~ プロローグ ~ |
虚栄の孤島。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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この塔をクリアすると、ダヌ様の元に行けたの、ですか… 北の森、何かあるって、言ってましたものね… ゴーレムさん、なんだか、懐かしい、です ええ、お膳立てを、してくれた、リア姉様達の為にも、頑張ります 魔術真名詠唱 リチェちゃんと一緒に皆さんに禹歩七星 少し後方、ボスに攻撃が届く範囲で味方の回復 リチェちゃんやルーノさんと範囲攻撃に一緒に巻き込まれないよう位置に気を付けて 敵が迫ってきたら禁符の陣 回復も支援も必要なければボスゴーレムに火界咒を お茶会…とても魅力的、なんですけど また後で、寄せて貰います、ね ダヌ様、とても幸せそう 起こすの、可哀相ですけど どうしても起きない時にはホイッスルを耳元で ダヌ様、ごめんなさい… |
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原初の巨木… 今でも残っているのかしら わたしも一度見てみたいわ どんなに大きな樹なのかしら 命を育む女神様 お会いして、天使様をお助け下さいってお願いしたい ゴーレムが現れれば魔術真名詠唱 シアちゃんと協力して禹歩七星 回復をします 怪我をした人は無茶をしないで シアちゃんやルーノさんと協力しながら 皆の回復 怪我をした人は庇い 退魔律令で弾き飛ばす できればボスゴーレム側へ 余裕があれば 禁符の陣での支援や九字で攻撃 ダヌ様の所で あと5年という呟きに瞬き …うちの妹たちと一緒… とりあえずカーテン?を開けて 光を入れ とんとんと肩を叩いて おはようございます ダヌ様 おねぼうさんですね もう朝ですよ 朝ごはんを用意しますから起きましょう? |
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まさか北の森がこうなっていたとは ヴァーミリオン達がここまでお膳立てしてくれたんだ 朗報を持って帰るぞ 俺の目的は敵の撹乱と耐久低下、他の仲間の補助 ボスゴーレムを黒炎で耐久を下げる マッピングファイアかスウィーピングファイアでボスゴーレムと他の敵を巻き込みながら攻撃 とりあえずこちらの攻撃が厄介だと理解させつつ他の仲間の攻撃が当たる機会を作る ダヌ様…本当に寝てるな… ドクターが羽ペンでくすぐりブブゼラにギョッとする ドクター…ちょっと悪戯がすぎるのでは…? こういうのは、身体を物理的に起こすと目を覚ましやすいんですよ 布団や毛布をめくっても寝るものは寝ます …どこぞのねぼすけな物理学者を見ていてよく分かりました |
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■対ゴーレム ナツキは1Rから黒炎解放、ボスゴーレム対応 特殊効果+氷結斬で凍結を狙う ダメージは肩代わりされてもバッドステータスは効果があるかもしれない 弱体化させて攻撃を重ねて肩代わりさせ、配下ゴーレムの破壊を手助けしたい 飛ばす腕は回避 追尾するなら、配下ゴーレムやボス自身を盾に直撃を防ぐ 敵がまとまっていれば盾には困らない ルーノは全体の回復と、配下ゴーレムの攻撃範囲の把握に努める 範囲が重なる場所に留まっての交戦は出来るだけ避ける スポットライト使用中はリコリスの回復を重視 配下ゴーレムの5Rごとの範囲攻撃は、禁符の陣の封印で妨害を狙う ■勝利後 ゲートが出るまでお茶会で休憩 ダヌはナツキが大声で起こしにかかる |
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ここ、アトラクションみたいな罠ばかりの趣味の塔かとばかり思っていましたが 自然創生神たるダヌ様がお眠りになられているのには驚きです 灯台元暮らしみたいなものか ま、やることさえ分かれば後はそれをこなすのみだ 戦闘 共通 配下ゴレの範囲攻撃を纏めて受けないようばらける 喰人 配下ゴーレムを出来るだけボスの近くに誘導し味方の範囲攻撃にボスごと巻き込みやすくなるように動く 弱点属性をついたりダメージの肩代わりと厄介だが…火力には火力をだ ヨナ まとめて思いっきりやれ 後衛に向けたロケットパンチは足で弾いたり両手で受け止めるなどし不発にさせたい (ヨナの発言に対して)無茶を言うな ヨ 時間をかけるほどに配下が増えていくのなら 続 |
