~ プロローグ ~ |
機械都市マーデナクキスについての話し合いが、室長室で行われていた。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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2 俺の役割は火薬商人上がりの化学薬品を扱う商人 銃に使う火薬、毒にもなる工業用の無機化合物…なるほど。取り扱っている『品物』についての知識はあるからな とりあえず品物紹介なら得意だな 銃は好きなんでな。火薬にもそれなりにはこだわるし、毒物も仕事道具だったし詳しいさ 死の商人とでも揶揄されたら化学は魔法を凌駕する夢の技術ですと笑って流そう 俺の仕事はドクターにまとわりつかれること… あれこれいつもの…? とりあえず適当な話をしているつもりで、周りに人が寄って来たら適当に世間話をする 儲けが出ているかと言われてもまずは謙遜して受け流す すこし勿体ぶる…というか、大した話じゃない風から話を切り出すか |
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カチーナ様達が教えてくれた この国の危険 どうか未然に防ぐことができますように 情報収集 頑張らなくちゃ 1を選択 空色のドレス 髪に花を編み込んで 耳元にマーデナクキスの国花を挿し敬意を どうしよう お作法わからない! シリウスも クリスさんみたいに… 逸らされた目元が赤いことに気付き 小さく笑う 本当を混ぜると演技しやすいよ とクリスさんのアドバイスに従い この国に来たばかりで 何も知らないんです 色々教えてくださいと笑顔 シリウスの事は わたしの守護者ですと頬を染めて フィリア使用 老若男女関わらず沢山の人と話 音楽や花の話から気持ちをほぐし 色々な話題を集める ここの方は優しい人ばかりですね 国と国とも 皆で手を取り合えればいいのに… |
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最近来た移民と偽り情報収集 自分達の技術や知識(医学・薬学)が病気や体の不自由な人達の助けになればと救護院を訪問 ヨ どういう振舞いでいればいいのでしょう? ベ そうだな… 東洋医学の先生とその助手という設定で良いんじゃないか? 昔 師とよくやっていた手だ ヨ 私が助手ですか? ベ なんだ 不満か ヨ いえ そういう訳では 現状どんな流行り病があってどんなもの(薬や環境)が求められているのか聞いて回る 手に入りにくい薬に代わる食事療法や民間治療などを勧めそこから市民の国や貴族への不満を探る ヨ そんな理由で戦争を… ベ 戦争は儲かるからな ヨ だからって ベ 理想の国の前に今日の飯 だ おっと すまないな 口の達者な助手で |
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情報収集…私にできるでしょうか… 好きなことを話せばいい、のですか? それ、なら… 落ち着いたワインレッドのドレスに身を包み参加 婚約者との紹介に赤くなり 事前に設定を聞かされてはいましたけど…実際に「婚約者」って言われると… もじもじしてたら、何だか周りの方が微笑ましい目で見てくるような… これなら、お話しできるでしょうか あの ここは、どんな国ですか? その、私も…彼の助けになりたいので…色々知りたいんです 私にできる話は、植物、特に薬草やハーブについて それと、よく効くお薬の作り方、とか… 自分で刺繍を施したハンカチを取り出してみたり こう言う物は、この国では、あまり好かれませんか? 仲良くなれるよう、頑張ってみます |
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■3 市民階級の中でもより貧しい者が住む治安の悪い地域へ 現状に不満を抱く者達が気晴らしに訪れるようなあまり上品ではない酒場で情報収集 国を移ったは良いがろくな仕事もないと、自分達も現状に不満を持つ者であるように装う ルーノ主体でうっぷんの溜まっていそうな者達に話しかけてみる 愚痴に対して強く同調して喋らせ、酒の勢いでこぼれた話を拾っていく(会話術) 戦争になったほうがいいと聞けば戦争で増える仕事にあてでもあるのかと尋ね、話と反応を伺う(心理学) ナツキは下手に会話せず周囲に耳を傾ける 酒場の喧噪に紛れて何か企み行動している者がいるかもしれない 怪しい者がいればナツキがトランスして尾行、その少し後にルーノも続く |
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3 傭兵として仕事を請ける。傭兵ギルドか何かで生半可な奴はやらないのを受け、より栄達を望めそうな雇い主への紹介を頼んでみよう。 それで腕前を示し、軍隊や地下組織等からきな臭いオファーを受けるのが狙いだ。戦争の準備中なら、集めた兵隊の教官とかが必要なはずだからな。 浄化師だとバレないために、仕事で魔術真名や魔喰器は使わない事。通常の武装が必要だ。 オファーが来たらどこまで入り込めるかが勝負だ。受諾を前向きに検討して、できれば現場まで入りたい。事によっては黄泉の霧を張って逃げるか。 |
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2 俺は従者の役か… 腹芸に向いてないのは自覚してるし仕方ないか リントが友好的に接して相手の気を良くし口を軽くさせる 俺は黙って、相手の話におかしな所がないかを聞いて考える こちらを軽く見られたり、ふっかけられそうになれば 護衛としても睨みをきかせる 敵対の意思はないとはいえナメられたら情報も引き出しにくくなる 記憶、心理学スキル使用 聞きながら話の内容を記憶し頭の中で整理、相手の思惑を推測 一通り聞いた限りでは、経済を動かして国をどうにかするというより 純粋に利益を出すのが目的みたいだ たとえ戦争が起きたとしても、戦時特需や何やらで儲けるの優先だろうから むしろ賛成派かも 適当な所で「ロン様」と耳打ち 撤退後考えを話す |
