~ プロローグ ~ |
「苦労しているらしいな。取り敢えずは、これでも飲んで休むといい」 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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地獄……そんなものが本当に実在するなんて 神がいるのなら、存在しても不思議ではない……でもやっぱり妙な感覚です 獄卒へは、魔術真名の詠唱と、黒炎解放によって最初から全力でいきます イザナミが振り撒く死をこれ以上許すつもりはありません、情報を少しでも集めるため今回のチャンスは物にしなくては 私とステラは前に出て攻めに集中しましょう メフィストさんに魔力を分けてしまいましたから、魔術は慎重に狙い確実に当てていきましょう 私は疾風裂空閃で獄卒を崩し、連携したステラがそこに追い打ちをかけていきます 7Rを過ぎたら化蛇の力を解放し、渦潮の形で獄卒を捉えます そこをステラのグラウンド・ゼロで文字通り叩き潰してあげましょう |
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【魔】 ヨナ メフィストさん 本当に知らなかったのですか? イザナミには少々苦い思いもさせられていますからね どうにかする手立てがあるのなら地獄でも何処でも行きますよ 仲間が獄卒を誘導した場所を狙いMPを計算しながらNF17からのFN13.20を効率良く放つ ベ まさか生きている間に地獄と関わろうとはな… おいメフィスト 向こうに話を通してないのか!? そういう所だぞ 仕方がない…魔法陣が安定するまでやり合うしかないか 前に出て仲間の範囲魔術が当てやすいよう敵をうまく誘導しながら戦おう 晴明達が現れたら経緯を説明し攻撃を止めるよう頼む 現世を彷徨う『イザナミ』についてお聞きしたいのです どうかお話だけでも |
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レムちゃんやディアナちゃんたちへの呪いをなんとかしたい 罪も罰も あの神が与えるのは違うと思うの 話が聞けるのなら 教えてほしい メフィストさんに よろしくお願いしますと深々と 話を聞いて 戦いにきたんじゃないんです シリウスの言葉にしょんぼり そうね 説得を続けるわ 魔術真名詠唱 シアちゃんと協力して 禹歩七星 鬼門封印での支援と回復を 残り魔力に注意 他の陰陽師と協力して 体力の6割を切った仲間から回復 晴明さんたちが現れればほっと溜息 ハデス様に会いにきたんです この場所を壊しにきたわけじゃないの イザナミのことについて 聞きたくて ハデス様に挨拶 あの力で苦しんでいる子がいます 祓う方法はありませんか 防ぐ方法は? 赤い陰陽図に 心当たりは |
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【魔】 ついに地獄まで絡んできたか…(遠くを見つめる ランキュヌでクリスやシリウスが攻撃している獄卒の耐久を削る あとはリンクマーカーで最大まで命中を上げ仲間を巻き込まないようマッピングファイアで攻撃する いくつか気になるのは… 地獄が重なった原因の殺された八百万の神は何故人間に殺された?動機は? そしてどんな方法で? あと、その八百万の神の詳細 どこで信仰を得ていたのかも知りたい その後神を殺した人間の末路は?子孫はいるのか? 地獄の欠片が生物的な性質を帯びるとの話だが、他にも似たような現象、例えば他にも生物的な性質を帯びることはあるのか? ドクター、メフィストを埋めてどうするつもりなんだろう… |
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地獄の管理者から イザナミの情報を聞き出す事 そのためにも メフィストさんと魔法陣をしっかり守り切らないと リ:どうぞ 使ってください セ:道を開くために 役に立ててくださいな 魔力提供後 お互いに平気?と確認 そのまま 周囲の警戒を 獄卒が現れれば魔術真名を詠唱 リューイは初めに戦踏乱舞をメインアタッカーに セシリアはペンタクルシールドを展開 メフィストの盾 リ:前衛の仲間と連携して動く 獄卒たちをなるべく一か所に集めるよう 気づかれないように誘導 ヒットアンドアウェイで おびき寄せる 敵攻撃は回避かスイッチヒッター セ:前衛とメフィストの間に立ち シールドで護衛とカードで足止め 死角から回り込まれないよう注意 何かあれば仲間に周知 |
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■3 獄卒とメフィストの間に入り、攻撃を妨害する 黒炎は1Rから発動 スキルの使用回数が減る分を補う 拘束状態の敵を優先して撃破 獄卒が多く集まっている所へルーノが飛び込み、禁符の陣で拘束を狙う MP不足なら鬼門封印 ルーノへの魔法攻撃は一度受けて耐性の高さを見せ 物理攻撃に切り替えさせて接近を誘う 囲まれるなら好都合、禁符の陣の範囲に誘導したい 安倍清明達には地獄にも関係のあるイザナミへの対処の為、 管理神に会う必要があると伝え交戦を回避したい ■4 以下について尋ねる ・見るだけで発動するイザナミの力への対処方法 ・ディアナに刻まれた赤い陰陽の図(90話)の意味、ディアナへの影響 ・レムとディアナにかけられた術の解除方法 |
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【魔】 前衛で攻撃全振りで行くよ! 死ななくても、人間の形してるんだ…痛い場所は人間と一緒だよね? 剛袈紅蓮撃でぶちかます! 防御は考えないで攻撃するよ 600年前に女の人に「神おろし」って言うのしてその女の人はどうなったの? まさか、まだ生きてるとか? イザナミとその人、同化しちゃったの? ていうか、イザナミが罪人でもなんでも勝手に人殺しちゃうの、どうにかならないの? イザナミはその女の人の意思で出てきて殺したりしてるの? それとも、その人も制御は出来てないのかな …光帝天姫さん あの人独特の魔術使ってたよね アライブスキルと違うの 何かあると思ってたけど、あの人がイザナミの依り代、ってこと? |
