~ プロローグ ~ |
『ロイヤルビー』と言う蜂がいる。 |
~ 解説 ~ |
【目的】 |
~ ゲームマスターより ~ |
~追加情報~ |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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くっ……よもやベリアルと仕事をしなければならないなんて…… 高スケールが3体も居るのにどうしてエクソシストは6人だけなんですかっ! (防護服を見せられ)こっ……な、何ですかこれは!? いくら魔術で保護されるとしても、こんなヒラヒラを着るつもりはありません! 結構です!私はこちらで行かせてもらいます!(Aタイプ) ステラの魔術属性は火ですので相性は良いはず、巣の破壊や蜂の掃討は主にステラを頼りましょう あの子は恥ずかしくないようですしBタイプを着て大暴れするでしょう 私も後に続き、武器で巣を片付けていきます あっ、ステラ!拾い食いはよくないですよ けれど美味しそうでしたから、仕事が終わったら是非頂いてみましょうか |
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なぁにこれ…本当になぁにこれぇ… って思ったけど 甘味の為なら仕方ないわね!! 借りる服はBで 嫌がる相方には無理矢理着させる方針 これはいわば全人類(甘党)の未来の為の戦いよ!! あたしはいいのよ美少女だから! ほら早く!わがまま言うんじゃない!! 無事(?)着せ終わった後は魔術真名詠唱 女王の居場所も探るため巣を破壊 蜂が多い方に女王がいると予測 どちらかが刺された場合は相方と前後を交代 この際我慢して治療も受ける 積極的にスキル使用JM12 もし女王に刺されたら相方にひっぱたいてもらう あたしの甘味への想いはこんなもんじゃないのよ!! あんた達の主に言っておきなさい 甘味の未来はあたしが守ると…! |
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……。 カグちゃんのかわいい服着たところが見れる!と下心もあったけど… 「カグちゃん、酷いよ…」 僕も着るとか最早罰ゲームじゃん…! っていうか防護服なんだよね? なんでこんなヒラヒラミニスカートなの?!(※流石にズボンタイプを着用) っていうか、これメフィストの魔法少女とか言うのの服じゃん? 僕みたいな大胸筋と腹筋割れてるような男が着るものじゃないよね? 両手斧ぶん回す男子が着ていいもんじゃないよね?! こんな物着た時点で僕は社会的に死んでる気がするよ! TM10とTM4で殴る っていうか、第一次産業の供給が安定しても その後の第二次産業のパティシエが居なきゃどちらにしろ供給されないじゃん 黙って供給待ちしてろよ! |
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~ リザルトノベル ~ |
運命とは、システムである。 星が始まったかの時より巡り始めた理は、ただただ淡々と曲輪を回す。 喜びも。悲しみも。 希望も。絶望も。 誕生も。そして、死も。 全ての命を孕み、運命は回る。くるくる。くるくると。 平等に。冷淡に。過ちなく。狂いもなく。 ただ。 ただ、それでも。 巡りの悪い時と言うモノは在る様で。 今回に限ってはその運命殿、どうにも腹の具合が悪かった様である。 ◆ 「こっ……な、何ですかこれは!?!!!」 絶句しかけた所で、何とか声を絞り出した。 延々と夜が広がる、シャドウ・ガルデンはドリムズ高原。ここで行われている養蜂産業。