~ プロローグ ~ |
東方島国ニホン、トウホク地方。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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2 リリエラさん お久しぶりです ぺこりと挨拶 すくすくと育っている木々に目を輝かせ シアちゃん見て 皆元気に育ってる! シアちゃんと一緒に植物の世話 余分な枝や葉を剪定 これで護符が作れないかしら その後 守り木の実験のお手伝いを 魔力を注ぐ… うん、それも勿論だろうけれど わたしは願いや想いも この子たちの力になると思うの 「願いの強さが守りの力に」という なんじゃもんじゃ様の言葉を思い出す 気持ちをこめる… リリエラさん 歌を歌ってみてもいいですか? 植物って 言葉をかけると綺麗な花が咲くでしょう この子たちにも試してみたいの 指を組んで歌う 世界に光を 大地に花を 痛みや苦しみがいつか昇華し 明るい未来が来るよう 祈りをこめて |
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ドクターの研究内容が発明じゃないと聞いて少し驚く 赤子…つまり萌芽した分野をちゃんと育てないと役に立つかどうかも議論できないということか… …なんか、ドクターが楽しそうだ…少々見学に… と思った次の瞬間吹き飛ぶ砲弾に唖然 何もしてない筈ないでしょう! …まあドクターが楽しそうでいいか 俺もやりたいことがあるんだ ヨハネの使徒やベリアルに対して有効な毒物はあるだろうか? ベリアルに効く毒薬の調合をやりたい ヨハネの使徒が機械ならばあるいは…ドクターが詳しいか…? 直後ドクターから飛んできた電磁気というワードに困惑 ??電磁気…? いっそ大きな磁力で全部くっ付けて自重で潰す…? セラ、リューイな、何かいいアイデアないか…? |
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アカデミア……ここで、あの植物たちが、育てられてるんですね 楽しみ、です 2 リリエラさん、こんにちは… 今日は、よろしく お願いします、と言おうとしてリチェちゃんの声にそちらを向き わ、あ……見たことのない植物が、たくさん……! 離れた場所でも、言葉を届けられる葉は…どんな感じ、ですか? できれば、自分で育ててみたかった、ですけど どれだけの距離まで、通信が可能なのか、実験してみたい、です それと、この葉は、1対1でしかお話できませんか? 数人で、お話しするのに使えると、便利では、ないかと…… それぞれの植物に合った土の配合や 水やりの頻度を考えてみたり みんな、丈夫に、すくすく、育って下さい、ね 話し掛けて葉をなでなで |
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>目的 アカデミアの研究の手伝いを ニホンは奇跡の塔も近いし 使徒の襲来も多そうだし 何か奴らのコアに働きかけて 動きを止めたり鈍らせたりする方法を探したいな メフィストさんに相談してみよう リ:アシ・ダハーカ戦の時に 沢山の使徒が来たでしょう 結局逃げるしかなかったから 何か対策を立てたいんです セ:できるだけ少ない力で 沢山の使徒に働きかけられるような… 仕留められなくても、動きを止められたら。 使徒の性質や体、コアの情報を確認しながら どんな方法があるのか考える 一度に沢山の使徒にというと 音とか、光とか…? ノルウェンディでは 魔力のデコイを使っていたけれど あんな風に探査能力を狂わせるのもひとつの方法かな? |
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ふむ…色々な研究ができる施設か これは素晴らしいな 先生が見たらさぞ喜ばれるだろうに これはつぶさに見学していかねばなるまい ヴィオラと共に魔術砲や植物を見学し 彼女と分かれ源内の所へ 3 お初にお目に掛かる源内殿 一つ相談があるのだが、蒸気機関車の仕組みはご存知か? あれを馬車くらいコンパクトにできたりしないだろうか 蒸気が動力源では無理かもしれないが 魔術砲のように魔力を利用するとかでできそうだと思ったのだが レールのない街道を馬車くらいの機関車のような物が行き来できるようになれば 遠くの土地までの移動が楽になるのではと考えてな 私もこれでも研究者の端くれ もし時間が掛かってもできそうなら一緒に研究させては貰えないかと |
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メフィストさんに会って色々とお話をしましょう 試しに私とステラ、二人の分の魔結晶の生成をお願いしてみます。実は初めてなんです、自分から生まれた魔結晶を見るのは……っと、むしろ経験のある人の方が少ないですよね これってつまりは魔力の塊ですが、何かのエネルギーに使えたりするのでしょうか? そうだ、メフィストさんが凄い方なのはこの間のことで分かりました そんな彼の知識なら知っているやもしれません 錬丹術のことについて訊ねてみます。私の母も研究していた魔術と医学薬学の複合技術……のはずなのですが、当時はまだ子供だったので詳しいことは…… でも、母に少しでも近づいてみたいんです それを用いた発明……もひょっとしたら? |
