~ プロローグ ~ |
東方島国ニホン。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
○富士樹海迷宮 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■1 武士を庇い落とし穴に落ちかけたナツキをルーノが助ける ナツキ:流石だぜ相棒! ルーノ:君が落ちてどうする ■2 ナツキはスキルで積極的に攻める ルーノも攻撃と鬼門封印・武士団含む味方の回復で支援 ルーノの攻撃に合わせナツキが接近し黒炎魔喰器の特殊能力を発動 攻撃と同時に味方が攻める隙を作る ナツキ:こっちも本気で行くぜ! ■3 ナツキ:当主って一人じゃなきゃダメなのか? 令花や他の話も聞き、自分は八家から一人ずつ希望者を出し八人で武士団を纏める事を提案 ルーノ:跡継ぎ問題が和を乱す現状が良いとは思えない、いずれにしても変化は必要かと ナツキ:形じゃなくて続いてきた想いや誇りを受け継ぐのが当主で、だから誉な事なんだろ |
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……えぇと、貴方がニホンの守護天使様ですか……? (もっとシリアスな雰囲気を想像していました……このあいだは一時とはいえ殺されたくらいなのに……) ヤマトタケル様には大立ち回りを意識しつつ戦ってみます。戦う前には大きな声で名乗りもあげてみましょうか 私は裁きで己の力を底上げし、ソードバニッシュの剣戟で攻めます ステラは乱打暴擲の猛打と、ここぞの地烈豪震撃で文字通りインパクトのある戦いぶりを見せましょう ・跡継ぎ問題の提案 当主だけに絞らず、それ以外にも役職を作るのはどうでしょうか 纏める為のリーダーは確かに必要ですが、互いの秀でた部分を持ち寄り、補い合うのもひとつの手かと 不変と変化は共存出来るもののはずです |
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【魔】 …何か、さっきから俺ばっかりがブーピートラップ解除してる気が まあいいか…ってドクター!? ドクターが可愛らしい仔猫に… 白くてふわふわしてる…可愛い…うわぁ、掌に収まるぐらい小さい可愛い…! ああもう鳴き声まで可愛い…! あーこっち見てる可愛い! リチェ、アリシア、お前達も触れ 可愛いぞ あまりの可愛さにデレていた直後に上から鉄球が 間一髪で避けた後ドクターが元に戻って思わず気まずくなる 戦闘ではランキュヌで耐久を下げてトリックショットとピンポイントショット、ポイズンショットを織り混ぜて 仲間が攻撃しやすくする ナツキのご両親の件が異例だと思えんのだが… 今まででもこの制度で苦しんできた人はいたんじゃないか? |
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ヨ ナツキさん 不明だったご家族との縁がまた繋がったんですね ベ 調べれば分かるものだな(感心 ヨ ベルトルドさんはご自身の…そういうのは…興味がないんですか? ベ (一瞬考えて)…まあ 無いな それに家族と呼べる人ならもう居る それだけで十分だ(にっと笑う ヨ なるほど ふふ ベルトルドさんらしいです 1 八家の者に向かって噴出したガスに気づき咄嗟に押した拍子にヨナがガスを吸い込む みるみる5歳児程度の子供に ヨ (ぽかんとした顔) ベ しまったな 意識まで子供でなければ何とかなるが… おいヨナ 状況は分かるか? ヨ だいじょうぶ おおきいねこさん! ベ …これは 難しいか…(天を仰ぐ 仕方なく肩車などしながら進む 2 髭や耳をわしわしされながら戦闘 |
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【魔】 1 八家の方々にご挨拶 どうぞよろしくお願いします 罠にかかりかけてはシリウスに引き戻され 目をぱちぱち ごめんなさい 迷惑かけて… 同行する武士が罠にかかりそうな事に気付き 動こうと シリウス! まじまじと彼を見つめ わたしより スタイルがいい… 仔猫なレオノル先生に目を輝かせ 小さなクリスさんを抱きしめ 赤ちゃん令花さんをだっこしつつ 大丈夫!きっと戻してもらえるわ 2 魔術真名詠唱 禹歩七星をシアちゃんと 禁符の陣の支援と回復 武士団の人にも回復を 傷ついた人へは盾に 3 皆さんが 国のために尽くしてくれたのはわかります でも 決まりだからと家族を大事にできないのは違うと思う 長子かそうでないか それだけで生き方が決まるのはおかしい |
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当主の代に生まれた方は…幸せだったのでしょうか… どうすれば、皆さん、幸せになれるのでしょう… 1 クリスに庇われ 小さくなったクリスに呆然 猫のレオノル先生を思わずなでなで シリウスさんへのクリスの態度に 精神面は、無事みたい、ですね ホッと息を吐き 赤ちゃんの泣き声に振り向いて この子、令花ちゃん、ですか? そっと受け取って背中をポンポン リチェちゃんと二人であやします 2 魔術真名詠唱 禹歩七星と鬼門封印で支援 天恩天賜で回復を 誰も、傷つけさせません……! 場の空気に飲まれて思わず声が 3 一つ、お聞きしたいのですが… 当主になるのは、どんな方が、望ましいのでしょう… 輪番制では、ふさわしくない方が、当たることも、あったのでは… |
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罠 令花が赤ちゃんになる呪い 和樹の下手くそなだっこでギャン泣き 仲間の助けで泣き止むことで呪いが解け元に戻る ここはアドリブSでお願いします(笑) 戦闘 魔術真名発動し 令花は神話研究、和樹は伝記漫画で知った 憧れのヤマトタケル先輩(パイセン)に全力でぶつかることを誓う 令花 ルーナープロテクションで憧れのヤマトタケル様の攻撃力を削る 和樹 最前線に出て絶対防御の誓いⅡで壁役に専念し、憧れのヤマトパイセンに、絶対に倒れねー「ヤマト魂」を見せつける 提案 令花、「新当主は輪番家から立候補制、候補複数なら各家の現トップの合議により審査」を提案 しかし、みんなでまとめるというナツキさんの一言を聞き 眼鏡が光り実行委員会腕章を装着 |
