~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティの王である、教皇ルイ・ジョゼフ。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■南担当 ルーノは回復と鬼門封印で支援、全体を見て劣勢箇所へ周囲の味方と加勢 全体劣勢時は禁符の陣で立て直す 味方が広範囲に動く際は禹歩七星 人形遣いによる妨害を防ぐ為、時々遠距離攻撃で牽制 仲間合流後は叶花+挑発で気を引き、ナツキの動きを補助 ナツキは剣豪ゾンビ優先 一般浄化師への被害は庇い、ヘスティア+黒炎解放とスキルで攻撃 ゾンビがいなければNPCと共闘し死人兵へ攻撃 他エリアの仲間合流後アネモイ転移で人形遣い背後へ、挟撃を狙う 受けた回復はルーノ劣勢時ネメシスで返す ■NPC セパル 自爆封じ最優先 手が空いたら味方を強化 ウボーとセレナ 自爆封じ中はセパルの護衛 強化に合わせて攻撃 南の一般浄化師 死人兵の対応 味方の回復 |
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【魔】 戦えない人が沢山いる ちゃんと守らないと 魔術真名詠唱 シアちゃんと手分けして禹歩七星 仲間の早さを上げる 叶花ちゃんには回避力増をお願い 西側対応 仲間の回復と鬼門封印で支援 シリウス!大丈夫… 目の前に立つ男性に 目を見開く シリウスのお父さん!? 生きてー 少しずつ傷の増えるシリウスの横で 九字や雷龍で対応 お願い、もうやめて お父さんに こんなことさせないで シリウスに こんなことさせないで 消えていくお父さんが 困ったように笑う シリウスによく似た 優しい顔に涙が …シリウス あなたはここに 返る答えに息を飲み 首を振る そんなことない! 南では回復と支援 壊れた懐中時計 時を刻むのをやめた時計。蓋の裏に、微笑む男女と小さな男の子の写真。 |
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【魔】 死んだ人をモノみたいに… こんなこと、止めないと 本部の防衛と 囚われた魂の解放が目的 東側対応 魔術真名詠唱後 他の仲間と寮入口を塞ぐよう布陣 一般浄化師へ 寮へ近づくキメラへの対応と仲間の回復を依頼 >リューイ 叶:攻撃力増 戦踏乱舞で仲間の攻撃力を上げた後 前衛へ 他の仲間と連携し 敵を一体ずつ確実に倒す 指示を出している個体が分かれば そちらを優先 覚醒状態になり 三身撃を使って >セラ 叶:防御力増 遠距離攻撃の味方にペンタクルシールド やや後方から全体を俯瞰 敵の動きを仲間に周知 タロット・ウォールで仲間を支援 戦闘終了後 魔術通信で各方面の仲間に連絡 南側 リューイは攪乱 セラはシールドで支援 メインアタッカーが攻撃しやすいよう動く |
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目的 本部防衛 敵軍撃破 【魔】 一体何が起こっているのかと目の前の死人の軍団に驚愕 人形遣いらしき魔力を感知しこぶしを握りしめ迎撃の準備 ヨ まさか人形遣いがこの軍団を…? 彼はどこまで…どこまで人の命を弄べば気が済むのでしょうか ベ それもこれほど大量に だ(苦い顔 操り人形にされている人々をせめて人形遣いの手から解放するぞ ヨ はい 南部正面 門を背に一般浄化師やNPCと協力してある程度死人兵を倒していく 元は無理矢理死人兵にされた人達なのでFN20は止めて隊列の厚い箇所にFN13 喰人はその茨を縫うように動き戦線の維持に努めながら戦う 剣豪ゾンビを確認し次第積極的に向かい連携で攻め 魔剣はネメシスの能力で返す |
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「ミツルギ先生、授業の邪魔とか言ってないかな」 ミツルギ先生…カグちゃんのお父さんのあの謎体質 死人兵にも効いたらいいのに… ゾンビは普通に認識してたよね…何で幽霊だけ? サヨさんは… 図書館に誰が何処に居るって全部把握してる人 北部防衛へ 禹歩七星貰ったら駆け出て、グラウンド・ゼロでぶっ飛ばす 敵攻撃はなるべく回避 グラウンド・ゼロ撃てなくなったら下がって通常攻撃 さて、カグちゃんの魔力が残ってるなら元凶ぶっ飛ばしに行こうか 僕とカグちゃんの転移をアネモイちゃんにお願い出来るかな? NPC浄化師への指示 病棟に近付く死人兵の対処と回復 囲まれたらヤバいと思うから1人で突っ込んでいかない事 無理はしない様にね |
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【魔】 西へ 叶花には物理攻撃増加を 西を殲滅するぞ 仲間を巻き込まないよう可能な限り遠距離をマッピングファイア攻撃 シリウスの父親に動揺 死んだ家族を…なぜ!? ランキュヌで彼の耐久を低下させてポイズンショットで援護 俺に出来るのはこれぐらいだ 後はシリウスの傍で攻撃を可能な限り弾く シリウス…お前が殺すことしかできない人間な筈があるか 俺がかつて人を裏切ることしか知らなかったように、そこから脱却できたように そしてお前がそんなつまらない人間にならないように心がけてきたはず…なのに… 待ってろ…俺達がそこから引きずり出してやる! 南へ行った後は人形遣いへ攻撃 人形使い…貴様は刺し違えてでも必ず地獄に堕としてやる…! |
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【魔】 こんな風に、襲ってくるなんて 誰の命も、失わないよう、早く… リチェちゃんと協力して禹歩七星を皆さんに掛けて西へ 叶花ちゃんには回避アップを 魔術真名詠唱 リチェちゃん、一般浄化師の陰陽師さんと連携して回復 鬼門封印で支援と九字の印で攻撃 攻撃されたら雷龍召喚 シリウスさん、の…? きゅっと唇を噛む こんな酷い事、早く、終わらせないと… リチェちゃん、側にいてあげて 皆の事は、私が…! 他人事ではない、もの 私の両親も、もしかしたら…の可能性 亡くなった人を どうして ゆっくり休ませて、あげられないの… 戦闘終了後皆と南へ転移 回復と支援 人形遣いさん、あなたは… 人の死を弄ぶなんてと言いかけてやめる その言葉はきっと届かないから |
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人形遣い?だったかしら 随分と大規模な作戦に出たものね 西担当 魔術真名詠唱 叶花の能力は回避力アップに 動きの鈍くなったシリウスの周辺で敵を迎撃 スポットライトで敵を引き付けシリウスの方に行かせない シリウスに 動けないなら無理しなくていい けど、こんな大事なところ、人任せにしてもいいの? 発破をかけてから改めて前へ出て、戦踏乱舞で支援 敵撃破後、NPCと一般浄化師40人を周辺警戒と討ち漏らし撃破のために残し、アネモイの能力で南に転移 不意打ちを狙って、西担当の皆で南の敵の横合いに出現 蘭身撃で可能なら人形遣いに、無理なら他の敵に一撃食らわせていったん離脱 戦闘乱舞で前衛支援 哀れなお化けさん達、もう一度眠らせてあげるわ |
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【魔】 教団ってモテモテなのね ここまで大挙してくるなんて シロスケも習って来たら? 叶花ちゃんには回避率増加をお願いするわ 東へ行くわ リューイ君やセラちゃんと同じ敵を一緒に集中攻撃 敵が集団である以上ヒットアンドアウェイで攻撃していくわ 死人兵も血の吸い甲斐があるやつがいたら楽しいのに それにしてもキメラね…可愛くないわね せめてお手とお座りできればまだ愛嬌が湧くと思うんだけど? 一時的にコントロールを奪うことができるかどうかウィッチコンタクトで魔力探知してみるわ 南に行ったら人形遣いと戦う仲間をサポート 蓼食う虫も好き好きって言うから人の好みに口を出すのは野暮だし気にしないでしょうけど 貴方悪趣味極まりないわね |
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私達は北部で敵を迎え討ちます それと、以前耳にした大ヘラクス様をお呼びし防衛に参加してもらえるか試してみます ……何でしょう、妙な気を感じます まず押し寄せる死人兵の出鼻を挫きます 開戦時から、黒炎解放し化蛇の大洪水で敵軍を攻撃 そこから向かってくる死人兵達を更に相手取りましょう 私はソードバニッシュで間合いを一気に詰め強襲、ステラは後に続く形でパイルドライブを繰り出し敵陣を崩しにかかります 近くの敵には疾風裂空閃で相手より速く斬り伏せましょう ……え? どうして…… そんなはずがない だってあなたは あの日、私が殺したはずなのに 忘れる筈がない、姿も、形も、構えも、動きの癖まで あの子と会ったら、私とステラで対峙します |
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【魔】 速力を上げて貰い西へ 魔術通信で学院内部へ避難呼び掛け フランとクロは研究室か? 通信を入れる シャルル先生と生徒達や教職員の避難誘導を頼む! 手が空いたら戦闘も手伝ってくれ 魔術真名詠唱 叶花に攻撃アップを ヘスティアに能力付与を 味方がいない部分の死人兵に突っ込みグランウンド・ゼロを放つ 武器を横薙ぎに払って一回転しつつ、を繰り返す 味方が近くにいる場合は地烈豪震撃で攻撃 シリウスの父親か 死して尚酷使されるか 哀れだな せめて魂を解放してやるのが私達の務めだろう 敵が片付いたら南へ転移 願う前に先生や姉兄の顔を見て 積もる話は後で 学院のみんなを頼みます 南へは皆と一緒に転移 不意を突ければ、目の前の敵に地烈豪震撃で攻撃を |
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魔術真名発動 病棟のみんなを必ず守る誓いを二人で強く共有 令花 ルーナープロテクションで補助 戦場を観察して和樹や仲間に適切な位置取りを助言 和樹 絶対防御の誓いで壁役 大きな動きや威嚇で死人兵の注意を引き付ける 大元帥が来たら露払いも意識して立ち回り 超一流の戦いを目に焼き付ける アイテム名 : ミッシェルのボール 解説文 : 人気絶頂で不慮の死を遂げたバスケのスター選手【ミッシェル・ジョルダン】愛用のボール。サインと共に彼の魂も和樹に託された 入手経緯は後述 北部の敵全滅後 令花は被害状況確認と病棟患者のケア 怪我がなくとも精神的ケアを重視する 和樹は周辺警戒 打ち漏らしや他エリアから来た敵をみつけしだい 警戒を発してから掃討する |
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【魔】 東で頑張るよ! 連れて行くNPC…シィラ、グリージョ、ケイト、ペトル お願いっ手伝って! シィラ後衛 ケイト・ペトル中衛 グリージョ前衛として戦闘へ 魔術真名詠唱後、グリージョと共に前へ 前線にて切り込みながらスキルをフル活用 行動阻害系のデバフを受けた際はパートナーが前面に出て受けた方が一旦後ろへ デバフされた見方を集中攻撃されないよう、お互いをかばいながら NPCには自身に最も近い敵を優先して攻撃してもらう 攻撃して行く中で特に強い個体、もしくは統率を取るような行動を取る個体を発見時は集中して攻撃を |
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ありえないけれど…もしも父がいたらと思うと、想像するだけで… そうですね、これ以上死者も…そして生きる人の思いも冒涜なんてさせません 早く終わらせて、弔ってあげましょう 北側へ クロート大元帥(とオーゾンさん)へ一般浄化師の指示を依頼 病棟内は窓とカーテンを閉めて下さい。攻撃で窓が割れても破片で怪我をしないように。 イザークさんとの連携スキルで攻撃 私が隙をつくり、イザークさんが止めを 敵は遠くからも攻撃をできる。近くからだけでなく遠くの攻撃(光や動き)にも注意 リンファさんここはまかせてあちらへ!(必要ならば「身代」スキルでかばう) 南転移後は不意打ちなど補助的行動でサポート |