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1+3 破壊音やら話の内容を聞き部屋に飛び込んで挙手 はいはいはい!!実験手伝う!やらせてやらせてーっ!! いつもよりテンションMAX 実験の手伝いへ あくまで足止めを目的として JM8で気を引き、JM11で足止め 魔術砲使用の際は射線上に立たない 攻撃時は足や足元を狙い 何それ!?こないだのアレ? これって剣とかに加工できないの?(残骸ツンツン コアへ致命的な攻撃を与えられる効果とかさ え?そんな都合のいいものない?そーよねー 脅威は重さと速さ あとは感知能力よね 魔力で探すんだから ねぇ、魔力探知を邪魔できるようなものを開発したら? …って言うのは簡単かぁ、流石に でもそんなものができたら、他にも使えそうじゃない? |
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ヨ 技術や知識があれば神の作り出した脅威でさえ景気に繋がるなんて 人は逞しいものですね べ ああ ここまでになったのも出資者とここの人々のお陰だ ナディヤもすっかり馴染んで… その 見事な縄さばきだな… (縛られてる二人を見ながら 1 実験の手伝い ヨ ザッハークの残骸を防具だけでなく魔術砲に ですか ベ 確かに大砲にして使ってもそれに耐えうる強度だろうし なるほどな ヨ しかももう実用段階まで出来ているなんて 源内さんはああ見えて凄い方なんですね ベ (苦笑 強度や命中精度の確認をしながら少ない魔力量でも最大限に威力を引き出せるような工夫を考える 私のように魔力量が多い者の魔力のストックが出来れば使い勝手は更によくなるのでしょうけども |
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~ リザルトノベル ~ |
万物学園。 指令で訪れた浄化師達は、それぞれ自由に巡っていた。 「ここが学園。でかいな……!?」 教団本部の魔術学院よりも広い学園に『ラス・シェルレイ』は感嘆の声を上げる。 「そうよね。それになんだか楽しそう」 ラスに同意しながら『ラニ・シェルロワ』は珍しそうに周囲をきょろきょろと。 見れば人間種族だけでなく、化け狸に妖狐に烏天狗といった妖怪もちらほらと。 「ラス! ドラゴンまで居るわよ!」 ラニの言葉通り、ドラゴンまで闊歩して、種々さまざまな学園生が見て取れた。 「賑やかで良いわね」 「ああ。とはいえ――」 ドンっ! ボンッ! ドガガン! 「あちこちから変な音が聞こえるのは気のせい……じゃないよな」 「何かやってるみたい。見に行きましょう」 好奇心一杯の眼差しでラスを見詰めたあと、ラニは足取り軽く向かって行く。 そのあとをついて行くラス。 向かう先には、他の浄化師も。 「私の研究は発明とは違って浮世離れしてるよ」 学園第一実験場。そこに向かっている『レオノル・ペリエ』は、一緒に連れ立っている『ショーン・ハイド』に応えた。 「そうなのですか?」 少し驚いて聞き返すショーンに、レオノルは返した。 「大体今すぐ役に立つかなんて些末な問題だよ。赤子が何の役に立つのです? って奴だよ」 (赤子……つまり萌芽した分野をちゃんと育てないと、役に立つかどうかも議論できないということか……) ショーンなりに理解していると実験場に到着。 そこには魔術砲が置かれていた。 「へー! すごい大砲!」 見つけるなり、新しいおもちゃを見つけた子供のように走り出すレオノル。 「……なんか、ドクターが楽しそうだ……少々見学に……」 レオノルの様子を微笑ましそうに見ていたショーンだったが―― 「どうやって使うの? 魔力込めるの? えぃっ」 レオノルが魔力を込めた瞬間、思いっきり飛ぶ砲弾。 ヒュー……――ドンっ! 「何もしてないのに砲弾が!」 「何もしてない筈ないでしょう!」 とはいえ学園生は、こういうことに慣れているのか平然と言った。 「ええやんええやん。ちょうど実験する所やってん。連いて来ぃへん?」 話を聞けば、学園に近付くヨハネの使徒にぶっぱなしに行くという。 「実験でけて、ヨハネの使徒の残骸もゲットでけて、2度美味しいわぁ。どない?」 巫女さん姿の妖狐の提案に―― 「はいはいはい!! 実験手伝う! やらせてやらせてーっ!!」 話を聞きつけたラニが、いつもよりテンションMAXで手を上げて立候補。 「おいラニ!?」 思わず話を聞くように言うラスだったが―― 「……あぁ、そういうことか。そういうことならオレ達にもやらせてくれ」 話を聞いて乗り気になる。 同じようにレオノル達も参加することに。すると妖狐が応える。 「ええよ。やけどちょっと待ってな。学園長も来るみたいやけぇ。その間に、魔術砲でポン菓子でも作ろか」 そう言うと妖狐は、米を魔術砲の砲身に放り込み、蓋をして加熱。 すると、わらわらと集まる学園生。慣れているのか、砂糖にチョコソースに蜂蜜を持って来た。 そんな平常運転な学園生活が送られている中、学園長室に『ヨナ・ミューエ』と『ベルトルド・レーヴェ』は訪れていた。 「元気そうねぇ、キティ」 「ナディアさんもお元気そうで」 「ええ、幸いね。黒猫のキティは、ふふ、教団の制服、似合ってるわよ」 ベルトルドの姿を見て、ころころと機嫌よくナディアは笑う。 そうして少し歓談する。 「技術や知識があれば神の作り出した脅威でさえ景気に繋がるなんて、人は逞しいものですね」 最近の状況を聞いたヨナは感心するように言う。 「ああ。ここまでになったのも出資者とここの人々のお陰だ。ナディヤもすっかり馴染んで……」 ベルトルドは、途中で言葉を詰まらせると、目の前の光景に突っ込むように言った。 「その、見事な縄さばきだな……」 縄で縛られているメフィストと源内。 「また逃げ出そうとしたから捕まえたのよ」 「またって……」 呆れたような視線をヨナが向けると―― 「助けて下さーい」 「ヘルプっすよー」 憐れっぽい声を上げる2人。 「このまま連れて行くか」 「そうですね」 逃げられないよう縄で縛られた2人を伴って、ナディアと共に魔術砲の実験に向かうベルトルドとヨナ。 実物を見ると、思わず感想を口にする。 