出会いはemotional
とても簡単 | すべて
8/8名
出会いはemotional 情報
担当 木口アキノ GM
タイプ ショート
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 なし
相談期間 3 日
公開日 2018-04-22 00:00:00
出発日 2018-04-28 00:00:00
帰還日 2018-05-08



~ プロローグ ~

 ここは、薔薇十字教団本部談話室。
 夕食後のひと時、親睦を深めるためにパートナーとこの部屋で過ごす浄化師も多数いる。
 あなたたちも、そんな浄化師のひと組であった。
 ほとんどが椅子にゆったりと腰掛け会話を楽しんでいる中、椅子やテーブルの間をちょこまかと駆け回る子ウサギのような少女の姿があった。
「こんばんは、はじめまして! あたしはついこの間浄化師の仲間入りをしたロップといいます!」
 少女ははきはきとした声で挨拶をして。
「突然ですが、お2人の出会いについて聞かせてくださいっ」
 と、手にした羽ペンをマイクのように相手に向ける。
 突然そんなことを言われた方は困惑気味だ。
 ロップは怯むことなく、言葉を続ける。
「あたし、将来はルポライターになりたいんです! そして、後世に残る、浄化師のルポタージュを書くのが夢なんです!」
 きらきらと瞳を輝かせ、未来の夢を語るロップ。
「その第1段階として、浄化師たちの出会い、そこから記録していきたいと思いまして。浄化師の数だけ出会いの物語があるんです。それを、文字に残していきたいんです!!」
 熱のこもったロップの言葉に、聞かれた相手は仕方がないなぁ、と苦笑いで語り出す。
「ありがとうございますっ!」
 ロップは大急ぎでインクの蓋を開けると、手にしていた紙の束に羽ペンを走らせ、耳にした内容を書き記していく。
 ひととおり話を聞き終えると、「ありがとうございましたっ」と勢いよく頭を下げ、他にも話を聞けそうな人はいないかとキョロキョロし始めた。
 そして、ロップの瞳はあなたたちを見つけた。
 とととっ、と、ロップが駆け寄ってくる。そして、あなたの目の前に立つと。
「こんばんは、はじめまして! あなたたちの出会いの物語を、聞かせていただけませんか?」
 さて、少女の夢のために、少し昔話をしてあげることにしようか……。


~ 解説 ~

 お2人の「出会い」を記録いたします。
 契約時に初めて出会った、パンを咥えて走っていたら道の角でぶつかった、親同士が友達で物心つく頃には友達だった、でもなんでも。
 過去を思い返すことで、お2人の仲もまた少し親密になるかもしれません。

 個別描写です。
 基本的に過去、つまり出会った頃の描写がメインになりますが、「あの頃はこうだったわね。でも今は……」なんていう、現在の言動がプランに入りましたら、現在の様子も描写いたします。


~ ゲームマスターより ~

 こんにちは、皆さまそろそろ浄化師としての生活に慣れてきた頃でしょうか。
 2人の出会いをリザルトノベルとして記録しておきたい、そんな浄化師様がいらっしゃいましたら、木口でよろしければお手伝いさせてください。
 ご参加お待ちしております。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

花導・ファラ ジルサルト・ヴァーミリオン
女性 / エレメンツ / 占星術師 男性 / ヴァンピール / 魔性憑き
あの日は、不安で押しつぶされそうでした
祓魔人になれと言われて、そして知らぬ人と契約を交わすために本部に来ていました
時間があったので通路の人通りの少なそうな場所で、落ち着くために編み物をしていました

ひと一人開けた場所に、誰かが座ってきて…それがジルさんでした
目が合ったので会釈だけして、編み物に集中して

話しかけられて応えていると、ジルさんも契約するのだと言われました
偶然もあるんだなと思って、親近感を抱きました

「花導・ファラです」
ジルさんと握手して
お互い良い縁があるといいな、と言って別れました

…それから暫くして呼ばれて行くと、いたのはジルさん
吃驚して言葉がでなくて
嬉しくて

「よろしくお願いします…!」
リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
初めて会ったのは教団本部
引き合わされたのは本部の一室
どんな人だろう と緊張でがちがちになっていた目の前に現れたのは長身の男の人
綺麗に整った顔 澄んだ翡翠の双眸に魅入られ息を呑む
あ、あの はじめまして
リチェルカーレと言います 今日はよろしくお願いします
ぺこりとお辞儀

