~ プロローグ ~ |
東方島国ニホン、トウホク地方。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ベ 情報によればグラバー卿は道満に対していささか警戒を強めている節があるようだ ヨ はい 今回の疑似戦闘 そのあたりを利用させて頂きましょう 2の偽装戦闘 グラバー卿 ならびに芦屋道満 そこまでです あなた達の目論見どおりにはいかせません! 気持ち声を張り上げ口上 足場の悪さを逆に利用し近付かれる前に中遠距離から攻撃し戦力を削る 乱戦にもつれ込んだら一人一人を丁寧に倒しながら道満とケイネスを追い詰める >ケイネス 枢機卿ともあろうお方が終焉の夜明け団を使って八百万の神を捕らえてどうするおつもりです? そのような行い、もはや教団が見逃すとでもお思いですか 道満には郷土愛を訴えかけ日本を脅かす者とは手を切るよう促す芝居を打つ |
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2.道満との偽装戦闘へ 演技は、した事ないのですが… 表情を動かさず、何も言わず… それなら、得意です そして、いつもように、回復ですね 道満さん達が来る直前に皆さんに禹歩七星を 基本的にクリス達の少し後方、中衛位置で味方の体力に注意 回復の必要が無ければ少し踏み込んで 禁符の陣で夜明け団のメンバーを拘束し支援 ケイネスの方へ向かって どうして葛葉さんを、ベリアルになんて、そんな酷い事 演技でも何でも無く湧いた疑問を口にする ベリアルになってしまったら、もう元には、戻らないのに 葛葉さんは、助けます…!絶対に…! ケイネスへ向けた振りをしてるが、実は道満さんへのメッセージ 傷ついた仲間達を癒やしてる為追いかけられない、風に |
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■行動 1葛葉の救出に向かう ナツキがトランスで犬に変身 犬の聴覚と嗅覚を利用して人の気配を探る 警備の手厚い方向に葛葉を捕らえた結界があるとあたりを付けて人の多い方へ進む 情報は味方と共有し、味方からの情報も参考にする 意見が分かれたら手分けして探す ■戦闘 最初の4人が気付いていないなら不意打ち 禁符の陣で動きを止め、屋敷内への連絡を妨害 屋敷内ではナツキが前に出て中・後衛への被害を防ぐ ルーノは味方の回復と、前衛の守りがあるなら鬼門封印 囲まれたら禁符の陣で行動妨害 結界はエッジスラストの陽気属性攻撃と シャインマリッジで陽気属性に変化した慈救咒で攻撃、破壊を試みる 黒炎解放は結界破壊時か、敵が多い時の劣勢打破に使用 |
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スパイ活動…か 他人とは思えない話だが、まぁ俺とは理由が違うしな… 娘のためなんだろうが並々ならぬ決意と意思だよな… こないだの地獄の件もあるし一肌脱ぐか 俺はリコと一緒に行動する 浄化師のコンビを偽装しつつ、な 夜明け団の固まり方でマッピングファイアあるいはスウィーピングファイア巻き込める方いずれかで攻撃 俺はクリスほどの火力じゃないしな ちょっと本気出させてもらうぜ 道満が来たらあいつの囀りに付き合うか やかましいこの色情狂!いっぺん地獄に落ちてこい! 出来るだけドスの効いた声で威嚇はしておく 道満が逃げる際はあいつのスレスレを狙って威嚇射撃 これぐらいのことしといたほうがリアルだろうさ |
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捕えて閉じ込めているなんて いつからそんな 酷いことを 葛葉さんを無事で助けられるよう 全力を尽くそう 救出班 魔力感知で 不自然な魔力の流れを探す 意見が割れたら手分けして探す 見つけたら九字で攻撃 結界を破壊 他の人から合図があればそちらへ急行 葛葉さん?大丈夫ですか? 助けにきました 貴女のお父様に頼まれて もう少しだけがんばってください 万が一のため 道満さんの名前は出さない 戦闘が始まれば魔術真名詠唱 禹歩七星を仲間に その後必要なら葛葉さんの回復 無理な場合や必要がなければ 鬼門封印の支援と仲間の回復 ルーノさんと被らないよう手分けして 余裕があったら九字で攻撃や 雷龍で反撃 結界が残っていれば九字で壊す 葛葉さんへの攻撃は盾に |
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魔術真名詠唱後、トールと分かれて2へ ショーンとパートナーのふりをする ふふ、今回はエスコートよろしくね 道満に遭遇したら前衛へ スポットライト使用と、挑発の言葉を吐いて注意を引くのと同時に、本気でやりに来たとアピール 「哀れな半鬼さん」(←強調)あなたの相手をするにはこのくらい本気を出さないといけないようだから…覚悟はいいかしら? 微笑んで静かに怒りを表す 演技アビリティで道満に本気で怒っているようにケイネスに見せかける 戦闘では戦踏乱舞で前衛を支援 蘭身撃で攻撃 基本は道満を狙う 後衛が狙われたりしたら夜明け団も攻撃、隙があればケイネスにも あなたもお仲間さん?一緒にいるんだからそうよね その顔覚えたわよ |
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私達は道満さんがスパイと気取られないように、模擬戦闘に赴きます。 敵は私たちより格上でありますし、足場も悪い状況ですが、足場が悪いのは敵も同じ。なんとかそこをついていきたいです。 戦闘が始まったら中距離から遠距離を保ってカードや魔弾で攻撃です、前に出られる方の邪魔にならないよう気を使い、足場が悪いことを利用して敵の体制を崩す牽制をします。 ユニアさんに頼んで直撃できそうならプロージョンを差し込んでダメージも取りに行きましょう。 戦闘直前に道満さん一行が現れたら「捕らえた人の情報通りですね!」と言ってみます。 わざとらしいかもしれませんがここでの待ち伏せに道満さんは無関係であると印象づけれそうですから。 |