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様々な方面から敵が来ているようですが、私たちは他の浄化師さんたちと、北部の病棟に向かいます。 はじめての戦いです、全力で参りましょう! とはいえ私たちはまだあまり強くありません、前線で戦う方たちより少し引いた位置取りをしてタロット・ドローや暗澹魔弾で攻撃しますね。 基本的には病棟の建物や中の人たちに危害を加えようとする死人兵を全力で阻止・邪魔をします。余裕があれば死人兵の数は減らしたいので浄化師さんたちの援護を、ただ…どうも因縁のある方がいる様子。 そういう方の邪魔はしないほうがいいかな…? 北部での大勢が決したら、私たちは病棟に残って、周囲の警戒はしつつも職員のお手伝いや入院患者さんのケアをします。 |
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南担当 NPCマリエルとマリーに同行してもらう 魔術真名詠唱 南の戦線を維持して敵の侵入を防ぐことと、人形遣いの足止めと その他の敵を減らすことを目的に マリエル達の近くにいる敵を優先して攻撃 死人兵には通常攻撃、剣豪ゾンビには磔刺でその場に縫い止める 大ダメージの攻撃をくらったら、ネメシスの能力を使用してやり返す マリエル達には、死人兵への攻撃と、人形遣いや剣豪ゾンビの足止めを頼む シャドウバインドが使えるなら使ってもらう 他のエリアの人が来てくれたら、人形遣いに向かう マリエル達と協力し、叶花の力も使い人形遣いの動きを止める 感謝するよ、俺はあの女を…恐怖を克服できた そのお返しをさせてもらう 今の彼女は俺達の仲間だ |
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~ リザルトノベル ~ |
教団本部への襲撃。 即時迎撃するべく、浄化師達は動き出した。 ●西部戦線 「西の学院……」 敵軍の動きを聞いた『ヴィオラ・ペール』は、家族のことを想い声を上げる。 「伯父様、研究室にいらっしゃるはず。それにフランさんとクロさんも来てるはずですし、早く知らせないとですよ、ニコラさん!」 「フランとクロは研究室か?」 素早く『ニコラ・トロワ』は魔術通信で連絡を取る。 簡潔に事情を話し協力を要請した。 「シャルル先生と生徒達や教職員の避難誘導を頼む! 手が空いたら戦闘も手伝ってくれ」 返事は即座に。 ニコラは続けて連絡を交わし状況をヴィオラに伝える。 「教職員と協力して生徒の避難をしてくれるそうだ。子供達が多いから時間は掛かるかもしれんが、それが終れば手助けに来てくれる」 「まだ危険ではないんですね?」 「ああ」 「良かった……」 ヴィオラは、ほっと一息つくとニコラと共に敵の元に。 同じように他の浄化師達も現場に急ぐ。 「人形遣い? だったかしら。随分と大規模な作戦に出たものね」 敵軍の首領とみられる人物の情報を聞いた『リコリス・ラディアータ』は、現場に向け走りながら呟く。 「戦えない人達もいるというのに、やってくれるわ」 「ああ」 リコリスと並走しながら『トール・フォルクス』は返す。 「俺達が向かうエリアには学生やシャルル先生達がいる。絶対守り通さなきゃな」 「もちろんよ。誰も傷付けさないわ」 決意を胸に、リコリスとトールは現場へと向かう。 「こんな風に、襲ってくるなんて」 現場に向け走りながら『アリシア・ムーンライト』は焦燥感に駆られる。 「誰の命も、失わないよう、早く……」 アリシアの胸中に浮かぶのは失われた家族のこと。 同じような悲劇を防ぐべく必死に走り続ける。 そんな彼女と並走しながら『クリストフ・フォンシラー』は力付けるように言った。 「大丈夫。ここには、みんなが居るんだ。守ろう、アリシア」 「はい、クリス」 クリストフの言葉に勇気を貰い、2人は現場に向け走り続ける。 「また人形遣いか……!」 現場に向け走りながら『ショーン・ハイド』は嫌悪感を吐き出した。 「どれだけ人を傷つければ気がすむんだ」 「思い通りになんかさせないよ」 ショーンと並走しながら『レオノル・ペリエ』は言った。 「シャルル先生もフランもクロも、他の誰も傷付けさせるもんか」 「もちろんです、ドクター」 2人は敵の悪意を撃ち砕くべく、現場へと向け走り続ける。 「戦えない人が沢山いるのに」 現場に向け走りながら『リチェルカーレ・リモージュ』は呟く。 「ちゃんと守らないと」 「ああ」 リチェルカーレと並走しながら『シリウス・セイアッド』は返す。 「大丈夫だ。皆もいる」 大元帥を除けば、教団本部でも最強クラスの戦力を持ったシリウスは、全力を出すべくリチェルカーレと共に現場へと向かった。 そして皆は現場に到着。 他の浄化師、140名と共に戦場に立つ。 「まだ学生の避難は続いているそうだ」 ニコラは魔術通信で交わした情報を皆に伝える。 「なら、この場は死守しないと」 レオノルは魔力を励起させ、いつでも攻撃魔術を発動させられるよう準備する。 「シアちゃん」 「はい」 リチェルカーレとアリシアは手分けして禹歩七星を掛けていく。 「陰陽師で禹歩七星を掛けられる人が居ないか聞いてみるよ」 トールは皆と協力し、集まった140名の浄化師に手助けを頼んでいく。 この時点で敵との距離は200m。 敵軍の陣形は、前中後の3列陣形。 一番前が近接戦闘なのが見て取れる。 どうやら、遠距離攻撃ができる者を後方に置き、近接戦闘要員が吶喊。その援護を中央の列に布陣した者達が行うようだ。 対する浄化師達は、それぞれが最適だと思う配置に就き敵を迎え撃つ。 誰も傷付けさせないという意志を抱き、高らかに魔術真名を唱え、開戦の兆しとする。 「cooking and science」 魔術真名を唱え、ニコラは前に。ヴィオラは援護するように後ろに就く。 「闇の森に歌よ響け」 リコリスとトールは手を繋ぎ魔術真名を詠唱。敵に強い眼差しを向ける。 「月と太陽の合わさる時に」 アリシアは守る意思を抱きクリストフと魔術真名を詠唱。連携を取れる位置を意識し動いていく。 「正しいことを為せ、真のことを言え」 ここから先には行かせないと、ショーンとレオノルは強い意志を抱きながら魔術真名を詠唱する。 「黄昏と黎明。明日を紡ぐ光をここに」 誰も傷付けさせないと強い意志を抱くリチェルカーレを、シリウスは眩しそうに見つめながら、2人は魔術真名を唱えた。 そして集まった140名の浄化師も魔術真名を唱える中、敵軍は進撃。 合わせて浄化師達も前に進む中、戦いは始まった。 先行して攻撃を放って来たのは敵軍。 100の攻撃魔術が一斉に放たれる。 だが、まだ距離がある。 有効射程に入っていないため届きはしない。 けれど恐怖をもたらすには十分。 それを浄化師達は飲み込み、敵が近付いて来るのを待ち続ける。 そして敵の前列が攻撃射程に入った瞬間、戦場は大きく動いた。 敵の前列が、一斉に走り出す。 それに合わせて撃ち出される、敵の攻撃魔術。 敵の狙いは、攻撃魔術を援護とした、近接攻撃要員の接敵。 それに対処するべく、浄化師達も一斉に動いた。 遠距離と中距離で攻撃できる者が、次々に迎撃する。 しかし全体をまとめる者がいないため、その攻撃が向けられる先はバラバラだ。 敵の後列を攻撃する者もいれば、吶喊してくる敵の前列に攻撃する者もいる。 それにより敵の幾らかはダメージを受けるも、浄化師側もタダでは済まない。 敵の攻撃魔術が降り注ぐ。 避ける者もいるが、避け切れない者も。 避けられなかった者には、墓守や占星術師、あるいは陰陽師が守りに入る。 それにより大きな傷は受けないですんだが、その隙に敵の近接攻撃要員が一気に距離を詰めてきた。 それに対処するべく皆は動く。 (数が多い。まず指揮官を――) 真っ先に動くのはシリウス。 元の素早さに、リチェルカーレの禹歩七星。そして叶花に速さを増すことを願ったこともあり、とてつもない速さだ。 そこにベリアルリングの強化と、黒炎解放による覚醒を乗せる。 「光は降魔の剣となりて、全てを切り裂く」 覚醒により更に強さを増したシリウスは、距離を詰めてきた敵の1人を即座に叩き斬る。 敵の反応を許さぬ速さで踏み込み、ソードバニッシュ。 右の刃で逆袈裟に斬り裂くと、敵の反撃を左の刃で弾く。 そこから間髪入れず追撃。 全体重を乗せた振り降ろしで敵の1人を斬り倒した。 シリウスの活躍に敵は反応する。 脅威と判断したのか複数の敵が纏まって来た。 そこにショーンは援護攻撃を放つ。 (邪魔はさせん) シリウスの動きを邪魔する敵に向け、マッピングファイアを放つ。 無数の青き鬼火の弾丸が降り注ぎ、次々被弾させていく。 そこに続けてレオノルがソーンケージを放つ。 3重の捧身賢術により強化されたソーンケージは、まとめて敵を絡め取ると引き裂いた。 ショーンとレオノルの連携攻撃で、敵の一角の動きが止まる。 そこを素早く通り抜けるシリウス。 追い縋ろうと敵が走るが、そこにクリストフが立ちはだかる。 「ここは通さないよ」 クリストフは戦闘が長丁場になると判断し、黒炎解放を温存し敵を迎え撃つ。 槍による鋭い突きを、クリストフは間合いを詰めながら躱す。 紙一重の絶妙な回避で距離を詰めると、疾風の如き動きで斬撃の間合いに踏み込む。 敵は反撃する余裕すらない。 クリストフは腕を斬り裂き攻撃を封じると、止めに心臓を貫く。 そこに横手から新たな敵が跳び込んでくるが、アリシアが迎え撃つ。 「だめ、です」 アリシアは五行連環に魔力を込め投擲。 投擲された呪符は敵を打ち据えただけでなく、呪符の影が糸のように分かれ、それが宙に浮かび上がると実体を伴って敵を絡め取り拘束した。 動きを止めた敵に、クリストフが間合いを詰める。 2人の連携で、敵を次々倒していった。 皆の援護のお蔭で、シリウスは敵の指揮官とみられる相手に近付いていく。 それを敵は止めようとするが、そこに仲間の援護が更に入った。 味方の戦意を戦闘乱舞で高揚させたリコリスが、即座に敵の迎撃に向かう。 相手は、シリウスに後方から襲い掛かろうとする敵。 リコリスは魔性憑きらしい素早い動きで駆け抜けると、目指す敵に斬り掛かった。 背中を斬り裂かれ、即座に剣を振り反撃する相手。 だがリコリスは軽やかに避けると刃を突きつける。 「哀れなお化けさん達、もう一度眠らせてあげるわ」 リコリスは舞うような優美な動きで敵の攻撃を躱していく。 袈裟掛けの一撃をサイドステップで回避すると、次の瞬間には、斬撃の間合いに跳び込んでいる。 敵の手首を斬り裂き攻撃力を奪った所で、確実に止めを刺していく。 それを見た敵は、後方から数人で襲い掛かろうとする。 しかしトールが許さない。 マッピングファイアによる無数の矢が敵に襲い掛かる。 腕や足、そして胴に、何本もの矢が突き刺さった。 「後ろは気にするな! こっちで抑える!」 「ありがと!」 息の合った連携で2人は敵を抑えていく。 パートナーと息の合った動きで敵を抑える者は他にも。 ニコラが手にした両手鎌、デモン・オブ・ソウルを大きく振り回す。 体全体をひねり、周囲一帯を薙ぎ払うような攻撃だ。 それは動きが大きいため、回避は難しいとは言えない。 だが近付けない。 途切れることなく繰り出される弧を描く薙ぎ払いは、敵を間合いに入れさせなかった。 しかもニコラは敵の動きを誘導している。 あえて大きな動きで、敵が避ける方向を限定させていた。 そこにヴィオラが先んじて動いている。 敵が一塊になった所に、死角となる位置から間合いを詰めデス・ペナルティを発動した。 (これは、結構きついですね) 体力の根源が、ごっそりと削られた実感がある。 それがデス・ペナルティのリスク。一時的とはいえ、削られた体力は回復すら出来ない。 だがその代り、敵が受ける負荷は大きい。 「ニコラさん!」 ヴィオラはデス・ペナルティを掛けると、即座にその場を離れ呼び掛ける。 その次の瞬間には、ニコラは敵の群れに跳び込んでいた。 (使うなら、ここか) ニコラはヘスティアからの加護を解放する。 一瞬黒炎に包まれたかと思うと覚醒。 刻印の如き魔方陣を肌に浮かび上がらせ、デモン・オブ・ソウルを大きく振り上げる。 グラウンド・ゼロ。 渾身の振り降ろしは周囲の大気を撒き込み、地響きをさせる勢いで凶悪な風圧が敵を圧壊する。 ヴィオラのデス・ペナルティにより敵の防御力を削った上での、強化された一撃。 敵は耐える事など出来ず、骨を押し潰され倒れ伏した。 浄化師達の勢いは増していく。 それをより確かな物にするべく、シリウスは敵の司令官に視線を向け―― 「……ぁ」 悪夢に落とされたような声をシリウスは上げた。 「嘘だ」 自分によく似た、双剣使い。 最後に見た時と変わらぬ姿に、鼓動が乱れる。 動けない。 忘れるはずのない顔で、双剣使いは刃を構え間合いを詰める。 双剣使いは何ひとつ感情の色を感じさせないまま刃を引き、一気に放つ。 避けられない。 迫る刃に反応できず―― 「シリウス!」 リチェルカーレの助けがなければ、まともに斬り裂かれていた。 雷の龍が、双剣使いの前に立ちはだかる。 