~ プロローグ ~ |
機械都市マーデナクキス。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
マーデナクキスを見限った守護天使…その悲憤は如何ほどのものでしょう その存在感に肌がひりつく 戦闘 喰人 先んじて正面へ 前衛同士天使を囲うように展開 後衛が動きやすく、狙われないようになるべく攻撃を引き受ける 前衛に対しても集中攻撃を受けるようなら阻止しお互いのHPの減りに注意 天の理はノックバックの影響を極力低くする為出来るだけ腰を落とし再び接近 漂白の風はルーノの提案に合わせ誘発狙う 2回目の発動があるようなら竜哭の特殊効果をインタラプトで挟む (風の効果無し且つCTは発生させるが理想) 一度見た技を止められずして如何する 皆行ってくれ ヨナ 陣形が安定していればFN17→19で頭上から槍の雨を降らせ 続 |
||||||||
|
||||||||
死んでも生き返るから…か ポイズンショットで毒を狙う 毒に気を取られて他の仲間の攻撃が当たるならそれで御の字だ 仲間に即死級の攻撃が飛ぶなら庇って死霊の石で食い止め エクスプロイトショットで漂泊の風を誘発するブラフを狙う 総攻撃時に黒炎を発動しエナジーショットで攻撃 耐久を下げて仲間の火力を底上げする 仲間のケアを要求する 俺達は単なる浄化師だ アンタみたいな英雄様じゃない 身と共に心をすり減らし、見えない血を流しながら戦っている 今回そいつらに対してどれだけダメージを与えたか 「ちっぽけな人間如き」「死なないから平気だろう」 アンタの言動の本質はアンタが嫌う差別や奴隷を酷使する人間と同じ思考回路だろうが! |
||||||||
|
||||||||
未来が変わったのを、そのまま信じて頂くことは、できないの、でしょうか… 信じて貰う為の、戦い はい…想いを全て… リチェちゃんと共に仲間達に禹歩七星 クリスと一緒に背後側へ リチェちゃん、ルーノさんと対象が被らないように気を付けながら 体力が50%を切らないように天恩天賜2でこまめに仲間達の回復を 大きく体力が削れた方には天恩天賜3を クリスの回復は合図があるまで控えて もし攻撃で狙われたら式神召喚 天の理発動時はみんなの回復優先で コンタクトで一度目の漂泊の風の魔力の流れを見ておき 次にそれが来ないか注意しておきます 私は…戦いは、苦手です でも、大切なものを守る為に、強くなりたいと、思いました 人は、変われるもの、です |
||||||||
|
||||||||
シリウスの言葉に うん、と小さく頷いて わたし達は変われる 未来も変えられると信じてほしい その為に必要なことなのよね 魔術真名詠唱 禹歩七星をシアちゃんと ルーノさんとシアちゃんと 回復を分担 ふたりと回復範囲が被らない位置に 回復は体力が6割を切った仲間から優先で 他の陰陽師と連携 無駄のないよう 一斉攻撃の前に 鬼門封印で相手を拘束 天の理 漂白の風をコンタクトで警戒 わかれば仲間に周知 特定の誰かが狙われれば 割り込んで雷龍で反撃 誰も倒れることの無いよう ジェロニモ様が悲しまれるのもわかります だけど わたしは信じているの 人は優しくなれる 種族が違ったって手を取り合えるって だから ジェロニモ様 もう一度 わたし達にチャンスをください…! |
||||||||
|
||||||||
仲間とジェロニモ様を包囲するような陣形で立ち回りましょう 私達は前衛で出し惜しまず、魔術真名の詠唱と黒炎解放によって、全力を尽くします 天の理を誘う時やチャンス時は磔刺とパイルドライブで猛攻をかけます 他の方が集中し狙われる時は、エッジスラストで飛び込みジェロニモ様のペースを崩しにいきましょう 剛袈紅蓮撃は、ジェロニモ様が他の方の攻撃に対応している時に同時攻撃の形で差し込み苦痛による動きの阻害を狙います また、ジェロニモ様が漂白の風を一度使用後、仲間の方々がそれぞれ動けるチャンスが来たら化蛇の黒炎による水流で押さえ込んでみせます。彼が土属性ならこの力もより優位に働くはず 総攻撃の好機を呼び込んでみせます |
||||||||
|
||||||||
ジェロニモ様に力を示す事 人の可能性を信じてもらうために全力を尽くす 魔術真名詠唱 リ:初手で戦踏乱舞 前衛 他の仲間と連携してジェロニモ様を囲む できるだけ彼の動きを阻害する 特に回復役への意識を逸らす 死角へ飛び込んでヒットアンドアウェイ 4Rたてば リコリスさんと被らないタイミングでスポットライト使用 強化支援の後一斉攻撃というパターンを作り 漂白の風使用を狙う 戦闘乱舞の効果が切れれば そのタイミングでかけ直し 魔力感知で警戒 大技がきそうなら仲間に伝える 攻撃は回避かスイッチヒッター 陰陽師への攻撃は盾になる セ:中衛位置 回復役の前でペンタクルシールド使用 魔力が切れれば体で防ぐ 一斉攻撃の前にルーナープロテクションを使う |
||||||||
|
||||||||
ナツキはジェロニモ側面へ移動 陰陽師への攻撃を妨害・庇いつつ攻撃 包囲で敵の行動範囲の制限と、多方面からの攻撃による回避率の低下を狙う ルーノもスポットライト使用者の生命に注意しつつ移動 側面と正面味方への回復を主に担当 リチェルカーレとアリシアの回復対象、武芸百般の威力、相手の技の使用状況を確認 次の相手の行動で戦闘不能者を出さないよう また味方の生命が二割を切らないように 優先度を判断し回復する 最初の強化に合わせて一斉攻撃 次の強化に合わせて黒炎開放、先より強力な一斉攻撃を装い漂白の風を誘う 漂白の風の後、禁符の陣とナツキの特殊能力+スキルでダメージを稼ぎたい 15R後は味方とスキルのタイミングをずらして氷結斬 |
||||||||
|
||||||||