手を合わせ指を絡める
適合です おめでとうございます の声にぱっと笑顔
思わず手に力を入れ彼を仰ぎ見る
…っ ごめんなさい
頬を染めて手を離す
あの わたし何もできないけれど
足手まといにならないように がんばります
よろしくお願いしますね シリウスさん
深々とお辞儀
ぽつりと返された言葉に もう一度頬を染めて照れたように笑う
はい シリウス
よろしくお願いします、ね


朱輝・神南 碧希・生田
女性 / 人間 / 魔性憑き 男性 / ヴァンピール / 占星術師
(適合診断待ちで、長椅子に座ってきょろきょろしたり)

……あ、ああ、ううん
そういうわけじゃないんだけど
何となく手持ち無沙汰で

(やや逡巡してからぽつぽつと)
……私、記憶がない状態でこの国にいたの
大体一ヶ月前くらいかしら
それで、何日か前に祓魔人? っていうのだからって
勧誘されて、記憶探すのにもいいかなって
何となく引き受けちゃったんだけど
今になって知らない人と組むって不安になってきて

あなたもこれから診断?
世界が、広がる……
そうね、一緒に仕事するかも知れない人だもの
いつまでもこんなんじゃ始まらないわよね
ふふ、ありがと!

(同時に呼ばれ、担当にもう仲良くなったのかと問われ)
……え、あ、もしかしてあなたが……?
唐崎・翠 レガート・リシュテン
女性 / 生成 / 拷問官 男性 / 人間 / 狂信者
出会いは適合診断
職員仲介のもとお互い適合者を探していた
翠は今回が初めて

きょ、今日は、よろしくお願いします
引き合わされ緊張しつつ頭を下げて挨拶
優しそうな人。年も近そう
色々と想像を巡らせていたが少し安心

はい、わかりました。詳しいんですね
(あ、あれ。もしかして、まずいことを聞いてしまったかしら…?

どきどきしながら手と手を重ね合わせ
えっと、この場合は、どうなんでしょう…?
手の平がくっついた感触は、ありましたけれど
な、なるほど…
結果に動揺

まっすぐに自分を見据える目がとても澄んでいて
一緒に活動するならこの人がいい、と感じる
私でよろしければ、ぜひ。と微笑み

最初はよくわからなかったけど、とても手の温かい人、ね
シャルル・アンデルセン ノグリエ・オルト
女性 / 人間 / 魔性憑き 男性 / ヴァンピール / 人形遣い
私とノグリエさんとの出会いですか?
私とノグリエさんが出会ったのは私がまだ劇団にお世話になってた頃ですね。
私は劇団の座長さんに拾われてそこで歌を歌ったりダンスを披露したりしていたんです。

ノグリエさんは劇団の劇や歌を見に来てくださったお客さんの一人だったんです。
私の歌が気に入ってくれたといって毎日通ってくれたんですよ!
今思えばノグリエさんて割と家に引きこもりがちだから私の歌が気に入ったからって通うのって結構大変だったと思うんですよね。

そのうちノグリエさんが私を引き取りたいって言ってくださって。
引き取ってもらってからはしばらく一緒に暮らしていました。
今は魔祓師と喰人の関係ですから…縁て不思議ですね。
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
出会いは契約の時でした…
今までも何人か紹介して頂いてましたけれど、皆さん契約には至らず…
今度もダメかもしれないと思っていたのですが…

相手が自分の顔を見てちょっと目を見開いたのを見て
どこかで会ったことがあるかしらと考えて
初対面のはずと思った瞬間に脳裏に浮かんだ誰かの笑顔、金色の瞳

フラッシュバックした記憶に思わずよろけたのを支えてくれたのは
その契約相手…クリスでした…
近くで見たその瞳はお陽様の色で
少し眩しかったのを覚えています

今見えた記憶はきっと私の10歳以前の記憶
あれは彼なのか、どう聞いたらいいか分からず…
(そのまま聞けずに現在に至ります)

契約する事になったのだから
きっと聞く機会もありますよね…
テオドア・バークリー ハルト・ワーグナー
男性 / 人間 / 断罪者 男性 / 人間 / 悪魔祓い
6つの時、父さんに連れられて遠くの町に出かけたんだ。
父さんが他の大人と話している間、フラフラと路地に迷い込んだ。