起こった怪事件を解決する為、六人の浄化師が派遣されていたのだが。 何やら、様子がおかしい。 心地良いと言うには些か涼し過ぎる風の中で、魂の叫びを発した『タオ・リンファ』。彼女の手の中には、衣装が一式。何と形容したら良いモノか。ピチピチにフリフリにピカピカ。完全に小さなお子様(一部大きなお友達)に人気な系統の、アレ。 「あ~?」 グデ~と地べたに寝っ転がりながらかったるそうな声で応えるのは、蜂蜜色の帽子とドレスを着た少女。名を『養蜂の魔女 ハニー・リリカル』と言う。何か、微妙な胡散臭さが漂う肩書き。 「何って、防護服。見りゃ分かるでしょうが」 ゴロリと転がって見上げる顔。酷く、やさぐれている。って言うか、多分見ても分からない。 「このヒラヒラの何処が防護服ですか!?」 その態度が、余計にタオの激情を刺激する。 「あからさまに貴女の趣味でしょ!? これ!!」 それ以外の何があると言うのか。 「いくら魔術で保護されるとしても、こんなモノを着るつもりはありません! 結構です! 私はこちらで行かせてもらいます!」 そう言ってふん掴むのは、横にほっぽってあった防護服。微妙にボロい、スタンダードなデザイン。現地養蜂家さん提供。 「にゃにおう!!?」 飛び起きるハニー。 「アンタ、ハニーが半日と四時間かけて作った魔法防護服よりそんなボロが良いと抜かすか!?」 「何ですか!? その微妙な所要時間は!?」 うん。微妙。 「何時間だろうが何年だろうが、私は着ません! 断固として! 絶対に!」 「にゅ……にゅにゅ~!」 強固極まりない意志に、唇を噛み締めて呻くハニー。 「い、いいもん! 好きにしなよ! こっちだって、アンタみたいな二十歳過ぎのB○Aに着て欲しくなんてないもん!!!」 「………」 沈黙したタオ。無言で剣を召喚する。 「……よく言ったな……お前……」 昏く沈んだ眼差しが、ハニーを見据える。何か、口調がおかしい。 「三枚に下ろして蒸籠で蒸して清蒸にしてやるから覚悟しろよ! このオタロリ魔女がー!!!」 あ、これキャラ設定にある暴走口調だ(メタ発言) 「おー! やったろうじゃん! 一年と三か月引き籠って編み出した秘法・ローヤルゼリーミラクルパックでお肌ツルツルのピチピチにしてやんよ!!!」 迎え撃つ構えを取るハニー。また、時間が微妙。そして、癒してどうする? 「お待ちください! リンファ殿!」 本気で斬りかかろうとするタオを、背後から羽交い絞めにする影。全身を鎧で覆った異形。今回の助っ人、スケール4ベリアル・ハチクマ氏その人。 「ええい! 離せ!!」 「なりません! リリカル殿は代えがたき同胞なれば! どうぞ、剣をお納めください!!」 「武士の! 武士の情けーっ!!」 「殿中! 殿中でござるぅ!」 ここ、外なんだけど。 「あンの~」 混沌迷走の様相を醸してきた皆に、のんびりした声がかかる。 「そろソロ始めマヘンか? 日が(昇ってないけど)暮レテしまいマッセ」 「と言ウか、ノンビリしてるとコノ殿方達のメンタルが……」 申し訳なさそうに申し出るのは、クマさんの同僚。スケール3の二人。 その片方。オオアリクイが示す先を見ると。 すでに防護服を着終えた他メンバーの姿。 『ステラ・ノーチェイン』。 着ているのは、当然の様にハニー製。 歳が歳なので、良く似合う。 愛い。 『ラニ・シェルロワ』。 『カグヤ・ミツルギ』。 やっぱり、ハニー製。 女性だし。確か本家愛好家にも同年代がいた筈。 防御力は確からしいし、これも当然と言えば当然。 無問題。まあ、多少本気度は疑われるかも知れないが。 問題はここから。 『ラス・シェルレイ』。 『ヴォルフラム・マカミ』。 男性陣である。 男性なのだが、着ているのはハニー製。 ……どうした? 「………」 「………」 絶句する、タオとクマさん。 (正気ですか!?) (ご乱心か!?) (何か悩みでも!?) (自棄になってはいけませぬ!) 両者、かけたい言葉がある。だが、胸がいっぱいで声が出ない。 見れば、ラスとヴォルフラムの肩も震えている。 「ちくしょう……ちくしょう……」 「カグちゃん……酷いよ……」 直接問うのも何なので、起こった事態を録音音声でお送り致します。 ――ラス・シェルレイ氏の場合――。 「これは言わば、全人類(甘党)の未来の為の戦いよ!!」 「お前、何納得してるんだバカか!? バカだったな!?」 (ドタバタと走り回る音。時折聞こえる、怒声) 「あたしはいいのよ! 美少女だから!」 「畜生! こんな時だけ美少女に逃げるな!! この爆走娘!!」 (また、走る音。ぶつかる音。倒れる音。血も凍る絶叫) 「ほら早く! 我侭言うんじゃない!!」 「おい! 待てやめろ脱がすな!! あーっ!?」 (むしり取る音。被せる音。啜り泣きの声。沈黙) ……可哀想ですね。 ――ヴォルフラム・マカミ氏の場合――。 「カグちゃん、カグちゃん! ねぇ、どっち着るの?」 (下心丸見え) 「ん……。お仕事だし、不安なく遂行するならハニーの防護服がいい、かな……」 「うん! うん! そうだよね!」 (心の中でガッツポーズ) 「けど……」 「ん?」 「1人だけ着るのは恥ずかしいから……」 「うんうん」 「ヴォルも、着てね?」 「うんう……え゛……?」 多少の邪心があったとは言え、これ程の罰を受ける罪過とも思えない。 うん。可哀想。 タオ女史とクマ氏何て声をかけたら良いのか、分からない。己の無力を痛感する。 響くのはただただ、二人の男性の慟哭だけ。 「ちくしょう……何で、何でこんな事に……」 「……僕みたいな大胸筋と腹筋割れてる様な男が着るものじゃないよね? 両手斧ぶん回す男子が着ていいもんじゃないよね?! こんな物着た時点で僕は社会的に死んでる気がするよ!」 言わずもがな。これが線の細い中性的な美少年だったら『男の娘』と言う新境地の逃げ道もあったのだが、生憎二人共大事な女性(ひと)を守るために日々の鍛錬を欠かしていない。 自認するヴォルフラムは元より、比較的細身であるラスも相応に男らしい体格。つまりは何と言うか、その……。 と、咽び泣く二人の前に立つ人影一つ。 視線を上げると、そこには二人をジッと見つめるハニーの姿。しげしげと見て、視線を逸らす。そして、ボソッと一言。 「……キッモ……」 お前だけは、言っちゃいけない。 悪鬼の形相で武器を構える二人。 「乱打暴擲―!!」 「地烈豪震撃―!!」 「殿中でござるぅうううー!!」 トテテと逃げるハニーを、斧振り回して追いかける二人。さらにその後を懸命に追いかけるクマ氏。 「あいつら、楽しそうだな。マー」 「……ステラ。どうか、その澄んだ目をなくさないでください……」 一番苦労と心労を被ってるのがベリアルって、どういう状況なのだろうか。 無邪気な顔で笑うステラにそう言って、タオは頭を抱えた。 ◆ 「と、とにかく仕事を終わらせましょう! そうすれば、全てから開放されるのですから!」 結局意思を貫き通し、普通の防護服を着たタオが叫ぶ。気を引き締めて向かうは、到着時よりも明らかに二回り大きくなった蜂の巣(どうやら、揉めてる内に増設されたらしい) 「全く。こんな事で凹むなんて。軟弱なんだから。見なさい! 馬鹿な事やってる間に手間が増えたじゃない! どうしてくれんの!?」 「……分かった。つまり、ぶ っ 壊 せ ば い い ん だ な」 相方の言葉が聞こえない振りして武器を構えるラス。もはや、ツッコむだけ気力の無駄と判断したらしい。 