囲に唸る轟音。 いくつかに分かれた者同士が、互いが持つ信念と意思の下、ぶつかり合う。 緊迫した戦況下、様子を窺っていた浄化師達は予想外な出来事を目の当たりにしていた。 そして、彼らについてきていた霧の塊の存在――教団で保護されているドッペル達も同様に驚愕する。 「それ以上、動くな!」 「しまっ……ドクター!」 目の前に飛び込んできた不穏な光景に、『ショーン・ハイド』の表情は険しいものになる。 忍び寄っていた終焉の夜明け団の男が、『レオノル・ペリエ』に対して武器を突きつけてきたからだ。 「参ったなぁ……。でも、人の急所って沢山あるんだよね」 「……どうすれば……? ドクター、何か笑ってる……?」 レオノルの意味深な笑みに、ショーンは怪訝そうに見つめる。 その瞬間、拘束された状況で、レオノルは思いっきり男のつま先を踏んづけた。 「なっ!」 予想外なレオノルの行動に、ショーンは思わず唖然とした。 しかし、事態の急転を受けて、即座にクリムゾンストックで男の顔面を殴って彼女を解放する。 「――っ」 凄まじい衝撃に、男は苦悶の表情を滲ませながら意識を手放した。 「ショーンが、こないだクロゼットに足ぶつけて悶絶してるの思い出したんだよね」 「ドクター……恥ずかしいことを思い出させないでください。あれ、本当に痛かったんですから……」 レオノルの言葉に、ショーンは窮地に立たされた気分で息を詰める。 気を失った男の処置については、霧の塊でついてきていたドッペルに見張り役を頼むことで話が纏まった。 「らぷちゃんには、ショーンに化けてもらおうっと」 「名前つけるのはいいんですが……なぜそんな名前を……?」 ショーンが率直な疑問を述べると、レオノルは屈託なく笑った。 「らぷって可愛いでしょ」 「可愛いから……?」 どこか確かめるような物言いに、ショーンは疑問を呈した。 (らぷ) 名前を貰ったドッペル――らぷは、嬉しそうに何度も心の中で反芻する。 ショーンに姿を変えても、そのまま『らぷ』と名乗ってしまいそうな勢いだった。 パートナーを救出するべく動くのは、他の浄化師も同様だ。 「動くな!」 「え……?」 『リチェルカーレ・リモージュ』は、自らが陥っている状況に気づく。 いつの間にか、背後に回っていた終焉の夜明け団の男が、彼女に向かって刃物を突きつけていた。 「――その手を離せ」 男の武器が描く鋭利な軌跡を見ながら、『シリウス・セイアッド』は低く呟いた。 だが、男のその手が緩められることはない。 その瞬間、彼の怒りが沸点へと達する。 「聞こえないのか? その手を、離せと、言っているー!」 一気に距離を詰めたシリウスは、男が持つ刃物と彼女の間に自分の腕を割り込ませた。 「――くっ!」 怒気を孕んだシリウスは、リチェルカーレを庇いながら男を蹴り飛ばす。 後方へ吹き飛んだ男は木に激突し、そのまま気を失った。 シリウスは腕の傷も顧みず、怒りの感情に身を任せたまま、男に止めをさそうとする。 その姿に、今にも壊れそうな危うさを感じたリチェルカーレは悲痛な声を上げた。 「――シリウス、待って! それ以上は駄目!」 リチェルカーレは、男に対して振り上げられた腕に縋って押し止める。 「わたし、平気よ? だから、もうやめて。そんな顔しないで」 触れる体温とその優しい眼差しに、シリウスは我に返る。 「……怪我は」 「平気よ」 リチェルカーレの包み込むような温かい言葉が、シリウスの心に積もっていた不安を散らしていった。 シリウスは笑顔に詰めていた息を吐いて、平常心を取り戻す。 リチェルカーレは、霧の塊の状態でついてきていたドッペル――カノンに対して呼びかける。 「カノンちゃん。この人の見張り、お願いできる?」 「……カノン、俺に化けておけ」 「ああ」 二人の言葉に応えるように、カノンはシリウスへと姿を変えた。 ドッペル達は霧の塊で、今回の指令についてきている。 だが、既に自身の存在を伝えている者もいれば、内緒でついてきているドッペル達もいた。 「さあ、武器を下ろしてもらおうか?」 「いやっ……トール、助けて……!」 終焉の夜明け団の男の言葉に、『リコリス・ラディアータ』は悲鳴を上げた。 「リコ! ……くっ、分かった。武器を下ろす」 『トール・フォルクス』は男の要求に従い、ボウガンを下ろす。 「ただし、俺だけだ」 「なっ!」 トールの意外な発言に、男は声を荒げる。 そんな男の動揺を見抜いたように、二人は視線を交わす。 「……ふふっ、なんてね!」 「くっ――!」 リコリスは男に喉元を切られないように拳を当ててガードし、背後の足を踏みつける。 さらに男の拘束が緩んだ瞬間を狙い、肘を思い切り後ろに振り、相手を突き飛ばす。 男の拘束から逃れたリコリスは、即座に距離を取った。 「哀れな負け犬さん。その程度の腕前じゃ、ダンスのお相手は無理ね!」 二人が離れたのを見計らって、トールは男の捕縛へと動く。 「ーーっ」 不意を突いた狙撃は、男の動きを怯ませた。 「人質を取って有利になったと思ったんだろうが、相手が悪かったな」 「なら……っ!」 