~ プロローグ ~ |
エトワールにある、とあるお屋敷。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ヨナ 幽霊…悪霊… ゾンビやスケルトンのような実態があるものは違って世の中にはそういった実在があるのは知ってはいますが私に霊感のようなものはありませんし急に出てきたり脅かしたりするようなものは正直得意ではありませんね特に脅かすのは良くないですよほんとに(早口 喰人 (怖いんだな… 尻尾を掴まれるのも久々だ) ヨナが驚いて攻撃スキルで屋敷を傷つける可能性も無きにしも非ず というか大分可能性が高い 外から回っていくか アマンダに魔法に礼を言い かなりビビり散らかしつつ戦う ヨ あんまり驚かされると手加減も出来なくなりますよ…! お願いですから地面から頭だけ出てきたりしないでくださいっ 手あたり次第威力弱めの魔術を投げる |
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首の後ろがぞわぞわする 耳が不必要な音を拾う 視線を感じると思うと、頭だけがあったとか 寝てて、ふと目が覚めると顔のぞき込んでて、体動けないとか 誰も使ってない筈の部屋からずっとうぅーって声が聞こえるとか スイゲツさんには散々だよ! 「何であの人、問題しか起こさないのさ!!」 元からいる幽霊の人達は大体、形がしっかり人の形してるから、ぶっ倒すのとぶっ倒さなくていいのと、区別はつく 「つくけど、何で死角から声かけようとしてくるのさ、あの人ら!」 非常時に遊ばないでくれないかな?! 間違て怒槌ぶっぱしても知らないからね! 「ていうか!滅べ!!」 死んだんだから、あの世行けよぅ! 僕、此処が終わったらミツルギ先生の所居るぅ! |
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【魔】 うへぇ……何この悪霊の数!? こんなにワラワラいて、大渋滞じゃないの とりあえずぱぱっと帰ってもらいましょ! 魔術真名詠唱 屋敷内の霊と対峙しつつ、襲ってくるようなら手加減して「乱れ斬り」 ちょっと聞きたいんだけd……あっぶな! おいこら話聞けー!! 戦闘の際は通路の真ん中で戦う等いつもより立ち位置には注意 なるべく狭い所では戦わないように意識 近くに物がある場所にはなるべく行かないように 大ぶりな動きではなく、最小限の動きで攻撃を与える 終わった後は後片付けのお手伝い ねーねー 今までもこんな幽霊がわらわら出てきたことあったの? |
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屋敷外の幽霊の排除を行う 完了次第、内部を援護する 建物へ被害を出さない為、立ち位置と攻撃範囲に気を付ける 同様に、悪霊が建物に被害を及ぼさないよう警戒 移動時は仲間へ禹歩七星を使用して時間短縮 友好的な幽霊の案内や援護はありがたく受ける 幽霊の助言があれば効率的に動けるかもしれない 外から書斎の位置が分かれば、外からそこへ向かう幽霊を優先して排除 戦闘時は回復と鬼門封印で支援 強い悪霊や数が多ければ禁符の陣に切り替え ナツキも黒炎やスキルで攻撃 攻撃はHPをゼロにしない程度に抑える 話を聞いて済むなら、対話で未練を断ち切らせてあの世へ向かうようにしたい 悪霊にもナツキは対話を試みるが、駄目なら力ずくで地獄に退去させる |
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屋敷の外で幽霊達と対峙しましょう すぐ祓うことはないよう加減しつつ攻撃を加えていき、まずは幽霊達を正気に戻すことを目的に戦っていきます 正気を失っていただけの霊なら、不満や未練などを聞いて憂いを払ってから成仏させてあげたいですね 悪霊達には、正気に戻ったら大人しく成仏することを勧め、悔いるなら罪も軽くなるはずと説いてみましょう 迷っている素振りを見せる者がいたらその方に手を出すのは後回しにします 呼び掛けに応じず、危害を加える悪霊には心眼剣や怒槌で手早く終わらせてあげましょう それに、そうして片付ければ、同調していた者にも悩める余裕が出来るかもしれませんから |
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私達は屋敷の中に入って悪霊達を大人しくさせたいと思います。 屋敷の中では奇襲に注意しつつ私が先を歩いてユニアさんは後ろから着いてきてもらいます。 屋敷は広いですし部屋と言う区切りもあって、外よりかは数も少ないので静かに良く確認して一人づつ相対していきます。 今でこそ干渉できますが、元は幽霊です。 物理的な干渉はあんまり無いと考えて、魔力防御の高い私が幽霊を見つけ次第組み付いて行動を制限します。 少し可哀想ですがその間にユニアさんには魔弾で大人しくなるまで攻撃を頼みます。 押さえ付けているので室内の物への誤射も減るでしょうし。 話を聞けるようになったら説得を試みますが、ダメそうならば実力排除もやむを得ません。 |
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~ リザルトノベル ~ |