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次の神様との契約ね 色んな立場や組織の人達が力を合わせてて、何だか気が引き締まるわ 魔術真名詠唱 まず戦踏乱舞で味方の支援 スポットライト使用して配下ゴーレムを引き付け、仲間の範囲攻撃の範囲内に入れるよう誘導 自分が巻き込まれないように散開ぎみに動く 5Rごとの苦手属性攻撃には気を付け、使用のタイミングを見計らって離脱、再度接敵をくり返す 新しく配下が召喚されたら今度はそちらにスポットライト 先程と同じく範囲攻撃に巻き込めるように誘導 配下が少なくなったらボスの方へ向かう さあ、あとはねぼすけ女神様を起こさないとね 早く起きないと爆笑ギャグ100連発をお見舞いするわよ…メフィストが まあいるかどうかは分からないけれど |
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試練の塔を攻略し、女神ダヌを起こすことが目的 契約してほしいというのもあるけれど この国の守護天使のためにも 目的が達成できるようがんばろう >戦闘 戦闘が始めれば魔術真名詠唱 範囲魔法を使いやすくするため ゴーレムをなるべく一か所にまとめるよう動く リ:戦闘乱舞を前衛メンバーに 他のメンバーと協力して、後衛が攻撃に巻き込まれないように引きつける 魔力感知も使いながら、ゴーレムの属性や範囲魔法の予兆を探りながら攻撃 敵攻撃はスイッチヒッターを使用 セ:中衛位置で陰陽師の人の護衛 攻撃がきた時はペンタクルシールドを展開 近づいてくる敵にはルーナープロテクション ゴーレムを倒せればダヌ様の元へ 何とか起きてもらうよう声をかける |
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寝てる神様起こしにいくの?オッケー! モーニングコールね! 魔術真名詠唱 ボスゴーレムの牽制へ 敵の死角を狙い、積極的にJM15使用 狙う部位は足元>腕 範囲攻撃を警戒し、なるべく一か所に留まらず味方同士で固まらないように 配下ゴーレムの位置も意識、自分が範囲攻撃に巻き込まれないように移動を繰り返し ダヌを起こす際、仲間の声掛けでも起きないなら んもー仕方のない女神さまね おはよー!起きて!!朝よ!すっごい朝!!(滅茶苦茶ベルを鳴らしながら) みてみて外見ておはよー!!(滅茶苦茶ベルをry 痛ーい!モーニングコールじゃない! おはようございます、ダヌ様!起きた? |
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~ リザルトノベル ~ |
試練の塔を訪れた浄化師達は、ゴーレムに案内され最上階に向け登っていた。 「この塔をクリアすると、ダヌ様の元に行けたの、ですか……」 最上階に通じる階段を歩きながら『アリシア・ムーンライト』が呟く。 「クリアできれば、ダヌ様のいる、島の森に行けるんですね」 少し前、島の開拓をしていた時の報告書を思い出しながら続ける。 「北の森、何かあるって、言ってましたものね……」 彼女の言葉に、連れ立って歩いている『クリストフ・フォンシラー』が返す。 「ダヌ様がいるんじゃ、そりゃ北の魔力が濃いわけだ」 「はい。そこに通じるゲートを、ゴーレムさんが、守っていたんですね」 「んごー」 アリシアの言葉に、皆を案内しているゴーレムが応える。 「ゴーレムさん、なんだか、懐かしい、です」 くすりと笑みを浮かべるアリシア。 アリシアの笑顔に、小首を傾げるように体を傾けるゴーレム。 ひょうきんな仕草ではあるが、以前に戦ったことのあるクリストフは、その強さを十分に理解している。 「あの時の苦労を思うと、エルリア達も苦労したんだろうなあ。苦労を無駄にしないよう、頑張らないといけないね」 「ええ、お膳立てを、してくれた、リア姉様達の為にも、頑張ります」 こくりと頷くアリシアだった。 最上階へと向かいながらパートナーと言葉を交わすのは、『リチェルカーレ・リモージュ』と『シリウス・セイアッド』も同様だ。 「原初の巨木……今でも残っているのかしら」 実家が花屋さんなリチェルカーレは興味深げに呟く。 「わたしも一度見てみたいわ。どんなに大きな樹なのかしら」 リチェルカーレの呟きを聞いて、シリウスが応える。 「この塔をクリアすれば、会える筈だ」 「ええ、そうよね。ここにいらっしゃるとは思わなかったけど、お会いしたいわ」 「そうだな……八百万の神が、ここに眠っているとは思わなかった」 シリウスの言葉に頷きながら、リチェルカーレは続ける。 「命を育む女神様。お会いして、天使様をお助け下さいってお願いしたい」 「……この新しい国にも、きっと女神は必要だろう」 リチェルカーレの言葉に軽く頷きながら返すシリウスだった。 