賢明である。 一方。 「……って言うか、第一次産業の供給が安定しても、その後の第二次産業のパティシエが居なきゃどちらにしろ供給されないじゃん……。黙って供給待ちしてろよ!」 今だに踏ん切りがつかないヴォルフラム。ブツブツと行き先のない恨み節を綴っている。 「大体、何でこんなヒラヒラミニスカートなの?! って言うか、これメフィストの魔法少女とか言うのの服じゃん!?」 「むぅ!?」 何気なく吐かれた言葉に、ハニーの目が光る。 「ちょっと! 何馬鹿な事言ってんの!?」 猛然と詰め寄ると、凄い早口でまくし立てる。 「メフィスト様の『アレ』は『魔法少女』でしょ!? ハニーのは『少女戦士』! 全然違う! ウナギとチンアナゴくらい違う! 無知! 不敬! 愚物! 弁解して撤回しなさい!!」 「ええ!?」 驚きはしたものの、流石に愚物まで言われたらカチンと来る。溜まってた鬱憤も手伝って、つい反論。 この手の相手には、一番の悪手なのだが。 「何言ってんのさ! こっちはヒラヒラキラキラ!」 スカートの端を掴んで強調すると、今度は遥か空の向こう……正確にはその下の何処かにいるであろう『彼ら』を指差す。 「あっちはフワフワピカピカ!」 そして、拳を握って叫ぶ。 「そこに何の違いもありゃしないじゃないか!?」 「違うのだ!!!」 間髪入れず返ってくる。予定調和。 「ホントに、これだから理も真理も知らないオッサンは! ここに緊急用に持ってきた『アンモニア』があるから、鼻にぶっ込んであげようか!? 無駄な雑学がぶっ飛んで、無垢なる真理に近づけるかもよ!?」 酷い罵詈雑言。取り合えず、さっきから二十代の方をB○Aやオッサン呼ばわりするのは止めて欲しい。色んな人に刺さる。 しかし、今度は彼女が地雷を踏んだ。 「……アンモニア?」 反応したのは、カグヤ。神速の勢いでハニーに詰め寄る。怖い。 「へ? な、何!?」 狼狽するハニー。構わず、問い詰める。 「アンモニア……? 蜂の刺傷対策に、アンモニアを……?」 「は、はい。そうですけど……」 「どうして?」 「え、だ、だって、常識じゃん! 蜂の毒は酸性だからアルカリ性のアンモニアで中和……」 カグヤ、じっとハニーを見る。穴が空く程、見る。そして――。 はぁ~~~~~~~~~~。 溜息。深く。そして長い溜息。思いっきし、色んな意味が篭っている。主に、負の方向で。 「ちょ、ちょっと! 何よ!? そのあからさまに『この知ったかが……』って言いたそうな溜息は……」 ガシッ! 抗議しようとしたハニーの肩を、カグヤが掴む。 「……座って」 「は? 何で……」 「いいから。座って」 「は、はい……」 圧が凄い。座る。カグヤも座って、『いい?』と話し始める。 「……アンモニアによる治療は、根拠のない民間療法」 「え……そう、なの……?」 あからさまにショックを受けるハニーに、頷くカグヤ。 「だから、アンモニアは破棄して、水又は氷を……」 「毒嚢を潰さない様にナイフの背等でそぎ落として、体内に入った毒は口で吸い出したりしない様に。……口内に傷があったら意味がないから……」 「流水で洗い流すか氷で冷やして、専門医に受診を……」 淡々と語られる、最新医療情報。打ちのめされていく、ハニー。『養蜂の魔女』を冠しておきながら今までの人生を何に費やしてきたのだろうか。この小娘は。 「……腫れが酷いなら、アレルギー反応かもだから……私が四神浄光で、治す」 「わ、分かりました……」 完全論破。ガックリと崩れ落ちる、ハニー。 所詮、過去と大地にしがみつく旧式。日々アップデートを重ねる教団最強の雑学お化けに勝てる道理なぞ、ありはしないのだった。 「グッジョブでス! お嬢様!」 