シリウスの盾になるように、双剣使いに立ち向かったリチェルカーレが式神召喚・雷龍を使ったのだ。 雷が迸り、双剣使いは一端距離を取る。 僅かに敵が離れた猶予に、リチェルカーレはシリウスに呼び掛けた。 「シリウス! 大丈夫――」 「……父さん」 喘ぐように呟き、双剣使いを凝視するシリウスに、リチェルカーレも双剣使いを見て驚きに目を見開く。 「シリウスのお父さん!? 生きて――」 「違う」 リチェルカーレの言葉を否定し、シリウスは自分に言い聞かせるように声を荒げる。 「父さんは死んだ。俺は見たんだ。バラバラになって――!」 過去の記憶がフラッシュバックしたのか、シリウスは顔面蒼白になり過呼吸に陥りそうになる。 「シリウス!」 リチェルカーレはシリウスを救うように声を掛けようとするが、双剣使いの死人兵、シリウスの父であるリゲルは構わず攻撃をしてくる。 「だめ!」 リチェルカーレはシリウスを守るため、リゲルの前に立つ。 雷龍を、あるいは九字で応戦し、リゲルにシリウスを傷付けさせないよう必死に立ち向かう。 「お願い、もうやめて」 懸命な願いは届かない。 「お父さんに、こんなことさせないで。シリウスに、こんなことさせないで」 目の前で自分を守り傷つくリチェルカーレを、シリウスは必死に庇おうとする。 だがそれでも、リゲルに刃を向けることが出来ない。 他の死人兵には対応できても、リゲルには何も返すことが出来ないでいた。 それに他の浄化師達が気付く。 「シリウスさんのお父様……? むごい事を……」 痛ましげな声をヴィオラは上げる。 同じるように、ニコラは返した。 「シリウスの父親か。死して尚酷使されるか。哀れだな」 デモン・オブ・ソウルの柄を力強く握り締め、シリウスの助けになるべく走り出す。 「せめて魂を解放してやるのが私達の務めだろう」 「ええ」 ヴィオラも同じく走り出し、邪魔な敵を倒すべくタロットカードに魔力を込める。 「自分の父母があんな扱いをされたらと思うと……少しでも早く解放してあげましょう」 「ああ」 ニコラはヴィオラに同意し、シリウスへと向かう邪魔になる敵に苛烈な攻撃を叩き込む。 立ち塞がる敵に、渾身の地烈豪震撃。 大地を振動させるほどの強烈な打撃は、切り裂いた敵の身体を粉砕した。 ニコラがシリウスへと向かう敵を粉砕する中、横手から掛かって来る敵にヴィオラのペンデュラムフォーチュンが走る。 ヴィオラはヘスティアの加護により、覚醒した状態でタロットカードを投擲。 死角から跳び込んで来ようとした敵の首を切り飛ばした。 シリウスの助けに皆は向かう。 「死んだ家族を……なぜ!?」 ショーンは、シリウスの父親が死人兵として襲い掛かってくる姿に動揺する。 そこにレオノルが、気持ちを落ち着かせるように返す。 「シリウス君のお父様の事は気の毒だけど……今は感傷に浸ってる場合じゃないよ」 これにショーンは息を飲むと、いま成すべき事に集中する。 「Fiat eu stita et piriat mundus.」 黒炎解放。怨嗟の銃ランキュヌの特殊能力を使いシリウスの援護をする。 トリックショットにより、死角からリゲルの肩を撃ち抜く。 同時にランキュヌの特殊能力が発動し防御を低下させた。 これによりリゲルの攻撃が鈍る。そこから更にポイズンショットで援護を続けていく。 (俺に出来るのはこれぐらいだ) シリウスに近付く敵を撃ち抜きながら援護を続けていった。 同じようにレオノルも援護に動く。 ヘスティアの加護により覚醒した状態でソーンケージを放つ。 これまでにない巨大な茨が出現し多くの敵を引き裂いた。 攻撃を続けながらレオノルは思考する。 (遺体をあそこまで回復させるには時間が掛かる。それ以上に、奴はどこから彼の死体を? その情報をどこから? まさか教団内部から……? そもそも人形遣いって名前自体……まるでマドールチェの由来を知ってるような) 思考を続けながら行動は切り離し、敵に絶え間ない攻撃を重ねていった。 一連の動きでシリウスまでの道が開ける。 そこに仲間が走り出す。 「シリウスさん、の……?」 アリシアは、きゅっと唇を噛みシリウス達の元に走る。 「こんな酷い事、早く、終わらせないと……」 「ああ、終わらせよう」 並走するクリストフは、連携を取るべくショーンに声を掛け敵に向かう。 「ショーン、シリウスは任せた!」 託すように声を掛け、自身はシリウス達に近付く敵の排除に動く。 「お前の力を示せ、ロキ!」 温存していた黒炎をここで解放。 獅子奮迅の強さで、シリウス達に近付こうとする敵を次々叩き斬っていく。 それによりシリウス達への道が開けた所に、アリシアが援護に向かう。 「リチェちゃん、側にいてあげて。皆の事は、私が……!」 天恩天賜をリチェルカーレに掛け癒すと、リチェルカーレの負担が少しでも減るように動く。 それは献身だけでなく、自分自身の強い想いにも促されている。 (他人事ではない、もの) 家族を亡くしたアリシアにとって、今の状況はありえたかもしれないのだ。 だからこそ、強い憤りと共に奮迅する。 (亡くなった人を、どうして、ゆっくり休ませて、あげられないの……) そんなアリシアの様子を目の端で捕えながら、クリストフは判断の時に迫られる。 (あの状態では父親の相手をさせるのは酷だ。なら、俺の手でっ) 未だ動けないシリウス。彼の助けになるべく全力を振り絞っていく。 同じようにリコリスも全力を振るう。 (シリウスの、お父さんが――) 家族と戦わなければならない現実に、リコリスには否応なしに過去の自身の行動が思い出される。 だからこそ、真っ直ぐに前を見据え走り出す。 狙いはシリウスに襲い掛かる周囲の敵。 叶花により回避の加護を受けていたリコリスは、全ての敵の攻撃を避けシリウスの元に。 そして言った。 「動けないなら無理しなくていい」 追い詰めるような事は口にせず。 けれど後悔しないよう続ける。 「けど、こんな大事なところ、人任せにしてもいいの?」 発破をかけてから改めて前へ。 出る直前に戦踏乱舞で支援し、敵の引きつけに奔走する。 スポットライトを発動し、敵の多くを引きつけた。 それはリコリス1人なら追詰められていたが、トールの助けがある。 ピンポイントショットによる精密狙撃。 リコリスを援護しながら、シリウスを目の端に捉える。 (リコには親殺しの覚悟があった、でも本当は辛かったはずだ。シリウスにまで同じ思いをさせたくない) 皆の助けで、シリウスは父と一対一で対峙する。 力付けてくれる皆の言葉と行動。 その全ては酷く遠く感じてしまう。光のない目と震える指は、現実を拒絶するかのようだ。 けれど、それでも、力を込め剣を握り直す。 (こんな風に、貶められていいはずがない) それは父を悼む想いがゆえに。 シリウスは父の前に出ると、動くことなく視線を向ける。 その応えは刃だった。 双剣で斬り裂かれる。 その痛みよりも強い哀しみに突き動かされながら、シリウスはアステリオスを振るった。 リゲルは回避に動こうとし、その瞬間、シリウスを斬り裂いた傷と同じ個所が自然に斬り裂かれる。 応報の書ネメシスの加護により、受けた傷がリゲルの動きを止め、そこにシリウスは反旗の剣で攻撃した。 心臓を一突き。 「……ごめん。父さん」 同時に、それまでシリウスが受けた傷をリゲルも受ける。 そしてリゲルは、その場に倒れ伏した。 そこに敵の本命攻撃が放たれる。 味方も巻き添えにした攻撃魔術の一斉掃射。 それが降り注ぎ当たる瞬間、突如地面から生えた無数の巨木が全てを受け止めた。 「好かった。間に合った」 「リリエラさん!」 箒に乗って空を飛んできたリリエラにリチェルカーレが驚きの声を上げる。 「どうしてここに!?」 「こっちに守り木を渡しに来てたの。まさかこんな時に出くわすなんて思わなかったけど。それより、その人」 見ればリゲルが、救いを求めるように手を伸ばし言った。 「助……け……」 「大丈夫ですか!」 リチェルカーレが抱き上げるとリゲルは言った。 「息子を……シリウスを、助け……て……」 「……その人、亡くなる直前の記憶で止まっているみたいね」 リリエラの言葉を聞き、リチェルカーレはリゲルに返した。 「大丈夫……大丈夫です。シリウスは、助かってますよ」 「……ぁ」 安堵するようにリゲルは表情を和らげる。 そして壊れた懐中時計を取り出し渡した。 「これ、を……シリウスに……――」 渡すと同時に、リゲルは塵となって消え失せた。 「……生前の遺品を核にして死者の魂を縛っていたみたいね」 リリエラの説明を聞きながら、リチェルカーレはリゲルから受け取った懐中時計をシリウスに手渡す。 シリウスは必死に歯を食いしばって受け取ると、機械のような無表情で敵を斬り裂いていった。 戦いは浄化師達の有利に進む。 その途中、援軍もやって来る。 「フラン、クロ。援護を頼む」 ニコラは助けにやって来てくれた2人と共に、敵を倒していく。 助けはそれだけでなく、シャルルが助けを求めた教師陣も加わり、怪我人は出しつつも敵を全滅させた。 ここでの戦いが終れば、即座に次の戦場に。 「南に、行きましょう。人形遣いさんを、止めないと」 (もし家族が、同じような目に、遭わされてたら……) ぞっとする想像に顔を青ざめさせるアリシアに、クリストフは言った。 「そうだね。アリシアの両親の遺体は焼けてしまったはずだけど、あいつは何をしてくるか分からないから。 倒しに行こう、南へ。こんな死者の尊厳を踏み躙る行為、許せるものか」 他の浄化師にこの場を託し、皆は南に向かう。 「ここは、お願いね」 「悪いけど、頼むよ」 リコリスとトールが仲間の浄化師の連絡に回る中、リチェルカーレはシリウスに留まるよう声を掛ける。 「……シリウス。あなたはここに」 しかしシリウスはリチェルカーレの言葉に首を振って言った。 「――俺は殺すことしかできない」 「そんなことない!」 リチェルカーレの言葉と、ショーンの思いは同じだった。 (シリウス……お前が殺すことしかできない人間な筈があるか) 誓うように決意する。 (俺がかつて人を裏切ることしか知らなかったように、そこから脱却できたように。 そしてお前がそんなつまらない人間にならないように心がけてきたはず……なのに……。 待ってろ……俺達がそこから引きずり出してやる!) それぞれの決意を胸に南部へと向かう。 「いってきます」 ヴィオラはシャルル達に手を振って、南部へと転移した。 こうした激しい戦いは、他の場所でも起こっていた。 ●北部戦線 「あおい、どうかしたのか?」 病棟がある北部に向かいながら『イザーク・デューラー』は同行する『鈴理・あおい』に声を掛ける。 いつもより厳しい表情をしていた彼女は、イザークの言葉に余計な力を抜くように息をつくと、心情を込め返した。 「ありえないけれど……もしも父がいたらと思うと、想像するだけで……」 「あぁ……それは辛いね」 イザークは、あおいと共に看取った父親のことを想い同意する。 そして同時に、浄化師としての在りようを返した。 「だが、私たちではなくても死人兵には必ず誰か身内や知人がいるはずだ。 誰かが辛い思いをするんだ。速やかに終わらせよう」 これに、あおいは頷く。 「そうですね、これ以上死者も……そして生きる人の思いも冒涜なんてさせません。早く終わらせて、弔ってあげましょう」 あおいは浄化師としての意識に完全に切り替えると現場に向け走り続ける。 その途中、大元帥達に出会い声を掛けた。 「クロート大元帥」 オーゾンと共に走る彼に、あおいは頼んだ。 「これから北部に向かおうと思います。現場での指揮をお願いできますか?」 「承知した」 クロートは短く応えると、マドールチェの浄化師を捕まえ連絡を取るよう指示を出す。 病棟にも連絡がつくということで、あおいは頼んだ。 「病棟内は窓とカーテンを閉めて貰えるよう連絡をお願いします。攻撃で窓が割れても破片で怪我をしないように」 マドールチェの浄化師が頷き連絡を続けている間に、クロートはイザークに言った。 「天空天駆は使えるか?」 「ああ」 「なら現場についたら、すぐに飛んで敵の布陣を確認して教えてくれ」 集団戦の経験も多いクロートに頼まれ、快諾するイザークだった。 同じように協力を求める者は他にも。 「大ヘラクス様」 北部に向け『ステラ・ノーチェイン』と共に走っていた『タオ・リンファ』は、凛々しい筋肉の彼に声を掛けた。 「どうしたのである?」 「病棟に無数の敵が来ています。助力を願えないでしょうか?」 これにヘラクスは快諾した。 「当然である! 無辜の民を守るは我らの役目! 共に戦おうぞ!」 「おー! やっつけるぞー!」 「やっつけるのである!」 意気投合するステラとヘラクス。 タオは苦笑しながらも、力強さを感じていた。だというのに―― (……何でしょう) それはまるで、逃れられない運命の濁流のように。 