~ プロローグ ~ |
虚栄の孤島。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【魔】 …誰かと思えば どのツラ下げて デイムズへの交渉へいく どういうおつもりですかデイムズ卿 先日のご醜態、お忘れでないでしょうに 嫌味でも何でもない 事実に基づいて率直に提案させて頂こう ここは貴方が殺そうとしたオクトの、場所だ …先日の件、忘れていない人間も多い 貴方が堂々とこの島を巡れば他の作業員の憎しみの対象になりかねない もっとはっきり言おうか? あんたを殺したいって憎悪で周りの作業効率がさっきっから落ちてんだ 部下連れて固まって整地作業してくれ それがお互いのためだろう 意地でも城や中枢部を探らせてなるものか ドクターの提案に首を傾げ 堀に橋をかけるなら外しやすいものが良いかと 城は要塞の役割も果たしますから |
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この島、自然溢れる、良い所だと思います 手を入れて、人と自然が、共存できる場所に、なるといいですね 果樹園、薬草園、食も彩られますし、診療所の役に立ちます、ね リチェちゃんの言葉に頷いて 野生動物が、畑を荒らすのは、エサとなる物がないから、ですし 動物達の餌場を、人間が荒らさなければ…棲み分けは、できると、思います 地質を調べてみて、この島では何を育てるのがいいか考えて 穀物も野菜も、作れると、いいのですけど 土地が肥沃になるように、よい肥料が作れるよう、頑張ってみますね 奴隷だった方達の中に、農業に従事してた方は、いらっしゃらないでしょうか その方達と、畑を作れたら 余裕があれば、お城の庭園も、お手入れしたいです |
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【魔】 新しい国作りのお手伝いなんて どきどきする 一緒に頑張れたら嬉しいな 顔合わせの時に 自己紹介と共によろしくお願いしますとぺこり 果樹園とか薬草園とかができたら素敵よねとシアちゃんと でもまず 生活環境を整えないと 綺麗な水がすぐ手に入るように とりあえず共用の井戸を幾つか 住居の周りに 後は水源から 農業用の水を引けたらいいな レオノル先生 水回りの整備を? 用水路みたいなものも 一緒に考えていただけませんか? オクトや開拓民の皆さんの手伝いをしながら 健康診断も 体の具合はどうですか? 怪我や病気はありませんか? シリウスの顔色に気づいて慌てて もう!休憩はちゃんと取ってねって言ったのに シリウス 夏は辛いんだから 無理しちゃだめよ |
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開拓の最初の最初だから、まずは開拓をしやすい環境づくりが必要よね 私達は、各地点を結ぶ道路関係のインフラ整備を中心にお手伝いしましょう 今回は魔女の助力があるから運搬自体はかなり楽になるとはいえ、いつもそうとは限らないもの しっかりした道路があるに越したことはないわ 建物の建設地やお城など、それぞれの開拓場所を回って物資や食料を運搬、補給 進捗の確認なんかもしておきたいわね 特に自警団の屯所になる予定の所は、開拓時の拠点としても使わせてもらって そこへ寄った際に欲しいもの、不足しているものや要望なんかを聞いてまとめましょう 用意できるものは用意して、今すぐに無理なものは今後の課題ということで上にお願いしておく |
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新しい国作りの手伝いを まずは暮らしやすい場所作り 住む場所がちゃんとしていないと 不安だと思うから 何か 新しい国への提案もできたら 住居の建設や修繕の手伝い 傷みの少ない場所なら 手を入れたら住めるかな 住宅地予定の場所を この国の人と手分けして見周り リューイや屋根や壁の修理 体が小さいので狭い場所を率先して セシリアは材料を運んだり 運ばれてきた布や食料を配ったり 周りの人間と協力して作業 セ:カルシール様も連れてきたらよかったわね リ:父さんを?どうして? セ:お屋敷で椅子やら棚やら作っていたでしょう ここで作ったら皆大喜びよ リ:素人の日曜大工だよ?そんなに需要があるかなあ お城の方も手入れ 王女様の部屋の周りくらい 整えたい |
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廃墟を復興させる、か 腕が鳴るな しかし何故あいつがいるんだ デイムズを見て眉を顰め できるだけ奴のことは警戒しておこう 話し合いで決められた場所にオクトや元奴隷達と共に住居や詰め所を建てていく 急いでいるし立派な物はまだ無理かもしれないが、必要最低限の物は備えよう 大工道具を持ったことがない者がいればレクチャー 島のメンバーだけで大丈夫そうなら城の方へ 一気に全部修理するのは難しそうだが、王女の部屋と 出入口やエントランスホールくらいは何とかしてやりたい まずは土台部分を補強 壁、天井を調べ板や石を使い修繕していこう ヴィオラの声に振り向く 内装? いや、そこまで考えていなかった、頼む 窓の外は内装とは…(視線を感じて黙る |
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■提案 魔結晶の輸出はそのまま強みとして伸ばしてはどうかと考える 魔結晶の加工設備も提案はするが まず整地や今ある物の改良を優先 魔結晶の採取に必要な設備の強化や増設、輸出に関わるルートの整地を提案 ■手段 島の住人の手伝いは建物の増築をオクトと元奴隷達に頼む 他の作業にも人手が必要な為、 オクトだけでは手が足りない部分を元奴隷達に補ってもらいたい 荒地の開拓や整地が必要なら魔女達の手を借りたい 人の力では限界があっても、魔法の力があれば可能な事も多いはず 規模や配置は設計図通りに 魔結晶関連以外でも、各設備の情報は先に集めて仲間と共有 効率よく作業を進める為、 必要な土地の広さや資材の量、労力の目処を予め付けておきたい |