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【魔】 タナトス…イザナミ…何か、分かればいいの、ですが… 魔力が、半分になると、少し不安、ですね ・戦闘 待って、私達は、貴方方の敵では… 話は、通じない、のですね… 魔術真名詠唱 リチェちゃんと一緒に禹歩七星 位置は中衛、基本、全体を見て回復に動きます 仲間が危険な時には九字の印で攻撃し支援 どうしても獄卒が上手く纏まらない時だけ禁符の陣で支援 清明様達に会えたら 私達は、敵ではありません イザナミについて、お話しを聞きたいだけ、なのです お願いします、通してください ・質問 イザナミは何故、殺人をしに、来るのでしょうか あの殺人は、どうしたら止められますか? 会うことは、できますか 天姫さんは、イザナミとどんな関係、ですか? |
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~ リザルトノベル ~ |
●ハデスに会いに行こう 地獄の神と会う指令を受け浄化師は集まった。 「よろしくお願いします」 メフィストに『リチェルカーレ・リモージュ』は深々と頭を下げた。 レムやディアナのことを何とかしてあげたいと思っているのが伝わってくる。 (罪も罰も、あの神が与えるのは違う。話が聞けるのなら、教えてほしい) リチェルカーレの願いを聞き届けるようにメフィストは返す。 「こっちもよろしくでーす」 気のせいか、微妙に顔が引きつっている。 なけなしの良心が痛むらしい。 そんなメフィストを『シリウス・セイアッド』は若干遠い目で見つめる。 (またお前か) ツッコミたい所だったが言っても無駄そうなので黙っていた。 そして浄化師達はニホンの大江山を登っていた。 「タナトス……イザナミ……何か、分かればいいの、ですが……」 山を登りながら『アリシア・ムーンライト』が呟く。これに『クリストフ・フォンシラー』が返した。 「出来ることをやっていこう。幸い、メフィストが地獄の神と伝手があるみたいだし……なんでそんな物があるのかは知らないけど」 そう言うとメフィストに視線を向ける。 (左遷された前任者ねえ……) 「まあ、そこ追求しても仕方ないか」 いま必要なことに集中するように、クリストフは割り切った。 そして皆は、どんどん登っていく。 「緑が多くて気持ちがいいですね」 清涼な空気が満ちる大江山を歩きながら『タオ・リンファ』は心地好さ気に呟く。 大江山は命の気配に溢れており、それでいて迎え入れるように、自然に出来た山道が続いていた。 「マー、あの木に登っていいか!」 物心つく前から大自然の中で狼と育った『ステラ・ノーチェイン』は、いつもよりはしゃいでいる。 彼女の様子にリンファは笑みを浮かべ返した。 「今は指令中ですから。あとで、また機会があれば」 「そっか、分かった。あとでだな!」 今すぐにでも野山を駆け回りたい気持ちを抑え、ステラはリンファに従う。 (浄化師として成長しているみたいですね) 微笑ましい気持ちになりながら、リンファも浄化師として意識を戻す。 (地獄……そんなものが本当に実在するなんて……神がいるのなら、存在しても不思議ではないですが……でもやっぱり妙な感覚です) どこか神話の世界に赴くような奇妙な感覚を覚えながらも、皆と共に目的地に向かう。 その道中、先行して歩くメフィストに問い掛ける者も。 「メフィストさん、本当に知らなかったのですか?」 確かめるように『ヨナ・ミューエ』に問い掛けられメフィストは応える。 「色々と他にもやってたので余裕なかったのですよー」 「本当ですか?」 「マージでーす」 どこかすっとぼけるようなメフィストに軽くため息ひとつ。 彼女の隣に居た『ベルトルド・レーヴェ』は、ヨナの気持ちに同意するように言った。 「確かめる術がないから信じるが……それにしても、まさか生きている間に地獄と関わろうとはな……」 ベルトルドの言葉を継ぐようにしてヨナが続ける。 「イザナミには少々苦い思いもさせられていますからね。どうにかする手立てがあるのなら地獄でも何処でも行きますよ」 とにかく進むしかないということで、皆は前に進む。 とはいえ色々と思う所があったりもする。 「ついに地獄まで絡んできたか……」 遠い目をして『ショーン・ハイド』は呟く。 彼の隣では『レオノル・ペリエ』が考察するように呟いていた。 「地獄の管理って、何してるんだろ。火加減、とかかな……」 これを聞いていたメフィストが応える。 「地獄に落ちた魂の管理とか、地獄を安定化させるために調整しているのでーす」 「安定化ってことは、地獄って不安定なの?」 「地獄が不安定というよりはー、不安定にさせるような凶悪な魂が大勢いるのが原因でーす。アレイスターレベルの魂なら、ごろごろいますしねー」 などと話をしている間に目的地に到着。 「地獄と繋ぐ魔方陣を開くので魔力をくださーい」 メフィストの頼みに浄化師達は応える。 「魔方陣に魔力が必要? よしわかった、いくらでも使っていいぜ!」 全部持って行け、と言わんばかりに応える『ナツキ・ヤクト』に、『ルーノ・クロード』は抑えるように言った。 「……君は程々という言葉を知らないのか」 これにナツキは笑顔で返す。 「どうせやるなら全力だ。イザナミと話すためにも、力を惜しんでる場合じゃないしな」 ナツキの言葉に、出発前にも同様の話を聞き絶句したルーノは懸念を抱く。 (あれは危険だ、問答無用で地獄に送り返すべきだ) その考えは変わらない。だが―― (……しかし、その目的が気になるのは同感だ) 排除するだけではなく、それ以上のことを考えていた。 そして魔力を皆は提供していく。 「どうぞ、使ってください」 「道を開くために、役に立ててくださいな」 メフィストに近付き、『リューイ・ウィンダリア』と『セシリア・ブルー』は言った。 これにメフィストは返す。 