不可知の不安が、言いようもなくまとわりついている。 (妙な気を感じます) どこか爛れるような懐かしさと、焼け融けるような焦燥が入り混じった、奇妙な感覚。けれど―― (余計なことを考えてる場合ではありません。今は、敵の対処だけに集中しないと) 予感を振り払うようにして、リンファは走り続けた。 皆が向かう中、家族と連携を取りに向かう者も。 「患者さんの避難、できないかな?」 病棟で医者をしている上の姉、サクヤに『カグヤ・ミツルギ』は尋ねた。 「全員は無理。動かせない人もいるから」 サクヤの応えにカグヤは続ける。 「移動が無理でも、せめて窓、どうにかできない、かな。 ……万一、突破されたら、ガラスが割れて、危ないから……。 鎧戸を閉めて、窓ガラスが飛び散らない様に紙テープ貼るとか対策した方がいいと思う」 「それなら出来るわね。看護師のみんなに頼んでみる」 サクヤは応えると、近くを通りかかったマドールチェの看護師に伝える。 魔術通信により連絡が広がり対処してくれると返って来た。 「病棟の準備は任せましょう。こちらは敵の排除をしないと」 サクヤは言うなり口寄せ魔方陣で狙撃銃を召喚する。 「……上姉様、狙撃銃持ち出して何を……」 「ヴォルくんが戦い易い様に、中距離遠距離攻撃持ちを叩くのよ」 手慣れた様子で狙撃銃を点検しながら続けて言った。 「前に出るより後方支援になると思う。天恩天賜で回復もするから、連携して戦いましょう」 「分かった。それと、下姉さまと、父様は――」 「ここに来る前に連絡があった。一緒に生徒の避難をしてくれるみたい」 これを聞いていた『ヴォルフラム・マカミ』は言った。 「ミツルギ先生、授業の邪魔とか言ってないかな」 これに苦笑しながらサクヤが返す。 「言ってたみたい」 「父様らしい……」 ため息をつくように言うカグヤに、ヴォルフラムは尋ねた。 「ミツルギ先生の、あの謎体質、死人兵にも効いたらいいのに……。ゾンビは普通に認識してたよね……何で幽霊だけ?」 「……父様の謎体質は実体のある死者には効かない」 「そうなんだ。なら下手に出て貰うと危ないから、避難させてくれるのは助かるね」 「サヨもついているから大丈夫」 図書館に誰が何処に居るかを把握している妹のことを、サクヤは言った。 「避難誘導は大丈夫。だから私達は、敵の排除に集中しないと」 サクヤの言葉に、カグヤとヴォルフラムは頷くと、現場に向け走り出す。 現場に向かう者は他にも。 「はじめての戦いです、全力で参りましょう!」 他の浄化師と共に現場に向け走りながら『スレイニー・ティルティエ』は『ユニア・シズヴィーレ』に意気込むように言った。 最初は魔術学院か病棟に行くかで迷っていたスレイニーだったが、戦ったあとのケアも考え病棟のある北部に向かっている。 誰かのために身体を張って助けようとするスレイニーの様子に、ユニアは苦笑するように目を細める。 (本当は、危ない場所には行って欲しくはないんだけど) スレイニーの導きで自身を蝕む病を治すことが出来たと思っているユニアにとっては、命の恩人を危険にさらしたくはない。 けれど同時に、彼女の意思を尊重したいとも思っている。 (万が一があれば、盾になってでも守らないと) スレイニーと永遠に一緒にいるため不老不死をこっそり研究しているユニアは、スレイニーを第一に考える。 そんな2人が走っていると、1人の魔女に出会った。 「あら、そんなに急いでどこ行くの?」 生命の魔女ライリーは一緒に走りながら尋ねる。 ライリーは、ユニアの病を治す切っ掛けとなった文献の書き手であり、それが縁で今では、ユニアとスレイニーのことを気に掛けていた。 「病棟を守るために戦うんです」 スレイニーの応えに、ライリーは同行を告げる。 「2人の邪魔はしないから、存分に戦いなさい」 助っ人と共に、ユニアとスレイニーは現場に向かう。 皆が現場に向かう中、一時の別れを告げる者も。 「おにいちゃんも、おねえちゃんも、けがしないでね」 心配そうに見つめる叶花に、『桃山・和樹』は笑顔で応える。 「大丈夫! 悪い奴ら、やっつけて来るからな!」 笑顔を見せる和樹に、叶花はぎゅっと抱き着く。 「きょーかも、いく」 「ダメよ、危ないから。叶花は皆とお留守番していてね」 叶花を宥めるように『桃山・令花』が言うと、叶花は令花にも、ぎゅっと抱き着く。 令花は安心させるように、背中を優しくぽんぽんとすると、浄化師として意識を切り替える。 「行ってくるわね、叶花」 「うん……」 泣きそうな表情で叶花は離れると、2人を見上げ言った。 「おねがい、なに?」 これに2人は笑顔で返す。 「みんなをまもるために力を貸してくれ」 「みんなの力になってあげてね」 「……うん!」 和樹と令花の願いに、泣き笑いのような顔で頷く叶花。 そして叶花は、願いを口にする。 「みんな、ぶじにかえってきてね」 「ああ、もちろんだ!」 和樹は叶花の頭をくしゃりと撫でると、他の魔道書っ子達にも見送られ現場に向かう。 その途中で、偶々来ていた魔女のラヴィと合流。 「たまには子どもたちの所へ顔出してあげて、と言われて来て見ればこの有様。母上殿は預言者か何かか?」 ラヴィの言葉に和樹と令花は苦笑すると、現場に向け足を速めた。 そして皆は現場に到着。 一般浄化師180人も集う中、天空天駆で敵の布陣を上空から確認したイザークがクロートに告げる。 「敵の陣形は3列横陣。恐らく最前列は近接要員だ」 これを受けクロートは即座に戦術を決める。 「注目!」 良く通る声で皆の意識を向けさせると、クロートは指示を飛ばす。 「遠距離、並びに中距離攻撃手段を持つ者は前に! 全員横一列に整列!」 指示に従い横陣が出来た所で更に指示を飛ばす。 「防御、並びに近接戦闘ができる者は、横列に並んだ者の護衛に就け!」 皆が動いた所で、現場の指揮を大ヘラクスに渡す。 「ここは任せます」 「承知したのである!」 「私は敵陣の後方を崩します」 そう言うとクロートは、オーゾンと共に敵陣に向け吶喊した。 この時点で敵との距離は200m。 その距離を、瞬きひとつで埋め、敵前列に接敵。 無数の攻撃が叩き込まれるが、その全てを置き去りにする速さで突進。 最後尾まで走り抜け、そこで大剣を振るう。 竜巻を思わせる凄まじい勢いで敵を真っ二つに断ち切っていく。 クロートの大暴れで敵後列の動きが止まり、敵の陣形が乱れる。 そこにヘラクスは号令した。 「今である! 突撃!」 ヘラクスの号令に従い、皆は魔術真名を唱え戦いに挑む。 「イーザ・イーザ・イーザ」 苦難と安らぎと運命を共に。 誓いと共に魔術真名を唱え、あおいとイザークは敵に向かう。 「蒼天の下に正義の花束を」 リンファは奇妙な予感を抱きながら、ステラと共に戦場へ踏み込む。 「君守ると誓う」 ヴォルフラムとカグヤは、お互いを強く思い合いながら戦いに挑む。 「最上の運命を、最高の未来を」 魔術真名を唱えた瞬間、ユニアはスレイニーの頬に触れ合うようなキスをする。 「おまじないよ」 頬を染めるスレイニーに、ユニアは笑みを浮かべ囁くと、2人で敵に対峙する。 「君を二度と失わない……『大切な人を守る』」 病棟のみんなを必ず守ると誓いを込め魔術真名を詠唱し、令花と和樹は全力を尽くす。 そして集まった180名の浄化師も魔術真名を唱える中、戦いは始まった。 「イザークさん」 「行こう、あおい」 あおいとイザークは、共に連れ立ち敵の間合いに踏み込む。 目指す敵は前列。近接戦闘要員。 即座に敵は反応するが、あおいとイザークの連携が上回る。 先行し動いたのは、あおい。 「マヤ、お願い」 主の願いに応えるように、あおいの人形が敵を打ち据える。 足を払い転倒させると、隣りの敵の腹目掛け体当たり。 敵の体勢が崩れた所にイザークの追撃。 「ライム・ブルーム」 黒炎解放。 覚醒により得た強大な力を乗せ、黒炎魔喰器ライム・ブルームの双刃を振るった。 胸を十字に切り裂く。 その瞬間、敵の全身が凍結。傷口に鮮血の氷花を咲かせ、更なる一撃で砕けった。 これを見た敵は、手強いと見たのか纏めて来る。 その全ての攻撃を2人は避け、反撃を叩き込む。 それは舞踏のような軽やかさで、息の合った連係を見せる。 イザークの共踏円舞により強化された2人は、敵を翻弄しながら確実に倒していった。 敵の只中にヴォルフラムは跳び込む。 狙いは敵の集団圧潰。 それを実現するため、敵を引き付ける。 当然敵は集まり、死角から攻撃を放とうとする。 それをカグヤが防ぐ。 「させない」 カグヤは手にした封竜の呪符に魔力を込め投擲。 竜の呪いが込められた呪符は、命中すると同時に衝撃を弾けさせる。 その衝撃に敵は体勢を崩す。 カグヤの助力により、ヴォルフラムは被害を免れているが、それだけでは果たせない。 そこをサクヤの狙撃が援護する。 手慣れた手動装填で続撃狙撃。 2人の助力により敵は誘導され、ヴォルフラムを囲むような位置に。 (今だ) ヴォルフラムはヘスティアの加護を解放し、黒炎による覚醒を行う。 跳ね上がった戦力の全てを叩き込むべく、グラウンド・ゼロを発動。 敵の1人を叩き斬り、その動きに合わせて巻き起こった風圧が敵を圧潰した。 「掛かって来い!」 和樹は敵の注意を引くように大きな声を上げ味方の護衛に動く。 (大元帥みたいにやってやる!) ただ1人で戦場の流れを変えるほどの強さを見せられ、和樹は高ぶっていた。 それゆえ勢いは強く、だが精妙さに欠ける。 それを補うように令花が奮闘する。 「和くん右後方!」 ルーナープロテクションで敵の力を弱めながら、後方から指示を出す。 和樹が全体を見て動けていないので、その補助をするしかない。 だが、あまりにも和樹は1人で前に出過ぎる。 ゆえに側面からの不意打ちを食らいそうになる。 「和くん!」 令花の叫びに和樹は反応するが、敵の方が速い。 剣の切っ先が心臓を貫こうとし―― 「させぬのである!」 大盾を構え突っ込んできたヘラクスのチャージアタックに敵は吹っ飛ばされた。 「すげぇ……」 あまりの威力に和樹は声を上げる。 そんな彼に、ヘラクスは共に戦うべく笑顔を向ける。 「若人よ! 共に仲間を守るのである!」 同じ墓守としてヘラクスは言った。 「我ら墓守は、それが出来るのである!」 そう言うと和樹の背中を叩く。 その力強さに応えるように、和樹は大きく笑みを浮かべ令花に呼び掛ける。 「ねーちゃん!」 「うん! 和くん!」 2人は連携を強く意識しながら、敵の攻撃から仲間を守っていった。 (まずは勢いを削ります) 味方の陣形を崩そうと突進してくる敵の一団に、リンファは立ち塞がる。 黒炎魔喰器、蒼滅呪刀・化蛇を解放し覚醒すると、特殊能力を発動する。 「波濤に飲み干せ、化蛇!」 化蛇を振りかぶり、力強く降り降ろす。 その動きに合わせ放出された黒炎が大波に変化すると、敵の一団を飲み込み押し流した。 敵の勢いが削られる。 そこにリンファは跳び込む。 敵に反応する余裕すら与えずソードバニッシュ。 間合いを一気に詰め強襲すると腕を斬り飛ばした。 そこに間髪入れずステラの追撃が入る。 リンファの攻撃で態勢が崩れた敵にパイルドライブ。 一撃のもとに叩き潰した。 「マー、やったぞ! このままみんなやっつけるんだ!」 「ええ、行きましょう」 何度か繰り返した実戦で、2人の連携と練度は上がっている。 その勢いのまま新たな敵に向かった所で―― 「……え?」 リンファは妹と再会した。 「どうして……」 呆然と呟く。 「そんなはずがない。だってあなたは―― あの日、私が殺したはずなのに」 忘れる筈がない。姿も、形も、構えも、動きの癖まで、あの日のまま。 構えすらとれないリンファに、死人兵と化したメイファは襲い掛かった。 「マー!」 無防備なリンファを守るようにステラが奮闘する。 それを見たスレイニーが援護に動いた。 「ダメです!」 スレイニーは魔力を込めたタロットカードを投擲し、奮闘するステラたちに襲い掛かろうとした死人兵に攻撃する。 腕を斬り裂かれた敵は、攻撃目標を変更。 襲い掛かろうと向かって来るが、そこにユニアが魔力弾を叩き込む。 「来るなら、こっちに来なさい」 スレイニーに敵が向かわないよう、攻撃をして誘導する。 それを見たスレイニーは、ユニアを援護するように攻撃に加わる。 「スレイニーちゃん、危ないわよ」 気に掛けるユニアに、スレイニーは返す。 「ユニアさんだって、危ないです。一緒に戦いましょう」 自分を気に掛けてくれるスレイニーに嬉しさを感じつつも、怪我のひとつもさせてなるものかとユニアは更に攻撃を重ねる。 しかし敵の数は多い。 距離を詰めて襲い掛かって来ようとした所で、魔力の壁が一時的に防いでくれた。 「今の内に距離を取って」 魔女ライリーの援護に、スレイニーとユニアは一端距離を取る。 間合いを空けた所で再度攻撃。 