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私達は港付近の整備、改修をしましょう 島にとって大事な玄関口ですからね 元々あった部分を軸に、直しつつもより広く利便性のある造りにしていきます 波で削れたところを本来の広さになるよう修繕し、崩れた部分は新しい石材を組んでいきます 石材は割ると駄目ですから、魔女の方に加工を依頼しましょうか また、オクトの方々の屯所も港近くに確保したいと思います ついでに防壁も建築できればと 木で組まれた桟橋なども今は流されたか腐っているでしょうし、新しく組み立てていきます それとヨセフ室長に二つ程提案をしてみます メフィストさんが以前見せてくれた魔術砲を提供し港等に配備できないか そして、トーマスさんを技術者として貸し出せないかと |
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~ リザルトノベル ~ |
虚栄の孤島開拓のため、浄化師は現地に集まった。 ●事前会議 「よろしくお願いします」 現地の人達との顔合わせに『リチェルカーレ・リモージュ』は自己紹介しつつ挨拶をした。 (新しい国作りのお手伝いなんて、どきどきする。一緒に頑張れたら嬉しいな) その思いは、島の住人も同じだ。 自分達の国を、帰ることのできる故郷を作り出す。 それが嬉しいと、全身で表しているようだった。 彼らの様子を見て『シリウス・セイアッド』は思う。 (故郷が……帰る場所が欲しいという気持ちは少し、わかる) 子供の頃、故郷を使徒やべリアルに壊滅させられたシリウスは、彼らの気持ちが身につまされる。 どうにかしなければ。 そう思っていると、リチェルカーレが意気込むように言った。 「頑張らなくちゃ」 張り切るリチェルカーレに、シリウスは僅かに瞳を眇め、開拓への意欲を強めた。 和やかに顔合わせを終え、実際の作業の話に移る。 「地図や、計画書はあるのかな? もしあるなら、見せて貰えると助かるよ」 作業の効率化と振り分けを考えて『クリストフ・フォンシラー』が提案する。 すると用意されていた地図が出てきた。 話を聞くと、浄化師達のアイデアを取り入れることで、外部に対して脅威が無いことをアピールする狙いもあるらしい。 地図を広げ、皆と確認しながらクリストフは言った。 「大まかに4つの区分に分けてるんだね。こうしてみると、手付かずの自然が多いね」 「はい、そう思います」 クリストフの言葉に『アリシア・ムーンライト』は応える。 「この島、自然溢れる、良い所だと思います。手を入れて、人と自然が、共存できる場所に、なるといいですね」 「ああ、そう思うよ」 クリストフはアリシアの言葉に頷くと続ける。 「出来る限り今ある物を活かしながら。でも、昔の痕跡はあるとは言え、建物は取り壊して一から作った方が早いかな」 そう言うと、区割り用に簡単な街の設計図を書いてみる。 「城の周りに堀でも作ってその外側を広場に、更にその外側に住居や農業地区、商業地区、工業地区と分けておくと後々発展させやすくないかな」 さらさらと書き上げ、皆の意見を取り入れながら修正していく。 「商業地区は港に近い南側。 工業地区は魔結晶がとれる西側が良さそう。 農業には東が良さそうだけど野生動物に畑が荒らされないよう工夫が必要そうだ。 それと王城に近い場所に診療所。 東西南北の地区と城の門前、港に自警団の詰め所。人々の健康と安全を守らないとね。 北はもう少し後で良いかな」 クリストフの提案に皆は賛同し、それぞれ受け持つ担当を立候補する。 「私達は港付近の整備、改修をしようと思います。島にとって大事な玄関口ですからね」 「おー、オレもやるぞー」 地図を確認しながら提案する『タオ・リンファ』に、同意するように『ステラ・ノーチェイン』が声を上げる。 ステラの様子に、くすりとリンファは笑みを浮かべると続けて言った。 「改修の際には、防衛に関する物が置けないか調査するつもりです。ヨセフ室長にお願いした物資と人材が船で来るそうですし、その受け入れにも向かいたいです」 「人材?」 リンファの言葉に、話し合いに加わっているオクトの1人が聞き返す。これにリンファは応えた。 「ヨセフ室長のパートナーである、トーマス技術班長です。以前はイアスという男がオクトの技術者だったようですね。まあ、結末はご存じでしょうが。トーマスさんなら島に必要な技術をもたらし、皆さんを真に支えられるのではないでしょうか」 そこまで言うと、言葉を選ぶような間を空けて言った。 「……人柄はともかく有能な人物です」 トーマスを引き込むことにしたリンファが、その時の苦労を思い出し軽く眉を寄せた。 それは島に来る前。ヨセフに提案した時のこと。 「ヨセフ室長、提案があります。メフィストさんが以前見せてくれた魔術砲を提供し港等に配備できないでしょうか? それと、トーマスさんを技術者として貸し出せないかと」 これにヨセフは応えた。 「魔術砲は問題ない。オリジナルの製造が終わり、通常の使徒の残骸を使ったレプリカの増産が始まっている。すでに幾つか作られているから、実験配備の名目で回すことが出来る。ただ――」 ヨセフは頭痛を堪えるような表情を見せたあと続けた。 「問題はトーマスだ。アイツは自分のしたいことしかしない。無理にやらせると露骨にさぼった挙句に逃げ出すからな」 「それは……えっと……島へのバカンスとか言って釣ってみたらどうです?」 「無理だな。そういうものにアイツは全く興味が無い。同じ釣るなら、アイツの興味のある物を餌にしないとダメだが……」 ヨセフは少し考えると、机から書類を取り出し言った。 「こいつを玩具にして良いと言えば、釣れるだろう」 「それは?」 疑問を浮かべるリンファに、ヨセフは書類を渡す。確認すると、それは蒸気自動車の設計図だった。 「これは、オッペンハイマーさんが作った蒸気自動車の設計図ですか?」 「そうだ。