~ プロローグ ~ |
虚栄の孤島。 |
~ 解説 ~ |
虚栄の孤島西部で整地作業をしましょう。作業には以下の種類があります。得意なもの、やれそうな作業を選んで取りかかってください。プランには取り掛かる作業のアルファベットを記入してください。 |

~ ゲームマスターより ~ |
初めましての皆さま、お久しぶりの皆さま、こんにちは。しらぎくです。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
![]() |
B ○ これって人選ミスじゃあないか…? …主にドクターが あれ、何かこのやり取り前もした気が… ドクター、私は根を取り除く作業を行いますので、草刈をして頂ければありがたいです ……何だろう、なんか、こう。デジャヴを感じる 草が取り除かれた辺りの根を黙々と掘り返していた所、何か嫌な予感がして振り向いてみれば ちょうちょを追いかけるドクターの姿に唖然 やっぱり人選ミスじゃないかー!! ドクターの首根っこを捕獲し溜息 ピエッとか聞こえた気がするが ドクター、もう作業は構いません むしろ他の仲間のバックアップをお願いできませんか 例えば熱中症のケアや休憩所のセットアップと運営等 さっきより目に見えて働いているドクターを見て一安心 |
|||||||
|
||||||||
![]() |
道を作るにしても建物を建てるにしても 土地を整えるのは大切ですもの 暮らしやすい環境にする為に お手伝いを頑張らなくちゃ A〇 傍らのシリウスを見上げる 頑張ろうねシリウス でも無理しないで ヴァンピールさんて強い日差しには弱いんでしょう? 返ってきた応えに少し眉を寄せ 一時間毎に休憩をいれましょう 絶対よ? シリウスや島の人たちと協力して作業 住居部分を最初に 次にそこから中心地への道を 楽しみですね どんな町にするんですか? 人懐っこく 周りの人とも会話しながら ふと気づくと 黙々と作業をするシリウス 時計を見て 休憩しましょうと腕をひく だめよ 途中で倒れたらどうするの はい これがお茶 レモンの蜂蜜漬けも持ってきたの 息をつく彼に ほっと笑顔 |
|||||||
|
||||||||
![]() |
シキ、草刈りでどうだ 倒れない …てかどういうつもりで言ってんだそれ 怒んなよ 悪かったって (まあシキは人をからかえるような奴じゃないよな) なんだよ …かなりどうでもいい …元気いいな それだったら自分の周りくらいは喋らずしっかりやれよ 言ったそばから… はいはい、もう好きにしろよ 別に 静かにシキのハイタッチに応じる …アンタも頑張ったんじゃないか? 珍しく |
|||||||
|
||||||||
![]() |
B~C○ 作業着を着て、邪魔にならないよう髪を束ねてポニーテールに クリスを見て あまり、袖をまくらない方が、いいと思います 虫に刺されたりとか、草で切っちゃったりとか、ありますし…… はい、頑張りましょう 鋤を持ち、オクトのメンバーが雑草を刈ってくれた場所の根を掘り起こしていたら クリスに鋤を取り上げられ え、そんなに真っ赤になって、ますか? 額に置かれた手に、少しドキッとしてしまうのは、仕方ない、ですよね 小休止して冷たいお茶の入った水筒を取り出し この島にも、こう言うお茶の葉を育てる場所、作りたいですね 魔結晶以外にも、特産品を作れるといいなって 休憩後はクリスが掘り返した部分を平らにならす作業を 共同作業、ですね |
|||||||
|
||||||||
![]() |