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えっナツキさんの実家!? こうしちゃいれないわ 早いとこ騒動を収めて ちゃんと家族で話し合える時間作りましょ 探索時に動物耳が生える罠に引っ掛かる 皆、気を付け(どーん) …気を付けて進みましょう(キリッ) それ以外の罠はなるべく避けながら進み 守護天使!?…何かウキウキしてない? 試練?なら頑張るわよーっ! 魔術真名詠唱 ラスと共に前衛へ お互いの呼吸を合わせ 連撃を意識 攻撃の手を緩めず 常に攻撃を加えるように立ち回り 味方が攻撃できるチャンスを作る うーんと…お家騒動なんだけど そもそも八つの家を一人でまとめる?っていうの滅茶苦茶大変じゃない? だから今揉め事になってるんでしょ 他の人も言ってたけど 皆で出来ないの? |
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~ リザルトノベル ~ |
「えっ、ナツキさんの実家!?」 目的地に向かう前、指令について話を聞いた『ラニ・シェルロワ』は、思わず声に出す。 「こうしちゃいれないわ。早いとこ騒動を収めて、ちゃんと家族で話し合える時間作りましょ」 やる気をみせるラニに、隣りに居た『ラス・シェルレイ』も同意するように言った。 「そうか……家族なんだな。それなら尚のこと、オレ達も協力する。やっぱり話したいこと、あるだろ?」 最近、家族といえる幽霊と再会できた2人としては、他人事ではないのか意気込んでいた。 これに『ナツキ・ヤクト』は礼を返す。 「ありがとな! みんなには迷惑掛けるかもしれないけど、どうにかしたいんだ。だから、力を貸してくれ」 「私からも頼むよ」 ナツキに続けるように『ルーノ・クロード』も言った。 「私達も全力を尽くすつもりだが、皆の手助けがあると心強い。どうか、力を貸して欲しい」 これに『タオ・リンファ』は返す。 「どこにでも、その家ならではの問題はあるものですね……」 自らの家族のことを思い出し、苦笑しながら続ける。 「微力ながら私達もお力添えします」 真摯に告げるリンファに、彼女の隣に居た『ステラ・ノーチェイン』も元気よく同意した。 「マーが手伝うなら、オレも手伝うぞ!」 これにナツキとルーノは笑顔で返し、皆も快く同意した。 そして現地に向かう。 道中、和気藹々と話をしてく。 中にはパートナーと話をする者も。 「ナツキさん、不明だったご家族との縁がまた繋がって、良かったですね」 嬉しそうに言う『ヨナ・ミューエ』に『ベルトルド・レーヴェ』は応える。 「調べれば分かるものだな」 感心するように言うベルトルドに、ヨナは気に掛けるように返す。 「ベルトルドさんはご自身の……そういうのは……興味がないんですか?」 「……まあ。無いな」 一瞬考えるような間を空け、ベルトルドは続ける。 「それに家族と呼べる人ならもう居る。それだけで十分だ」 にっと笑うベルトルドにヨナは、くすぐったそうな笑顔を浮かべ返した。 「なるほど。ふふ、ベルトルドさんらしいです」 和やかな雰囲気の中、浄化師達は八家の者達と合流。 彼らは厳粛な空気を漂わせていた。 「どうぞよろしくお願いします」 にっこりと『リチェルカーレ・リモージュ』は笑顔で挨拶する。 すると八家を代表して、八狗頭源隆斉が応えた。 「真神武士八家、なんじゃもんじゃさまの取り成しにより参上した。見届け役、よろしく頼む」 そう言うと、厳格な雰囲気を崩すことなく、八家の列に戻った。 そこに斉藤一が声を掛けた。 「あちらの彼が、ナツキ殿です」 ざわりと、気配が乱れる。 八家の内、八狗頭家と斉藤家は、あえて視線を向けることさえせず。残りの八家は探るような視線を向けていた。 明らかに牽制するような気配に『クリストフ・フォンシラー』は思う。 (話には聞いてたけど、拗れてるな。今の制度、不幸しか呼ばないような気がするな) 彼の隣に居る『アリシア・ムーンライト』も思う。 (当主の代に生まれた方は……幸せだったのでしょうか……どうすれば、皆さん、幸せになれるのでしょう……) どうすれば、より良くなれるのか? それを皆は思いながら、富士樹海迷宮の中へと訪れた。 迷宮の中に入ると、まずは草原に跳ばされる。 そこから八家が、我先に前に進む。 そして当然のように、みんなで罠に掛かった。 「ぬおっ!」 血気盛んに前を進んでいた武士の1人が落とし穴に落ちる。 「大丈――うあっ!」 助けに行こうとした武士も落っこちる。 最初は同じ家同士で落とし穴から助け出そうとするも、どちらも落っこちたので、慌てて他家の者が助けに行く。 その中には源隆斉も。 助けに向かおうとすると落とし穴が発動するが、他の者が落ちているのを見ていた源隆斉は危なげなく避ける。 そして避けた先に、当然のように発生する落とし穴。 「危ねぇ!」 見ていたナツキが素早く走り寄ると、落ちないように庇う。 「良かっ――」 そして当然のように、代わりに落ちそうになるナツキ。 「ナツキ!」 慌ててルーノが手を取り引き上げる。 「流石だぜ相棒!」 「君が落ちてどうする」 ナツキとルーノの様子を見ていた源隆斉は、ポツリと小さく呟く。 「……性格は母親に似たか」 これにナツキが何か言うべきか悩んでいると、一が間を取り持つようにやって来て言った。 「罠があるようです。ここは他家同志で争っている場合ではありません。浄化師とも助け合い、先を進みましょう」 これに年長の源隆斉と斉藤万斉は、眉を顰め返せないでいたが、2人の息子である青葉と素月が取り成す様に言った。 「一殿の言う通りです。ここは、助け合わねば」 「その通りです。これより大口真神様に会うのですから、醜態を曝すべきではありません」 2人の言葉に、厳しい表情のまま頷く源隆斉と万斉だった。 そして皆で進んでいくが、やっぱり罠に掛かっていく。 「ほっ! はっ!」 皆の様子を見ていたリンファは、そこから学んでいたので罠を回避していく。 「危ないところでした……気を引き締めて進みましょう……」 そこに走り寄っていくステラ。 「おー、マーすごいな。