ニホンの源内が基盤を作り、オッペンハイマーがさらに手を加えたものだ。虚栄の孤島の移動に使いたいと連絡を受けたが、現地は道が整えられていない。そういった道でも走れるよう改造する必要がある。それを好きに作って良いと言えば釣れるだろう」 「……そういうものですか?」 半信半疑で設計図を手にトーマスの元に向かうと―― 『なんだソレ! 寄こセ! 面白そうな匂いがするゾ!』 人形を操り、リンファの持っていた設計図を強奪したトーマスは、人形を使った腹話術で応える。 『ワンダフルな設計図じゃねぇカ! これ改造して良いんだナ! やるゾ!』 そう言うと工房に向かって一目散に走っていく。 「トーマスさん待って下さい! 作るのは良いですが内容には指定があります! あと期日が!」 慌てて追いかけて行ったリンファだった。 (優秀な技術者とは、ああいう人しかいないんでしょうか……) リンファはトーマスのことを思い出し、頭痛を堪えるような表情をしながら状況を説明する。 「追加の船便で、自動車と共に必要な資材を持って来てくれるそうです」 リンファの説明を聞き、『トール・フォルクス』が応えた。 「それなら、俺達も港に向かうことにするよ」 「そうね。それが良いわ」 トールに『リコリス・ラディアータ』が同意する。 「私達は、各地点を結ぶ道路関係のインフラ整備を中心にお手伝いしようと思っているの。今回は魔女の助力があるから運搬自体はかなり楽になるとはいえ、いつもそうとは限らないもの。しっかりした道路があるに越したことはないわ」 リコリスの言葉にトールは続ける。 「そのためには、道路の整備をする必要があるけど、実際に道路を作るのには適したルートを探さなきゃならない。搬入される魔導蒸気自動車を実際に走らせてみて、適したルートを探してみるよ」 そこまで言うと、この場に同席する魔女達に提案した。 「車を走らせるときは荷物も持って行こうと思うけど、車1台で運べる量はたかが知れてるから、大部分は魔女の魔法で運んでもらえると助かるよ」 これに魔女達は快く同意した。 話は進んでいき、各地の整備計画が上がっていく。 その中で特に多くの意見が出たのが東部だった。 「果樹園とか薬草園とかができたら素敵よね」 リチェルカーレの言葉にアリシアは頷く。 「果樹園、薬草園、食も彩られますし、診療所の役に立ちます、ね」 「ええ、そう思うわ」 笑顔で応え、リチェルカーレは続ける。 「でもまず、生活環境を整えないと。綺麗な水がすぐ手に入るように、とりあえず共用の井戸を幾つか、住居の周りに。後は水源から、農業用の水を引けたらいいな」 これを聞いて『レオノル・ペリエ』が返した。 「水源は必要だね。私達はとりあえず……水路をどうにかしたいんだ」 レオノルは、クリストフが広げている地図に視線を向けながら続ける。 「飲み水や農業、工業に使う水も大事なんだけどさ、下水道の確保と処理のための場所が欲しいなと思ってて。疫学的にも水回りがきちんとしてるかどうか大事だしね。 それと、リチェちゃんが提案した果樹園とかに回せる水路も設計しようと思うんだ」 地図で指し示しながら提案を続ける。 「あと道路の舗装だよね……土だけなのと石畳とじゃあ雲泥の差だ。すぐに用意出来る量は限られているだろうから、まずは商業と工業地区予定の南部と西部に優先して回せるようにすると良いと思う」 レオノルの話を聞き、西部の担当を希望していた『ルーノ・クロード』が言った。 「工業地区になる西部には私達が行こうと思う。それと提案なんだが、現地で採れる魔結晶の輸出を、そのまま強みとして伸ばしてはどうだろうか?」 「どういうことだ?」 オクトの1人に尋ねられルーノは説明する。 「魔結晶をそのまま輸出するのではなく、ここで加工して付加価値を加えてから輸出するのはどうだろうか?」 「あら、素敵ね」 ルーノの言葉に、会議に参加していた魔女のエレナが賛同する。 「純度を上げてから輸出するとか良いかも。その方が高く売れそうだし。あとは――」 「魔結晶を使った工芸品を作っても良いかも」 エレナの言葉を引き継ぐようにして、友人である魔女のリリィが言った。 「魔結晶さえあれば、魔法の道具を作り易くなるし。場合によっては大量生産できるようになるわ。もちろん、オーダーメイドでも作れるけど。工房を作ってくれれば、それが出来るようになると思う」 「それは素敵だね。そうなるように、まずは整地をしよう」 ルーノは地図を見て示しながら続ける。 「まずはこの辺りを整地しよう。道路も作るなら、他の地区との接続が楽になる」 「おっし、それなら力仕事だな」 ルーノの言葉に『ナツキ・ヤクト』が応える。 「みんなでやれば、すぐに出来るようになるぜ。頑張ろうな!」 笑顔で呼びかけるナツキに、オクト達は応える。それを見ていたルーノは、続けて言った。 「皆で協力することは大切だ。それと、適材適所で動くことも大事だ。出来れば、魔女達には荒地の開拓や整地を中心に手伝って欲しい。人の力では限界があっても、魔法の力があれば可能な事も多いはずだからね」 これにエレナとリリィ達、魔女は快く引き受ける。 「よっし、頑張ろうぜ――あ、でも……」 何かを思いついたのか、顔を曇らせたあと続ける。 「デイムズ、どうする? あいつも島の開拓を手伝うんだろ?」 ナツキの指摘に、皆の表情が曇る。 「放っておくのも危なさそうだし。でも、俺がデイムズと下手に話したら、思いっきり警戒しちまう気がするし……」 「デイムズの事は気になるが普通に手伝うならあからさまな態度を取る訳にもいかないだろう。……あくまで、表面上は、だが」 ナツキに返すルーノ。 皆が考え込む中『ショーン・ハイド』が言った。 「奴を下手につつくわけにもいかんが、放置するわけにもいかん。全員で動向に注意する必要があるだろうが、その前に少し、奴と話を付けておこうと思う」 皆の視線が向けられる中、ショーンは続けた。 「釘を刺すために話をつけるつもりだ。それと探りを入れてみる。何かおかしなところがあれば、すぐに伝えるつもりだ」 ショーンの言葉に皆は頷き、一先ずデイムズの件は置いておき、開拓についての話に戻す。 