「このままあちらに引き離しましょう。病棟に近付けさせないようにしないと」 「分かったわ」 スレイニーの言葉に応じるユニアだった。 浄化師が奮闘する中、リンファが半ば棒立ちで妹と対峙し、側面から他の敵が押し寄せる。 そこに、あおいが援護する。 「リンファさんこちらはまかせて下さい!」 状況から事情を察したあおいが、マヤを駆使し余計な敵を捌いていく。 (少しでも多くを引きつけないと) あおいは決断すると、ここでヘスティアの加護を使う。 黒炎に包まれると覚醒。 跳ね上がった強さで、マヤを操る。 そこにイザークが連携。 黒炎魔喰器により覚醒状態が続いているイザークは、次々に敵を斬り伏せると天空天駆で全体を確認。 「あおい、あちらで守りに穴が出来ている。行こう」 「はい!」 リンファへの援護を行ったあおいは、イザークと共に必要な場所に向かった。 浄化師の奮闘により戦いは優位になっていく。 それを確実にするためカグヤは黒炎による解放を行った。 「上姉様」 「分かった。合わせる」 カグヤが狙いをつけた敵に、サクヤが先行して狙撃。 脚を撃ち抜いて動きを止めると、すかさずカグヤが呪符を放ち敵を吹っ飛ばす。 「ヴォル」 「任せて!」 カグヤの攻撃から間髪入れず、ヴォルフラムが追撃。 突進の勢いも乗せた渾身の振り降ろしで敵を粉砕した。 敵は次々倒されていく。 それでも死人である敵は恐怖を感じず、攻勢を止めない。 そこにスレイニーは立ち塞がる。 「これ以上、行かせません!」 スレイニーは黒炎による覚醒で得た強さを全力で敵に叩き込む。 背後にあるのは病棟。この場を退けば、逃げ出すことすら出来ない病人に敵が向かってしまう。 それだけはさせないと、必死に戦っていた。 そんな彼女を、ユニアは全力で守るように戦う。 (無茶しちゃうんだから) スレイニーの在りようを好ましいと思うユニアだが、それと同時に彼女にとって一番大事なのはスレイニー。 黒炎による覚醒も惜しまず、スレイニーに近付こうとする敵に魔力弾を叩き込んでいった。 戦いは最高潮。 だが、リンファは戦えないでいた。 (これは、報いですね) メイファの斬撃で何度か斬り裂かれたリンファは、止めの一撃を無防備に受け入れる。 (復讐されても、仕方ない) 受け入れるように立ち尽くし―― 「させるか!」 ステラの全力の一撃が防いだ。 黒炎による覚醒を行った状態での粉骨砕心。 メイファは刀を打ち合わせ防ぐも、大きく後方に吹っ飛ばされ、地面に倒れ伏すと口寄せ魔方陣でいずこかに消え失せた。 「メイ――」 求めるようにリンファは声を上げ、戦う気力を失っている彼女を、ステラは必死に守っていった。 次々倒される敵。 それは魂を束縛された者達。 だからこそ、解放するべく和樹は全力を叩き込む。 「ふざけんな!」 怒りと共に和樹は目の前の相手と全力で戦っていた。 (なんで、あんたが) 目の前の相手は、不慮の死を遂げた直後、遺体を盗まれた人物。 バスケ選手として和樹が大ファンだった彼が、無惨に尊厳を奪われていた。 だから、どうしても彼の相手は自分がしたかった。 その意思をヘラクスとラヴィが汲んでくれる。 「存分に戦うのである!」 「邪魔はさせんから全力で戦うんじゃ!」 2人の援護により、和樹は令花と共に全力を振り絞る。 全ての攻撃を受け止め、切に願う。 「こんなの違うだろ。気付いてくれよ」 (お願い。意識を取り戻して) それは重なる切なる願い。 だが願いだけでは何も変わらない。死人兵を止めるには戦うしかないのだ。 しかし今、2人には叶花の加護がある。 叶花の『願いを叶える』加護が、和樹と令花の重なる願いで強まり目の前の相手に干渉する。 「……」 一瞬、目の前の相手が、死人兵リクが動きを止める。そして言った。 「たの……む、止め……」 必死に自分を止めようとするリクに、和樹は全力で応えた。 黒炎による覚醒により跳ね上がった力の全てを込め、全力で体当たり。 リクは避けずまともに食らう。 止めるためとはいえ、リクに攻撃をした和樹は動きが止まる。 そこに横手から新たな敵が襲い掛かり―― 「させねぇよ」 リクが塵となる寸前、手にした剣を投げつけ心臓を貫いた。 「手間……掛けさせたな……ありが――」 最後は笑みを浮かべ、リクは解放された。 あとに残るのは、彼の魂を現世に縛る核となっていた遺品のみ。 和樹は空気の抜けたボールを手にすると、これ以上誰も傷付けさせないと、身体を張って戦場を駆け抜けた。 皆の奮闘で北部の敵を殲滅する。 即座に、この場に残る者と南部に残る者に分かれ戦いを続ける。 「カグちゃん、元凶をぶっ飛ばしに行こう」 ヴォルフラムはカグヤと共に南部に転移する。 「空から見た限りでは、残存戦力は居ない」 「なら、私達は南部に行きましょう」 イザークが天空天駆で周囲の状況を確認してから、あおいは2人で南部に転移する。 北部の敵が一掃された中、ステラは活を入れるようにリンファを殴りつけた。 「なんで諦めようとしたんだよ!」 「だ、だって……」 「だってってなんだ! 見て分からなかったのか? 聞こえなかったのか!? アイツはそんなこと望んでない!」 伝えるべき事をステラは告げる。 「アイツも家族なんだろ? なら助けてやれよ……っ! マーはアイツを見るのがこわくて楽になりたかっただけだろ!」 「――!」 その言葉は、拳よりも強くリンファに響いた。 「今度また同じことしてみろ! 今日のひゃくおくこうねん倍で殴ってやるからなッ!!!」 そう言うと南部に向かおうとするステラの姿に、リンファは自分で自分の頬を殴りつける。 (次こそは――) 覚悟を抱くリンファに、ステラは呼び掛ける。 「行くぞ、マー!」 「……はい。行きましょう、ステラ」 折れた心をステラに打ち直され、リンファは南部に転移する。 戦う者は南部に。 残り守る者は病棟に向かう。 「ねーちゃん、病棟はオレ達が守る。だから――」 「ええ、お願い。私は、病棟に居る人達のケアに向かうわ」 和樹と令花はそれぞれ最善を考え動いていく。 「病棟の人たちを助けるの!」 懸命に告げるスレイニーに、苦笑するようにユニアは息をつくとサポートするように手伝う。 「もう大丈夫です。安心してください」 スレイニーは怯えていた患者に、やわらかな笑顔を向けながら声を掛けていく。 同時に、必要な物資の移動など、病棟の職員の手伝いもしていった。 (さすがスレイニーちゃんね) 1人1人丁寧に声を掛け、皆の表情を和らげていくスレイニーに、ユニアは何だか嬉しくなる。 だから少しでも彼女の力になれるようにと、病棟の物資の移動を手伝っていく。 その中で、一冊の本を手に取った。 (これって――) 病棟の書籍室にあったそれは『健康百科』と記されている。 何の変哲もない書物に見えて、何か引っかかる。 「欲しいなら、持って行って」 近くで手伝いをしていた魔女のライリーが言った。 「人によって、内容が変わるように作った本なのよ。貴女の望みの取っ掛かりぐらいにはなるかもね」 ライリーの言葉に、ユニアは本を持って帰ることにした。 着々と戦いは決着を見せていく。 それは他の場所でも同じだった。 ●東部戦線 「教団ってモテモテなのね。ここまで大挙してくるなんて」 寮のある東部に『スティレッタ・オンブラ』は向かいながら、同行する『バルダー・アーテル』に悪戯めいた声で言った。 「シロスケも習って来たら?」 「モテモテ、ねぇ……」 バルダーは、ため息をつくように返す。 「一体全体どんな口説き文句を言ったら死体やらキメラに好かれるんだか……」 「あら、口説かなくても魅力的なら、向こうから来るものよ」 「そういう情熱的なストーカーは、ご免こうむる」 「だったら、御断りを入れないとダメよね。物理的に」 艶やかな笑みを浮かべ告げるスティレッタに、無言で肩を竦めるバルダーだった。 同じように東部に向かうのは『セシリア・ブルー』と『リューイ・ウィンダリア』。 「キメラに死人兵……よっぽど命をこねくり回すのが好きなのね」 セシリアは現場に向かいながら冷ややかに呟く。 これにリューイは、熱い怒りを感じさせる声で応える。 「こんなの絶対に間違ってる」 「ええ、そうね。だからきっと、いつか報いを受ける筈よ」 セシリアの言葉にリューイが視線を向けると、薄く笑みを浮かべ返した。 「因果応報という言葉があるわ。良いことも悪いことも必ず己に跳ね返る」 「……それは占い?」 「いいえ。年長者の経験則よ」 セシリアは応えると、にこりと笑みを浮かべ言った。 「がんばりましょう」 「うん。絶対に、こんなこと止めないと」 リューイは頷き、足を速めた。 皆が現場に向かう中、『ラニ・シェルロワ』と『ラス・シェルレイ』は家族に助けを求める。 「シィラ、グリージョ、ケイト、ペトル。お願いっ手伝って!」 「分かったわ」 ラニの頼みに、シィラは頷く。 「怪我したら危ないから、2人は後ろに下がって――」 「シィラ、そいつは違うぜ」 心配そうに言うシィラに、グリージョは言った。 「ラニは手伝って、って言ったんだ。守ってくれ、じゃない」 黒剣を召喚しながら続ける。 「2人とも子供じゃない。一緒に戦おうって言ってるんだ。そうだろう、ラス」 「ああ」 ラスは、安心させるようなしっかりした声で返す。 「一緒に戦おう、シィラ」 「……ラス」 ラス達の成長に、感極まったように言葉を詰まらせるシィラに、ケイトとペトルは明るい声で言った。 「大丈夫よ! みんながいるんだもの。キメラなんか、けちょんけちょんよ!」 「おう! 心配すんな! やってやろうぜ、シィラ」 皆の言葉に、シィラは笑顔を浮かべ頷いた。 そして皆は現場に到着。 一般浄化師140名も寮に集結し、皆は魔術真名を詠唱していく。 「Traicit Et Mors Amor」 愛は死さえ乗り越える。 死を弄ぶ敵を倒すべく、スティレッタとバルダーは魔術真名を唱える。 「開け。九つの天を穿つ門」 死者の尊厳を貶める敵を許さないというように、戦いの意思を込めリューイとセシリアは魔術真名を響かせる。 「叫びよ、天堕とす憎歌となれ」 頼りになる家族と共に、敵と向かい合いながらラニとラスは魔術真名を詠唱した。 魔術回路を解放し、戦力を膨れ上がらせる浄化師達。 この時点で敵であるキメラの群れとの距離は200m。 その距離が一歩縮んだ瞬間に、皆は一斉に戦場へと跳び込んだ。 (数が多いな。それに統制が取れてやがる) キメラ達が列を組んで走って来るのを見て、バルダーは戦い方を決める。 「スティレッタ。こいつらが集まって来る前に、吠えてた奴が居ただろ。まずはそいつを叩こう」 「……ああ、そういうこと。まずは頭から潰そうってわけね」 バルダーの意図を理解したスティレッタは、ウィッチ・コンタクトを装着。 魔力の流れを見て、敵を判断する。 「あれが、一番魔力が多いわね」 獅子を思わせる体に、頭だけが巨大な人の顔になっているキメラを示し言った。 「キメラ達の頭かどうかは分からないけど、最初のターゲットにするには良いんじゃない?」 「分かった。とはいえ、俺達だけでやりあうには、少し難しいな」 狙いをつけたキメラの周囲には、護衛のように数体のキメラが就いている。 勝ち目を上げるため、バルダーは仲間に共闘を頼む。 これにリューイ達が応えた。 「あの魔力の大きなキメラを倒すんですね」 エレメンツであるリューイは、魔力探知で確認しながら返す。 「護衛が就いているみたいですから、まずはそちらから確実に倒していきましょう」 何度か戦闘を重ね、戦闘スタイルを確立しているリューイは、戦い方を提案する。 「僕は接近して敵の注意を引きつけます。その間に、攻撃して貰えますか?」 リューイに続けてセシリアも提案する。 「私は防御中心に動きます。周囲の状況確認もしますから、皆さんは攻撃に集中してください」 僅かな時間で戦術を話し合い、回復役の浄化師達も同行してくれることになり、リューイ達は進撃する。 一塊になって進む。 それをキメラ達が邪魔しようとするが、リューイ達の狙いをマドールチェの浄化師が周囲に伝えてくれたお蔭で、皆が壁役となって防いでくれる。 皆の助けを借り、キメラ達の司令塔、グロウギアへと近づく。すると―― 「ガアアアッ!」 グロウギアが吠え、護衛のキメラ達が動く。 突進してくるキメラ達。 だがリューイ達は慌てることなく戦いに挑む。 最初に跳び出したのはリューイ。 戦踏乱舞でスティレッタ達の戦意を引き上げると、まずは先制攻撃に動く。 敵との間合いを読み、ギリギリの間合いまで踏み込むと、キメラの鋭い爪をフットワークで回避。 回避の動きを無駄にせず攻撃に繋げる。 双剣を素早く振り抜き、深々とキメラの足を斬り裂いた。 斬り裂かれた痛みで暴れるキメラの注意を引くように立ち回っていく。 そこにバルダーが跳び込む。 