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今のマーデナクキスの情報を集めたい 商家の子どものふりをして話を聞く 市民の生活の様子 外国への思い 治安について等 気になることは後で皆さんと共有しよう 2へ 場に相応しい服を着用 セ:子どもの発表会みたいよね(ころころ) リ:…自分でも思っているから言わないで 親の方針で各国を見て回り 見聞を広め中という設定 リ:サンディスタムの王宮は大きかったよね セ:ニホンの民芸品も素敵だったわ 問われれば当たり障りのない程度に他国のことを セ:同胞の作った国なので 楽しみにしてきたんです リ:僕たちみたいな新参者でも うまくやっていけるでしょうか? 子どもにしか見えないのはわかっている 逆手にとって屈託なく 教えてやらなくてはと思われるよう |
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~ リザルトノベル ~ |
マーデナクキスでの情報収集指令。 参加した浄化師達は、それぞれの持ち場で情報収集に勤しんでいた。 ●貴族サロンで情報収集 (カチーナ様達が教えてくれた、この国の危険。どうか未然に防ぐことができるように、情報収集、頑張らなくちゃ) 指令に参加した『リチェルカーレ・リモージュ』は意気込んでいた。 一方『シリウス・セイアッド』は頭痛を堪えるように眉を寄せる。 (情報収集……) 寡黙な彼にとって、人から話を聞き出すというのは、どう考えても向いていると思えない。 けれど真剣な表情を見せるリチェルカーレに、シリウスは小さくため息をつき覚悟を決める。 そんなシリウスに、苦笑するように『クリストフ・フォンシラー』は言った。 「気負い過ぎない方が良いよ、シリウス。こういうのは、自然にするのが一番なんだから」 これに不安そうに応えたのは、傍で聞いていた『アリシア・ムーンライト』だった。 「情報収集……私にできるでしょうか……」 「大丈夫。好きなことを話せば良いんだよ。そうすれば自然に見えるから」 「好きなことを話せばいい、のですか?」 「うん。信用させるには話に少しの事実を混ぜるのが効果的なんだ。アリシアも、無理して嘘を言わなくても、本当のことを話せば良いんだ」 「それ、なら……」 クリストフの言葉を聞いて、アリシアは安堵するように返した。 そして4人は貴族サロンに向かう。 衣装は用意して貰い、しっかりと着こなす。 以前、ウボーの家が主催した貴族のパーティに参加したこともあり、全員が違和感のない装いだった。 リチェルカーレは空色のドレスを身に纏い、髪に花を編み込んでいる。 エスコートするシリウスは、黒の正装。胸ポケットにリチェルカーレのドレスと同色のハンカチをあつらえ、彼女のパートナーだということを表している。 そしてアリシアの装いは、落ち着いたワインレッドのドレス。彼女の艶やかな黒髪に好く合い、目を惹くほどの美しさと共に調和を感じさせた。 エスコートするクリストフは、アリシアの髪の色に合わせた黒の正装。そして胸元には、彼女のパートナーを表す、ドレスと同色のハンカチをあしらえていた。 その装いでサロンに参加する。 紹介状を執事に渡しホールへと案内される。 扉を開けて中に入れば、落ち着いた音楽が静かに流れていた。 参加しているのは30名ほど。 サロンに参加できる伝手のある者が集まり人脈を広げる、という目的のサロンらしく、そこかしこで談笑している。 とはいえ、よく見れば気付くのだが、目が全く笑ってない。 笑顔という仮面を着けて、見ず知らずの赤の他人と、その場限りの歓談が出来る。 そんな人物達が、そこには居た。 「さて、それじゃアリシア。話を聞きに行こう」 「はい」 まずはクリストフが、アリシアをエスコートするようにして、人々の輪に入りに行く。 「……」 それを見ていたシリウスは、リチェルカーレに声を掛けようとするも、勢いをつけるような間を空ける。 けれど視線を合わせ、ちゃんと言った。 「……リチェ、行こう」 これにリチェルカーレは、くすりと笑い応える。 「ええ。お話を聞きに行きましょう、シリウス」 こうして4人は人々の輪に加わった。 「失礼。挨拶をさせていただいていも、構いませんか?」 余裕のある雰囲気を纏いながら、クリストフが声を掛ける。 これに笑顔のまま、けれど値踏みするような眼差しで皆は返し、クリストフは応えた。 「クリストフと言います。祖父の代に爵位を貰った新参者ですが、お見知りおきを。 もし体調がすぐれない方が居られたら、仰って下さい。 我が家は代々医者の家系ですので、私も心得があります。すぐにでもお力になれます」 そしてアリシアに視線を移し続ける。 「彼女はアリシア。私の婚約者です。ぜひ皆様と縁を結びたく、今日、来て貰いました」 これを聞いたアリシアは、頬を赤く染める。それを見てクリストフは思う。 (あれ? なんでこんなに真っ赤に……まだハッキリ婚約してなかったっけ?) よく考えると正式にはしてなかったので、終わったらちゃんと言おうと決意する。 2人の様子に、人々の眼差しには、微笑ましい色が混ざっていった。 その様子を見ていたリチェルカーレは―― (どうしよう、お作法わからない!) クリストフが流暢に挨拶したので、自分達もそうしないといけないと慌てる。 そんな彼女に、シリウスは宥めるように言った。 「大丈夫だ。クリスやアリシアも居る」 「そうね。ならシリウスも、クリスさんみたいに……」 「……クリスみたいに……?」 シリウスは少し考えて、婚約者のふりの事を言っていると気付き、無言で視線を逸らす。 逸らされた目元が赤いことに気付き、リチェルカーレは小さく笑った。 そして2人は人々の輪に入る。 「この国に来たばかりで、何も知らないんです。