「ザッハークの残骸を防具だけでなく魔術砲に、ですか」 「確かに大砲にして使ってもそれに耐えうる強度だろうし、なるほどな」 「しかももう実用段階まで出来ているなんて、源内さんはああ見えて凄い方なんですね」 感心するように言いつつも、縄で縛られて逃げようとした所を電撃魔法でお仕置きされる源内を見て、微妙な表情になるヨナ。 そんなヨナと源内の様子に苦笑するベルトルドだった。 そして実験開始。 「叫びよ、天堕とす憎歌となれ」 ラスとラニは魔術真名を唱え、ヨハネの使徒を1か所に集める。 ラニはソードバニッシュで斬りつけると、反撃してきたヨハネの使徒を避け、カウンターの磔刺。 脚部を地面に縫いつけるようにして串刺しにすると機動力を奪う。 同じようにラスは、粉骨砕心からパイルドライブへと繋げ脚部を破壊。動けなくする。 「良いわよー。やっちゃって」 ラニとラスが射線上から離れたのを見計らい、まずはレオノルが試す。 「魔術を込めたらどうなるのかな?」 ソーンケージの魔術式と魔力を魔術砲に注ぎこむと、撃ち出された砲弾は着弾と同時に拡大されたソーンケージを周囲に展開。 魔力の茨に絡め取られ、じたばたするも動けないヨハネの使徒。 「チャンスよ。止め刺しちゃいましょ!」 ラニは魔術砲にソードバニッシュを込め発射。 着弾と同時に、無数の衝撃波が発生しヨハネの使徒を切り刻む。 「よし! このままバラバラになっちゃいなさい!」 目をギラギラさせて、次々ぶっ放すラニ。そんな彼女に―― 「あんまりやり過ぎると部品が採れないからほどほどにな」 ラスは止めるようでいて、特に止めない。するとラニは―― 「なに言ってんのよ!」 ググッと握り拳で反論する。 「あたしにとってアイツらは何よりもぶっ殺したい連中よ。その為に浄化師になったんだもの。こんな機会そうそうあるもんじゃないし、ラスもやっちゃいなさい!」 「そうだな……」 ラスは小さく頷き応える。 「そもそもの発端は、使徒が町に来たことだからな。あいつらさえ来なきゃ、オレ達も彼女も……ま、だからといって突っ走りすぎるわけにはいかない」 「じゃ、ラスは使わないの?」 これにラスは、魔術砲を見てポツリと呟く。 「大砲は、浪漫があるよな」 「でしょでしょ。やっちゃいなさいよ」 「そうだな」 という訳で、ラスも参戦。パイルドライブを魔術砲に込め発射。 「よし! 命中!」 「その調子よ!」 着弾と同時に魔力で形作られた杭が周囲に撒き散らされ、ぶっ刺さるヨハネの使徒。 ヨハネの使徒は瞬く間に全滅した。 残骸を回収していると、おかわりのヨハネの使徒がやってくる。 「次は私に試させて下さい」 ヨナが意気込み魔力を込める。 ヒュー……ドンっ! ドガッ! ズガガッ! オーパーツグラウンドを込めて撃ったので、魔力で形作られた無数の武器でズタボロにされるヨハネの使徒達。 「これは……ひょっとすると、魔力のストックが出来るのでは?」 試しにオーパーツグラウンドを込め、撃たないで置いておく。 「いけそうですね。ベルトルドさん」 「……俺が試せばいいんだな?」 目をきらきらさせるヨナに軽くため息をついて、ベルトルドが試す。 するとヨナと同じように、オーパーツグラウンドの効果を撒き散らす弾を撃ち出せた。 「これは、面白いですね」 魔術研究者として刺激されたのか、繰り返し撃つヨナ。 何発もの砲の音が周囲に響く。 魔術砲の実験は盛況。 そこに見学に向かう者達も。 「ふむ……色々な研究ができる施設か。これは素晴らしいな。先生が見たらさぞ喜ばれるだろうに。これはつぶさに見学していかねばなるまい」 「そうですね、シャルル伯父様が見たら興奮してはしゃぎそう、ふふっ」 学園を見て回りながら『ニコラ・トロワ』と『ヴィオラ・ペール』は実験場に向かう。 その道中、『リューイ・ウィンダリア』と『セシリア・ブルー』と合流した。 「ニコラさん達も魔術砲を見に行くんですか?」 「ああ。後学のためにも、ぜひ見たい」 リューイの問いにニコラが返しながら、皆で実験場に到着。 ドンっ! ドゴッ! 「うわ、すごい」 「音が空気を震わせている気がするわね」 リューイとセシリアは、大きな砲音にふたりして目を見張る。一方ニコラは―― 「ふむ。射出エネルギーは魔術式か。蒸気を利用して同様の効果を出すには――」 研究者として、自分の分野で代替できないか試算していた。 そんなニコラを、ヴィオラは微笑ましげに見ている。 そうして2人が感心する中、ヨハネの使徒を全滅させて実験終了。 残骸は、学園生が拾ってくれるということで、皆は他の場所に見学に行くことにした。 その頃、学園の植物研究を行っている場所に、他の浄化師達も向かっていた。 「アカデミア……ここで、あの植物たちが、育てられてるんですね。楽しみ、です」 学園を歩いて見ながら『アリシア・ムーンライト』は期待を込めて言った。 これに『クリストフ・フォンシラー』は返す。 「うん、楽しみだね。それにしても――」 広々とした学園を眺めクリストフは続ける。 「いや、凄いな、この学園。まさかここまでの物ができてるとは思わなかったよ」 賛同するアリシアだった。 同様に学園を巡っているのは『リチェルカーレ・リモージュ』と『シリウス・セイアッド』。 「色々な人がいるわね、シリウス。妖怪さん達も一杯いるわ」 様々な種族が学園内を共だって歩いているのを見て、リチェルカーレは目を輝かせる。 「学園では、みんな仲良く出来ているのね」 嬉しそうなリチェルカーレの様子に―― 「ああ、そうだな」 シリウスは心地好げに、目を細めて見ていた。 そうして皆が目的地に向かう中、『タオ・リンファ』は『ステラ・ノーチェイン』を捕まえていた。 「ステラ。物珍しいからって、あっちこっちに行っちゃダメです」 遊び場に来たように、はしゃいであちこち走り回っていたステラにタオは言う。 