独りごちた男は、本来のドッペルの姿――霧の塊に戻ろうとして決定的変化に瞳を細める。 トール達について来ていたドッペルが、それを阻止してきたのだ。 「同じドッペルの分際で、俺の邪魔をする気か」 逃げ場を失った男は膝を付き、観念する。 「あら、あなた、ドッペルだったのね?」 「――っ」 リコリスの言葉に、男は失言に気付き、狼狽えた。 「ん……? こっちにもドッペルがいるのか? だったら、リコの姿で見張っていてもらおうかな」 瞬間的なトールの言葉に、男は表情を強張らせる。 「か、彼女の姿で見張られるのは……」 「この顔に見張られるのは怖い? 何言ってるんだ」 男の訴えに、トールは不敵な笑みを浮かべた。 「リコを侮った上に危険な目にあわせて、俺が怒ってないとでも思ったか?」 「後で詳しいお話を聞かせてもらうわ」 「――っ!」 二人の発言を聞いて、戦慄に近い恐怖が男を蹂躙したのだった。 『タオ・リンファ』達もまた他の浄化師達と同様に、終焉の夜明け団の男の強襲を受けていた。 「動くな!」 「! 不覚を取りましたか……」 背後に忍び寄っていた終焉の夜明け団の男によって、武器を突き付けられたリンファは身を固くした。 「マー!」 男に拘束されたリンファを見て、『ステラ・ノーチェイン』は悲鳴を上げる。 そんな彼女の気持ちを汲み取ったのか、リンファは強張りをほぐすように息をつくと、安心させるように笑顔を向けた。 「ステラ、私なら大丈夫です」 リンファは口を動かして、ステラに内緒の指示を出す。 『吼えろ』 リンファの一連の動きを見て、ステラはすぐにその行動に移した。 「がるるるる……! ばうっ!! がぁうっ!!!」 「な、何だ……?」 突然、獣のような大声を出してきたステラに、男は不意を突かれたように顔を硬直させる。 「今です!」 「――っ!」 その隙を突いて、リンファは振り返り際、三つ編みによる目潰せで男を怯ませた。 「この髪は、飾りではありません。私にとって凶器をひとつ増やしているまでです」 男の拘束から抜け出したリンファは静かに告げる。 そこから峰打ちで、背後にいる男を気絶させた。 「見つかってしまいましたね……。どのみち倒すつもりでしたから好都合です」 「マー、よかったのだ」 リンファの決然とした言葉に応えるように、ステラは言う。 その時、霧の塊でついてきていたドッペルはリンファへと姿を変える。 「おおっ!? マーが二人になったぞ! すっごいなー!」 突如、姿を現したリンファの姿をしたドッペルを前にして、ステラは喜び勇んだ。 「驚かせてしまって申し訳ありません」 ドッペルは、二人にここまで同行していた事、男の正体が自分と同じドッペルだという事を説明する。 「では、ドッペルには、このまま私に化けてもらい、奴を監視してもらいましょう」 「はい」 リンファの指示に、リンファの姿をしたドッペルは勇ましく点頭した。 終焉の夜明け団の男の姿に変えて、自身の存在を伝えるドッペルもいた。 「だ、誰? 離して、くださいっ……」 状況を把握した『アリシア・ムーンライト』は顔を青褪め、困惑する。 いつの間にか、背後に回っていた終焉の夜明け団の男が、武器を突き付け、彼女を捕らえていたからだ。 「アリシアを人質に取るとかいい度胸だ。覚悟できてるんだろうな?」 目の前の不穏な状況に、『クリストフ・フォンシラー』は笑顔で睨み付け、男を威嚇する。 「このままじゃ、足手まといに……」 アリシアは悲しげに顔を俯かせる。 不意に彼女の視線の先に、自分を拘束している男の腕が目に入った。 (どこから攻めるか) クリストフは男に剣を向け、この状況を少しでも早く改善すべく思考を巡らせていた。 「――っ!」 その時、響き渡った男の悲鳴に、クリストフは固唾を呑む。 いつの間にか、アリシアが思いっきり男の腕に噛みついていた。 「なっ!」 男が怯んだ隙を突いて、アリシアは慈救咒を放つ。 炎の蛇に襲われた事で、男の手が彼女から離れる。 「……ぷ」 予想外の出来事に、クリストフは思わず笑って、そのまま剣を振り上げ、男を攻撃した。 気が動転していた男は、あっさりとその攻撃を受けて気を失う。 「アリシアも強くなったね」 「クリスのおかげ、です……」 クリストフの言葉に、アリシアは柔らかな笑みを浮かべる。 閉ざされていた自身の過去へと踏み出す勇気を与えてくれたのは、他ならぬ彼だった。 やがて、霧の塊で彼女達と同行していたドッペルは、男の姿で二人の前に現れた。 倒したはずの男がもう一人、現れた事に驚く二人。 ドッペルは驚かせてしまった謝罪と共に、ここまで一緒に同行していた事、そして、男の正体が自分と同じドッペルだという事を説明する。 そこで、アリシアはドッペルに語りかけた。 「リチェちゃんが、ドッペルちゃんに名前を付けたと聞いて素敵だと思って、私もつけてみました」 「名前?」 アリシアの発案に、ドッペルは目を瞬かせる。 「ルウちゃん……どうでしょう?」 「ルウ……」 ドッペル――ルウはその名前を確かめるように、何度も呟いた。 次第にその表情は、名前を貰ったことへの歓喜に満ち溢れていった。 