路地でハル、大怪我しててさ。
本人は放っておいてくれなんて言ってたけど、泣いてるしそのままにしておけなくてさ。
でもそんな状況でどうしたらいいか分からなくて。
今思えばさっさと父さんを呼びに行けばよかったんだけど、必死だったから…
とにかくハンカチを傷口に巻いてみたり、痛いって言う場所を撫でてみたり。
でもなかなかハルの痛みを和らげてやれなくて、悔しくて。
父さんが探しに来た時、ハルより俺の方が泣いてたっけ…

もう父さん達はいないけど、ハルは変わらず傍にいてくれる。
あの時、ハルに出会えてよかった。
シュリ・スチュアート ロウハ・カデッサ
女性 / マドールチェ / 占星術師 男性 / 生成 / 断罪者
ロウハと出会ったのは、5年くらい前かしら
ある日お父様が仕事から帰ってきた時、彼が一緒だったの
突然「今日から一緒に暮らすことになった」って言われて、びっくりしたわ

確かロウハはお父様に命を助けられて、恩を返すために付いてきたんだったわよね?

挨拶したら睨まれて、すごく怖かったわ
ロ「睨んでたわけじゃねーけどな。もともとこういう顔なんだよ」

ある日お気に入りの遊び場所に行ったら、ロウハがいたの
「好きなんだよ、こういう場所から景色を眺めるのが…世界の呼吸を感じる気がしてな」って言われて
あたしも同じだったから、なんだかすごく嬉しくなったの
それから、だんだん仲良くなっていったのよね

…こんな感じでいいかしら?


~ リザルトノベル ~


ロップの取材記録
『浄化師の出会いについて』

●ケース1~花導・ファラ

 いち、にぃ、さん……。
 目を数えながら編棒を一心に動かしていると、心が落ち着く。
 生まれ故郷をベリアルの襲撃で失った花導・ファラだったが、悲しみに暮れる間も無く教団員に祓魔人になれ、喰人と契約を結べと言われ、気がつけば薔薇十字教団の本部に連れて来られていた。
 そしてこの数刻後には知らぬ人と契約を結ぶのだ。目まぐるし過ぎて混乱した精神が現実に追いつかない。
 そうだ、こんな時こそ……。
 ファラは通路の人通りの少ない場所にベンチを見つけると腰をおろし、瓦礫と化した実家から持ち出してきた編物セットを広げたのだった。
 一段編み終わり、ふうと息を吐いて顔をあげる。
 ポニーテールのピンクの髪がはらりと肩の後ろに流れ、彼女の顔を露わにする。
(超可愛い子!!)
 そこに通りかかったのが、ジルサルト・ヴァーミリオンだった。
 諸用があり本部を訪れたものの、時間より早く着いてしまったためあちらこちらと散策していたのだ。
 ジルサルトはいそいそと、ファラから人一人分ほど離れた場所に腰を下ろす。
 その気配にファラは一瞬彼の顔を見る。
(すごく綺麗な橙の目……!)
 ファラは軽く会釈したのみで、すぐに視線を手元に戻すが、ジルサルトの脳裏にはファラの瞳が焼き付いた。
 もう一度、こちらを見て……。
「キミもここに用があったの?」
 思わず声をかけていた。
 ファラが再び顔を上げる。
「ええ。私、これから契約を結ぶんです」
 返事があるってことは、嫌がられてない。喜ぶと同時に、ジルサルトはファラが「契約」と言ったことに気がついた。
「俺もさぁ、契約しに来たんだ。見知らぬ相手といきなり契約だなんて、ちょっと不安だよな」
 この子が契約する子だったら、いいのになぁ、なんて思いながらジルサルトがそう言うと。
「そうなんですか。そんな偶然もあるんですね」
 にっこりと笑うファラに、ジルサルトはますます惹かれた。
「俺、ジルサルト・ヴァーミリオン。ジルって呼んでね」
「花導・ファラです」
(はなしるべ、ふぁら……綺麗な名前)
 ジルサルトはファラの名を心の中で繰り返す。
「お互い良い縁だといいな!」
 ジルサルトが手を差し出すと、ファラは握手に応じる。
「それじゃあ、また」
 握手してもらえた喜びにうきうきしながらジルサルトはその場を離れたのだった。