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~ リザルトノベル ~ |
八百万の神、葛葉の救出と、芦屋道満との偽装戦闘。 指令を成し遂げるべく、浄化師は分かれ行動していた。 ●偽装戦闘 「ふふ、今回はエスコートよろしくね」 目的地に向かう前、『リコリス・ラディアータ』は『ショーン・ハイド』に笑みを浮かべ呼び掛ける。 「ああ、こちらこそ頼む」 静かに返すショーン。 今回、パートナーと違う相手と組んでいるのは、リコリスのパートナーである『トール・フォルクス』が葛葉の救出に向かっているからだ。 演技をしなければいけないということで、自分には向いてないと判断したトールは、今回はショーンのパートナーである『レオノル・ペリエ』と組んで救出班に向かうことにしている。 浄化師は2人一組で動くのが通常なので、相手に異変を察知されないよう、今回はショーンがパートナーであるように動く予定だ。 (トールの分も、頑張らないと) 意気込みを見せながら、リコリスは皆と共に目的地に向かう。 道中、声を掛け合いながら進むのは他の浄化師も同じだ。 「頑張りましょう。ユニアさん」 意欲を漲らせ、やる気を見せる『スレイニー・ティルティエ』に、『ユニア・シズヴィーレ』は笑みを浮かべ応える。 「頑張るのは良いけど、無理しちゃだめよ、スレイニーちゃん」 スレイニーを気遣うように、ユニアは続ける。 「怪我しちゃったら良いことないし、ほどほどに頑張りましょう」 ユニアとしては、スレイニーが第一なので、あまり前に出したくはない。 けれど本人は、やる気満々だ。 「ありがとうございます、ユニアさん」 気に掛けてくれるユニアに、スレイニーは嬉しそうな笑みを浮かべながらも、浄化師としての凛々しい表情を見せながら続ける。 「でも、頑張らないと。敵は私たちより格上でありますし、足場も悪い状況ですが、足場が悪いのは敵も同じ。なんとかそこをついていきましょう」 (スレイニーちゃん) 一生懸命なスレイニーに、ユニアは愛でるように目を細める。 (本当は、あまり戦わせたくはないんだけど……怪我とかさせたくないし……面倒だけど、しっかり戦わないとダメねぇ) 愛しいスレイニーを守るため、その気になるユニアだった。 そうしてパートナーを気遣いながら進むのは『クリストフ・フォンシラー』も同じだ。 「大丈夫だよ、アリシア」 現場に向かうほど緊張していくのが分かる『アリシア・ムーンライト』に、クリストフは優しく声を掛ける。 「そんなに気負わなくても、なんとかなるよ」 「そう、でしょうか……演技は、した事ないのですが……」 不安を滲ませるアリシアを安心させるように、クリストフは応える。 「まあ、下手な事を言わずに表情を動かさなきゃ大丈夫だと思うよ?」 「表情を動かさず、何も言わず……それなら、得意です」 クリストフのアドバイスに、ほっと息を抜くようにアリシアは頷く。 すると少し余裕が出たのか、続けて言った。 「それと、いつもように、回復ですね」 意気込むアリシアにクリストフは、頭をポンと撫でながら返す。 「回復頼むね」 「はい」 心地好さそうに応えるアリシアだった。 そうして現地に到着。 まだ道満達は来ていないので、左右に分かれ隠れて待つ。 その中で、最終的な打ち合わせをする者も。 「情報によればグラバー卿は、道満に対していささか警戒を強めている節があるようだ」 事前情報を再確認するように、『ベルトルド・レーヴェ』は『ヨナ・ミューエ』に言った。 「大規模なテロ活動をする計画もある以上、内部情報は必須だ。道満への懸念が消えるように動く必要がある」 「はい」 ヨナは頷き返す。 「道満さんが警戒されているというなら、今回の疑似戦闘、そのあたりを利用させて頂きましょう」 ベルトルドに返している途中で、ヨナはこちらに近付く一団に気付く。 「――来たようです。打ち合わせ通り、進めましょう」 ベルトルドは頷き、グラバーを連れた道満が近付くまで待つ。 離れ過ぎず、かといってすぐに混戦にはならない程度の距離に来た所で、ヨナは跳び出した。 「グラバー卿。ならびに芦屋道満、そこまでです」 大見得を切るように、高らかにヨナは声を上げる。 「あなた達の目論見どおりにはいかせません!」 気持ち声を張り上げた口上は、力強く響いた。それに―― 「なんだテメェら!」 道満の怒声がビリビリと響く。 襲撃者に対し、怒りを露わにしていることが伝わってくる。 事前に演技だと知らされていなければ、真に受けてしまいそうな迫力があった。 (それだけ必死ということか) 道満の様子にショーンは思う。 (娘のためなんだろうが、並々ならぬ決意と意思だな……) かつてエージェントとしてスパイ活動を行っていたショーンは、それがどれだけ神経を擦り減らすかを知っている。 それだけに道満の事情は、他人とは思えない話でもあった。 (まぁ俺とは理由が違うというのもあるだろうが、それでも苦労は並大抵では無かろう。こないだの地獄の件もあるし一肌脱ぐか) 決意するショーンの横で、リコリスが先に啖呵を切る。 「浄化師よ、観念なさい!」 良く通る声で続ける。 「貴方達のことは、すでに調べがついてるの。気付かずにのこのこ来てくれて助かるわ」 「はあ? どういうこった!」 グラバーに疑念を抱かせる余裕を与えず、道満がまくしたてる。 それに乗るようにクリストフが返した。 「部下の取り扱いには気をつけた方が良いと思うよ」 道満達を囲むように動きながらクリストフは続ける。 「あの男の情報通りだね、待ってたよ。