オレも――」 言ってる傍から落とし穴に落ちる。 「ってステラ!?」 慌てて引き上げるリンファ。 「大丈夫ですか?!」 「だいじょうぶだ!」 何故か目を輝かせているステラ。 「おちたらふよよーん、ってなったぞ」 落ちても安心な構造らしい。 「怪我がないなら良かったです。気を付けましょう」 「わかった。気をつける」 ステラは今度は慎重に、他の誰かが通った後を進む。 「これならだいじょうぶぅぅぅ……――」 時間差の罠だったらしい。 「ステラ!!?」 エコーが掛かる勢いで落ちていったステラに慌てて引き上げに向かうリンファ。 するとひょこっと手が落とし穴から伸びている。 「だいじょうぶだ!」 どうやら、落ちたあと自動的に地面が押し上げられたらしい。 「どういう罠なんですか、これは……」 リンファが半ば呆れつつ、ステラを落とし穴から引き上げ、ほっと一息ついた瞬間、足元がぱかっと開いた。 「え?」 あまりのことに声を上げていると、ステラがダッシュしてくる。 「マー!」 「ス、ステラッッッ! って一緒に落ちたらあぁぁぁ……――」 仲良く2人で落ちていく。 ちなみに落ちると地面は、ふよよ~んとしていたので怪我もなく。 自動的に地上まで押し上げられた。 どう考えても、面白罠である。 そんな罠に、皆は掛かっていく。 「みんな気をつけて!」 「ネコ耳生やしてる状態で言っても説得力無いぞ……」 面白罠に掛かって猫耳が生えたラニに、ラスが突込みを入れる。 「む、なによ。気をつけなきゃいけないのは本当でしょ」 「……それは間違いないが、それはそれとして気をつけてだな」 「分かってるわよ。みんな、気をつけて進みま――」 どーんっ! 「うひゃっ!」 「ラニ!」 言ってる傍から引っかかった。 足元が爆発したラニは、羽毛のように軽々と、高く打ち上げられる。 (まずい、受け止めないと!) 決死の覚悟でラスがキャッチ。 しかし重さも衝撃も何も感じない。 どうやら爆発と同時に、重さが一時的に軽くなっているらしい。 「気をつけろよ」 「分かってるわよ。何度も引っかからないわ」 ひょいっと降ろされたラニは、キリッとした表情になると、今まで以上の慎重さで前に進んでいった。 ちなみに、1人で率先して前に出ているのは、先ほどお姫さま抱っこで受け止められたので、微妙に頬が赤いのを隠すためだったりしたが。 それには気付かないラスが、小さくため息をついていると、武士団の1人が横を通る。 (ちょうど良い、かな) ラスは若い武士に歩調を合わせると、他には聞こえない程度の声で話をした。 軽く挨拶し、今回の騒動をどう思ってるのか訊いてみる。 すると若い武士は、周囲に聞こえない程度の声で返した。 「良い機会だと、思う者もいます。だからこそ、ここに来た者も多いのです」 (手放しで、今の制度を受け入れてる訳じゃないってことか) 若い武士の応えに、考えるラスだった。 そうして進んでいく内に、周囲の様子が変わる。 今度は、ごろごろと大きな岩がある地帯。 「ただの岩……にしては、少し違和感がありますね」 小説のネタにならないかと『桃山・令花』が好奇心で岩に近付いてみる。 「ねーちゃん、気をつけろ。爆発するかもしんねーぞ」 弟である『桃山・和樹』に言われ、令花は照れ隠しのように咳払いをして返す。 「分かってるわ。気をつけないと」 そんな風に、パートナーに気遣われているのは他にも。 「わぁ、シリウス、見て」 綺麗な花を見つけたリチェルカーレが走り寄ろうとすると―― 「待て」 慌てて止める『シリウス・セイアッド』。 するとリチェルカーレが進もうとした地面が、ぱかっと開く。 「……頼むから。前を見てくれ」 「ごめんなさい。迷惑かけて……」 しゅんとするリチェルカーレに、掛ける言葉が浮かばず困るシリウスだった。 そうして皆が進む中、先行して進み解除していく者も。 「――これで大丈夫です」 罠を解除した『ショーン・ハイド』は、後を連いてくる『レオノル・ペリエ』に返す。 「ありがとう、ショーン」 安心して前に出るレオノル。 そんな風に、ショーンが罠を解除して数を減らしてくれてはいるが、進めば進むほど罠の数は多く、どうしても掛かってしまう。 「ねーちゃん!」 歩いていると白煙に包まれた令花に、和樹が慌てて声を掛ける。すると―― 「あ~うぅ」 幼い声が下の方から聞こえてくる。 見れば白煙が晴れたあと、そこにいたのは女の子の赤ちゃん。 「……ねーちゃん?」 まさかと思って近づくと、よく見れば面影がある。 服も、それまで着ていた物が赤ちゃん仕様になっていた。 「うわ、ちっちゃ」 赤ちゃん令花の小さな手を取る和樹。 「うぅー」 するとちっちゃな手で、ぱしぱし叩く令花。 ちなみに全然痛くない。 「えっと、ひょっとして機嫌が悪い?」 これはいかんと和樹は赤ちゃん令花を抱き上げると―― 「ほーら、ねーちゃん。高い高ーい」 加減を知らずに高い高いをする。 「う……ぅあああ~ん」 「ちょ、なんで泣き出すんだよねーちゃん」 慌ててさらに激しく高い高いをする和樹。 もちろん、ぎゃん泣きする令花。 「え、ええ!? どうすりゃいいんだよ」 混乱する和樹。 そこに助け舟が。 「あの、怖いんだと、思います」 アリシアが声を掛け、高い高いを止めてくれる。 「その子、令花ちゃん、ですか?」 「え、ああ、そうなんだ」 困った顔の和樹に、そっとアリシアは令花を抱き寄せる。 「大丈夫、ですよ」 泣き止むように、優しく背中をポンポンする。 そこにリチェルカーレも傍に寄る。 「大丈夫! きっと戻してもらえるわ」 そう言うと、アリシアから赤ちゃん令花を受け取りあやす。 年の離れた妹弟が居るので慣れたもの。 泣き止んだ所で、和樹に渡す。 「好かったな。ねーちゃん」 ぽんっ! 「うわ!」 泣き止んだ所で元に戻る令花。 慌てて抱き上げる和樹だった。 そんな風に、罠に掛かる者が続出するので、ショーンは気を張って進む。 (……何か、さっきから俺ばっかりがブーピートラップ解除してる気が。まあいいか……) 黙々と解除していると、レオノルが手助けできないかと思い近寄る。すると―― ぼわん。 レオノルは足元から白煙に包まれた。 「ドクター!」 慌てて走る寄るショーンだが、罠に掛かったレオノルは落ち着いている。 (これ、何かの魔法だ。