色々と教えてください」 クリストフに、本当のことを混ぜると演技しやすいとアドバイスして貰ったリチェルカーレは、自己紹介したあと、ここに来た理由を正直に告げる。 そしてシリウスに視線を向けると―― 「彼はシリウス。私の守護者です」 頬を薄らと染めて、嬉しそうに紹介した。 紹介を受けたシリウスは、挨拶に合わせ軽く黙礼。 そして社交はリチェルカーレに任せ、気付かれないよう周囲を観察する。 (当たり障りのない話が多い、か……) 警護や護衛が居れば話を聞こうかと思ったが、そうした物はサロンの外で厳重にされている。 他は当たり障りのない探り合いのような話が多かった。 そんな中、リチェルカーレは純朴に話をしていく。 音楽や花の話から気持ちをほぐし、色々な話題を集めていった。 最初は距離を置くように話をしていた皆も、少しずつ距離を縮めるように話をしてくれた。 「その花は、ご自身で選ばれたのですか?」 リチェルカーレの耳元に挿された白い薔薇に、この場の最年長らしい壮年の男性が尋ねる。 「はい。この国の、国花とお聞きしましたから」 「ほぅ……色も、貴女が?」 「はい。この国に敬意を示したかったんです」 白い薔薇の花言葉は幾つかあるが、そのひとつは尊敬。 「それは……好い心がけだ。マーデナクキスへようこそ、お嬢さん」 壮年の男性の認めるような言葉に、周囲の人々の距離感はさらに縮まる。 そこからは純粋に会話を楽しみ、リチェルカーレは言った。 「ここの方は優しい人ばかりですね。国と国とも、皆で手を取り合えればいいのに……」 この言葉に、周囲の空気が重くなる。 「どうか、されたんですか?」 心配そうに訊くリチェルカーレに、壮年の男性は言った。 「貴女方は最近来たようだから、話しておきましょう。どうもアークソサエティで、この国に居る貴族の権限を剥奪しようとする動きがあるらしい」 「それは、どういうことなんだろうか?」 「気になるかね?」 今まで無言だったシリウスが急に尋ねてきたので、壮年の男は聞き返す。 するとシリウスは、余計なごまかしはせず、自分の思いを正直に言った。 「彼女だけは、守りたいんだ」 切実な願いを口にする。 それが壮年の男性の心を動かす。 下手に演技や嘘をつけば、海千山千の貴族には見破られていた筈だが、切実な願いであったことが功を奏した。応えが返ってくる。 「この国の力を削ごうとしているんだろう。同時に、自分達の息の掛かった者を中枢に置きたいとも思っている筈だ。その一環だろう。この国の貴族剥奪の噂が流されているのは」 不穏な話を、シリウスとリチェルカーレは真剣に聞いていた。 そうして話を聞いている頃、アリシア達も話を聞いていた。 「あの、ここは、どんな国ですか? その、私も……彼の助けになりたいので……色々知りたいんです」 大切な婚約者のために話を聞こうとするアリシアに、女性陣を中心に、皆は話してくれる。 それにアリシアは応えていく。 「はい、頭痛には、そのハーブ茶が、よく効きます」 薬草やハーブの話を広げ、皆が耳を傾けてくれた所で、自分で刺繍を施したハンカチを取り出してみせる。 「こういう物は、この国では、あまり好かれませんか?」 アリシアの頑張りのお蔭で、皆は少しずつ打ち解けていく。 彼女の頑張りを応援するように、クリストフは少し踏み込んだ話題を振っていく。 「この国の貴族は、皆さん清廉なようだ。それに比べてアークソサエティは――」 少し前の指令で知った、少女達を監禁していた貴族の話をする。すると―― 「ええ、まったくで」 突然、それまで話に加わっていなかった貴族が話をしてくる。だが―― 「子供を監禁するなど悪趣味ですなぁ。そうそう、あのバレンタイン家も、子供の奴隷を定期的に買うそうですよ。一体何のために買うのでしょうねぇ」 明らかに悪意のある噂を広めようとするように話をしてくる。 (バレンタイン家って、ウボーの家だよな?) クリストフが訝しく思っていると―― 「悪食貴族の話をしていると、貴方も食われますよ」 リチェルカーレ達と話をしていた壮年の男性が近付き言った。 「グラント卿……――」 顔を引きつらせる男を無視し、グラントと呼ばれた男性はクリストフ達に言った。 「やれやれ、つまらん話で会話が途切れてしまった。ここで帰してしまっては、悪い印象だけ残る。別室でお茶をしながら話をしないかね。彼女達と一緒に」 リチェルカーレ達を示すグラントに、アリシア達は頷き別室に向かう。 そこには少年に見える人物が居た。 「マーデナクキス国王、エア殿下です。浄化師どの」 グラントの言葉に身構えていると、エアは言った。 「内通者からの話で、ここに来るのは知っていた。接触の可否はグラント将軍に任せていたが、目に適ったようだ」 そう言うと手紙を渡す。 「ヨセフ・アークライトへの書簡だ。渡してくれ」 静かに受け取るリチェルカーレ。 それを手に皆は帰還するのだった。 ●資本家サロンで情報収集 「お初にお目にかかります。私はロン、こちらは従者のマオ。以後お見知りおきを」 慣れた様子で『リントヴルム・ガラクシア』は、サロンの中で最も豪奢な男に声を掛けた。 「おお、そりゃ丁寧にすまんのぅ」 男は鷹揚に返し、無遠慮にリントヴルムを品定めするように見詰める。 そして傍に居る『ベルロック・シックザール』を一瞥した。 (嫌な感じの男だな) ベルロックは不快感を出さないようにしながら、同時に舐められないよう、真っ直ぐに視線を返した。 すると男は、鼻で笑うような声を上げる。 思わず言葉で返しそうになった所で、自分を抑える。 (やっぱり俺に腹芸は無理だな。従者の役を、しっかりこなしておこう) 余裕のあるリントヴルムを横目で見ると、ベルロックは自分の役に集中する。 それにリントヴルムが気付き心の中で苦笑していると、左右に女をはべらせ豪華なソファに座った男は、値踏みするように言った。 「それで、あんた、どこの人ね。押し売りやったら他所行ってくれや」 「押し売りだなんてとんでもない。私はただ、こちらに詳しい方とお近づきになれればと思った次第で」 「そう言うのを押し売りいうんやろ。