「最大の邪魔者ガ沈黙したデ!」 喝采を贈るベリアル達。ハニー、完全に障害物扱い。 誰だ。コイツ付けてよこしたの。 「チャンスです! 今の内に、巣を!」 「く……ベリアルと協力するなど……。だが、やむをえません!」 「あんた達の主に伝えなさい! 甘味の未来はあたしが守ると! 罪を抱えて震えて待てと!」 「ぶっ壊す!(そして早く終わらせる!)」 「全部、お前らが悪いんだぁあああ!」 「どっかーん!! わははー! オレは最強だぞー!!」 ここぞとばかりに雄叫びを上げて襲いかかる勇者達。道程は長かったけど。 ドッカンバキボキベッキン! 幾らベリアル作とは言え、巣は普通。魔喰器の攻撃であえなく壊れていく。この調子なら楽勝と思われるかもしれないが、そうは問屋が卸さない。 怒りに燃えたのは、住まう蜂ベリアル達。 不眠不休で作り上げた安寧の居住を、理不尽(?)に破壊される気持ちは如何ばかりか。当然と言えば当然と言える憤激を、ベリアル特有の殺戮衝動が煽る。たちまち体制を整えると、一族郎党猛然と反撃に転じる。 「うおおおお!?」 「わひゃーだゾ!」 「ちょ! これ、スゴ……!」 取り囲んでチクチク……などと言う生易しいモノではない。一匹一匹が針を向けて、弾丸の様にぶち当たってくる。それが、一秒数千匹単位。ほとんど、機銃掃射。 何とか耐えられるのは、身に付けたハニー製防護服のお陰。何だかんだ言っても高性能。張り巡らされる防御結界が、雪崩くる蜂を弾く弾く。……まあ、こんくらいは役立ってくれないと、真面目にハニーが来た理由がなくなるのだが。 しかし、忘れてはいけない。メンバーの中に、この恩恵に与れない者がいる事を。 「きゃー!!」 響く絶叫。思わず、目を向けると、そこには――。 「痛い痛い痛い! 痛いですー!!」 蜂の大群に追い掛け回されて悲鳴を上げる、タオの姿。そう、彼女の防護服は市販タイプ。十回に一回は針が通るのだ。 「マー!」 「やばい!」 急いで駆けつけるステラとラス。暴撃とグラウンド・ゼロで蜂の群れをぶっ叩く。ベリアルとは言え、所詮は虫。あっさり潰れて、襲撃は一旦収まる。 「す、すいません……。とんだ、失態を……」 「マー、だいじょぶか?」 ゼエゼエと息をつくタオを気遣うステラ。カグヤとハニーが駆け寄ってくる。 「大丈夫?」 「ほらほら。だから大人しくハニーのコスプレ衣装を……」 「絶対嫌です! って言うか、今はっきり『コスプレ』って言いましたよね!?」 頑なである。無理もないが。 「いいから。早く治療を……」 「あ、いえ。確かに刺された時は痛かったのですが、今は別に……」 「へ?」 タオの言葉に、首を傾げる二人。はて、毒の影響はないのだろうか。そう思ったその時。 ヒュ~ン。 上から聞こえてくる、妙な音。『ん?』と上を見た瞬間。 カ~ン! 甲高い音を立てて、落ちてきた『タライ』がタオの脳天を強打した。 声も上げずにぶっ倒れるタオ。カグヤとハニーとその他皆さん。呆然と落ちてきたタライを見る。 タライ。そう、タライである。一昔前のコントでよく見た、あの『タライ』である。 「い、一体何が……?」 ヨロヨロと起き上がろうとするタオ。しかし。 カ~ン! カ~ン! カ~ン! 連続で落ちてきたタライが、やはり連続でタオの頭に当たる。狙いが無駄に正確。頭押さえて悶絶するタオ。 「何……? これ……?」 ラニの疑問は、皆の疑問。 「こ、これは!」 タライを拾ったハニーが驚愕する。 「このタライ、オリハルコンで出来てる!」 ……は? オリハルコンとは、世界の何処かに存在すると言う正体不明のなまら固い物質。何でそんな激レアな代物がタライとなって降ってくるのか。 「そうか! 分かった!」 ハニーが叫ぶ。 