今度は西部の開拓作業ね というか、人力でやるのね…大変そうだけど頑張りましょう ○ そう?ありがとう トールも似合ってるわ B 作業内容を見るに、二人では手分けしてどうこうというレベルのものではないわね… やることを一つ決めて、そこを集中的にやっていきましょう 草刈りの終わっている場所へ行き、鋤を使って根の除去 掘り起こした後は背後のトールに任せてどんどん次に進んでいく ふふ、どんどん地面がきれいになっていくのを見るのは結構楽しいわね トール、そっちはどうかしら? 二人とも同じタイミングで様子をうかがっているのに気づいて思わず吹き出し …ふふ、私達、息ぴったりね! よし、それじゃあこの区画の隅まで一気にやるわよ! |
|||||||
|
||||||||
![]() |
サクラ:未来を見れる良い人なのねぇ。 キョウ:褒める前にちゃんと軍手をつけましょう。 サクラ:なぜつける必要があるのかしら。 キョウ:なぜって怪我をしないた サクラ:戦うとどうせ怪我をしてしまうのにねぇ。 キョウ:……それとこれは別です。はい、どうぞ。 【行動:A】 サクラ まあいつもつけている手袋が破れるのは嫌だわぁ……初めての整地作業だから記念に軍手をつけましょうか。 草刈りね。刃物を使うから軍手を付けるのねぇ。 うんうん。草を少し引っ張りながら根本あたりを切っていけば良いのね。 意外と簡単じゃない。 …… ちょっと飽きてきたわ。 …… かなり飽きてきたわ。 ねえ、キョウヤ。キョウヤ? そういえば単調な事は得意だったわね。 |
|||||||
~ リザルトノベル ~ |
●適材適所 (これって人選ミスじゃあないか……? 主に……ドクターが) 燦々と降り注ぐ夏の日差しの下、『ショーン・ハイド』は隣に立つ『レオノル・ペリエ』をちらりとみて、心の中で呟いた。 (あれ、何かこのやり取り前にもした気が……) 「うわー、凄い雑草だらけ」 ショーンが記憶を遡る前に、伸び放題となっている草を見て感心した風に言うレオノルの声がして、彼は現実に引き戻される。 「ドクター、私は根を取り除く作業を行いますので、草刈りをしていただければありがたいです」 そう言って、ショーンはオクトから貸し出された揃いの作業着に身を包んでいるレオノルへ草刈り鎌を手渡し、すでに草刈りが終わっている場所へ向かい鋤を振るった。 「……」 レオノルはショーンから手渡された草刈り鎌をしばらくじっと凝視していた。 そして、ちらりと彼の向かった方を目で追うが、ショーンは彼女の視線に気づいていないのか、黙々と根の除去作業を行なっている。 「単純作業、苦手なんだよなぁ」 しかしずっと草刈り鎌を手に立っていても草は減らない。 レオノルは渋々しゃがんで草をつかみ、根元に鎌刃を当てると一息に水平に薙いだ。 ザクリ、と気味の良い音を立て、刈られた草は均等な切り口を晒す。 レオノルは初めの方こそざくざく切れる葉っぱに感心した。 しかし。 「うん?……ん、切れないな……」 中には茎の太い草もあり、作業を続けているうちに鎌刃の切れ味もだんだん鈍くなってきた。 「ふぅ……」 しかもずっと屈んだ姿勢での作業のためか、飽きてきた。 「う、うー……退屈だ」 レオノルは鎌の先端を草ではなく地面に突き刺し、頬杖をつく。 「暑いしなあ……」 初夏の空の下での作業、草刈り鎌を持つ軍手の中も蒸れてきている。 レオノルが思わず空を仰ぐと、視界の端に日光を受けてひらりと舞う蝶が映った。 (あの蝶の色……!) 退屈していたレオノルの目に光が宿った。 (……何だろう、なんか、こう、デジャブを感じる……) 一方で、黙々と根の除去作業にあたっていたショーンだったが、ふと何か嫌な予感を感じて後ろを振り返ってみた。 その視線の先には、レオノルがショーンと同じく黙々と草刈りをしている姿が見えるはずだった。 しかし。 「待て、待てってば~!」 そこにはひらひらと舞う蝶を追うレオノルの姿があった。 ショーンは唖然として鋤を置くと、慌ててレオノルを追いかけた。 (やっぱり人選ミスじゃないかー!!) あっという間に距離を詰め、ショーンは難なくレオノルに追いつくと、その首根っこを捕まえた。 「ピエッ」 レオノルは突然首根っこを掴まれ、小さく悲鳴をあげた。 