~ プロローグ ~ |
教団本部室長室。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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…見つかった? ファイネン家から教団へ戻り 養父の捜索願いを出していたので セパルに呼ばれた 『メラヒエス・ナタラ』? テキトーに文字並べたみたいな名前だな 同感と言うセパルを一瞥したのち、 シキ、 …本当に良いのか 引き返すことがアンタは今ならできるんだ …あっそ あと俺はヒューベルトみたいなの好きだけど? 話してるとあくびが出なくて良い まあ…良い父親じゃないな (家の為にあえて”良い父親”を捨ててるんだろうけど) 養父の手がかり『メラヒエス・ナタラ』に会うことを決める で メラヒエスはどこに行けば会える? …ノルウェンディの孤児院? 分かった (メラヒエスに会えば…ツェーザル、アンタにも会えるのか…?) シキ アンタも来い |
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■4 セパル達に前回頼んであった調査の結果を聞きに行く 前回の調査で武士団でのもめ事と聞き、ルーノに懸念が浮かぶ ナツキの親族が関わっているなら無視できない しかし、せっかく見つかった親族がもめ事の最中に居るとしたら 目の当たりにしたナツキが傷付く結果になるのではないか ナツキ:難しい顔してどうしたんだよ? ルーノ:いや…ニホンに行く必要があれば、やはり君も行くつもりかい? ナツキ:そんなの当ったり前だろ! ナツキは親族の新しい情報を心から望んで期待する できる事があれば自分でも動きたいという気持ちは変わらない どんな調査結果でも、ルーノが何かを心配している事がわかっていても 何も知らず何もできないのは、嫌だと考える |
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4 無くした記憶について調べる …多分、私が住んでいた場所を襲撃したのは十中八九終焉の夜明け団だろう 八百万の神を捕まえる為に… 兎に角、マリーとマリエルにその手の情報がないか聞いてみる 守護天使の試練で見た時は、顔は判らないが、少年の姿をしていた 「…だが、養父殿に預けた託された物は……鳥の卵、みたいだった、気がする」 …八百万の神も、番を作ったりする、のか? 養父殿は、長い時を経た樹木が元だ 神ではないと言っていたが、それに近しい者だろう 名をスレイマンと言う お人よしで、お節介焼きで…怪我人や、何であれ一人で森に居る子供を見つけると放っておけない方だ 怪我をした終焉の夜明け団の奴らも彼が保護してるかもしれん |
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4 調査報告のはずがなんでお茶会に…? 調査結果を見つつ渋い顔 家庭教師のうち、男は権力に取り入ろうとしてクビ 女は当主にハニートラップを仕掛けてことごとく失敗、クビ… 中には小さい頃のリントにまでって、少年趣味かよ!? 平民?どれどれ…あ、この男か …駄目だな、消息不明か 叶わぬ想いの果てに夫の逆鱗に触れて終わるとは 運がないというか 男の嫉妬って怖いな、気を付けよう… 収穫無しでむくれるリントに溜め息 こいつ危機感ないのか…? 自分が狙われるかもしれないのに まあいいか 俺コーヒーがいい、淹れてくる キッチンに向かい、コーヒー淹れながら呟く 何かあったら、俺がアンタを守ってやる …もちろんあの二人も、リントの大切な人だからな |
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4 メフィストさんから聞いたわ エフェメラって魔女が、シィラのこと知ってかもしれないって 泣かれたって聞いたけど どんな人だったの? …きっと 優しい人なんでしょう。だってシィラのお師匠さん?だもの あたしは聞いたことないけどね 別に拗ねてない 魔女の話を聞いたことはなく 以前受けた依頼で聞いた魔女に興味津々…弟子かぁ 今すぐにでも会いたい 会って話が聞きたい でも本当に会っていいのかな ガラクタ野郎のせいだったとしても 半分、あたし達のせいみたいなものじゃない ぐるぐると過去の光景が頭の中を巡り …ごめんなさい、やっぱりこの話…みぎゃっ!? ラスに頬を摘まれじたばた ……そうよね 辛くても知りたい だってあたしの「家族」だったから |