なんやあんた、こっちにええ伝手無いんか?」 蔑むように言う男に、リントヴルムは笑顔のまま続ける。 「身内だけに頼っていては、商売は広げられません。より開拓して広げろと、バレンタイン本家からは言われています」 これに男は、ギョッとした顔をする。 「なんやあんた、悪食貴――いやいや、バレンタイン家のもんかいな。それなら最初から言ってくれりゃあ」 そう言うと女達を手で追い払う。 「ここ来いな。女が欲しけりゃ、呼んだるで」 「いえ。それよりも話を聞かせて欲しいんですよ」 リントヴルムは応えると男の隣に座り会話を重ねる。 男の舌の回りが良くなって来た所で本題に移る。 「マーデナクキスへ来たのは当然、うまい儲け話を求めてのことですが、現地でのご同業様とも良き友でありたいと思っております。出資、共同企画等何なりと。条件次第でいくらでもお力お貸ししますよ」 親指と人差し指を丸めるジェスチャーをするリントヴルムに、ガハハと男は笑う。 「景気がええ話やな。それで、いくら貸してくれるんや?」 これにリントヴルムは焦らすように返す。 「それにはまず話を聞かないと。まずはここの状況等、詳しく伺いたいのですが?」 これに男は応えていく。それをリントヴルムとベルロックが注意して聞いていると、男は声を潜めていった。 「まあ色々あって、近い内に大きく動きそうなんや。そんときゃ人手が居るやろ。奴隷とか、欲しゅないか?」 「伝手はあるので?」 これに男は笑い言った。 「そんなん、ぎょーさんおるわ。ほら、ここに元々居った蛮族共がおるやろ」 「……土着民の事ですね」 「そうや。あんな野蛮人共、こっちがその気になればいくらでも獲り放題やからな」 「そうですね。ですが、管理が大変ではないですか?」 「ああ、そりゃそうやけどな。やけど、下手に金持っとるより、ええやろ。なんや知らんが、本国の連中が、こっちに居る奴らに税金上乗せするっちゅう噂もあるしな」 話を聞いていき、これ以上は情報を得られそうにないと判断すると、ベルロックが機転を利かせる。 「ロン様」 ベルロックに呼ばれリントヴルムは返す。 「ああ、もうそんな時間か。すみません、また時間がある時にその話は――」 2人はサロンを後にし帰還する。 その道中ベルロックは言った。 「一通り聞いた限りでは、経済を動かして国をどうにかするというより、純粋に利益を出すのが目的みたいだ。たとえ戦争が起きたとしても、戦時特需や何やらで儲けるの優先だろうから、むしろ賛成派かもな」 「ああ、そうだろうね。それに、どうも現地民に何かしようとしてるようだね。あとは、アークソサエティが、なにか仕掛けて来るとも思ってるみたいだ」 集めた情報をまとめていく2人だった。 他の浄化師も情報収集を続けていく。 「つまり現行火薬よりも威力が上がると?」 「ああ」 カウンターテーブルでウィスキーを傾けながら『ショーン・ハイド』は同席する商人の問い掛けに応えた。 ショーンは今、『レオノル・ペリエ』とは一時的に離れて情報収集をしている。 それは準備段階として必要だからだ。 それぞれ人を回り、こちらの話に興味を持ちそうな相手を物色。同時に話を広め食いつきを強くする。 言ってみれば撒き餌の段階だ。 (俺の役割は、このまま武器商人だと周囲に印象付けた所でドクターにまとわりつかれること……あれこれいつもの……?) そんなことを思っていると、レオノルが声を掛けてきた。 「やぁ、面白そうな話をしているね」 「……あんたは?」 ショーンは気のない振りをして視線を向ける。 視線の先に居るレオノルは鞄を手にし、高価な貴金属で身を飾っている。 個人資産家の金融屋という設定なので、それに合わせた出で立ちだ。 「隣り、良いよね?」 レオノルは椅子を手に取ると、ショーンと身体を触れ合わせられるほど近くに座る。そして言った。 「エリノア。しがない金融屋だよ」 言うとバーテンダーに軽めのカクテルを頼み、続ける 「仕事柄、お金の匂いには敏感なんだ。儲けられそうな話をしていたよね」 「……さて、どうだか」 話をはぐらかすショーンにレオノルは、しなだれかかるようにして言った。 「独り占めはずるいなぁ。それよりもみんなで儲けた方が、あがりは大きくなるよ」 「……相手によるがな」 ショーンは冷静を装って返しながらも、心の中では―― (ドクター、ドクター近いです。ドクター) 微妙に焦っていたりする。 それを知ってか知らずか、レオノルは悪戯めいた蠱惑的な笑みを浮かべ続ける。 「話を聞いていたけど、火薬の威力を上げるのにお酒が必要なんでしょう?」 「ああ。木炭に酒精から精製した成分を漬けて威力を上げる」 「良いよね、それ。平時は酒造工場として使って、有事があれば火薬材料の供給先になるんだから」 「……有事があればな」 「ふふ、とぼけちゃダメだよ。死の商人、ってヤツでしょ、貴方は」 「さて、どうかな。そんな無粋な呼ばれ方より、夢を売る商売と言って欲しい」 「なんで?」 「俺が扱うのは科学だ。その中でも化学は魔法を凌駕する夢の技術、だからな」 「夢か、良いね。どうせお金を賭けるなら、夢のある話が一番だよ」 そう言うとレオノルは、持っていたカバンをカウンターに置き中身を見せる。 「……証券か。随分と額が大きいな」 「現金じゃ嵩張るし、かといって少ないと商機を逃すからね。どうだい、こっちには資金の当てはあるんだ。利率は、そうだな――」 条件ごとの複雑な計算をその場でしてみせ、周囲に現実味を与えていく。 「必要なら、今の条件で貸すよ。貴方は作る当て、私はお金。あとは――」 「卸し先のルートが要るな。それもそちらが用意してくれるのか?」 「それは、頑張って貰わないと」 ショーンとレオノルの話に、何人かが食いついてくる。 それを聞いてショーンは応えた。 「当てがあると? もしそうなら、話を聞かせてくれ」 すると商人達は、それぞれ具体的な部分はぼやかしながら話をする。 話を聞き、ショーンは情報の断片を繋ぎ合わせていく。 (武器や、その材料を必要としている組織が居るのか? 