「ルウちゃん、俺に化けて見張りしといて 」 「見張りは、ルウちゃんにお願いします、ね」 「――分かった」 クリストフ達の指示に、ルウは男からクリストフへと姿を変えた。 最初から浄化師に姿を変えて、同行しているドッペルもいた。 「戦闘になれば危険ですから、前には出ないでください」 「……うん」 先行する『ヨナ・ミューエ』の言葉に、ヨナの姿をしたドッペルは噛みしめるようにそう答える。 (比較的安全と言われていたアルフ聖樹森にも終焉の夜明け団が……) 戦局を見つめるヨナの心境は、どこか思い詰めた響きがあった。 彼女は以前、メフィストにかの集団の成り立ちを聞き、彼らの未来に光は無いのを知っている。 終焉の夜明け団が創られた本当の理由。 それを知っている者は限られている。 (サクリファイスにしても、カタリナの復活の為に大勢の同胞を犠牲にしようとしている) ヨナは苦悩する。 (それをいきなり相手に説いても、到底理解されないでしょうし……) ヨナの胸中で、すり潰されるように自問が繰り返され、溢れる願いは戦地へと向かう。 (それでも……) 「動くな!」 「――っ!」 ヨナがさらに思考を巡らせていると突如、怒声が響き渡る。 驚きとともに振り返ったヨナ達が目にしたのは、終焉の夜明け団の男が『ベルトルド・レーヴェ』を人質に取っている姿だった。 「いつの間に……っ」 不意を突かれたヨナの表情は驚愕に満ちる。 (ベルトルドさんが、こうも簡単に背後を取られるだろうか) しかし、即座に攻撃できる構えを取りながらも、ヨナは確かな違和感を覚えていた。 相手に聞こえないように計らいながら、ヨナは背後で怯えるドッペルに耳打ちする。 「あの者がどちらか、分かりますか?」 「……ドッペル」 探りを入れるようなヨナの言葉に、ドッペルは躊躇いながらも答える。 「やはり、そうなのですね」 男を見据えたヨナの視線の先では、男の拘束を突き崩すパートナーの姿があった。 「あれは……」 「よそ見をするな。今の相手は俺だろう」 「――っ」 男の気配から、素人の動きと察知。 男の視線がドッペルへと向いた瞬間、男の武器を落とし、その腕を捻り上げた。 「ベルトルドさん、待って下さい! その方はドッペルです!」 「どうりで無謀な行動だと思った」 ヨナの言葉に、ベルトルドは男の拘束を緩める。 (教団に保護されたドッペルの処遇から、他のドッペルも利用されている可能性がありますね) 「私達と共に来ませんか?」 そう考えたヨナの誘いに、男は不信感を抱いたまま、表情を険しくする。 「貴方が願うのなら、争いを避け、教団で暮らす事もできる」 「悪いようにはしない。俺達と一緒に来ないか」 ヨナの言葉を繋げるように、ベルトルドも言った。 「ふざけるな! イヴル様を裏切るつもりはない!」 男は、それが自身の在りようだというように叫ぶ。 「……やめて!」 その時、ヨナの背後に隠れていたドッペルが男に呼びかける。 「邪魔をするな、失敗作のドッペル!」 「――っ」 男の恫喝に、ドッペルはびくっと怯えた。 凍てついたような静寂が舞い落ちたのは一瞬。 それでもドッペルは、自分達を救ってくれたヨナ達の力になりたくて必死に訴えかける。 「……本当は分かっていたの。失敗作である私達の力では、イヴル様の望みを叶えられないって」 次第に、ドッペルの声が悲哀を帯びていく。 「ずっと怖かった……。どれだけ頑張っても、イヴル様は私達を認めてくれなくて……。教団に保護された後も、誰かに見捨てられちゃうんじゃないかって思っていた……」 男は顔を伏せたまま、何も言わなかった。 それでも、想いがそのまま形になるように、とめどなく言葉が、ドッペルの心に溢れてくる。 「だけど、浄化師さん達は――教団の人達は、私達を優しく受け入れてくれた。温かく迎えてくれたの……」 ドッペルの無垢な言葉が、不意に意味深な響きに満ちる。 胸に芽生えた真心を、謝罪より切実な言葉を、どうしても『仲間達』に伝えたかった。 「私、皆とも一緒にいたい……」 「……っ」 男は、イヴルからの命令と仲間であるドッペル達への思いに板挟みにされていた。 停滞ではなく、誰かに歩み寄るという進行。 それは命令を忠実にこなしてきた彼が、今まで考えもしなかったものだった。 「俺は、イヴル様以外の人間を信用できない」 「貴方の気持ちは分かります。それでも、私は貴方と手を取り合いたい。貴方達の事を知っていきたいんです」 「――っ」 ヨナの言葉に、男はついに折れる。 男の瞳から堰を切ったように流れ落ちる涙。 (俺の存在を認めてくれるのか……) 男は、初めて抱いた自分の感情を消化しきれずに泣いている。 利用されるためだけに産まれ、望まぬ戦いに身を投じるしかなかった生物。 その心の負荷は、想像するに余りあった。 別の場所でも、終焉の夜明け団の男の魔の手は迫っていた。 「っ……」 その場に、冷気が走る。 いつの間にか現れた終焉の夜明け団の男。 男の持つその武器が、一瞬のうちに『アルトナ・ディール』へと突きつけられていた。 それは、他の浄化師達が陥ったのと同じ状況だった。 