リューイに注意が向いたキメラの横っ腹に、突進の勢いも込めた振り降ろしを叩きつけた。 ザックリと腹を斬り裂くと、キメラは大きく暴れる。 怒りのままに暴れるせいで、動きが荒く隙だらけ。 その隙を逃さず、スティレッタが手にした大鎌で、バルダーの刻んだ傷に重ねるように刃を振るう。 度重なる攻撃に、キメラは倒れ伏した。 敵の1体を倒す。 しかし一息つく暇もなく、新たなキメラが跳び掛かってこようとする。 そこに立ち塞がったのはセシリア。 タロット・ウォールを発動し、周囲にタロットカードを展開。 キメラの突撃を受け切った。 連携して攻撃を重ねていく。 それはラニ達も同様だ。 「こいつらに指示を出してる奴を叩くみたい! こっちは邪魔をさせないように潰していきましょ!」 マドールチェの浄化師による魔術通信で、リューイ達の動きを知ったラニは、そちらに向かう敵を削ることを提案する。 これに皆は応える。 「分かった。ラス、ラニ。好きに動きな。フォローは任せろ」 グリージョの言葉に、ラスとラニは背中を任せ前に出る。 そこに左右からキメラが突進して来るが、シィラがそれを許さない。 「邪魔よ」 禁術を発動。膨大な魔力が津波へと変換され、ラスとラニに襲い掛かろうとしたキメラを飲み込む。 そのまま水圧が急上昇。 深海並みの水圧で押し潰していく。 ラスとラニへの援護は、それだけじゃない。 「さて、俺達も好いとこ見せようぜ!」 「なに言ってんの! こういう時は、ラニちゃん達に見せ場を作ってあげるもんでしょ!」 「おう! なら行くぜ、ケイト!」 ペトルは応えると、白き魔銃を連続発砲。 合わせてケイトは、黒き魔銃を連続発砲。 撃ち出された弾丸は、ラスとラニの周囲を衛星のように飛び回る。 (力が!) ラスは、ケイト達が撃ち出した銃弾が周囲を飛びまわることで、自身の力が上がったことを実感する。 さらに2人の魔銃の効果はそれだけでは留まらない。 ラニにキメラが襲い掛かろうと腕を振り上げるが、飛び回る銃弾が自動迎撃。 目玉を貫き絶叫を上げさせる。 「ラス!」 「おう!」 ケイト達の援護を活かすため、ラスとラニは目玉を撃ち抜かれたキメラに吶喊する。 先行してラニが跳び込み表裏斬。 右前脚を斬り裂くと、即座に後方に移り、追撃の十字切り。 キメラの脚を斬り飛ばした。 脚の一本を失い体勢を崩したキメラに、ラスが止めの一撃。 突進の勢いも込め跳び込むと、全力のパイルドライブ。 大きく振り上げた両手斧を渾身の勢いで振り降ろし、頭を叩き砕いた。 「やるな! その調子だ!」 キメラの首を斬り飛ばしたグリージョがラニとラスを褒めると、2人は力強く返し戦いを続けていった。 敵の数は多かったが、浄化師の活躍はそれを上回る。 次々にキメラを倒していく。 「まったく、可愛くないキメラね!」 スティレッタは、キメラの首を斬り裂き止めを刺す。 「せめてお手とお座りでも出来れば、まだ愛嬌が湧くと思うんだけど、それも出来そうにないわね」 護衛の全てを倒し、キメラのリーダーは1頭のみ。 (一時的にコントロールを奪うことができれば良いんだけど――) 油断なく敵をウィッチコンタクトで見ながら探るが、そういったことが出来そうな予感は無い。 「可愛げのない相手は面白味が無いんだけど、直接叩くしかないみたいね」 「ああ、そうみたいだな」 バルダーは同意すると、真正面から跳び込む。 即座に敵は迎撃。 毒の滴る爪を振るって来る。 それをセシリアが防御。 覚醒した状態で、タロット・ウォールを発動する。 叶花に守りの力が上がることを願っていた今のセシリアは、危なげなく受け止めた。 傷は軽い。だが、爪の毒が回ってしまう。 「セラ!」 「大丈夫。それより前を見なさい」 気遣い声を上げるリューイに、セシリアは笑顔で返す。 すぐに陰陽師の浄化師が解毒に動いてくれたこともあり、問題は無さそうだ。 だがセシリアを傷つけたキメラを倒すべく、リューイは果敢に前に出る。 ヒット&アウェイでキメラを斬り裂いていく。 キメラを翻弄するリューイの援護をするように、スティレッタとバルダーは攻撃を重ねる。 先行して跳び込んだスティレッタは、ヘスティアの加護により黒炎を纏い覚醒。 キメラの注意を分散させるようにヒット&アウェイで斬りつけた所に、バルダーが追撃。 黒炎を纏い覚醒すると、全体重を乗せた振り降ろしで、キメラの後ろ脚を切り落とした。 キメラの動きが止まる。 その隙を逃さず、リューイが止めに動く。 黒炎を纏い覚醒すると三身撃。 素早いステップで3連撃を叩き込み、キメラの息の根を止めた。 キメラのリーダー格を倒したことで、僅かな間ではあるが、敵の動きが鈍る。 その隙に、まとめて倒していく。 「ラニ、ラス。1か所に集めるから、まとめて倒して」 シィラは戦いの中で、ラニとラスとの連携を高めると、2人に止めを託すべく敵を誘導する。 禁術を使いキメラを追い立て、1箇所に集めていく。 「ケイト、ペトル、お願い」 「オッケー」 「任せとけ」 ケイトとペトルは、魔銃に最大装填。 「行くぞケイト」 「合せるわよペトル」 2人は息を合わせ全弾発砲。 撃ち出された銃弾は集められたキメラ達の周囲を囲むように飛び回り、結界を形作る。 それを見たグリージョが、ラニとラスに言った。 「結界に向かって一番強い技を叩き込んでみな。結界がそれを取り込んで増幅して、中に居るキメラに叩き込んでくれるから」 これを聞いた2人は、最大の攻撃を叩き込むべく、黒炎を纏い覚醒する。 「まとめて倒すぞ!」 「一気に決めましょ!」 ラニとラスは武器を構え、いま出せる最大の破壊力を叩きつける。 全速力で突進し、アライブスキルを発動。 ラニは全力の斬撃を叩き込むと、即座に追撃。 表裏斬の連撃が結界に叩き込まれると、その威力を取り込んだ結界は、無数の衝撃波を結界内に撃ち出す。 次々切り刻まれていくキメラ達。 そこにラスの渾身の一撃。 全力の振り降ろしを結界に叩き込む。 ラスの放ったパイルドライブは結界に取り込まれると、杭状の衝撃波を無数に撃ち出し、キメラ達を穿ち貫き絶命させた。 浄化師達の活躍でキメラ達は全滅する。 幾らか寮に被害が出たが、戦える者は南部に向かう。 「シィラは、ここに残っていて。万が一があるといけないもの」 ラニは、シルキーとしての性質を得たシィラを心配して言った。 これにシィラは返そうとするが、信頼するように飲み込み応える。 「分かったわ。2人とも、気をつけてね」 ラニとラスは笑顔で返し、南部に転移する。 「向こうは、こちらよりマシだと良いわね」 「さて、どうだか。こちらはキメラだが、あちらは死人兵らしいぞ」 「そうなの? 血の吸い甲斐があるやつがいたら楽しいのに」 軽口を口にする余裕を見せながら、スティレッタはバルダーと共に南部に転移する。 「死んだ人をモノみたいに扱うなんて……止めないと」 死者の尊厳を想うリューイに、セシリアは柔らかな笑みを浮かべ応える。 「ええ。ろくでもないことをする元凶に、報いを受けさせないと」 人形遣いを撃破するべく、2人は南部に転移した。 戦いの趨勢は確実に浄化師達に傾いている。 決着をつけるべく、南部での戦いは続いていた。 ●南部戦線 南部にある正門に向け『ルーノ・クロード』は『ナツキ・ヤクト』と共に向かう途中、セパル達を見つけ声を掛けた。 「人形遣いを抑えるために南部に行く。力を貸して欲しい」 「分かった。こっちもあいつを潰しに行くつもりだったから、手を貸すよ」 いつになく感情を滲ませるセパルに、ナツキは声を掛ける。 「あいつ、普通じゃないゾンビを連れてるみたいなんだけど、どんな相手か分かるかな?」 これにセパルは表情を硬くし応えた。 「前に見たよ。剣豪ゾンビとか言ってた。武蔵くんや小次郎くんみたいな、剣豪を素体にしたゾンビみたい」 セパルの話によると、生前の彼らに会ったことがあるらしい。 「生前の2人に比べればかなり弱かったけど、多分魔剣が使える。気をつけて」 セパルはそう言うと、魔剣について説明する。 「浄化師のアライブスキルみたいなものだよ。ボクが知ってるのだと――」 セパルは可能な限り自分の知る魔剣を伝え、ルーノとナツキは厳しい表情になる。 「それが本当なら、ほとんど必殺技みたいなものだな」 「それでも、止めなきゃダメだ」 ナツキは決意を込め言った。 「人の命を玩具みたいにする奴は、絶対に止めてやる」 「ああ、そうだな」 ナツキの決意にルーノは頷く。 「急ごう。絶対に止める」 皆は頷き、足を速めた。 南部に向かう中、助けを求める者は他にも。 「マリー、リーちゃん。力を貸して欲しい」 人形遣いの思惑を潰すべく『リントヴルム・ガラクシア』は、マリエルとマリーに頼んだ。 (本当はマリー達に戦って欲しくないけど……緊急時だし、人形遣いもいる。彼女達を苦しめたお返しはしないとね) 苦悩を飲み込みながら頼むリントヴルムに、マリエルとマリーは快諾した。 「うん。任せて」 「当然ですよ、旦那さま」 少し前に交際を求められた2人は、自然な笑顔を浮かべ応える。 「リントもベルも、守るからね」 「それはこっちの台詞だ」 軽く眉を寄せ『ベルロック・シックザール』はマリエルに返す。 「戦えるからって、無茶はしなくて良い。こっちが前に出て戦う」 「でも、怪我したら」 「それはそっちも同じだろ」 「そんなことない。私は、怪我しても勝手に治るけど、リントもベルもそうじゃないから……」 リントヴルムとベルロックのことを気に掛けるマリエルに、マリーがきゅっと手を繋いで言った。 「マリー、心配するだけじゃダメよ。一緒に戦うんだから」 「でも……」 「大丈夫、マリー」 リントヴルムは明るい声で安心させるように言った。 「僕もベル君も、好きな子の前で良い所を見せたいんだ。無茶はしないから、心配しないで」 「……うん」 リントヴルムの笑顔にマリエルは頷くと、マリーと共に力になるべく、魔法少女ステッキを召喚する。 「お呼びですか?」 「何だかパーティの予感ですー!」 召喚されたステッキの力を解放し、2人は魔法少女姿に変身。 大元帥からお墨付きを貰うほどの力を携え、リントヴルムとベルロックの力になるべく共に南部に向かう。 その途中、『ヨナ・ミューエ』と『ベルトルド・レーヴェ』に出会う。 するとヨナがマリエルに尋ねてきた。 「マリエルさん。人形遣いが来ているみたいです。彼の本体について教えて貰えませんか?」 これにマリエルは、皆と現場に向かいながら話す。 「本体がどこに居るかまでは分からないけど、アークソサエティに居るのは確かよ」 「それは、どうやって確かめたんですか?」 「あいつが自分の借りの肉体として操るゾンビは、中継点が要るの。その分布を調べたことがあるんだけど、アークソサエティに偏ってたわ。間違いなく、アークソサエティにメインのネットワークを作ってる。だからそうじゃない他の国だと弱いけど、アークソサエティだと強さが増してるわ」 「……本体に近いほど仮の肉体として操るゾンビは強くて、離れるほど弱くなる、ということですか?」 「ええ、そういうこと」 「それなら、そのネットワークを潰してしまえば――」 「無理よ。室長にも言って調べて貰ったけど、私が調べた場所は全部撤去されてた。だから今すぐこの場で本体を倒すのは無理ね」 「そういうことですか……」 魔術師として人形遣いを倒す手段を考えながら、ヨナは皆と共に南部に向かった。 そして皆は現場に到着した。 辿り着き、視線の先に居るのは人形遣いと死人兵。 死者を冒涜しながら笑みを浮かべる人形遣いに、皆は憤りを隠せない。 (……そうか、あれはこの場の束の間の平穏まで乱そうとするのか) 離れていても分かる愉悦の気配を滲ませる人形遣いに、ルーノは決心する。 (そっちがその気なら、そちらの意図がなんであっても容赦はしない。 考えろ、敵の排除を、味方の死守を。この場所は奪わせない) 「しっかり、お返しはしないとね」 「ああ、思い知らせてやる」 因縁ある人形遣いに、リントヴルムとベルロックは戦意を高める。 「これだけの軍勢を、人形遣いが1人で……」 ヨナは憤りを込め呟く。 「彼はどこまで……どこまで人の命を弄べば気が済むのでしょうか」 「それもこれほど大量に、だ」 苦い顔をするベルトルドは続ける。 「操り人形にされている人々をせめて人形遣いの手から解放するぞ」 「はい」 確かな意志を込め返すヨナ。 人形遣いが群を動かさず睨みあう中、一般浄化師140名も集結。 打ち倒すべく、皆は魔術真名を詠唱していく。 「その牙は己の為に」 拳と拳を突き合わせ、ルーノとナツキは戦意を高める。 「コード・ステラ」 裏拳同士を合わせ、ベルロックとリントヴルムは、マリエルとマリーと共に戦いに挑む。 「不退転」 意志を表すような魔術真名を唱え、ヨナとベルトルドは人形遣いに強い視線を向ける。 浄化師全ての敵意を受けながら、人形遣いは楽しそうに戦火を告げた。 