どっかで似たようなのを見た気が……) 分析しながら思い出す。 (ああ、そうだ。そういや前にショーンに猫耳と尻尾が生えたことあったっけ……あれに似てるような) 思考していると、白煙が晴れる。 そして気付けば、やたらと周囲の物が大きくなっていた。 (え? これって……) 状況を掴もうとしていると、やたら高い位置からショーンの声が聞こえてくる。 「ドクター……」 気のせいか、どこか震えるような声。 これにレオノルは返そうとする。 (ショーン!) 「な~ぅ!」 出てきたのは可愛らしい仔猫の鳴き声だった。 (何だこれ?) 見れば、ふわさらの真っ白な毛並みをした仔猫の姿になっているのに気付く。 (どういうこと!? いや罠のせいなんだろうけど。とにかく解かないと。ショーン) 「にぃ、にぃ、にゃ~ぅ」 ショーンとコンタクトを取るべく鳴き続けるレオノル。 するとショーンは、そっとレオノルを掌の上に乗せる。 そして顔に近付けるのだが、思いっきり緩んでいた。 「ドクターが可愛らしい仔猫に……白くてふわふわしてる……可愛い……うわぁ、掌に収まるぐらい小さい可愛い……!」 とろけるように顔がほころんでいる。 (……ショーン?) 「な~ぅ?」 「ああもう鳴き声まで可愛い……!」 (いや、ショーン。そうじゃなくて……) 「にぃ、な~ぅ。にゃにゃにゃ~ぅ」 「あーこっち見てる可愛い!」 (ダメだ。言葉が通じない) どうしたものかと思っていると、ショーンは緩んだ顔でレオノルをアリシア達に見せに行く。 「リチェ、アリシア、お前達も触れ。可愛いぞ」 「レオノル先生なんですか? すごくかわいいです!」 「はい。すごく、かわいいです」 笑顔で撫でるアリシアとリチェルカーレ。 そして何故か誇らしそうなショーン。 (ショーンって、子供が出来ると親ばかになるんじゃ……) ため息をつくようにレオノルが頭上を見上げると、馬鹿でかい鉄球がゆっくりと落ちてくるのに気付く。 「にーにーにーにー!」 思わず仔猫の鳴き声で叫ぶレオノル。 「可愛い!」 しかしショーンには伝わらなかった。 変わらず目元を垂れさせている。 そして仔猫レオノルを見詰めていたが、足元に影が出来ていることに気付く。 (……影?) 反射的に見上げれば鉄球が。 「危ない! 避けろ!」 リチェルカーレ達に退避を促し、ショーンもその場から離れる。すると―― ぽよん。 やたら軽い音と共に、鉄球は地面に落ちると消え失せた。 ほっと一息ついた所で、仔猫レオノルはショーンの掌から跳び下りる。 その途端、白煙に包まれ、それが晴れると元の姿をしたレオノルが。 「気づくの遅い!」 「……はい」 ダメ出しをするレオノルに、気まずそうに返すショーンだった。 面白罠に掛かっていく浄化師達。 もちろん、ここで終わる訳はない。 「アリシア!?」 大きな岩を通りかかった瞬間、岩から白煙が吹き出し、それから庇うようにクリストフが抱え込む。 「クリス!」 白煙に包まれたクリストフに、アリシアが心配して声を掛けると、幼い声が返って来た。 「大丈夫だよ」 (……あれ?) そこでクリストフは気付く。 (声が……それになんだか目線が低くなってるような) 両手を見れば、かなり小さい。 (あ、これ、子供になってるな) 判断しつつ、状況を理解する。 (体は、5歳くらいかな? でも記憶も思考も変わりなし。見た目だけが変わったみたいだな) クリストフが落ち着いて自分の状況を把握している近くで、混乱しそうになる自分を抑えている者も。 「シリウス!」 白煙に包まれたシリウスに、リチェルカーレは声を上げる。 武士を庇い罠に掛かりそうになったリチェルカーレの代わりに、シリウスが罠に掛かったのだ。 心配するリチェルカーレの前で白煙は晴れ、シリウスは言葉を返した。 「大丈夫だ」 いつもよりも高い声。 自分の声に訝しむシリウスに、目をぱちぱちさせるリチェルカーレ。 「……どうした?」 訝しむシリウスは、自分の手を見る。 ほっそりとした繊細な指は、明らかに男の物ではない。 そして気付けば、肩を滑り落ちる長い髪。 なにより、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる、女性の姿。 「……まさか」 顔が強張るシリウスに、リチェルカーレは零れ落ちそうな目をしながら言った。 「わたしより、スタイルがいい……」 「そういう問題じゃない!」 「でもシリウス、とっても綺麗よ」 純粋な褒め言葉がシリウスに眩暈を感じさせる。そこに―― 「お姉さん、綺麗だね」 男の子姿のクリストフが、ニッコリ笑って言った。 それを見たアリシアは、ホッと一息つく。 (精神面は、無事みたい、ですね) いつもと変わらない洒脱で余裕のある様子に、中身がいつもと同じだと確信し安心する。 同じく、クリストフが見た目だけで中身は変わってないこと気付いたシリウスは、小さくなったクリストフの一言に、ぎっと目線を向ける。 「怖いなぁ」 くすくすと笑みを浮かべると、クリストフはリチェルカーレの傍に行く。 するとリチェルカーレは、クリストフを守るように抱きしめる。 これにはクリストフは予想外だったのか、ちょっと困ったような顔をした。 そしてシリウスは、中々戻らない自分の姿に深く深くため息ひとつ。 (散々だな……) 眩暈を加速させるシリウスだった。 そうして罠に掛かり被害を受ける者もいれば、罠に掛かったパートナーからの被害を受ける者も。 「気をつけましょう、ベルトルドさん」 「……そうだな」 返事をしながら、ベルトルドは逃れようのない未来を予感する。 (これは、前にも……) ヨナが猫の姿になった時のことを思い出し、運命を受け入れる。 そんな覚悟が決まった所で、ヨナは当然罠に掛かった。 「危ない!」 罠に掛かりそうになった武士の背を押し、代わりにヨナが罠に掛かってしまう。 「これは――」 噴射されたガスを吸ってしまい、ヨナは小さくなっていく。 それはもう見る見るうちに。服まで合わせて小さくなる。 「……?」 ぽかんとしたヨナは、小首を傾げる。 その時には、5歳程度の子供になっていた。 「しまったな」 ヨナの様子にベルトルドは、ため息をつくように言った。 「意識まで子供でなければ何とかなるが……」 諦めよう。 