●現地集合 国土魔方陣に干渉するべく、悪霊の集まる屋敷に浄化師達は訪れた。 「カグヤさんのご実家、素敵ですね」 屋敷の敷地前にまで訪れた『タオ・リンファ』は、趣のあるお屋敷を見詰め言った。 リンファの言葉に嘘偽りはない。 目の前のお屋敷は、年月を重ねた風情が良い意味で感じられる。 普段から手入れも良くされているので、お屋敷『だけ』を見たならば、風格さえ感じられるだろう。もっとも―― 「あんな風になっていなければ、ですが……」 ため息をつくように、リンファは呟く。 彼女が指差す屋敷の敷地には、数多くの霊達が飛び回っていた。 (思っていた以上に多いですね) 幽霊屋敷ということで、ある程度覚悟はしていたが、それにしても数が多い。 しかも昼の最中だというのに、姿を薄れさせることもなく、やたらと自己主張が激しい霊達だった。 (さて、どうしますか……) リンファが少し考え込んでいると、彼女の隣に居た『ステラ・ノーチェイン』が声を掛けて来る。 「マー」 「どうしたんです? ステラ」 普段とは違う声音のステラに、気になったリンファが聞き返す。 するとステラは、霊達を見詰めながら言った。 「なんであいつら、幽霊なんかになってんだ?」 純粋に疑問を浮かべるステラに、リンファは応える。 「未練があるんでしょうね。今は正気を失っているようですが、可能なら話を聞いてあげましょう」 「分かった!」 元気良く返すステラ。そこに―― 「話を聞くのは良いな!」 リンファとステラの話が聞こえた『ナツキ・ヤクト』が声を掛けてきた。 「幽霊だって、言いたいことがあるんだろうし、話を聞いてやろうぜ」 「対話で済むならそれが一番だ」 ナツキの言葉に、『ルーノ・クロード』が続ける。 「魔法で、こちらからの干渉が可能になるようだが、だからといって実力行使だけが手段ではないからね。私も可能なら話し合いをするのは賛成だ」 そこまで言うと、続けて提案する。 「幽霊が居るのは、屋敷の外と内の両方らしいから、分担して進めた方が良いと思う。私達は、まずは外を担当しようと思う。余裕があれば、屋敷の中の手伝いもするつもりだ」 「でしたら、私達は屋敷の外を担当します」 「外の幽霊を相手するんだな? 任せろ、マー」 リンファとステラの応えを聞いたルーノは、他の仲間にも声を掛ける。 「君達は、どうする?」 「私達は屋敷の中に入って悪霊達を大人しくさせたいと思います」 ルーノの呼び掛けに『スレイニー・ティルティエ』が応える。 「外の方が数は多いみたいですから、今の私達では対処が難しいと思っています。屋敷の中なら、部屋という区切りもあって、外よりかは数も少ないので、静かに良く確認して一人づつ相対していけると思いますから」 まだ浄化師としては新人のスレイニーは、現状を把握した上で、自分の出来ることを精一杯こなそうとする。 やる気はあっても無茶をしそうにはないスレイニーに、ルーノは安心しつつ、彼女のパートナーである『ユニア・シズヴィーレ』にも訊いてみる。 「君も、そういうことで良いだろうか?」 「ええ、構わないわ」 ユニアはスレイニーのすぐ傍で応える。 「一度に数多くを相手するのは難しいから、可能な限り1体づつ対処するつもり。スレイニーちゃんも言ってたけれど、部屋という区切りかあるから、外よりもやり易いでしょうし。ただ、そのためにも屋敷の中の構造を聞いておきたいわね」 「確かに、それもそうだな。なら――」 ルーノは、少し離れた場所で『ヴォルフラム・マカミ』を引っ張っている『カグヤ・ミツルギ』に声を掛ける。 「屋敷の中の構造を聞いておきたいんだが……今は大丈夫だろうか?」 「ん、大丈夫……ヴォル、逃げないで」 「うぅ……」 放っておくと逃げ出しそうなヴォルフラムの腰に腕を回し、カグヤは説明をするために近付いてくる。 「屋敷の中は、気をつけて戦えば、余計な被害を出さなくて済むと思う。部屋は――」 説明をしてくれるカグヤに、ルーノは他の仲間にも声を掛け、皆は集まる。 「屋敷の中、結構広いみたいだから、部屋ごとに分担した方が良いかもしれないわね」 カグヤの話を聞いて、『ラニ・シェルロワ』は言った。 「あたし達は、屋敷の中を担当しようと思う。それでいい? ラス」 「ああ」 ラニの言葉に、『ラス・シェルレイ』が応える。 「悪霊の数が多いから、分担して対処していこう」 「確かに悪霊の数、多いわよね……」 ラニは、今も屋敷の外を飛び回っている悪霊達に、げんなりとした声を上げる。 「うへぇ……何この悪霊の数!? こんなにワラワラいて、大渋滞じゃないの。とりあえずぱぱっと帰ってもらいましょ!」 「全くだ……そういえば、屋敷の外はこんなだけど、中も同じなんだろうか?」 ラスの疑問に、カグヤが応える。 「屋敷の中も、似たような物だけど、悪霊じゃない霊もいるから、気をつけて貰えると助かる」 「他に、霊が居るんですか?」 気になって尋ねるスレイニーに、カグヤは返す。 「うちの、ご先祖様が居る」 カグヤは、屋敷が幽霊屋敷となった原因である水月のことも含め、説明する。 話を聞いて、ラスは呆れた口調で言った。 「わざと禁術を使って幽霊に……? シィラとじぃ様が聞いたらひっくり返るぞ……」 家族といえるシィラが禁術を使った影響で幽霊になり、それを聞いて大慌てになった、おじいちゃんとも言えるエフェメラのことを思い出し、思わず声を上げる。 「気持ちは、分かる」 カグヤはラスの言葉に同意しながら、元凶であるご先祖様のことも含めて話す。 「水月様、以外のご先祖様なら、尋ねれば道案内ぐらいしてくれると思う」 「……ちょっと待って。その、水月って人、この状況で何かして来るの?」 不穏な気配を感じ取ったユニアが尋ねると、カグヤは軽く眉を寄せ応えた。 「場合によっては、おどかして来ると思う」 「そうなのか? まぁ、それならそれで、気をつけるけど……ええと、カグヤの相方は……大丈夫か? そいつ」 水月の話が出て来ると、カグヤの腰にしがみ付くようにして怯えるヴォルフラムに視線を向けるラス。 ヴォルフラムは、泣き言を言っていた。 