会話を交わしながら浄化師達は最上階を目指す。 近付くごとに、楽しげに眼を輝かせる者もいる。 「ナツキ。意気込んでるな」 道中、気持ちを高ぶらせているのか、尻尾を振っている『ナツキ・ヤクト』に、『ルーノ・クロード』は声を掛ける。 これにナツキは楽しそうに返した。 「ああ! ボスを倒して完全攻略してやるぜ!」 以前、塔に挑んだことのあるナツキは、今回が最終局面ということもあり、意欲を漲らせている。 そんなナツキに、ルーノは苦笑しながら言った。 「契約の成否がかかっているというのに……」 「それはそうだけどさ。でも、ワクワクするじゃんか! 前に戦ったよりも強いんだよな」 「ああ、そうだろうね。だから、余計に気を引き締めないといけないよ」 「おう、分かってる。でもみんなもいるんだ。絶対に勝って、ダヌ様に会いに行こうぜ」 「ああ、もちろんだ」 言葉を掛け合い、2人は戦意を高めながら最上階へと向かう。 2人のように、以前に塔に訪れた事のある『ヨナ・ミューエ』と『ベルトルド・レーヴェ』も、思う所を口にする。 「ここ、アトラクションみたいな罠ばかりの趣味の塔かとばかり思っていましたが、自然創生神たるダヌ様がお眠りになられているのには驚きです」 「灯台元暮らしみたいなものか。そのつもりで、メフィストはこの塔を作ったんだろう」 そこまで言うと、ベルトルドは溜め息をつくように続ける。 「色々とおかしな所のある塔だったが、メフィストが作ったのなら、納得できる」 「……そうですね」 猫耳尻尾が生えたり踊り子衣装になった時のことを思い出し、ため息をつくようにヨナは言った。 「あの時は、まさかこんな秘密が隠されているとは思いませんでしたが……罠があったりゴーレムが居るのは、ダヌ様を守るためなんでしょうね」 「だろうな。だからいちいち、ゴーレムを倒さなければ会いに行けないようだが……ま、やることさえ分かれば後はそれをこなすのみだ」 ベルトルドの言葉に頷くヨナだった。 パートナーと言葉を交わしながら浄化師は最上階に向かう。 しかし階層が高いので、まだ着かない。 道中の時間を潰すように、皆は会話を続ける。 「メフィストさん、ダヌ様とも知り合いだったのかな」 軽く考え込むように小首を傾げながら、『リューイ・ウィンダリア』は呟く。 これに『セシリア・ブルー』は返した。 「相変わらず顔が広いのね。長く生きて、色々な場所を巡ってるみたいだから、その伝手があるのかもしれないわね」 「うん……」 「どうしたの? なにか気になることでもあるの?」 変わらず考え込んでいるリューイに尋ねると、応えが返ってくる。 「……目が覚めたら、ダヌ様、アレイスターに狙われたりしないかな」 「お守りする必要があるかもしれないわね」 セリシアはリューイを安心させ、発破を掛けるように言った。 「その辺りは、ウボーさんやヨセフ室長が考えてくださるでしょう。だから私達は、出来ることをしましょう」 「――うん。まずはダヌ様に会わないと」 セシリアの言葉に頷いて、リューイは意気込みながら進んでいく。 2人のように、意気込んで進むのは『ラニ・シェルロワ』も同じだ。 「しっかり目覚めさせてあげないと」 ラニの呟きに、『ラス・シェルレイ』が返す。 「やる気、出してるな、ラニ」 「まぁね。巧く行いけば、契約も出来るし、守護天使も助けられるんでしょ? だったらしっかりやらなくちゃ」 「そうだな……とはいえ、気をつけないと」 少し前、八百万の神であるエリニュスと契約した時のことを思い出し、緊張したように声が硬くなる。 「神と契りを結ぶ、か。……この間の試練は、きつかったな……」 「そうね。でも、どうにかなるわよ」 明るい声でラニは言った。 「だって今回は、寝てる神様起こしにいくんでしょ? モーニングコールみたいなものよ!」 「モーニングコール、か……」 ラニの明るい表情と声に力を貰ったラスは、同じように笑みを浮かべ応える。 「寝坊助な神さまを起こしに行くか」 笑顔で返すラニだった。 最上階に近付くにつれ、皆の意気込みは強くなる。 それは『リコリス・ラディアータ』も同様だ。 「次の神様との契約……色んな立場や組織の人達が力を合わせてて、何だか気が引き締まるわ」 ここに至るまでに助力してくれた、皆の苦労に応えるためにも、リコリスは意気込みを見せる。 彼女のやる気に同意する様に、『トール・フォルクス』は応えた。 「ここまでお膳立てしてくれたんだから、しっかり頑張らないとな」 「ええ、もちろんよ」 にっこりと笑顔を浮かべるリコリスにトールが返そうとした時、昇っていた階段が終わる。 「ここが最上階か……広いな」 トールの言葉通り、かなりの広さがある。 (下手に動き回られると厄介ね) リコリスは周囲を見ながら、すでに戦いの算段を付け始める。 