 再会の時は予想よりも早くやってきた。
 契約の場に現れた相手の姿に、ファラもジルサルトも互いに驚きすぐには声が出なかった。
 だが、驚きの顔はすぐに嬉しい笑顔に変わってゆく。
「キミでよかった! よろしくな!」
「よろしくお願いします……!」
 2人の縁は「良い縁」だったに違いない。


●ケース2~リチェルカーレ・リモージュ

 シリウス・セイアッドが教団の門をくぐったのは、まだ幼い子供の頃であった。
 彼をこの場所まで連れてきた大人に「お前の生きる場所はここだ」と言われ、それを受け入れるしかなかった。
 その後何度となく適合試験も受けた。
 しかし、結果はいつも「適合せず」。
 きっと、自分と適合する者などいないのだ。1人で生きていく。自分はそういう生き物なのだ。
 だから、本部のとある部屋で不安と緊張とでがちがちに固まっているリチェルカーレ・リモージュと引き合わされた時も、まるきり他人事だった。
 見るからに戦いとは無縁そうな少女だな、と、それ以外の感想は抱かなかった。
 一方、リチェルカーレはシリウスを見た途端に、はっと息を飲んだ。
 彼の整った顔、澄んだ翡翠の双眸に魅入られて。
「あ、あの、はじめまして。リチェルカーレと言います。今日はよろしくお願いします」
 立ち上がりぺこりとお辞儀をするリチェルカーレに、シリウスは低い声で短く名乗る。
「……シリウスだ」
 シリウスには特に感慨などなかった。どうせまたいつもと同じ結果が待っている。
「それでは、検査を始めましょう」
 立会いの教団員が告げる。
 教団員に指示されるまま、ぞんざいに出されたシリウスの手に、緊張で微かに震えるリチェルカーレの手が重なり。
「!?」
 いつものように弾かれると思っていた手が吸い付くようにぴたりと合わさり、シリウスは目を丸くした。
 2人の手は、そのまま指まで絡んでいく。
「適合です。おめでとうございます」
 教団員の声に、リチェルカーレはきゅっと指先を握り締め、花咲くような笑顔を浮かべシリウスを仰ぎ見た。
 絡みつく細い指と、間近に咲いた笑顔。
 どう反応していいのかわからずシリウスは茫然とする。
「……っ、ごめんなさい」
 その表情を悪い方に受け取ったのか、リチェルカーレは頰を染め手を離す。構わない、と言うようにゆっくりと首を振るシリウス。
「あの、わたし何もできないけれど、足手まといにならないようにがんばります。よろしくお願いしますね、シリウスさん」
 まだ緊張が解けきっていない様子で一気に言うと、リチェルカーレは深々と頭を下げた。
「――呼び捨てでいい」
 ぼそりと返された言葉に、リチェルカーレの顔に再び薔薇色の花が咲く。
「はい、シリウス。よろしくお願いします、ね」
 握手を、と差し出された手を、シリウスは戸惑いながら握る。
 誰とも関わらない。それでいいと思っていたのに。
 シリウスの人生に、1人の少女が飛び込んできた瞬間であった。