おとなしく縛について貰おうか」 「……誰から聞きやがった、テメェら」 探るように道満は聞き返す。 それはグラバーの護衛達が動き易くなるよう、時間稼ぎをするために話を合わせているようにも見えた。 (なるほど。そういうシチュエーションで進めるってことか) 道満の動きから意図を読み取ったクリストフは、剣の切っ先を突き付けながら言葉を続ける。 「知りたいなら、大人しく捕まりなよ。言っておくけれど、お前達の企みは全て白状させた。葛葉ちゃんは既に救出されている。諦めるんだな」 「誰だ葛葉って」 訝しげに道満は返すと、グラバーに視線を向ける。 するとグラバーは、血の気の引いた顔をしていた。 そんなグラバーに、道満は舌打ちするように言う。 「おい、心当たりでもあんのか」 「……捕えている、八百万の名です」 震えた声を上げるグラバーに、忌々しげに道満は返す。 「くそ、筒抜けじゃねぇかよ。お前手下の動向ぐらい掴んどけ。俺のことまで知られたんじゃねぇだろうな」 いかにも保身を気にするような道満の言葉に、ユニアは合わせるように言った。 「心配しなくても良いわよ、芦屋道満さん。貴方のことも、しっかりと話して貰ってるから」 「はあ? ふざっけんな……どこのどいつだ」 「教団が捕えた人からの情報です」 苛立っているように見える道満に、スレイニーは言った。 「お蔭で貴方達が、今日ここに訪れることを知ることが出来ました。捕らえた人の情報通りです!」 道満が関わってないことを印象付けるように、スレイニーは言った。すると―― 「ケイネス。これは借りだぞ」 静かな、それでいて激情を感じさせる声で、道満はケイネスを見ることなく言った。 「テメェの手下のせいで、本格的にこの国からおさらばするしかなくなっちまった。向こうでしっかりいい目を見せて貰うからな。分かってるんだろうな、ケイネス」 煮えたぎる激怒を滲ませる声に、ケイネスは顔を引きつらせながら返す。 「わ、分かっています。だから――」 「おう。逃がしゃ良いんだろ。分かってるよ。ここまで来たら一蓮托生。テメェは命綱だ。こいつらぶっ殺して、とっととずらかるぞ」 道満がそう言って前に出ようとすると、銃声が響く。 それは道満の頬を掠るように走る。 「逃げられると思うな」 わざと外したショーンは、そうと気付かれないよう、冷たい声で宣言する。 「出来れば生きて捕えたいが、最悪殺しても良いと言われている。死にたくなければ、大人しく投降しろ」 「はっ、上等だ!」 道満は挑発で激昂したように声を張り上げると、1人で浄化師達に向かって来る。 これによりケイネスの護衛とは、自分から離れた形になった。 もちろんこれは、道満の計略。 道満を何人かが引き受けている間に、護衛達を制圧する隙が出来る。 意図を読み取った浄化師は、2班に分かれ即座に動く。 この時点で、アリシアは禹歩七星を皆に掛け終っている。 それは道満が、話をする振りをして護衛達の視線を誘導し、時間稼ぎをしていたからだ。 戦いの初手から必要な強化を済ませた状態で、浄化師達は偽装戦闘と、グラバーの護衛達の捕縛に動く。 「くたばれ!」 巨大な金棒を口寄せ魔方陣で召喚した道満が、浄化師達に突っ込んでくる。 そこに合わせ、跳び出したのはベルトルド。 大ぶりな道満の攻撃を躱し、懐に跳び込むと竜哭で覆われた拳を叩き込む。 それを道満は金棒で受け止める。 金属と金属が撃ち合うような、硬く重い音が響く。 「なんだテメェ!」 ベルトルドの攻撃を防いだ道満は、怒声を上げながら金棒をめったやたらと振り回す。 勢いのある攻撃は当たればただでは済まないという威力を感じさせるが、大振りすぎて動きを読むのは容易い。 (演武、というには趣が足らんが……本気でやり合っているように見せるとしよう) ベルトルドは道満に合せ、わざと予備動作を大きくして攻撃する。 素人目には、相手を仕留めるため威力のある攻撃を出しているように見えるが、実際の所は回避が容易く傷を受けることもない。 (客引きの興行といった所か……そういえば、路銀を得るために師匠とやり合ったな) ベルトルドは、笑みが浮かびそうになるのを堪える。 師匠と一緒に諸国を回っていた時は、よくやった物だ。 もっとも若い頃は途中から熱くなり、本気で殴り掛かった所をあしらわれ転がされ、あげく路銀として手に入れた筈の投げ銭を持って花街に逃げられたりした。 (いかん。今はそれどころじゃない) 浮かんできた思い出を振り払い、ベルトルドは道満に言った。 「観念して投降しろ」 グラバーに聞こえ、それでいて不自然でないギリギリの声の大きさで続ける。 「グラバー卿の計画とやらは、上手く行ってないだろう? トウホクの地も、今は随分と落ち着いている。ならわざわざ、あの者に与する必要も薄れてきているのではないか?」 声を掛けながらグラバーと視線を合わせる。 怯えたようにグラバーが視線を外すと、そこに道満が金棒を振り降ろして来た。 「ごちゃごちゃうるせぇ!」 振り回される金棒に、時に拳を当て音を響かせながら、ベルトルドは声を掛け続ける。 「あの者達に与すれば、この国はただでは済まないのだぞ。お前も生まれた土地が荒れる様を見たい訳ではないだろうに」 「知ったことか! こんな国!」 道満は大声を張り上げ返した。 「俺はなぁ、こんなしみったれた国なんぞどうでも良いんだよ! この国がどうなろうが、その頃にはとんずらしてるだけよ!」 ベルトルドの説得を突き放すように言葉を返すと、道満は金棒を振りかぶった。 同時に、視線を合わせて来る。それが合図だと感じ取ったベルトルドは合わせる。 金棒に殴り飛ばされた振りをする。 大きく跳ばされるが、実際は当たる前に自分から跳んでいたので、演技で受け身を取らず地面に自分から当たりに行ったダメージの方が大きい。 そこに道満は追撃を掛けるように進もうとするが、踏み込んできたリコリスが立ち塞がった。 「相手をして貰うわ。