「私達は家屋の改修に向かおうと思う」 地図を確認しながら『ニコラ・トロワ』は言った。 「現時点で生活の基盤となっているのは、王城周辺だな。この周辺の家屋はどうなっているんだろうか?」 これにオクトの1人が応える。 「基本的には廃屋だ。ある程度邪魔なものを取り除いて寝泊まり出来るようにはしてるが、雨が降ったりするときつくてな。幸い船で物資が搬入されるようになったから、それを使って本格的に改修する予定だ」 「なら、私も手伝おう。状況を見て、王城の補修にも行けそうなら向かうつもりだ」 ニコラ達が具体的な補修案の話をしていると『ヴィオラ・ペール』が言った。 「力仕事になりそうですね。その分、お腹が空いちゃいそうですけど、食事はどうなってますか?」 これにオクトの1人が返す。 「普段は保存が効くパンとチーズだな。いまの所すぐに用意出来るのはそれぐらいだ」 「それは……なら、私は食事の用意をしようと思います」 ヴィオラは地図を見ながら言った。 「北部か、東部なら、食べられそうな物がありそうです。折角ですから、島に自生してる植物の中に野草や果樹等の食物になりそうな物がないか調査してみようと思います」 ヴィオラは採れそうな食材を予想しながら応える。 「畑を作るにしてもすぐに食材が育つわけではないですものね。食べられる物の群生地を見つけたら、そこの整地は待って貰っても良いですか?」 これにオクト達は同意し、魔女も含めた何人かがヴィオラに同行することになった。 話が進む中、『リューイ・ウィンダリア』と『セシリア・ブルー』も担当したい場所を立候補した。 「僕達も、王城周辺の家屋の補修を手伝いたいと思います」 「そうね。まずは何より、住む場所は大事だもの」 2人は地図を見ながら続ける。 「住居の跡は結構多いみたいですけど、全部確認は終わっているんですか?」 これにオクトの1人が応えた。 「いや、全部じゃない。めぼしい所だけだな」 「だったら良い機会ですから、確認しましょう。使える物があるかもしれないし」 これにオクト達は頷き、話はまとまっていく。 そのあと詳細を詰め、各地に分かれ作業をしていくことにした。 ●南部・港湾補修 「波で随分と削れていますね、それに潮風で劣化も激しい……大変ではありますが、力を合わせればきっと本来の姿を取り戻せるはずです」 港を詳しく調べながら、リンファは詳細を書き記す。 「マー、こっちひび割れてるぞ」 一緒に回っているステラに呼ばれ確認すると、かなり大きな亀裂が入っていた。 「これは……本格的な補修が必要ですね。他の場所は細かな修繕で行けそうな所もありましたけれど、手の掛かる所も多そうです」 確認を終えると、すでに作業をしている者達の傍に寄って言った。 「あちらの、波で削れた部分を、本来の広さになるよう修繕できますか? それと、崩れた部分は新しい石材を組んで貰えると助かるのですが」 これに作業をしていた者達は応える。 「波で削れた所は漆喰で補修できるからどうにかなる。問題は崩れた石材だな。あれ基盤だから、しっかり作り直さんと拙いんだが、作業が大事になって骨だぞ」 「石材は割ると駄目ですからね。なら、そちらは魔女の方達に加工をお願いしてみます。私が連絡に行きますから、補修を続けて貰えますか」 補修を任せ、リンファ達は魔女の連絡に向かう。 そこで石材加工を頼み、そのあとも連絡に走り回ったあと、補修に向かう。 「桟橋は……かなり傷んでいますね」 長く潮水に当たり、一部が腐り流されているのを確認すると、修繕するために資材を取りに行く。 その途中で、デイムズ達が乗って来た船に視線を向ける。 「あれは、デイムズ室長が乗ってきた船ですか、大きい……」 明らかに軍艦であるそれは、かなりの大きさがある。 (あれに兵を乗せて来られたら……やはり防壁は急務ですね。それに、オクトの方々の屯所の建設も急がないと) やるべき事は多い。 そのために動いていると賑やかな声が聞こえてくる。 それはトーマス技術班長の声だった。 『壊して良いからぶっとバセ!』 「壊しちゃダメでしょ」 トールと一緒に車を取りに来たリコリスがツッコミを入れる。 『なんでダ! 良いデータが取れるゾ!』 「出来るだけのことはするよ」 下手に話していても埒が明かないので、トールはトーマスを宥めるように言うと車を受けとり資材を乗せていく。 「結構、詰め込めるわね」 リコリスの言う通り、トラックタイプなので荷台に資材が多く載せられる。 とはいえ船から降ろされた資材はさらに多いので、そちらは魔女に頼み、トールはリコリスを乗せ出発する。 「さあ、行きましょう」 「ああ……」 「どうしたの?」 外に視線を向けていたトールに気付き、リコリスは視線を追う。 その先に居たのはデイムズだった。部下を集め指示を出している。 「……島の各所に、部下を向かわせるみたいね」 「そうみたいだ。そっちの動向も見ながら、島を回っていこう」 トールは静かに応えると車を走らせる。 (デイムズはともかく、部下からは何か聞けるかもしれない。デイムズは……ショーンに任せよう) デイムズに釘を刺しに向かったショーンを確認し、トールは東部へと最初に向かう。 それを面白そうに見ていたデイムズに、ショーンが声を掛けた。 (どのツラ下げて……) 内心を飲み込みながらショーンは声を掛ける。 「どういうおつもりですかデイムズ卿。先日のご醜態、お忘れでないでしょうに」 「ふむ。嫌味かね?」 「嫌味でも何でもない。事実に基づいて率直に提案させて頂こう」 ショーンは視線を合わせハッキリと言った。 「ここは貴方が殺そうとしたオクトの、場所だ。……先日の件、忘れていない人間も多い。貴方が堂々とこの島を巡れば他の作業員の憎しみの対象になりかねない」 「それは、どういう意味かね?」 韜晦するように言うデイムズにショーンは返す。 「もっとはっきり言おうか? あんたを殺したいって憎悪で周りの作業効率がさっきっから落ちてんだ。部下を連れて固まって整地作業してくれ。それがお互いのためだろう」 (意地でも城や中枢部を探らせてなるものか) 身構えるショーンに、デイムズは応える。 