●ケース3~朱輝・神南

 朱輝・神南は幅の広い廊下をきょろきょろしながら歩きまわる。
 ぐるりと首を回せば、何人かの男女が同じように名を呼ばれるのを待っている。
 長椅子を見つけた朱輝は、ちょこんと腰を下ろしてみる。
 椅子の脚にちょっと凝ったレリーフが彫られているのを見つけ、思わず降りてしゃがみ込み繁々とそれを眺める。
 と、そこへ。
「どうしたの?」
 天青石の瞳の少年が小首を傾げて朱輝を見ていた。
「何か探してる?」
「……あ、ああ、ううん。そういうわけじゃないんだけど……何となく手持ち無沙汰で」
 朱輝は後頭部を掻き苦笑する。
 少年は瞳をぱちぱちさせると、
「んー、でもちょっと不安そうだし。通りすがりでよければ話、聞くよ」
 と、にっこり笑ってみせた。
 自らの心情を会ったばかりの男性に吐露して良いものだろうか?
 目の前のにこにこしている少年は……。
(なんだかちょっと、小型犬っぽい)
 そう感じた途端に、朱輝はこの人なら話しても大丈夫、と思った。
「……私、記憶がない状態でこの国にいたの。大体一ヶ月前くらいかしら」
 躊躇いがちに口を開いて、長椅子に座る。
「それで、何日か前に祓魔人? っていうのだからって勧誘されて」
 毛先を弄びながら、朱輝は語る。
「記憶探すのにもいいかなって、何となく引き受けちゃったんだけど、今になって知らない人と組むって不安になってきて」
「……そっかあ。俺もさ、そんな感じ」
 黙って話を聞いていた少年が口を開く。
「俺は喰人の方なんだけど。ちょっと色々あって故郷出る事になってさ。その時、俺を拾ってくれた浄化師の人がいてその人が誘ってくれてさ。行く宛なかったから、引き受けて」
 一通り話し終えると、少年は朱輝に向き直る。
「これから適合診断?」
 朱輝はこくんと頷く。
「あなたもこれから診断?」
「俺もなんだ。確かに会うのは知らない人だろうけど。でも、折角だからその出会いを楽しむようにしてる。世界が広がる機会だって」
(世界が、広がる……)
 ぱあっと目の前が明るくなったように感じ、朱輝の瞳に希望の光が宿る。
「そうね、一緒に仕事するかも知れない人だもの。いつまでもこんなんじゃ始まらないわよね」
「あっでも嫌な奴に当たったら言ってよ。俺が懲らしめてやるから!」
「ふふ、ありがと!」
 その時、奥の扉が開いて出てきた教団員が名前を読み上げた。
「朱輝・神南さん。碧希・生田さん」
「はい!」
 2人同時に立ち上がり、目を見開いて顔を見合わせる。
「……え、あ、もしかしてあなたが……?」
「俺達で診断するの?」
 少年の顔が喜びの色に染まっていく。
「やった、よかったじゃん! 俺達もう他人じゃないもんな」
 こうして、朱輝の世界は広がりはじめた。


●ケース4~唐崎・翠

 唐崎・翠もレガート・リシュテンも、自らの適合者を求め、薔薇十字教団本部の職員に適合者の仲介を依頼していた点については同じであった。
 しかし翠はレガートが初めて紹介された相手だった一方で、レガートは候補者を紹介されては適合とならず、を繰り返していた。
 それでもレガートは挫けず諦めず、いつか浄化師として契約できる日を夢見てこの日までを過ごしてきた。
「きょ、今日は、よろしくお願いします」
 レガートに引き合わされた翠は緊張しつつ丁寧に頭を下げる。
 レガートの方もそれなりに緊張してはいたのだが、翠の初々しさにあてられ少し緊張が解ける。
「こちらこそよろしくお願いします」
(優しそうな人。年も近そう)
 どんな人と合わされるのかと不安を募らせていた翠は、ほっと一安心。
 これまで何度も検査を受けてきたレガートが説明を始める。
「こうして向き合って掌を見せて……」
「はい、わかりました」
 翠は促されるままにレガートに掌を向ける。
「詳しいんですね」
 他意はない言葉だったが、レガートからは苦笑が返された。
(あ、あれ。もしかして、まずいことを聞いてしまったかしら……?)
 一瞬不安になるが、すぐにレガートが説明の続きを始めたので、その不安はすぐに頭の隅に追いやられた。
 そしてついに、2人の掌を合わせる時がやってくる。
 期待と不安にかられつつ2人は掌をぐいと押し出した。
 掌に感じる反発。
 体勢を崩すほどではないが、互いの体は少しだけ後ろに押し返される。
「えっと、この場合は、どうなんでしょう……?手の平がくっついた感触は、ありましたけれど」
 困惑する翠。
「あー、これは……」
 レガートも複雑な表情だ。
 この現象が表すところはつまり、ぎりぎりの適合率だったということ。
「な、なるほど……」
 結果に翠は動揺する。
 しかし、契約可能であることに間違いはない。
 この機会を逃したら次にいつ適合者と出会えるかわからないレガートは先手を打って口を開く。
「その、適合率は低めではありますが……どうか、僕のパートナーになっていただけませんか?」
 真っ直ぐに、真摯な瞳が翠を見据える。
(とても澄んでいて、きれい……)
 一緒に活動するならこの人がいい。翠の直感がそう告げていた。
「私でよろしければ、ぜひ」
 翠が微笑むと、レガートは一気に破顔し勢いよく翠の手を取る。
「ありがとう!」
 翠は目を真ん丸にして硬直してしまう。
「ご、ごめんなさい、嬉しくて、つい……!」
 慌てて手を離し焦って謝罪するレガートに、翠はくすっと笑った。
 そして、握られた手を改めて見る。
(とても手の温かい人、ね)