「これ以上、動くな!」 硬質さを伴う男の声。 だが、視線はアルトナを捉えたままだ。 「っ、アル!」 想定外の事態に、『シキ・ファイネン』は動揺する。 (気づけなかった……。どう、するか……) アルトナは小さくため息をつきつつ、そっとシキに視線を向ける。 「……アルトナを離せ。離せねえんなら撃つぜ」 その瞬間、響き渡った発砲音。 シキは二人に直接、当たらないように、正確無比な射撃でアルトナの解放を試みた。 「――なっ!」 突然の発砲に驚いた男の手から武器が離れる。 戒めを解かれたアルトナは、すぐさまシキの元へ向かう。 シキは喜色満面で、戻ってきたアルトナを思いっきり抱擁した。 「アルっ!」 「お、おい、離せってシキ……」 烈火のごとき剣幕に、アルトナはたじろぐ。 「……アンタ、突然、撃っただろ。それ止めろ」 「でも、あのままじゃ殺されてたかもしれないじゃんか。それに、俺はアルを守りたいから」 思いの丈をぶつけてきたシキに、アルトナは苦言を呈する。 「アンタの言い分は分かった。けど、もう少し周りを見てくれ」 「う、そーだな……。ごめん、気をつける」 アルトナの言葉に、シキは応えた。 「分かれば良い。とりあえず――」 (先にこいつだ) アルトナは思考を切り替え、男の挙動に注意を傾ける。 男は再び、武器を手に取り、襲いかかってきた。 アルトナの剣が閃き、峰打ちで男を動けなくする。 やがて、霧の塊で彼らと同行していたドッペルは、男の姿で二人の前に現れた。 倒したはずの男がもう一人、現れた事に驚く二人。 ドッペルは驚かせてしまった謝罪と共に、ここまで一緒に同行していた事、そして、男の正体が自分と同じドッペルだという事を説明する。 「ドッペ、ル? ……いたのか」 「ああ」 アルトナの驚愕に応えるように、ドッペルは静かに事実を口にした。 そして、自分が男の見張りをすることを買って出る。 「見ててくれるって? じゃあ、シキになれるか?」 アルトナの問い掛けに、シキは不思議そうに尋ねた。 「ドッペルくんが化けるの俺? なんで……?」 「アンタの顔が怖かったんで丁度良い」 シキの戸惑いに応えるように、アルトナは淡々と返す。 「アル!? 俺の顔、怖くないぜ!? せめて、かわいいって言ってよ!」 その答えに、シキは不満そうに訴えたのだった。 目の前で行われている戦いに、疑問を抱く者達もいた。 「終焉の夜明け団の討伐か、捕縛って話だったのに同士討ち?」 予想外の出来事を目の当たりにして、『ヴォルフラム・マカミ』は明確に表情を波立たせた。 「え、サクリファイスも居る?」 (金髪のエレメンツ女性……あれがカタリナ?) ヴォルフラムと共に、その姿を認めた『カグヤ・ミツルギ』が心の中でつぶやく。 (報告書でしか知らないけど……傍のエレメンツ男性がイヴル?) カグヤは状況を整理してみる。 (ドッペルにカタリナの姿をとらせて、サクリファイスを集めて、それをエリクサーにするんじゃ、なかった、の?) カグヤの脳裏に思い出されるのは、屋敷の外で語られたドッペル達の言葉。 (イヴルと終焉の夜明け団は仲間じゃない?) イヴルは明らかに、現状の終焉の夜明け団の行動とは反する動きをしている。 ――その目的は何なのか。 「うーん……潰し合ってくれるなら、どっちか潰れてから……」 その時――。 ……ひくり、とヴォルフラムの耳が不可解な音を拾う。 動物でもない。 仲間でもない。 それ以外の人物。 第三者の足音だった。 「……カグちゃん、後ろ!」 カグヤが更なる思考に耽ろうとした時、切迫詰まったヴォルフラムの声が聞こえた。 「え……っ!」 「それ以上、動くな!」 周囲を確認しようとして顔を上げたカグヤは、背後に回っていた終焉の夜明け団の男の姿に目を見開いた。 (思考に没頭しすぎた!) 武器を突きつけてくる男を前にして、カグヤは自身の思考に終止符を打つ。 カグヤは心を落ちつかせると、人質を取ったことで勝ち誇っている男を観察する。 (人型なら……足を踏んで腹に肘を入れる!) 「――っ!」 「匂いも音もなかったと思ったの、に……弱っ! カグちゃんの肘鉄でダウンなの?!」 不意を突かれたことへの違和感。 その疑念を払拭する前に、ヴォルフラムの目の前で痛みをこらえ切れなくなった男は崩れ落ちる。 「……あれ? 弱……」 カグヤは呆気に取られる。 「え、戦闘員じゃないの? あれ、ドッペル??」 ヴォルフラムは、男が一瞬、霧の塊へと変わったことに着目する。 彼らは何度か、ドッペルと遭遇したことで、男の正体がドッペルであることに気づく。 「……あ、思わず大声で突っ込みいれちゃった……」 「擬態生物は大体、弱い、から……なんか、ごめん」 謝罪の言葉と共に、カグヤは気を失った男を回復した。 「イヴル様に合わせる顔がない……」 自身の正体を看破された男は、暗澹たる気分でため息を吐いた。 案の定と言うべきか、男の正体はドッペルだった。 ヴォルフラム達は、捕縛した男から、サクリファイス側にいる終焉の夜明け団の魔術士――イヴルの命令で動いていた事、そして、教団で保護しているドッペルの一体がついて来ていることを聞き出していた。 