神様といい天使様といい、上位者ってどうしてこうめんど…こほん、試練がお好きよね でも今回のはシンプルでいいわ、やれるだけのことはやってみましょう 魔術真名詠唱 支援を受けたらジェロニモに向かって、後衛を狙わせないように張り付く クリスが後ろに回り込む時にスポットライト使用 邪魔をさせずに回り込んでもらえるようにする その後戦踏乱舞で支援してから蘭身撃で攻撃 前衛の皆で敵を包囲 なるべく一人にダメージが集中しないようにヘイトコントロールには気を付けて 後衛の陰陽師が狙われたときのみスポットライトで注意を引き付ける 魔力感知で天の理、漂白の風の使用タイミングを探り 味方の一斉支援にタイミングを合わせて再度戦踏乱舞 |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
守護天使・塩の王ジェロニモと戦うため、浄化師達は彼の前に訪れていた。 (威圧が凄まじいですね) ジェロニモを前にして『タオ・リンファ』は戦力を感じ取る。 (カチーナ様とお会いした時とは異なる威圧感……躊躇なく、こちらを攻撃してくると見た方が良いですね) ジェロニモに対し戦意を高めていると、隣りに居た『ステラ・ノーチェイン』が声を上げる。 「マー、あいつやっつければいいんだな!」 「そうだ。存分に殺しに来い。私もそうする」 ステラに返すジェロニモの言葉に、皆の緊張感は高まる。 ジェロニモの言葉に、『リチェルカーレ・リモージュ』は哀しそうに声を上げる。 「戦いは、避けられないんですね」 沈んだ声で呟くリチェルカーレに、支えるように『シリウス・セイアッド』は応えた。 「……きっかけがいるんだと思う。守護天使とは言え、考えを変えるのは難しいんだろう」 「……うん」 シリウスの言葉に、リチェルカーレは小さく頷いて返す。 「わたし達は変われる。未来も変えられると信じてほしい。その為に必要なことなのよね」 戦いは望まないが、それでも未来を掴むため戦う。 悲しみと決意の言葉を口にするのは『アリシア・ムーンライト』も同じだ。 「未来が変わったのを、そのまま信じて頂くことは、できないの、でしょうか……」 「拳を交えて友情を育む。そう言うのを望んでるみたいだね、ジェロニモは」 アリシアの言葉に、『クリストフ・フォンシラー』は応える。 「信じて貰うための戦いだ。負けられないよ」 「信じて貰う為の、戦い……」 アリシアはクリストフの言葉を噛みしめるように呟いて、決意を言葉にした。 「はい……想いを全て……」 同じように決意を心に抱くのは『ナツキ・ヤクト』も同じだ。 「ナツキ、やれるな?」 張り詰めた気配を滲ませるナツキに、『ルーノ・クロード』は声を掛ける。 (ナツキだから、大丈夫だと思うが……) 気遣うルーノに応え、ナツキは笑顔で返した。 「やってやるさ、ルーノ。俺だけじゃない、ルーノも、みんなもいるんだ。やってやろうぜ、ルーノ」 そう言って拳を突き出して来るナツキに、ルーノは苦笑するように拳を当て応えた。 「ああ。やるぞ、ナツキ」 皆が戦いへの意欲を高める中、『ヨナ・ミューエ』はジェロニモの放つ威圧感に肌をひりつかせていた。 (マーデナクキスを見限った守護天使……その悲憤は如何ほどのものでしょう) 硬い表情のジェロニモを見ながら、思い悩むように眉を寄せる。 そこに『ベルトルド・レーヴェ』が声を掛けてきた。 「ヨナ、いつも通り暴れてくれ」 「いつも通りってどういうことです!?」 思わずツッコミを返すヨナに、ベルトルドは笑みを浮かべながら返した。 「相手が誰だろうと、やれることをするだけだ。これまでしてきたようにな」 「……もちろんです。相手が誰だろうと、全力を尽くすのみです」 ベルトルドに発破を掛けられ、ふんすっ、と意気込むヨナだった。 皆が戦意を高める中、ジェロニモの大人げなさにため息をつくような思いを浮かべる者も。 「一度戦わないと納得できないなんて、ジェロニモ様も子どもみたいだこと」 手の掛かる子供を見るような眼差しで、『セシリア・ブルー』はジェロニモを見詰めながら呟く。 これに返すように『リューイ・ウィンダリア』は言った。 「ジェロニモ様に力を示そう」 未来を掴み取る意思を込め、ジェロニモを見詰めながら宣言する。 「人の可能性を信じてもらうために全力を尽くすよ」 「そうね」 くすりとセシリアは笑みを浮かべ、リューイに応えるように言った。 「人は変われる生き物だということをお見せしましょう」 ジェロニモに対して、ため息をつくような思いを浮かべるのは『リコリス・ラディアータ』も同じだ。 「神様といい天使様といい、上位者ってどうしてこうめんど……こほん、試練がお好きよね」 小さく呟くと、戦いへの意欲を込め続ける。 「でも今回のはシンプルでいいわ、やれるだけのことはやってみましょう」 リコリスの言葉に反応したかのように、ジェロニモは今回の戦いについて説明した。 「私が構築する結界の中で戦いを行う。この中で死んでも外に出れば無傷で元に戻れる」 ジェロニモの説明を聞いて、『トール・フォルクス』は軽く眉を寄せた。 (どれだけやられても死なないとはいっても、目の前で仲間がやられるのは見たくない) 仮初めだろうと、死は死。そんな物をリコリスに、そして仲間に味あわせたくはない。だが―― 「全員無事で試練を終えられたらいいけど……手ごわそうだな」 容易い相手ではないジェロニモに、トールは気合を入れた。 そうして皆が意気込む中、『ショーン・ハイド』はジェロニモの説明を聞いて腹立たしげに呟く。 「死んでも生き返るから……か」 ジェロニモに対して思う所があるのは、『レオノル・ペリエ』も変わらない。 (何で2年前から観測を止めたんだろ。職務怠慢にも見えるんだよねぇ) ため息をつくように思う。 (彼が観測できるのはあくまでマーデナキクスという系の中だけ。晴天の時に大雨が降るとは思わないとでも言うのかなぁ。あるいは落ちる林檎が数秒後にどうなるなんて分かるとでも?) 