「では魔方陣の中に入って下さーい」 メフィストの言葉に従って中に入ると、軽い脱力感と共に魔力が失われていくのが分かる。 「平気? セラ」 リューイは心配するように声を掛ける。 マドールチェのセシリアは魔力が零になると一時的に気を失ってしまう。 それを気にするリューイに、セシリアは笑顔を浮かべ応えた。 「大丈夫。それより、リューイも平気?」 「うん、僕も大丈夫だよ」 くすりとお互い笑い、2人は魔力を提供した。 皆が魔力を提供し終えると魔方陣が発動する。 途端、周囲の気配が変化した。 刃物めいた気配が広がり世界が変質していく。 それを浄化師が実感している時だった。 突如、人型の影の如き何かが現れる。 それを見たメフィストは言った。 「ヤッベーでーす! 地獄の獄卒でーす! 地獄と現世繋いだので排除しに来ましたー! 死者なので死なない相手ですから気をつけて下さーい!」 「侵入者か何かと間違われているのかしらね?」 セシリアの言葉にメフィストは応えた。 「多分そーでーす」 メフィストの言葉に皆のツッコミが入る。 「メフィストさん、事前に連絡とかできなかったんですか!?」 「おいメフィスト、向こうに話を通してないのか!?」 リューイとベルトルドのツッコミに、しれっとメフィストは返す。 「アポなしの跳び込み営業でーす」 これにリューイはがっくりと、セシリアは肩を竦める。 そしてベルトルドは呆れたように返す。 「そういう所だぞ」 ため息ひとつ。 それで意識を切り替えると戦いに向かう。 「仕方がない……魔方陣が安定するまでやり合うしかないか」 同じように、皆も戦闘体勢に移り始める。 だが、なんとか意思疎通をしようと言葉を掛ける者も。 「話を聞いて、戦いにきたんじゃないんです」 リチェルカーレの必死の呼び掛けに、影法師の獄卒たちは応えない。 というよりは、そもそも言葉が届いていないように見える。 それでも言葉を届けようとするリチェルカーレに、シリウスは言った。 「……向こうからみたら立派に襲撃者だろう」 これにリチェルカーレは、しょんぼりするが気を取り直し続ける。 「そうね、説得を続けるわ」 これにシリウスは同意する様に返す。 「話が通じる相手がくるまで、ねばるしかない」 ため息ひとつして黒炎を解放する。 同じようにアリシアも言葉を掛けている。 「待って、私達は、貴方方の敵では……」 懸命なアリシアの言葉も、けれど届いた様子が無い。 これを見たクリストフは言った。 「アリシア、話は通じないみたいだ。とりあえず通じる奴が出てくるまでやるしかなさそうだよ」 「話は、通じない、のですね…」 アリシアは悲しそうに呟くと、浄化師として意識を切り替えた。 そして皆は獄卒との戦いを始める。 「攻撃全振りで行くよ!」 前衛として『ヴォルフラム・マカミ』は積極的に前に出る。 それは魔方陣起動に協力し、魔力が半減していることを考慮してだ。 同じように魔力残量を計算しながら『カグヤ・ミツルギ』も戦いに挑む。 (私の役目は回復と、攻撃。メフィストに魔力半分渡したから、使える天恩天賜は……魔方陣が安定するまでなら、十分) 魔力の配分を考えながら戦闘手順を組み上げていく。 同じように皆も戦闘手順を組み上げる中、ルーノが声を上げた。 「獄卒はメフィストを狙っているようだ。集まって来た所で戦力を集中しよう」 ルーノの呼び掛けに皆は応じ、獄卒が集まってくるまで待ち、一気に戦力を叩きつけるべく準備する。 リチェルカーレとアリシアが禹歩七星で皆の機動力を上げ、ルーノは禁符の陣を使った拘束の準備に入る。 同時に、一斉に攻撃を叩き込めるよう配置を取り、それらが巧く行く隙を作るため、ベルトルドは黒炎魔喰器である竜哭を解放した。 ここまでの流れは非常に良い。 魔力残量も考慮し、敵の集中と一斉攻撃へと繋げる動線も出来ている。 それが出来ていなければ苦戦する所だったが、浄化師達の戦いの巧さが優勢を導いた。 獄卒がメフィスト目掛け集まってくる。 十二分に集まった所で一気に戦いは始まった。 先行してシリウスとベルトルドが跳び出す。 倒すことよりも一か所に集めることを意識して攻撃を繰り出すと、獄卒の足が止まる。 迎撃するように獄卒は攻撃を返すが、そこに残りの浄化師達が跳び込んでいく。 クリストフはシリウスの死角から踏み込んでくる獄卒の攻撃を捌き、援護するようにショーンの狙撃が叩き込まれる。 連携した攻撃で獄卒の動きが止まった所に、ルーノが踏み込み禁符の陣で纏めて拘束。 そこに援護に向かってきた獄卒をナツキが抑え、横手から踏み込んでくる相手をリューイが対応。 リューイは戦闘乱舞で皆の戦意を上げたあと、セシリアと連携して獄卒を翻弄するように動く。 浄化師達の動きに不利を悟った獄卒達が一端距離を取ろうとしたが、ベルトルドが竜哭の特殊能力を発動し阻止する。 竜の咆哮の如き撃音で動きが止まった獄卒達に、間髪入れず追撃が入る。 「死ななくても、人間の形してるんだ……痛い場所は人間と一緒だよね?」 ヴォルフラムは獄卒達に跳び込むと、剛袈紅蓮撃。 急所目掛け思いっきり叩き込んだ。 防御を捨て放った一撃は会心の一撃となる。 獄卒は堪らず膝を屈し、その間にカグヤが、初手の攻撃で傷を負った仲間を天恩天賜で回復。 その間も浄化師達は攻撃の手を休めない。 「ステラ、あなたは一撃を当てることに集中してください。そこまで私が繋げます!」 黒炎解放し、初手から全力のリンファは、ステラと連携して動く。 (イザナミが振り撒く死をこれ以上許すつもりはありません、情報を少しでも集めるため今回のチャンスは物にしなくては) 確実に情報を得るためにも全力を尽くす。 リンファは黒炎魔喰器である蒼滅呪刀・化蛇を振り抜き特殊能力を発動。 振り抜きの動きと合わせ放出された黒炎が渦潮へと変わり、獄卒を飲み込み一箇所へと集める。 そこにステラが跳び込んだ。 「いっくぞー!」 気合と共に巨大ハンマー、スタンピングハンマーを振り上げるとグラウンド・ゼロを叩き込む。 スタンピングハンマーを叩きつけた相手だけでなく、周囲にいた獄卒も、巻き起こした風圧により地面に叩きつけた。 獄卒を集め動きを止めた所で、範囲攻撃が出来る狂信者の浄化師が一斉攻撃。 