「うぅ……絶対アイツ、おどかして来るよ……」 小さい頃、散々おどかされてトラウマになっているヴォルフラムは、そのせいで幽霊全般が苦手になっている。 ヴォルフラムの様子に、水月のことを色々と察する浄化師達。 そんな中で、ルーノは纏めるように言った。 「状況は分かった。では、屋敷の中を3組。残りが外を担当し、終われば屋敷の中の援護に向かう、ということで良いだろうか?」 「ん、良いと思う」 カグヤが返す。 「あと、屋敷の中の幽霊が片付いたら、父様に玄関に来てもらう」 カグヤの父親であるミツルギは、近くに居る幽霊の活動を消す特異体質だ。 今は、万が一があると危ないので、家族と使用人共々、一端離れて貰っているが、終わればすぐに連絡し来て貰うことも出来る。 「僕、此処が終わったらミツルギ先生の所居るぅ!」 ヴォルフラムが絶大な信頼を寄せている辺り、効果は抜群である。 「では、そういうことで進もう。2人も、それでいいだろうか?」 ルーノは、それまで話を聞いていた『ベルトルド・レーヴェ』に呼び掛ける。するとベルトルドは―― 「ああ、それで大丈夫だ……」 そう言うと、疲れた様子で、『ヨナ・ミューエ』に呼び掛けた。 「ヨナ。それで良いな?」 返事はない。 ヨナは屋敷の外を飛び回る幽霊を見詰めながら、小さく呟いている。 「幽霊……悪霊……」 真顔である。真顔のまま、呟いている。 「……ヨナ」 「ぇ……は、はい!」 びくりっ! と驚いたように返すヨナ。 それにベルトルドは、ため息をつくように返す。 「担当分けの話だ。俺達は屋敷の外を担当するが、それで良いな」 これにヨナは、きりっ! とした声と表情で返す。 体は強張らせたままだったが。 「一刻も早く悪霊をどうにかしましょう!」 「意気込むのは良いんだが、大丈夫か……?」 「当然です!」 ヨナは何故か早口で応えた。 「ゾンビやスケルトンのような実態があるものとは違って世の中にはそういった実在があるのは知ってはいますが私に霊感のようなものはありませんし急に出てきたり脅かしたりするようなものは正直得意ではありませんね特に脅かすのは良くないですよほんとに――」 皆は色々と察した。なので―― 「大丈夫だ! マーもオレもいるから、一緒にがんばるぞ!」 「ああ! みんなが居るんだ。1人で無理なら、言ってくれ。助けるからな!」 ステラとナツキに励まされる。 「ありがとうございます! 心強いです!」 力強く返すヨナだった。 そんなこんなで、担当分けも終わり、魔女アマンダが皆に魔法を掛ける。 「これで大丈夫です。生身と同じように幽霊に干渉できるようになりましたよ」 浄化師達は、アマンダに礼を言うと、それぞれ担当場所に向かう。 ルーノに禹歩七星を掛けて貰っているので、皆の動きは素早い。 迅速に、皆は悪霊達に対処することにした。 ●屋敷の外の悪霊退治 「うひぁあ~」 ヨナが驚いて声を上げながら、ライトレイをぶっ放す。 それを地面にすり抜けて躱す悪霊。 「何で当たらないんですが避けちゃダメでしょこの上は――」 「おいちょっと待て!」 エクスプロージョンの準備に入ったヨナをベルトルドは止める。 「何する気だ」 「地面に隠れたんですよ卑怯じゃないですかだから諸共――」 「破壊するな。カグヤの実家だぞ」 ベルトルドの言葉に、はっと息を飲むヨナ。 「そ、そうですね。出来るだけ被害を出さないようにしないと」 「ああ。とりあえず、威力を絞った攻撃魔術を頼む。俺は前に出る」 そう言うと、ヨナを守るように前に出るベルトルド。 すると、くねりと動く尻尾がヨナの目に付いた。 握った。即座に。 (怖いんだな……) 尻尾を握られたベルトルドは、反射的に耳をビクッとさせるが、ヨナの好きにさせる。 (精神安定の代わりになるなら問題ないか。それにしても、尻尾を掴まれるのも久々だ) ヨナが暴れない様、尻尾を握らせたまま悪霊に立ち向かう。 とはいえ、尻尾を掴まれているので離れることも出来ず、必然的に2人一緒に動くことに。すると―― 「――……ぃ」 「――!」 ヨナの耳に掠れた声が響く。 慌てて振り返るも、そこには誰も居らず。 思わず後ずさりした所で、足首を掴まれた。 「――!」 声にならない悲鳴を上げるヨナ。 足元を見れば、地面から生えてきた手が、ヨナの足首を掴んでいる。そして―― 「……ぃてけぇ」 頭の割れた悪霊が、地面からぬっと、浮かび上がるように現れた。 「うひゃあっ!」 堪らず悲鳴を上げ、攻撃魔術を撃ちまくるヨナ。 「待て! 落ち着け!」 当然止めるベルトルド。 ベルトルドの呼び掛けで我に返ったヨナは、珍しく泣きそうな声で言った。 「しょうがないんです! あんまり驚かされると手加減も出来なくなりますよ……!」 そう言いつつも、ベルトルドに声を掛けられたことで幾らか冷静さを取り戻したヨナは、精神安定のためにベルトルドの尻尾をより一層強く握りながら、連続攻撃。 威力を絞っているので、庭の被害は小さく抑えられたが、悪霊はそうはいかない。 思いっきり吹っ飛ばされる。 そして吹っ飛ばされた悪霊は、それまでのような朽ちた死体のような姿から、生前の姿に戻った。 「なんだ? こりゃ?」 衝撃を受け、正気に戻ったらしい霊にベルトルドは状況を説明したあと声を掛ける。 「ここに留まっていては魂はどんどん濁る。今、正気を取り戻している間に行くべき場所へ還ろう」 これに男の姿をした霊は、にぃっと笑みを浮かべ返した。 「馬鹿言うんじゃねぇ! いま死んでるってこたぁ、これ以上死にようがねぇってこったろ! だったらやりたい放題じゃねぇか!」 そう言うとヨナに襲い掛かる。 「ひゃっはー! とりあえず女――」 最後まで言い切る余裕を与えず、ヨナは威力を絞ったエクスプロージョンで吹っ飛ばした。 