話を聞いていると、素人でも使える、魔力を必要としない武器の需要が高いか? 素人に扱わせる気か? いや、それにしてもこれだと規格が揃わん。 ……まるで、誰でも使える武器をバラ撒こうとしているような……) かつてエージェントとして活動したこともあるショーンは、その後もレオノルと共に情報を集めていった。 そうした剣呑な雰囲気の中、情報収集する者も居れば、和やかな雰囲気の中、話を聞く者も。 「子どもの発表会みたいよね」 「……自分でも思っているから言わないで」 ころころと品好く笑う『セシリア・ブルー』に『リューイ・ウィンダリア』は気恥ずかしげに返した。 いま2人は、裕福な商家の子供という設定でこの場に居る。 もちろんそれは、話を聞き易くするためだ。 2人は積極的に話をしに行く。 「同胞の作った国なので、楽しみにしてきたんです」 「僕たちみたいな新参者でも、うまくやっていけるでしょうか?」 自分達の見た目を活かし、屈託なく話を聞いていく。 すると何人かが、観光名所や名産について話をしてくれる。 それを興味深げに訊きながら、さらに話を広げていく。 「そういえば、この国では魔結晶が産出されるのでしょう? 見てみたいわ。どんな綺麗な宝石なのかしら」 「宝石じゃないよセラ。父上が言っていたじゃないか。色々な使い方があるって。 そうですよね?」 くるくるとした目を周りの人に向けて、首を傾げ訊いてみる。 するとさらに何人かの大人が、魔術道具や魔術機械に使われると教えてくれた。 これにリューイは目を輝かせて、セシリアは感心したように応えた。 2人は良家の子女に見えるよう演技してるが、それが周囲には受けている。 リューイは屈託なく人懐っこく話をしていき、セシリアは柔らかな雰囲気の子供のように話を聞いていく。 話をしていく内に、リューイ達の話題に。 これにリューイとセシリアは応えていく。 「両親に、見聞を広めなさいって言われているんです」 「色々な場所に行きました」 「サンディスタムの王宮は大きかったよね」 「ニホンの民芸品も素敵だったわ」 素性には繋がらない当たり障りのないことを話し、話題を繋げていく。 そして情報収集をしていくが、子供相手だと思ったのか、子供が喜びそうな話をしてくれた。 (みんな嘘はついてないみたいだけど、重要な話は聞けそうにないわね) 心理学を修めているセシリアは、表情や仕草から読み取る。 これ以上はここで情報を得られそうにない、と思い始めた時だった―― ――君はこの国で生まれたのか? 魔術通信。 それを受けたセシリアは動揺を抑え平静を装う。 (誰? まさかバレた? もしそうならリューイを連れて逃げないと) 「セラ?」 リューイがセシリアの様子に気付き呼び掛ける。 セシリアは表情を変えず手を繋ぎその場を離れようとするが、その前に男が現れた。 「ようこそ、マーデナクキスへ。楽しい話をしていたね。よければ私にも聞かせてくれないかな?」 人の好さそうなその男は、同時に魔術通信を使う。 ――私は敵ではないよ。同胞を危険にさらしたくないだけだ。話を聞いてくれないか。 「……はい。私達で良ければ」 危険を感じながらも、情報収集を選び、2人は男について行く。 するとサロンの端、他が話を聞き辛い場所でお菓子を振る舞われる。 「ありがとうございます。名前を聞いても良いですか?」 「ロバートだよ」 ――オッペンハイマーだ、お嬢さん。顔は、変えているがね。 それは行方不明となっている筈の男の名だった。 「さあ、好きなのを食べなさい」 ――毒は入ってないよ。 そう言ってオッペンハイマーは先に菓子を食べてみせる。 けれど2人とも笑顔で口にしないため、オッペンハイマーは苦笑しながら言った。 「他のお菓子が良かったかな? それよりも、話をした方が良いかな?」 「ええ、そうして貰えるかしら」 あえて鋭い声でセシリアは返す。 これによりリューイは、今が想定外の事態だということを完全に理解した。 ――賢い子達だね。ああ、それよりも話をしよう。 ――何の話ですか? セシリアも魔術通信で返すとオッペンハイマーは、声では当たり障りのないことを言いながら、魔術通信で警告した。 ――この国から一刻も早く退避しなさい。 ――何故? ――内戦が起るかもしれないからだ。 ――アークソサエティとの戦争では無くて? 踏み込んだ問い掛けに、オッペンハイマーは悲しげな笑みを浮かべ返す。 ――その可能性もあるだろう。どちらにせよ戦いが起る。君は、そんな物に撒き込まれなくても良いんだ。 オッペンハイマーは、リューイを眩しげに見詰めたあと続ける。 ――君には、その子という居場所があるのだろう? なら、大事にしなさい。今の君は、戦闘人形ではないんだから。 動揺をセシリアは飲み込む。自分を落ち着かせるような間を空け、セシリアは問い掛けた。 ――なぜ、そのことを知っているの? ――私達がその計画を叩き潰したからだ。その後に君が、どういう経緯で、その少年の元に辿り着いたのかは知らない。けれどそれは好い巡り合わせだ。大切にしなさい。 優しく、思いやるように、オッペンハイマーは伝えて来る。 それに心をざわめかせ、セシリアは問い掛けた。 ――貴方は、なぜ、そんなに私のことを気に掛けるのですか? ――私達の世代の悲劇を、起こさせないためだよ。それを、死んだ友に誓ったんだ。 「お菓子はまだあるから、ゆっくりしていきなさい」 オッペンハイマーは穏やかな声で言うと、その場を離れようとする。 その直前、魔術通信で再度の警告をした。 ――彼女は、シャルル・クリザンテムの弟子だね? カウンターテーブルで情報収集をしているレオノルに、僅かに視線を向けたあと続ける。 ――マドールチェの過去の真実、そして知識を持つシャルルを狙う者が出るかもしれない。警護をつけるように言っておきなさい。 警告を最後に、オッペンハイマーはサロンから去って行った。 ●市井調査 「どういう振舞いでいればいいのでしょう?」 情報収集のため救護院に向かいながら『ヨナ・ミューエ』は『ベルトルド・レーヴェ』に尋ねる。 