「いやその、あの蝶が今まで見たことのない色だったもんで……」 草刈りを放棄して蝶を追いかけていた後ろめたさからか目を伏せ人差し指を突き合わせながら言うレオノルにショーンは言った。 「ドクター、もう草刈り作業はやらなくても構いません。むしろ他の仲間のバックアップをお願いできませんか。例えば熱中症のケアや休憩所のセットアップと運営等」 「はぁい。わかりましたー」 ショーンの提案は、草刈りに飽きてきていたレオノルにとって渡りに船のようなものだった。 (草刈りしないとおやつ抜き! とか言われなくてよかった~!) ホッと安心しつつ、レオノルは他で作業にあたっている仲間たちが倒れていないかときょろきょろと辺りを見渡しながら見回った。 (ショーンの作業がひと段落したら冷たい水をほっぺにつけて驚かそっと) そんなことをレオノルが考えているとは知らないショーンは、草刈りを任せていたさっきより目に見えて動いているレオノルをみて、一安心して再び鋤を振るうのだった。 ●無理は禁物 「道を作るにしても建物を建てるにしても、土地を整えるのは大切ですもの。暮らしやすい環境にする為に、お手伝いを頑張らなくちゃ」 『リチェルカーレ・リモージュ』はそう言うと、傍に立つ『シリウス・セイアッド』を見上げた。 「がんばろうね、シリウス」 リチェルカーレの言葉にシリウスは小さく頷いた。 「でも無理しないで。ヴァンピールさんて強い日差しには弱いんでしょう?」 空には雲ひとつない抜けるような青空のなか、そこに浮かぶ太陽がじりじりと大地を照り付けている。 続けられたリチェルカーレのシリウスを気遣う言葉に、シリウスはなんと返そうかと少し視線を泳がせた。 「……別に、そこまで暑くない」 しかしシリウスの応えにリチェルカーレは少し眉を寄せた。 今日は教団服ではなく、貸し出されている汚れても良い作業着を身につけている。 丈夫さがある分、通気性はあまり良いとはいえない生地でできており、日差しに弱いというヴァンピールの体質と今日の強い日差しの中無理をさせてはいけない、とリチェルカーレは考えた。 「一時間毎に休憩を入れましょう。絶対よ?」 念を押すように言ってくるリチェルカーレに分かっている、と答える代わりにシリウスは目を逸らした。 彼女は全てお見通しのようだ。 二人はかつて住居があったであろう場所で作業を開始した。 リチェルカーレは草刈り、シリウスは鋤で根を除去する作業だ。 「残っているとまた生えてきてしまうから……」 丁寧に作業をするリチェルカーレに頷き、シリウスは彼女が刈った草の根に鋤を突き立て、根を掘り起こしていく。 「楽しみですね、どんな町にするんですか?」 草刈り鎌を動かしながら、リチェルカーレは同じ区画で作業をしている島民たちへ声をかけた。 人懐こそうな笑みで話しかけられ、作業をしている島民たちは嬉しそうに希望を話している。 そんな会話を背に、シリウスは黙々と鋤を振るい、掘り出した根を廃棄所へ持って行きやすくするためひとまとめにする作業をこなしていく。 ふと、シリウスの近くで鋤を振るっていた島民が膝をついた。 助けおこすと、島民は顔が赤く、息も荒いくなっており、軽い熱中症のようだ。 「大丈夫か? お前は休憩所で休むといい。ここは俺が」 「すまない……助かるよ」 島民はシリウスの申し出に感謝し、ふらふらとした足取りで休憩所へ去っていった。 「さて……」 シリウスは休憩所へと去った島民が途中まで掘り返していた根を完全に抜き、まとめていく。 そんな彼の様子に、リチェルカーレははたと気づき、時計を確認すると、休憩を取ると言う約束の一時間もとっくに過ぎている。 リチェルカーレは草刈りの手を止め、シリウスの元へ駆け寄ると彼の袖を引いて話しかけた。 「シリウス、休憩しましょう」 「……お前は休んでくるといい。俺はもう少し」 「だめよ。途中で倒れたらどうするの」 渋るシリウスにリチェルカーレは語気を強め、半ば強引に彼を日陰まで連れて行った。 