「悪は滅びました!」 「……いや、お前、平気なのか?」 「大丈夫です! 見た目や出現方法が怖くなければどうということは無いです!」 異様にテンション高く応えるヨナ。目が座っている。 (……屋敷の外を選んでおいて良かった) 心底思うベルトルドだった。 その後も、悪霊と対峙するベルトルド達だったが、見た目と現れ方が『オバケ』の間は、ビビり散らすヨナ。 そんなヨナに、ベルトルドは諭すように言った。 「……ヨナ。あんまり恐れてやるな。元々は俺達と同じ人間だ」 ベルトルドの言葉に、ヨナは息を飲むように黙ると、申し訳なさげに頷く。 そのあとは恐怖を飲み込みながら、ヨナ達は霊達に対応する。 ほとんどは悪霊なので問答無用で地獄送りにしないといけなかったが、中には人の良い霊も。 「あの、怪我したら、危ないですよ」 正気に戻った霊の1人を悪霊から庇いながら、ヨナは声を返す。 「大丈夫です。私達は浄化師ですから」 守るべき誰かを背にしたヨナは、悪霊を前にしても臆さず言った。ベルトルドの尻尾は握ったままだったが。 「安心してください。私達が守ります」 「ああ、その通りだ」 ベルトルドもヨナのサポートをしながら応える。 「少し待っててくれ。終わったら、もし何か話したいことがあれば話を聞く」 浄化師としてヨナとベルトルドは、悪霊と対峙した。 2人のように、仲間も悪霊と対峙する。 「幽霊に干渉できるなんて、魔法ってほんとすげぇな!」 襲い掛かってくる悪霊に、剣の腹でカウンターを返しながらナツキは言った。 これに、連携しながら魔力弾を撃っているルーノが返す。 「ああ。こちらの攻撃が通るのは助かる。魔法の援護がなければ、これだけの数を相手にするのは骨が折れただろうからね」 ルーノの言う通り、霊達の数は多い。 霊達の動きを見ながら、ルーノはナツキに指示を出す。 「ナツキ。書斎側に向かう幽霊から対処しよう。儀式魔法の邪魔をされると厄介だ」 カグヤから建物の内部構造を聞いていたルーノは、優先順位を付けて動く。 (見ている限り、率先して屋敷の中に入ろうとしている者は居ないようだが、万が一もある。屋敷に近付く相手から対応しよう) ルーノは冷静に判断すると、書斎に近い屋敷の壁に向かう。 そこには、霊が数体居るのが見えた。 (なんだ?) よく見れば、1体の霊を、他の幽霊達が攻撃しているように見える。 (仲間割れ? いや、そもそも霊達に仲間意識があるのか?) 状況を判断しようとルーノが観察していると、ナツキが跳び出した。 「なにしてんだ!」 ナツキが襲われている霊を守るように跳び出すと、他の幽霊達がナツキに襲い掛かる。 しかも、ナツキが守ろうとした霊も、暴れるようにして鋭い爪を振るう。 「ナツキ!」 囲まれたナツキを助けにルーノが跳び出す。 反射的に幽霊達はルーノにも襲い掛かろうとして飛び掛かるが、触れる直前で動きが封じられる。 禁符の陣による拘束と封印。 (魔法が掛かっている今なら、霊にも効くようだな) 幽霊達の動きが、統率されていたり連携されていれば無理だったが、本能的に暴れている相手なら禁符の陣を掛けるのは容易い。 動きを封じた霊達を通り抜け、ルーノはナツキの元に向かう。 「怪我はないか! ナツキ!」 「大丈夫だ、ルーノ」 余裕のある声でナツキは返す。 「数は多いけど、どうにかなる。それよりも――」 ナツキは、他の幽霊達に襲われていた霊に顔を向けながら言った。 「こっちの方が大変だ。幽霊同志だと、怪我をするみたいだ」 ナツキの言葉通り、猫科の大型獣の姿をした霊は、あちこち斬り裂かれている。 「ルーノ。怪我を治せないかな」 今も威嚇する様に唸る霊を前にして、それでもどうにかしたいとナツキは提案する。 (君ってやつは――) ルーノは苦笑を飲み込み返した。 「出来るかどうか分からないが、やってみよう。ただその間、他の幽霊達に襲われると厄介だ」 「任せろ! そっちはどうにかする!」 ルーノの禁符の陣から逃れた幽霊達が一斉に飛び掛かろうとする前に、ナツキは立ち塞がる。 そして自身の黒炎魔喰器を構え、解号を響かせた。 「希望を守る牙になれ。解放しろ、ホープ・レーベン!」 黒炎が吹きあがる。 それを、突進して来た幽霊達と、ナツキの背後で唸り声を上げる霊がまともに受けた。すると―― 「おおおおぉぉぉ……」 幽霊達は、もだえるように転げまわる。 地獄の炎である黒炎は、罪や業を焼く。 それは幽霊達には覿面に効果を露わし、正気を取り戻させた。 「正気に戻ったのか?」 警戒しつつも状況を把握しているルーノの傍で、ナツキは幽霊達に呼び掛ける。 「正気に戻ったんだな。なぁ、何があったのか話してみろよ。ちょっとは気が楽になるかもしれないぜ!」 これに、ナツキが背後に庇っている霊は、静かに言った。 「……私は、死んだんだな……なら、家族に伝えたいことが――」 獣人の彼の言葉に耳を貸そうとした時、それまで彼を襲っていた悪霊たちが襲い掛かってくる。 「なにすんだ!」 立ち塞がるナツキに、悪霊達は嘲笑する様に返す。 「はぁ? テメェらも殺してやるってんだよ!」 「なるほど。よく分かった」 「があっ!」 禁符の陣で再び悪霊達を拘束したルーノが、ナツキの代わりに言った。 「話をするより、拳で語った方が君達には効きそうだ」 天上に届けるべき霊を守り、悪霊を地獄に叩き落すべく、ルーノとナツキは戦った。 善良なる霊を守り、悪霊を地獄に送る。 それはリンファとステラも変わらない。 「大丈夫だ! こわくないぞ!」 ステラは霊の1人を前にして、明るい声で呼びかける。 「ステラ!」 「心配すんな、マー。こいつ、こわがってるだけだぞ」 戦いながら声を掛けて来るリンファに、安心させるような笑顔を浮かべステラは返す。 