色々と言いたいことはあったが、全ては戦いが終わってからだと気持ちを切り替え、レオノルも戦いへと意識を集中する。 皆が戦いの準備を整える中、ジェロニモは自身の戦力を口にした。 「私はお前達の戦力を見ただけで『知る』ことが出来る。だからこそ、気兼ねなく戦えるよう、私がお前達との戦いで使う力について話そう」 そしてジェロニモは自身の戦力について話す。 前世の、人であった頃の武勇と、創造神に与えられた力の発露。 漂白の風と天の理。 全てを話し終えると、周囲は無音に包まれる。 見れば、全てが見渡す限りの塩の大地に代わっていた。 ジェロニモの創り出した結界に入ったのだと浄化師達が気付く中、ジェロニモは言った。 「では、戦おう」 守護天使・塩の王ジェロニモとの戦闘が始まった。 ●ジェロニモを打ち倒せ! 「禹歩七星を、かけます」 「みんな集まって」 魔術真名詠唱後、アリシアとリチェルカーレの呼び掛けに、皆が周囲に集まる。 初手、身体能力の強化。 長期戦も考慮した、今までの戦闘経験に沿った戦術。 この場に居る浄化師は戦い慣れていることもあり、動きはスムーズで無駄が無い。 それに対しジェロニモは、一気に突進してきた。 凄まじく速い。 禹歩七星を掛けている間に、一気に距離を詰めて来る。 視線の先に狙いをつけるのは、リチェルカーレ。 魔力が高く、回復を行える彼女を真っ先に『死亡』させるべく、真っ直ぐに距離を詰めて来た。 それに気付いたシリウスが跳び出す。 シリウスはベリアルリングを使い尋常ならざる力を得ている。だが、それでも―― (長引くとこちらが不利だ) そう思わされるほどの威圧感がジェロニモにはある。 短期決戦で決着をつけようとしたシリウスは、高速の踏み込みと共に真正面から跳び込む。 ソードバニッシュ。 瞬速の斬撃を放とうとした瞬間、全てを漂白する風が吹いた。 「空白に飲まれよ」 ジェロニモの呟きと共に翼がはためき、風が浄化師達にまとわりついた。 同時に、シリウスの放ったソードバニッシュが無効化される。 確かに斬りつけたというのに、ジェロニモには掠り傷すら与えられない。 それがジェロニモの戦い方。 短時間とはいえ、全ての攻撃を無効化する能力を、全く出し惜しみしない。 それどころか、自分の身を守る術として使うことすらしていない。 殺すべき相手を、殺せる距離に近づくための『手段』として使っている。 浄化師達は、リチェルカーレに向かうジェロニモを止めるべく攻撃するが、漂白の風の効果により全てが無効化。 攻撃を捌く必要のないジェロニモは強引に距離を詰める。 (まずい) ジェロニモの動きに、クリストフは焦る。 (陣形を取る暇がない) 予定では、皆でジェロニモを囲むような陣形を取り、戦いの要となる回復要員を後方に下げる安全策を取るつもりだったが、ジェロニモは初手からそれを食い破ろうとしていた。 止めようにも、漂白の風の効果が切れるまで攻撃が効かないのだ。 (このままだと止められない……いや、ギリギリで止められ――いや待て) ぞわりと、寒気がクリストフの背中に走る。 焦燥に急かされるように、クリストフは黒炎を解放した。 「お前の力を示せ、ロキ!」 元より、漂白の風が使われると同時に黒炎を解放する予定だった。 だがそれは、総攻撃に繋げるためのもの。 ジェロニモに追い込まれて使うつもりなどなかったが、今ここで使わないと『詰む』という予感と共に解号を響かせる。 その予感は正しかった。 ジェロニモの漂白の風の効果が切れ、ようやく皆の攻撃が届く。 リチェルカーレとの距離は、まだ僅かとはいえ離れており、ギリギリでジェロニモを遠ざけることが出来るかもしれないという間合い。 その距離で、ジェロニモは立て続けに大技を放った。 「天威を知るがいい」 ジェロニモの翼が羽ばたくと同時に、衝撃波が浄化師を襲った。 骨の髄に浸み込むような衝撃と共に、全員が吹っ飛ばされる。 それこそがジェロニモの狙い。 天の理の効果である、強制全体ダメージではなく、全員を吹っ飛ばす効果を有効に使う。 これにより、ジェロニモを止めるべく距離を詰めた浄化師は後方に跳ばされ、リチェルカーレは1人無防備になる。 あとは距離を詰め、リチェルカーレが『死亡』するまで連続攻撃。 その間に浄化師の攻撃は喰らうが、耐久力の高さを活かし、ごり押しする。 あとは同じように回復要員を『死亡』させていけば、残りの浄化師達も全滅できる。 だがジェロニモの目論見は叶わなかった。 「ここで使ったか」 自分自身の力で吹っ飛んだジェロニモが、面白そうにクリストフに視線を向けた。 クリストフの黒炎魔喰器であるロキは、黒炎解放中に一度だけだが、相手の攻撃を反射させることが出来る。 それはジェロニモの動きに合わせ攻撃手順を組んでいたからこその成果。 もしこの時点でジェロニモの動きを止められなかったら、リチェルカーレは『死亡』していた所だが、クリストフの1手が防いだ。 「陣形を!」 クリストフはジェロニモを囲むべく、後方に動きながら皆に呼び掛ける。 同時に、皆も陣形を組むべく動く。 その中でジェロニモが取ろうとした一手は、戦術的逃走だった。 浄化師に囲まれるより前に距離を取ろうとする。 ジェロニモは独りで集団に挑む戦いを心得ていた。 可能なら、殺すべき相手を初手から全力で殺し。 囲まれそうになれば一時離脱して距離を取る。 追いかけてくる相手は足の速さで差が出るので、敵の戦線が伸びた所を各個撃破していく。 それを実行されれば相当拙いことになったが、リコリスの一手がそれを防ぐ。 クリストフがジェロニモの後方に回り込もうとするのに合わせ、スポットライトを使う。 魔力を込めた舞踏は魔術としての効果を発動し、ジェロニモを強制的に引きつける。 するとジェロニモは、リコリスを『死亡』させるべく突進して来た。 長柄の槍を創り出し、瞬く間に距離を詰める。 