「さあ、遊びましょう!」 愉悦を滲ませる号令と共に、敵は一斉に走って来る。 この時点で敵との距離は200m。 対する浄化師も走り出し、戦いは始まった。 (あいつの言う『遊び』なんかの為に遺体が使われてるってのか……!?) 迫りくる死者の軍勢にナツキは憤り、感情を抑えるように歯を噛みしめる。 (……せめてこれ以上好き勝手されないように、死人兵もゾンビもここで倒して眠らせてやる。仲間だって絶対誰も欠けさせねぇからな!) 死者の尊厳と仲間を守る意志を抱き、ナツキは突進する。 そこに長刀を手にしたゾンビが1体、恐るべき速さで距離を詰めて来た。 即座に反応したナツキが迎撃するべく、手にした黒炎魔喰器ホープ・レーベンを構える。だが―― (速えっ!) 敵の斬撃が恐るべき速さでナツキに襲い掛かる。 ギンッ! 重い響きをさせながら、辛うじてホープ・レーベンを打ち合わせ防ぐ。 しかし間髪入れず第2撃が放たれる。 避け切れない! そう思った瞬間、ウボーとセレナが援護に入り敵の攻撃を止めた。 「小次郎くんの剣豪ゾンビだ! 魔剣に気をつけて!」 援護に来たセパルの声に、ここに来る前に聞いた魔剣の情報を思い出す。 (佐々木小次郎の魔剣は、燕返し) それは簡潔に述べれば、当たるまで繰り出される連続斬撃。 しかも一撃ごとが必殺でありながら、相手の体勢を崩すように放たれるので、避ければ避けるほど必殺の一撃を食らいかねない魔剣。 生前よりも力が弱まっているとはいえ、侮ることは出来ない。ならば―― (力を温存してる場合じゃねぇ) いま目の前の敵に全力をぶつけるべく、黒炎を解放する。 「希望を守る牙になれ。解放しろ、ホープ・レーベン!」 解号と共に、ナツキは黒炎に包まれる。 それが晴れると同時に覚醒。 獣の如く牙を伸ばし、獣の如き激しさで突進する。 凄まじく速い。 小次郎の剣豪ゾンビは反応しようとするが、そこにホープ・レーベンの特殊能力を発動した。 その瞬間、ナツキは最適の剣の軌道を直感する。 未来予知に近いそれは、現実にすら干渉。逃れられぬ運命として確定し、ナツキの放った獣牙烈爪突を必中の物とした。 その瞬間、小次郎の剣豪ゾンビは回避を捨てる。 刀を持たない左腕を剣の軌道に突き出し、あえて当てることで威力を削ぐ。 手を、腕を、そして左胸を突き貫いた所で威力を止めると、そこから刀を振りかぶる。 しかし、ナツキの勢いの方が勝った。 「おおおおっ!」 裂帛の気合いと共に、貫いたホープ・レーベンを、さらに振り抜く。 小次郎の胸を裂き腕を斬り飛ばすと、間髪入れず表裏斬。 刀を持つ右腕を切り飛ばし、追撃で首を刎ねた。 浄化師達は全力を叩き込んでいく。 「おやおや、お久しぶりですねぇ」 マリエルを見つけた人形遣いが死人兵を率いて近付いてくる。 「とっくに死んでいたと思いってましたが。素晴らしい生き汚なさですねぇ」 挑発して来るが、マリエルは余裕を持った笑みを浮かべる。 「鏡を見て言った方が良いわよ、お馬鹿さん」 挑発に挑発で返すと、シャドウバインド。 口寄せ魔方陣で召喚した短剣を射出すると、死人兵と人形遣いの動きを一時的に封じ、ベルロックが間合いを詰める手助けをする。 ベルロックの狙いは死人兵。 他の区域の仲間が来るまでの時間を稼ぎ、敵の戦力を削る。 勢い良く突進し、死人兵が動き出すより早く斬撃。 1体を斬り裂いた所で、剣豪ゾンビが突進してきた。 死角から音もなく踏み込み、心臓狙いの突きが放たれる。 ベルロックは反応できない。 それをマリーが防ぐ。 ガキンッ! 魔法少女ステッキを変化させた手甲で、マリーは剣豪ゾンビの一撃を逸らし、一気に間合いを詰め腹に拳を叩き込む。 重い音と共に吹っ飛ぶ剣豪ゾンビ。 「背中は守りますから」 「無茶はすんなよ!」 ベルロックはマリーに背中を任せ、前のみに集中して戦っていく。 そこにリントヴルムが更なる援護を。 「ベル君達の邪魔はさせないよ」 リントヴルムはペンタクルシールドを展開し、ベルロックやマリエルに向かって来る死人兵の動きを止めていった。 戦いは苛烈に進む。 その中にあって、敵を悼みながら戦う者も。 (出来る限り、傷は残さないように) ヨナは距離を取りながら、ソーンケージを発動する。 発動先は死人兵。 魔力の茨で捕え、拘束するように絡めていく。 (この人達は、無理矢理死人兵にされて……) その想いは、人としては間違っていない。 だがヨナの想いなど知らぬとばかりに敵は襲い掛かって来た。 2刀を手にした剣豪ゾンビが走って来る。 気付いたヨナが距離を取ろうとするが、敵は恐ろしく速い。 瞬く間に距離を詰められ―― 「させるか!」 側面から踏み込んだベルトルドが迎撃する。 地面を踏み鳴らし、拳を振るう。 肉を削ぎ切るような鋭い振り抜きは、流麗な刀の動きで捌かれた。 拳の軌道を書き換えるように、右の刀が振るわれる。 合気の如く拳の勢いを逸らされ、ベルトルドは自分の攻撃の勢いで体勢を崩す。 (拙い!) ぞわりと、死の匂いが忍び寄る。 体勢を崩したベルトルドの首に、左の刀が振り降ろされ―― ギンッ! 寸前、ウボーの大剣が間に合った。 大剣で刀を弾かれ、剣豪ゾンビは一端距離を取る。 そこにウボーとセレナが追撃。 「怪我は!?」 ヨナと一緒に走って来たセパルは声を掛けると、剣豪ゾンビについて語った。 「あれは武蔵くんだ。陰陽交差っていう魔剣が使えるよ」 それはカウンター斬撃。 1刀で攻撃を捌き、残りの1刀で首を刈る。 それを聞いたヨナとベルトルドは、連携する。 先に踏み込んだのはベルトルド。 虚を突くように乱れ斬り。 フェイントの後に本命の拳打。 しかしそれすらムサシは捌く。 間髪入れず必殺の1刀を放とうとした所に、ヨナが追撃。 黒炎に包まれ覚醒した状態で、ライトレイを射出。 凄まじい威力のそれは、武蔵の腕を吹き飛ばし、その隙を逃さずベルトルドは手刀を放つ。 それは真っ直ぐに心臓を貫き、武蔵の動きを止めた。 皆は必死になって、敵と戦う。 南部の敵は数は少なかったが、明らかに他の地区よりも1体1体が強い。 最初は互角の戦いをしていた浄化師達だったが、時間が過ぎると共に押されていく。 このままでは負ける。 そんな嫌な予感がにじり寄って来た時、援軍が来てくれた。 「イザークさん」 「援護に回るぞ、あおい」 北部の敵を殲滅した仲間達は、戦場の側面に転移すると即座に戦いに加わってくれる。 イザークは、あおいと連携しながら押されていた浄化師を助けると、回復する余裕が出来るよう立ち回る。 「ヴォル、回復に行く」 「分かったよ、カグちゃん」 味方の回復のため魔力を温存していたカグヤが怪我をした仲間の元に走る。 それを死人兵が邪魔しようとするが、ヴォルフラムが両手斧を振り回し近付けさせない。 「マー、やるぞ!」 「はい!」 ステラに気合を入れられたリンファは、確かな意志を瞳に宿し死人兵に立ち向かっていく。 北部担当の浄化師が援軍に来てくれたお蔭で、戦局が動く。 それを見た人形遣いは、肩を竦めるように言った。 「これ以上は、勝ちの目が無さそうですね。そろそろお暇しましょう」 平然と去ろうとする人形遣いに、ベルロック達が食いついた。 「逃がすか!」 人形遣いの退路を断つように回り込み、ベルロックは刃を振るう。 「勤勉ですねぇ」 人形遣いは魔力を込めた手でベルロックの斬撃を弾くと、薄く笑みを浮かべ挑発する。 「私よりも刃を向ける相手は居るんじゃないんですかぁ?」 そう言うとマリエルに視線を向ける人形遣いに、ベルロックは刃を振りながら続け言った。 「感謝するよ、俺はあの女を……恐怖を克服できた。そのお返しをさせてもらう」 確かな意志を込め宣言する。 「今の彼女は俺達の仲間だ」 「ベル君の言う通りさ!」 リントヴルムが連携するため合流し言った。 「2人は僕達の大事な人なんだ。だから、マリーもリーちゃんも、もうこれ以上キミの好きにはさせないよ。これからもたくさん遊んで、手紙のやりとりも続けるんだからね」 「なるほど。あの2人にご執心なのですか」 にぃっと笑みを浮かべると、人形遣いは返す。 「なら、奪ってあげましょう」 そう言うと、マリエルとマリーの元に剣豪ゾンビを放つ。 他の剣豪ゾンビの相手をしている2人は、対処する余裕がない。 「お前!」 「どうしました? 助けないので?」 ベルロック達が援護に向かう間に逃げようとする人形遣いに、どうするべきか迷っていると―― 「こいつは俺達で抑える! 行ってくれ!」 ナツキがルーノと共に援護に来てくれた。 「ありがとう!」 「すまない!」 リントヴルムとベルロックは礼を返すと、マリエル達に向かう剣豪ゾンビを迎撃。 黒炎により覚醒すると、ベルロックは磔刺で貫き固定する。 剣豪ゾンビは振り払うように斬りつけるも、リントヴルムが庇い致命傷を避ける。 そこでネメシスの加護を発動。2人が受けた傷を剣豪ゾンビが喰らい動きが鈍った所に、他の剣豪ゾンビを倒したマリエルとマリーが援護に来てくれ打ち倒した。 「余裕ぶっていた割に、こちらの駒を一つも取れていないようだが。遊びにしても酷い結果だな」 挑発するルーノに人形遣いは笑みを浮かべ返す。 「それだけ多く遊べるんです。喜ばしいですねぇ」 ルーノが放つ魔力弾を素手で弾きながら、愉悦を浮かべ続ける。 「好きなだけ壊して下さい。変わりは幾らでも作ります。死者が尽きることは無いのですから」 「ふざけんな!」 人形遣いの言葉に、ルーノに合流したナツキが、憤りながら斬りつける。 「人も命も、そんな風に軽く扱って良いモンじゃねぇだろうが!」 怒りを感じながら、けれど冷静さは失わず、ナツキはルーノと連携して人形遣いに攻撃していく。 けれど人形遣いは笑みを崩さず、変わらず遊ぶように言った。 「好い連携です。貴方達の身体を継ぎ接ぎすれば、良い人形が出来るでしょうねぇ」 怖気を誘う笑みに嫌悪を感じながら、ナツキとルーノは攻撃を重ねる。 そこに剣豪ゾンビが1体乱入して来た。 「名残惜しいですが、これにて」 剣豪ゾンビを盾にして、人形遣いは逃げようとする。 そこに、西部の敵を倒した浄化師が現れた。 「人形遣い!」 転移して即座に人形遣いを補足したショーンは、憤怒を込め狙撃していく。 それはシリウスの父親の遺体を弄んだ人形遣いに怒りを感じていたからだ。 (人形使い……貴様は刺し違えてでも必ず地獄に堕としてやる……!) 怒りに滾るショーンの隣で、レオノルは魔力探知で解析しながら冷静に見極める。 (攻撃時、被弾時、移動時……挙動と魔力の動きを全て記憶しないと) 人形遣いは、レオノルが尊敬するシャルルですら対策が思い浮かばない相手だ。 今この場で、どうにか出来るとは思わない。だが、それでも―― (これだけのサンプルがあるんだ。見極めることが、私ができる最大の反撃だ) 今できる最大限のことを。 それは他の浄化師も同様だ。 「纏めて撃ち抜く! 巻き添えに気をつけてくれ!」 トールは残り少ない魔力を振り絞り、マッピングファイアを放つ。 狙いは死人兵。 仲間の浄化師の動きで固まっていた所に、無数の矢を降り注ぐ。 それを見た人形遣いは、楽しそうに拍手した。 「お見事! 良い狙いをつけられる目をしますねぇ。えぐり出して付け替えたいです」 「冗談でしょ」 いつの間にか人形遣いの死角に跳び込んでいたリコリスが、冷たい声と共に斬りつける。 脚を切り裂いたかと思えば腹を突き刺し。 人形遣いが反撃をしようと身体を向ければ、その時には既に背後に回り連続斬撃。 目にも止まらぬ素早いステップで、翻弄するように斬り刻んだ。 そこからリコリスは仲間の援護をするため、死人兵と戦う仲間に戦闘乱舞を掛けに行く。 リコリスが離れるのと入れ替わりで、アリシアとクリストフが人形遣いの抑えに入る。 「人形遣いさん、あなたは……」 (人の死を弄ぶなんて) 鬼門封印を掛けながら、アリシアは言葉を飲み込む。 なぜならきっと、その言葉は届かないから。 死者を操り楽しそうに笑みを浮かべる人形遣いに、クリストフは氷結斬で斬りつける。 傷口を凍りつかせながら平然と動く人形遣いを、クリストフはアリシアと連携して抑えていく。 人形遣いを抑えているせいか、敵の動きは僅かに鈍る。 その隙を逃さず、ニコラはヴィオラと共に敵を殲滅していく。 「ニコラさん」 仲間の浄化師達と敵を1箇所に誘導したヴィオラがニコラが呼び掛ける。 呼び掛けに合わせ敵の只中に跳び込んだニコラは、残りの魔力全てを振り絞る。 (纏めて叩き潰す) デモン・オブ・ソウルを力強く振り上げ、一気に振り降ろす。 死人兵の1人を袈裟掛けに切り裂くと、周囲の敵を風圧の振り降ろしで叩き潰した。 敵は次々に殲滅されていく。 だが浄化師もタダでは済まない。 傷のない者などいない中、必死にリチェルカーレは癒して回る。 