レオノルがソーンケージで作り出した魔力の茨で絡め取ると、そこにヨナがエクスプロージョン。 連続攻撃に、獄卒達は明らかにボロボロだった。 それでも動く獄卒達に、浄化師達はさらに攻撃を重ねようとする。だが―― 「悪ぃが、それぐらいにしてやってくれ」 突如、聞こえてきた男の声が浄化師達を止めた。 視線を向ければ、そこに居たのは芦屋道満。そして―― 「矛を収めてください。彼らは地獄を乱そうとする人物ではありません」 薔薇十字教団ニホン支部室長である安倍清明が獄卒達に声を掛けた。 すると獄卒達は、戸惑うような様子を見せたあと、それまでの敵意を収める。 「貴方達は……?」 リンファが警戒するように問い掛けると安倍清明が応えた。 「今まで会ったことのある方もいますが、改めて。教団ニホン支部室長安倍清明。そして彼は私のパートナーである芦屋道満」 「ニホン支部の室長!? そんな方が何故ここに」 リンファの問い掛けに道満が応えた。 「お前さんらが戦ってた、獄卒の生まれ変わりだからだよ。ボスのハデスから襲撃受けてるって連絡が来たから確認しに来たら、お前さんらがいたんで止めに来たってわけだ」 「獄卒の生まれ変わりって、獄卒自体そもそも死者なのにそこから生まれ変わるの……?」 道満の言葉を聞いてレオノルが首を傾げる。 「一度死んで獄卒になってまた生まれ変わり……? なんかこんがらがってきた」 これに道満が返した。 「獄卒になるのは訳ありで地獄に落ちたヤツラでな。地獄の安定を手伝う獄卒になる代わりに、ひとつ願いが叶えられるんだ。俺達の場合は、500年獄卒を務める代わりに記憶を維持したまま人間に転生させる願いを叶えて貰って、今ここに居る訳だ」 道満の話を聞いていたリチェルカーレは、自分達の事情を説明する。 「ハデス様に会いにきたんです。この場所を壊しにきたわけじゃないの。イザナミのことについて、聞きたくて」 同じようにアリシアも言った。 「私達は、敵ではありません。イザナミについて、お話しをお聞きしたいだけ、なのです。お願いします、通してください」 そしてルーノも続ける。 「地獄にも関係のあるイザナミへの対処の為、管理神に会う必要がある。戦いは目的ではないので、会わせて貰えないだろうか」 そしてヨナも言う。 「現世を彷徨う『イザナミ』についてお聞きしたいのです。どうかお話だけでも」 4人の話を聞いた道満と清明は応えた。 「そういうことか。それならボスも話を聞くだろ」 「ええ。むしろアレが解決するなら、協力しても良いほどです。と――」 清明はメフィストが起動している魔方陣を見て言った。 「ハデス様が来られます。まだこちらの事情が分からない状態で御出でになるので、気を強く持って下さい」 清明の言葉の意図を訊くより早く、魔方陣は地獄と現世を繋げた。 その瞬間、浄化師達はあまりにも強大な気配に包まれる。 天と地、世界の全て。それが塵芥にすら満たない極小と思えるほど、現れた気配は強壮だった。 あまりにも果てが見えない。それすらも本体が放つ気配の欠片ですらない。 ましてや本体など見ただけで発狂する。そう実感した瞬間―― 「すまぬ。地獄を乱す者かと思い驚かせた」 穏やかな声が、乱れた浄化師達の心を元に戻す。 視線を向ければ、そこに居たのは1人の青年。 絹糸のように白い肌と夜闇のような黒髪。そして真紅の瞳をしている。 「私がハデスだ。よく来た、幼子達よ。そして――」 メフィストに遠い目を向けると、ハデスはどこか疲れた様子で言った。 「何で貴方が居るんです。先輩」 「お久しぶりでーす。ハーデスー」 お前もう自分の素性隠す気ないだろ、という勢いで、メフィストは気安い声で言った。 「現世(こっち)に来たんですから、事情は分かりましたよねー?」 「ええ、読み取りました。こちらの不手際の責任もありますし、尋ねたいことがあれば答えましょう」 「さーすがでーす。じゃ、頼みまーす」 「他人事みたいに言わないで下さい。貴方も当事者でしょう」 軽くため息ひとつ。 いつもの事だというような表情を見せたあと、ハデスは浄化師達に向き直り言った。 「訊きたいことがあれば話してみなさい。答えられるものは、答えよう」 ハデスの申し出を受け、浄化師達は問い掛けを始めた。 ●天姫について 「そうですね、では……」 ハデスに促され、まずはリンファが問いを口にした。 「光帝・天姫という浄化師がいます、彼女の力をこの目で見ました。とても尋常ではありません……魔女でさえあれほどの力を出せる者は相当限られるでしょう。この女性、何者でしょうか……?」 リンファの問い掛けに合せ、ヨナも同様に訊いた。 「彼女は、一介の浄化師としては異常ともいえる能力の持ち主で、黒炎を操ります。また彼女の周りには不思議とイザナミが現れます。ですから、まずは彼女をよくよく調べてみる必要があると思っているのですが、これは正しいでしょうか?」 2人の問い掛けを聞いたハデスは、言葉を選ぶような間を空けて応えた。 「あの娘のことを話すのであれば、まずは地獄の破片が現世に残ってからの話をする必要がある。そのことについては、汝らは知っているのか?」 これにメフィストが返す。 「私が知っている範囲のことは話してまーす。それと八百万の神を巡って当時のことを知っている子から話を聞いてるみたいでーす。その後のことが知りたいのでーす」 「そこまで知らせているのですか……ならば……」 伝えるべき情報を選択しているハデスに、ヴォルフラムが尋ねる。 「600年前に女の人に『神おろし』って言うのしてその女の人はどうなったの? まさか、まだ生きてるとか? イザナミとその人、同化しちゃったの?」 「ふむ……」 話を纏めるような間を空けてハデスは応える。 「少し話にズレがあるようだから正確に話そう。まず600年ほど前にニホンのキョウトと地獄が重なった。これだけならば我らが調整すれば済むだけだったが、そこで八百万の神が殺された」 この話を聞いて、ショーンが眉を顰め反応するが、話を進めるために今は黙っている。 それにハデスは気付くが、話を進めるため続けて言った。 「八百万の神が殺され祟り神となることで地獄と共鳴し、現世と地獄の結びつきが強くなった。