「――来なさい!」 ジェロニモの圧力に、思わず下がりそうになる自分を鼓舞し、リコリスは逆に前に出る。 リコリスの動きに合わせ、トールは援護するべくジェロニモに照準を合わせた。 ジェロニモとリコリスの距離が詰まり激突する。 その寸前、ベルトルドが先んじて、側面から殴り掛かった。 一瞬で間合いを詰め、魔力を込めた拳を叩きつけようとする。 それは完全に不意打ちだった。 ジェロニモがリコリスのスポットライトで意識も視線も集中する中、音もなく踏み込んでの一撃。 しかしそれにすらジェロニモは反応する。 リコリスに向かっていた突進の勢いを殺さず、ベルトルドに向かって体をひねる。 同時に放たれる槍の一撃。 閃光の如き突きが、ベルトルドの心臓を貫かんと撃ち出された。 死の気配がベルトルドに這い寄る。 それを強引にベルトルドは振り払う。 踏み込みながら体をひねり避ける。 無茶な動きで筋肉を断裂させながら、辛うじて直撃は回避。 だが肩の肉を抉り獲られる。 凄まじい激痛と衝撃。 しかしその全てを無視しベルトルドは間合いに踏み込むと、地面を踏み鳴らし拳を叩き込む。 衝撃と共に魔力が浸透し、爆発。 爆裂斬の一撃を脇腹に受けたジェロニモは、獰猛な笑みを浮かべ反撃しようとした。 そこにリコリスの蘭身撃が入る。 ジェロニモがベルトルドに攻撃しようとした隙を逃さず、目にも留まらぬ素早いステップで連続蹴りを叩き込む。 それを受けたジェロニモは、痛みも傷も無視しカウンターを放とうとするが―― 「させるか!」 トールのピンポイントショットが防ぐ。 急所を狙って放たれた矢をジェロニモは反射的に跳んで避ける。 この時点で、浄化師とジェロニモの距離はある程度離れていた。 そこにヨナが全力のオーパーツグラウンドを放つ。 (点の攻撃では避けられます。ならば避けようのない雨のような攻撃を) ヨナの放出した魔力が形を結び、無数の槍となり、文字通り雨のごとくジェロニモに向かって降り注ぐ。 それをジェロニモは、2本の斧で迎え撃った。 巨大な斧を左右の手の中に創り出し、降り注ぐ槍の全てを弾く。 弾かれた槍は砕け、魔力に戻り消滅。 全ての槍を弾き砕くまで、わずか一息。 けれど攻撃を捌く間は動けず、その場に釘付けになる。 そこにショーンとレオノルの連携攻撃が叩き込まれた。 「Fiat eu stita et piriat mundus.」 ショーンは解号を唱え黒炎解放。 怨嗟の銃・ランキュヌに全力で魔力を込め、エナジーショットを叩き込むべく狙いをつける。 即座に回避に動こうとするジェロニモ。 ショーンの黒炎魔喰器ランキュヌは、黒炎解放中、対象1体の防御と魔法防御を低下させる事が出来る。 それを脅威と見て避けに徹しようとしたが、そこにレオノルの援護攻撃が入った。 (一瞬でも良い。視覚を封じることが出来れば――) 祈るような思いと共に、捧身賢術の重ね掛けで強化したナイトメアを放つ。 ショーンに集中していたジェロニモは回避が間に合わず、溶けたチーズのような質感の闇に包まれる。 闇はジェロニモを包み込むと圧縮。 焼け融けるような痛みと共に衝撃を与え、一瞬とはいえ視覚を奪った。 「やってくれるな」 笑みを浮かべるジェロニモに、ショーンがエナジーショットを放つ。 鬼火のような弾丸を、ジェロニモは見えない状態で躱そうとするが、躱し切れない。 心臓への命中は回避するが、翼を撃ち抜かれる。 これにより、ショーンの黒炎解放中は、ジェロニモの防御と魔法防御は低下する。 戦いの序盤にして、最大の好機が訪れた。 ショーンの黒炎の効果が途切れるまでの間に、どれだけ多くのダメージを与えられるかが勝負の分かれ目になる。 この好機を逃さず、浄化師達は前に出た。 「僕達はサポートに回ります」 「頼む!」 リューイに戦踏乱舞を掛けて貰い、戦意を上げたナツキがジェロニモに突進する。 迷いはなく、けれど恐怖が無いわけではない。 (誰かが死んだら平気でいるなんて無理だと思う) 仲間の死は、たとえ一時の物だとしても見たくない。 (勝てるのか分からない) 不安を覚えるほど、ジェロニモの威圧は強い。だが、それでも―― (ここで立ち止まったら全部無駄になっちまう。みんなの未来の為に守護天使の力が必要なんだ!) みんなの未来を掴み取るため、ナツキは決死の覚悟で真正面から距離を詰める。 それに合わせ、ジェロニモを左右から挟むように2組が動く。 「今の自分にできることを、精一杯やろう」 「ええ」 リューイの呼び掛けにセシリアは応える。 「ないものねだりをしても仕方がない。力のない人間でもしぶといものだと、そう知ってもらうのが私たちの役目」 がんばろう。 2人は、死地に向かいながらも笑みを交わし、ジェロニモとの戦いに挑む。 リューイの動きに合わせ、セシリアは右手に動く。 セシリアの狙いはルーナープロテクションによるジェロニモの一時的な弱体化。 回復役の陰陽師達を背に庇うようにして動き、リューイと協力して仲間の援護に動く。 2人は、仲間に比べ火力に劣ることは知っている。 そのぶん、引きつけとサポートに全力を尽くす。 仲間の支援を考え動くのは、リンファとステラも同じだ。 「ステラ!」 「いくぞ! マー!」 左手の側面から、リンファとステラは突進する。 初手から全力を振り絞り、ジェロニモに僅かでも傷を与えるべく踏み込む。 それをジェロニモが迎え撃つ間に、ルーノが回復に動く。 「ベルトルド、こっちだ。回復する」 「すまん。頼む」 肩を抉られたベルトルドをルーノは癒す。 (一撃でこれだけの傷が――) ベルトルドの傷を確認したルーノは、ジェロニモの強さを実感する。 (魔力を惜しんでいる余裕はない。全力を尽くさなければ全滅する) あとのことを考えるよりも先に、まずは仲間が全力を出し続けることが出来るよう尽力する。 (今回に限っては最終的な勝利に繋がれば自身の生存は二の次だ。