「そうだな……東洋医学の先生とその助手という設定で良いんじゃないか? 昔、師とよくやっていた手だ」 「私が助手ですか?」 「なんだ、不満か」 「いえ、そういう訳では」 そんなやり取りをしながら救護院に到着。 「……これは、思ったよりも……」 「……荒れているな」 救護院は随分とみすぼらしかった。 寄付で成り立っているということで期待はしていなかったが、予想を下回る。 建物はボロボロ。その上、入れない人々が外で野宿していた。 「格差が酷いということでしたが……」 「……ヨナ、気を付けろ」 「え?」 声を潜めてベルトルドは続ける。 「この感じはスラムに近い。揉め事に巻き込まれないようにしておけ」 真剣な声に、それが事実なのだと分かる。だが―― 「分かりました。でも、それでは十分な情報収集は出来ません。注意しながら、積極的に行きましょう」 ヨナらしい応えに、ベルトルドは苦笑する。 「分かった。注意しながら積極的に、だな」 「はい」 そうして2人は救護院に入る。 ボランティアで来たと言うと、何人かはカモが来たという表情を見せたが、長身で身体つきの良いベルトルドを見て表情を隠す。 そして炊き出しなどの手伝いをしながら話を聞いていく。 流行っている病気などを聞くと、栄養失調により体調を崩す者が多いようだった。 (薬以前の問題ですね) 手に入りにくい薬に代わる食事療法や民間治療などを勧めるつもりだったが、そもそも食糧自体が手に入らないのではどうしようもない。 だからできることをしながら話を聞いて回っていると、何人かは期待感を込め言った。 「戦争でも起きりゃあよ」 「腹一杯食える」 「寝る所にも困らねぇ」 「金も貰える」 話を聞いていき、ヨナは憤る。 「そんな理由で戦争を……」 「戦争は儲かるからな」 「だからって」 「理想の国の前に今日の飯、だ。おっと、すまないな。口の達者な助手で」 ベルトルドが慣れた様子で話を躱すと、2人は人々から一先ず離れる。 「気付いたか?」 「……ええ。戦争に対する期待が広がり過ぎです。誰かが流してますね」 それは恐らく、救護院に寄付をしている者からのようだ。 どういうことか考えていると声を掛けられた。 「なぁっ、あんたら医者なんだろっ」 見ればそれは10歳程度の男の子。 「医者なら助けてくれよっ。妹が寝込んでんだっ」 話を聞けば、妹が咳が止まらず寝込んでいるという。 「分かりました。行きましょう」 出来ることがあれば、と連いて行くことに。 ベルトルドも苦笑しながら後を連いて行き、道中、ロスト・エンジェルスにまつわる逸話を聞く。 「怒って出て行ったんだってさ」 お伽噺を語るように男の子は応えた。 なんでも、元々この国に居た住人にマーデナクキスの人間が害を加えることに怒り、現地民と共に北に去ったという。 (……拙いですね) カチーナのことを知っているヨナは、それがお伽噺ではなく事実だと判断する。 (守護天使が去ったなら、この国の守りは……) 陰鬱な気持ちを抱きながら、ヨナ達は向かって行った。 その頃、他の浄化師達も情報収集に勤しんでいた。 「景気が良いと聞いて来たのに、これじゃ騙されたようなものだ」 場末の酒場。それだけに市井の人間も多く集まるそこに『ルーノ・クロード』と『ナツキ・ヤクト』は居た。 目的はもちろん情報収集。 現地の声を聞くべく、周囲の空気に馴染むように振る舞う。 「ろくな仕事もありゃしない。どうしろってんだ。あんたもそう思うだろ」 ルーノは、くだを巻くように酒場の店主や客に声を掛けていく。 それに同調するように返す者が居れば、そこからさらに話を広げていった。 (すげーな、ルーノ。俺じゃ無理だ) 少し離れた所で炒り豆を摘まみながら、ナツキは感心している。 ルーノほど話が巧くはないナツキは、周囲に怪しい者が居ないか観察する役割を引き受けたのだが、それが正解だったと改めて思う。 そうして観察していると、少しずつルーノの話に加わる者が増えていき、いつしかキナ臭い話題が出るようになる。 「戦争? ははっ、本当に起るのかい?」 酒に酔ったようにふるまいながら、ルーノは周囲の話を促す。 すると皆は、口々に言った。 「分かんねぇよ。でも、みんな言ってるからなぁ」 「みんな? みんなって、誰だい?」 ルーノの問い掛けに、酔っ払い達が応えていく。 「あ? みんなはみんなだよ。なぁ」 「おおっ、あれだ、とにかく聞いたんだよ。誰だったかは忘れたけどよ」 「そうそう。誰でも良いんだよ、誰でも」 「それより大事なのは、食いっぱぐれねぇってこった」 「そうだそうだ。戦争になりゃ、俺は志願すっぜ。綺麗な服着てよ、ねーちゃん口説くんだ」 「いつ死ぬか分かんねぇ。国のために命を懸けるんだって言ってな」 「怪我しても、死ななきゃ慰労金が貰えんだろ? いーじゃねぇか。兵隊様、万歳だ」 酒が入っているとはいえ、あまりにも軽々しく戦争を語る。それは―― (随分、不満が溜まってるんだな) ナツキは皆の言葉を聞き、表情を見て思う。 どうしようもない日々に膿み、そこから抜け出せる一発逆転のギャンブルを望んでいる。 そう思ってしまうほど、未来に希望を持てないのだろう。だが―― (だからって戦争が起こった方がいいなんて……だーっもやもやする! けど今はガマンだ!) ナツキは炒り豆を噛んで気を紛らわしながら我慢する。 それはルーノも同じだった。 (戦争など冗談じゃない) 嫌悪感を抱きながらも、それを表には出さず話を続ける。 「戦争になれば、一発逆転か。良いね。もしそうなったら、加わりたい所だ」 「へへへ、そうしろよ」 「ああ。とはいえ、そうなったとして、どこに行けばいいのやら。良い当てはないかい?」 「あ? それなら、前になんかそんなこと、話してる奴ら居たよな」 「おお、居た居た。あいつら、なんだっけ?」 噂じみた話をするも、要領がまとまらない。 そんな時だった。ナツキが怪しい奴らに気付いたのは。 (ルーノを見てる?) 酒場の端でルーノを見ながら話をしていた一団が、そのまま静かに酒場を出て行く。 (なんか怪しいな) ルーノは直感に従い、後を付けることにする。 「代金ここに置いとくな」 ルーノに気付かせるように、見える位置で店主に金を払い店を出る。 しばらく進み、あとからルーノも合流。 「何者だい?」 「分かんね。とりあえず後を連けようぜ」 2人は声を潜めて短く言うと、そのまま後を連けていった その頃、もっとも剣呑な場所で情報収集を『エフド・ジャーファル』と『ラファエラ・デル・セニオ』はしていた。 「こんなもんでどうだ?」 男達を叩きのめしたエフドは、油断なく依頼主である男に言った。 「十分だ。そっちの嬢ちゃんは……少しやり過ぎじゃねぇか?」 依頼主の男は、エフドと同じように、何人もの男達を叩きのめし地面に転がしたラファエラに言った。 「別に殺してないわよ」 さらりと返すラファエラ。 手にしたサバイバルナイフには血の一滴も付いてないが、刃のない部分でしこたま殴打しているので、素手で叩きのめしたエフドより聞こえてくる呻き声は多い。 「おっかねぇネェちゃんだな。まぁ、それぐらいの方が良いか」 依頼主の男は返すと、くるりと背を向け続けて言った。 「連いてきな。約束通り、条件が良い所に案内してやるよ」 男の言葉を聞いて、エフドとラファエラの2人は連いて行く。 いま2人は、傭兵という触れ込みで仕事をひとつ終わらせた所だ。 新興のヤクザを死なない程度に痛めつける。 下手に殺すよりも難易度が高い依頼を2人はこなす。 普段べリアルのような怪物や、ヨハネの使徒を相手にしている2人にとって、事前情報さえあれば無理な仕事ではない。 その依頼で2人は報酬を、金以外に求めた。 求めたのは伝手。より暗部へと繋がる組織への橋渡しを求めた。 もちろんそれは、情報収集のためだ。 「しっかしアンタら、随分危ない橋を渡るな」 依頼主の男は、2人を案内しながら言った。 「これから渡りをつける所は、本格的にヤバい所だぜ」 「その分、報酬は良いんでしょう?」 依頼主の男に、ラファエラは軽い口調で返す。 「どうせ仕事をするなら、見返りは大きくて、より栄達を望めそうな雇い主の所の方が良いわ」 「おいおい、欲張りだな、アンタ」 「自分に正直なだけよ」 ラファエラの返しに依頼主の男はクツクツと喉の奥で笑う。 そうして進んでいると、途中から男の声音が変わった。 「こっからヤベー区域だ。気を付けな。ネェちゃんみたいな好い女は、特にな」 「あら、大丈夫よ。相棒がいるもの」 ラファエラは男に応えると、エフドに寄り添うように歩く。 「ここでは離さないわよ、マイボーイ」 「……そりゃどうも」 悪戯めいた声で甘えるように言うラファエラに、エフドは苦笑しながら返す。 同時に、2人は周囲への警戒を怠らない。 (見られている、か?) エフドは、じっとりとまとわりつくような視線を感じ取る。 (退路を塞がれてる感じはないが、用心するに越したことは無いな。いざという時は、黄泉ノ霧で逃げるか) 警戒する中、目的地に辿り着いた。 「見極めは終わってる。そっちの希望通り手練れだ」 「そうか」 その場に居たのは、10数人の男達。 全員が、暴力の匂いを滴らせている。 「ここに来るってことは危ない橋を渡る覚悟はあるんだな?」 リーダー格らしい男が静かに尋ねる。 これにラファエラは不敵に返す。 「ハイリスクでもいいからハイリターンなのをちょうだい。しみったれた身分で終わる気はないの」 「そうか……なら、ウチは打ってつけだ。仕事をやる。今の住処(ヤサ)を教えろ。必要な時に連絡する」 「おいおい、待ってくれ」 エフドが口を挟む。 「あんたが詐欺師じゃないなら、決断を急がせるなよ。せめて職場を見てから決めたい」 そのあとも話を振るが、相手は表情ひとつ変えない。 だからこそ、エフドとラファエラは、あえて危険な橋を渡る。 「俺たち2人を連れて行くぐらい良いだろ? ここだけでも、こんなに人を集めてるんだ」 「……なにが言いたい?」 「なに、戦争準備でもしてるみたいだと思ってな」 「噂のオッペンハイマーの組織ってこんな感じかしら」 ざわりと、明らかに周囲の空気が変わる。 今にも刺してきそうな気配の中、リーダー格の男に、耳元で囁く者が。すると―― 「……いいだろう。案内してやる。連いて来い」 リーダー格の男はそう言うと、他の男達を引き連れ移動し始める。 「……おい。止めとけ、ヤベーぞ」 ここに案内してくれた男の言葉に―― 「あら、好い人なのね、貴方。ありがとう。でも、大丈夫」 「リスクは覚悟の上だ」 ラファエラとエフドは応えると、リーダー格の男の後に連いていく。 短くない時間歩き、辿り着いたのは都市の郊外。 人気のない荒地には、先客が居た。 「エフドさん? それにラファエラさんも?」 それは男の子に連れて来られたヨナとベルトルドだった。 「こいつは――」 「誘い出されたってことね」 状況を理解したエフドとラファエラは、ヨナ達に合流。 すると楽しそうな声が響いた。 「おやおや、思いの外、大勢が釣れましたねぇ」 ねとつくような喋り方と纏う魔力に、ヨナは心当たりがある。 「貴方、まさか、人形遣い」 「素晴らしい。よく気付きましたね」 称賛するように手を叩く人形遣いに、探るようにヨナは言った。 「性懲りもなく……ここでも何か企んでいるのですか。 それは終焉の夜明け団の為? アレイスターの為? それともあなた自身の為?」 「強いて言えば廃品利用です」 笑顔を浮かべ人形遣いは言った。 「……なにを言って――」 人形遣いの真意を少しでも知ろうとヨナは言葉を掛けていく。 同時に、修めた心理学の経験も活かし、感情の揺れに注意する。 けれど人形遣いは、変わらず笑みを浮かべ、平然と言った。 「この世界の生き物は創造神が創りました。けれど、創っただけ。意志や行動を運命で縛らず、自由を与えている。 それは操り人形に糸を付けずに放置しているのと同じです。つまりは、捨てているのと同じです。 だったら、私が自由に使っても良いじゃないですか。命も肉も、ただ好きに使っているだけですよ。