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先日以来 明らかに自分や周りの人を避けている彼を探す 『じゃあ 離れないと』 『今度こそ 殺してしまう』 悲痛な声を思い出す シリウスは誰も殺していないと ちゃんと伝えないと 執務室の扉の前に立つシリウスを見つけ 声をかける シリウス 見つけた! 探していたの 冷えた頬にそっと触れて 酷い顔してる…わたしも一緒に行っていい? 側にいたいの 小さな頷きと揺れる眼差しに少し笑う 淡々とした口調と逆に 縋るように握られた手が震えていて 涙をこらえ シリウスの手をぎゅっと握る ショーンさんを助けてと 過呼吸を起こしたシリウスを抱きしめて シリウスがいる場所はここよ どこにも行かないで ショーンさんのことも 室長はわかってくださっているわ …そうですよね? |
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ドクターと共に室長の元へ オクトやシリウスの実験記録に関わる情報を可能な限り提供します オクトへの潜入も教団の目の上のこぶである反教団組織を監視して隙あらば排除するため ただ、当時から実力者だったヴァーミリオンを見て、教団の在り方もおかしいと思った 彼から教団に潜り込めと言われた時、試されていると思った それで情報を探しているうちに、シリウスに会って…結局助けましてね 何で殺されたかはあまり分かりませんよ 多分、前から突っかかってきてたヴァーミリオンの部下の差し金だとは思いますが 室長。どうかドクターとシリウスのことをよろしくお願いします …でなければ、私はまたこの教団を裏切ってしまいそうですから |
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クリスと一緒に、故郷の村の跡地に、来てみました 草以外、何も、なくて わずかに、家の土台だったらしい石が見えるだけで 燃えてしまった、んですものね…… 顔を伏せていたらクリスに手を取られ 連れて行かれた場所は、一面の青い花 これ、勿忘草、ですね…… 「この花はね、喘息の薬にもなるのよ」 頭の中に響いた女性の声 ここ……この場所……ひょっとして、私の家だった場所? 私…リアお姉ちゃんと、お母さんと 花壇に勿忘草を植えて…… 私、小さい頃、軽い喘息があって お父さんが種を手に入れてくれて お母さんが育て方を、教えてくれて 勿忘草が、思い出してと言ってるような気がして そっと香りを吸い込んで 思い出しました 私、この花が大好き、でした |
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~ リザルトノベル ~ |
家族との縁と絆を深め、あるいは過去の自身を知るための指令。 参加した浄化師達は、それぞれ動いていた。 ●養父への手掛かり 「……見つかった?」 ファイネン家から教団へ戻った『アルトナ・ディール』は、セパルから養父についての報告を受ける。 「ほんとに? セパルちゃんツェーザルさん見つかったのか?」 アルトナより先に『シキ・ファイネン』が聞き返す。するとセパルは応えた。 「可能性は高いよ。名前は違うけどね」 セパルから名前を聞き、アルトナは訝しむ。 「『メラヒエス・ナタラ』? テキトーに文字並べたみたいな名前だな」 「テキトー?」 聞き返すシキに、セパルが返す。 「同感。偽名だろうね」 「ああ、なるほど」 納得するシキに、アルトナは言った。 「シキ、……本当に良いのか」 視線を合わせ続ける。 「引き返すことが、アンタは今ならできるんだ」 これにシキは笑顔で返す。 「当たり前! 俺が何であのおっかない父様んトコにアルを連れてったと思ってんの。最後まで付き合ってやるって決めたんだ、俺」 「……あっそ」 どこか照れ隠しのように、アルトナは何でもないかのように返すと、続けて言った。 「あと俺は、ヒューベルトみたいなの好きだけど? 話してるとあくびが出なくて良い」 「アル正気!? 俺は苦手。怖いんだもん」 アルトナの肩に顎をのせながら甘えるように言うシキに、のせたままにしながら返す。 