「私達は指令で来たんですから」 これにステラは元気良く応える。 「分かってるぞ、マー! ひげに会いに来たんだよな!」 「髭って……まぁ、メフィストさんは、確かに髭が生えてらっしゃいますけど――」 ステラにお行儀よくするようにリンファが言おうとすると―― 「マー! キツネだ! キツネがタヌキと一緒にドラゴンの背中に乗ってるぞ!」 ドラゴンの背中に乗って移動している化け狸と妖狐を見つけ、興奮したようにダッシュする。 「ステラ! だから遊びに来たんじゃないんですよ!」 慌てて追いかけるリンファ。 どうやらしばらくは、メフィスト達に会えなさそうである。 そうしている間に、アリシアとリチェルカーレは研究所に到着。 「リリエラさん、こんにちは……今日は、よろしく――」 先に着いていたアリシアが魔女のリリエラに挨拶していると、同じように来たリチェルカーレも挨拶する。 「リリエラさん。お久しぶりです」 ぺこりと挨拶。気付いたアリシアは嬉しそうに声を掛ける。 「リチェちゃん」 これにリチェルカーレは笑顔で応える。 「シアちゃん見て、皆元気に育ってる!」 すくすくと育っている木々に目を輝かせる。 リチェルカーレの言葉に、アリシアも木々に視線を向け喜ぶ。 「わ、あ……見たことのない植物が、たくさん……!」 喜ぶアリシアは、リチェルカーレと一緒に植物を見て回っていた。 そうしていると、魔術砲の実験が終わった浄化師達が、メフィストと源内と一緒にやって来る。 そこで、ここに残って魔法の植物に関わる者と、メフィストと源内に要望を伝え新しい発明品を考える班に分かれることに。 「アリシアは植物を見に行くんだね。行っておいで。俺は……メフィストに相談したいことがあるから、そっちに行くよ」 「はい。行ってらっしゃい。クリス」 笑顔で手を振るクリストフに、アリシアは同じように手を振って。 「シリウスも、好きな場所を見て回ってね」 「ああ」 リチェルカーレは笑顔でシリウスを送り出す。 シリウスは離れ際、木や花を見て笑顔を浮かべているリチェルカーレを見詰め、静かに息をつく。 それは自分と離れたリチェルカーレが、自然な喜びを感じているように思えたからだ。 どれほど、リチェルカーレに平気だと言われても。そして思おうとしても、今は隣に立つのが怖くて息さえ出来ない。 そんな自分に嫌気を感じながら、シリウスは静かにその場を離れた。 「魔術砲もすごいですけれど、ここの植物、見事ですねぇ。ニコラさん、私、ちょっとここ見てていいですか? 終わった後で合流しましょう」 「ああ、分かった。私は蒸気機関の運用で源内殿と話したいことがある。そちらも好きに見て回ってくれ」 冷静な表情で、けれどうずうずしている様子のニコラを微笑ましげに見詰めながら、ヴィオラは送り出す。 「俺達はどうする?」 「新しい発明品にも興味がありますが、以前持ち帰った魔法の植物がどうなったかも気になります。こちらを見たあとで、向こうにも行きましょう」 意気込むヨナに、苦笑するベルトルド。 「私達は、向こうに行きましょ。ガラクタ野郎を更にガラクタに出来る発明品が出来ないか聞いてみる」 「そうだな。聞いてみよう」 ラニとラスは、ヨハネの使徒撃破に燃え向かう。 「ドクター。私も幾つか試したいことがあるので、向こうに行こうと思うのですが」 「うん、良いと思うよ。私も聞きたいことあるし」 ショーンとレオノルは、それぞれアイデアを考えながら向かう。 「セラ。僕はアカデミアの手伝いに行こうと思うんだ。ニホンは奇跡の塔も近いし、使徒の襲来も多そうだし、何か奴らのコアに働きかけて 動きを止めたり鈍らせたりする方法を探したいんだ」 「良いわね。話を聞いてみましょう」 リューイとセシリアは、以前ノルウェンディでの、無数のヨハネの使徒と戦った時のことを思い出しながら向かう。 それぞれが向かう中、メフィストを見つけたステラとリンファは駆け寄る。 「おーヒゲだ! また会ったなヒゲ! こないだな、ヒゲをほめてるまじょに会ったぞ、すごいほめてたぞ!」 「えっと……不思議ちゃん、でしたか。彼女に会いました、あれを会ったと言っていいかは微妙なのですが……」 「引きこもり! らしいぞ! なんか治す薬とかないかー?」 「おー、あの子ですかー。外に出たくなるような娯楽か、友達が良いでしょうねー。今度、何か喜びそうな物を持って行ってあげましょー」 メフィストの応えに、リンファは続けて言った。 「あとは、この前会ったハニー・リリカルさんからも少し話題が出ました、魔法少女と少女戦士は違うとかなんとか……どうしてあんなにヒラヒラしてるんです?」 「摂理でーす! あとはリビドーとポリシーですねー!」 「……そうですか」 これ以上突っ込んだことを訊くと、趣味人の拘りを聞かされそうなので、とりあえず止めておく。 こうして、それぞれ分かれて行動する。 「離れた場所でも、言葉を届けられる葉は……どんな感じ、ですか?」 アリシアが、以前なんじゃもんじゃから貰って帰った魔法の植物について尋ねる。 「伝葉の木なら、この子よ」 リリエラに案内され、1mほどに育った数本の木の前に連れて行って貰う。 「試してみて」 リリエラは数枚葉を取ると、皆に渡す。受け取ったアリシアは、試しに喋ってみた。 「聞こえ、ますか?」 これに皆は返す。 「聞こえるわ、シアちゃん」 少し離れた場所からリチェルカーレが応え。 「聞こえます。私の声は、届いていますか?」 反対側に離れたヴィオラが応えを返すと、自分でも話してみる。それに興味深げに返したのはヨナ。 「私も聞こえます。複数同時に話せるみたいですね」 皆の応えを聞いて、アリシアは感心するように言った。 「みんなと、お話、出来るんですね。1対1じゃなくて、数人で話せるなら、とても便利です」 これにリリエラが返す。 「ええ。