そんな気がふつふつとするが、ほっそい希望を手繰るように声を掛ける。 「おいヨナ。状況は分かるか?」 「だいじょうぶ!」 ヨナは元気に応えた。 「おおきいねこさん!」 ダメだった。 「……これは、難しいか……」 天を仰いでいると―― 「んっしょ、んっしょ」 「なぜ登る」 一応聞いてみる。 「みみ。みみがあるのです。だからのぼります」 証明成功! と言わんばかりに、胸を張るヨナ。 「……そうか」 諦めよう。 秒速でベルトルドは悟った。そして―― 「ねこさんねこさん、みみ、みみー」 ヨナを肩車しながら、しこたま耳を玩具にされつつ、ベルトルドは皆と先に進んだ。 その時だった。 「よくぞ来た!」 高い所からよく通る声が響く。 視線を向ければ、高い木の天辺に1人の男が。 「とう!」 皆の視線が向けられる中、男は木から跳ぶと、スタイリッシュ着地。 そして、すたっと立ち上がると、背中の羽を一度羽ばたかせ言った。 「我が名はヤマトタケル! 我が子孫たちと異国の客人よ! 歓待しよう。という訳で来ーい!」 なにを? 唐突なタケルの言葉に、皆は戸惑う。 そこに5mぐらいの大きさの狼、大口真神がやって来て突っ込んだ。 「何をしてるんですかー! 本気で戦う気ですか!」 「もちのろんだ! 真神殿!」 軽いノリのタケルに、皆が状況が飲めない中、真神が説明する。 それを聞き、思わずリンファは聞き返した。 「……えぇと、貴方がニホンの守護天使様ですか……?」 「その通り!」 やたらと軽いタケル。 「そうなのですか……」 「どうしたのだ? マー」 どこか茫然とした様子のリンファにステラが声を掛けると、リンファは耳元で囁くように言った。 「もっとシリアスな雰囲気を想像していました……このあいだは一時とはいえ殺されたくらいなのに……」 そう呟いてしまうほど、タケルのノリは軽い。 あまりの緊張感のなさに、じと目でラニは言った。 「……何かウキウキしてない?」 これに横で聞いていたラスが続ける。 「どう見ても、そう見えるな。守護天使ということは、試練をしに来たってことなのか?」 これを聞いたタケルは、ちょっと考えるような間を空けて応えた。 「試練……おおっ、そうそう。その通りだ! という訳で掛かって来るが良い!」 どう考えてもいま思いついたよね? 皆の気持ちはひとつになったが、それはそれ。 「試練? なら頑張るわよーっ!」 ラニは魔術真名を唱え、やる気をみせていく。 一方、武士達は、氏神と武士の開祖であるタケルに、どうするべきか迷い動けない。 しかしタケルは、やる気満々。 その様子に、真神は深いため息をついて言った。 「ほどほどにタケル殿。貴方が本気で戦ったら、迷宮に影響が出ます」 「おおっ、心配めされるな! 人であった時と同じ力しか出さぬぞ!」 タケルうっきうきである。 それに心労を吐き出すように再びため息をつく真神。 それを見ていたルーノは呟く。 「……大変だな」 「どうしたんだ? ルーノ」 すでに臨戦態勢なナツキに声を掛けられ、ルーノは誤魔化すように目を逸らし返した。 「……いや、何も」 というやり取りがありつつも、浄化師達はタケルに挑む。 まずはリチェルカーレとアリシアが禹歩七星を掛け皆の動きを加速し、真正面から戦っていく。 「加減はしない」 いつもより目が3割増し険悪なシリウスが、まずは吶喊。 ちなみに、まだ女性のままなので、微妙に八つ当たりっぽい気配が漂う。 魔術真名を詠唱し、ベリアルリングによる強化と、黒炎解放による覚醒。 三段重ねのブーストで斬り掛かる。 「やるな!」 タケルは虚空から剣を取り出すと、シリウスのソードバニッシュをギリギリで受け止める。 「良いぞ! これだけの腕、生半な鍛錬ではなかろう。しかもまだ伸び代がある。鍛えてやろう」 「……余裕だな」 「なに、年寄りのお節介だ」 そう言うとタケルは、シリウスに斬り掛かる。 繰り出される剣技は力強く、それでいて優美。 一撃一撃が必倒の威力を込められたそれを、しかしシリウスは捌いていく。 そこにクリストフが加勢に加わる。 すでに元の姿に戻っていたクリストフは、力強い振り抜きと共に氷結斬。 シリウスの斬撃に合せ繰り出される一撃は、タケルの笑みをさらに強くした。 「はははっ、活きが良いな!」 笑みを浮かべ、剣撃を繰り出す。 それを避けず撃ち合い、クリストフは剣を重ねる。 遠慮のない、余分な物のない純粋な戦い。 (楽しい) 全力を何の憂いなく振う喜びに、クリストフは笑みを浮かべる。 「好きだな、こう言うの」 シリウスと連携し、クリストフは剣を振るい続ける。 「さすがヤマトタケルの尊。戦えて嬉しいよ!」 「嬉しいことを言う! ならば応えよう!」 タケルも笑みを浮かべ戦いを加速する。 剣と剣が撃ち合う音が絶え間なく続く。 それを見ていた武士達は、自分達も続けるように戦いに参加する。 「好いぞ! 全員掛かって来い!」 強笑を浮かべ、タケルの剣撃は強さを増し、それに応え浄化師達と武士の戦いは過熱する。 その熱に促されるように、アリシアも声を上げる。 「誰も、傷つけさせません……!」 鬼門封印で動きを阻害し、雷龍で剣撃を抑える。 激しさを増す戦いを援護するべく、遠距離からレオノルとショーンは攻撃する。 「ショーン。私達は援護に集中しよう」 「はい、ドクター」 レオノルは魔術探知でタケルの動きを見ながら、真正面からアビスブリザードを放つ。 (小手先は嫌いそうだし、いま出せる全力で) 捧身賢術を三重に掛けた一撃は、申し分ない速さと鋭さで撃ち出される。 「面白い!」 余計な小手先のない一撃に、タケルは笑みを浮かべ真正面から受ける。 「ふんっ!」 渾身の振り降ろしが、アビスブリザードを迎え撃ち全てを砕く。 だが、それにより一瞬動きが止まる。 その隙を逃さずショーンのピンポイントショット。 タケルは避け切れず、羽を掠めるように当たる。 「ぬっ! 地獄の炎で鍛えた武器の一撃か! 良いものを持っておるな!」 攻撃を受けたタケルは、守りがランキュヌの効果で薄くされながらも、より楽しそうに笑顔を浮かべた。 その笑みを強くするように、浄化師は攻撃を重ねる。 「これで、どうだー!」 ラニがタケルの隙を突き、真正面から突きを放つ。 「好いぞ!」 タケルは避けることなく真正面から迎え撃つ。 鋭いラニの突きを真下から跳ね上げると、追撃の打ち降ろしを放とうとする。 