……それにこの場の皆なら、もし倒れても後を託せる) ルーノが決死の覚悟を固める中、浄化師は連携して一斉攻撃をした。 まず真正面から、ナツキが跳び込む。 獣の如き激しさで間合いを詰め、突進の勢いも込めた獣牙烈爪突を放とうとする。 対するジェロニモは、手にした斧を消し、棍を創り出すと構えた。 そこに死角に回り込んでいたリューイが斬撃を放とうとする。 ほぼ同時に襲い掛かる2人の攻撃。 しかしそれにすらジェロニモは反応する。 僅かに重心を下げると、ナツキに向き合ったまま、死角から跳び込んでくるリューイに目掛け、棍による突きを放つ。 ギリギリで躱すリューイ。 頬を抉るように裂かれ出血。 躱しはしたが、攻撃のリズムを崩され動きが一瞬だが止まる。 その隙に、ジェロニモはナツキに集中し、真っ向から迎撃しようとした。その瞬間―― 「波濤に呑み干せ! 化蛇!」 リンファが黒炎を解放し、特殊能力を叩き込む。 振り降ろしの動きに合わせ吹き出した黒炎が津波へと代わりジェロニモを飲み込んだ。 「ぬっ!」 避けられないと見たジェロニモは、腰を落とし津波の勢いに流されないようにする。 だが土気の王でもあるジェロニモは、水の力の具現である化蛇の津波に衝撃を受け動きが完全に止まった。 そこに一斉攻撃を叩き込む。 「おおおおおっ!」 裂帛の気合いと共に、ナツキがジェロニモを突き、斬り裂く。 ほぼ同時に、リューイはジェロニモの腕を何度も斬り裂いた。 連続した攻撃は留まらず、跳ぶような勢いでステラが踏み込む。 ナツキとリューイの攻撃に合せ、剛袈紅蓮撃を叩き込む。 肋骨目掛け巨大なハンマーで殴りつけた。 金属がぶつかり合うような重い打撃音が響く。 連続攻撃をジェロニモはまともに食らい、けれど全てを受けてなお、即座に反撃した。 棍による突きをリューイの胸部に叩き込み、骨を砕きながら吹っ飛ばす。 2撃目を放とうとしたナツキの攻撃を棍で叩き落すと、身体をひねり追撃の薙ぎ払い。 脇腹に重い衝撃を叩き込まれ、ナツキも吹っ飛んだ。 「なにすんだ!」 仲間を助けようとステラが跳び出すが、ジェロニモは間合いを詰め攻撃を封じると、脇腹を蹴り飛ばす。 塩の大地に、顔から激突するようにして叩きつけられるステラ。 「おえ、口の中がしょっぱいぞ……」 震えながらステラは起き上がり、口の中の塩を吐き出すと、見て分かるほどに血が混じっている。 「ステラ!」 激昂するようにリンファがジェロニモに斬り掛かるが、それをジェロニモは落ち着いた足取りで避けると、カウンターを放つ。 ステラの胴を、ジェロニモは棍で薙ぎ払う。 骨の砕ける嫌な音と共に、リンファも地面に叩きつけられた。 カウンターの反撃を受けただけで、皆はかなりの傷を負う。 そこから止めを刺そうとジェロニモが動くが、リコリスが注意を引く。 「どこ見てるの! こっちよ!」 スポットライトの効果が効いているため、ジェロニモはリコリスに向かわざるを得ない。 リコリス1人では抑えきるのは不可能だが、仲間の援護で渡り合う。 その間に、陰陽師の浄化師は必死に回復。 「今、治します」 「大丈夫です。すぐに治しますから」 全力でアリシアとリチェルカーレが天恩天賜を掛け、ベルトルドの回復を終えたルーノも加わり、皆の傷を癒していく。 今まさに、陰陽師の回復が浄化師達の生命線。 ここが崩されれば、まともに戦い続けることが出来なくなるだろう。 だからこそ、セシリアはペンタクルシールドを張り、全力で回復役の陰陽師達の守りに動いていた。 ジェロニモは、凶悪なほど強かった。 だが、浄化師は互角以上に渡り合う。 全ては浄化師の連携と、戦いの巧みさがあったればこそ。 回復役を確実に守り、攻撃を食い込ませていく。 ジェロニモの立ち回りを防ぐため、リコリスとリューイはスポットライトで注意を引きペースを乱す。 同時に、仲間が援護に動くことで、ジェロニモの動きを抑える要となる2人を守り切っていた。 戦いの流れは浄化師にある。 それを断ち切るように、ジェロニモは強引に動く。 多少傷を受けるのを覚悟し、回復役の陰陽師に迫る。 スポットライトの効果が切れた瞬間、入れ替わりで追加のスポットライトを掛けようとするリューイから顔を逸らし、ジェロニモはリチェルカーレに突進した。 魔力の多いリチェルカーレは、戦いが進んだ今でも魔力に余裕がある。 放置すれば拙いと判断しての行動だ。 それをシリウスが全力で防ぐ。 「光は降魔の剣となりて、全てを切り裂く」 黒炎解放。 全力でリチェルカーレに向かうジェロニモの迎撃に向かう。 だがジェロニモは速い。 追い付くことが出来ないジェロニモの背に向け声を上げた。 「――どこを見ている。あいつを殺すなら、先に俺を殺せ」 それは魂を振り絞るような響きが感じられた。 故にこそ、ジェロニモは応えるように足を止め、シリウスに向かい合う。 「死にたいのか? お前は」 「人を醜いというのなら、不要な生き物だというのなら、より不要な者から断罪するべきだ。違うか?」 「勘違いをするな」 ジェロニモは大剣を創り出し、シリウスと打ち合う。 「必要かどうかは、状況次第で裏返る。そして人の醜さと価値は、それぞれ別だ」 激しい打ち合いの音が響く。 刃を重ねながらジェロニモは言った。 「子を焼き他人を殺し世界を食い潰し、それでも足らぬと貪り全てを撒き込み自滅する。その果てに、自分こそが被害者だと喚き立てる醜悪。俺が嘆き、今お前達に八つ当たりしているのは、それが原因だ!」 本心をぶちまけながらジェロニモは猛攻を続ける。 シリウスが耐えきれず押し切られそうになった瞬間、ジェロニモの動きが鈍る。 それはリチェルカーレによる鬼門封印。 気付いたジェロニモが視線を向けると、リチェルカーレは苦悩を浮かべ、訴えかけるように言った。 「ジェロニモ様が悲しまれるのもわかります。だけど、わたしは信じているの。人は優しくなれる。