ここで私が慌てて補修に向かったのだが、完全には出来ず地獄の破片が現世に残ることになった」 「その時点で、どうにかできなかったのですか?」 リンファの問い掛けに、ハデスは静かに応えた。 「できぬ。我ら管理神は、それぞれ干渉できる範囲がある。それを越えて行えば、かえって世界にひずみが出来かねん」 強すぎる力を持つが故の苦悩を飲み込みながらハデスは続ける。 「話を戻そう。地獄の破片は現世に残ることで、その性質に沿って悪人を裁いていった。地獄であれば何度死のうが甦るため問題なかったが、現世では一度死ねば終わりだ。だが、地獄の破片はシステムでしかない故、そうした部分の融通が利かぬ。結果、際限なく死者が溢れる所だったが、それをニホンの八百万の神が名を与え存在を縛ることで安定させた。これが今から500年ほど前のことだ」 知られていない歴史をハデスは語り続ける。 「その後、安定化させたとはいえ、危険であることには間違いがないイザナミを、ニホンの陰陽師に預けることで信仰させ、より安全に飼いならすことが出来るようになった。そのままであれば問題なかったのだが……」 頭痛を堪えるような表情でハデスは続ける。 「人の欲は、八百万の神の想定を超えていた。イザナミを信仰することで、ある程度イザナミの力を使えるようになった彼らの一族は、それを使って暗殺を行い富を得ていった。せめてそれで満足すればよかったのだが、代を重ねるごとにより大きな力を求めるようになり、結果『神おろし』という禁忌を犯した」 「……神おろし、した?」 ハデスの言葉を聞いて、カグヤは言った。 「巫女……女性に神を憑けて、その女性と交わると、生まれる子は神の力を持って生まれる……眉唾だけど。無理やりして、滅んだ」 それはカグヤの先祖である幽霊からの知識。 (600年以上前ともなると、流石に『幽霊さん』も噂程度しか知らなかった。いきなり盛り返したと思ったら、一夜で滅んだ一門が居た、らしい。ニホンのミツルギ本家なら、何か、あるかもしれないけど……調べるより、聞いた方が早そう) そう思って話を聞こうとすると、それより早くハデスは言った。 「『神おろし』とは、神格存在を取り憑かせることだ。これにより、取り憑いた神格との結びつきが強くなり、その状態で子を成せば、生まれた時から神格存在と縁を結んだ者が生まれる」 「イザナミと結ばれた者……まさか……」 ハデスの言葉を聞いて、リンファはひとつの推測が浮かぶ。 それは他の浄化師も同じだ。 「……光帝・天姫さん、あの人独特の魔術使ってたよね。アライブスキルと違うの。何かあると思ってたけど、あの人がイザナミの憑代、ってこと?」 ヴォルフラムの問い掛けに、ハデスは返すべき言葉を迷う。 そこにアリシアは、応えを求め言った。 「天姫さんは、イザナミとどんな関係、ですか?」 「光帝・天姫はイザナミの憑代であり、そのものであるとも言える」 ハデスの応えに、皆は理解するような間を空ける。 そしてさらに浮かんできた疑問をベルトルドは口にした。 「現出に至る経緯は分かった。ここ最近のあれに関わってきた者として気になるのは、非常に人間的な判断で死を撒いている事。これは何故だ。その独善さに悪意すら感じる。それは天姫がイザナミの憑代であるからか? もし、天姫の意思ではなく、取り憑いているイザナミのせいであるなら――」 決意を飲み込むベルトルドに続けて、クリストフが問い掛けた。 「天姫ちゃんがいる時にも、イザナミは現れたことがある。イザナミって人格あるみたいだけど、人型を取ったりする? 自分の一部を切り離して行動させたりとか。天姫ちゃんがそれじゃないかなと思ってるんだけど違うかな」 クリストフの問い掛けに続けて、ナツキも言った。 「他の八百万の神様みたいに、イザナミにだって自分の意思はあるんじゃねぇかな。それなら話も聞かずにどうこうってのは、できればしたくないんだ」 ナツキの言葉に、ハデスは慈しむように目を細めると、皆の問い掛けに応える。 「まず、イザナミ自体には意思はない。疑似的な八百万の神として括ってはいるが、あれは地獄というシステムであり概念の破片。ゆえに、意思があるように見えるのは全て、光帝・天姫のものだ」 そこまで言うと光帝・天姫の状態を説明する。 「今の状態は、イザナミという疑似的な八百万の神と、光帝・天姫の肉体を、光帝・天姫の精神が繋いでいるような状態だ。それゆえ、イザナミと光帝・天姫の肉体を別々に切り離した状態で、個別に操ることも出来る。例えるなら、幽体離脱のような状態だ」 ハデスの言葉を聞いてヴォルフラムは言った。 「イザナミは光帝天姫さんの意思で出てきて殺したりしてるの? それとも、その人も制御は出来てないのかな」 「本人の意思だ」 端的なハデスの答えに皆は黙ってしまう。そこにレオノルが尋ねる。 「ところでイザナミの信者ってどこにどれくらいいるの? どんな人達なの? 話聞くことってできない?」 「今は居ない。関わる者は犬の1匹まで、全て光帝・天姫が殺めた」 ハデスの応えを聞き、カグヤは呟くように言った。 「……光帝・天姫は、初めから『イザナミ』が『火』に弱いの、知ってた。イザナミはカグツチ……火を産んで火傷で死んで、死神になった」 「光帝・天姫の血縁は1人も残っておらぬ。それが答えだ」 天姫の殺伐とした背景に皆は黙ってしまう。 そこにアリシアが祈るように言った。 「イザナミは……天姫さんは、何故、殺人をしに、来るのでしょうか。あの殺人は、どうしたら止められますか? 会うことは、できますか」 「光帝・天姫が望むなら、汝らに会うだろう。そして殺人を犯す理由は、光帝・天姫が人を信仰しているからだ。止めることは出来るだろう。それを本人も望んでいる」 「どういう、ことですか?」 アリシアの問い掛けにハデスは応えた。 「光帝・天姫は、人がより高みに登る手助けになることを願っている。故に、その道を歪める罪人、障害となる神やベリアル、そして使徒は排除対象と見なしているのだ」 ハデスの言葉を聞いてシリウスは尋ねる。 「それが事実なら、イザナミが教団の牢獄に現れるのは、教団関係者を意図的に断罪しているということか?」 