「まあ……良い父親じゃないな」 (家の為にあえて”良い父親”を捨ててるんだろうけど) 心の中で思うが、今ここで口にするべきことだとは思わないので黙っておく。 代わりに、養父の手がかりである『メラヒエス・ナタラ』に会うことを決め、セパルに尋ねた。 「で、メラヒエスはどこに行けば会える?」 「それに関しては、こっちの報告書を見てみて」 手渡された報告書を確認する。 「……ノルウェンディの孤児院? 分かった」 心を決めると、シキに言った。 「シキ。アンタも来い」 必要だと言ってくれるような呼び掛けに、シキは応えた。 「……おうっ」 どこだろうと、アルトナと行けるなら満足だというように、満面の笑顔で言い切った。 「ベリアル討伐でも冒険でも遊びでも、アルトナきゅんとだったらどこへでも行くっ!」 「そうか」 心の中で、悪くない、と思いながら、やわらかな笑みを浮かべるアルトナだった。 ●お家騒動 報告を聞くためにセパルの居る部屋に向かいながら『ルーノ・クロード』には懸念が浮かぶ。 (武士団で揉め事があると言っていたが、ナツキの親族が関わっているなら無視できない) 同時に思う。 (しかし、せっかく見つかった親族がもめ事の最中に居るとしたら、目の当たりにしたナツキが傷付く結果になるのではないか) 懸念を抱くルーノに『ナツキ・ヤクト』は言った。 「難しい顔してどうしたんだよ?」 「いや……ニホンに行く必要があれば、やはり君も行くつもりかい?」 「そんなの当ったり前だろ!」 ナツキはキッパリと言った。 「俺、何がどうなってるのか全部、知りたいんだ。それで何かしなきゃいけないことがあるなら、俺が出来ることならしたい」 そして少し言葉を選ぶような間を空けて続ける。 「ルーノが心配してくれてるのは分かるんだ。でも、何も知らず何もしないのは嫌なんだ」 「……全く、仕方のない奴だ」 ナツキの想いを受け止めるように、ルーノは応えた。 「ナツキがそう思っているなら、私は手助けしよう」 「へへ、ありがとな」 「なに、相棒だからな」 そう言うと拳を差し出すルーノに、自分の拳を合わせるナツキだった。 そして2人は部屋に赴き、セパルから話を聞く。 「世継ぎ争いがあるみたいなんだよね」 セパルの報告にルーノが聞き返す。 「どういうことなんだい?」 「ん~、どうもね、次の跡目を継ぐ筈の子が、出奔しちゃったらしいんだ」 報告書を渡しセパルは続ける。 「前に、8氏族が纏まって武士団を作ってるって言ったでしょ? で、まとめ役は八狗頭家だけど、専横にならないよう、定期的に当主となる家は、持ち回りにしているんだ。 それで最近、当主だった人が亡くなって、次の当主は八狗頭家から出す筈だったんだけど、跡取り娘になる筈の子が出奔しちゃってるんだよ。 しかもその子が出て行ったのと同じ時期に、次の次の当主を担当する斉藤家の跡取り息子まで居なくなっちゃって……。 それで、お互いの家で、お前の家の子が唆して連れ出したんじゃないかとか言うのも居て、ごたごたしてるみたい」 「なんだよそれ……」 困惑するようにナツキが返していると、ルーノは予感を胸に尋ねる。 「……ひょっとするとなんだが、その出奔した人物というのは――」 「ナツキくんの年から逆算すると、お母さんの可能性があるよ」 考えをまとめるように黙る2人に、セパルは提案した。 「前に話した、神選組の一くん。居なくなった斉藤家の跡取り息子の従弟みたい。 色々と、家のごたごたが嫌になって神選組になったみたいなんだけど、ナツキくんのことを話したら、ぜひ話してみたいって。 ナツキくんのお母さんの形見の根付けも、心当たりがあるみたいだから、ニホンに行って話を聞いてみる?」 「ああ、頼む」 「手間を掛けるが、よろしく頼むよ」 ナツキとルーノの頼みを、セパルは引き受ける。 ニホンに渡り、斉藤一との話が出来るようになった。 ●話を聞こう 「……多分、私が住んでいた場所を襲撃したのは十中八九終焉の夜明け団だろう。八百万の神を捕まえる為に……」 守護天使に見せられた光景を頼りに『クォンタム・クワトロシリカ』はマリエルとマリーに尋ねた。 「話を聞いた限りだけど、その時期は、第1期攻勢に出た頃ね」 マリエルは続ける。 「最初は警戒してない所を不意打ちしてたみたいだから、荒らすことはできたみたい。 