そこにゴーレムの一団が現れた。 「わー。ゴーレムだー……」 現れたゴーレムを観察しながら『レオノル・ペリエ』は言った。 「奥に居る一番大きなのが、ボスゴーレムかな?」 魔力探知で確認しながら、皆と情報を共有する様に続ける。 「魔力の濃度がかなり高いし、油断は出来ないね。手前に居る8体も、手強そうだ」 レオノルの言葉を聞きながら、隣りに居る『ショーン・ハイド』は怨嗟の銃・ランキュヌを口寄せ魔方陣で召喚し、戦いの準備に入る。 「やる気だね、ショーン」 くすりと小さく笑みを浮かべながら声を掛けるレオノルに、ショーンは応える。 「はい。ヴァーミリオン達がここまでお膳立てしてくれたんです。朗報を持って帰らないと」 今回、最上階までの道のりは、ヴァーミリオンが率いるオクトのメンバーの尽力によりクリアされている。 ゴーレムとの戦い自体も大変だったが、性別が変わったり酔っぱらったりなんだりと、違う意味でも大変だったらしいので、その苦労を無駄にするわけにはいかない。 「一刻も早く倒して、女神を起こしに行きましょう」 「うん、そうだね。やろう、ショーン」 レオノルがショーンに応え、皆も戦闘態勢を整える中、対戦相手となるゴーレム達は配置を整える。 それはボスゴーレムを奥に置き、配下ゴーレムが壁になる陣形。 陣形を整えると、皆をここまで案内したゴーレムが、フリップに文字を書き見せる。 『始めて、良い?』 これに皆が頷く中、戦いは始まった。 ●最上階をクリアしよう! 戦闘開始直後。 ボスゴーレムは全力で逃げ出そうとした。 もちろん戦術である。 ボスゴーレムは、一定時間ごとに配下ゴーレムを召喚できるので、逃げ回っている間に召喚し続け、数で圧倒しようという作戦だ。 「ちょ、待ちなさいってば!」 「逃がすか!」 ボスゴーレムの抑えに動こうとしたラニとナツキが慌てて追いかける。 対してボスゴーレムは、捕まってたまるかと言わんばかりの勢いで全力疾走しようとした。そこに―― 「Fiat eu stita et piriat mundus.」 ショーンが黒炎解放。 リンクマーカーで狙いをつけ狙撃した。 「んごっ!」 蒼い鬼火の弾丸がボスゴーレムの後頭部にクリーンヒット。 衝撃でボスゴーレムの動きは一瞬止まるが、傷を受けた様子はない。 だが代わりに、配下ゴーレムの1体に罅が入る。 ボスゴーレムは、配下ゴーレムにダメージの肩代わりをして貰いながら、その場を離れようとするが、そこにナツキが追い付き斬撃を叩き込む。 「希望を守る牙になれ。解放しろ、ホープ・レーベン!」 ナツキは黒炎解放。 必中の特殊能力を乗せた氷結斬で切り掛かる。 逆袈裟に斬り裂いたが、ボスゴーレムにダメージは無い。 しかし配下の1体に罅が入り、さらにボスゴーレムの体の表面には氷が張りついていた。 (ルーノの予想通りだ!) 相棒の慧眼にナツキは笑みが浮かぶ。 ルーノは、ダメージは肩代わりされるとしても、アライブスキルで叩き込んだ魔術効果までは移せないのではないかと考え、ナツキに助言していたのだ。 体中に氷を貼りつけたボスゴーレムは、明らかに動きが鈍っている。だが―― 「んごー!」 滑らかな動きでボスゴーレムが殴りかかって来る。 その動きは、岩の塊とは思えないほど流麗で、明らかに武術家の動きだった。 ナツキの一撃を受けたあとのカウンターをボスゴーレムは放って来る。 弧を描く左フックは、凍り付いているというのに鋭く速い。 それをナツキは避けるより、手にしたホープ・レーベンを打ち合わせ軌道を逸らす。 だがボスゴーレムの一撃は重く、軽く殴り飛ばされるナツキ。 けれどナツキの顔には、楽しげな笑みが浮かぶ。 (前までのゴーレムよりずっと強い) 耳をピンっと立て、次の攻撃を構える。 「へへ、そう来なくちゃな!」 再び剣撃の間合いに跳び込み、ホープ・レーベンを振るう。 「俺だって前より強くなったんだ、負けねぇぞ!」 ナツキの言葉通り、かつてよりもはるかに鋭く、そして重くなった剣撃を叩き込んでいった。 ナツキの攻撃に合せるようにしてラニも間合いに跳び込む。 (――今だ!) ラニは、ボスゴーレムが正拳突きを放った瞬間、足元に跳び出す。 ボスゴーレムに気付かれるより早く間合いを詰めると、削ぎ落すような一撃を放つ。 手応えはあり、重い音が響くも、ボスゴーレムに傷はつかない。 代わりに、配下ゴーレムの1体に罅が入る。 「んご」 気付いたボスゴーレムがラニに身体を向けると、ラニは注意を引くように声を上げる。 「こっちよ、来なさい!」 仲間の攻撃が入り易いように挑発すると、ボスゴーレムは配下ゴーレムを新たに1体召喚した。 「こらー、手下に任せてないで相手しろー」 襲い掛かって来た配下ゴーレムの相手をしながらラニは声を上げるが、ボスゴーレムは再び逃げようとする。 