「この蜂の毒の効果は、『因果集約』!」 「!????!!!???????」 「つまり、この毒に侵されると、世界に存在するあらゆる可能性をランダムに呼び寄せる体質になるんだよ!」 「………」 周囲を包む沈黙。ハニーは止まらない。 「それなら分かる! 頭にオリハルコンのタライが連続して降ってくる可能性だって、人知で思いつく以上十分に存在する!」 同意出来ない。いや、したくない。 「いやいやいや! おかしいでしょ!?」 噛みつくラニ。流石の彼女も、向き合いたくない現実というモノはある。 「こいつら、低スケールでしょ!? スケール1でしょ!? 何でそんな3強連中も腰抜かす様なチート能力持ってんのよ!!?」 「『能力』ではない!」 バッサリ。 「これは『毒』! あくまで『毒』の『効果』! 動悸や呼吸困難、患部の腫れなんかと同じ! その証拠に、ほら!」 バッと示す先には、恐怖に震えるタオと彼女をなだめるカグヤの姿。 「四神浄光・壱で、治った!」 治るの!? 「大丈夫! これは決して攻略不能な負けイベントなんかじゃない! あなた達なら、これまでの戦いを乗り越えてきたあなた達なら! 勝てる! 必ず、勝てる! 立ち上がれ! 奮い立て! 若き浄化師達! 世界の、世界の甘党の願いは、その手に託されているのだから!!」 ……逃げたい。 熱く語るハニーを前に、心の底から思う浄化師達だった。 ◆ その後、凄まじい分析(妄想)力を発揮したハニーによって、毒の効果は『痛い目に会う』、『酷い目に会う』、『とんでもない目に会う』の3パターンである事が判明。 肩書き変えた方がいいだろ。この魔女。 しかし、凄まじく漠然とした内容故、皆の不安は1mmも緩和されなかった。 「ほら。もう大丈夫だから。しっかりしなよ」 「毒は消したから……」 恐らくは『痛い目に会う』効果をカンストしたであろう、タオ(なお、あの後さらに弱点であるお尻を刺され、悩ましく悶絶した挙句に重ねて数発喰らってたりする。彼女の尊厳を守るため、描写は割愛するが)を、両脇に座ったカグヤとハニーが慰める。 「……見ましたか……? 見ましたよね……? 見たんですよね……?」 乾いた笑みを浮かべる、二人。 「忘れてください……今日見た事、全部忘れてください……お願いですから……後生ですから……じゃないと……じゃないと、私……」 ワッと泣き伏せるタオ。完全に、折れている。 「泣かないで。敵は皆が討ってくれるよ。だから、ね?」 言いながら、ハンカチを渡すハニー。受け取りながら、タオは彼女を見る。 「ありがとうございます……。貴女が、こんな良い方だったなんて……」 「いや、それほどでも~。防護服、着る?」 「嫌です」 「ガ~ン」 凹むハニーに、カグヤも問う。 「本当……。さっきは何で、あんなにやさぐれてたの……?」 「いやだってさ~。蜂(あいつら)、ハニーの魔法効かなかったんだよ? 長年培った成果が全然。プライド大崩落。そりゃ、闇落ちもするっしょ~」 「ああ、確かにそれは……ん?」 「……え?」 何か、不吉な言葉を聞いた。 「あの……今、何と?」 「へ?」 「だから……魔法が、何て?」 「いや、だから全然『効かなかった』って……ん?」 固まる三人。 そのまま、そ~っと奮戦する皆の方を見る。途端。 「うぎゃあああああ!!」 「いった~い!!」 「や、やめろ!! そこは……あっ~!!」 「イテテ。皆、だいじょぶか~?」 蓋を開ける、地獄の窯。 とりあえず、ハニー。お前は、帰れ。 ◆ 「きゃ~!! 魔女殺し~!!!」 「ラ、ラニ……待て……落ち着け……」 「うっさいうっさいうっさ~い!!! 殺すのぉ!! コイツ殺してぇ、あたしも死ぬのぉ~!!」 