シリウスはリチェルカーレが用意していた冷たいタオルを額に当てられ、そこでようやく、初めて鈍い頭痛に気付いた。 いつの間にか自分もだいぶ体力を消耗していたらしい。 「はい、これがお茶。レモンの蜂蜜漬けも持ってきたの」 シリウスがお茶で喉を潤していると、疲れに効くのよ、とリチェルカーレがシリウスにレモンの蜂蜜漬けを差し出した。 蜂蜜の甘さとレモンの酸味が気づかないうちに疲弊していた体の隅々に染み渡る。 「トール、お疲れ様」 そしてリチェルカーレの笑顔に、シリウスは無意識に詰めてしまっていた息を吐くと表情を緩めた。 シリウスは自分を気遣ってくれるリチェルカーレの優しさに胸が温かくなった。 「リチェ、お前もお疲れ様」 リチェルカーレもまた、素直に休息を取るシリウスにほっとして笑顔になった。 ●お喋りは後で 「シキ、草刈りでどうだ?」 西部開拓説明会の後、『アルトナ・ディール』は『シキ・ファイネン』に提案した。 「アルがいいならさんせー!」 明るく答えたシキであったが、すぐに不安そうな表情になった。 「……でもアル華奢だし倒れたりしねえ? へーき?」 「倒れない……てかどういうつもりで言ってんだそれ」 華奢だとか、倒れるとか、アルトナはシキにとってそんなにひ弱に見えるのだろうか。 「もー!シキさんは心配してんのに! アルってば細いんだもん!」 「怒んなよ、悪かったって」 確かにシキの体格は細マッチョで、彼が着ているお洒落な衣服の上からでもわかるくらい筋肉が程よくついているが、対するアルトナは普通の体格だ。 シキからみたら、アルトナが整地という肉体労働ができるか本当に心配なのだろう。 (まあ、シキは人をからかえるような奴じゃないよな) 「喋ってないで作業するぞ」 「はーい」 二人して屈んで雑草の根元を刈り始める。 ザク、という鎌で草を刈る音だけが二人の間にしばらく流れた。 「ねぇねぇアル!」 「なんだよ」 急に沈黙を破るようにシキが明るい声で話しかけてきた。 アルトナは集中力を削がれ、ぶっきらぼうに応じるがシキは気にしていないようで。 「前から思ってはいたけど……」 「な、なんだ?」 「肌しろーい!」 シキはアルトナの袖から覗く手首を見ながら、目をキラキラさせて言った。 「……かなりどうでもいい」 なにか重要なことを聞かれるのかと思ったら、とアルトナはガクッと肩をおとした。 「まぁノルウェンディって寒いし常に防寒してっからあまり焼けねーもんな」 シキもまた自身の肌を見ながらそう言う。2人はともに雪国であるノルウェンディ出身なのだが、シキよりもアルトナの方が色白だ。 「……元気いいな。それだったら自分の周りくらいは喋らずにしっかりやれよ」 「う……はーい……」 喋りならも作業を続けているアルトナに比べ、シキの周囲の草はほとんど残っている。 アルトナからの至極もっともな指摘に、シキはしょんぼりうなだれた。 「……でもちょっとくらい話しかけてもいーじゃんか、ルーくん!」 「言ったそばから……」 しかし呆れたように言うアルトナの声は柔らかい。 「はいはい。もう好きにしろよ」 「えへへ、好きにしまーす!」 呆れたように苦笑するアルトナにシキは人懐こい笑みを浮かべた。 しばらく二人はまたそれぞれ草刈りに取り掛かり始めた。 「ルーくんすっげぇ、ちょーキレイじゃん。さっすが俺の相棒」 すっかり草が取り除かれたアルトナの周囲にシキは感心して目を輝かせた。 「別に」 相棒、という言葉がすこし照れ臭くて、アルトナの返す言葉は素っ気ないけれど、シキはそんなことまったく気にしていないようだ。 「いぇいっ!」 そう言ってシキはアルトナに向かってハイタッチを求めるように手を挙げた。 アルトナはすこし面食らいつつも、静かにシキのハイタッチに応じた。 「アンタも頑張ったんじゃないか?」 シキの周囲の草もきれいに取り除かれていた。 「でしょ? えへーアルに褒められちった」 「珍しく」 「って珍しくないもんっ!」 