「え、えーと、同行してくれたドッペルは、僕の姿になって見張ってて」 「――見張りなら、任せて!」 ヴォルフラムの言葉に応えるように、ドッペルはヴォルフラムへと姿を変える。 「それじゃ、本来の仕事しようか」 「……うん」 戦いが激化していく中、ヴォルフラム達は一路、仲間達の元へと向かった。 ● パートナーを救い、仲間達と合流した後、浄化師達は乱戦状態になっている戦地へと赴いた。 まずは、指令対象である終焉の夜明け団の一団へと向かう。 リチェルカーレとアリシアの禹歩七星により移動速度が上がった浄化師達は、尋常ならざる速さで戦場へと跳び込む。 真っ先に踏み込むのは前衛組。 その中でも先陣を切るのはシリウスだ。 「黄昏と黎明、明日を紡ぐ光をここに」 シリウスは、リチェルカーレと共に魔術真名を詠唱し、敵陣へと踏み込む。 「無茶だけはするな」 「シリウスこそ、気をつけて」 別れ際に交わす言の葉。 リチェルカーレは、前衛に立つシリウスのことを想い、小さく笑顔を見せた。 それに応えるように、シリウスは頷くと敵の間合いに一気に跳び込む。 あまりの速さに、敵は対応できない。 踏み込みの勢いも込めたソードバニッシュは、不意を突いた敵を一撃で沈める。 だが、敵の数は多く、後方には魔術士達が控えていた。 シリウスは必要以上に踏み込まず、仲間との連携を意識した配置に動く。 「さあ、行こうか」 「はい、戦いを、止めましょう……」 クリストフとアリシアは魔術真名を唱え、戦いへと挑む。 「月と太陽の合わさる時に」 膨れ上がった戦力を叩きつけるべく、クリストフは突進する。 狙う相手は、先陣を切ったシリウスを斬り伏せようとしてきた敵。 敵の斬撃を制裁2により捌くと、カウンターで敵の剣を弾く。 武器を失った敵は、体勢を整えようと後退する。 クリストフはそんな敵の動きを制するように踏み込むと、袈裟がけに斬り裂く。 そして、即座に背後に回り込み、連撃を放つ。 堪らず膝を屈した敵に、剣の柄を叩きつけ昏倒させる。 「闇の森に歌よ響け」 戦場に舞い降りると同時に、リコリスとトールは魔術真名を詠唱する。 爆発的に膨れ上がった戦力を感じながら、二人は動く。 「トール、援護をお願い」 「分かった。任せてくれ」 リコリスは魔性憑きらしい素早さを活かし、終焉の夜明け団の一団の元に跳び込む。 その時、前衛に立ったリコリスに迫り寄る敵。 「させるか」 トールが先んじて攻撃を放つ。 驚異的な集中力で狙撃を行い、敵を撃ち抜く。 動きが鈍る敵。 その隙に間合いに踏み込んだリコリスは、仲間達に戦踏乱舞を掛け、戦力を引き上げる。 「運が悪かったわね、憐れなカルトさん」 リコリスは声を掛けると同時に、素早い斬撃を加えた。 「夜明け団ができた真相を知れば、本当に哀れな人達」 一撃一撃を容赦なく、だが、捕縛できるよう意識しながらの絶え間ない斬撃。 刃を振るいながら、その動きは止まることもなく、舞い踊るような動きで敵を翻弄した。 トールは後衛の魔術士を狙い、魔術の使用を妨害する。 リコリス達は一連の動きで、多くの敵の引きつけに成功した。 だが、それでも他に向かおうとする敵もいる。 (逃がさん) そんな敵の数々を、ショーンはスウィーピングファイアで巻き込むように狙っていく。 動きが止まる敵。 「おとなしくしてもらうよ!」 そこに、レオノルがソーンケージを叩き込む。 魔力で形作られた茨。 限界まで収束させたソーンケージは、固まっている敵達を一斉に貫いた。 「武器を捨てて投降してください」 リチェルカーレは想いを伝えるように、言葉を投げかける。 「わたし達の目的は、この森を、集落を守る事。あなた達を殺す事じゃない」 だが、それでも止まらない敵に対して、リチェルカーレは、シリウス達と連携しながら動く。 リチェルカーレが鬼門封印を発動し敵の動きを鈍らせた所で、アリシアは距離を詰めてきた敵を慈救咒で攻撃した。 「まずは、終焉の夜明け団を止めなくては!」 リンファは峰打ちや柄打ちで、敵を無力化していく。 「うわわわっ」 その時、後方から放たれた魔力弾。 魔術士達による攻撃を、ステラはかろうじて避ける。 「ステラ、大丈夫ですか?」 「大丈夫なのだ」 リンファが駆け寄ると、ステラは意気込む。 「では、二人で掛かりましょう」 「マーと一緒にやっつけるのだ!」 リンファは先行して、魔術士の間合いに踏み込む。 懐に跳び込むと同時にエッジスラスト。 前衛の敵には、ステラのクラッシュスイングが叩き込まれ、後方へと吹き飛ばされる。 前衛と後方にいた敵が集結し、巻き込まれていく二人の連携攻撃は、確実に敵を弱らせていった。 それでも、魔術士達は魔力弾を放ってくる。 「アル、いけそうか?」 「……厄介だな」 シキの掩護射撃で距離を取ったアルトナは、戦況を見据えた。 「シキ、魔術士達の動きを止められるか?」 (アルが、俺を頼ってくれる……!) 「おうっ!」 アルトナの要望に応えるように、シキは魔術士に向けて連続で発砲する。 