同じ木の葉っぱなら、持っている全員で話が出来るの」 「そう、なのですか? 話せる距離は、どのくらい、なんでしょう?」 「本体の木を中心として1キロぐらいね。本体の木が、葉っぱから伝わる情報を中継して伝えてくれるの。でもそれ以上離れると、葉っぱだけの能力で声をやり取りできる距離は、50mぐらいになっちゃうわ」 「50m、ですか。それでも、すごいです」 アリシアは感嘆すると、伝葉の木を静かに見つめ言った。 「この木は、成長が、早いんですね。種を、持ち帰ってから、それほど経ってないのに、こんなに大きく」 「魔法の植物だから、魔力を注いであげると早く育つの」 リリエラは木の幹に手を当て魔力を流して見せる。するとゆっくりとだが、新しい葉っぱが生えてきた。 「試しに育ててみる?」 「良いん、ですか?」 アリシアは嬉しそうに聞き返す。 自分でも育ててみたかったアリシアとしては願ってもない申し出だ。 「みんな、丈夫に、すくすく、育って下さい、ね」 話し掛けて葉を撫でながら魔力を注いでみる。 すると応えるように、葉っぱが喜ぶようにざわめいた。 「喜んでるみたいね」 リリエラはアリシアと伝葉の木を慈しむように見詰めたあと、続けて言った。 「その内、色々な場所で植えられるようにしたいの。そうすれば沢山の人が、離れていても話せるようになる筈だから。その時は手伝って貰えるかしら?」 「はい」 嬉しそうにアリシアは応えると、リリエラと共にそれぞれの植物に合った土の配合や水やりの頻度を考え話し合った。 アリシアと同じように、リチェルカーレも貰って帰った木の様子を見に行く。 「リリエラさん、剪定するのは、この枝で良いかしら?」 アリシア達と一緒に守り木の世話をしていたリチェルカーレは、余分な枝をどうすれば良いか聞いてみる。 「ええ、その枝で良いわ。切る時は、枝の根元を切ってあげてね」 リリエラに教えられた通りに、鋏でぱちん。 「これで護符が作れないかしら?」 数本切り落とした枝を手にしたリチェルカーレは、このまま処分してしまうのは忍びないと訊いてみる。 「加工と追加の材料が要るとは思うけど、作れると思うわ。折角だから後で処理をしておいて、教団の本部に送っておくわ」 「ありがとうございます」 リチェルカーレは笑顔で返すと、1mほどに育った守り木にそっと手を当てる。 「リリエラさん。この子も、魔力を注いであげると良く育つんですか?」 「ええ、育つわ。試しに、魔力を注いでみて」 リリエラにコツを聞いてから、リチェルカーレは魔力を注いでみる。 すると守り木は応えるように枝葉をざわめかせた。 「喜んでるみたいね」 リリエラの言葉にリチェルカーレは笑顔で応え、もっと守り木のためにしてあげられることは無いかと考える。 (魔力を注ぐ……うん、それも勿論だろうけれど) 「何か良い考えが浮かんだの?」 リリエラに訊かれ、リチェルカーレは応える。 「はい。私は願いや想いも、この子たちの力になると思うんです」 なんじゃもんじゃから受け取った時の言葉を思い出す。 (願いの強さが守りの力に) 「リリエラさん、歌を歌ってみてもいいですか?」 「歌?」 「ええ。植物って、言葉をかけると綺麗な花が咲くでしょう。この子たちにも試してみたいの」 これにリリエラは笑顔で返す。 「良いと思うわ。聞かせてあげて」 するとリチェルカーレは、指を組んで歌う。 「世界に光を。大地に花を――」 透き通るよう歌声が、守り木に響いていく。 痛みや苦しみがいつか昇華し、明るい未来が来るよう。祈りをこめて歌を奏でた。 その歌声に応えるように守り木は、蛍火のような光の塊を生み出す。 リチェルカーレの歌声に合わせ明滅し、歌の終わりと共に、木の幹に還って行った。 「今のは?」 「この子の化身みたいな物ね」 リリエラが応える。 「この木は、なんじゃもんじゃさまの枝だったものだから。他の木よりも、八百万の神に成り易い筈よ。貴女の歌に応えてくれたんでしょうね」 リリエラの言葉に、嬉しそうに笑顔を浮かべるリチェルカーレだった。 そうして持ち帰った魔法の植物を気に掛けるのはヨナも同じだ。 「順調に育っているようだな」 1mほどになった吸血木の様子にベルトルドは言った。 「実も付けているようだが、軽々しくアシッド地帯まで治験しにいく訳にもいかんだろうし、流通まで考えるとまだまだ課題は多いだろうな」 見れば、掌に乗る程度の大きさの、赤い実が幾つかなっている。 「そうですね。実用化の段階に持って行くまでには、まだまだ試験は必要でしょうし」 「ああ。気は急くが時間をかけて取り組まねばならないだろうな……今は希望者だけでも吸血木の実を継続して摂取して貰えたら嬉しい」 ベルトルドの言葉に、リリエラは返す。 「今のところ確認できた範囲だと、感染してすぐの子なら、ひとつ食べさせるだけで体内のアシッドを滅菌できるみたい。それと――」 リリエラは、実をふたつ採って渡すと言った。 「とっても美味しいの。食べてみて」 勧められて2人は、ちょっと迷うような間を空けて食べてみる。 「これは」 「美味いな」 イチジクに似た食感の吸血木の実は、コクのある甘味と旨味が口の中いっぱいに広がる。 飲み込めば、すっきりとした爽やかさが、後味として程よく残り消え失せた。 「美味しいでしょ? 感染する前に食べていれば、数日は予防効果があるし、量産できれば医食同源みたいに、食べて感染予防が出来る実として広がると思うわ」 リリエラの言葉を聞いて、ヴィオラは興味深げに訊いた。 「リリエラさん、少しお伺いしますけれど、ここにはお野菜とかフルーツなんかはありますか?」 「ええ、一杯あるわ」 リリエラの応えを聞いてヴィオラは自分の考えを口にする。 「私、常々思うんですけれど、通常食べている野菜や果物に、体力や魔力の回復効果や自己治癒力アップを付与できないものかと」 実家がレストランで、自身も料理人を夢見ていたこともあるヴィオラは続ける。 