見れば、ステラの手には幾つか細かい傷が付いている。 それは目の前の、犬科の大型獣の姿をした霊から受けた物だ。 唸り声をあげ、爪を振るう霊に、ステラは反撃せずに声を掛け続けている。 「オレ達はなにもしないぞ。心配しなくていいぞ」 何度爪を振るわれても反撃しないステラに、霊は唸り声を上げるも、攻撃をするのを止める。 だがステラが近付こうとすると威嚇するので、近付くことが出来ない。 霊とステラの様子を見て、リンファは過去の記憶が思い浮かぶ。 それは自分と、ステラが初めて出会った時のこと。 懐かしさがこみ上げて来た。 だが、今はそれに流される時ではないと自身を律し、目の前の相手と対峙する。 「落ち着いて下さい。私達は、貴方達に危害を加えるために来たわけではないんです」 襲い来る幽霊達の爪を、蒼滅呪刀・化蛇で捌きながら、リンファは声を掛け続ける。 「今のままでいたら、苦しむだけです。どうか心静かに、気を静めて下さい」 リンファは声を掛け続けるが、幽霊達の攻撃は止まらない。 むしろ反撃をしないリンファを嘲笑うように、攻撃の勢いは増していく。 それだけならば、まだリンファは耐えるつもりだったが、幽霊達はステラ達にも向かおうとする。 (止むを得ません) ステラと、彼女が必死に声を届けている霊に危害が及ばないよう、リンファは黒炎を解放する。 「波濤に呑み干せ、化蛇!」 解号に応え、化蛇から黒炎が溢れる。 リンファの狙いは、化蛇の特殊能力である津波で幽霊達を飲み込み、出来る限りダメージを与えずに衝撃を与え正気に戻すことだったが、ここで予想外のことが起る。 化蛇から溢れた黒炎が、リンファに襲い掛かっていた幽霊達と、ステラが声を掛け続けていた霊を包み込む。 すると霊達は驚いたように声を上げるが、見る見るうちに生前の姿へと変わっていった。 「大丈夫か!?」 ステラは、それまで声を掛け続けていた霊に近付く。 狼の半獣姿をした女の子は、近付くステラにビクリっと身体を強張らせる。 そんな彼女に、ステラは笑顔を浮かべ言った。 「オレはステラだ! お前の名前はなんていうんだ?」 これに女の子の霊は、最初は迷うようにして戸惑っていたが、小さな声で答えた。 「……ファウ」 「そっか、ファウか。よろしくな!」 少し年下に見える女の子に、ステラは明るく声を掛け続ける。 すると少しずつではあるが、女の子の霊の表情は柔らかくなっていくように見えた。 2人の様子を見て、リンファが安堵するように息をつくと、突如ぶつけられた殺気に反応し化蛇を振るう。 「ちっ、防ぎやがった」 舌打ちしながら悪霊は、魔力で作り出したナイフを、ステラと話している女の子の霊に向け投げつける。 「なにをするんです」 化蛇で弾いたリンファが鋭い声を向けると、悪霊は笑いながら返した。 「ゲームだよ、ゲーム。外れちまったから0点だ」 「……なにを言ってるんです。怪我をしたらどうするんです」 「はぁ? なに言ってんだ。死んでんだから今更どうってことないだろ」 「そんなこと、関係ないでしょう」 リンファは怒りを飲み込みながら言った。 「貴方達は霊だから、怪我は平気なのかもしれません。それでも、誰かから悪意をぶつけられれば、心は傷む筈です」 リンファの言葉に、悪霊達は嘲笑で返した。 「ひゃはははっ、なに言ってんだこいつ。俺が痛いわけじゃねぇんだから、知ったこっちゃねぇよ」 「……そうですか」 心が冷えていくのを感じながら、それでもリンファは呼び掛ける。 「大人しく、あの世に旅立って下さい。このままここに留まれば、先ほどと同じように正気を失います。そうならないためにも――」 「知るかバーカ!」 リンファの言葉を嘲笑い、悪霊達は一斉に攻撃する。 それを化蛇が生み出した津波が飲み込み押し流す。 「なっ、テメェ」 慌てて悪霊は追撃を加えようとするが、リンファの方がはるかに速い。 一瞬で間合いを詰めると、居合抜刀。 一太刀の元に切り伏せ、悪霊は地面に落ち、地獄へと飲まれていく。 「話を聞く気が無いなら、こちらにも考えがあります。手早く終わらせましょう」 次々襲いかかってくる悪霊を、リンファは斬り伏せた。 「よし、オレも! あいつらやっつけたら、また話をしような、ファウ」 「……うん」 ファウに見送られ、ステラはリンファに加勢する。 そして悪霊を全て倒すと、ファウのような善良な霊達の話を聞いてやり、天上へと送ってやった。 屋敷の外の霊達を、浄化師は対処していく。 それは屋敷の中も同じだった。 ●お屋敷の悪霊退治 声が聞こえる。 囁くように小さく不明瞭な声。 けれど自分に向けられたものだと分かる。そんな声。 (うぅ、首の後ろがぞわぞわする) ヴォルフラムは耳をぺたりと伏せさせながら、カグヤと共に屋敷を巡る。 何度か来ているので迷うことは無いが、問題はそれ以外。 (出て来ないでよ) 「ヴォル、平気?」 カグヤに声を掛けられ、尻尾を垂れさせたヴォルフラムは応える。 「今は大丈夫……スイゲツさんが出て来さえしなければ……」 悪霊より警戒するヴォルフラム。 「そんなに、怖い?」 「しょうがないよーっ。だってあの人、やりたい放題なんだから」 子供の頃におどかされたことを思い出し、心底嫌そうに語る。 「視線を感じると思うと、頭だけがあったとか。寝てて、ふと目が覚めると顔のぞき込んでて、体動けないとか。誰も使ってない筈の部屋からずっとうぅーって声が聞こえるとか。スイゲツさんには散々だよ! なんであの人いつまでもここに居残ってんの!」 「……うん」 思わず頷くカグヤ。 (……確かに、水月様が居残ってる事については、前に「良かれと思って! てへぺろ」とか言われたから、どうしてくれよう、とは思ったけど) ご先祖様とはいえ、頭が痛い。 