弾が魔術士達に衝突し、大きくよろめかせた。 その瞬間を逃さず、アルトナは距離を詰めると、後方の魔術士を無力化していく。 だが、別の敵がアルトナに襲いかかってくる。 「アルっ!」 「――っ!」 シキの狙撃銃により動きが鈍った敵を、アルトナは即座に気絶させる。 危機を脱したアルトナは、シキに視線を向け、ひとつ咳払いした。 「シキ、助かった」 「アルにお礼言われちゃった~」 アルトナの言葉に、シキはとろけるような笑顔を浮かべた。 「回復します」 「大丈夫、ですか……?」 「回復、する……」 リチェルカーレ達は、鬼門封印を発動し敵の動きを鈍らせ、時には皆の援護に奔走する。 リチェルカーレとアリシアとカグヤのお蔭で、皆は体力を回復しながら戦うことが出来た。 やがて、終焉の夜明け団は、浄化師達によって捕縛されていき、半数以下となった。 「あとは、サクリファイスですね」 戦況が傾いたタイミングで、リンファはサクリファイス側へと目を向ける。 「サクリファイスも、犯罪者の集まりです。全員は無理であっても捕まえたいと思っていますから」 イヴル達は、浄化師達が参戦したことで数を減らした終焉の夜明け団の一団に対して、優位に戦いを進めていた。 カタリナが居れば勝てる。 そう思えるからこそ、サクリファイスの残党達は恐慌状態に陥らずに戦えているのだ。 「俺達は、イヴルとカタリナに言いたい事があるので、サクリファイス側に行きたいと思ってるよ」 「わたし達も、そちらに向かいたいのですが、よろしいでしょうか?」 クリストフとリチェルカーレの申し出に、他の浄化師達は同意する。 「はい。では、サクリファイスはお任せします。私達はここで、残りの夜明け団を相手にします」 「なら、俺らも、夜明け団の対応に回るよ」 リンファの言葉に繋げるように、アルトナは返した。 「了解した」 「クリス達に任せるわね」 ショーンとリコリスも応える。 サクリファイス側へと赴くシリウス達を支えるように、ショーン達は戦いの意志を固めた。 「ショーン、合わせるよ!」 「はい!」 レオノルの攻撃魔術に合わせ、ショーンは狙撃を行う。 サクリファイスが動くよりも早く、スウィーピングファイアで巻き込むように狙う。 一陣の風のような素早い動きは、サクリファイスの初動を凌駕し、撃ち抜く。 そこに間髪入れず、レオノルのソーンケージが放たれる。 魔力で形作られた茨は、ショーンの狙撃で動きが止まった敵達を一斉に貫いた。 「お膳立ては終わりだ。後は好きなように動いてこい!」 「クリス君とシリウス君! あとは頼んだよ!」 送り出すショーンとレオノル。 「ショーンさん、レオノル先生、ありがとうございます」 「ありがとう、ございます……」 リチェルカーレとアリシアは礼を返すと、シリウス達と共にカタリナ達の元へ向かう。 「イヴルとカタリナについては、お任せ、します……」 「カグちゃん、話したいことがあるんだよね?」 「――っ」 確信を込めて静かに告げられたヴォルフラムの言葉は、この上なくカグヤの心に響いた。 「なら、僕がそこまでエスコートするよ」 「ヴォル……」 だが、彼らの行く手には、カイン達が待ち構えている。 「今だ!」 牽制射撃をしながら、トールはサクリファイス側へと向かう仲間達に呼び掛ける。 ヴォルフラム達は、先行していたシリウス達と合流し、カタリナ達の元へ向かう。 「道を開けてもらう!」 シリウスは一閃し、カイン達を翻弄する。 それはカイン達の動きを鈍らせただけで、動きを止めるには至らない。 だが、シリウス達が包囲網を突破するのには、それだけで充分だった。 「なっ、待て――っ!」 シリウス達の剣戟により、カイン達が作り上げていた防壁はあっという間に崩されてしまう。 すぐに後を追おうとしたカイン達は、行く手を阻むヨナ達に目を細める。 「ここは通しません!」 「――っ」 カインは次の手を決めかねていた。 包囲網を突破されたというだけではなく、目の前に立つヨナ達の実力も侮ることはできないと感じていたからだ。 「何故、邪魔をする? 俺達は、カタリナ様の力になりたいだけなんだ!」 そう叫んだカインは、自分達が抱える事情を吐露する。 敵であるヨナ達に話す事への躊躇い。 だが、それよりも、この状況を打破する必要がある。 一瞬の静寂の後、ヨナは想いをそのまま口に出した。 「貴方達の立場は同情しますが、生贄を捧げる行為そのものに、まずは疑問を持ってください。望む平穏は、こんなことをしても手に入りません。問題を先送りしているだけ」 「――っ」 返された言葉。 その一言一句が胸に突き刺さるようだった。 「本当は、ご自分でも分かっているんでしょう?」 「……それでも、俺達はカタリナ様の力になりたい」 武器を突きつけてきたカイン達の攻勢に、ベルトルドは前に出る。 疾風の如き勢いで間合いに跳び込むと、打突から掴み、そして足払いで体勢を崩してからの投げへと繋げる。 背中から叩きつけるような一撃は、敵を戦闘不能に叩き込む。 さらに攻撃を避けながら、カイン達の動きを誘導した。 その時、ヨナがライトレイを発動。 