「はははっ、私を殺すか。それは良い。願っても無いな」 獰猛な笑顔を浮かべ、デイムズは言った。 「君は何か勘違いをしている。私がしたいのは戦争だ。小競り合いではないよ」 ショーンの肩を万力のような力で掴みながら続ける。 「戦争には大義名分が要るのだよ。言わば切っ掛けだ。それが今、私には無い。だが、いま私を殺そうとしてくれるなら、それが手に入る」 「……ふざけるな」 デイムズの手を振り払いショーンは言った。 「全てが自分の思い通りになるとでも――」 「思っておらんよ。だからこそ楽しい」 デイムズは好々爺のような笑みを浮かべ応えた。 「ままならぬ身で足掻くのが人間だ。私は人間として、諸君達と真剣に遊び(関わり)たいと思っているのだよ」 そこまで言うと、真摯な表情で続ける。 「諸君達がどう思おうが、私は人間の側に立って戦っている。だから人間のために戦っている諸君達を、対等の相手として認めている」 嘘偽りのない本意を告げ、デイムズは続ける。 「対等の立場として忠告しておこう。この島にあった小国を謀略で滅ぼしたのは枢機卿だ。そして何かあれば使えるように保険を掛けている」 「どういう意味だ」 ショーンの問い掛けにデイムズは応えた。 「この島の地理は、とうの昔に調べ上げられている。だから今さら島を調べる必要はない。そして生き残っている王族は1人ではない」 「……それは」 「火種は、すでにあるのだよ。気が向けば、ヨセフ殿に伝えておいてくれ。もっともヨセフ殿は気付いているだろうが。だからこそ私を島で好きにさせている」 そう言うとデイムズは、部下を連れて整地や改修の手伝いに向かう。 「心配せずとも今日来たのは、この国の発展の手伝いに来ただけだ。それ以上のことはせぬよ」 余裕を見せるデイムズに、ショーンは後を追った。 それを遠目から見詰めていたリンファに、ステラが声を掛ける。 「マー、この石は、ここ置けばいいのか?」 慌ててステラに応えるリンファ。 「はい、そこに置いて下さい」 「おー、分かった」 にこにこ笑顔で、ステラはリンファに言われた通りに石を置く。 石はピッタリと嵌り込んだ。 「うまく出来たぞ。石をこうやってはめてけばいいんだな、なんかパズルみたいだ」 「また何年も使いますから、丁寧に作っていきましょう」 「ていねいに、だな」 ステラはリンファに応えると、次々に石を運び、2人で嵌め込んでいく。 それが終れば、次は傷んでしまった桟橋の修繕だ。 「マー、うまいな」 手際よく桟橋の木を縄で組みながら修繕していくリンファに、ステラは感心したように声を上げる。 「淡水ですが私の故郷も水に縁があります、なれたものですよ」 手を止めることなく言った。 「さあ、どんどん仕上げていきましょう」 「分かった! やるぞ!」 元気良く応え、リンファと共に作業をこなしていくステラだった。 南部の改修は着々と進む。 他の地域も、浄化師の協力により進んでいった。 ●東部・農業区整地 「足りない物はないかしら?」 車で東部に来たリコリスは、自警団屯所を建築している作業員に尋ねる。 「寝泊まりすることも考えると布団とか……あと食器があると助かるな。建材は木を切り倒して作れるから、屯所を増やさない限りは大丈夫」 「分かったわ。次の船便で持って来て貰えるように頼んでおくわ」 要望をまとめると、車に載せていた資材を降ろしているトールの手伝いをする。 「手伝うわ」 「ありがとう」 2人で協力して降ろしていき、それを東部で作業していたリチェルカーレやアリシアが取りに行く。 「ありがとう、リコちゃん」 「ありがとう、ございます」 2人が持って行こうとすると、シリウスとクリストフが受け取る。 「力のいる仕事は、こちらでする」 「果樹園を作るための水回りとか、そういうのは分からないから、そっちを頼むよ」 2人に言われ、アリシアとリチェルカーレは、水回りの整備に動いているレオノルの元に向かう。 「レオノル先生。用水路みたいなものを、一緒に考えていただけませんか?」 「もちろん。いま魔女さんに手伝って貰いながら見て回ってるんだ。2人の意見も聞かせて欲しいな」 レオノルの説明を聞きながら、リチェルカーレやアリシアは一緒に移動する。 「地下水脈があの辺りに流れてるみたいだから、そこを掘れば井戸が出来るみたいだね」 自警団屯所からそこそこ離れた場所をレオノルは示す。 それを見てリチェルカーレは言った。 「生活用水は、井戸を掘れば解決しそうですね。水路はどうでしょう?」 リチェルカーレの言葉にアリシアが続ける。 「土の質を、見ましたけど、灰を撒いて、肥料で調整すれば、この辺りに、色々と作れると思います。ただ、井戸から手に入る、水だけだと、育てるのは難しいと思います」 「うん、だよね。だから、ここから少し離れてるけど、川から水をひいて来ようと思うんだ」 レオノルは、持って来ていた地図を示しながら続ける。 「少し時間は掛かるけど、魔女さんの魔法で水路が作れるみたい。川から見たらこちらの方が高台にあるけど、低い場所だと洪水の時とかが怖いからね。水路を深く掘って水をひけるようにするよ。あとは、ため池も作ると良いかもしれないね」 話をしながら、水路とその終着点となる溜め池の経路を決めると、予定経路に杭を打っていき目印にした。 「こんな所かな。あとは、ここに果樹園や薬草園を作るのは良いけど、野生動物に食べられないようにしないとね」 そう言うとレオノルは、離れた場所に居る野生動物に視線を向ける。 猪や兎などの他に、一際大きな生き物が見える。 「石像みたいな生き物ですね。魔物でしょうか?」 リチェルカーレが首を傾げていると、一緒に行動していた魔女が説明してくれる。 「ガーゴイルね。長く生きた蝙蝠が、魔力の影響でああなったの。見た目は怖いけど大人しいから、こちらから手を出さない限りは大丈夫よ」 魔女の話を聞いてレオノルは考える。 「とりあえず放置しておいても大丈夫そうだけど、やっぱり有刺鉄線とか敷いた方が良いかな。猪とか、特に食害が酷そうだし」 これにアリシアは返した。 「野生動物が、畑を荒らすのは、エサとなる物がないから、ですし。