哀れな半鬼さん」 リコリスは、道満と敵対していることがグラバーに伝わるように、わざと強めの語気で挑発する。 「なんだテメェ!」 激昂したように歯を剥き出しにする道満に、リコリスは魔性憑きらしい軽快な動きで翻弄するように立ち回る。 「クソ! ちょろちょろと!」 リコリスを掠めるように、けれど決して当たらないようにして道満は金棒を振るう。 (巧く当たらないように攻撃してくれてるわね。これなら、もう少し踏み込んだ演技をした方が良いかしら?) より迫真の戦いに見えるよう、リコリスは一歩踏み込みながら言った。 「あなたの相手をするにはこのくらい本気を出さないといけないようだから……覚悟はいいかしら?」 ギリギリ掠めるような攻撃を避けたあと、リコリスは微笑んで静かに怒りを表す。 そして動きのギアを一段上げる。 「テメェ!」 リコリスの素早い動きに道満は付いていけないというように、金棒を振り回すも、全てを危なげなく避けられる。 道満はリコリスを近づけないように金棒を振り回すが、死角に入り込まれ、連続した蹴りを叩き込まれた。 「痛ってぇだろうが!」 蹴りを受けた道満は、デタラメに金棒を振り回し続け、リコリスを遠ざける。 そこにショーンの狙撃が撃ち込まれた。 「危っぶねぇだろうが!」 頬を掠めるような一撃に、道満はショーンに殴り掛かるため突進する。 しかしショーンは落ち着いた様子で狙撃を繰り返す。 当たりそうになった道満は、狙いをつけられないよう走り回るので近付けない。 「邪魔すんじゃねぇ!」 「やかましいこの色情狂!」 怒声をぶつけてくる道満に合せ、ショーンもドスの効いた声で威嚇する。 「話は聞いているぞ! 手当たり次第に女性を拐かしているそうだな。恥を知れ!」 「それがどうした! 俺は俺の好きに生きてるだけだ! 他人のことなんざ知ったことか!」 「ふざけるな! いっぺん地獄に落ちてこい!」 「はんっ! アホくせぇ! 地獄なんざねぇよ!」 道満は嘲笑うように返すと、どうにかしてショーンに近付こうとする。 だがショーンの狙撃がそれを許さず、一進一退の距離を保ち、道満をショーンが引き付けている形になる。 その間に、ケイネスを護衛する終焉の夜明け団に浄化師は向かっていた。 「大人しく投降してください!」 スレイニーはタロットカードを投擲しながら、ケイネス達に呼び掛ける。 「貴方達の悪事は分かっています。これ以上、罪を重ねないで下さい」 スレイニーは、自分達が本気で捕まえに来ていると思わせるように、声を掛けていく。 それと同時に、掛ける言葉は彼女の本音でもある。 (こんなことは、良くないです) 困った人を見ると助けずにはいられない心根が優しい彼女にとって、今回の指令で一番大事なのは、捕らわれている葛葉の救出だ。 けれどだからと言って、目の前の相手をないがしろには出来ない。 可能ならば傷付けずに済ませたいし、改心してくれるならそれが一番だ。 だが相手は、スレイニーの優しさに応えることなく、殺す勢いで攻撃してくる。 「スレイニーちゃん!」 敵である終焉の夜明け団が、炎弾をスレイニーに放とうとしているのに気付いたユニアは、魔力を励起しプロージョンを放つ。 マジックブックから放たれた魔力の塊は、敵が攻撃する前に命中。 攻撃を受け体勢を崩した敵は、スレイニーに放とうとした炎弾を的外れな方向に飛ばした。 「ありがとうございます、ユニアさん」 助けて貰ったスレイニーは、ユニアに近付くと礼を言う。 これにユニアは、にっこりと笑みを浮かべ応える。 「気にしなくてもいいのよ、スレイニーちゃん。それより気をつけて、戦っていきましょう」 「はい。なら、一緒に戦いましょう」 2人は息を合わせ、敵に攻撃をしていく。 幸い2人とも離れた距離から攻撃できるので、間合いを見極めながらカードを飛ばし、あるいは魔力弾を撃っていく。 敵は、ケイネスの護衛に就かないといけないため、距離を詰めて来れない。 そのため有利な間合いで攻撃を続けることが出来た。 (このまま、皆さんの助けになるように) スレイニーは、前に出て戦う仲間の援護をするようにしてタロットカードを投擲していく。 足場が悪いことも利用して、敵の体勢を崩すような攻撃を、ユニアと共に重ねていった。 スレイニーとユニアの援護を受けながら、浄化師はケイネスに圧力を掛けていく。 「枢機卿ともあろうお方が、終焉の夜明け団を使って八百万の神を捕らえてどうするおつもりです?」 ヨナは積極的に前に出て行くと、ケイネスに呼び掛ける。 遠距離攻撃を主体とする狂信者であるヨナではあったが、折を見てベルトルドと接近戦の鍛錬をしていることもあり、敵の攻撃を掻い潜りながら距離を詰めていた。 「貴方がニホンで成そうとしている行い、もはや教団が見逃すとでもお思いですか」 追い立てるようにヨナは言葉を掛けていく。 それはケイネスが、道満を頼るように仕向けるためだ。 (このまま追い込んでいけば、道満さんを頼らざるを得なくなるかもしれません。その前に、アークソサエティに逃げ帰るかもしれませんが) ケイネスに圧力を掛けるのはリコリスも同じだ。 「あなたもお仲間さん? 一緒にいるんだからそうよね」 するりと、ケイネスを守る護衛をすり抜けたリコリスは、切り掛かれるほどの距離で鋭い笑みを向けながら言った。 「その顔覚えたわよ」 「ひぃっ!」 慌てて逃げるケイネス。 それを追い駆けるふりをしようとした所で、護衛の終焉の夜明け団が近付いて来たので、そちらを対処する。 そうして逃げ出そうとしたケイネスの前に、アリシアが立ち塞がる。 「なんで、貴方達は、酷いことを、しようとして、いるんですか」 演技ではない、心からの疑問を口にする。 「どうして葛葉さんを、ベリアルになんて、そんな酷い事」 噛みしめるようにアリシアは言った。 「ベリアルになってしまったら、もう元には、戻らないのに」 「それがどうした!」 ケイネスは開き直る様に返す。 