ベルトルドの動きを援護するように、敵を牽制する。 ここまでに蓄積されたダメージは大きく、カイン達は苦戦を強いられていた。 必敗の戦い。 だが、カインは、悔いのない戦いへの覚悟を決める。 「――っ!」 ベルトルドは、迫ってきたカインの脇腹に打突を叩き込む。 薄れゆく意識の中、カインの中で、先程のヨナの言葉が残響のように繰り返されていた。 カタリナ達の元へ目指すシリウス達。 そんな彼らに対して、サクリファイスの残党達のあらゆる魔術と遠距離攻撃が襲った。 様々な攻撃が、シリウス達に殺到する。 ヴォルフラムが攻撃した瞬間、シリウスは表裏斬で連続攻撃をした。 背中を斬り裂き、間髪入れず脇腹を撫で斬る。 傷を負いながらも、仲間達と連携して攻撃を重ねていった。 そんな彼らを、リチェルカーレ達は援護し、回復しながら付き添っていく。 やがて、イヴル達を視認できる場所までたどり着いた。 「カタリナ、さん……。ほんとにそっくり……。イヴルさん、は、もしかしたら、カタリナさんを……」 本物のカタリナと瓜二つの女性。 アリシアは悲しげに俯く。 クリストフが、眼前のサクリファイスの残党を斬り捨て、背後にいるカタリナに話し掛けた。 「久しぶりだよね」 「あなたは……?」 クリストフを見遣り、カタリナは呟いた。 「覚えてない? 殺し合った仲なのにつれないな。自分にトドメ刺した人間を忘れるなんて、君、ほんとにカタリナかい?」 「――っ!」 迷いのない瞳が、イヴルを真っ直ぐに捉える。 (俺は仇だよ。さあ、どうする?) (こいつが、カタリナを……) クリストフの挑戦的な視線を、イヴルは真っ向から受け止めた。 乱戦の喧騒の中、まるで二人だけ時間が止まったかのように視線が交錯する。 「咎人は断罪する必要がある。カタリナを殺した危険分子は、全て排除せねばならない」 イヴルはクリストフから視線を外し、あくまでも自身の信念を貫き通した。 教団への憎悪。自己への嫌悪。そして、目的への執念。 彼の胸中では、やり場のない情念の炎が蜃気楼のように揺らめいていた。 「イヴル……」 イヴルの憤りは、カタリナにも痛いほど理解出来た。 終焉の夜明け団の捕縛に並走する仲間達。 やがて、アルトナ達によって、全ての終焉の夜明け団が拘束される。 「目的は果たせないようだからな。このまま、拠点に戻る」 「全ては、神の思し召しのままに……」 イヴルは終わりを確信した口調で呟き、心中で決着を託した。 「行かせないわよ!」 「ああ!」 サクリファイスの残党達が撤退し始めようとした時、リコリスがスポットライトで足止めし、トールは彼らの足元に牽制射撃を行う。 「カタリナさんの姿をした貴女は誰?」 リチェルカーレの言葉を受けた瞬間、カタリナは思わず、歩みを止める。 「私はカタリナですわ」 「……どんなに外見を似せても、それはカタリナじゃない。俺達にも分かる事を、何故認めない?」 「カタリナさんじゃないわ。カタリナさんじゃなくていいの。誰だって自分の好きな姿で、自由に話すことができるのよ」 「――っ」 シリウスとリチェルカーレの言葉は、的確にカタリナの心を揺さぶった。 「擬態生物所以の個性のなさはあると思う。それでも、あなたはドッペルであってカタリナじゃない」 「たとえ、そうであっても、私はドッペルでしかなかった頃より、今が幸せですわ」 カグヤの言葉に、カタリナは笑みを浮かべ、撤退を始める。 戦いは、浄化師達の勝利で幕を閉じた。 ● 「とりあえず、サクリファイスからは抜けないか?」 トールの提案に、捕縛されたドッペル達は困惑した。 これにイヴルへの忠誠心を貫く者達、浄化師達の訴えに心打たれる者達へと分かれる。 だが、最終的に皆、サクリファイスからは抜けることを同意してくれた。 「サクリファイスの残党の代わりに、終焉の夜明け団をエリクサーの生贄にするつもりだったんだな」 「……はい」 トールの疑問に、彼らに捕縛されたドッペルが答える。 「これで、全てですね」 「はい」 「おー、すごいなー」 リンファとリンファに姿を変えたドッペルとの会話。 二人の発言を聞いて、ステラは好奇心いっぱいの眼差しを向ける。 「マーが二人いるの、おもしろいなー! 触ってみていいか!?」 「もちろんです」 ステラの言葉に、リンファの姿をしたドッペルは了承した。 リンファ達は、指令対象の終焉の夜明け団以外に、カイン達とサクリファイスの残党の一部を捕らえている。 カイン達は、今回の戦いを胸に、自分達の生き様を模索していた。 「俺が、もう一人いる!」 「俺もだ!」 ドッペルを見た終焉の夜明け団の男達が、次々と狼狽する。 「確かに、もう一人、俺がいるのって変な感じがするもんなー」 シキは好奇心いっぱいの眼差しで、アルトナに問い掛けた。 「アルも、ドッペルに変わってもらいたいだろ?」 「……特には何も」 「えー何も? ……ほんとに?」 シキの要望に、アルトナは呆れた表情を浮かべる。 「正直な所、イヴルはカタリナの為にカタリナを作ったのかな?」 平原を見遣り、レオノルは呟いた。 