~ プロローグ ~ |
教団本部室長室。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■4 引き続き調査の為、神選組の一と話がしたい 形見の根付けを見せて心当たりを聞き、対話を通じ世継ぎ争いの件含め情報を得たい ナツキは一に会える事を喜ぶが気がかりがひとつ 母が出奔した影響で争いが発生している可能性があると聞いて その理由は別として、出奔したのが母だとしたら一に謝るつもりでいる 加えて、親族探しと同時に母が出奔した理由やこの件をもっと調べたい 親族が関係しているからという理由もあるが、困っている人がいるなら何とかしたい そうなれば本格的にルーノも巻き込んでしまうと理解していても、やっぱり見過ごせない ナツキ:なぁルーノ、やっぱり俺…! ルーノ:…手を貸すと言っただろう?君の気の済むようにするといい |
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…平気 相手が長い間行方不明だった養父かもしれないので落ちつけるわけもなく シキ、 子供扱いか 驚いてシキを剥がそうと試みる いやもう良い 趣旨変わってるぞ…? ぽつんと建つ建物へ近づくと女性の声が聞こえた エレメンツの女性が男性に怒鳴っている模様 …どういう状況? これ アンタが『メラヒエス・ナタラ』か? 銀髪にアイスブルーの瞳の女性が興奮気味に名前を聞いてくる は? 俺らはそっちの人に用があるだけ、 (言わないと解放してくれなさそう、か) アルトナ・ディール… ならあなたが『ギード』ね! と笑みを浮かべる女性 …なんて? 今日は帰るわと男性に告げ女性は去っていく …なあ とりあえず 話聞かせてくれ 向き直り 男性を見つめ |
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1 あの頃は、わたしたちとっても仲良し姉妹だった 父親が違っていても関係ない、お母さんはおんなじだし、わたしたちは似ていた ずっと一緒って、約束してた 自宅の稽古場であの子に一本とられた 剣技では互角、負けるつもりはないけど、あの子には魔術があるからかなわない 私だって、がんばってるんだけどな、あの子はやっぱりすごい 稽古が終わって、おきにいりの場所に来た 少し拓けたところで町と山々が一望できてとっても景色がいい そこでいつもおはなしする 私達はもっと成長したらエクソシストになるんだって そうして皆を守るんだ そこで、あの子と約束した ん……あぁ、ステラ……? すみません、少し眠っていました ……ついに、帰ってきたんですね |
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4 今回もリントの家の調査で本部へ行った際 先日保護されたという祓魔人とすれ違う リントに契約を迫る彼女を落ち着か…駄目だアンタのそれ逆効果だぞ 何とか引き剥がされて彼女が連れて行かれた後 …アンタ、彼女とかいたのか マリエル一筋だと思ってた…(動揺を隠しきれない 何でそこで俺に振るんだよ!? ぐっ…リントが初めてだよ…好きになったのも、キスも… も、もういいだろ!最初の目的忘れるなよ!? 調査の前に室長に会いに行くと、 ガラクシア家調査に関連があるからと特別に一つだけ、ヴィラの職業の情報をくれた …本当ですか? もしヴィラがリントの家に戻って、母親に今日のことを話したら… 室長の立場上、彼女の行動を制限もできないし… |
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4 エフェメラに会いに 一応歓迎の準備をしてくれてるってこと…でいいの? うん 行こう 寂れた海辺の家に行けば なぜか隅っこにいるエフェメラ やっぱり警戒されてる…え?緊張してるだけ?(拍子抜け) あたしラニです シィラのことを聞きたくて あたしにとっては親友で 姉のようで 母のような そんな不思議な子…いいえ 不思議な人だった でも優しかった 本当に本当に… あたし達守るためにって…あんな… 「恨んでもいない 彼女がその選択をした それだけで十分だ」 「どうか我にも聞かせてくれ 君たちの話を」 その後は思い出話に微笑み 優しいけどすっごーく厳しいのよ! ちょっとラスと喧嘩した時とか 笑顔なのに笑顔じゃなくて 正座されられて長い説教! |
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アリシア、写真落とし… これは…お前達、時間あるか? 聞いてほしい話がある ここじゃ人目が多い 場所を変えよう その女、リアの居場所を知っている とは言え2年前の情報だが オクトという組織がある 悪しき教団に反発し、地域を守っていた自警団だ 俺は仕事で首領のヴァーミリオンって男の部下になっていた ヤクザもので女引っ掛けてばっかの助平なオッサンだったがな、言動は真っ当だった そのヴァーミリオンの侍女がリア、そいつだ 潜入を終えた後お前…アリシアに会ってぎょっとしたさ リアが俺の事を始末しに来たのかって思った 愛人?まさか むしろ娘を扱う様だったよ あいつの部下がリアを拾ってきたときも部下が酷いこと言ってな 部下を蹴り飛ばしたんだ |