そこにリチェルカーレが立ち塞がる。 「逃げちゃダメです」 「んこごっ」 接近したリチェルカーレが禁符の陣を掛け、ボスゴーレムの動きを拘束する。 ボスゴーレムをリチェルカーレが抑えている間に、アリシアが回復に動く。 「回復、します」 「すまねぇ! 助かる!」 アリシアは、積極的にボスゴーレムと対峙しているナツキに天恩天賜を掛け回復。 回復して貰ったナツキは、元気一杯にボスゴーレムへと再び向かう。 ボスゴーレムの抑えと、新たに召喚される配下ゴーレムの撃退。 そして回復によるダメージコントロールをすることで、ボスゴーレムを少人数で釘付けにする。 その間に、仲間の浄化師は配下ゴーレムの一掃に全力を尽くす。 「光は降魔の剣となりて、全てを切り裂く」 黒炎解放したシリウスが、配下ゴーレムの1体の間合いに跳び込む。 恐ろしく速く、そして鋭い。 元より魔術真名の詠唱に加え、ベリアルリングによる強化も行っている。 そこに黒炎解放の力も加えたソードバニッシュは、一撃で配下ゴーレムの腕を斬り飛ばした。 「んごっ」 シリウスを手強いと見た配下ゴーレムは、自分を壁にするようにしてシリウスに襲い掛かる。 それを斬り裂き、確実にダメージを刻んでいくシリウス。 しかし身を挺した配下ゴーレムの動きに、その場から動けない。 その隙に残りの配下ゴーレムが、ボスゴーレムの支援に動こうとする。 しかし、リコリスがそれを防ぐ。 「こっちよ、来なさい!」 リコリスは配下ゴーレム達の前に立ち塞がると、スポットライトを発動した。 魔力を込めた舞踏を見せつけ、強制的に意識を惹きつけると、仲間が攻撃し易い場所へと誘導する。 「んごごごー!」 まとめて数体のゴーレムが、ドタドタと追い駆けて来る。 十分に引きつけた所で、今度は逆に配下ゴーレムの群れに跳び込む。 それまで全力疾走していた配下ゴーレムは止まれず、慌てて速度を落とした所に、間合いに踏み込んだリコリスは、配下ゴーレムの足元に蹴りを叩き込む。 足元を蹴られた配下ゴーレムは倒れ込み、それが障害物となることで、残りの配下ゴーレムの動きは鈍る。 その隙に、リコリスは配下ゴーレムの間をすり抜けていく。 慌てて捕まえようとする配下ゴーレムだが、そこにリューイが斬りつける。 リューイは、リコリスに襲い掛かろうとした配下ゴーレムの前に跳び出すと、斬撃を放つ。 「んごっ」 腕を何度か斬り裂かれた配下ゴーレムは、体勢を整えるように一歩退く。 しかしそこにリューイは、さら踏み込む。 足元にまで距離を詰めると、今度は足回りを斬り裂く。 幾筋もの傷を刻まれた配下ゴーレムは、苦し紛れに拳を放つ。 それを掠るように避けたリューイは、その瞬間、スイッチヒッターを発動。 魔術により最適化された動きをトレースし、反射的にリューイは配下ゴーレムを斬り裂いた。 斬り裂くと同時に戦線離脱。 囲まれることなく、距離を取ることが出来た。 その間も、目まぐるしく視線を動かし戦況を把握する。 見れば、一時的に離脱するリコリスに向け、ゴーレム達が腕を向けていた。 (纏めて攻撃してくる気だ!) 魔力探知で確認すれば、リコリスの陰気の方陣相生である陽気の魔力が膨れ上がって来ているのが分かる。 リューイの様子で攻撃の気配に気づいたセシリアが、リコリスに呼び掛ける。 「こちらに来て下さい。守ります」 今まで回復役のルーノの護衛に就いていたセシリアは、ペンタクルシールドを展開し壁役として動く。 合わせてルーノも動き、リコリスを呼び寄せる。 「こっちに来てくれ。何かあってもすぐに回復する」 2人に呼び掛けられ、近付くリコリス。気付いた配下ゴーレム達は、攻撃をするべく向きを変えた。 それを防ぐべく、リューイは配下ゴーレムに斬り掛かろうとしたが―― 「マッピングファイアで攻撃する! 避けてくれ!」 トールの呼び掛けに反応し、リューイはその場を跳び退く。 直後、無数の矢が配下ゴーレム達に降り注いだ。 「んごごー」 矢の雨を食らい、あたふたする配下ゴーレム。そこに追撃が入る。 「続けていくよ!」 魔力探知でゴーレム達の魔力属性を確認したレオノルは、魔力を励起しナイトメアを発動。 どろりとした質感の闇が配下ゴーレムの1体を包み込み、圧縮。 闇が消えると同時に、配下ゴーレムは全身に罅を入れ崩れ去った。 「んごー」 固まったままでいると拙いと配下ゴーレム達は判断したのか、一斉に離れようとする。 しかしそこに撃音が響いた。 「九天咆哮!」 ベルトルドは自身の黒炎魔喰器、竜哭の特殊能力を解放。 竜哭から放たれた撃音を受けた配下ゴーレムは一時的に動けなくなる。 「今だ、ヨナ。まとめて思いっきりやれ」 「はい!」 