シキはほおを膨らませた。 「みんながやってたとこもちょーキレイー!」 各所で作業に当たっている教団員たちの姿を見つけたシキは感心して手を叩いた。 「アル、これ終わったら甘いものでも食べて休憩しない?」 「悪くないな。じゃあまずは、お喋りしないで鎌を動かすんだな」 まだまだ刈るべき雑草は残っている。 「ココアとかあるといいな~」 「ココアは流石にないんじゃないか?」 ココアは二人の共通の好物だが、寒い時期に飲むココアは休憩所にあるかどうか不明だ。 「えーでも冷たいココアとか美味しそうじゃん」 「それもそうだな」 「じゃあ残りも頑張りますか~!」 なければ別の甘いものでもいい。 二人は一層、草刈り鎌を動かす手に力が入るのだった。 ●いつかの未来のために 『アリシア・ムーンライト』はオクトが貸し出した作業着に身を包み、普段は下ろしている黒髪を束ね、邪魔にならないようにポニーテールに結った。 そんな普段とは違う彼女の姿に見惚れてか、パートナーである『クリストフ・フォンシラー』は無意識のうちになぜか作業着の袖をまくった。 「あまり、袖をまくらないほうが、いいと思います。虫に刺されたりとか、草で切っちゃったりとか、ありますし……」 それに気づいたアリシアがおずおずとクリストフに言う。 オクトが貸し出す長袖の作業着はこの時期暑いかもしれないが、その長さにもちゃんと意味がある。 「あ、ああ、そうだね。傷になったところから菌が入ったら危険だしね」 クリストフはアリシアに見惚れていたことを気取られぬよう、無意識でまくっていた袖を慌てて下ろすと誤魔化すようににっこり微笑んだ。 「さ、オクトの、ひいてはエルリアや姫様のためにも、がんばろうか」 「はい、がんばりましょう」 アリシアはクリストフに頷くと、すでにオクトのメンバーが草刈りを終えた場所に向かい、鋤を振るった。 ずっと再会を望んでいた姉と、彼女が仕える、アリシアをおねえちゃんと呼ぶ小さな女王。 アリシアにとって大切な家族のために、力になりたい。そんな気持ちが彼女を突き動かしていた。 一方、別の場所で同じく鋤を用いて根の除去作業に当たっていたクリストフは、ふと顔を上げてアリシアへと視線を向けると、慌てて彼女の元へ向かった。 そしてちょうど彼女が振り上げた鋤をタイミングよく取り上げた。 「待った。アリシア顔真っ赤だよ。熱でもあるんじゃ……?」 クリストフはアリシアの額に手を当てて熱を測る。 「え、そんなに真っ赤になって、ますか?」 額に触れた彼の手の、ヒヤリとした冷たさが心地良くて。 (額におかれた手に、少しドキッとしてしまうのは、仕方ない、ですよね) 熱なんかないのはアリシア自身わかっている。けれども、至近距離から見つめてくるクリストフに頰が熱くなる。 (熱はないみたいだな。一生懸命作業しすぎたのか) アリシアの顔は少し赤みがかってはいるものの、額はそれほど熱くない。そのことに安心して、クリストフようやくアリシアの額から手を離した。 「少し休憩しようか。君が倒れたらエルリアに怒られるよ」 「……はい」 アリシアはクリストフを怒るエルリアの姿を想像して、それはいけない、と小休止することを受け入れた。 そして日陰に移動して冷たいお茶の入った水筒を取り出し、それぞれのカップに注いで手渡した。 「これハーブティーだよね」 「はい。少しだけ蜂蜜を加えて飲みやすくしました。……この島にもこういうお茶の葉を育てる場所、作りたいですね」 「そうだね、作れたらオクトの女性陣も喜びそうだよね」 クリストフの言葉にアリシアは嬉しそうに頷いた。 「はい。魔結晶以外にも、特産品を作れたらいいなって」 今はまだ何もないこの場所に、やがて町ができて、所々に作られた花壇には青々としたハーブやさまざまな草花。 そしてそのハーブを収穫し、姉のエルリアやメアリーとハーブティーでお茶会を開いたり。 もしものそんな風景を想像するとなんだか二人の心も華やぐのだった。 