●ケース5~シャルル・アンデルセン

「私とノグリエさんとの出会いですか?」
 シャルル・アンデルセンは過去に想いを馳せる。
 シャルルがノグリエ・オルトと出会ったのは、彼女がとある劇団に所属していた時のことだった。
「ボクとシャルルが出会ったのは運命だったと思うんですよ」
 と、ノグリエも語る。
「露骨に引くの止めてください」
 い、いえ、そんなつもりは……。
 と、とにかく話を進めましょうか。
 当時シャルルは劇団の座長に拾われ、そこで歌を歌いダンスを披露して日々を過ごしていた。
 普段屋敷に籠っていることの多かったノグリエは、ある日なぜか劇団の公演を観に行ってみようと思い立った。それこそ、運命がそうさせたのかもしれない。
 そこでノグリエは、舞台で歌う可憐な少女、すなわちシャルルと出会ったのだ。
 シャルルの歌声、その姿はたちまちのうちにノグリエを魅了した。
 それまでは放っておけば何週間も外出しなかったノグリエが、毎日劇場へ足を運び始めた。あんなに面倒だった外出が、劇場へ行くのだけは苦にならなかったというのだから、シャルルの魅力は相当なものだったのだろう。
 そうこうするうちに劇団のスタッフとも顔馴染みになり、スタッフたちとの雑談を介し、ノグリエはシャルルに家族がいないことを知る。
 それからのノグリエの行動は早かった。
 座長に掛け合い何日も粘り、「劇団的にはかなりの損失だ」と言われつつも最終的にはシャルルを引き取らせてもらうことになったのだ。
 その分引き続きパトロンとして今も劇団を援助していることは、シャルルには秘密である。
 とにかくシャルルと一緒にいたかったのだ。多少強引な手を使ってでも。
 それからしばらく共に暮らしていた2人だったが、ある時、浄化師として適合することを知る。
「今は魔祓師と喰人の関係ですから……縁て不思議ですね」
 シャルルは穏やかに笑う。
 彼女は知っているのだろうか。2人が適合することを知ったノグリエが、これで共にいる理由が出来たと喜びに打ち震えていたことを。
「それに……」
 ノグリエは、まだシャルルに打ち明けていないことがあった。
(それに彼女の羽根飾り……あれはきっと……)
 シャルルが耳元に付けている三枚の先の青い白い羽根飾り。
 ノグリエはその羽根飾りに思い当たる節があるようだ。
 だが、それについて語るのは、また別の機会に。


●ケース6~アリシア・ムーンライト

(今度もダメかもしれない)
 アリシア・ムーンライトは適合検査と契約のために用意された部屋で1人待ちつつ、そんなことを考えた。
 今までも何人か紹介してもらったが、誰とも契約には至らなかったからだ。
 ノックの音がし、アリシアは扉の方へ顔を向ける。
 現れたのは、眼鏡の奥に金色の双眸が光る青年。
 彼はアリシアを見るなり僅かに目を見開いた。
 彼――クリストフ・フォンシラーにとって、彼女と会うのは初めてではなかったからだ。
 1度目は、本部の庭で。
 花壇の手入れをしている、艶やかな黒髪の後ろ姿。
(あの少女に似ている……)
 顔は見えなかったが、直感的にそう思った。
 記憶の中にいる少女。
 アンデッドになった際に記憶に障害が出た為、相貌の記憶はおぼろげだが、「絶対に彼女と契約したい」という強い思いは胸に残っている。
 2度目は、図書室。
 書架の間から出た途端、本を抱えて歩いているアリシアとぶつかった。
 床に落ちる本に、クリストフは慌てて手を伸ばし、拾う。それは、植物関連の本だった。
 拾った本を渡すと、アリシアは小さくお辞儀をして下を向いたまま行ってしまった。
 その際黒髪の間から少しだけ顔が見えたが、記憶の中の少女かどうかまでは分からなかった。
 そして、3度目。
 適合候補者が見つかりましたよ、と本部職員に案内された部屋で。
(こんな偶然があるのか)
 初めてきちんと見た彼女は。
(まるで、夜空に浮かぶ月、だ)
 アリシアは、そんなクリストフの様子を怪訝に思った。
(どこかで会ったことがあるかしら。初対面のは……ず…………っ!?)
 瞬間、脳裏に弾けるように浮かんだ誰かの笑顔、金色の瞳。
 記憶の中の金の視線に射抜かれて、アリシアはくらりと眩暈を感じてよろける。
 そのまま倒れずに済んだのは、大きな手が彼女の背を支えてくれたから。
 アリシアの意識は現実へと引き戻され、目の前のクリストフを認識する。
(あ、お陽様……)
 クリストフの瞳の色はお陽様のようで、少し眩しかった。
 太陽の瞳と、先程脳裏に浮かんだ金の視線とが交錯する。
 あの記憶は、きっと自分の10歳以前の記憶だろうという確信はあった。
 あの瞳は……今目の前にいる彼のものなのだろうか?
 知りたい。でも、どうやって聞けば?
 逡巡するアリシアの美しい顔を見て、クリストフは人知れず誓った。
 彼女が記憶の少女でもそうでなくとも守らなければ。と。
 その出会いからしばらくの時間が経った今でもクリストフの誓いは揺るがずにいる。
 そして、アリシアは生じた疑問を聞けぬままでいる。
 だがいつか、聞ける日が来るだろう。きっと。