動物達の餌場を、人間が荒らさなければ……棲み分けは、できると、思います」 アリシアの言葉を聞いて、魔女の1人が言った。 「それなら、ここにはガーゴイルが生息してるみたいだし、牧羊犬みたいに飼って、野生動物が近付けないようにしてみる?」 「そんなことが出来るんですか?」 少し驚いたように訊くリチェルカーレに魔女は応えた。 「ええ。元々ガーゴイルって、魔術師に使い魔として門番とかに使われるぐらいだし。ご飯の世話とかするのと引き換えに使役することが出来るようになるファミリアっていう魔法もあるから、大丈夫よ。魔法掛けるのに、一端捕まえないといけないのが大変だけど」 魔女の話を聞きつつ、最初に開拓する場所の設計が終わり、それに基づき皆で動くことになった。 「シアちゃん、手伝いに行きましょう」 「はい」 リチェルカーレとアリシアが開拓民と共に木や草の伐採に動く。 「私は、お城の方に行ってみるよ。堀に掛ける橋の設計とかしたいし」 レオノルは王城のある中央区に向かう。その際は、魔女が箒に乗せて連れて行ってくれた。 「乗り心地好いんだ。なんだかクッションみたいなのがあるね」 「箒はあくまでも触媒だから。乗る場所とかは、空気を固定してクッションにしてるの」 説明を聞きながら空を飛んでいくレオノル。 そして資材を降ろし終ったリコリスとトールは次の区画に向かう。 「俺達は、このあと北部に向かうよ」 「みんなお疲れさま。それじゃ、また後でね」 車に乗って北部に向かう2人を見送ったあと、本格的に作業を開始。 「皆さんの中で、農業に従事してた方は、いらっしゃらないでしょうか」 アリシアは、逃走奴隷としてこの島に来た人達に声を掛ける。すると―― 「儂ら、下働きやけど、畑耕しとったわ」 何人かが応え、アリシアは彼らと共に作業に移る。 「日当たりが、良いですから、ここから整地していきましょう」 アリシアの呼び掛けに応え、皆で草取りをし、終わった端から土を耕していく。 農作業の経験者が多いのか、作業はスムーズに進む。 さらに魔女が魔法で手伝ってくれるので、目に見えて景色が変わっていった。 (魔法を使って貰えて助かるな) クリストフは魔女に助けて貰いながら、自警団を兼ねた家屋の建築を手伝う。 「壁板になる木材が欲しいんだけど、伐採した木から作れるかな?」 「大丈夫よ。少し待ってて」 魔法で根っこから伐採された木を、さらに魔法で乾燥させ建築材になるよう切り分けていく。 晴れ渡る青空の中、皆は懸命に作業を続ける。 ただ、日差しが強い中で頑張り過ぎたのか、中には疲れを見せる者も出てくる。 それに気付いたリチェルカーレは気遣うように声を掛けた。 「無理をされないで下さいね」 そう言いながら、リコリス達が持って来てくれた水筒を渡し、水を飲むように勧める。 リチェルカーレは皆に水筒を渡しながら、同時に健康診断も兼ね、顔色を見たり声を掛けていく。 「体の具合はどうですか? 怪我や病気はありませんか?」 皆に声を掛けていく中、リチェルカーレはシリウスの様子に気づいた。 年寄りや体の弱そうな者には無理をさせないよう、力のいる仕事を率先して行っていたシリウスは、血の気が感じられないほど顔色が悪い。 「シリウス!」 リチェルカーレは慌てて駆け寄ると声を掛ける。 「もう! 休憩はちゃんと取ってねって言ったのに。シリウス、夏は辛いんだから。無理しちゃだめよ」 リチェルカーレに腕をひかれ、シリウスは瞬き一つすると応えた。 「……大袈裟だ。目途がつく所まで済ませておけば後が楽……」 言葉の途中で、くらりと回る視界に一瞬息を詰めてやり過ごそうとしたが、そこにクリストフが声を掛ける。 「シリウス。リチェちゃんを心配させちゃダメだ」 「……」 シリウスは言葉を返そうとしたが、心配顔のリチェルカーレの向こうに、目が笑っていないクリスを見てため息ひとつ。 「――わかった。少しだけ休む」 「好かった!」 嬉しそうなリチェルカーレに、僅かに苦笑するシリウスだった。 東部の開拓も着々と進む。 そして北部の探索も進んでいた。 ●北部・大森林地帯 「豊かな森ですね」 魔女達と共に北部の大森林地帯に食材を探しに来たヴィオラは、沢山の収穫に声を弾ませる。 木苺やあけびといった甘みのある物だけでなく、山菜やキノコも多く採れる。 (胡桃のような木の実も沢山ありますね。収穫時期ではないので残念ですけど、秋には採れそうです。栗の木もありましたし、焼き栗にしたら美味しそう) 収穫物で何を作るか考えていると、森の中で狩りをしていたオクト達が声を上げた。 「猪が獲れたぞー」 行ってみれば、立派な猪が仕留められている。 「良いですね。折角ですから、山菜とキノコの猪鍋でも作りましょう」 ヴィオラの提案に喜びの声が上がると、その場で仕留めた猪を木に吊るし手早く解体していく。 魔女も魔法で手伝ってくれた上に、解体する人物が熟練の腕を振るってくれたので、綺麗に捌かれていた。 (これだけ食材が豊富なら、耕作して収穫できるようになるまでは、ここは下手に手を付けない方が良いですね。それに――) ヴィオラは魔力探知で森の中を見回しながら思う。 (魔力が異様に濃いんですよね、ここ。何かあるのかもしれません) 同じように気付いたらしい魔女達と話を交わしながら、ヴィオラは森の外に出る。 すると、ちょうど車を走らせてきたリコリス達と出会った。 「お疲れさま。いっぱい採れたわね」 ヴィオラ達の収穫の多さにリコリスが声を弾ませると、トールが続けて提案する。 「採った物は車に載せて持って帰るよ」 これにヴィオラは笑顔で返した。 「ありがとうございます。それでは、こちらの木苺の入った籠を持って帰って貰えますか?」 「分かった。残りは良いのかい?」 「はい。残りは魔女さんに中央区に持って行って貰って、そこで猪鍋を作ろうと思うんです。出来あがったら、それぞれ作業されている方のいる地区に持って行って貰うつもりですけれど、おふたりはこの後どうしますか?」 「俺達は、このあと西部を回って中央区に行く予定だよ。そこでご馳走になるよ」 「分かりました。