「獣風情、どうしようと自由だ。つまらんことを言うな!」 心底、それが当然だというように言うケイネス。 それを聞いたアリシアは、絶対に譲れない持ちを込め言った。 「葛葉さんは、助けます……! 絶対に……!」 それは普段よりも声を張った、大きな声で。 道満に約束するための言葉でもあった。 「……ありがとよ」 アリシアの言葉に、間近で戦うクリストフにしか聞こえないような声で、礼を言う道満だった。 かくして戦いは続き、半ばこう着状態になった。 もちろんそれは、浄化師達の目論見通り。 十分に、道満と敵対しているように見せた所で、頃合いだと見た道満が動く。 「ここは逃げるぞ! ケイネスが居るとまともに戦えやしねぇ!」 道満は撤退を指示し、ケイネスを逃がすため殿に就く。 その間に護衛役の終焉の夜明け団はケイネスを連れて逃げ出し、それをクリストフが追い駆ける。 「ケイオス! 道満! 逃げるなよ! こいつらを捕らえたら次はお前達だからな!」 走るクリストフの前に、道満が立ち塞がる。 「邪魔すんじゃねぇ!」 道満はケイネスに聞こえるように大声を上げながら、クリストフと打ち合う。 その度に重い音が響き、ケイネスは一目散に逃げていく。 「頃合いだな」 クリストフにだけ聞こえるぐらい小さな声で道満は言うと、視線で次の動きを示唆する。 それを読み取ったクリストフは、一際大ぶりな横なぎの一閃を剣で受け止めると、バレないよう気をつけながら自分から後方に跳ぶ。 「くそっ何て力だ」 悔しそうに、そして足を痛めた振りをするクリストフに、道満は負け惜しみのような言葉を掛けて去って行く。 「次に会ったらただじゃすまさねぇからな!」 そう言うと、ケイネス達に追い付くほどの速さで走り出す。 そこを狙撃するショーン! 「逃げるな!」 ドスの利いた声を投げつけながら、当たらないギリギリの距離を撃ち抜くショーン。 (これぐらいした方が、リアルだろう) 最後まで手を抜かないショーンの甲斐もあって、ケイネス達は本気で逃走していった。 それを浄化師は、仲間が傷を負ったので追い駆けることが出来ない、という演技をしながら悔しそうに見つめる。 しばらくそのまま演技を続け、完全にケイネス達の姿が見えなくなり、周囲に気配がないことを確認してから演技を止めた。 「巧くいったみたいだね」 クリストフの言葉にショーンが応える。 「ああ、そうみたいだな。あとは道満に任せよう。それより俺達は――」 「トール達の所に行きましょう。もしまだ助け出せていなければ、手伝わなきゃ」 リコリスの言葉に皆は頷き、葛葉の捕らわれている屋敷に向かうことに。 「誰も怪我をされていないと良いんですが」 屋敷に向かいながらヨナは気遣い、その少し後ろを走っているスレイニーも、安否を気遣うように眉を寄せる。 「葛葉さん、ずっと捕らわれていたから、体調を崩されているかもしれません」 これにユニアは応える。 「かもしれないわねぇ。その時は、手当てをしてあげましょう」 「はい!」 意気込むスレイニーに、心地好さ気に目を細めるユニアだった。 そうして偽装戦闘班が自分達の役回りをこなし合流に動いている頃、葛葉救出班も自分達の役回りをこなしていた。 ●救出 (葛葉さんを無事で助けられるよう、全力を尽くさなくちゃ) 目的地である屋敷に向かう途中、『リチェルカーレ・リモージュ』は意気込んでいた。 (捕えて閉じ込めるなんて酷いことを、ずっとされているんだもの。早く助けてあげないと) 事前情報として伝えられたことが正しければ、すでに数年近く捕らわれていることになる。 「助けてあげないと」 気持ちがはやり、言葉となって溢れるリチェルカーレに、それを聞いていた『シリウス・セイアッド』は小さく頷く。 「出来るだけ早く片をつけよう」 「ええ。頑張りましょう、シリウス」 シリウスの言葉に、安堵するような笑みを浮かべるリチェルカーレ。 自分を信頼してくれるリチェルカーレの表情を曇らせまいと、シリウスは葛葉救出の成功を誓う。 (出来る限り素早く、けりをつける。人質に取られないよう……それに、万が一アシッドに感染していたなら、吸血をする必要があるな) ヴァンピールは、アシッドに感染してから間もない相手であれば、吸血によってアシッドのみを吸出し、自身の魔力に変換できる。 不測の事態も想定しながら屋敷に向かうシリウスは、関係者のことを改めて思い浮かべ、その内の1人のことを考え、僅かに不愉快そうに眉を寄せた。 (ケイネス・グラバー……) 枢機卿の一族であり、ニホンを植民地にするため送り込まれた男。 (思い通りにはさせん。道満と玉藻の娘は、無傷で助け出す) 憤る思いを心の奥に沈め、目的地に向かう。 シリウスのように憤っているのは、『ルーノ・クロード』と『ナツキ・ヤクト』も同じだ。 (ケイネス・グラバー……計画の為に神を捕えるとは、呆れた身の程知らずだな) 憤りを飲み込みながら、ルーノは目的地に向かう。 (葛葉様は、相当長い期間捕らわれの身になられているようだが、衰弱されていないと良いのだが) 万が一のことも考え、事前に取り得る行動を考える。 (葛葉様が消耗しているようならできる限り回復を。これしきでは詫びにもならないだろうが……出来る限りのことはするべきだ) 現地到着後に取り得る行動を頭の中で列挙し、共有するためにナツキに顔を向ける。 「ナツキ?」 厳しい表情をしているナツキに気付いたルーノが声を掛ける。 「どうかしたのか?」 ルーノの問い掛けに、どこか思いつめた声でナツキは言った。 「俺の知ってる八百万の神様は、理由も無く人を傷付けたりしなかった。なのに、それを身勝手な都合で捕まえて利用しようとしたのは、俺と同じ、人なんだよな」 「……そうだな」 静かに応えるルーノ。そして、ナツキの想いを代弁するように言った。 「だからこそ助けないと、だな」 「ああ……」 ルーノの言葉に導かれるように、ナツキは自分の想いを口にした。 