種族が違ったって手を取り合えるって」 祈りを捧げるように、リチェルカーレは願った。 「だから、ジェロニモ様。もう一度、わたし達にチャンスをください……!」 「ならば勝ち取れ」 穏やかな声でジェロニモは応えた。 「お前達のような幼子に八つ当たりする、俺のような老害、打ち倒して見せろ」 そこまで言うと、獰猛な笑みを浮かべ、吠えるような声で続ける。 「お前達の力を見せてみろ! 今の俺ごとき倒せずして、未来を掴むなど儚い夢と知れ!」 激情を込めた荒々しい剣がシリウスに襲い掛かる。 一撃一撃が重い。 けれどそれを受け止め、その時出せる全力で返す。 繰り出される猛攻の、ほんの一瞬。 僅かな好機を逃さず、全てを乗せる。 ジェロニモの一撃を、あえて避けず。 斬り裂かれた瞬間、反旗の剣を叩き込む。 それは肉と骨だけに留まらず、魂に届くような一撃。 黒炎魔喰器アステリオスの特殊能力も乗せた一撃は、ジェロニモの守りの全てをすり抜け、本質へと傷を与えた。 ジェロニモは大きく傷を受ける。 だが、それが楽しいと言わんばかりに笑みを浮かべ、反撃を叩き込もうとする。 そこにクリストフの援護が入る。 「ジェロニモ様! 背後ががら空きだよ!」 シリウスから注意を逸らすべく、背後から煽りを入れながら斬り掛かる。 即座にジェロニモは反応し反撃しようとするが、クリストフはフェイントを駆使しながら斬り掛かる。 一見乱暴に見える太刀筋で本命の一撃を隠しながら、好機と見れば全力の一太刀を叩き込む。 それを受けながらジェロニモは笑う。 「楽しませてくれるな!」 「それはどうも。それが貴方の望みなんでしょう?」 お互いを斬り合いながら、クリストフは笑みを浮かべ返す。 「戦わないと分かり合えないのなら、付き合ってあげるよ。もっとも、負ける気はないけどね!」 全力を振り絞り、クリストフはジェロニモと斬り合う。 それは全力が出せるのが楽しいのだと、身体全体で表現するような戦いだった。 「はははっ、楽しい! いいぞ、もっとだ!」 歓喜を浮かべ戦うジェロニモに、クリストフは応える。 時に弾き、あるいは捌き。襲い来る攻撃を防ぎながら、しかし傷は確実に重なっていく。 クリストフの傷を見ながら、アリシアは合図の時を待っていた。 「アリシア!」 クリストフが捨て身の一撃を打つのに合わせ、アリシアは前に出る。 そちらに一瞬ジェロニモの意識が向いた瞬間、反旗の剣を叩き込む。 ジェロニモを斬り裂くと同時に、今までクリストフが受けた傷と同じ個所をジェロニモは切り裂かれる。 応報の魔術による共感魔術が、ジェロニモに大きく傷を与えた。 その間にアリシアは、クリストフを回復するために近付く。 ジェロニモは、アリシアの強い眼差しに興味を持ち尋ねた。 「娘よ、戦いは楽しくないか?」 「私は……戦いは、苦手です」 ジェロニモと向き合いアリシアは返す。 「でも、大切なものを守る為に、強くなりたいと、思いました。人は、変われるもの、です」 ――それは貴方も同じはず。 信じるようなアリシアの眼差しにジェロニモは目を細め、アリシアを背に庇うようにしてクリストフは剣を握る。 戦いに応じるクリストフにジェロニモは目を細め、大きく後方に跳ぶ。 ほぼ同時に、ショーンの一撃が、それまでジェロニモの居た場所を通過する。 「良い殺気だ!」 ショーンの狙撃を避けながらジェロニモは距離を詰めて来る。 「それほどまで腹立たしいか」 「当たり前だ」 怒りを込め、ショーンは応える。 「俺達は単なる浄化師だ。アンタみたいな英雄様じゃない」 ショーンは、ジェロニモと間合いの取り合いをしながら狙撃を続け、仲間のために怒ってみせる。 「身と共に心をすり減らし、見えない血を流しながら戦っている。それが皆に対してどれだけダメージを与えたか」 一言一言を噛み締めるように、ジェロニモを睨み告げる。 「『ちっぽけな人間如き』『死なないから平気だろう』」 激情を叩きつけるようにショーンは言った。 「アンタの言動の本質はアンタが嫌う差別や奴隷を酷使する人間と同じ思考回路だろうが!」 「ショーンの言う通りだよ!」 オーパーツグラウンドを放ちながら、レオノルが言った。 「貴方は遠くばかり見て、足元が見えてないんだ」 攻撃魔術だけでなく、言葉も叩きつける。 「貴方が生前どんな英雄だったかは知らない。でも、観測者としては三流だよ」 それは経験からくる言葉。 学者として。教え導く者として。 血肉を伴う実感を込め、レオノルは言った。 「バタフライエフェクトを理解していたなら、その可能性も常に加味すべきだ。いや、陥りがちなミスだよね。理解は時に人を傲慢にさせる。そんなのよく学生で見てるからね」 ショーンとレオノル。2人の言葉を聞き、ジェロニモは獰猛な笑みを浮かべ返した。 「俺に怒り道理を説くか。そうだ。それで良い」 ジェロニモは期待するように言った。 「過ちを正す意志と力。それが無ければ運命は変えられぬ。だからこそ見せてみろ。抗う意志と、力があると!」 ジェロニモは翼を広げる。 同時に溢れる魔力と濃密な気配は、次の攻撃を浄化師に悟らせた。 天の理。 攻撃に備える浄化師に衝撃波が襲い掛かる。 次の瞬間、ジェロニモは回復役の陰陽師に向け突進。 そこにヨナが立ちはだかる。 天の理が来ると分かっていたヨナは、出来るだけ腰を落とし後方へと跳ばされる影響を少なくすると、我武者羅に走ったのだ。 「邪魔だ」 立ち塞がるヨナを『死亡』させるべく、ジェロニモは槍を創り出し突き放つ。 その寸前。 僅かに早く、ヨナはオーパーツグラウンドを発動。 魔術で作り出した巨大な斧を撃ち出し、盾の代わりに使う。 それをジェロニモの槍が貫く。 まさしく神速の一閃は、盾代わりの斧を砕きヨナの肩に突き刺さった。 痛みと衝撃。 だがヨナは一歩も退かず、追撃の魔術を放とうとする。 それがジェロニモの興味を引いた。 「退かぬか、娘よ」 「退きません。