だが、そこに横手からラスの追撃が入る。 真上からの鋭い打ち降ろしのパイルドライブ。 気付いたタケルは一歩下がり避けると、横なぎに剣を振るう。 それをラスが武器の柄で受けると、即座にラニが突きで援護する。 「なるほど! 息が合っておる!」 ラニの突きを掠めるようにして避けたタケルは、ラスからも意識を逸らすことなく称賛する。 「主らは2人でひとつか! 好き連携よ!」 「ありがと!」 笑顔を浮かべるラニに、ラスも同じように笑みを浮かべ言った。 「行くぞ、ラニ。俺が合わせる。全力で行け」 「もちろんよ!」 2人でひとつの息の合った連係で、ラニとラスは戦いを重ねていった。 こうして真正面からの戦いに、お互いを確かめ合うようにぶつかっていく。 「薔薇十字教団浄化師、タオ・リンファ、参ります!」 「ステラだ! いっくぞー!」 良く通る声で名乗りを上げ戦いに挑むリンファと共に、ステラも名乗りを上げタケルに突っ込む。 リンファは大立ち回りを意識して、全力で斬り込む。 蒼滅呪刀・化蛇を渾身の力で振い、刃の動きに合わせ波しぶきが刃の軌跡を彩る。 「おおっ、美事な眺め! だが良いのか? その津波、攻撃にも使えよう」 「それは無粋でしょう。貴方を倒すのが目的ではないのです。貴方を魅せ、認められるのが目的です」 「面白い! 魅せてみよ!」 刃と刃を打ち合わせ、波しぶきが戦舞を飾る。 そこにがむしゃらに、ステラが全力を撃ち振るう。 「これでどうだー!」 乱打暴擲の猛打を繰り出す。 タケルは避けるも、そこに途切れず攻撃を続ける。 躱し捌き弾いた所で、タケルの動きが僅かに止まった。 そこに全力の地烈豪震撃。 タケルは剣で軌道を逸らすと、ステラが手にしたスタンピングハンマーは地面に当たり、大きく亀裂を入れる。 「迷いのない好き一撃よ!」 「そうおもうならあたれー!」 続けて攻撃を重ねるステラに、タケルは笑みを浮かべ剣で応えた。 戦いは続いていき、喧騒が増す。 賑やかな戦いは、祭りのような高揚感を広げていく。 それに合わせ、ノリ良く和樹は踏み込んだ。 「ヤマトタケル先輩(パイセン)! 手合せ頼むぜ!」 「その心意気や好し! 掛かって来い!」 構えるタケルに、和樹はぶつかる。 絶対防御ノ誓イで守りを固めた上で、味方の盾になるように身体を張っていく。 「避けずに受け止めるか!」 「おう!」 「ははは! 好き応えよ! だがどこまで持つ?」 「倒れねぇぜ! ヤマト魂を見せてやる!」 「面白い!」 真正面からぶつかり合う2人に、慌てて令花は援護する。 (ああもう! 和くん無茶して!) 令花はルーナープロテクションでタケルの攻撃力を削り、その助けを借り和樹は、タケルの前に立ち続けた。 戦いはさらに熱く続いていく。 そこに5歳児のヨナも参戦。 「わたしもやる」 「分かったから耳を掴むのは勘弁してくれ」 ヨナを肩車をした状態でベルトルドは参戦。 ベルトルドが動き回り5歳児ヨナが攻撃魔術を撃ちまくる移動砲台式で戦う。 「えーい!」 5歳児ヨナなので、配慮が全くない。 制御の甘いエクスプロージョンを撃ちまくる。 が、その度にタケルは羽を軽く動かし消し去る。 「ちょっとくらい当たってよう!」 ぷんすかヨナだったが、肩車式移動をしているベルトルドは胸を撫で下ろす。 (こちらの攻撃の余波で、余計な被害が出ないようにしてくれてるな。あの守護天使、意外と情に厚そうだ。ここは気が引けるが……) ベルトルドはヨナを肩から降ろすと耳元で囁く。 「出来るか?」 「やるー!」 元気一杯なヨナの応えに、ベルトルドは一気にタケルの懐に跳び込む。 そこでヨナを突き出すベルトルド。 「よけないでー」 上目遣いの5歳児ヨナの嘆願に、タケルは笑顔で呵々大笑。 「はははっ! やってみよ!」 という訳で容赦なく近距離エクスプロージョン。 笑いながら吹っ飛ぶタケル。 「やったー!」 「……色々すまない」 「はははっ!」 吹っ飛んだタケルは地面に激突。 即座に跳ね起きる。 「ふっかーつ!」 全然元気だが、僅かとはいえ動きが止まり隙が出来る。 そこに武士団が一斉攻撃。 重ねられた攻撃と連携。 源隆斉と万斉が前に出ると、側面から青葉と素月が援護攻撃。 そこにナツキとルーノが加わる。 「ナツキ」 「おう!」 呼び掛けひとつで意図を読み、ナツキは前に出る。 「こっちも本気で行くぜ!」 ナツキが踏み込むと同時に、ルーノが鬼門封印を放つ。 それによりタケルの動きを阻害した所で、ナツキは鋭い突きを放つ。しかし―― 「まだまだ!」 タケルは手にした剣でナツキの一撃を弾き、即座にカウンターを入れようとする。 そこに、青葉と素月が左右からの薙ぎ払い。 「ぬ!」 ナツキを攻撃しようとしたタケルは回避に専念。 後方に跳んだ所で、動きを読んでいた源隆斉と万斉が追撃。 「やるな!」 タケルは笑みを浮かべ舞うように体を回転させると、鋭い斬撃を薙ぎ払う。 だが動きが止まる。 そこにルーノは慈救咒を叩き込む。食らい付こうと飛んできた炎の蛇を、タケルは剣で斬り裂く。 全てをタケルは捌く。 しかしその代償に、ナツキを間合いに踏み込ませていた。 「希望を守る牙になれ。解放しろ、ホープ・レーベン!」 絶好の位置から、ナツキはホープ・レーベンを黒炎解放。 さらに特殊能力を発動。 回避不能の一撃が、タケルに繰り出された。 「うむ。見事」 紙一重で、わざと脇腹のすぐ横を突いたナツキの一撃に、タケルは称賛の言葉を返した。 こうしてタケルとの戦いは終わった。 「他に、怪我をした方は居ませんか? 回復しますから、言って下さい」 リチェルカーレに傷を癒され、武士達は礼を返す。 同時に、浄化師達に対する視線が変わっていた。 それはタケルとの戦いで、その強さを理解したからだ。 また、全員が全力で戦ったせいか、最初のギスギスした雰囲気が幾らか和らいでいた。 「タケル殿、これが狙いですか?」 「まさかまさか。私は少し遊んで貰っただけですよ、真神殿」 とぼけるように言うタケルに真神が苦笑していると、5歳児なヨナが、たたたっと走り寄り真神の耳元で内緒話をするように言った。 「あのね、おうちの決まりでみんながけんかするのはやだな……」 「ふむ」 真神はヨナの言葉に目を細めると、集まった皆に言った。 「よくぞ来た。