ヨナは渾身のエクスプロージョンを放つ。 魔方陣に包まれた配下ゴーレム達は、次の瞬間、大爆発に包まれる。 爆風が晴れると、そこには全身を罅だらけにしたゴーレムが。 止めを刺すべく皆が距離を詰めようとするが、そこにボスゴーレムが新たに召喚した配下ゴーレムが突っ込んで来ようとする。 「あちらを抑えるぞ」 仲間の援護に動くようにして、ベルトルドは新たな配下ゴーレムの抑えに向かう。 「次から次に新しいのが出て来るな。切りが無いぞ」 「大丈夫です」 共に走り出すヨナが言った。 「時間をかけるほどに配下が増えていくのなら、それ以上の早さで攻撃を繰り出せばよいのでしょう? やり方はシンプルな方が好きですよ」 その言葉を証明する様に、攻撃魔術を連続で叩き込んでいくヨナ。 それを見たボスゴーレムが、離れた距離から拳を向けると、肘の辺りを爆発させて拳を飛ばしてくる。 ヨナは避けようとするも、それを追い駆けて来る。 「そんなのアリですか!?」 避け切れず当たりそうになった瞬間、ベルトルドが側面から殴り飛ばす。 「んごご」 残念、とばかりにボスゴーレムは唸ると、にょきりと飛ばした腕を生やす。 「ベルトルドさんもああいうの出来ません?」 「無茶を言うな」 思わず突っ込むベルトルドだった。 戦いは続く。 ボスゴーレムは何体も配下ゴーレムを召喚するが、浄化師達が破壊するスピードの方が速い。 それは配下ゴーレムを一か所に集めて攻撃できていることが大きい。 その戦術の立役者であるリコリスは、スポットライトで配下ゴーレムの注意を引き続けていることもありダメージが大きかったが、適時ルーノが天恩天賜で回復しているので危険はない。 浄化師が有利な中で戦いは進み、それを強めるべく、ラスが配下ゴーレムの群れに向かい跳び出す。 「グラウンド・ゼロを撃つ。避けてくれ!」 味方を巻き込まないよう呼び掛けると、意図を察した仲間は一斉退避。 ラスは単独で配下ゴーレム達の群れに辿り着くと、手にした両手斧シーラビリンスを振り上げ、配下ゴーレムの1体に叩き込む。 重い打撃音と共に叩き砕くと、一息遅れて周囲の大気が残りの配下ゴーレムを撃ち据える。 岩の砕ける音と共に、まとめて配下ゴーレムは砕け落ちた。 配下ゴーレムの一掃が終わる。 残りはボスゴーレムのみ。 そこで浄化師は一斉攻撃。 連続攻撃を食らい罅が入っていくボスゴーレム。 そして決着の時はやって来た。 (これで終わらせる) クリストフはボスゴーレムに向かって、真正面から距離を詰める。 あえて注意を引くと、狙い通り腕を飛ばして来た。 「待ってたよ」 クリストフは自身の黒炎魔喰器ロキの特殊能力を発動。 吹っ飛んできた拳はクリストフに当たると、全ての衝撃をボスゴーレムに反射する。 「んごー!」 砕け散るボスゴーレムの右腕。 そこに間合いを詰めたクリストフは反旗の剣を叩き込む。 あえて回復をしないことで蓄積していたダメージも加えた衝撃をボスゴーレムは喰らい、耐えることなど出来ず破壊された。 ボスゴーレムを破壊すると、紙吹雪と小さな花火が打ちあがる。 そしてわらわら出てくる小型ゴーレム達。 おめでとー! というように万歳をする。 「なんだか、随分と気さくだな」 「さっきまで戦ってたから、調子狂うわね」 ラスとラニがゴーレム達の様子に苦笑すると、同意するようにヨナも言った。 「散々焼き払ってしまいましたけど、やっぱりここのゴーレム達、気さくなんですよね」 和やかな気持ちになって来た所で、天井から階段が降りてくる。 「これを昇れってことかな?」 先導する様に招きよせるゴーレムにトールが疑問の声を上げると、ゴーレムは黒板式のフリップに文字を書いてみせる。 『ここを昇ったら、ダヌ様に会いに行けるよ』 「昇れば良いみたいね。行きましょう」 リコリスが階段に向かい、皆も後に続く。 昇りきると塔の屋上に。 そこはテラスになっており、虚栄の孤島が一望できた。 「わぁ、良い眺め」 絶景にリチェルカーレが声を上げる。 彼女の様子に、シリウスも周囲の景色に視線を向ける。 すると、北部の森に光の柱が立っているのに気付いた。 「あれは、なんだ?」 シリウスの言葉に皆が視線を向けると、光の柱の方角に当たる屋上に魔方陣が浮かび上がった。 『あれに入ると、ダヌ様の所に行けるよ』 ゴーレムの説明に、皆は魔方陣に入ろうとする。するとゴーレムが皆の手を引く。 『お茶会、しないの?』 見れば、いつの間にかテーブルが置かれ、様々なお菓子とお茶が用意されていた。 「わーいお茶会! クッキー食べるー!」 レオノルが喜ぶとゴーレム達も喜び、クッキーの入った籠を持って来て差し出す。 『食べて食べて』 「あ、美味しい」 さくりとしたクッキーは、レオノルの言う通り美味しい。