でもその後、八百万の神と現地の戦士団に全滅させられたと聞いたけど……」 マリエルの応えを聞いたあと、クォンタムは養父について話す。 「守護天使の試練で見た時は、顔は判らないが、少年の姿をしていた。それと―― 養父殿に預けた託された物は……鳥の卵、みたいだった、気がする。……八百万の神も、番を作ったりする、のか?」 これにマリーが返す。 「めったには居られませんし、ましてや番と成られた方との御子が生まれるのは、ほぼ無い筈です。動物系の方で御子を成したのが、数えるほどだったと思います」 「いや、養父殿は、長い時を経た樹木が元だ」 クォンタムは返す。 「神ではないと言っていたが、それに近しい者だろう。名をスレイマンと言う。 お人よしで、お節介焼きで……怪我人や、何であれ1人で森に居る子供を見つけると放っておけない方だ。 怪我をした終焉の夜明け団の奴らも彼が保護してるかもしれん」 これにマリエルが応えた。 「ひょっとしたら妖精の類かも。八百万が死んだ時に、残された力が妖精になることがあるけど、それが何かに宿ることがあるみたい。 実体がある分、普通の妖精よりも活発に動けるし、消耗も少ないみたいよ」 「そうか……」 マリエルたちの話を聞き、考え込むクォンタムだった。 その頃『メルキオス・ディーツ』は室長室に赴きヨセフに頼んでいた。 「ウチから伝書鴉が来たよ」 ヨセフに先を促され続ける。 「タビ砂漠のちょっと外れた所の集落に行商行ったら、オクトっていうのが商談の邪魔してきたって。 まぁ、ウチの部族の商談って荒っぽいからそのせいだと思うけど」 「アークソサエティ以外にも手を広げたか、名だけ騙る輩だろうな」 ヨセフは返し、力になれることはあるかと訊く。 これにメルキオスは返した。 「部族の定住者の方で八百万の神についてと、終焉の夜明け団対策を練りたいから魔術師を何人か寄こして欲しいって。 定住者の長の所のオアシスを守ってる八百万の神が居るんだよ。その八百万の神と、子供達の警護お願いしたんじゃないかな。 子供の方は、僕が誘拐された前例があるからねぇ……」 しみじみと言ったあと続ける。 「子供らに魔術の先生して欲しいってさ。ウチ部族は歌を媒介にした魔術っぽいのがあるけど珍しく攻撃的じゃないんだよねー」 「分かった。手配しよう」 静かに応えるヨセフだった。 ●お茶会で報告会 「ありがとう。マリー、リーちゃん」 バレンタインチョコのお礼を言って『リントヴルム・ガラクシア』は調査報告も兼ねたお茶会を始めた。 折角の機会ということで、マリエルとマリーの2人は、手作りチョコを持参したのだ。 「調査報告のはずがなんでお茶会に……?」 困惑するように『ベルロック・シックザール』は呟くと、自分を見詰めるマリエルに気付く。 不安と期待を浮かべる彼女に、ベルロックはチョコのひとつを食べる。 「……美味い」 「ほんとに? 好かった」 ほにゃりと笑顔を浮かべ喜ぶマリエル。くすくすと笑みを浮かべるリントヴルム。 照れ隠しのようにチョコを食べるベルロックに、皆を微笑ましげに見詰めながら紅茶を入れるマリー。 お茶会は楽しく和やかに。 けれど調査報告書を読んでいく内に渋い表情になる。 今回、目をつけたのはリントヴルムの家庭教師だったが―― 「ほとんどが、何らかの派閥に属する他の貴族からの差し金で、あの家を味方に引き入れるつもりだったみたいだけど……。 ……うん、空振りだねえ」 リントヴルムの言葉に続けるように、ベルロックは調査結果を読み上げる。 「家庭教師のうち、男は権力に取り入ろうとしてクビ。女は当主にハニートラップを仕掛けてことごとく失敗、クビ……。中には小さい頃のリントにまでって、少年趣味かよ!?」 「あ、でも一人だけ、どこの派閥でもない平民出身の先生がいたよね。ちょうどマリーと出会った頃に来た人だよ」 マリエルに笑顔を向けたあと、リントヴルムは続ける。 「唯一、僕を対等な相手として扱ってくれたいい人だったんだけど、どうも母さんに惚れてたみたいだったから、消息不明ってことはつまりそういうことなんだろうね」 ベルロックは調査報告書を見返し返す。 「平民? どれどれ……あ、この男か―― ……駄目だな、消息不明か。叶わぬ想いの果てに夫の逆鱗に触れて終わるとは、運がないというか。男の嫉妬って怖いな、気を付けよう……」 「もー、実家の恥部ばっかり暴露されて有益な情報がないじゃないか! よし、お茶会しよ!」 