●ケース7~テオドア・バークリー

 ハルト・ワーグナーは6歳以前の記憶が曖昧である。
 記憶がはっきりとし始めたのは、テオドア・バークリーと出会った日以降のこと。
 その日、幼いハルトはボロボロになって路地裏に倒れていた。
 理由は思い出せないけれど、奴隷階級の子供が傷だらけで倒れていることなんて珍しくもないことだ。
 視界は涙と血で滲んでいる。
 呼吸するだけで身体中が痛む。
 呼吸が止まれば痛いのも止まるだろうか。
(神もこんな世界も大嫌いだ)
 だから、さっさと死んでしまえ。
 静かに目を閉じたハルトの耳に、どこかから足音が聞こえてきた。

 テオドアは父に連れられ遠くの街へ来ていた。
 何か仕事の話があったのかもしれない。
 街角で父が他の大人と話している間、テオドアは退屈で退屈で、1人ふらふらと路地裏探索に繰り出した。
 そして見つけたのは、大怪我をして倒れている自分と同じ年頃の少年、ハルトだった。
 さっと血の気が引くのを感じながら、テオドアはハルトに走り寄る。
「し、しっかりして!」
 ハルトは薄っすらと目を開け、「放っておいてくれ」と呟いた。
「でも泣いてるだろ、泣くほど痛いのか?」
 テオドアはハルトのそばに膝をつく。
 どうしたらいいのかわからないけど、なんとかしたい。
 目立つ傷口にハンカチを巻いて。
「ほかに、痛いところは? 足? 背中?」
 ハルトが痛いと言った箇所をそっとさする。
 けれど一向に、彼の痛みが引く様子はない。
 ぽつぽつと、テオドアの両目から涙が溢れハルトの肩に落ちる。
「う……うぅ……っ」
 何もしてやれない自分が悔しくて。テオドアの喉から嗚咽が漏れ、それはやがて慟哭になった。
 わあわあと声を上げて泣くテオドアを見上げ、ハルトはぼんやりと、最期に他人の心配して大泣きするような奴に会えたし、こんな世界もそう悪くはなかったのかな、と考えた。
「テオ?」
 路地裏に大人の声が聞こえ、テオドアははっとして振り返る。
「父さん……!」
 いなくなったテオドアを泣き声を頼りに探しに来た父だった。
 父ならきっとなんとかしてくれる。テオドアは安堵感からさらに激しく泣いた。

 それから年月は経ち。
 ハルトはバークリー家の近くで支援を受けつつ人並みの生活を送り、青年へと成長した。
 テオドアの父エドワードが手を回したらしいが、最期まではっきりとしたことはハルトには聞かされなかった。
 ベリアルの襲撃によりテオドアは父も故郷も失ったけれど、ハルトは変わらずに傍にいてくれる。
「あの時、ハルに出会えてよかった」
 そう言って笑うテオドアに、ハルトは改めて決意する。
 ――テオ君は俺をこの世界から救ってくれた。
 だからこれからは俺がこの世界からテオ君を守る――。