「……人を許してくれるかなんてわからないけど、葛葉様を助けたら、謝ろうと思ってる」 「……分かった。なら、そうなるよう全力を尽くそう」 そう言うとルーノは、ナツキを元気付けるように拳を突き出す。 「ああ。やってやろうぜ、ルーノ」 ルーノに力を貰ったナツキは、笑顔で応え拳を打ち合せた。 そして屋敷の周辺に到着。 山間部の一部を切り開いて屋敷は作られており、離れた場所には木々が生えているので、それに身を隠しながら様子を確認する。 「……見張りは4人か。この距離だと、確実に命中させるなら、少し近づいてからの方が良いな」 悪魔祓いであるトールが、見張り役との距離を目算し呟く。 狙撃が攻撃の主体である悪魔祓いなので、距離の目算は慣れたものだ。 トールの呟きを聞いて、一緒に行動していたレオノルが返す。 「ソーンケージでまとめて潰しちゃいたいけど、効果範囲から少し離れるから、私も少し前に出てからじゃないと攻撃できないね」 これを聞いたトールは提案する。 「なら、俺が最初に前に出て狙撃するよ。先に見張り役の注意を引くから、そのあとにソーンケージを頼むよ」 「そう? なんなら、一緒に前で出て攻撃するよ」 「ありがとう。でも大丈夫。少しあとについて来てくれると助かるよ」 そこまで言うと、冗談めかした茶目っ気のある声で言った。 「君に何かあったらショーンに殺されるからね」 「そこまでショーンは過保護じゃない……かな?」 軽く首を傾げるレオノルに、トールは小さく笑みを浮かべ返す。 「ショーンにはリコのことを頼んでるから、俺も君のことを守らなきゃ、ってことだよ。 さて、それより、そろそろ始めようか」 トールは、少し離れた位置で準備を整えた近接班に視線を送り、お互いの意思を確認すると突入を開始した。 先行してトールが跳び出し、ソニックショットで見張りの1人を狙撃。 襲撃に気付いた残りの見張りがトールに意識を向ける中、少しタイミングをズラして出てきたレオノルがソーンケージを叩き込む。 まとめて魔力の茨で捕えた所に、近接班のシリウスとナツキが跳び込む。 リチェルカーレにより禹歩七星を掛けられていたことにより、2人の動きは速い。 瞬く間に斬撃の間合いに跳び込むと、シリウスはソードバニッシュで斬り裂き戦闘不能に追い込み、ナツキはエッジスラストを叩き込み戦闘力を奪った。 不意を突かれ仲間をやられた見張りは、屋敷内に戻り増援を呼ぼうとするが、その前にルーノが距離を詰めている。 禁符の陣で拘束した所で、皆が連続攻撃を突き込み戦闘不能に追い込んだ。 トールが持って来ていた縄で手早く縛っている間に、ナツキとシリウスが先行して屋敷の中に突入。 外の騒ぎを聞きつけた敵が出て来るが、シリウスとナツキが突進して素早く攻撃。 その間に、外の敵を縛り終えた仲間も合流し、手早く屋敷の中の敵を倒していった。 「俺達が前に出る。後について来てくれ」 近接班のシリウスとナツキが前衛として前に出ると、中衛にトールが援護役として就いていく。 さらに後衛には、回復役のリチェルカーレとルーノが就き、万が一後方から不意を突かれても即座に反撃できるよう、レオノルが配置に就いている。 屋敷内の通路を素早く走り、途中で敵と出会うも、陣形を組んで協力している浄化師が圧倒的に有利に事を運ぶ。 次々に戦闘不能に追い込み、前衛組の2人が怪我を負うことはあったが、即座に陰陽師の2人が癒した。 幾らか進むと、通路が分かれている。 「魔力で探知は……難しそうです。レオノル先生は?」 「ごめん、ちょっと分からない。これ、屋敷全体に魔力を通してるね」 リチェルカーレはウィッチ・コンタクトで、レオノルは魔力探知で周囲を確認するも、万遍なく薄らと屋敷は魔力に覆われているため、魔力の流れを頼りにすることが出来ない。 救出作戦なので時間が勝負の中、ナツキは獣人変身で黒い毛色の大型の犬の姿に変わると、匂いで周囲を確認する。そして―― 「こっちの通路の方から、人の匂いが固まってる匂いがする」 「待ち構えているということか。いや、捕えている葛葉様を奪われないように集まっている可能性が高いな」 ルーノの言葉に、仲間の浄化師も同様の意見を返す。 時間が重要ということもあり、迷っているよりも先に進むことを選択する。 ナツキが獣人変身したまま進み、匂いを嗅ぎ分けることで敵が固まっている通路を迷わず選び取り進んでいった。 これがなければ、場合によっては葛葉の居ない場所に向かい、行き止まりで背後から襲い掛かられるといったこともありえたが、それを回避。 通路の先にあった広めの部屋に辿り着くと、壁のひとつを見て、獣人変身したままのナツキは言った。 「この壁の向こうから、何人もの匂いがする」 ナツキに続いて、リチェルカーレとレオノルが言った。 「この壁から、濃い魔力が漏れ出ています」 「隠し通路かな? どこかに入るためのスイッチみたいなのがあるんだろうけど」 3人の言葉を聞いたシリウスは、黒炎解放。 「時間が惜しい。破壊する」 ベリアルリングのブーストも掛けた強大な力で、壁を斬り裂くと蹴破った。 「行くぞ」 隠し通路の壁を破壊したシリウスは、一気に踏み込む。 仲間も続いて進むと、その先には魔方陣の敷かれた広い場所が。 そこに狐のライカンスロープのように見える1人の女性が居るのが見える。 「葛葉さん? 大丈夫ですか? 助けにきました」 リチェルカーレが確認のため声を掛けると、捕えられている女性は、はっとした表情になり浄化師達を見詰める。 そして言った。 「危ないです。逃げて」 それは葛葉を逃がさぬと陣取っていた終焉の夜明け団が居たからこその言葉。 だが、もちろん逃げ出す浄化師ではない。 「貴女のお父様に頼まれて来ました。もう少しだけがんばってください」 リチェルカーレの言葉に、葛葉は息を飲む。 そして浄化師達を気遣う気持ちと、父である道満達に会いたいという想いが入り混じり、葛葉は迷うように言葉が咄嗟に出ない。 