「そのまま食べても効果はあるけど、組み合わせて料理することによって、相乗効果でその威力が大きくなったりするといいなって」 「好いわね。とても素敵なアイデアよ」 喜ぶリリエラに、ヴィオラは笑顔で言った。 「そんな料理ができれば、持ち運びできるお弁当やおやつにして、回復藥代わりに持ち歩いてもいいかもしれませんよね」 「ええ、それなら出来るかもしれないわ。ちょっと待ってね」 リリエラは賛同すると、魔法で幾つかの実を採り、ふよふよと宙に浮かべながら説明する。 「こっちの赤い実が、体力を回復する効果のある実なの。リンゴみたいな味で、ちょっとすっぱいわ。それで――」 次々に説明してくれるリリエラの話を聞いて、ヴィオラは料理のアイデアが浮かんでくる。 「それなら、アップルパイみたいにしても良いかもしれませんね。それにこちらの、同じように体力を回復する効果のある種を磨り潰して香り付けみたいにしても良いかもしれませんね。シナモンのような香りがするんですよね?」 「ええ、そうよ。他にも一杯あるし、組み合わせで色々な効果が出来るかもしれないから、試してみましょうか」 「良いんですか?」 喜ぶヴィオラ。学園の料理研究施設を貸してくれると言うので、皆も誘っていくことに。 「色々な料理を作りましょう」 リチェルカーレやアリシアに呼び掛け、2人は笑顔で賛同する。かなり女子力の高い空気が溢れてきた。 そしてヨナにも声を掛けたが―― 「すみません。他の発明品にも興味があるので、私はそちらに向かいます」 気のせいか、冷や汗をかいているような気配を漂わせながら、ベルトルドと向かうことに。 「行きましょう、ベルトルドさん」 「そうだな」 苦笑しながら連いて行くベルトルドだった。 その頃、研究所のひとつで、皆はアイデアを出していた。 「お初にお目に掛かる源内殿。一つ相談があるのだが、蒸気機関車の仕組みはご存知か?」 ニコラは積極的に提案する。 「あれを馬車くらいコンパクトにできたりしないだろうか。蒸気が動力源では無理かもしれないが、魔術砲のように魔力を利用するとかでできそうだと思ったのだが」 「馬車くらいの移動機械っすか?」 乗り気で聞いてくる源内にニコラは続ける。 「レールのない街道を馬車くらいの機関車のような物が行き来できるようになれば、遠くの土地までの移動が楽になるのではと考えてな」 浄化師としてではなく、研究者の情熱を込め言った。 「私もこれでも研究者の端くれ。もし時間が掛かってもできそうなら一緒に研究させては貰えないかと」 「おっ、良いっすね。研究者は足りないのでウェルカムっすよ。今すぐ使えそうなのだと、内燃機関部分を魔導蒸気機関を流用する形で。問題は蒸気にする液体っすね」 「機関車なら大量の水を保持できるが、小型であればそうはいかないということか」 「そうっすね。だから廃棄せずに循環して再利用できる液体が欲しいっすね。そっちも魔術で作れれば――」 話が段々と専門的なことに。とてもではないが今日だけでは無理そうなので、ちょこちょこやりとりをしたい所だが、手紙などのやり取りでは難しい。それをどうするか話していると―― 「そういうのに必要な情報のやり取りが出来ると良いよね」 レオノルが参戦する。 「今通信技術でどれぐらいの情報量がやり取りできるのかな? 音が限界なら、少しアイデアがあるんだ」 源内とニコラに促され先を続ける。 「画像や文章を通信できないかな? 通信するのは電気とか何らかの信号でいい。信号と暗号を一対一に対応させて文字や画像を表現出来たら、こういう通信ができるんじゃないかって。暗号のアルゴリズム作成がやりたいんだ」 「電気信号を使った情報伝達っすか? それなら教団本部の人で、電気のメカニズムを解明して通信機器を作った人がいるんすよね? その人の研究内容が分かれば、取っ掛かりになりそうっすね」 「その人って、ヒポライト・デンジって人だっけ?」 レオノルにニコラが応える。 「確か、通信班長だったな。しかしそれだと、秘匿情報ということでこちらに伝わってこないのではないか?」 「そうなんすか? ん~、それなら別技術も同時にしといた方が良いかもっすね。今、なんじゃもんじゃ様から貰ってきた伝葉の木を使った広域情報伝達システムを考え中っす。 一杯木を植えれば植えるほど中継点が多くなって同時にたくさんの人が情報のやり取りをできるようになるんすよ。 それに今アイデアを出して貰った、電気信号のやり取りも組み込んでも良いかもっすね。魔導科学ってヤツっす」 「魔導科学?」 「そんなのあるの?」 研究者なニコラとレオノルは興味津々に聞き返し源内は返す。 「蒸気機関が出来てから提唱されてきたっすよ。新しく隆盛してきた科学技術に、魔導技術を組み合わせて、それぞれで出来ないことをしようって話っす。割と盛り上がってたらしいっすけど、それを利用したマドールチェ技術でごたごたがあったらしくて、ちょっと下火になっちゃったっすね」 「それは、もったいないね」 「技術を悪用しなければ良いだけだろうに」 レオノルとニコラは憤慨しつつ、さらに熱を込めて話していた。 源内とやり取りをしている間に、メフィストと話をする者も。 「シリウス、せっかく来たんだから何かやってみたら? 時間が勿体ないじゃないか」 どこか思いつめた表情をしているシリウスに、クリストフは声を掛ける。 「いや、俺は……」 「何でも良いんだよ。やりたいことを、聞いてみなよ」 「……やりたいことと言っても……」 特に無いと言いかけて、メフィストを見つけ目を細める。 (あ、困ってるな) 傍目には無表情に見えて、実は困った表情をしているシリウスに気付き、クリストフは苦笑を飲み込む。 とはいえ急かすことなく、クリストフは待っている。 するとシリウスは決意し、メフィストに言った。 