「サクリファイスを復活させるための偶像でもなし、魔術の力が欲しければ自分に使えばいい」 徐々にレオノルの中で、イヴルの行動の謎が結びついて形を成していく。 「なら、カタリナを復活させたいって意図だろうけど、今のカタリナは死んだカタリナじゃない。中身は結局ドッペルじゃん。それで満足なのかな?」 「恐らく、そうだと思います」 レオノルの問いかけに、ショーンは応える。 「それって、彼自身の為でもないんじゃないかな……」 「ええ。そう思います」 レオノルの言葉を肯定するように、ショーンは頷いた。 「私達は、仇……」 「アリシア、大丈夫かい?」 アリシアの心情を察して、クリストフは尋ねる。 「大丈夫、分かってます。私は、むしろクリスが心配です」 クリストフの身を案じ、アリシアは悲しそうに呟いた。 あの戦いの記憶は未だ、残酷なほど鮮明だ。 「一人で背負わないで、ください、ね?」 「ありがとう……」 クリストフは彼女の悲しみを受け止めるように、静かに寄り添う。 それはまるで、祈りを捧げるような願いだった。 夕闇へと消える森の足音。 アリシアは誰よりも愛しい人に想いを馳せたのだった。
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*** 活躍者 *** |
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[27] シリウス・セイアッド 2020/02/03-23:38
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[26] クリストフ・フォンシラー 2020/02/03-23:38
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[25] ショーン・ハイド 2020/02/03-23:37
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[24] カグヤ・ミツルギ 2020/02/03-19:38
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[23] リチェルカーレ・リモージュ 2020/02/02-22:24
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[22] アルトナ・ディール 2020/02/02-05:41
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[21] ヨナ・ミューエ 2020/02/02-00:44
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[20] ショーン・ハイド 2020/02/01-22:13
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[19] トール・フォルクス 2020/02/01-21:42 | ||
[18] クリストフ・フォンシラー 2020/02/01-08:47 | ||
[17] リチェルカーレ・リモージュ 2020/01/31-21:04 | ||
[16] タオ・リンファ 2020/01/31-01:34 | ||
[15] カグヤ・ミツルギ 2020/01/31-00:37
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[14] カグヤ・ミツルギ 2020/01/31-00:32 | ||
[13] トール・フォルクス 2020/01/30-17:07 | ||
[12] ヨナ・ミューエ 2020/01/29-17:56 | ||
[11] シキ・ファイネン 2020/01/29-16:27 | ||
[10] ヴォルフラム・マカミ 2020/01/28-23:58 | ||
[9] リチェルカーレ・リモージュ 2020/01/28-23:21 | ||
[8] クリストフ・フォンシラー 2020/01/28-22:37 | ||
[7] トール・フォルクス 2020/01/28-21:23 | ||
[6] ショーン・ハイド 2020/01/28-21:19 | ||
[5] シキ・ファイネン 2020/01/28-05:23
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[4] タオ・リンファ 2020/01/28-03:28
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[3] リチェルカーレ・リモージュ 2020/01/27-23:31
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[2] クリストフ・フォンシラー 2020/01/27-22:37 |