あれこれ希望を話しながら休憩を終えたふたりは、再び整地作業に戻った。 「掘り起こしの力仕事は俺がやるから、アリシアはならしてってくれる?」 クリストフは水平器をアリシアに手渡して言った。 「共同作業ですね」 自分で言ったその響きが少しくすぐったくて、照れ臭くて。 アリシアはキュッと水平器の柄を握った。 「息の合ったところを皆に見せつけよう」 「はい」 悪戯っぽく笑うクリストフにアリシアは頬を染めながらも頷いたのだった。 ●息ぴったりな二人 「今度は西部の開拓作業ね。……というか、人力でやるのね。大変そうだけど、がんばりましょう」 『リコリス・ラディアータ』ぽつりとつぶやいた。 「開拓の基本はまあ、人力に頼ることになるよな。ずっと魔女頼りというわけにもいかないし、雇用も生まれるからいいとおもうよ」 その言葉を受けて、『トール・フォルクス』があっけらかんと言う。 「野良仕事は冒険者時代以来だな。腕が鳴るよ」 そしてトールはうんと背伸びをした。 そして二人はオクトから貸し出された作業着に着替えると再び合流した。 「リコの作業着姿、結構様になっているじゃないか」 「そう? ありがとう、トールも似合ってるわ」 普段の団服や私服などとは違う姿はお互い新鮮に感じた。 「作業内容を見るに、二人では手分けしてどうこうと言うレベルのものではないわね……。やることを一つ決めて、そこを集中的にやっていきましょう」 そして二人は鋤を手にとり、草刈りの終わっている場所へと向かった。 リコリスが根を除去し、トールがそれをまとめてある程度たまったら袋に詰めていく。なんとも息のあった効率の良い分担作業だ。 リコリスはとにかく背後のトールに後をまかせ、どんどん根を掘り返して進んでいく。 周りにはあっという間に根を詰めた袋が積み上がっていき、トールはそれを処分場まで運んで行く。 「ふふ、どんどん地面がきれいになっていくのを見るのは楽しいわね」 リコリスは満足げに呟き、汗を拭った。 作業が終わった場所とこれから作業をする場所を見比べると、その差は歴然だった。 「これはこれで、なかなかの重労働だな」 一方でトールは根を詰めた袋の口を縛りながらふと、顔をあげた。 (リコの方はどうだ?) 「トール、そっちはどうかしら?」 するとちょうどリコリスもトールを振り返ったところで、お互いの目が合い、吹き出した。 「……ふふ、私達、息ぴったりね!」 「ははっ確かに」 クスクス笑うリコリスを、トールは眩しそうに見つめた。 「それじゃあこの調子で、息を合わせてもうひと頑張りしようか」 「よし、それじゃあこの区画の隅まで一気にやるわよ!」 その言葉通り、二人はあっという間に任された区画の作業を終えたのだった。 「おつかれさま、トール」 トールが根を処分場に運んでからリコリスの元へ戻ると、リコリスはニ人分のレモネードを休憩所で貰っているところだった。 「リコもおつかれさま」 お互いを労いつつ、二人は飲み物を手にし、連れ立って木陰に腰を下ろした。 二人が作業をした区画はオクトのメンバーや島民によってきれいに均され、遠目から見るとそのきれいさに達成感を感じることができる。 「あ、リコ、ここ泥がついている」 ふと、リコリスの白い頬に付いた土汚れに気付いたトールは首にかけていたタオルで拭き取る。 「気づかなかったわ。ありがとう、トール……あら?」 「どうした、リコ?」 トールが尋ねると、リコリスはすこし嬉しそうな顔をしている。 「トールも、ここ」 そして、そう言ったリコリスは自分の頬を指した。 その場所は先ほどトールがリコリスの頬を拭った場所と同じで。 なんとふたりは同じ場所に泥汚れをつけていたのだ。 「え、俺も?」 「じっとしてて」 リコリスもまた、自分のタオルでトールの頰についた泥汚れを拭う。 「……ありがとう」 そこまで息が合うかなとすこし照れ臭いようなくすぐったいような。 