その迷いを吹き飛ばしてくれるほど、浄化師達は活躍をみせる。 斬り裂き撃ち抜き、敵を次々に倒していく。 瞬く間に全滅させた浄化師は、葛葉を解放するため魔方陣に全力攻撃。 「……離れていろ。すぐに壊す」 シリウスは蒼剣アステリオスの刃を振るい、魔方陣を斬り裂く。 「すぐに、解放しますから」 リチェルカーレは、陽気の魔力属性を持つサンライト・ディスクを使い、魔力弾を叩き込む。 「ちょっとだけ我慢しててくれよ」 ナツキは黒炎解放し、強化した斬撃を魔方陣に叩き込む。 「あと少しです。解放したあとは回復も出来ますから、必要なら言って下さい」 ルーノは、天恩天賜に必要な魔力量を計算しながら、身につけた者の魔力属性を短時間だが陽気に変えるシャインマリッジの効果を使い、慈救咒の炎で魔方陣を焼いた。 皆が魔方陣を攻撃している間、後方から不意打ちを受けぬよう、トールとレオノルが隠し通路の入り口を見張る。 役割を分担し、皆は魔方陣の破壊に取り組む。 魔方陣は少しの間、浄化師達の猛攻を耐えたが、ついには破壊された。 解放された葛葉に、万が一を考えレオノルが尋ねる。 「まさかとは思うけどアシッド汚染とか……起こしてないよね?」 「大丈夫です。感染しているなら、さすがに分かりますから」 葛葉の応えに、最大の懸念が無くなり、皆は安堵する。 しかしすぐに気持ちを切り替え、屋敷からの脱出に動く。 「先に出る。ついて来てくれ」 「邪魔なのが居たらやっつけるから、安心してくれよな!」 シリウスは先陣を切って走り出し、ナツキは葛葉を安心させるように言うと同じく走り出す。すると―― 「無理をしないで下さいね」 葛葉は、先行して前に出る2人に加護を与える。 鬼火のような光の玉が2人の周囲を漂い、敵からの攻撃を防ぐ盾となった。 「貴方達も」 残りの浄化師達にも、同じように加護を与える葛葉。 守りを固めた上で、葛葉を守るようにして走り出す。 「こちらです。ついて来て下さい」 リチェルカーレが葛葉を守るようにして、先導する様に走り出す。 促された葛葉が走ると、そのあとにルーノが、側面からの不意打ちを防ぐような位置取りで走り出し、後続にトールとレオノルが就いて行く。 葛葉を守りつつ、いつ何処から敵の攻撃が来ても対処できる陣形で突き進む。 途中、敵の残りの襲撃を受けるも、大半はシリウスとナツキが戦闘不能に追い込み、多少の傷は即座にリチェルカーレとルーノが回復。 追い縋るように向かってきた相手も、トールとレオノルの範囲攻撃で片をつけると、屋敷の外に脱出成功。 すぐさま屋敷から離れるように走り出し、偽装戦闘を行っていた仲間との合流地点に辿り着いた。 ●大成功! 「どこか、体調で気になる所はありませんか?」 合流後、スレイニーが葛葉を気遣うように声を掛ける。 すると葛葉は柔らかな笑みを浮かべ礼を言う。 「ありがとう。大丈夫よ。調子の悪い所はないわ」 葛葉の言葉に、ほっと安心するスレイニー。 とはいえ注意には注意を重ね、スレイニーはユニアに頼む。 「ユニアさん。葛葉さんを魔力探知で見て貰えませんか? 魔力探知なら、目で見て分からないことも気付けるかもしれませんし」 スレイニーのお願いに、ユニアは快く応える。 「分かったわ、スレイニーちゃん」 ユニアは魔力探知で調べるが、何も異常は見られないので、スレイニーを含めた皆は安堵した。 ほっと一息つくような中、合流した仲間に声を掛ける。 「ショーン、ありがとう。リコのこと、フォローしてくれたんだろ?」 トールの言葉にショーンは返す。 「俺が援護しなくても大丈夫そうだったが、念のためな。そっちも、ドクターのことを気遣ってくれたようだな。助かる」 2人がパートナーのことを話していると、そこにレオノルとリコリスが話に加わる。 「ショーンの方も、巧くいったみたいだね」 「道満も必死だったから、こちらも全力を尽くせたわ」 話の中で、道満の話題が出る。 それを聞いていた葛葉が尋ねた。 「道満というのは、今の父の名なのですか?」 これにリチェルカーレが応えた。 「はい。芦屋道満さんと名乗られています。道満さん達の事情は、ご本人から聞いています」 以前、地獄の神に会う指令に参加したリチェルカーレは、道満と共に、安倍清明についての話を聞かせる。 すると葛葉は、ぽろぽろと涙を零した。 これを見ていたヨナが、慌てて声を掛ける。 「葛葉さん、どうかされたんですか?」 「……ごめんなさい。気にさせちゃったみたいですね。大丈夫です。嬉しくて泣いただけですから」 「それは、どういう……」 気になったヨナが問い掛けると、葛葉は応えた。 「父とあの人、清明が死ぬ前に、約束してくれていたんです。必ず蘇って会いに行くから待っていてくれって。それを信じて、私は1人で待ってたんです。……そのせいで、捕まってしまったんですけれど……貴方達には、そのせいで苦労を掛けてしまったみたいですね。ごめんなさい」 謝る葛葉にナツキが言った。 「謝らなくて良いよ! それよりこっちこそ、ごめん!」 「謝られなくても良いんですよ」 慌てて止める葛葉にナツキは続ける。 「人間が、葛葉様を浚っちまったんだから、謝らないといけないと思うんだ」 これに葛葉は、柔らかな笑顔を浮かべ返した。 「どうか、謝らないで下さい。私を浚ったのが人だったとしても、助けてくれたのも、貴方達、人なんですから」 笑顔を浮かべる葛葉に、ナツキも含めた皆も笑顔で応えた。 そして全てが終わり、帰ることに。そこでクリストフが問い掛けた。 「このあと、どこに戻るの? キョウトの玉藻様のところかな?」 これに葛葉は応えた。 「いえ。まだ母は、祟り神としての側面を残していますから。私や父や、清明が会いに行けば、封じられている過去の記憶が戻り祟り神に戻りかねません。だから会えないんです。せめてあと100年も経てば、祟り神の側面は浄化されて会いに行けるんですけれど……」 寂しそうな表情をした葛葉に、アリシアは言った。 「お母様は、優しい方ですね」 「会ったことが、あるんですか?」 思わず聞き返す葛葉に、アリシアは応えた。 「はい。今年の始めに、初詣で」 今の玉藻の様子を聞き、喜ぶ葛葉だった。 かくして指令は終わりをみせる。 偽装戦闘も救出も、どちらも十二分な成果を見せた浄化師だった。