●ケース8~シュリ・スチュアート

「え、え……わたしたちのことを話すの? なんだか緊張するわね……」
 そう言いつつも、シュリ・スチュアートは過去を思い出しながら語り始めた。

 あれは5年ほど前だったろうか。
 敷地外に出ることなく生活していたシュリにとって、父が人生の全てであった。
 父が仕事で数日間不在の時には父の帰りが待ち遠しくて。彼の帰宅と同時に玄関へ飛び出す勢いで彼を迎えた。
 その日も同様に父を迎えに……行って驚いた。
 父の隣に、人相の悪い半竜の男がのっそりと立っていたから。
 その男こそがロウハ・カデッサであった。
 シュリの父に命を助けられその恩を返すため付いてきたのだということであったが。
 その時のことについてシュリは「挨拶したら睨まれて、すごく怖かったわ」と語っている。
 それに対しロウハは「睨んでたわけじゃねーけどな。もともとこういう顔なんだよ」と弁明している。
 こうして強面の半竜との生活が始まった。
 ある日の午後、気持ち良いくらいに晴れていたからシュリは、お気に入りの場所で過ごそうと、庭に出る。
 家の庭にある一番高い木がシュリのお気に入りの遊び場で、シュリはいつものように木の枝に手をかけ、頭上を見上げる。
 そうして、そこに先客がいたことを知る。上の方の枝に、幹を背凭れにして座るロウハの姿があった。
「こんなところで、何をしているの?」
 問いかけるシュリにロウハは遠くを見つめながら答えた。
「好きなんだよ、こういう場所から景色を眺めるのが……世界の呼吸を感じる気がしてな」
 聞いた途端に、シュリの表情がぱあっと明るくなる。
 わたしと、同じだ。
 シュリは慣れた様子で木に登るとロウハのそばの枝に同じように腰掛け、共に遠い景色を眺め時間を過ごした。

「それから、だんだん仲良くなっていったのよね」
 ロウハの顔を覗き込み、シュリが微笑む。
「ん? ああ、そうかもな」
 ロウハは視線を泳がせた。
(俺のあの時の言葉をそのまま覚えてるとはな、正直驚いたぜ)
 ロウハも2人で木の枝から景色を眺めたあの日のことは覚えていたが、その時のロウハの言葉をシュリがこんなにしっかり覚えているとは思ってもみなかった。
「昔のことを話すうちに、お父様やロウハとの思い出をいろいろ思い出して、嬉しくなってたくさん喋ってしまったわ」
 シュリは照れたように頰を押さえて微笑む。
「……これもロップさんの才能、なのかしら? ロップさんの夢、叶うといいわね。応援してるわ」
 それからシュリは少し遠い目をして。
「わたしの夢は……いつか、見つかるのかしら」
 誰に聞かせるでもなく呟いた。




出会いはemotional
(執筆:木口アキノ GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/04/22-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[8] シュリ・スチュアート 2018/04/27-08:17

わたしはシュリ、パートナーはロウハよ。
よろしくね。
皆の出会いの物語、楽しみにしているわ。

(スタンプってそういう風に使うのね……いいなあ)  
 

[7] 唐崎・翠 2018/04/27-01:03

唐崎翠と申します。パートナーはリシュテンさんです。
どうぞよろしくお願いします。
どんなお話が聞けるのか、楽しみにしていますね。  
 

[6] アリシア・ムーンライト 2018/04/26-23:03

アリシアと言います…パートナーはクリスです…。
よろしくお願いします……。
出会いのお話……楽しみ、です……。
 
 

[5] 朱輝・神南 2018/04/26-18:07

こんにちは、神南朱輝とパートナーの碧希君よ。よろしくね!
皆の話気になる! ペアの数だけ色んな出会いがあるわよねっ(そわそわ)  
 

[4] 花導・ファラ 2018/04/26-07:08

花導ファラと言います。パートナーはジルさんです。
よろしくお願いします。
私もみなさんの話、とても楽しみです。  
 

[3] シャルル・アンデルセン 2018/04/26-02:39

 
 

[2] リチェルカーレ・リモージュ 2018/04/26-00:12

リチェルカーレです。パートナーはシリウス。
どうぞよろしくお願いします。
皆さんのお話が聞けるの、楽しみにしています。