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お世話になったクリスのご両親にご挨拶をして 教団に戻って クリスのアルバムにあった、お姉ちゃんの写真 これを、捜索隊の方に、渡さないと… 途中、レオノル先生を見かけたので、駆け寄ろうとして躓き あ、ありがとう、クリス ちゃんと立った所で掛けられた声 あ、その写真…お姉ちゃんので… ついていった先で聞かされた言葉 オクト…クリスの顔を見上げたら頷かれたので 最近聞くようになった組織の名前だと理解 お姉ちゃん…そんな所に、いるのですか…? そんな、危ない所に… どう、して… 村人に飛びかかっていったあの日 その後いったい何、が… 始末…って… お姉ちゃんが、そんな事をするはず… ショックで何も考えられなくなり レオノル先生に縋りついて |
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念願の、家族に会いに行く指令に参加でき、嬉しいです。 令花は教団入りに際して家族にものすごい迷惑をかけたので、まずは改めて面と向かってお詫び 次に 詳しくは話さないが教団の大きな作戦があり 手が離せなくなるため 代わりにドリーマーズフェスを続けて欲しいというお願い そして叶花の紹介 令 えーと、話せば長くなるけど… 和 あの事件のときの魔道書がこんなに可愛くなったんだ!教団にすげえ人がいてな… 機密なので実名や詳細は明かさずにマリエルさんを紹介 すごい技術を持つこと 令花を気にかけてくれて全力を尽くしてくれたこと 感謝してもしきれないことを話す やはり名前は出さないものの 優しい室長 頼れる仲間 問題ない範囲で語る アドリブA |
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~ リザルトノベル ~ |
家族との縁と絆を深め、あるいは過去の自身を知るための指令。 参加した浄化師達は、それぞれ動いていた。 ●母と父と 「なぁルーノ、やっぱり俺……!」 「……手を貸すと言っただろう?」 目的地である神選組の詰所に向かう途中、気遣うように声を掛けてきた『ナツキ・ヤクト』に『ルーノ・クロード』は返す。 「君の気の済むようにするといい。そのためなら、幾らでも力を貸すよ」 「……そっか。へへっ、ありがとな、ルーノ」 嬉しそうに笑顔を浮かべ、ナツキはルーノと共に詰所に到着。 そこで事情を知っているらしい斉藤一に会う。 「話は聞いています。あちらで話しましょう」 一は込み入った話も出来るよう、詰所の奥に案内してくれる。 そこで一は言った。 「セパル殿の話では、形見となる根付けを持っておられるそうですね」 「ああ、これなんだけど」 ナツキは形見の根付けを一に手渡す。 受け取った一は、静かに息をついた。 「……懐かしい。これは確かに、源隆斉(げんりゅうさい)殿が、ご息女に贈られたものです。なんじゃもんじゃ様の枝から彫られている特別なもの。間違えようもありません」 「源隆斉?」 ルーノが聞き返すと、一は応える。 「今は実務からは退いておられますが、それでも八狗頭家の当主である方です」 「では、やはり――」 「はい。ナツキ殿は、八狗頭家を出奔なされた次期当主の血を引いておられる」 「…………」 予想はしていたことだが、こうして直に言われると、ナツキは言葉にできない。 そんなナツキを一は見詰めていたが、どこか懐かしそうに問い掛けた。 「ナツキ殿。貴方は御母上のことだけでなく、御父上のことも知らないのでしょうか?」 「……ああ、分からないんだ」 「そうですか……」 「ひょっとして、ナツキの父親のことにも心当たりがあるんだろうか?」 ルーノの問い掛けに一は返す。 「似ているのです。顔立ちや髪の色は御母上に。そして耳と目の色は……私の従兄弟、斉藤優輝(さいとうゆうき)に」 「そうなのか!? その人って、今どこに居るんだ!」 勢い込んで尋ねるナツキに一は応える。 「貴方の御母上が出奔したのと同じ時に、従兄弟殿も出奔してしまったのです」 「それは……」 一の言葉にルーノが返せないでいると、ナツキは謝った。 「……ごめん! 跡取りがいなくなって色々揉めたって聞いたんだ。一にもたくさん迷惑かけたんだろ?」 「……気にしないで下さい。貴方が謝る必要はないんです」 「でも! それでも、謝らなきゃいけないんだ」 ナツキは母のことを想い言った。 「母さんが出奔した理由は絶対あるはずなんだ。でもそれとこれとは話が別だ! それに、母さんの事は覚えてないけど……ここに居たら謝ってただろうなって思う」 ナツキの言葉に、一は穏やかな表情を浮かべる。そして当時を懐かしむような間を空けて言った。 「貴方の御母上が出奔されたことは、いま起こっている騒動の切っ掛けにすぎません。そのことがなくても、いずれ起ったことでしょう」 「どういうことなんだろうか? 差支えなければ、話を聞かせてて欲しい」 ルーノは事情を知るために尋ねる。 (話を聞いていると、一見単なる駆落ちだが……そんな簡単な問題だとは思えない) ルーノの危惧を理解したのか、一は説明する。 「八狗頭家を筆頭として、8氏族が持ち回りで全体の当主を務めることは聞いていますか?」 「ああ、セパルから聞いてる」 ナツキに促され、一は続ける。 「これは現当主が亡くなるか、30年務めれば次の世代に伝えることになっています。