収穫無しでむくれるリントヴルムにベルロックは呆れ、ため息ひとつ。 (こいつ危機感ないのか……? 自分が狙われるかもしれないのに) そう思っていると、マリエルとマリーが言った。 「手伝えることがあったら、なんでも言ってね」 「力になりますから」 これに笑顔で応えるリントヴルム。 それを穏やかな気持ちで見つめていたベルロックは立ち上がり言った。 「淹れて貰うばかりじゃ悪いし、コーヒーも欲しいから淹れて来る」 マリエルとマリーを手で制し1人で向うと―― 「何かあったら、俺がアンタを守ってやる。……もちろんあの2人も―― リントの大切な人だからな」 コーヒーを淹れながら決意するように言った。 ●決意 「メフィストさんから聞いたわ。エフェメラって魔女が、シィラのこと知ってかもしれないって。泣かれたって聞いたけど どんな人だったの?」 調査結果を聞きに来た『ラニ・シェルロワ』は、応えを待ちきれない様子で尋ねる。 「……きっと、優しい人なんでしょう。だってシィラのお師匠さん? だもの。あたしは聞いたことないけどね」 これに『ラス・シェルレイ』が続ける。 「シィラは色んなことを教えてくれた。歌も戦い方も 魔力の使い方も。まるでまほうつかいだって言った時に―― 『ラスくん。わたしは違うけど、魔女はいるのよ』 って言ってた。その魔女ってのが……もしかしたらそのエフェメラという人かもしれない」 「うん、そうみたい」 セパルは応える。 「命に代えても守りたい人のための魔法を、弟子の子に教えたらしいんだ。 それを使って亡くなった子が居るかもしれないって詳細を話したら、弟子の子だって言って……。 自分が教えちゃったせいだって、ずっと泣いてるんだよ」 話を聞いたラニは思う。 (……弟子かぁ) 今すぐにでも会いたい。会って話が聞きたい。けれど―― (本当に会っていいのかな) 自分を責めるように思ってしまう。 (ガラクタ野郎のせいだったとしても、半分、あたし達のせいみたいなものじゃない) ぐるぐると過去の光景が頭の中を巡り、ついには―― 「……ごめんなさい、やっぱりこの話……」 するとラスが、大きなため息をついてラニの頬を後ろからぐにぐに。 「みぎゃっ!?」 頬を摘まれじたばたするラニを見詰めながら、ラスは言った。 「会いに行きたい。何か言われるのも、憎まれるのも覚悟の上だ」 決意を込め続ける。 「悲しんで泣くほど愛していたなら、きっと憎まれてもおかしくない。そもそも本当に恨まれるなら、止められなかったオレの方だぞ。 それでも知りたい、ラニの言う通り『家族』だったから」 ラスの決意に頷くように、ラニも決意する。 「……そうよね、辛くても知りたい。だってあたしの『家族』だったから」 涙を浮かべるラニに、ラスは元気付けるように―― 「……楽しいなこれ」 ほっぺをぐにぐに。 「ほれほれ、泣きやまないと不細工になるぞ」 「泣いてなんかないわよー!」 戯れ合うように、ほっぺをぐにぐにし合う、ラニとラスだった。 ●忘れずの花 草以外は、僅かに家の土台だったらしい石が残る場所。 そこが『アリシア・ムーンライト』の故郷だった。 村の痕跡は、ほぼ消えている。 「燃えてしまった、んですものね……」 ぽつりと寂しげにアリシアは呟く。すると『クリストフ・フォンシラー』が手を繋ぎ言った。 「アリシア、こっちに来てごらん」 顔を伏せていたアリシアは、導かれるようにその場所に向かった。 「……っ」 連れられた先に広がる、一面の青い花を見てアリシアは、一瞬言葉を失う。 アリシアの様子を気遣いながら、クリストフは言った。 「見事な花畑だね。どうして、この一角だけ咲いてるんだろう?」 それはアリシアの記憶が戻ることを願っての問い掛け。 (花が、切っ掛けになるかもしれない) その思いは、形を結ぶ。 「これ、勿忘草、ですね……」 花を見詰め、おぼろげな記憶が浮かび上がる。 「この花はね、喘息の薬にもなるのよ」 頭の中に響いた女性の声。 それはとても懐かしくて、大切な誰かの声だと、アリシアには解った。 (ここ……この場所……ひょっとして、私の家だった場所?) 記憶を手繰るように言葉が出て来る。 「私……リアお姉ちゃんと、お母さんと、花壇に勿忘草を植えて……」 「アリシアが植えた?」 クリストフは推測する。 (エルリアと、母親と一緒に……村が燃えてしまった時に残った種か根が、その後で芽を出して、七年の間に増えていったんだろうか?) 