なんじゃもんじゃ様より、仔細は聞いている。八家の者も言いたい事はあるだろうが、まずは異国の者達の意見を聞きたい」 これに武士団はざわめくが、先ほどの戦いで浄化師達の実力を認めていることもあり、静かに言葉を待っている。 そこに浄化師達は意見を口にした。 「ナツキのご両親の件が異例だと思えんのだが……今まででもこの制度で苦しんできた人はいたんじゃないか?」 最初に口を開いたのはショーン。 そこにレオノルが続ける。 「そちらにも道理があると思うから、百歩譲って輪番制は残すのは良いと思うけど、軟禁と当主のきょうだい飼い殺しは前近代的だよ。それじゃ、生贄みたいだ」 これに武士団は苦い物を飲み込むように黙った後、返していった。 「余計な争いを無くすために必要なことだ。何より、今まで続けてきたこと。我らの代で変えるなど、父祖に面目が立たん」 どうも話を聞いていると、余計な争いを無くすことと、今まで続いてきた者達の意思や苦労を無駄にしたくない、という思いがあるようだった。 彼らには、彼らなりの理屈と道理があり、それを横から一方的に変えろと言うのも無理があるように思えた。 だからこそ、問い掛けるように皆は続ける。 「一つ、お聞きしたいのですが……当主になるのは、どんな方が、望ましいのでしょう……輪番制では、ふさわしくない方が、当たることも、あったのでは……」 アリシアの問い掛けに、痛い所を突かれたというように武士達は、再び黙る。 しかし眉をひそめると、訥々と返した。 「無いとは言わん。だが、それも30年で終わること」 「でも、その間は、ふさわしくない人が当主になるんだよね?」 クリストフが即座に返す。 「それは不幸だよ。そうならないためにも、各家の代表は一定の基準を満たした者から一番優秀な者を選んでは? その為には基準を決めないといけないんだけど。それと当主ではなく、代表を取り纏める議長を決めるといいんじゃないかな」 クリストフの言葉に武士団はざわめく。 そこに元の姿に戻っていたシリウスが、クリストフの言葉を強めるように言った。 「有事の際に必要な役割なら、本人の能力や意欲を問わないのはおかしい。自薦でも他薦でもいい、皆に認められる者が率いればいい」 道理を言われ、武士達は返せない。 そこにリチェルカーレが、道理だけでなく情を口にする。 「皆さんが、国のために尽くしてくれたのはわかります」 武士達を認め、リチェルカーレは続ける。 「でも、決まりだからと家族を大事にできないのは違うと思います。長子かそうでないか、それだけで生き方が決まるのはおかしいです」 訴えかけるようなリチェルカーレの言葉に、武士達は苦い顔をする。 そこに令花が提案した。 「新当主は輪番家から立候補制に変え、候補複数なら各家の現トップの合議により審査されてはどうでしょうか?」 官僚を父に持つ令花は、具体的な制度を例に挙げ説明する。 それに武士達はすぐには返さない。 認める部分はあるのだろう。だが、それだけで納得するかというと別だ。 そこにリンファが続けて提案した。 「当主だけに絞らず、それ以外にも役職を作るのはどうでしょうか?」 より柔軟な方法はないものかと、リンファは続ける。 「纏める為のリーダーは確かに必要ですが、互いの秀でた部分を持ち寄り、補い合うのもひとつの手かと。不変と変化は共存出来るもののはずです」 浄化師達の言葉に、武士達はどこか牽制するように視線を交わす。 どうやら彼らの間でも、思う所はあったようだ。 それを表に出せるよう、ラニとラスが続けた。 「うーんと……お家騒動なんだけど、そもそも八つの家を一人でまとめる? っていうの滅茶苦茶大変じゃない?」 根本的なことに関する疑問を、ラニは口にする。 「だから今揉め事になってるんでしょ? 他の人も言ってたけど 皆で出来ないの?」 ラニに続けて、ラスも考えを口にする。 「当主もだが、その次子の……スペア扱いはどうにかならないのか? それじゃ全員雁字搦めだろ」 より広い考えを手に入れられるよう、ひとつの案を提示する。 「留学……ではないけれど、ある程度の期間、外に出て学んで、その期間が終わった後に改めてどうしたいかを聞くとか」 これに、それまで黙っていたタケルが笑みを浮かべ返す。 「好いな! それは新しい風を入れることになろう! どうだ、皆の者?」 これに武士達は返せない。 何かを言いたいことはあるのだろう。 だが、それまでの慣習を変えることは、やはり難しい。 浄化師の言葉を認めながらも、部外者である彼らの言葉に頷けないでいた。 だからこそ、当事者であるナツキの言葉が切っ掛けとなる。 「当主って一人じゃなきゃダメなのか?」 仲間の言葉を聞き、自分の中に取り入れながら、自分自身の気持ちも込めナツキは言った。 「八家から一人ずつ希望者を出して、八人で武士団を纏める事だって、出来ると思う」 「それはつまり……合議制ってことですね!!」 ナツキの言葉に、令花はノリノリで続ける。 気のせいか、眼鏡がキラーン! と輝き、やる気が溢れている。 実行委員会腕章を装着すると続けて言った。 「みんなで手を取り合わなくてはいけない時代。だからこそ、一人一人の思いに寄り添う必要もある時代。そんな時代にこそふさわしい、『みんなでまとめる』というお考えは、ナツキさんの慧眼だと思います! これが実現すれば、武家の意思決定方法として合議制が導入できるということです。大変画期的な事例になりますよ!」 親譲りの行政魂を、うずうずさせる令花。 これに武士達が、互いを牽制するように視線を交わすと、苦い声で言った。 「それは、継ぐことになるのか……今まで父祖が続けてきたことを、私達の代で壊すことになるのではないか……」 彼らの根幹に根差す想いに、ナツキは自分の想いをぶつけるように言った。 「形じゃなくて続いてきた想いや誇りを受け継ぐのが当主で、だから誉な事なんだろ」 源隆斉と万斉、青葉と素月。そして一や他の武士達に真っ直ぐに視線を向け想いを口にした。 「当主が受け継ぐものは権力だけじゃない、俺はそう思う」 真摯に、想いを語る。 「元は母さんが家を出たのが原因だ、意見なんてしたら不満が出るかもしれない。 ……でも俺は何言われてもいい。 ただ何が本当に八家で生きる人達の為になるのか、しっかり考えて欲しいんだ」 まっすぐに視線を合わせるナツキに、武士達も視線を向ける。 