では、また後で」 トールとリコリスはヴィオラ達に見送られ西部に向かい、ヴィオラは魔女の魔法の箒に乗って一足先に中央区に向かうことになった。 北部の探索が進んでいく。 そして西部の開拓も着々と進んでいた。 ●西部・工業地区整地 「この区画の木は、全部伐採して貰えると助かる」 「分かったわ」 地図を広げながら指示を出すルーノに応え、魔女のリリィが魔法で木を伐採していく。 「根っこごと採っちゃった方が良いわよね」 リリィが魔法を使うと、木が生えている地面が泥のように流動化したかと思うと、それが手の平サイズの土人形になってエレナの足元にやって来る。 土人形が出来る度に、木の根を覆っている土が無くなり、最後には丸裸に。 支える土台が無くなった木は自重で倒れていった。 ずずんっ、と地響きさせて倒れた木を建材として使えるよう、ナツキが根っこの部分をホープ・レーベンで一刀両断。 「わぁ、凄いわねぇ。綺麗な尻尾のおにぃさん」 魔女のエレナは目を丸くする。 「魔女決闘の時も強いと思ったけれど、あの頃よりも逞しくなったのねぇ」 「鍛えられることが一杯あったからな」 ナツキは笑顔で返す。 「それより名前で呼んでくれよ。綺麗な尻尾って言われてると、なんだかくすぐったい」 くすりとエレナは笑みを浮かべると応える。 「良いの? なら、名前で呼ばせて貰うわね、ナツキ」 「おう」 「なら、私も名前で呼んで貰えるかな」 ルーノが傍に寄って言うと、リリィにも視線を向け続ける。 「島の開拓を続けるなら、また手伝って貰うこともあるだろうからね。名前で呼びあった方が良いだろう」 「そうね。なら、私も名前で呼ばせて貰うわ、ルーノ」 「ああ、そうしてくれ」 リリィに返すと、ルーノは提案した。 「魔女決闘の時に使ったような強化魔法を皆に掛けられるだろうか? 掛けられるなら助かるのだが」 「今ここに居る人数なら、私とエレナの2人で掛けられるわ」 作業をしている皆を見回したあと、リリィは続ける。 「でも、その間は他の大きな魔法が使えないから、木を根こそぎ倒したりした方が良い時は言って。切り替えるから」 「分かった。なら、あちらの木を倒したら、そのあとは強化魔法に集中してくれると助かるよ」 ルーノの言葉にリリィとエレナは頷き、まずは木の伐採に集中する。 その間、ナツキは他の力仕事を手伝いながら、一緒に作業している皆に声を掛けていく。 「困ってることがあったら言ってくれよな」 明るく声を掛けるナツキに皆はほだされたのか、お喋りをしていく。 そこに車に乗って来たリコリス達がやって来た。 「スコップとか鶴嘴を持って来たから、使ってちょうだい」 荷物を降ろすと、皆は礼を言って受け取っていく。 荷台の荷物を降ろしながら、トールがルーノに尋ねる。 「こっちにデイムズの部下は来てないのかな? 他の所も見て回ったんだけど、中央区以外には来てないみたいなんだ」 「こちらも見てないよ。念のため、気をつけておくよ」 情報を交換したあと、リコリスとトールは中央区に向かう。 2人を見送ったあと、作業を再開。 「さあ、再開しよう」 「おう。やろうぜ」 気合を入れ、作業を続けるルーノとナツキだった。 西部の開拓は着々と進む。 それは中央区でも同じだった。 ●中央区 「ここなら僕が入って作業できます。任せて下さい」 家屋の修繕を手伝っているリューイは、小柄な体格を活かし狭い場所に入り率先して手伝っていく。 その近くでは、セシリアも忙しく動いていた。 「これは、あちらに持って行けばいいんですね?」 セシリアは廃材を手にすると、あとでまとめて廃棄するための集積所に持って行く。 持って行くと、連絡役のマドールチェから魔術通信が入った。 『お昼の鍋を作るから、場所を確保して欲しい』 連絡を受け、セシリアは他の作業員と共に広場のようなスペースを作る。 そこに魔女の箒に乗ったヴィオラが降り立った。 「連絡を受けたので、ここに調理スペースを作っておきました。もっと広い方が良いですか?」 「いえ、十分です。美味しい料理を作りますから、待ってて下さいね」 笑顔のヴィオラに、セシリアも笑顔で返す。そしてリューイの手伝いに行く。 すると屋根の修理をしていたリューイは、軽々と飛び降り声を掛けてきた。 「こっちはだいぶ進んだよ。とりあえず、いま住んでいる所の壁や屋根の修理が終わったところ。だから次は、内装の手伝いに行くつもり」 「内装?」 「うん。テーブルとか、椅子とか欲しいって言ってたから、作ろうと思って」 「そうなの? だったら、カルシール様も連れてきたらよかったわね」 「父さんを? どうして?」 「お屋敷で椅子やら棚やら作っていたでしょう。ここで作ったら皆大喜びよ」 「素人の日曜大工だよ? そんなに需要があるかなあ」 小首を傾げるリューイに、くすりとセシリアは笑う。 「あると思うわ。日常使いには十分な、頑丈な物を作れるんだから」 「うん。確かに頑丈だった。見た目は、そこまでじゃなかったけど」 「そこはプロじゃないんだからしょうがないわ。それより今は、実用性が第一よ」 「そうだね。なら、頑丈なのを作ろう」 意気込むリューイと一緒にセシリアは材料を取りに行く。 するとそこでデイムズと出会った。 「家具を作るなら、ここにあるのを持って行くといい。壁の余り物だが、なに、十分に使える」 親しげとさえ言って良いデイムズに、リューイは緊張気味に礼を返す。 「ありがとうございます」 同じようにセシリアも、けれど彼女は薄く笑みを浮かべ頭を下げた。 それをデイムズは楽しげに見詰めると返す。 「はははっ、礼儀正しい子だ。私も見習わんといかんな」 そう言うと部下と共に家屋の修繕を再開する。 彼の様子を目の端で見ていたニコラは小さく呟いた。 「何故あいつがいるんだ」 眉を顰め警戒するように見ていると、その傍で、デイムズを見張りながら作業をするショーンの姿が見えた。 (ショーンが見ていてくれるのか……なら、私は作業に集中するべきか) 大工仕事のような制作作業に慣れているニコラは、他の不慣れな者達を指導している。 だからニコラ次第で進み具合がかなり変わってくるのだ。 