事実は分からない。けれど真実だと想える事はある。 「きっとアリシアの家族の思いが花に宿ったんだろうね。君が戻ってくるのをずっと待っていたんだと思うよ」 「……」 クリストフの言葉を受け止めるような間を空けて、アリシアは懐かしむように言った。 「私、小さい頃、軽い喘息があって―― お父さんが種を手に入れてくれて―― お母さんが育て方を、教えてくれて」 必死に、アリシアは思い出そうとする。 すると、ふわりと風が吹き、勿忘草をそよがせる。 それが勿忘草の淡い匂いを運んできた。 勿忘草が、思い出してと言ってるような気がして、そっと香りを吸い込んで―― 「思い出しました」 クリストフと視線を合わせ、思い出を伝える。 「私、この花が大好き、でした」 「うん――」 クリストフは小さく頷いて、勿忘草の花園を見詰め言った。 「きっと花たちも、君のことが好きなんじゃないかな」 クリストフの言葉に、やわらかな笑顔を浮かべるアリシアだった。 ●貴方の名前 「オクトやシリウスの実験記録に関わる情報を可能な限り提供します」 パートナーである『レオノル・ペリエ』と共に室長室を訪れた『ショーン・ハイド』は、纏め上げた膨大な量の資料を差し出す。 そしてヨセフに言った。 「オクトへの潜入は、最初は反教団組織への監視と排除でした」 訥々と過去を語る。 「ですが当時から実力者だったヴァーミリオンを見て、教団の在り方もおかしいと思ったんです。 そして彼から教団に潜り込めと言われた時、試されていると思いました。 それで情報を探しているうちに、シリウスに会って……結局助けましてね」 途中から自分のことを語る。 「何で殺されたかはあまり分かりませんよ。多分、前から突っかかってきてたヴァーミリオンの部下の差し金だとは思いますが」 そして懇願するように言った。 「室長。どうかドクターとシリウスのことをよろしくお願いします――」 ――でなければ私は、また教団を裏切ってしまいそうですから。 その言葉を最後まで言わせず、ヨセフは応えた。 「当たり前だ。お前も含めてな」 そしてレオノルに視線を向ける。それは―― 何か言いたいことは無いか? と促しているようだった。黙って話を聞いていたレオノルは、ショーンに向き合い言った。 「ショーン、最後にひとつ良いかな」 緊張するショーンに続ける。 「君の本当の名前は?」 息を飲むショーンに、問いの理由を告げる。 「母親を殺した後、本来の名前を名乗り続けるのは気持ち悪かったろうと思ってさ」 ショーンは少し逡巡したあと呟いた。 「バシリオ・アルベルダ」 名前を聞いて、レオノルは薄く微笑む。 「バシリオ……王の意味か」 レオノルは思う。 (案外危ないのは私よりショーンなのかもしれない。彼の普段の振る舞いは正義の暴走を防ぐためのリミッターなんだろうね。でも――) 「ショーン。私は別に君が何だろうと関係ない」 穏やかに見つめながら言い切った。 「見捨てないし、必ず側にいる。それがパートナーの資格ってもんでしょ」 「……」 言葉を返せないでいるショーンに、レオノルは宥めるように笑顔を向けると、ヨセフに視線を向け言った。 「ね。室長」 「当然だ」 「……ドクター……室長……」 言葉を詰まらせながら、ショーンは泣き笑いのような表情を浮かべる。 それは混じり気のない、何も隠さないショーンの素顔のように見えた。 「ようやく初めまして、か」 嬉しそうな笑顔を浮かべ、レオノルはショーンの名を呼んだ。 「バシリオ」 「……はい」 素顔のままで応えるショーンだった。 ●現在を生きている (――どこに居るの?) 先日以来、明らかに自分や周りの人を避けている『シリウス・セイアッド』を『リチェルカーレ・リモージュ』は探していた。 ――じゃあ。離れないと。 ――今度こそ。殺してしまう。 悲痛な声を思い出す。 (そんなことない!) シリウスは誰も殺していないと伝えたくて、探し続けた。そして―― (見つけた!) 室長室の扉の前に立つシリウスを見つけ、声をかける。 「探していたの」 冷えた頬にそっと触れながら呼び掛ける。 「酷い顔してる……私も一緒に行っていい?」 迷うシリウスに、リチェルカーレは願うように言った。 「側にいたいの」 シリウスを想う眼差しに、小さな頷きを返してくれる。 揺れる眼差しで見つめるシリウスに、受け止めるように小さく笑顔を浮かべるリチェルカーレだった。 