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*** 活躍者 *** |
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[27] ルーノ・クロード 2020/07/16-22:08
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[26] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/16-21:33
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[25] リコリス・ラディアータ 2020/07/16-21:29
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[24] リコリス・ラディアータ 2020/07/16-21:27
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[23] ルーノ・クロード 2020/07/16-21:18
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[22] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/16-21:12
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[21] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/16-21:09
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[20] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/16-21:08
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[19] ルーノ・クロード 2020/07/16-21:07
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[18] ルーノ・クロード 2020/07/16-20:54
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[17] リコリス・ラディアータ 2020/07/16-20:51
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[16] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/16-20:37
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[15] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/16-20:32
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[14] ヨナ・ミューエ 2020/07/16-17:50
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[13] スレイニー・ティルティエ 2020/07/15-21:50 | ||
[12] リコリス・ラディアータ 2020/07/15-20:29
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[11] クリストフ・フォンシラー 2020/07/15-00:03 | ||
[10] レオノル・ペリエ 2020/07/14-22:49
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[9] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/14-22:46 | ||
[8] スレイニー・ティルティエ 2020/07/14-19:39 | ||
[7] ルーノ・クロード 2020/07/13-22:47
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[6] ヨナ・ミューエ 2020/07/13-21:57 | ||
[5] レオノル・ペリエ 2020/07/13-20:27
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[4] リコリス・ラディアータ 2020/07/13-20:19
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[3] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/13-20:09
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[2] クリストフ・フォンシラー 2020/07/12-23:36 |