つまり生きている内に、自分の家から当主となる者を見ずに寿命で死ぬ者も多く出るのです」 「……それはつまり、権力闘争があるということだろうか?」 ルーノの問い掛けに、一は悲しそうに返す。 「それもあります。ですがそれ以上に、誉れなのです。自らの家から当主が出るという事は。 そのために争うこともあります。そして、この当主持ち回り制度を維持するために、当主候補には制約が課せられます」 「なにがあるんだ」 気に掛けるナツキに一は言った。 「まず長子であることが絶対です。これには性別は関係ありません。弟や妹が、より当主として相応しい能力を持っていようが、これは絶対です。そして当主候補には、それ以外の道が全て禁じられ、当主になるまで、半ば幽閉に近い軟禁状態にされるのです」 「なんだよそれ……」 一の話を聞いて、ナツキはグルグルと想いが駆け巡る。 強すぎる想いを言葉に出来ないナツキの代わりに、ルーノが一に言った。 「大まかな話は分かった。今もその渦中なのは想像できる。私達が、それに力を貸すことは出来ないだろうか?」 これに一は応えた。 「まずはナツキ殿のことを源隆斉殿にお伝えします。私も他人事ではありません。何かあれば力をお貸ししたいと思います。その時は、セパル殿を通じてご連絡します」 一の言葉に、ナツキとルーノは頷くのだった。 ●再会の予兆 「アル? なんか顔色良くねーぜ 大丈夫か?」 ノルウェンディの孤児院へと向かう道中『シキ・ファイネン』は『アルトナ・ディール』を気遣うように言った。 「……平気」 応えは短く。けれど落ち着かない心を、無理やり押さえているのが伝わってくる。 無理もない。 長い間行方不明だった養父に会えるかもしれないのだ。緊張しているように見えても仕方がない。 (不安なのかな……) 少し前の指令で、似た状況になった時を思い出す。 (あの時は――) シキはアルトナを安心させてあげたくて、ぎゅーと抱きしめ背中を撫でる。 「ルーくん。よしよし」 「シキ、子供扱いか」 驚いたアルトナがシキを引きはがそうとすると―― 「えー、だってアルまだ十代だし。俺から見たら子供だもん」 ぎゅうっと繋ぎ止めるように抱きしめ続ける。 「剥がそうとすんなよ、アールー」 抱きしめ続けるシキに、アルトナは軽くため息ひとつ。 「いやもう良い」 「むーもうちょっとだけ良いじゃん」 「趣旨変わってるぞ……?」 諦めたようにアルトナは言うと、そのまま抱きしめられる。 「アルトナきゅん、えへへへ」 シキはアルトナの心を温めるように、抱きしめていた。 (俺は何が起きても、アルが迷わねーようにしてやんねーとな) シキは甘えるようにアルトナを抱きしめながら、同時に、守るように寄り添っていた。 そうして2人は目的地へと歩き続ける。 しばらく進むと、ぽつんと建つ建物へと近づく。 「……誰だ?」 「人が居るね」 アルトナとシキは、建物の入り口に居る人物に気付く。 1人は男性。もう1人は女性だった。 気になったアルトナは速度を上げ走り出す。 「待ってよ、アル」 慌ててシキも走って追いかけようとする。すると―― 「何度も言ってるでしょ! 子供を返してちょうだい!」 離れていてもよく聞こえる女性の声が響き渡る。 (なんだろ、女の人すっげえ怒ってんな? 子供を返してって……?) ざわりと、予感めいた物がシキの心に走る。それは女性の顔立ちを見たからだ。 女性は、種族はエレメンツ。艶のある銀髪に、美しいアイスブルーの瞳をしている。 それは、どこかで見たことがある気がした。 (まさか……いや、そんなわけねーか) 心に浮かんだ予感を振り払い、シキはアルトナに追い付いた。 一足先に来ていたアルトナは、状況が分からず疑問の声を上げる。 「……どういう状況? これ」 「君は?」 女性と押し問答をしていた男性が、アルトナに尋ねる。これにアルトナは返した。 「用があって来た。話は通ってると思う。アンタが『メラヒエス・ナタラ』か?」 アルトナの問い掛けに、男性は応えようとする。だがそれより早く―― 「待って!」 切羽詰まった声で、それまで押し問答をしていた女性が、アルトナに問い掛ける。 「あなた、名前はなんていうの?」 じっと熱の篭もった眼差しで、女性はアルトナを見詰める。 あまりにも強い眼差しに、アルトナは眉を寄せながら返した。 「は? 俺らはそっちの人に用があるだけ――」 邪険に返すアルトナ。 せっかく養父に会えるかもしれないと期待していたのに、そこに水を差されたような気がして、どうしても棘のある言葉になってしまう。 けれど女性は、退くことなく訊き続ける。 「名前を教えて。知りたいの。あなたの名前を」 女性は、まっすぐに視線を合わせ、答えるまで逃がさないという気迫を感じさせた。 (言わないと解放してくれなさそう、か) 素直に話した方が、余計な時間が取られずにすむと判断したアルトナは、名前を答えた。 「アルトナ・ディール……」 名前を聞いた途端、女性は大きく笑みを浮かべる。 「ならあなたが『ギード』ね!」 「……なんて?」 訝しげにアルトナは聞き返すが、それに女性は応えない。 代わりに、今までの激昂が嘘であったかのような余裕のある笑みを浮かべ、問答を繰り広げていた男性に言った。 「今日は帰るわ」 落ち着いた声で言うと、返事も聞かず帰っていった。 「嵐みたいな人だったね、アル」 「……そうだな」 アルトナは、ため息をつくようにシキの言葉に賛同すると、男性に向き直り言った。 