とはいえ今は、やるべき事は悪霊退治。 「ヴォル、今は集中して」 「……分かったよ」 空中から突進してくる悪霊に、ヴォルフラムはカグヤを守るように前に出ると、両手斧を振り抜く。 斧で斬り裂かれた悪霊は吹っ飛ばされると、生前の姿に戻る。 「あ? なんだこりゃ」 見るからに険悪な気配を纏っていたが、声をかけ状況を説明する。 「このままここに居ると、さっきと同じように、なるかもしれない。だから大人しく、あの世に行くことを、お勧めする」 カグヤの言葉に、悪霊は嘲笑うと跳び掛かって来る。 「テメェらも死ね!」 それを真正面から迎え撃つヴォルフラム。 「大人しくあの世に行きなよ!」 切実な言葉と共に、悪霊をカグヤと協力して撃退し地獄へと送る。 「まずは、1人。他にも居るみたいだから、どうにかしよう」 「まだ居るんだ……何でこんなことに……これも全部、スイゲツさんのせいだよ」 屋敷をカグヤと巡りながら、ヴォルフラムは愚痴をこぼさずにはいられない。 「何であの人、問題しか起こさないのさ!!」 愚痴をこぼしながらも、浄化師としてやるべきことはする。倒すべき相手を確認しながら攻撃していった。 屋敷の中には悪霊達とは違う、ミツルギ家に由来する幽霊もいるが、そちらは見た目で判断できる。出来るのだが―― (元からいる幽霊の人達は大体、形がしっかり人の形してるから、ぶっ倒すのとぶっ倒さなくていいのと、区別はつく。つくけど……) 「つくけど、何で死角から声かけようとしてくるのさ、あの人ら!」 時折、不意を突くように声をかけて来る。 「非常時に遊ばないでくれないかな?! 間違て怒槌ぶっぱしても知らないからね!」 悪霊達を捌きながら、ヴォルフラムは両手斧を振るい声を上げる。 なんというか、破裂する一歩手前という感じであった。 なので、屋敷に元々いる霊達の内、大半は邪魔にならないように他所に行く。だが―― 「わあっ!」 「うわあああっ!」 ヴォルフラムが襲い掛かって来た悪霊に一撃を与えた瞬間、天井から逆さ吊りで現れた水月が驚かす。 「水月様!」 カグヤが声を上げるも、水月は楽しげに笑っている。 「はははっ、やっぱり良い反応するなぁ」 驚いて固まり、ピクリとも動かないヴォルフラムに水月は笑顔で近付く。すると―― 「――さ」 「え?」 なんだかいつもと違う様子に、水月が首を傾げていると、目を見開いたヴォルフラムが両手斧を振り回しながら声を張り上げる。 「なんでいつもいつも余計なことするのさ! 間違って斧が当たったらどうするの! もう知らない! ていうか! 滅べ!!」 「ちょ、待って、魔法が掛かってる今は拙いって!」 ぶんぶん斧を振り回し、悪霊をぶっ飛ばすヴォルフラムから慌てて逃げる水月。 「死んだんだから、あの世行けよぅ!」 水月ごと悪霊を追い駆けるヴォルフラム。 それを見たカグヤは、ため息ひとつ。 「……まぁ、自業自得」 (反応が楽しいからって弄り倒しすぎ) そう思いながら、ヴォルフラムのサポートをするカグヤだった。 2人の活躍もあり、屋敷の悪霊達は退治されていく。 それはもちろん、仲間の活躍もあってのことだ。 「ユニアさん、行きましょう」 スレイニーが屋敷の部屋のひとつを目指し走り出す。 「行くのは良いけど、慌てちゃだめよ、スレイニーちゃん」 スレイニーの背中を守るようにして後を追いかけるユニア。 2人が向かっている部屋には、霊が1人いる。 それは屋敷に元々いる幽霊が話をして説明してくれたからだ。 「この部屋、ですね?」 スレイニーの問い掛けに、こくりと頷く幽霊。 「では、私達で対処します。危ないですから、離れていて下さいね」 スレイニーの言葉に従い、すっと消える幽霊。 「ユニアさん」 「ええ、行きましょう」 2人は頷き合い、部屋のドアを開け中に入る。 中に入ると、そこには話に聞いていた通り、1人の霊が居た。 (女の人、でしょうか?) 姿が崩れかけているが、服装や体型から女性のように見える。 「こんにちは。私達は浄化師です。貴女の名前を、教えて貰えますか?」 意志疎通が出来るか試すため声を掛けると、女性の霊は恐慌をきたしたように腕を振るってきた。 「話は、このままだと通じないみたいですね」 「そうねぇ。なら、少しキツイ目覚ましをあげるしか――って、スレイニーちゃん?!」 離れた距離から魔力弾を叩きつけようとしたユニアの隣から、スレイニーは走り出すと言った。 「魔力防御は私の方が高いですから、少しの間捕まえます。その間に、正気に戻してあげてください」 「待って、危ないわよ!」 「大丈夫です。それに早く正気に戻してあげないと」 そう言いながらスレイニーは、女性の霊を背後から取り押さえる。 「ごめんなさい。少しだけ我慢してください。すぐに正気に戻してあげますから」 必死に女性の霊を取り押さえるスレイニー。 それをユニアは、はらはらしながら見ていたが、スレイニーが怪我をしないよう集中して魔力弾を放つ。 (危ないと思ったらすぐ離れてよね) スレイニーのことを心配しながら、誤射だけはすまいと放たれた魔力弾は、スレイニーが霊を取り押さえ動きを封じていたこともありクリーンヒット。 「ぅ……ぁ……」 魔力弾を受けた霊は小さく声を上げると、崩れかけていた姿を戻し、生前の姿になる。 「……ここは?」 正気を取り戻したらしい霊に、スレイニーが状況を説明する。 「――ということになっているんです。このままここに居ると、先ほどのように正気を失った状態になるかもしれません。ですから、あの世に行きませんか?」 話を聞いた女性の幽霊は、はらはらと涙を零し返した。 