「……お前、魔結晶に詳しいだろう。人の魔力から作れるならやり方を教えてくれ」 以前見た、要石を思い出して言葉を続ける。 「……魔力でも石でも、提供する。土や海を汚染したアシッドを、浄化する方法を見つけられないか」 それはリチェルカーレの願いを叶えたいと思うからこその言葉。 人や妖や妖精が、これ以上毒に苦しむことがないように。 (時間がかかってもいい。あいつの願う優しい世界に) 祈るような気持ちで尋ねるシリウスに、メフィストは応えた。 「魔結晶の量が揃えば、八百万の神と守護天使が協力すればできますよー」 「出来るのか」 思わず聞き返すシリウスにメフィストは説明する。 「魔結晶を使って、八百万の神と守護天使の力を中継する要石を作るのでーす。それを要所要所に置けば、アシッドを浄化できる結界が張れまーす」 「それは、すぐに出来ないのか? 俺の魔力で良いなら、幾らでも提供する」 意気込むシリウスに、メフィストは落ち着かせるように言った。 「慌てるのはダメでーす。こういうのは、一歩ずつ技術を積み重ねていくものなのでーす。まずは、余分な魔力を魔結晶にすることから始めましょーう」 これを聞いて、今度はクリストフが尋ねた。 「魔力を結晶化して取り出すことができるならさ、その要領でベリアルになってしまった人の身体から、アシッドを取り出すことはできないだろうか? 魔結晶に混ぜて固めるとかさ」 浄化師としてだけでなく、医に繋がる者として真摯に言った。 「これでも医者だから治せる人は治したいし、何よりも……人に戻せるようになったらアリシアが喜ぶと思うんだよね」 これにメフィストは、困ったような表情で返す。 「それは無理でーす。そもそもべリアルはアシッドを持っていませんからー」 「そうなの?」 聞き返すクリストフに、メフィストは説明する。 「アシッドとは、神方術が込められたウイルスでーす。生物に感染し体内で増殖することで連結し、存在を書き換える神方術を起動するのでーす。それにより生物はべリアルになりますが、この時点でアシッドは消失していまーす。だからべリアルからアシッドに感染することはないのでーす」 「なら、どうしようもないってことなのか」 「そうとも言えませーん。元通りには出来ませんが、べリアルから違う存在には出来まーす」 「どういうこと?」 「べリアルを元にした、新しい人間種族になら、することが出来るのでーす」 「そんなことできるの?」 半信半疑で尋ねるクリストフに、メフィストは応える。 「出来ますよー。そうした例は、すでにありますしー。例えば、ヒューマンからアンデッドに成ったり、ヒューマンからマドールチェに成ったりするようなものでーす」 「アンデッドにって……確かに種族が違うとは言われてるけど……つまり、アンデッドやマドールチェみたいに、べリアルを元の種族とは違う、新しい人間種族にすることなら出来るってこと?」 「そうでーす。そのためにはマドールチェに詳しい人物の協力が欲しい所ですがー」 メフィストの話を聞いて、クリストフは考え込む。 その間にメフィストは提案した。 「とにかく、色々するためにも魔結晶は要りますからねー。誰か作ってみますかー」 「それなら私達が、試しても良いですか?」 「おー、オレもやってみたいぞー」 リンファとステラが立候補してくれたので、メフィストは魔方陣を作り、そこに入るように言う。 「余剰魔力を魔結晶にする魔方陣でーす。あとで術式は渡すので、持って帰って下さーい」 「分かりました。それで、これからどうすれば良いんでしょう?」 魔方陣に入り尋ねるリンファにメフィストは返す。 「魔術真名を唱えて下さーい。そうすれば魔力が生成されるので、それを取り込んで魔結晶が出来まーす」 「分かりました。ステラ」 「おー」 2人は魔術真名を唱える。 「蒼天の下に正義の花束を」 魔術回路が解放され、大量の魔力が生成される。それを魔方陣が取り込み、キンッ! という音と共に水気と火気の魔結晶が出来あがる。 「これが私の……」 澄み渡った青空のような色合いの魔結晶を手に取る。小指程の大きさのそれは、触れるとひんやりとしていた。 じっと見つめるリンファにステラが尋ねる。 「どうしたのだ、マー。じっとみつめて」 「いえ、綺麗だなと思って……なんだか嬉しいんです。ステラの魔結晶も、綺麗ですね」 「おー、きれいだぞー」 真紅の魔結晶を掲げ喜ぶステラ。 そんなステラを微笑ましげに見詰めたあと、リンファはメフィストに尋ねる。 「これってつまりは魔力の塊ですが、何かのエネルギーに使えたりするのでしょうか?」 「色々使えますよー。今ではあまり見ませんが、錬金術とか錬丹術とかにも使われてましたねー」 「錬丹術ですか!?」 「知ってるのですかー? 割と廃れてしまった技術だと思いますがー」 「母も研究していた魔術と医学薬学の複合技術……のはずなのですが、当時はまだ子供だったので詳しいことは……その、詳しいことを教えて貰えませんか? 母に少しでも近づいてみたいんです」 リンファの頼みにメフィストは応える。 「錬丹術は、魔結晶を特殊な技法で食材に融け込ませてー、それを組み合わせた物を食べることで、様々な効果を発生させる技術ですねー。丸薬を一粒飲んだだけで体力が回復するとか、色々ありましたー。ですが現代では、魔結晶は様々な用途に使われますからねー。魔結晶が手に入り辛くなって、段々と廃れていったみたいでーす」 「そうなんですか……それなら、この魔結晶を作れる技術があれば、錬丹術を再現することも……」 母親に近付けるのではと思い、考え込むリンファだった。 そうして皆がアイデアを出していく。 その中で、ヨハネの使徒への対抗策を考える者も。 「アシ・ダハーカ戦の時に、沢山の使徒が来たでしょう。