「そうだ」 ハデスの答えを聞いたクリストフは続けて問う。 「イザナミも天姫ちゃんも、ニホンで産まれたのにこっちにいるのは何故?」 「一族を滅ぼし1人になったあの娘は世界中をさまよい、その過程で教団に己が求めていた人の姿の可能性を見出したのだ」 そこまで聞いてシリウスは、さらに尋ねる。 「イザナミと遭遇した時の対処法は?」 これにハデスは応えていった。 ●イザナミの対処法 「まず汝らであれば、攻撃しない限り向こうから害を加えて来ることはあるまい。あれは、汝らを慈しんでいる故」 「攻撃しない限りということは、攻撃すると反撃してくるということですか?」 セシリアの問い掛けにハデスは応える。 「光帝・天姫に攻撃する意思がなくとも、イザナミの防衛機構が自動的に排除しようとする。光帝・天姫はイザナミと同化している故、もはや自然死は無い。本人が死のうと思っても、イザナミと切り離さぬ限りは死ねんのだ」 「……それは、本人は死を望んでいるということでしょうか?」 セシリアの問いに、ハデスは言葉を選び応えた。 「光帝・天姫は自身が人の側である事に執着している。その事を証明し自身に言い聞かせる為に人の価値観にそった罪を裁いているのだ。最早あれにとって、罪を裁くことが人に寄り添う事と同意。だが長き時を独りで生きることで、自分の持つ罪の原理が人のそれから乖離してきている事に気づき、人の側である事に限界が来ている事を自覚しているのだ」 ハデスの応えを聞いたセシリアは、それを飲み込み理解した上で、対処法を問い掛けた。 「イザナミが現れることを事前に知ることはできますか?」 同様のことをレオノルも尋ねる。 「あとさ、擬似的な神って神とバレないぐらいに人間に擬態出来るの? そうだとして、見分けることは出来る? 例えばエレメンツの魔力探知とかでさ」 これにハデスは対処法を応えていく。 「イザナミが現れることを事前に知ることは不可能ではない。現れる際には特有の魔力が満ちるので、直前であれば可能だ。擬態している場合も、魔力探知や、それに類する魔術道具を使えば知ることが出来るだろう」 ハデスの答えを聞き、続けてセシリアは尋ねる。 「イザナミの物理攻撃でも魔術でもないあの力を、防ぐことは可能ですか? 完璧にでなくても、対抗する方法があれば教えてください」 同じようにルーノも尋ねた。 「見るだけで発動するイザナミの力への対処方法を教えて貰えないだろうか?」 これにハデスは応えた。 「『邪視』を防ぐには、イザナミと同格以上の八百万の神の力を元に、反射を行えれば可能だ。あるいは、死の対象を逸らす身代わりとなる物を用意すれば防ぐことは可能であろう。そうだな――」 ハデスは縁を読むように一部の浄化師を見詰めたあと続けて言った。 「汝らの関わった、アジ・ダハーカの娘であれば可能であろう」 そこまで応えを聞き、ベルトルドが混本的な対処を尋ねる。 「イザナミは地獄に戻すことは出来ないのか? 元々地獄がごたごたしていたのが原因なんだろう?」 「出来ぬ」 即座にハデスは応えた。 「あれは変質し過ぎている。下手に地獄に戻られると、地獄全体が影響を受けかねん。それに安定化させるため八百万の神が、あれを現世に強く縛った故、いま戻そうとすれば、イザナミに引っ張られて現世が地獄に落ちかねん。それは見過ごすことは出来ぬ」 ハデスの結論としては、対処は出来るが地獄に戻すのは無理、とのことらしい。 それらを聞いた上で、リチェルカーレが尋ねる。 「あの力で苦しんでいる子がいます。祓う方法はありませんか。防ぐ方法は? 赤い陰陽図に、心当たりは?」 同様にベルトルドとルーノも尋ねた。 「あんな子供に対して……イザナミの呪いに対処する方法はないのか」 「レムとディアナにかけられた術の解除法は無いのだろうか?」 これらについてハデスは応えていった。 ●レムとディアナについて 「まず、千を超える死を得ねば死ねぬ娘についてだが、可能性はあるが解除はさせぬ」 「どうにかならないのか? レムもディアナも放っておけないないんだ」 ナツキの言葉に、ハデスは地獄の管理神として応えた。 「レムという娘の結果は、自らの行いが帰って来ただけだ。応報でしかない」 「そんなの、だからって――」 必死に呼び掛けるナツキに、地獄の管理神として厳格に応える。 「罪は罪。理由があれば許される物ではない。それに、その娘にとっては、今の状態の方がまだマシだ」 「どういうことだよ……」 聞き返すナツキにハデスは続ける。 「はっきり言う。今その娘が本来の意味で死ねば、確実に地獄に落ちる。言っておくが、地獄で味わう苦痛は現世の比ではないぞ」 沈黙が満ちる中、ハデスは言った。 「いま地獄に落ちたなら、まずは自分の行いが原因で死んだ者達の人生を一から本人として生きた上で、同じように殺される。殺された本人として『生きる』以上、本人が感じた喜びも幸せも苦しみも悲しみも、すべて同じように感じた上で殺されるのだ。そうして正しく自分が成したことを実感した上で、本当の意味で罪を悔いるまで、地獄から解放され転生することは無い」 地獄の理を口にすると、続けてレムが解放されない理由を語った。 「そもそもレムという娘に掛けられたのは、死という結果だ。分類するなら未来確定の運命操作に近い。それを覆すなら、結果の改ざんを成さねばならぬが、それをするためには時間に干渉する能力が要る。死という結果を与えたイザナミ自身にすら、もはや解除は出来ぬ。仮にできたとしてもタイムパラドクスが起る故、世界が変質する。それはさせられぬ」 そこまで言うと、レムがなすべき事を告げる。 「もしレムという娘を、本当の意味で救いたいなら、自ら犯した罪と業を、生きている内に少しでも軽くするような生き方をさせよ。レムという娘に掛けられたのは、呪いであると同時に祝福にもなり得る。私が応えられるのはそれだけだ」 レムについてハデスは応えると、続けてディアナについて応える。 「ディアナという娘に掛けられた、朱の陰陽図についてだが、あれはイザナミと天姫の魂を結びつけた禁忌呪の具現だ。刻み込まれると宿主の身体と魂をイザナミとの同一化に耐えられる存在に変性させる。