「……なあ、とりあえず、話聞かせてくれ」 これに男性は応え、アルトナとシキの2人は、建物の中に案内された。 ●久遠の夢 夢を見ていた。 2度とは戻らない、過去の夢。 故郷への道中『タオ・リンファ』は、夢の中で家族に会っていた。 それは自宅の稽古場でのことだった。 「よくやったメイファ、流石は私の娘だ」 父が、妹を褒める。 妹のメイファは息を切らしているけれど、負けたのは私だ。 「リンファ、お前はもっと頑張りなさい」 冷たい声。 「っ……はい、お父様」 返事は無い。お父様は私を一瞥するだけで、メイに視線を戻す。 その眼差しは誇らしげで、満足しているように見えた。 私には、一度も向けて貰えない。 だから頑張らないと。もっともっと頑張れば、きっとお父様に認めて貰える。 メイだって頑張ってるんだから、私も頑張らなければいけない。 「はぁっ……はぁっ……」 メイは息切れしたまま、まだ戻らない。 剣術と一緒に魔術も使ったのだ、私よりも疲れてしまうのは仕方ない。 私は剣技ではメイと互角、負けるつもりはないけど、あの子には魔術があるからかなわない。 (私だって、がんばってるんだけどな。やっぱりメイは、すごい) 素直な気持ちで、私はメイのことを思った。 だって、わたしたちはとっても仲良しの姉妹だったのだから。 父親が違っていても関係ない、お母さんはおんなじだし、わたしたちは似ていた。 ずっと一緒って、約束してた。 その時は、まだ。 「今日は、もういい。休め」 お父様はメイにひとこと言うと、稽古場を後にする。 残されたのは、わたしとメイの2人きり。 するとメイは、わたしの元に走り寄って来た。 「お姉ちゃん」 期待するような眼差しで、わたしを見詰める。だからわたしは言った 「がんばったね」 「へへ~」 嬉しそうな顔をする。 メイは稽古が終ればいつも、わたしに褒めて貰いたがった。 わたしに褒められると、いつもメイは嬉しそうな笑顔になった。 お父様に褒められた時は、そんな顔を見せないのに。 お父様に、褒められたのはメイなのに。 ぐちりと、何かが心の奥で爛れたような音をさせる。 見てはいけない。 わたしは、メイのお姉ちゃんなんだ。 わたしとメイは仲良しで、父親が違っていても関係なくて。お母さんはおんなじで、わたしたちは似ている。 何より約束しているんだ。ずっと一緒だと。 だから、だから私は―― 「お姉ちゃん」 甘えた声でメイは、わたしを呼ぶ。 「なに?」 お姉ちゃんなわたしは、優しい笑顔でメイに応える。するとメイは―― 「いつもの場所に行こう!」 お気に入りの場所に行こうと急かす。 わたしは笑顔で応えると、メイと2人で外に出る。 手を繋いで走っていき、途中の屋台で肉まんをひとつ買う。 「はいよ」 屋台のおじさんから大きな肉まんを渡して貰う。 2人でお小遣いを出し合って食べる肉まんは、とても美味しかった。 「はい、メイ」 「ありがと~」 半分に分け、少し大きい方をメイに渡す。 手を繋いだまま、にこにこ笑顔で。メイは、わたしと一緒に肉まんを食べながら、お気に入りの場所に辿り着いた。 お気に入りの場所は、少し拓けたところで、町と山々が一望できてとっても景色がいい。 そこでいつもおはなしする。 私達はもっと成長したらエクソシストになるんだって。 そうして皆を守るんだ。 「ではリンファ室長、指令をお願いします!」 「うむ、メイファ元帥は私とこのお菓子をたべたまえ~」 何も疑うことなく、未来を夢見て。 わたしとメイは、仲良く遊んだ。 たくさん遊んで、日も暮れ始めた頃。 家に帰る道すがら、あの子と約束した。 「私達、ずっといっしょだよ」 ぎゅっと手を握りながらメイは、わたしを見詰め願う。 「うん、約束する」 信じていた。その約束は守れると。 信じていたのだ。幼き自分は。そんなもの―― 「マー!」 昏き澱みに堕ちる寸前。 リンファは『ステラ・ノーチェイン』の呼び声で、過去(れんごく)から現在(うつしよ)に意識を浮かび上がらせた。 「もうすぐつくのだ!」 ステラの言葉に、現状を思い出す。 船に乗り、故郷に向かっている。 「ん……あぁ、ステラ……? すみません、少し眠っていました」 目元に指を這わす。そこは乾き、涙の一粒も溢れてはいなかった。 (これで良い) そんな資格は無い。それがリンファの思い。 罪びとの如く自身を律しながら、視線を小舟の先に向ける。 「おうい、浄化師さんたち、見えてきたぞー」 船頭の声に、リンファは実感する。 (……ついに、帰ってきたんですね) 故郷である、水都(すいと)の地に、戻って来たのだと。 ●彼氏の昔話 「さて、良い情報はあるかな?」 「そうであって欲しいな」 調査内容を聞くために『リントヴルム・ガラクシア』と『ベルロック・シックザール』は調査室に向かっていた。 すると声を掛けられる。 「リント!」 (あれ? この声……どこかで聞いたことがある声のような?) 記憶に残る声に、リントヴルムが振り返る。 すると声の主は勢い良く走って来ると、親しげに言った。 「ああ、やっぱりリントじゃない! こんな所で会うなんて、私達やっぱり運命よ!」 情熱的に声を掛けて来る女性に、リントヴルムは驚きを飲み込みながら応える。 「ヴィラ? なんで君、教団に居るんだい?」 これにヴィラが応えようとすると―― 「ああ、こんな所に居た。ヴィラさん、なんで勝手に1人で走り出すんですか」 事務方の教団員が慌てて追いかけてくる。 