「……私、死んでしまったのね……なら、あの世に、行った方が良いんでしょうね……でも……」 どこか怯えたような表情を見せる女性の霊に、スレイニーは優しい声で言った。 「大丈夫です。心配しなくても、怖くありませんよ。そうだ!」 スレイニーは、妙案を思いついたというように、マナ・ディスクにセットしていたタロットカードを取り出し、女性の霊に差し出す。 「1枚、選んでみてくれませんか? 貴女の旅立ちを、占わせて下さい」 スレイニーの提案に女性の霊は、恐る恐る1枚のカードを選び取る。それは逆さまになった、旅の荷物を持ち前に進む人の姿が描かれていた。 「逆位置の愚者。終わりからの再生。そして希望。好き旅立ちを意味するカードです」 にこやかに言うと、今度はスレイニーが1枚カードを引く。 それは、満天に広がる星々が描かれていた。 「正位置の星。希望と、良き旅立ちを意味するカードです。貴女のこれからの運命は、祝福されています」 笑顔を浮かべ、スレイニーは温かな声で言った。 「あの世や来世は、貴女が思っているよりきっと悪くないですよ」 「……そう、かしら」 「はい。きっとそうです」 応えながら、女性の霊の決断をスレイニーは待つ。 女性の霊は、迷うように黙っていたが、ふっと力を抜くように小さく笑みを浮かべ応えた。 「……ありがとう。気が、楽になったわ。このまま……旅立とうと思うわ」 すると、ゆっくりと女性の霊は浮かんでいき、少しずつ姿を薄れさせていく。 「好き旅路を」 スレイニーの笑顔と言葉に送られて、あの世へと向かう女性の霊だった。 「……好かったわね」 「はい」 スレイニーはユニアに応え、そして続ける。 「他にも幽霊になった方は居ますから、助けに行きましょう」 「ええ、もちろんよ。行きましょう、スレイニーちゃん」 笑顔で応え、スレイニーと共に向かうユニアだった。 幽霊達は次々にあの世へと旅立つ。 中には、スレイニー達が出会ったような大人しい幽霊もいたが、そうでない者もいる。 悪霊達をこれ以上暴れさせない様、ラニとラスの2人は奮闘していた。 「話を聞きなさいっての!」 飛び掛かって来た悪霊を避けながら、ラニは悪霊に呼び掛ける。 「だから、ちょっと話を聞きたいだけ……あっぶな!」 1体だけでなく、背後からも襲い掛かって来た悪霊の攻撃を避ける。 「ラス、こいつら話を聞く気ないわよ!」 悪霊の攻撃を捌きながら声を掛けると、ラスも同じように悪霊の爪を避けながら返す。 「みたいだな。出来れば、穏便に済ませたかったんだが……」 頭痛を堪えるような声を上げるラス。 (霊たちにはかえるべき所にかえって貰いたいだけなんだが、話を聞く気ないな。それにこれだけ数が多いと、加減してる余裕が無いぞ) 外ほどではないが、屋敷の中も多くの霊が居る。 その全てを加減して相手するのは、さすがに厳しすぎる。なので―― 「おいこら話聞けー!!」 さすがに堪忍袋の緒も切れようってものである。 ラニは襲い掛かって来た悪霊の1体に、手加減をして乱れ斬り。 合わせるようにして、ラスも襲い掛かって来た悪霊に手加減して斬りつけた。 2人に攻撃を受けた悪霊達は、お化けめいた姿から生前の姿に変わる。 「……なんだ、こりゃ?」 元の姿に戻った悪霊達は疑問の声を上げる。そこでラニとラスは状況を説明した。 「良かった。正気に戻ったみたいね」 「落ち着いて聞いて欲しい。貴方達は、幽霊になってるんだ」 ラニとラスが話をすると、悪霊達は下卑た笑みを浮かべ言った。 「へぇ、そうかい。いま幽霊になってんのか」 「だったらよぉ、もう死なねえってことだよな!」 悪霊達は剣を魔力から作り出すと、ラニとラスに斬り掛かって来る。 「ちょっと、なにやってんのよ!」 「暴れんな! 体に傷が付いたら使い物にならねぇだろ!」 「はぁ? なに言ってんの」 悪霊が振るう剣を片手拳で捌くラニに、悪霊は笑いながら返す。 「体寄こせってんだ! 俺が使ってやるからよ!」 「あたしに憑りつく気?!」 「そうだよ! ひひっ、そうすりゃやりたい放題だ! 要らない体は、取り換えれば良いだけだしな!」 「ざっけんじゃないわよ!」 「うおっ!」 悪霊の言葉に、それまで力を抑えていたラニは、全力で乱れ切り。 「お前、なんで! さっきまでと全然違うじゃねぇか!」 「当ったり前でしょうが! さっきまでは手加減してあげてたのよ!」 「ひっ!」 ラニに追い詰められ、逃げ腰になる悪霊。 そこにラスが先回りして攻撃。 悪霊を背中からバッサリと斬り裂く。 「ラニ!」 「オッケー!」 ラスの呼び掛けに応え、ラニは連携攻撃。 一息で悪霊を斬り伏せ、地獄へと叩き込んだ。 「ラス、アンタの方の悪霊は?」 「そっちは先に倒した」 何度か実戦を経験した2人にとって、そこらの悪霊では勝負にならなかった。 悪霊を倒したあと、念のために周囲を警戒するも、追撃の気配はない。 残心を解き、一息つくとラニは言った。 「性質の悪い幽霊だったわね」 「ああ。他にも居るかもしれない。被害が出る前に、どうにかしよう」 「分かったわ」 2人はその後も、幽霊を見つけ次第対処する。 悪霊の例もあるので身構えていたが、次に出会ったのは善良な幽霊だった。 「お世話になりました」 正気に戻してくれたことに礼を言い、何度も頭を下げる青年の幽霊をラニとラスの2人は見送る。 「気にしないで。それより、もう気掛かりなことは無いの?」 「いえ、貴方達が話を聞いてくれたから、すっきりしました。ありがとう」 幽霊はそう言うと、すぅっと宙に浮かび上がり消えていく。 「お2人がこちらに来られたら、またお礼を言わせて下さいね」 善意で言われたラニとラスの2人だが、さすがに微妙な表情になる。 「当分は、無理ね」 「ああ」 2人は苦笑すると、幽霊の対処を再開。 