すでにイザナミの権能の一部となっている故、本体の死亡以外に解除は不可能だ」 「それは、本人は死を望んでいるということですか?」 「そうだ」 セシリアの問い掛けにハデスは応えた。 「より正確に言うなら、自らが死ぬことでイザナミの力を譲渡するつもりだ。先ほども言ったが、あの娘は人間を信仰し、人間の側にあることを望んでいる。だがそれが叶わぬと自覚し、ディアナという娘をイザナミの譲渡先に選んだのだ」 「なんで、彼女を選んだんですか?」 リューイの問い掛けにハデスは返す。 「ディアナという娘の特殊な生い立ちに自分を重ねたのが一番の理由だ。その上で、自分が独りで長き時を生きていることで人の側から外れていったことを考慮し、同じように長き時を共に生きられる者がパートナーになれるよう、レムという娘を引き合わせたのだ」 「……そんな勝手な」 憤るようなヨナの言葉にハデスは応えた。 「本人にとっては、それが必要なことだと思っているのだ。もっとも、生れ落ちる前からイザナミと縁が結ばれていたのだ。その影響も幾らかあろう。イザナミの、地獄の破片の能力の影響を受け、生まれた時から人の悪を見ただけで実感できていただろうからな」 つまりそれは、あらゆる人間の悪を見ただけで理解できるということでもある。 「イザナミや光帝・天姫。そしてレムとディアナについて私が話せるのは以上だ。他に聞きたいことは無いか?」 この呼び掛けにショーンが返した。 ●その他の質問 「幾つか訊きたいことがある」 ショーンは疑問となる事柄を纏めて尋ねた。 「地獄が重なった原因の殺された八百万の神は何故人間に殺された? 動機は? そしてどんな方法で? あと、その八百万の神の詳細。どこで信仰を得ていたのかも知りたい。 その後、神を殺した人間の末路は? 子孫はいるのか? 地獄の欠片が生物的な性質を帯びるとの話だが、他にも似たような現象、例えば他にも生物的な性質を帯びることはあるのか?」 ショーンの問い掛けに、ハデスはひとつずつ応えていく。 「まず地獄の欠片以外に、似たような現象が起るのかについて話そう。結論から言えば、起り得る。例えばだが、天界の欠片が同じようなことを引き起こす可能性はあるだろう」 「天界って、天国ってことか?」 ナツキの問い掛けにハデスは返す。 「そう思って貰っても良い。天界の欠片が生物的な性質を得たなら、それは『楽園』の能力を持ったモノになるだろう」 「『楽園』、ですか?」 聞き返すアリシアにハデスは説明する。 「天界では、魂の望みに応え、望むものが必要なだけ造り出されるのだ」 「なんでも、ですか?」 驚いたように聞き返すリューイにハデスは言った。 「そうだ。もっとも天界には『神』を除けば魂しかおらぬゆえ、肉体的な欲求は過去の残滓でしかない。それゆえ、必要最低限のものしか望まぬし造り出されぬ。だが現世にあったなら、おそらく欲望のまま際限なく望むようになるだろう。そうなれば、より多くのものを得るために代償が必要となり、恐らくイザナミ以上の混乱が引き起こされるだろう」 代償と引き換えに無限に望むものを造り出す何か。 そんなものが生まれ出る可能性があるとハデスは応えた。 続けて、残りの質問に応えようとする。そこで道満が口を挟んだ。 「ボス、それについちゃ、俺達が話しても良いか? 当事者なんで説明しときたい」 「分かった。任せる」 ハデスの許可を得て道満は話し始めた。 「地獄が重なった原因の殺された八百万の神が殺された理由だが、人間の権力闘争だ」 「どういうことだ?」 聞き返すショーンに道満は続ける。 「今ニホンは武士が支配階級だ。だが昔は、八百万の神を祭る祭司が支配階級でな。当時、中央で権力を集めていた祭司の一族が、各地の八百万の神の全てを自分達で祭ると言い出しやがった。要は、全ての八百万の神を祭るって立場を利用して、自分達が絶対的な支配者になろうとしたわけよ。で、当然中には反発する者もいた。それを押さえつけるために、反発する人間を『征伐』して皆殺しにしようとした。それを止めようとして殺されたのが、今キョウトの守護神になってる玉藻ってわけだ」 道満の応えに、新年の初詣指令に関わった浄化師達は特に驚く。 「あの方とはお会いしましたが、生身でしたよ」 「祟り神になったあと、生身の自分の身体を造ったんだよ」 ヨナの言葉に返したあと、道満は続ける。 「話を跳ばすと分かり辛くなるから、順繰りに話すぜ。当時、祭司の奴らは話し合いでカタをつけようって言ってきた。だから玉藻の夫である俺が娘である葛葉を連れて祭司共と話をつけに向かった」 「……夫?」 シリウスが訝しげに聞き返すと道満は説明した。 「前世の話だ。当時俺はヒューマンだったが、まぁ色々とあって玉藻を口説き落として夫婦になって子供もできた訳だ」 「子供って、出来るのか?」 ナツキの問い掛けに道満は返す。 「八百万の神との間に人間が子供を作れた例はほとんどないが、まぁ珍しい一例ってヤツだ。つっても似たような話なら、お前さんらライカンスロープも同じだぜ」 ナツキに視線を向け道満は言った。 「八百万の神の力を受け人化できるようになった動物、『眷属』とヒューマンが契りを結んで生まれたのがライカンスロープだ。言ってみりゃライカンスロープってのは、八百万の神の系譜に連なる。っと、話が逸れたから戻すぞ」 一息間をおいて道満は続ける。 「とにかく、俺と娘で話し合いに向かって祭司共とやり合っている内に、向こうは騙し討ちで玉藻の信仰者を皆殺しに来やがった。それを玉藻は止めようとしたが止められねぇでな。目の前で何百年も一緒に暮らしてきた一族を皆殺しにされた。止めようにも奴らは、祭司の立場を利用して集めていた、八百万の神の肉体の一部を加工して作った武器を持ってやがったからな」 当時を思い出しているのか苦い顔をしながら続ける。 「玉藻は目の前で家族といえる信仰者を皆殺しにされて、怒り狂って暴れたらしい。それを抑えようとして勢い余って殺しやがった。そのせいで怨念を抱えたまま死ぬことで祟り神になり、地獄と共鳴して現世と重ねちまった挙句に呪いを撒き散らした。その呪いを受けて、玉藻を殺した奴らは全員鬼になって共食いして全滅した。