「回復します、こちらに」 戦場を駆けまわり皆を天恩天賜で癒しながら、想いはシリウスに向いてしまう。 (シリウス……) 機械のように感情を殺し死人兵に斬りつけるシリウスに、今すぐ言葉を掛けてあげたいと思いながらも、その気持ちを飲み込み皆の回復に回った。 浄化師は攻勢に回り、確実に敵を追い詰めていく。 だが敵の勢いは止まらない。 人形遣いは、自分を抑えているクリストフとアリシアに剣豪ゾンビをぶつけ、その隙に逃走しようとする。 そこにヨナとベルトルドが回り込む。 「逃がすか!」 ベルトルドの攻撃を捌きながら、人形遣いは面白そうに言った。 「おやおや、また貴方達ですか。しつこいですねぇ」 「それはこちらの台詞です!」 オーパーツグラウンドで刻みながら、ヨナは言った。 「何度も何度も……どれだけの人を苦しめれば気がすむんです!」 「飽きるまでですよ?」 笑顔で人形遣いは続ける。 「ですが千年過ぎても飽きませんからねぇ。全ての生き物が死に絶えるまでには、満足したいものです」 「ふざけたことを!」 「本気ですよ? 付き合うのが嫌なら、今すぐ死ねば楽になりますよ」 「戯言を」 ヨナは戦力を振り絞りながら、宣言するように言った。 「あとどれだけ貴方と相対する事になっても構いません。いずれ正体を暴いてみせます、絶対に」 「それはそれは。楽しみです」 嘲笑うように返しながら、人形遣いはヨナとベルトルドの攻撃を捌いていく。 それどころか反撃を重ね、逃走しようとする。 そこに東部を担当した浄化師が援軍に来てくれた。 「これはこれは、拙いですねぇ」 言葉とは裏腹に愉悦を浮かべながら、人形遣いは残った剣豪ゾンビと死人兵を招集し、捨て石にして逃げようとする。 だが、その思惑をベルトルドが砕く。 「九天咆哮。哮れ、竜哭」 ここぞという時のため温存していた黒炎魔喰器を解放。 特殊能力を発動する。 手甲形態の黒炎魔喰器、竜哭が震えたかと思うと、まさしく竜の咆哮の如き撃音を響かせる。 それは周囲の敵に侵透。 一瞬とはいえ全ての動きを止めた。 そこに全力をベルトルドは叩き込む。 地響きをさせる勢いで踏み抜き、全身の勢いを込めた拳で人形遣いを殴り飛ばす。 吹っ飛んだ人形遣いが飛ばされた場所は、東部から転移してきた浄化師達の元。 「いけませんねぇ」 人形遣いは死人兵達を呼び寄せ盾にしようとするが、ラニとラスが家族と連携して近付けさせない。 「みんな、お願い!」 ラニの呼び掛けに応え、ラス達が動く。 「行くぞ兄弟」 「ああ!」 ラスはグリージョと共に、ラニと一緒になって敵に跳び込む。 真正面から切り伏せ、側面から来る敵はケイトとペトルが援護射撃。 ラニ達の活躍で、人形遣いは1人。 そこにスティレッタが一撃を叩き込む。 背後に回り背中を何度も突き刺すと、注意を引くように声を掛ける。 「蓼食う虫も好き好きって言うから人の好みに口を出すのは野暮だし気にしないでしょうけど、貴方悪趣味極まりないわね」 「悪食ですからねぇ、私は」 けらけらと笑いながら反撃する人形遣いの攻撃をスティレッタが避けると、間髪入れずバルダーが追撃。 腕を斬り裂くと、注意を引くように声を掛けた。 「随分とリスキーだな、アンタ」 振るう刃の勢いは止めず続ける。 「いくら死体つったって教団の親族の拾ってくるなんぞ割に合わないだろ。キメラはキメラで使い捨てにするってことはコスト承知の行動だ。 つまりそれらのリソースが潤沢にあるスポンサーの人間がバックにいてもおかしくないっつーことだが……案外教団内部の奴じゃないよな?」 これに人形遣いは笑みを浮かべ応える。 「秘密です」 そう言うとスティレッタとバルダーの包囲の隙を突き逃げる。 だが、それは罠。 先回りしていたリューイが、セシリアと連携して止めを刺す。 「リューイ、今よ!」 身体を張って人形遣いの動きを止めたセシリアが声を上げると、リューイは斬撃の間合いに跳び込む。 人形遣いの反応より早く、正中線に沿って三連撃。 みぞおち、心臓、咽喉を突き刺し、人形遣いの活動を停止させた。 人形遣いの停止と共に、敵の全ては沈黙。 これにより浄化師達は勝利する。 無傷の者は居らず、けれど1人の死者も出さない、見事な戦いだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[68] 桃山・令花 2020/05/09-23:48
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[67] 桃山・和樹 2020/05/09-23:43
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[66] ヴォルフラム・マカミ 2020/05/09-21:33
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[65] 鈴理・あおい 2020/05/09-17:06
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[64] リチェルカーレ・リモージュ 2020/05/09-09:19
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[63] 桃山・和樹 2020/05/09-06:49
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[62] ヴォルフラム・マカミ 2020/05/09-02:09 | ||
[61] リューイ・ウィンダリア 2020/05/09-00:14 | ||
[60] バルダー・アーテル 2020/05/08-23:58 | ||
[59] ルーノ・クロード 2020/05/08-23:35
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[58] ルーノ・クロード 2020/05/08-23:31 | ||
[57] リューイ・ウィンダリア 2020/05/08-23:15
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[56] リコリス・ラディアータ 2020/05/08-22:51
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[55] クリストフ・フォンシラー 2020/05/08-22:15
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[54] ルーノ・クロード 2020/05/08-21:53
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[53] ヴィオラ・ペール 2020/05/08-20:58 | ||
[52] カグヤ・ミツルギ 2020/05/08-19:58
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[51] リチェルカーレ・リモージュ 2020/05/08-18:06 | ||
[50] ヴォルフラム・マカミ 2020/05/08-14:26 | ||
[49] タオ・リンファ 2020/05/08-01:39 | ||
[48] 桃山・令花 2020/05/08-00:45 | ||
[47] ヴィオラ・ペール 2020/05/07-22:43 | ||
[46] ヨナ・ミューエ 2020/05/07-15:07 | ||
[45] ルーノ・クロード 2020/05/07-09:46 | ||
[44] リントヴルム・ガラクシア 2020/05/06-23:26
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[43] 桃山・和樹 2020/05/06-01:18 | ||
[42] リチェルカーレ・リモージュ 2020/05/06-01:03
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[41] リチェルカーレ・リモージュ 2020/05/06-00:12 | ||
[40] リコリス・ラディアータ 2020/05/05-23:22
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[39] イザーク・デューラー 2020/05/05-21:08 | ||
[38] クリストフ・フォンシラー 2020/05/05-20:38 | ||
[37] ヴィオラ・ペール 2020/05/05-08:32
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[36] 桃山・和樹 2020/05/05-02:32 | ||
[35] 桃山・令花 2020/05/05-01:57 | ||
[34] リューイ・ウィンダリア 2020/05/04-23:35 | ||
[33] リントヴルム・ガラクシア 2020/05/04-23:31 | ||
[32] ヨナ・ミューエ 2020/05/04-22:36 | ||
[31] ヴィオラ・ペール 2020/05/04-22:34 | ||
[30] タオ・リンファ 2020/05/04-21:13 | ||
[29] クリストフ・フォンシラー 2020/05/04-14:55 | ||
[28] クリストフ・フォンシラー 2020/05/04-14:54 | ||
[27] スレイニー・ティルティエ 2020/05/04-13:37 | ||
[26] ルーノ・クロード 2020/05/04-13:20 | ||
[25] バルダー・アーテル 2020/05/04-10:14 | ||
[24] 桃山・令花 2020/05/04-10:08
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[23] リチェルカーレ・リモージュ 2020/05/04-09:49
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[22] 桃山・和樹 2020/05/04-09:48
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[21] リチェルカーレ・リモージュ 2020/05/04-09:39 | ||
[20] リコリス・ラディアータ 2020/05/04-09:27 | ||
[19] 桃山・令花 2020/05/04-08:59
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[18] 桃山・令花 2020/05/04-08:57
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[17] カグヤ・ミツルギ 2020/05/04-00:27 | ||
[16] 鈴理・あおい 2020/05/03-21:52
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[15] ヴィオラ・ペール 2020/05/03-21:16 | ||
[14] リコリス・ラディアータ 2020/05/03-20:35 | ||
[13] ラニ・シェルロワ 2020/05/03-20:35 | ||
[12] リューイ・ウィンダリア 2020/05/03-20:10 | ||
[11] ショーン・ハイド 2020/05/03-17:38 | ||
[10] クリストフ・フォンシラー 2020/05/03-16:26 | ||
[9] 桃山・和樹 2020/05/03-13:59 | ||
[8] ルーノ・クロード 2020/05/03-12:08 | ||
[7] リチェルカーレ・リモージュ 2020/05/03-11:45 | ||
[6] ヨナ・ミューエ 2020/05/03-11:31 | ||
[5] リントヴルム・ガラクシア 2020/05/03-10:03 | ||
[4] スレイニー・ティルティエ 2020/05/03-07:17 | ||
[3] 桃山・令花 2020/05/03-00:21 | ||
[2] ヴォルフラム・マカミ 2020/05/03-00:06
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