「だから……待て……殺るなら……殺るなら……オレも、混ぜろ……」 「い~や~!! た~す~け~て~!!」 「カ、カグちゃん……違うんだ……違うんだよ……アレは……アレは……アレはぁあああ……」 「(絶え絶えの息で)……わ……かった……分かった、から(ゼーハーゼーハー)……ヴォル……(ゼエゼエ)ちょ……黙って、て……(チアノーゼ寸前)」 「大騒ぎだな~。マー」 「……何で貴女は平気なんですか……? ステラ……」 「蜂の子とかオヤツにしてたからな。ハチにはなれっこだゾ」 (自然育ちって凄い……) ……起こったのは、まさに阿鼻叫喚の無間地獄。 ある者は時空を越えて召喚された自作ポエムをバラ蒔かれ(酷い目)、またある者はこっそり書き溜めていた想い人と自分主人公の夢小説(ちょいエロ)が朗読され(酷い目)、時にはいつかの世界戦争で某国の最終兵器が放った反物質縮退魔力砲が降り注ぎ(とんでもない目)、更にある者は異世界フェミランの姫に破滅の邪神ゾーマデーマに脅かされる民人を救う為に勇者に転生してくれと社会……と言うか、この世界での存在を抹消されかけた(とんでもない目……ここまで来ると、お空の上のロクデナシが余計なチョッカイ出してんじゃねぇかと思えてくるが……)。 そして、仲間と世界を救う為に一人走り回ったカグヤは全ての魔力を最後の一滴まで使い果たしたと言う次第。 力尽きたカグヤを抱き抱え、ヴォルフラムが慟哭する。 「ごめん……ごめんよ、カグちゃん。僕が、僕が無力なばっかりに……」 ラニは拳を地面に叩きつけ、悔しさの涙を流す。 「何て事……。これじゃあ、あたし達に託された世界(の甘党)の願いが……」 「私達は、私達は何の為に……」 と、肩を震わせるタオを誰かがつつく。 「あンのぉ~」 「はい?」 振り返ると、そこには申し訳なさそうな顔の虫狩り三獣士の姿。 そう言えば居たな。こいつら。 「一応、捕まえマシたケんど」 そう言って差し出すのは捕虫管。中には、ゴソゴソ動く10cm程の虫。 女王蜂である。 ……へ? 一斉に振り向く皆。そこには、剥き出しになった養蜂箱が。 「な、何で……?」 「いや。ワテら、上位権限とか言うヤツで、連中ノ毒効きマせんデナ」 「貴公らが気を引いてくれたお陰で、上手くいきましたよ」 「刺されリャ普通ニ痛いデスから。助かリましたワ」 凄く、爽やか。 「では。役目も終わりましたし、我らはお暇しましょう」 「次ニ会う時は、戦場デしょなァ……」 「出来れバ、お会いシタクないものデスワ」 「ご息災を、願っております」 そう一礼して、背を向ける。遠ざかる彼らの声。楽しげに響く。 「結局、ワタクシ達の能力使イませんでしたワね」 「何、刃など抜かずに済むのならそれに越した事はない」 「違いアリませんナぁ。ハッはっはっ」 薄闇の向こうに消えゆく背中。それに、ステラとハニーが声を送る。 「元気でなー」 「道中、お気をつけてー」 呆然と見送りながら、皆は思う。 会いたくない。ああ、会いたくないとも。会えばきっと、この日の悪夢を思い出すから。 中天に昇った月の下、力尽きた戦士達がバッタリと倒れる音が響いた。 ◆ この後、養蜂家の皆さんが慰労として夢魔の誘惑たっぷりのミルクティーを淹れてくれました。 とっても美味しかったとさ。 とっぺんぱらりのぷぅ。
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*** 活躍者 *** |
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[3] タオ・リンファ 2020/02/16-03:18 | ||
[2] カグヤ・ミツルギ 2020/02/15-20:51 |