そこで終われば、まだ良かったんだがな……」 ため息ひとつ吐いて続ける。 「憎悪に取り憑かれた玉藻は祟り神として呪いを撒き続けた。そのせいで妖怪が生まれるようになっちまった。しかも玉藻の憎悪の影響を受けて狂暴化までしちまった。情けねぇ話だが、そこでようやく俺は事の顛末を祭司のヤツラから聞かされてな。自分達じゃどうにもできないから、夫である俺と娘である葛葉にどうにかしろと言ってきやがった。で、俺と娘が現地に戻ると、ニホンの八百万の神の纏め役である、なんじゃもんじゃ様とわだつみ様のお蔭で、玉藻は鎮められてた。だが呪いは残ってたんでな。それを放置するわけにはいかないんで、俺が全部取り込み鬼の王、朱天になった。今だと酒呑童子って言われてるけどな」 伝説の当事者が当時を語る。 「朱天になった俺は、そのままだと暴走して手当たり次第に皆殺しにしちまいそうだったんでな。それを防ぐために――」 「前世の私が殺しました。相討ちの形ですが」 清明が続けて説明する。 「それにより呪いはなくなり、玉藻(お義母)さんの記憶を封じ守護神として祭り上げることで解決したわけです。その後、私と道満(お義父)さんは地獄に落ちたあと獄卒になり勤め上げたあと転生した訳です」 「おい、なに勝手に玉藻のこと義母呼ばわりしてやがる。まだ葛葉とのことは認めてねーからな!」 「そんな。私が勝ったんですからいい加減認めて下さい」 「相討ちだろーが!」 話が逸れそうになったので、クリストフが声を掛ける。 「事情は分かったよ。それじゃ、今は問題はないってことだね?」 「いや、大有りだ」 道満は苦い顔で応える。 「アークソサエティの枢機卿共がニホンを植民地にするため、玉藻の娘の葛葉を浚って目の前でべリアル化させる計画を立ててやがる。他にもキョウトを焼き討ちして住人を皆殺しにすることで玉藻を祟り神に戻す気らしい。それを防ぐために俺達は動いてるが、何かあった時は力を貸してくれ」 全ての話を聞き終えたあとハデスは言った。 「他に訊きたいことはあるか?」 これにレオノルは言った。 「とりあえずメフィストさんは埋めようよ」 「なんでですかー!」 「えっ、メフィストさん埋めるの一大ブームなんじゃないの!?」 (ドクター、メフィストを埋めてどうするつもりなんだろう……) レオノルにツッコミを入れられず心の中だけで思うショーン。 するとハデスは言った。 「承知した」 「ノー!」 ハデスが視線を向けるとメフィストの足元に穴が開き、穴の端に指を掛けながらメフィストは言った。 「なに地獄に落とそうとしてるんですハデスー!」 「いい機会ですから一回来て下さい。先輩の残したスパゲッティコードが多すぎて大変なんです。改修するんで手伝って貰います」 「デスマーチは嫌でーす!」 叫びつつ、穴が広がり地獄に落ちるメフィスト。 放置するのも何なので、一応ハデスに聞くと―― 「しばらくしたら戻すから心配せずともよい。今回は迷惑を掛けた。詫びではないが、イザナミや玉藻の件が片付いたなら、私も力を貸せることがあれば貸そう」 ハデスは浄化師達を労うのだった。 ちなみに数日後。 「酷い目に遭いましたよー」 しれっと教団本部に戻っているメフィストだった。
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*** 活躍者 *** |
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[16] タオ・リンファ 2020/06/22-23:35
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[15] カグヤ・ミツルギ 2020/06/22-21:03
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[14] リューイ・ウィンダリア 2020/06/21-22:56
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[13] ルーノ・クロード 2020/06/21-22:25
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[12] ヨナ・ミューエ 2020/06/21-19:50
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[11] クリストフ・フォンシラー 2020/06/20-23:23 | ||
[10] リチェルカーレ・リモージュ 2020/06/20-22:42 | ||
[9] ルーノ・クロード 2020/06/20-17:46 | ||
[8] ヴォルフラム・マカミ 2020/06/20-15:49
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[7] ショーン・ハイド 2020/06/20-10:02
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[6] リューイ・ウィンダリア 2020/06/20-07:52
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[5] タオ・リンファ 2020/06/20-03:57
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[4] ヨナ・ミューエ 2020/06/19-20:50
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[3] クリストフ・フォンシラー 2020/06/18-22:43
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[2] リチェルカーレ・リモージュ 2020/06/18-22:13
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