「……どういうことだ?」 状況を整理するためにベルロックが尋ねると、教団員は事情を説明した。 話によると、浄化師としての能力があるヴィラは保護され、パートナーを見つけるための説明がてら本部内を案内されていたらしい。 詳しく話を聞いていると、どうやらヴィラは祓魔人としての性質があるらしい。 「キミが祓魔人になるなんて……」 昔のヴィラを知っているリントヴルムが驚いていると、ヴィラは天の采配とばかりに言った。 「リント、これはきっと運命よ。私とパートナーに成りましょう!」 盛り上がる彼女に、リントヴルムは静かに返す。 「ごめんね、僕はベル君と契約してるから」 そう言うと、ベルロックの肩を抱き寄せる。 「おい、リント――」 嫌な予感がしたベルロックが慌てて離れようとするが、時すでに遅い。 「……なんで、どういうこと!」 ヴィラは興奮したように詰め寄って来る。 「待て、待ってくれ。落ち着いて――」 慌ててベルロックが間に入って止めようとするも、ヴィラの勢いは止まらず。とうとう最後には―― 「ヴィラさん! すでにパートナーの居る相手を引き剥がそうとするのはダメですって! って痛い痛い! ちょっと落ち着いて! 誰かー!」 事務方の教団員が助っ人を呼び、数人がかりで引き剥がされて連れて行かれる。 嵐のようなひとときが過ぎ、ベルロックは尋ねる。 「どういう関係なんだ?」 これにさらりと応えるリントヴルム。 「さっきの子? ああその……元カノ? ヴィラは学生時代の同級生で、告白されて付き合ってたんだ。すぐ別れちゃったけどね、やっぱりマリーが忘れられなくて」 「……アンタ、彼女とかいたのか」 (マリエル一筋だと思ってた……) 内心の動揺を隠し切れないベルロックに、リントヴルムは悪戯っぽく聞き返す。 「そういうベル君はどうなの? 付き合ってた人とかいた?」 「何でそこで俺に振るんだよ!?」 少し視線を逸らし続ける。 「ぐっ……リントが初めてだよ……好きになったのも、キスも……も、もういいだろ! 最初の目的忘れるなよ!?」 リントヴルムの応えに、ベルロックは苦笑を飲み込むと言った。 「ふふ、分かってるよ、僕んちの調査だよね。でもその前に室長のとこ寄っていい? ヴィラのこと何となく気になるんだよね……嫌な予感というか」 リントヴルムの提案に、2人は室長室を訪れる。するとヨセフは、ヴィラについての情報を教えてくれた。 「特別にひとつだけ教えておこう。ガラクシア家調査に関連があるようだからな」 それはヴィラの職業についての情報。 「ヴィラ、うちでメイドやってたの?」 「……本当ですか?」 聞き返すベルロックに、ヨセフは1枚の調査書を渡す。 「見せられるのはそれだけだ。他の個人情報は、本人の許可がなければ見せられん」 調査書を受け取り中身を確認する。 「母さんのお世話係……未契約だし外部接触の規制も段々緩和されていってる。これは……」 状況を知り、ベルロックは眉を寄せる。 「もしヴィラがリントの家に戻って、母親に今日のことを話したら……室長の立場上、彼女の行動を制限もできないし……」 これにヨセフは応えた。 「特別な理由が無い限り制限は出来ん。だが、そちらの都合もあるだろう。可能な範囲で、こちらも力は貸す」 「ありがとうございます、室長。リント――」 「うん。色々と考えないとだね」 ヨセフの応えを聞き、この先をどうするか考える2人だった。 ●おじぃちゃんと孫2人 泡沫の魔女エフェメラからの招待状。 セパルから渡されたそれを見詰め『ラニ・シェルロワ』は呟く。 「一応歓迎の準備をしてくれてるってこと……でいいの?」 これに『ラス・シェルレイ』は落ち着いた声で返した。 「招待状までくれたんだ。大丈夫に決まってる」 勇気づけてくれるラスの言葉に、ラニは踏ん切りをつけ言った。 「うん。行こう」 「あぁ。行こう」 そして2人はエフェメラの元に。 寂れた海辺の家に辿り着き、ドアをノックする。 すると独りでにドアが開き2人を招いた。 意を決して家の中に入る。 家の中には、中性的な青年に見える魔女が1人。 何故か部屋の隅で、身体を強張らせ2人を見詰めていた。 「やっぱり警戒されてる……」 「やはりそうか……」 気落ちした声で2人が呟くと、エフェメラは慌てて言った。 「ち、違う。そうじゃない」 「え?」 「え?」 思わず声を重ね、聞き返すラニとラス。 2人の視線を受け、おどおどした様子でエフェメラは応えた。 「初めて会うから、その……緊張してるだけだ」 緊迫した空気が、エフェメラの一言で弛緩する。 「緊張してるだけ?」 「緊張?」 気の抜けるような沈黙が3人の間に流れる。 その沈黙を破ったのはラスだった。 「とりあえず、座りませんか」 エフェメラは頷くと、ラニとラスに部屋の中央に置かれたテーブルを勧める。 向かうと椅子が独りでに引かれ、エフェメラは、ラニとラスが先に座るのを待っている。 少し迷いはしたが2人が先に座ると、エフェメラは安堵するように座った。 3人は椅子に座り視線が交わる。その中で口を開いたのはラニだった。 「あたしラニです。シィラのことを聞きたくて来ました」 「オレはラスです。ラニと同じで、シィラのことを聞くために来ました」 「……ああ、話は聞いている」 エフェメラは2人を愛おしそうに見つめながら応えを返した。 「我も、聞かせて欲しい。君達のこと、そして、君達と共にあった、シィラのことを」 エフェメラに促され、ラニとラスは話し始めた。 