陰陽師の方々は今回の戦いの要。そう易々とやらせはしません!」 不退転の決意を全身で示すヨナに、ジェロニモは言った。 「娘よ。小さき力で抗うか」 「抗えます。だって私は、1人ではないのです」 自分の限界を知りながら、他者を信じジェロニモに告げる。 「私達ひとりひとりの力は小さなものです。それでも諦めず、希望を持って、前に進む意思を持ち続けさえすれば、未来は必ず変えられると信じています」 視線を合わせ続ける。 「もちろんジェロニモ様の……あなたの心だって例外ではありません」 手を伸ばすようにヨナは言った。 「だから、どうか私達と、共に――」 「ならば俺を倒して見せろ」 その言葉の響きは、いっそ優しくさえあった。 だが攻撃の手を緩めることなく、止めを刺そうとした所に―― 「無茶をするな、ヨナ」 横手から跳び込んできたベルトルドが、寸前で止める。 武器の間合いを殺す超接近戦で、拳打による連続攻撃。 それを嫌い距離を取るためジェロニモは大きく後方に跳ぶ。そして次の攻撃の準備に入る。 (漂白の風か!) 一度目の発動で、その予備動作は理解している。だからこそ―― (一度見た技を止められずして如何する) ベルトルドは、温存していた力をここで解放した。 「九天咆哮。哭け、竜哭!」 黒炎解放し、特殊能力を発動。 竜の咆哮の如き撃音がジェロニモの身体に侵透し、僅かとはいえ動きを完全に封じた。 「皆行ってくれ!」 ベルトルドの呼び掛けに応えるように、皆は全力で攻撃を叩き込む。 「戦踏乱舞を掛けるから集まって!」 リコリスは皆の戦意を引き上げると、ジェロニモに向かって一気に間合いを詰める。 踏み込むと同時に蘭身撃。 足回りを潰すように、集中して蹴りを叩き込む。 「いい加減、終わりにしましょう」 「まだだ!」 ジェロニモは笑みを浮かべ、創り出した槍を大きく振る。 だがその時には既に、リコリスは間合いの外に退避。 楽しげに笑みを浮かべるジェロニモに、リコリスは溜め息をつくように言った。 「天使様。遊び足らないようだけど、そろそろ負けを認めてちょうだい。子供じゃないんだから」 「はははっ、そう言うな! まだまだ付き合って貰うぞ!」 戦いの中でジェロニモは、最初の頃に見せていた陰鬱とした気配が失せている。 よく見れば、漆黒に染まっていた羽の先端が、純白へと変わっていた。 「もう気は晴れたんじゃないの?」 「気は晴れた。だが折角だ、もう少し遊んで貰うぞ!」 嬉々として走って来るジェロニモ。 そこにトールの狙撃が射ち出される。 察知したジェロニモは横に跳んで回避。 だが躱しきれずに翼を撃ち抜かれる。 「うむ、良い腕だ。もっと来い!」 「いや、もう終わりにしたいんだけど」 心の底から戦いを楽しんでいるジェロニモに、トールは溜め息をつくように言った。 「誰も死なせず終わらせたいんです。往生際が悪いですよ」 「そう言うな。掛かって来い!」 変わらず楽しげな笑みを浮かべ突進しようとするジェロニモに、嗜めるような声が掛けられた。 「大人げないですよ」 ルーナープロテクションを掛けたセシリアが、自分に注意を向けさせるために言った。 「遊び足らないのは分かりましたけれど、潔く負けを認めてはどうですか?」 「はははっ、そう言うな。お前達が頑張ってくれるものだからな、嬉しくなってくるのだ」 笑顔でジェロニモは応えると双剣を創り出し、死角から跳び込んできたリューイの一撃に合せる。 「面白い!」 リューイの斬撃を弾き、カウンターを繰り出す。 だが、その時には既にリューイは離脱。 間合いを外しジェロニモと対峙する。 そこに追い駆けてくるジェロニモ。 リューイはギリギリで回避すると、カウンターでジェロニモの手首を斬り裂いた。 ヒット&アウェイ。 つかず離れずの動きで間合いを制し、格上であるジェロニモを抑える。 一撃一撃が綱渡りの戦いを、リューイは全力で踏み越えていく。 それは全力を振り絞る戦い。 自分が出せる精一杯を、ジェロニモに見せていた。 その懸命さに、ジェロニモの笑みが深まる。 リューイは、十分にジェロニモの引きつけに成功していた。 それは仲間の総攻撃の準備を整えるため。 お蔭で配置が整う。だからこそ―― 「リューイ!」 セシリアはリューイに呼び掛けると、同時にジェロニモに向かってタロットカードを投擲。 目に向かって飛んできたそれをジェロニモが弾いた瞬間、皆は一斉攻撃をした。 1人1人が全力を振り絞るように攻撃を叩き込む。 その果てに、決着の時は来た。 「ステラ!」 「やるぞマー!」 リンファとステラが真正面から跳び込む。 すでに2人は満身創痍。 だが闘志は衰えることなく、傷だらけの身体を押して攻撃を叩き込む。 先んじて跳び込んだのはリンファ。 捨て身の覚悟で化蛇を振るう。 まさしく決死の覚悟で放たれる斬撃は、格上である筈のジェロニモを防御に徹せさせる。 放たれる斬撃を、ジェロニモは創り出した刀で弾く。 弾かれた衝撃で、化蛇を握る手が裂ける。 激痛と、飛び散る血潮。 しかしそれを無視し、リンファは再び斬撃を繰り出す。 それを弾くジェロニモ。弾くごとに、リンファの手は壊れていく。 だがそれでも、リンファは攻撃の手を止めない。 幾度となく斬撃を繰り出し―― 「ぁ……――」 最後には、化蛇を握れぬほど手がズタズタになった。 化蛇を落とし、身体を前に崩しそうになるリンファ。 そこに止めをジェロニモが放とうとした――その瞬間。 「今です!」 リンファの声に応え、ステラが突進する。 ステラはリンファの後方から、ジェロニモに向け真っ直ぐに踏み込む。 リンファの背を足場に跳び上がると、スタンピングハンマーをジェロニモの脳天に勢い良く打ち下ろした。 ガゴッ!! 骨に響くような重い音が響く。 並の相手なら頭蓋が木端微塵になるような衝撃に、ジェロニモは獰猛な笑みを浮かべる。 「まだだ!」 