二人は互いに目を見合わせ、クスクスと笑った。 磯の香りが混じる涼やかな風が、そんな二人の間を吹き抜けていったのだった。 ● あなたをリードしたくて 「皆飽きる頃です。がんばりましょう」 作業着に着替え、草刈り鎌を持った『キョウ・ニムラサ』が『サク・ニムラサ』に言った。 彼の言う通り、昼を過ぎた作業区画には人はまばらで、二人以外ほとんどの人は休憩をとっている。 「未来を見れる良い人なのねえ」 サクはキョウに先見の明があることを褒め、にっこりと笑う。 人々が飽きて休息をとる時間から作業へ参加することで、整地の進捗を止めずに進めることができる。 「褒める前にちゃんと軍手をつけましょう」 キョウと同じく作業着に身を包んだサクは、差し出された軍手を受け取らず、それを眺めて首を傾げた。 「なぜ軍手をつけるのかしら」 「なぜって、怪我をしないた」 「戦うとどうせ怪我をしてしまうのにねぇ」 キョウの言葉を遮り、サクが言う。 「……それとこれとは別です。はい、どうぞ」 それに、そもそも今日は戦闘をしにきたわけではないと、キョウはサクに軍手を手渡した。 「まあいつもつけている手袋が破れるのは嫌だわぁ……はじめての整地作業だから、記念に軍手をつけましょうか」 そう言って軍手をはめたサクだったが、今度は草刈り鎌をまじまじと眺めている。 「草刈りね。刃物を使うから軍手をつけるのねぇ」 「それに葉で手を切ったりすることもありますからね」 サクに答えたキョウは身をかがめて早速草を刈っていく。 「うんうん。草をすこし引っ張りながら根元あたりを切っていけばいいのね」 「はい、見ててください。こうやって……」 キョウが鎌を根元に当てて刈ってみせると、サクもそれに倣って鎌を振るう。 「意外と簡単じゃない」 すぐにコツを掴んだようでしばらく黙々と草刈り作業に当たっていたサクだった。しかし、その数分後。 「ちょっと飽きてきたわ」 「暑いですからね。すこし休みますか」 サクの作業ペースが落ちてきたことに気づいたキョウが提案した。 二人ともヴァンピールなので、日光の下での長時間の作業は熱中症などのリスクは他の種族よりも高い。 「ちゃんと水飲みましょう。というか、水筒を持っているのサクラでしょう?」 「そういえばそうだったわね」 サクは水筒を取り出すと、冷たい水で喉を潤した。 「ちょっと分けてくださいよ……」 サクから水筒を受け取り、キョウも水を飲む。 種族の特性上、昼を過ぎてから作業に参加することにしたが、まだ日差しは強い。 「たぶんまだ終われませんので、がんばりましょう」 作業が終わる日暮れまでには任された区画を終わらせたい。 すこしの休憩を挟み、再び作業を開始した二人だったが。 「かなり飽きてきたわ」 サクは完全に集中力が切れてしまった。 「ねえ、キョウヤ。キョウヤ?」 サクが話しかけるが黙々と草を刈っているキョウからの返事はない。 「そういえば単調なことは得意だったわね」 キョウの真剣な横顔にふと思い出し、サクは目を細めた。 「面倒だけど、指令だし……」 サクはふぅ、吐息を吐くと草をつかみ鎌の刃をあてて引く。 「サクラ」 「なぁに?」 再び作業を再開したサクに、ようやく顔を上げたキョウが声をかけた。 「こう、手首のスナップを利かせるとすこしの力でもたくさんの草が一気に刈れますよ」 「あら、ホントねえ」 キョウがやってみせると、均等な切り口を残して草は根だけになった。 実は、キョウは作業をしつつ、単調な作業が苦手なサクにもやりやすい効率の良い方法を考えていたのだ。 「これならすぐに終わりそうね」 キョウのリードのおかげで先程よりもはるかに二人の作業ペースが上がり、どんどん刈られた草が周囲に積み上がっていき、日が落ちるずいぶん前に作業を終えることができたのだった。
|
||||||||
![]() |
![]() |
![]() |
*** 活躍者 *** |
|
![]() |
|||||
|
|