「あたしにとっては親友で、姉のようで、母のような、そんな不思議な子……いいえ、不思議な人だった」 シィラとの大切な思い出を心に浮かべながら、ラニは語る。 「でも優しかった。本当に本当に……あたし達守るためにって……あんな……」 別れの時を思い出し涙を堪えるラニは、その先を言葉に出来ない。 そんな彼女の言葉を引き継ぐように、ラスが口を開く。 「オレにとって姉であり、師匠であり……初恋のひとでした」 エフェメラと視線を合わせ続ける。 「彼女を知る人をずっと探していたんです。共に住んだ場所は……彼女が、使徒諸共に……」 そこまで言うと、告解するように言った。 「彼女が死ぬのを止めなかったのはオレです。オレは彼女が自分で、ナイフをのどに――」 その時のことを思い出し、顔を青ざめさせながら言葉を紡ごうとする。 けれどエフェメラは、それ以上を口にしないで済むよう、ラスの言葉の途中で言った。 「恨んでもいない。彼女がその選択をした、それだけで十分だ」 ラニとラスを見詰め、エフェメラは想いを口にする。 「あの子が君達を遺し、君達は生きていてくれた。それがあの子の望みであり、喜びだと思う。あの子に代わり礼を言う。ありがとう、生きていてくれて」 言葉を返せないでいるラニとラスに、エフェメラは促すように願いを告げた。 「どうか我にも聞かせてくれ。君たちの話を」 ふっと力が抜けていく。 エフェメラの言葉に安堵すると、ラニとラスは思い出を口にした。 「優しいけどすっごーく厳しいのよ!」 「ああ。よく説教されたな」 2人の様子にエフェメラは笑顔で返す。 「シィラにとって君たちはきっと、愛しい子供たちなんだな。ならば我にとっては、孫のようなものだ」 「……なら、あたし達にとっての、おじいちゃん?」 「ああ、そうなるな」 ラニの言葉に、ほわほわした笑顔を浮かべるエフェメラ。 そうして話は弾み、クリスマスの時の話を口にする。 「クリスマスの時、ルインズレイクでシィラと話したんです」 「ああ。終わっている存在をいつまでも引きずるんじゃありませんって、説教されちゃったな」 2人の言葉に、エフェメラは椅子から立ち上がり言った。 「あそこで会ったのか!?」 ラニとラスは驚いて返す。 「うん。噂だから本当に会えるか分からなかったけど」 「会えて、話をして、安心したと言って消えたんだ」 「それが本当なら――」 エフェメラは希望と不安をないまぜにした声で言った。 「あの世からこの世に戻るのは禁忌の領域だ。本来はあり得ない。だからあそこで会えるのは幻か、あの世に行けずこの世に留まっていた幽霊だけ。なら、幽霊だったあの子は、君達と話せたお蔭で、あの世に行けた?」 エフェメラの言葉に、返せないラニとラス。 謎を残し、その日は教団に戻る2人だった。 ●実家への帰郷 ハードカバーを付けられた魔導書、叶花を抱きかかえながら『桃山・令花』は『桃山・和樹』と家族に会いに来ていた。 「それでは、行ってきます」 令花は同行していたセパルに言った。 魔導書の叶花は、本来は個人での運用が許されず、外部に持ち出す場合は監視者をつける必要があるということでセパルが連いて来ていたのだ。 「うん、行ってらっしゃい」 セパルに見送られ、2人は両親の元に。家に入る寸前、叶花は人型に変身。5才くらいの女子になった叶花を、令花は慣れた様子で抱き抱えながら家に入る。 「お帰りなさい、2人とも」 優しく迎え入れてくれたのは母である和子。 父である昭人は、隣りで無言のまま2人と叶花を見詰めている。 特に叶花をじっと見詰め、小首を傾げる叶花と目線が合うと、和子を連れて一端離れる。 そして本人は声を潜めているつもりで。 実際は興奮しているので、声が丸聞こえになる。 「おい、なんだあの子は。令花に似てないか!?」 「あらあら、おばあちゃんになっちゃったのかしら、私」 「おおおーい! なにを冷静になっとるんだー!」 「そんなに慌てなくても。そういうこともあるわよ、私の子なんだから。恋したら一途なのよ」 「なんでそんなに鷹揚に構えてられるんだー!」 「……えーと、姉ちゃん」 「……後でちゃんと説明するから大丈夫。きっと」 両親のドタバタが過ぎるのを待っていると、昭人が落ち着くような間を空けて戻ってくる。 「よく帰って来た。上がれ。話したいこともあるだろう。ああ、あるだろうとも」 本人は威厳を保っているつもりで鷹揚に言うと、先に部屋に向かう。 あとに連いて行く和子は、しょうがないわねぇ、と言わんばかりに微笑んでいた。 令花と和樹は、応接間として使っている部屋に向かうと、正座して両親と向かい合う。 そして改めて面と向かってお詫びした。 「ごめんなさい。今までのこと、迷惑を掛けたこともあると思う」 「ごめん。もっと早くに言うべきだったけど、遅れちまった」 「う、うむ、そうか」 頭を下げる令花と和樹に、気もそぞろな様子で昭人は返すと、ちらちらと叶花を見ながら言った。 「そのことは、まぁ良い。それより、それよりもだ。もっと他に言うことがあるのではないか。例えば、その子の事とか。その子の事とか」 大事なことなので2度言いました。 そんなノリで、直接は聞かないものの『まさか令花の子供!? パパの可愛い令花がまさかまさか』と言わんばかりの動揺を無理やり飲み込んでいる。 一方、余裕のある和子。 そんな両親に、令花と和樹は説明した。 