楽しく、ね。 私はただ、全ての命を玩具にして遊びたいだけです。自由とは、そういう物でしょう?」 心底本気で笑顔を浮かべ、人形遣いは己が在り様を語った。 そして周囲の配下に合図する。 するとヨナ達を囲もうとするが、そこにナツキとルーノが割って入る。 「こっちだ!」 包囲の一角を崩すように2人は割って入り、その隙に皆は合流。 囲まれないようにしながら、ナツキとルーノがここに来た理由を尋ねる。 「怪しいヤツの後を連けて行ったんだ」 「そうしたら、この場に出くわしてね。どうやら誘導されたようだ」 皆が状況を理解し陣形を取る中、ヨナ達をここに連れて来た男の子が、人形遣いに噛み付くように言った。 「なんだよこれ! 聞いてないぞ!」 「おやおや」 人形遣いは男の子の首を潰さんばかりに鷲掴みにする。 「やめなさい!」 制止するヨナを、人形遣いは楽しげに見詰める。 「おやおや、心配ですか? はした金で貴方達を誘き出すような子供に」 「関係ないだろ。用があるのは俺達なんだから、離してやれよ」 ナツキは出来るだけ刺激しないよう注意しながら、人形遣いに呼び掛ける。 すると人形遣いは、朗らかな笑みを浮かべ言った。 「そうですねぇ。こんな子供、貴方達には関係ない。人質にもならないでしょうね。だから――」 人形遣いは口寄せ魔方陣で喚び出した短剣で、即死にしか思えないほど深々と、子供の首を切り裂いた。 「用済みは殺しましょう。死ねば材料になりますからね」 妙案だというように言いながら、人形遣いは首を切った男の子を投げ捨てる。 「お前!」 ナツキは歯を剥き出しにするほど激怒する。 その怒りは、他の浄化師達も同じだ。 だというのに人形遣いは、笑顔のまま言った。 「貴方達も、使ってあげましょう」 優しげな声で言うと、人形遣いは配下の男達に臨戦態勢を取らせる。そんな中―― 「……ナツキ」 「止めるなよ、ルーノ。ここなら余計な被害は出ねぇ。子供を殺すような奴、ここで止めないと――」 「違う。そうじゃないんだナツキ」 いつもより焦った声を上げるルーノに、ナツキが視線を向けると、他の浄化師達にも警告するように言った。 「あの子供、普通じゃない。気を付けろ」 ルーノの言葉に皆は、首を切られ倒れ伏した男の子に視線を向ける。 (血の跡が、全部消えてる?) エフドが訝しむ中、男の子は切り裂かれた首を急速再生。 のみならず一挙に成長。 着ている服さえも変わる。瞬く間に表れたのは―― 「あの時のべリアル!」 本性を現した3強の1人、最強のトールは、人形遣いの首を引き千切った。 「阿呆が」 頭だけになった人形遣いに忌々しげに言った。 「もう少しバレずに遊ぼうと思ったけど、気が変わった。あの御方を侮辱するな、カスが」 そう言うと人形遣いの頭を握り潰す。 同時に無数の雷球を魔法で生み出し、人形遣いの配下に叩きつけ皆殺しにした。 「どういうことだよ」 臨戦態勢を取りながら呟くナツキに、トールは遊び相手を見つけた子供のような表情で応えた。 「潜入ごっこだよ。色々やってる奴らが居たから、魔法で姿を変えて遊んでたんだ。でも、もういいや。お前らが来たからな」 身構える浄化師達を前に、ふわりとトールは浮かび上がり続けて言った。 「じゃあな。次は遊ぼうぜ。派手にな」 そう言うと飛んでいった。 かくして情報収集は終わる。 それぞれで幾つかの情報を得て帰還する浄化師達だった。
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*** 活躍者 *** |
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[13] リントヴルム・ガラクシア 2020/02/09-15:46
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[12] ルーノ・クロード 2020/02/09-13:37
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[11] リチェルカーレ・リモージュ 2020/02/08-22:18
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[10] クリストフ・フォンシラー 2020/02/08-19:11 | ||
[9] ベルトルド・レーヴェ 2020/02/08-15:06
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[8] リューイ・ウィンダリア 2020/02/08-13:04
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[7] エフド・ジャーファル 2020/02/08-00:55
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[6] レオノル・ペリエ 2020/02/07-23:00
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[5] リチェルカーレ・リモージュ 2020/02/07-20:36
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[4] クリストフ・フォンシラー 2020/02/07-20:30
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[3] リントヴルム・ガラクシア 2020/02/07-19:22
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[2] ルーノ・クロード 2020/02/07-19:08
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