『デイムズの見張りは頼む』 魔術通信でショーンに呼び掛けると、彼は目配せで応えた。 そして集中して作業を続けていく。その途中で良い匂いが。 「あと少しで出来ますから、食べに来て下さいね」 あらかた作り終えたヴィオラは、鍋の幾つかを他の地区に届けて貰えるよう魔女に頼む。 「お願いします」 箒に乗って鍋を運ぶ魔女を見送ると、ヴィオラは残った鍋の味見を重ねる。 「うん、出来ました」 そこに、島を巡り終えたトールとリコリスが車に乗ってやって来る。 「あら、好い匂い。料理作ってくれたのね。お疲れさま」 島を巡り要望をまとめた書類を手にしたリコリスが、ヴィオラに声を掛ける。 「ありがとうございます。おふたりも食べていきませんか?」 「ありがとう。ちょうど区切りがついたからいただくよ」 ヴィオラにトールは応える。彼の手には、実際に車を運転することで纏められた、道路のルートになりそうな場所を記した書類があった。 それを見たヴィオラは言った。 「量が多いですね。それだけまとめるのは大変でしたでしょう?」 これにトールは苦笑する様に返す。 「ああ、大変は大変だったけど――」 「悪くはなかったわ」 トールの言葉を引き継ぐようにしてリコリスは言った。 「結構、楽しかったわよ」 「そうだな」 同意するトール。 「一からの開拓ってのは、結構楽しいよ」 楽しげな笑顔を浮かべる2人に、同じように笑顔で返すヴィオラだった。 そして美味しい鍋を皆に振る舞う。 体力仕事をしていた皆は、笑顔を浮かべ残さず食べ尽くした。 食べ終わると作業再開。 すると、資材を持って他の場所に行こうとしていたニコラにヴィオラが尋ねる。 「どこに行かれるんですか?」 「王女の部屋の改装に行こうと思ってな。アリシアが言っていたが、まだ万全とは言い難いそうだ。この辺りは任せても大丈夫そうだから、俺が行ってもここの手は足りるだろう」 「なら、私も行って良いですか?」 「ああ、構わないが――」 ニコラが応えると、話を聞いていたリューイとセシリアも同行を希望する。さらに―― 「お城に行くの? なら私も行くよ。堀を渡る橋が古くなってるらしいから、頑丈な橋の設計しようと思うんだ」 これを聞いていたショーンが首を傾げながら言った。 「堀に橋をかけるなら外しやすいものが良いかと。城は要塞の役割も果たしますから」 目の端でデイムズ達の動向も見張っているが、不審な様子は見られない。そんなショーンの横で―― 「ん~、それなら、跳ね上げ式にした方が良いかな?」 設計図の素案を考えるレオノルだった。 その後、ニコラは皆と王女の部屋に向かう。 そして夢中になって修理するニコラにヴィオラが声を掛けた。 「内装はどうするんですか?」 「内装?」 「せめて王女様のお部屋は可愛くしてあげたいですもの。お花を部屋にも窓の外にも飾りましょう」 「……そういうものか。いや、そこまで考えていなかった、頼む」 ヴィオラの助言を受け内装に手を加えるニコラだったが―― 「窓の外は内装とは……」 途中から理論的なことに意識が向きそうになる。しかし―― 「…………」 無言のまま笑顔で見つめるヴィオラの視線を感じ、黙々と作業を続けるニコラだった。 彼の手伝いをしていたセシリアとリューイは、作業をしながら今後の島のことについて話し合う。 「この島に国民として来る人達って、教団の外にいる人たちが多いから、彼らの歴史や文化が残せたらいいと思うの」 「あ、いいね。魔女やトゥーレの人の歴史って知っておきたい」 「今は無理だろうけれど、図書館のようなものを作っていけたらいいわね」 2人が話していると、部屋の改装のお礼を言いに来た王女のメアリーが、セシリアの話を聞いて言った。 「ヴァーミリオンおじちゃんに頼んでみるね」 皆の頑張りに少しでも応えようと、ぎゅっと小さな拳を握るメアリーだった。 かくして島の開拓は進んでいく。 浄化師のお蔭で、大きく進展した一日だった。
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*** 活躍者 *** |
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[15] ヴィオラ・ペール 2020/07/06-21:04 | ||
[14] リューイ・ウィンダリア 2020/07/06-20:11
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[13] リコリス・ラディアータ 2020/07/06-11:38 | ||
[12] タオ・リンファ 2020/07/05-22:43 | ||
[11] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/05-08:56
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[10] ルーノ・クロード 2020/07/04-23:18 | ||
[9] クリストフ・フォンシラー 2020/07/04-22:09 | ||
[8] レオノル・ペリエ 2020/07/03-22:45 | ||
[7] リューイ・ウィンダリア 2020/07/03-20:58
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[6] タオ・リンファ 2020/07/03-02:53 | ||
[5] ニコラ・トロワ 2020/07/02-23:15
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[4] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/02-22:19
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[3] クリストフ・フォンシラー 2020/07/02-19:46 | ||
[2] リコリス・ラディアータ 2020/07/02-12:36 |