「えーと、話せば長くなるけど――」 「あの事件のときの魔道書がこんなに可愛くなったんだ! 教団にすげえ人がいてな――」 2人の話を、両親は熱心に聞く。 「私のことを気に掛けてくれて、力を貸してくれたの」 「その人が力を貸してくれたお蔭で、叶花は人の姿になれたんだ。名前も、その人がつけてくれてさ。とにかくすごい人なんだ」 「感謝してるの。気にしなくても良いって本人は言ってくれるけど、全力を尽くしてくれて、言葉にしきれないぐらい嬉しかった」 「すごい技術持ってんだよ。色んなことが出来てさ。お蔭でいっぱい助けて貰ったんだ」 マリエルの事は機密情報なので、詳細は語れない。 けれど可能な限り感謝してもしきれないことを伝えた。 「そうか……」 昭人は静かに頷く。詳細については聞き返さない。幕府の役人でもある彼は、機密に関する扱いについて熟知している。 話せないこともあるのだろう、と理解しながら、叶花に視線を向けた。 すると叶花は、にぱっと笑顔を浮かべ、昭人の元に走り寄ると言った。 「お願い、なにー?」 「願い?」 聞き返す昭人に、令花が応える。 「その子は、人の願いを叶える魔導書なの。だから人の願いを叶えてあげたがるの」 そして和樹が、耳打ちして提案する。 「肩を叩いてくれって言ってくれよ」 「う、うむ」 和樹に言われ昭人が頼むと―― 「とんとんとん、とんとんとん」 ちっちゃな手で、ぽむぽむ昭人の肩を叩く叶花。 「おおー、叶花は肩叩きが上手だな」 孫を溺愛するがごとくデレデレになる昭人。 「へへー」 喜び懐く叶花。 和やかな雰囲気の中、令花と和樹は教団での出来事をできる限り話す。 「そうか……良くして貰っているのだな」 令花と和樹の話を聞いて、いかに2人が教団本部の人々に助けられているかを両親は実感する。 「感謝して、応えられるようにしなさい」 「それがきっと、2人のためにもなりますからね」 父と母の言葉に、頷く令花と和樹だった。 その後も、万物学園へのドリーマーズフェス関与に昭人が口添えしたことや、令花と和樹を助けた人物からある程度魔導書についての話を聞いていた事などを話し、その日の帰郷は終わりをみせた。 ●オクトの予兆 「16歳当時の物だけど、手掛かりになると思う」 アルバムに挟んであった写真を『クリストフ・フォンシラー』は『アリシア・ムーンライト』に手渡した。 「この人が、お姉ちゃん、なんですね」 写真を熱心に見つめアリシアは呟く。 クリストフの両親に会いに行った2人は、教団に戻るとアリシアの姉を探すために動いていた。 「これを、捜索隊の方に、渡さないと……」 はやる心を抑えながら、アリシアは写真を胸元に抱き早足で進む。 「アリシア。気持ちは分かるけど、落ち着いて行動しなきゃいけないよ」 どこか危なっかしいアリシアに、クリストフは苦笑しながら連いて行った。 その道中『ショーン・ハイド』と連れ立って歩く『レオノル・ペリエ』が目の端に止まる。 「レオノル先生」 気付いたアリシアは、足早に移動していた時だというのに声を掛けてしまい、そちらに意識が向いたせいで体勢が崩れる。 「アリシア!」 転びそうになったアリシアを咄嗟に抱き留めるクリストフ。 「怪我は無い?」 「はい、大丈夫、です」 「それなら良かった」 「あ、ありがとう、クリス」 平気そうなアリシアの様子に、クリストフは安堵しつつ苦笑する。 「どうしてこんな何もないところで転ぶかな」 くすりと小さく笑い、アリシアは恥ずかしそうにする。 そんな2人の様子に気づいたショーンとレオノルは、2人の元に近付く。すると―― (写真? ああ、さっきアリシアが落としたのはこれか) アリシアがこけそうになった時に落としてしまった写真を拾い上げようとする。 「アリシア、写真落とし――」 拾い上げ、写真の人物が目に留まる。 (これは……) 「……? ショーン?」 (写真を拾った途端に目の色が変わった……) 鋭い目つきになったショーンにレオノルが疑問を感じていると、ショーンはアリシアに言った。 「この写真は、アリシアの物か?」 「え、いえ。クリスのです。でも、写っているのは、私の、お姉ちゃんで」 アリシアの応えにショーンは言った。 「お前達、時間あるか? 聞いて欲しい話がある」 「どうかしたの?」 まるで戦闘前のようなショーンの声音に、クリストフは浮かべていた笑みを消し尋ねる。 「ここじゃ人目が多い。場所を変えよう」 ショーンの様子に不安を感じながらも、アリシアはクリストフと共に人目のつかない場所に向かう。 向かった先は、会議室にも使われる防音設備の整った部屋。 そこでショーンは、アリシアに写真を渡しながら言った。 「その写真に写っている女、リアの居場所を知っている。とはいえ2年前の情報だが」 「リア?」 突然の話にアリシアは呆然としながら、ショーンが口にした姉の名を呟く。 同じようにクリストフも名前を呟きながら推測を立てる。 「リア……エルリア……」 (似てる。でもなんで、本名じゃない? 本名を名乗りたくなかった? ひょっとして、本名を名乗るのが嫌で、下半分だけ名乗ってたのかな) 考え込む2人にショーンは続ける。 「オクトという組織がある。悪しき教団に反発し、地域を守っていた自警団だ。俺は仕事で首領のヴァーミリオンって男の部下になっていた」 「オクト……」 アリシアは確認するように、クリストフの顔を見上げる。クリストフは無言で頷き、アリシアは理解する。 (最近、話を、聞きました) つまりはそれほど、大きくなってきた組織だということ。 状況を察し始めたアリシア達に、ショーンは続ける。 「ヴァーミリオンはヤクザもので、女引っ掛けてばっかの助平なオッサンだったがな、言動は真っ当だった。そのヴァーミリオンの侍女がリア、そいつだ」 ショーンの言葉を聞いたクリストフは、小声で尋ねる。 「まさかと思うけど、その首領の愛人になってるとかじゃないよね?」 「愛人? まさか。むしろ娘を扱う様だったよ。あいつの部下がリアを拾ってきたときも部下が酷いこと言ってな。部下を蹴り飛ばしたんだ」 「そうなんだ」 ショーンの応えに、クリストフはホッと息を吐く。 一方アリシアは、思い悩むように黙っていた。 (シアちゃん……) アリシアの様子に、傍で見ていたレオノルは心配する。 (シアちゃんのお姉さんがオクトにいる……ショーンが評価するんだから、ヴァーミリオンは器の大きい人だと思うけど……) ショーンからの話と、少し前にヨセフから現在のオクトの話を幾らか聞いたレオノルは思う。 (ショーンが所属してた頃とはオクトは様変わりしたみたいだし……ややこしいことになったなぁ) どうした物かと思案していると、アリシアが思い詰めた声でショーンに尋ねた。 「お姉ちゃん……そんな所に、いるのですか……? そんな、危ない所に……どう、して……」 これにショーンは、言葉を迷うような間を空けて応えた。 「アリシア、俺は最初にお前に会った時に、ぎょっとしたよ。リアが俺の事を始末しに来たのかって思ってな」 「え……」 アリシアは呆然とした様子で、すぐには言葉を返せないでいたが、絞り出すように訊き続ける。 「どうして……お姉ちゃんが、ショーンさんを……」 その先の言葉を続けられないでいるアリシアの代わりに、クリストフが言葉を続ける。 「アリシアが似てるから間違えたのは判るけど、始末? エルリアが……?」 信じられないというように呟くクリストフに、ショーンは言った。 「ヴァーミリオンから剣技を習い、2年前でも相当な腕だったと聞く。その剣技を活かし、『冷血の魔女』と呼ばれるほどに活動していた」 「……そん、な……」 足場が崩れるような不安をアリシアは感じる。 あの日。妹であるアリシアを守るため、エルリアが村人に飛びかかっていったあの日。 未だ朧げで、確かな記憶は戻らず、けれど姉が守ってくれたという想いは実感としてある。 けれど、それなのに―― (その後いったい何、が……) 分からない。けれど姉を信じるように、アリシアは言った。 「始末……って……お姉ちゃんが、そんな事をするはず……」 必死に否定しようとして、けれど応えてくれる言葉は何も返らず。 「お姉、ちゃん……」 何がどうなっているのか分からず、混乱と悲しみの中、アリシアは何も考えられなくなる。 そんな彼女をレオノルが、そっと抱き寄せる。 迷子の小さな子供にしてやるように、優しく頭を撫でてやった。 「レオノル、先生」 縋りつくように、アリシアはレオノルに体をあずける。 レオノルはアリシアをあやすように頭を撫でながら、ショーンに言った。 「ショーン、今の地雷」 そう言いながらも、ショーンの言い方にも理由はあると思う。 (彼の立場は裏切者のスパイ……警戒するよね……) ショーンの過去。そして現在。同じように自分や親しい皆のことを考え、道理を思う。 (……人は変わる。私の父が母を傷付け、修復不可能にしたように。ショーンが両親に利用され続けたように。 絆や愛、ましてや血の繋がりや人の心も絶対じゃない) それは道理。不変なき人の心の真理でもある。けれど―― (……ただ、そんな残酷な事実をシアちゃんに……今は落ち着いて欲しい……) 哀しみにくれるアリシアの平安を願い、少しでも落ち着けるよう、アリシアの頭を優しく撫で続けた。 こうして、それぞれ浄化師達は絆を巡る。 その先が何処に向かうか分からずとも、幸多かれと、思わずにはいられなかった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[8] ナツキ・ヤクト 2020/03/17-22:58
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[7] 桃山・和樹 2020/03/17-22:53
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[6] タオ・リンファ 2020/03/17-22:28
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[5] ラニ・シェルロワ 2020/03/17-21:55
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[4] シキ・ファイネン 2020/03/17-16:24
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[3] アリシア・ムーンライト 2020/03/16-22:23
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[2] 桃山・令花 2020/03/16-05:27
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