その眼差しには、それぞれ強い想いが宿り、同時に、ナツキの言葉を受け止めるような度量も見えた。 そこにルーノが続ける。 「跡継ぎ問題が和を乱す現状が良いとは思えない、いずれにしても変化は必要かと」 「確かにそうだ。だからこそ、主らはここ来たのだろう」 浄化師達の言葉を受け入れ、真神は武士達に言った。 「我が留守の間、氏子たる主らのこと、力になれなんだはすまなく想う。 なればこそ、我はここに断言する。 今の八家当主相続制度は、すでに時代に合わぬ。より今に合った制度を作れ。 その身届けとして、必要ならば我は迷宮より外に出るとしよう」 「さすが真神殿! ならば私も見届けとなろう!」 氏神たる真神。そして武士の開祖にして守護天使であるタケル。 2人の言葉に、武士達は膝をつき承諾した。 「委細承知いたしました」 それは浄化師達の言葉があったからこそ、導かれた結果。 新たな風が吹いた瞬間だった。 そうして話は付き、迷宮から帰ることに。 「送ってやろう」 真神が出口まで案内を申し出てくれる。 すると、じっと見ていたステラに真神は言った。 「背に乗るか?」 「いいのか!?」 「構わぬ。主には、どこか懐かしい匂いがするのでな」 喜んで背中に乗るステラ。 それを羨ましそうに見ている5歳児ヨナ。 「乗るか?」 「のるー!」 満面の笑顔で乗っかり。 「くぅ」 戦いの疲れもあり、真神の背中で寝てしまう。 そんなヨナに苦笑しながら、真神は道中ステラの話を聞いてやり、皆と出口まで向かった。 かくして指令は幕を落とす。 浄化師達のお蔭で、八家は新たな制度で進んでいくことになる。 それはアークソサエティへの留学も絡んだ話になるのだが、それはまた別のおはなし。
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*** 活躍者 *** |
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[30] 桃山・令花 2020/04/25-23:57
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[29] 桃山・令花 2020/04/25-16:16
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[28] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/25-15:31
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[27] アリシア・ムーンライト 2020/04/25-14:55
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[26] ナツキ・ヤクト 2020/04/25-12:10 | ||
[25] 桃山・令花 2020/04/25-10:14 | ||
[24] 桃山・令花 2020/04/25-06:47 | ||
[23] 桃山・令花 2020/04/25-06:37 | ||
[22] タオ・リンファ 2020/04/25-03:12 | ||
[21] ラニ・シェルロワ 2020/04/24-23:33 | ||
[20] クリストフ・フォンシラー 2020/04/24-22:00
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[19] ナツキ・ヤクト 2020/04/24-13:03 | ||
[18] 桃山・令花 2020/04/24-01:12 | ||
[17] 桃山・令花 2020/04/24-01:01
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[16] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/24-00:54
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[15] 桃山・令花 2020/04/24-00:53
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[14] 桃山・和樹 2020/04/24-00:44
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[13] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/24-00:40 | ||
[12] 桃山・令花 2020/04/24-00:38
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[11] ナツキ・ヤクト 2020/04/23-21:27
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[10] ヨナ・ミューエ 2020/04/23-00:21 | ||
[9] レオノル・ペリエ 2020/04/22-23:40 | ||
[8] クリストフ・フォンシラー 2020/04/22-23:06 | ||
[7] ラニ・シェルロワ 2020/04/22-22:47 | ||
[6] ルーノ・クロード 2020/04/22-22:11
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[5] ルーノ・クロード 2020/04/22-22:05
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[4] ナツキ・ヤクト 2020/04/22-21:49 | ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2020/04/22-20:06 | ||
[2] 桃山・令花 2020/04/22-16:21 |