そして2人で部屋に入り、シリウスは過去を語った。 ――話をするな。表情を動かすな。感情を、意思を持つな。 ――心を開けば、お前は、その相手を殺す。 かつて投げつけられた言葉を思い出しながら、シリウスは語り続ける。 「……俺はあそこにいた12年、ほとんど会話をしていない」 やや蒼褪めてはいるものの、まっすぐヨセフの顔を見て、投与された薬や実験内容、そして同じ被検体にされた子どものことを語っていく。 (シリウス) リチェルカーレは、シリウスが淡々とした口調とは逆に、縋るように握られた手が震えているのに気付き涙を堪える。 そして涙の代わりに、力付けるように手をぎゅっと握った。 リチェルカーレの助けも借り、シリウスは過去を語り続ける。 「識別番号M013。それが呼び名で、名前を呼んだのはショーンと、011と呼ばれていたルシオだけ。 ルシオが死んで、俺も同じようにここで死ぬんだと思った。 あそこから出られたのは、ショーンが何かしてくれたんだと思う」 自分ではなく、助けてくれたショーンのことを想い、シリウスは懇願する。 「彼が二重スパイをしていたと聞いた。室長、あいつは何か罪に問われるのだろうか。何とか減刑をしてもらえないか? 折角、今、あいつ、笑っているのに……俺がここにいるのが問題なら、実験棟に戻る。だから――」 過呼吸を起こし掛けるシリウスをリチェルカーレは抱きしめ言った。 「シリウスがいる場所はここよ。どこにも行かないで。 ショーンさんのことも、室長は分かってくださっているわ……そうですよね?」 「当たり前だ」 ハッキリとヨセフは言う。 「お前も、ショーンも、他の浄化師も、護る。それが俺の誓いだ。だが、それは俺独りの力では足らん。シリウス――」 机の引き出しから1枚の絵を取り出しながらヨセフは続ける。 「俺は俺の力の及ぶ限り、お前達を護る。だからお前達も力を貸してくれ」 そう言うとヨセフは、シリウスの傍に寄り絵を渡す。 それは小さな子供が描いた絵。 教団服を着た、ヴァンピールの男性とヒューマンの女性の絵だった。 「お前が浄化師としてリチェルカーレと活動し始めた頃、ヨハネの使徒から助けた子供が描いた物だ。兄と妹の2人が、いま浄化師に成るべく魔術学院で生活している。お礼をちゃんと言えなかったから、お前達を描いて気持ちを伝えたかったらしい」 絵を手渡し言った。 「過去を忘れるなとは言わん。だが捕らわれるな。お前に寄り添うのは過去じゃない、今だ。リチェルカーレと同じようにな。 シリウス、お前が今を生き、護り生かした者が居る。過去だけでなく、今も忘れるな」 ヨセフの言葉を聞きながら、絵を受け取るシリウスだった。 こうして、それぞれ浄化師達は絆を巡る。 その先が何処に向かうか分からずとも、幸多かれと、思わずにはいられなかった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[8] リントヴルム・ガラクシア 2020/02/18-23:13
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[7] アルトナ・ディール 2020/02/18-21:59
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[6] ルーノ・クロード 2020/02/17-23:24
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[5] リチェルカーレ・リモージュ 2020/02/17-00:30
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[4] レオノル・ペリエ 2020/02/16-09:33
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[3] アリシア・ムーンライト 2020/02/16-09:26
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[2] メルキオス・ディーツ 2020/02/15-20:57
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