とはいえ―― 「お茶会……とても魅力的、なんですけど。また後で、寄せて貰います、ね」 アリシアの言う通り、皆はダヌに会うことを優先する。 しょんぼりするゴーレム達。 ゴーレム達の様子を見て、リューイが呼び掛ける。 「忙しいから、今度ゆっくり遊ぼうね」 『遊ぶ?』 「ええ。約束するわ」 セシリアの言葉に、喜ぶゴーレム達。 そしてダヌの元に向かう魔方陣に入ろうとするが、その前にクリストフがゴーレム達に尋ねた。 「このお菓子、ちょっと貰っていっていい?」 するとゴーレム達の何体かが、お菓子を持って付いて行く、とフリップに書いてみせる。 その提案を受け入れ、浄化師達はゴーレム達と共にダヌの元に向かった。 ●お寝坊女神を起こそう 天を突くほどの巨大な大木の根元で、ダヌの化身は木の葉のベッドで寝ていた。 「……眠っているというのは比喩表現と思っていた……」 シリウスは眠る女神ダヌにため息ひとつ。 (本当に寝ている) 言葉にはしないが、なんとも言えない顔になる。 それは他の浄化師も同じだった。 (ダヌ様……本当に寝てるな……) 比喩か何かだと思っていたショーンは、呆然と見つめている。 その横で、レオノルはゴーレムに頼んでいる。 「羽ペンと、あと――」 (? ドクター、そんな物をどうするつもりなんだ?) ショーンが訝しんでいる間も、皆はどうするかと考える。 (ダヌ様、とても幸せそう) 安らかに寝ているダヌに、起こすのは気の毒だとアリシアは思いつつも、そういうわけにもいかない。 「起こすの、可哀相ですけど、起こしてあげないと、ダメですよね」 これにクリストフは頷く。 「うん。守護天使のこともあるし、起こしてあげよう」 とはいえどうしよう? 皆が考える中、レオノルが、ゴーレムが用意してくれた羽ペンを持ってダヌに近付く。 「ドクター?」 ショーンが不思議そうに見つめる中、レオノルは羽ペンでダヌをくすぐる。 「だーぬーさーまーおーきーてー。だめだ。ぐっすり寝てる」 起きないので次の手段。 「……ブブゼラ鳴らしたら目覚ますかな」 「ちょっと待って下さいドクター」 慌てて止めるショーン。 「ドクター……ちょっと悪戯がすぎるのでは……?」 「そうかな? でも、起きないし」 「こういうのは、身体を物理的に起こすと目を覚ましやすいんですよ」 ショーンは実感のこもった声で言った。 「布団や毛布をめくっても寝るものは寝ます。……どこぞのねぼすけな物理学者を見ていてよく分かりました」 「ねぼすけ物理学者?」 小首を傾げレオノルは考えたあと、妙案を思いついたというように続ける。 「メフィストさん埋めたらハデスさん喜んでたから、今度も埋めたらみんな喜ぶと思うんだ」 「……ドクター、そんなキリっとした顔で言われても……」 さすがに止めるショーン。 その間も寝ているダヌ。 仕方ないので、体をゆすって試してみる。 「ダヌ様。ダヌ様。起きて下さい。……駄目ですね」 ヨナが何度かゆすってみるが、全く起き出す気配がない。 そこにベルトルドが、自分の考えを披露する。 「多少ベタ感はあるが、フライパンとおたまなんかでガンガンやってみたらどうだ」 「そんなの用意してきていませんよ」 ヨナが、何を言っているのかという顔をしていると―― 『フライパンとおたま、要る?』 ゴーレムがフライパンとおたまを持って来た。 「……」 どうしたものかとヨナが微妙な顔をしていると、ベルトルドがひょいっと受け取り言った。 「何事も試してみないと分からん。やるぞ」 「……そうですね」 というわけで、フライパンをおたまで叩いてみる。 「ん……」 寝返りを打つダヌ。 微妙な反応なので、続けるべきか迷っていると、今度はラニが起こしにかかる。 「んもー仕方のない女神さまね」 ラニはゴーレム達からベルを受け取ると、ダヌの耳元に近付きモーニングコール。 「おはよー! 起きて!! 朝よ! すっごい朝!!」 滅茶苦茶ベルを鳴らして起こそうとする。 「みてみて外見ておはよー!!」 起きるまで滅茶苦茶ベルを鳴らし続ける。でも起きない。 「しぶといわね。こうなったら、もっと数を増やして」 「待て待て待てやめろばか!!」 さすがに慌てて止めるラス。 ごつんっ、と拳骨で止める。 「痛ーい! モーニングコールじゃない!」 「やり方があるだろ! 相手は女神だぞ!」 ラニとラスの2人が賑やかなやり取りをしていると―― 「ん……ぅん……」 ダヌは寝返りを打ちながら、寝ぼけた声を上げる。 「おはようございます、ダヌ様! 起きた?」 「すみませんダヌ様このアホが本当にすみません!!」 慌てて謝るラス。 これにダヌは、寝ぼけた声で返した。 「んん……あと5年……」 あと5分。ぐらいのノリで寝ぼけ声を上げる。 