その時は、結局逃げるしかなかったから、何か対策を立てたいんです」 「できるだけ少ない力で、沢山の使徒に働きかけられるような……仕留められなくても、動きを止められたら」 リューイとセシリアは、実体験による経験も踏まえ考えていく。 「一度に沢山の使徒にというと、音とか、光とか……?」 リューイは、ノルウェンディ国軍が使った魔力チャフを思い出しながら続ける。 「ノルウェンディでは、魔力のデコイを使っていたけれど、あんな風に探査能力を狂わせるのもひとつの方法かな?」 「有効な方法ですよー」 メフィストは褒めるように応える。 「使徒は魔力を頼りに周囲を観測しますからねー。魔力に細工されると、混乱するのでーす」 「そうなんですか? なら、目くらましとか、出来るんでしょうか?」 「それも出来ますよー。目がくらんだようにさせたり、頭脳部分であるコアを一時的に麻痺させたりも出来るかもしれませんねー」 「コアに働きかけることは出来るのね。どうしたら良いかしら?」 セシリアが考えていると、ショーンも話に加わる。 「俺もやりたいことがあるんだ。ヨハネの使徒やベリアルに対して有効な毒物はあるだろうか? ベリアルに効く毒薬の調合をやりたい」 「毒ですかー? 低スケールべリアルには普通の毒も効きまーす。ただ、スケールが大きくなるほど効きにくくなりますし、一瞬で分解されちゃいますねー。スケール5だと、魔術的な効果を込めた毒が必要になるでしょうねー」 「そうか……ならヨハネの使徒はどうなんだ?」 「毒素その物でなくても、似たような効果を及ぼす何かがあれば良いかもしれませんね」 セシリアはショーンの言葉に発想を得て、アイデアをまとめていく。 「機械的に動くのなら、中枢回路を狂わせて麻痺させたり混乱させたりできないでしょうか? ……同士討ちとかしてくれると助かりますよね」 セシリアの考えに、ショーンは応える。 「ヨハネの使徒が機械ならばあるいは……ドクターが詳しいか……?」 するとレオノルが援護するようにアイデアを出す。 「ヨハネの使徒? 電磁気当てるとかどう?」 「?? 電磁気……?」 困惑しながらもショーンは考えをまとめる。 「いっそ大きな磁力で全部くっ付けて自重で潰す……?」 まとめきれないので、セシリアやリューイに話を向ける。 「セラ、リューイ。な、何かいいアイデアないか……?」 これにリューイは真面目に、セシリアは使徒との大群戦と、いずれ来たる創造神との戦いを意識しながら応える。 「誰でも使えるような物が理想的ですね。浄化師のように魔力が強くなくても使えるような物を作りたいです。そうすれば、もっと多くの人が助かると思うんです」 誰かのために真剣に思えるリューイに、セシリアは心地好さそうに小さな笑みを浮かべる。 そしてリューイの思いに賛同するように言った。 「ええ、それが良いわ。誰でも使えるような、そんな物を作りたいわね」 浄化師でなくても、使徒に対抗できる方法が見つけられる事を願って。 (今は取るに足らなくても、人は成長する生き物なのよ) どこかにいる神様に向け、心の内でひそりと呟く。 そんなリューイとセシリアに、メフィストは言った。 「すぐには難しいですが、出来るかもですねー。そのための実験にこれを使いましょー」 そう言うと口寄せ魔方陣で、ザッハークのコア周辺の残骸を召喚した。 「何それ!? こないだのアレ?」 召喚された残骸に、興味深げにラニが走り寄って言った。 「これって剣とかに加工できないの? コアへ致命的な攻撃を与えられる効果とかさ」 残骸をツンツンしながら訊くとメフィストが返す。 「致命的なのは無理ですねー」 「そーよねー。そこまで都合良いものは無理か」 とはいえ、そこで諦めはしない。 「あいつらの脅威は重さと速さ。それと、あとは感知能力よね。魔力で探すんだから」 そこまで言うと、源内にも呼び掛ける。 「ねぇ、魔力探知を邪魔できるようなものを開発したら? …って言うのは簡単かぁ、流石に。でもそんなものができたら、他にも使えそうじゃない?」 「そうっすねぇ……」 考え込む源内に、少し前からこの場に来て状況を把握したヨナが提案する。 「魔力を感知されなくなるような道具……なんてものは作れませんか? いくら天才発明家の源内さんでも難しいでしょうか……」 ちょい煽り気味にチラチラ見ながら言うと―― 「できらぁ!」 ノリ良く返す源内。 「出来るんですか!? もし出来るなら、強い魔力を持つ者が使徒を呼び寄せ、本人やその周囲の人々が犠牲となる事例を減らせるかもしれません」 意気込むヨナに源内は返す。 「一時的に、外部に放出される魔力を抑えられる物を作ればいいんすよ。それを応用すれば、使徒の野郎を一時的に混乱させる物も作れそうっすね。目くらましみたいなもんっす。あとは――」 コアの残骸をぺしぺし叩きながら言った。 「コアに干渉して、一時的に動きを止めるぐらいの物なら出来ると思うっす。信号弾みたいに、誰でも手軽に撃てるようなのが良いっすね。材料には、どうしても魔結晶が要ると思うっすけど」 「それなら僕達が協力できると思います」 リューイが源内に応える。 「メフィストさんが教えてくれた魔方陣を使えば、浄化師なら魔結晶を作れるみたいですから、それを使ってみてはどうでしょう?」 「良いっすね! んんー、材料の目処もアイデアも出て来たっすよー! 蒸気移動機械のアイデアも湧いて来たし、早速プロトタイプ作るっすー!」 興奮したのか勢い良く跳び出した源内に、苦笑しながら後を追い、協力する浄化師達だった。 こうして指令は終わりをみせる。 皆の協力とアイデアが、そう遠くない先で形になるに違いない。 そう思える指令だった。
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*** 活躍者 *** |
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