ジェロニモは、ステラを殴り飛ばしリンファを蹴り飛ばしながら、さらなる戦いを求める。 それに応えたのはナツキだった。 「いくぜ! ジェロニモ様!」 正々堂々、立ち合うように。ナツキはジェロニモに呼び掛ける。 それはジェロニモを打ち倒すためでなく、信じて貰うための戦いだと思っているからだ。 (ジェロニモ様にもう一度人を信じてもらいたい) それはこれからの戦いの力になって貰いたいからではなく、ジェロニモの苦しみを取り除いてやりたいからこその思い。 (守護天使が人を信じられないなんて、絶対苦しいはずだから) だからこそ、ナツキは剣を振るう。 一撃一撃を全力で。全身全霊をぶつけながら。 ジェロニモを想っての一撃は、重い。 それをジェロニモは受けながら歓喜の笑顔を浮かべ、応じるように全力を返していく。 今この瞬間、ナツキとジェロニモは互角の剣撃を繰り広げる。 しかし長くは続かないだろう。やがてナツキには限界が訪れる。 それを防ぐため、ルーノが決死の覚悟で踏み込んだ。 ナツキが剣を弾かれた瞬間、ルーノはジェロニモの間合いに跳び込む。 即座にジェロニモは反応。 背後から跳び込んできたルーノに、ジェロニモは振り向きざまの薙ぎ払い。 それをルーノは避けることなく、さらに前に出ると、腹を斬り裂かれた。 しかし、その瞬間、ルーノの目的は達成される。 残り少ない魔力を込めた禁符の陣。 攻撃を受けることを覚悟して発動させたその魔術の効果は、拘束と封印。 動きを阻害され、能力を封じられたジェロニモに、ナツキは全力を叩き込んだ。 「希望を守る牙になれ。解放しろ、ホープ・レーベン!」 黒炎解放。特殊能力を発動し、氷結斬で斬り掛かる。 回避しようとしたジェロニモだが、ホープ・レーベンの特殊能力が許さない。 ジェロニモが回避し得る可能性。 その全てを、ホープ・レーベンの放った黒炎の刃が切り裂く。 限定された、たった一つの運命。 必中の刃が、ジェロニモを斬り裂いた。 「……見事だ」 凍りついた傷口を、ジェロニモは感慨深く撫でると―― 「お前達の勝ちだ」 ジェロニモは負けを認めた。 その瞬間、世界が変わる。 それまで果て無く広がっていた塩の大地が、巨大な湖へと変わった。 「これって……」 湖の上に立っていることに気づき、驚いて声を上げるナツキ。 するとジェロニモが応えた。 「この地の、本来の姿だ」 全員の傷が消えているのを確認しながら、ジェロニモは言った。 「ここは元々は陸の中に創られた海でな。親父殿がアシッドをバラ撒いたせいで、ここの生き物が感染しないよう、相をズラして保護していたのだ」 「……どういうつもりだ?」 訝しげに尋ねるショーンに、ジェロニモは応えた。 「お前達には迷惑を掛けたのでな。ケアになるかは分からんが、今すぐ思いつくのは、これぐらいだ」 ジェロニモが応えていると、きゅいっ、という鳴き声が聞こえる。 見ればそこには、イルカが顔をのぞかせていた。 「シアちゃん、見て」 「触っても、大丈夫、でしょうか」 興味津々な2人に、ジェロニモは言った。 「大人しいから大丈夫だ。それと――」 ジェロニモが翼を羽ばたかせると、浄化師達は透明の膜につつまれる。 「――水中の方が、より多くの生き物が見れる。興味があれば、見に行くと良い」 これに興味を持った浄化師は透明の膜につつまれ、沢山の魚が泳いでいる様を見て楽しんだ。 それが終わると、皆は岸に転移させられる。 岸にたどり着くと、クリストフは尋ねた。 「どうだった? 俺達の拳や剣は。満足して貰えたなら嬉しいんだけど」 その問いに、笑顔で応えるジェロニモだった。 かくしてジェロニモとの戦いは終わった。 守護天使の1人に認めさせるほど、苛烈な戦いを制した浄化師達だった。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||||||||||||||||||||
|
| ||
[21] リューイ・ウィンダリア 2020/07/11-21:23
| ||
[20] ルーノ・クロード 2020/07/11-20:57
| ||
[19] リューイ・ウィンダリア 2020/07/11-19:59
| ||
[18] リューイ・ウィンダリア 2020/07/11-19:25
| ||
[17] ヨナ・ミューエ 2020/07/11-17:21
| ||
[16] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/11-15:52 | ||
[15] ルーノ・クロード 2020/07/11-15:43
| ||
[14] リコリス・ラディアータ 2020/07/11-09:46
| ||
[13] タオ・リンファ 2020/07/11-03:43 | ||
[12] クリストフ・フォンシラー 2020/07/10-22:22 | ||
[11] ルーノ・クロード 2020/07/10-01:12 | ||
[10] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/09-23:13 | ||
[9] レオノル・ペリエ 2020/07/08-21:17 | ||
[8] リューイ・ウィンダリア 2020/07/08-20:04 | ||
[7] ヨナ・ミューエ 2020/07/08-14:04 | ||
[6] リコリス・ラディアータ 2020/07/08-13:02 | ||
[5] クリストフ・フォンシラー 2020/07/08-01:03
| ||
[4] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/08-00:06 | ||
[3] クリストフ・フォンシラー 2020/07/07-23:52 | ||
[2] ルーノ・クロード 2020/07/07-23:12 |