屋敷内に居る仲間とも合流すると、全てを倒し終ったことを確認した。 「まだ外には幽霊さんがいるみたいです」 スレイニーの言葉にラスが返す。 「屋敷の中より数が多かったみたいだからな。こっちは片付いたから、手伝いに行こう」 これに皆は頷く。そしてカグヤが続けて言った。 「それなら、父様に、玄関に来て貰う。父様が居たら、新しい幽霊が、来ないと思うから」 「だったら僕はミツルギ先生の所に居るよぅ!」 「ヴォルは戦って」 「……はい」 カグヤに強く言われ、従うヴォルフラムだった。 そして外の幽霊を、浄化師達、皆で対処する。 皆で協力したこともあり、ほどなくして全ての幽霊をあの世へと送ることが出来た。 「他に幽霊は居ないみたいだね」 念のため周囲を確認したルーノにナツキが応える。 「こっちも大丈夫だぜ!」 他の場所を確認していた仲間からも、同様の応えが返ってくる。 それを確認してからルーノは提案した。 「終わったみたいだから、片付けをしておこう。出来る限り被害は出ないよう戦ったつもりだが、それでも荒らしてしまった場所があるだろうからね」 これにヨナが同意する。 「分かりました。事後処理も大事ですからね」 「……そうだな」 未だに尻尾を掴まれたベルトルドは、脱力した声で応える。 (いい加減、離して欲しいものなんだが……) 途中から、明らかに尻尾の感触を楽しんでいるヨナに、諦めたように好きにさせているベルトルドだった。 そして後片付けを始める。 「私達は、屋敷の中の片付けをしようと思います」 「なら、行きましょう。スレイニーちゃん」 ユニアは、スレイニーと2人きりになれるよう、いそいそと手を繋いで屋敷の中に向かう。 「私達も屋敷の片付けに行きましょう」 「ああ」 ラニはラスを誘い屋敷の中に向かう。 その途中、カグヤを見つけ、気になったことを聞いてみる。 「ねーねー。今までもこんな幽霊がわらわら出てきたことあったの?」 「さすがに、ない」 「あったら最悪だよー!」 落ち着いた声で返すカグヤと、悲鳴のような声を上げるヴォルフラム。 「うぅ、もう2度とこんなことなければいいけど……」 「大丈夫でーす」 ヴォルフラムの言葉に、儀式魔法が終わったらしいメフィストが返す。 「今までの術式を補強する形で上書きして、その上で国土魔方陣に干渉できるようにしましたからー。元から居る幽霊はともかくー、少なくとも悪意のある霊は近付けませんしー、万が一近付いても、弱体化するようにしておきましたからー。問題が起こることは無いですよー」 メフィストの言葉を聞いて、一安心するヴォルフラムだった。 そして皆は片付けを行う。 その中で、ステラは空を見上げていた。 「なぁ、マー」 ステラは、リンファに尋ねる。 「ちゃんと、あの世に行けたかな?」 ステラは、話を聞いて納得させた上で、天上に送り出したファウのことを気に掛ける。 「大丈夫ですよ」 リンファは静かに応える。 「迷いはなくなった筈ですから。だって、笑ってくれたじゃないですか」 空へと向かう中、笑顔を浮かべていたファウのことを思い言った。 「うん。そうだな!」 リンファの言葉に、嬉しそうな笑顔を浮かべるステラだった。 こうして幽霊騒動は終わりをみせる。 儀式魔法が成功するまでに悪霊達を撃退し、迷える善良な霊は天上へと送り出すことの出来た浄化師達だった。
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*** 活躍者 *** |
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[15] ルーノ・クロード 2020/07/21-23:28
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[14] ヨナ・ミューエ 2020/07/21-22:46
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[13] カグヤ・ミツルギ 2020/07/21-22:14
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[12] カグヤ・ミツルギ 2020/07/21-22:11 | ||
[11] ナツキ・ヤクト 2020/07/21-22:01
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[10] タオ・リンファ 2020/07/21-21:51
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[9] ラニ・シェルロワ 2020/07/21-16:51
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[8] スレイニー・ティルティエ 2020/07/21-07:41
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[7] ルーノ・クロード 2020/07/21-00:13
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[6] ヨナ・ミューエ 2020/07/20-22:11 | ||
[5] タオ・リンファ 2020/07/20-02:25 | ||
[4] ナツキ・ヤクト 2020/07/19-00:20 | ||
[3] カグヤ・ミツルギ 2020/07/18-22:40 | ||
[2] ヨナ・ミューエ 2020/07/18-01:17 |