「……うちの妹たちと一緒……」 神の時間感覚に、リチェルカーレは呆然と呟く。 同じように、ナツキも呆然と声を上げる。 「ご、5年も待てねぇよ!」 ナツキはダヌの元に走り寄ると、大声で起こそうとする。 「ダヌ様! 起きてくれ! 頼みたいことがあるんだ!」 何度も大声で呼びかけるも、起きる気配はない。 そこにクリストフが、クッキーの入った籠を持って来て呼び掛ける。 「5年も経ったら、このお菓子なくなっちゃいますよ?」 鼻先にお菓子を突きつけてみるが、やはり起きる様子が無い。 なので他の浄化師も、もはや手段を選んでおられぬとばかりに起こそうとする。 「ダヌ様、ごめんなさい……」 アリシアは持って来ていた黄金ホイッスルを取り出すと、勢い良く吹き鳴らす。 ヨハネの使徒の残骸で作成された笛は、200m先にも良く届く高性能。 だというのに、ダヌは変わらず安らかな寝息を立てている。 どうあっても起きないダヌに、リチェルカーレはダヌの肩をトントンと叩きながら起こそうとする。 「おはようございます、ダヌ様。おねぼうさんですね。もう朝ですよ。朝ごはんを用意しますから起きましょう?」 リチェルカーレの起こし方に、シリウスは頭を抱えるような気持ちで言った。 「子どもを起こすのとは訳が違う……」 実際、まだダヌは起きない。 それでも起こそうと、トールも呼び掛ける。 「起きてください、ダヌ様――」 「しょうがない女神さまね」 「リコ?」 近付いて来たリコリスにトールが呼び掛けると、リコリスは言った。 「ねぼすけ女神様、いい加減起きて下さい。早く起きないと爆笑ギャグ100連発をお見舞いするわよ――メフィストが」 「さすがに無茶ぶりだと思う」 思わず突っ込むトール。 「でもちょっと聞いてみたい気もする――」 「無茶ぶり勘弁して下さーい!」 「うわっ、メフィストさん!?」 唐突に表れたメフィストに驚くトール。 「どこから現れたのよ」 突っ込みを入れるリコリスにメフィストは返した。 「貴方達が最上階のボスゴーレムを倒してくれたので、結界の中に入ることが出来るようになったのでーす」 「今まで入れなかったの?」 リコリスの問い掛けにメフィストは応える。 「そうでーす。寝てるダヌを守るために、そうしてたのでーす」 メフィストの話を聞いたあと、リューイが言った。 「ダヌ様を起こすのを手伝って貰えませんか?」 「それなら簡単でーす。結界が解放されたので、放っておいても起きますがー、ここでお茶会でもしてたら、すぐに目を覚ましまーす」 「どういうことかしら?」 セシリアの問い掛けにメフィストは返す。 「楽しい気配が近くであったら、目を覚ましまーす。引きこもってる神や寝てる神は、大抵そういうので目を覚ましまーす」 「そうなんですか?」 軽く驚いたように聞き返すリューイにメフィストは応える。 「そうでーす。宴とかお祭りとかしてると、誘われて出てきますからねー」 メフィストの言葉に、半信半疑ではあるものの、他に方法がないのでお茶会をする事に。 「んご、んごごー」 「んごごー」 浄化師達について来ていたゴーレム達が、テキパキとお茶会の準備を始める。 ゴーレム自身が仲間のゴーレムを口寄せ魔方陣で次々召喚し、テーブルなども揃えていく。 「何だか楽しそう」 見ていたリチェルカーレの言葉に、メフィストが返す。 「楽しんでますよー。この子達は、役割上仕方ないですがー、ずっと試練の塔に引きこもってましたからねー。貴方達と関われるのが、嬉しくて楽しいのですよー」 メフィストの話を聞いていたナツキが提案した。 「なぁ、このゴーレム達ってさ、この後どうなるんだ? 行く所無いなら教団に来たらいいのに……ダメか?」 「でーきまーすよー。召喚権限者を設定すればー、その人物のテリトリー内なら、自由に呼び出しできますしー。貴方達が塔をクリアしたのでー、教団本部に召喚権限者を設定できる権利を手に入れられましたからー」 「それは、どういう事なんだろうか?」 話の内容を確認するため、ルーノが聞き返す。これにメフィストは応えた。 「元々、試練の塔はー、ネームレス・ワンに対抗する人材が居ない時の、戦力として造った物なのでーす」 「ちょっと待って。話がいきなり飛んでる。詳しく話してくれないかな?」 クリストフの言葉にメフィストは返す。 「試練の塔はー、内部に入ってきた侵入者と戦うことで経験を蓄積しー、より強いゴーレムを作り出す仕組みになってまーす。それによって作り出される強力なゴーレムは、塔をクリアできた人物がいれば、その人物の属する組織が自由に召喚し、ネームレス・ワンと戦う時の戦力にして貰うつもりでしたー。クリアできる人が居なければ、ゴーレム達に魔法少女ステッキを装備させてー、魔法少女軍団を作って、戦力にするつもりだったのでーす」 「魔法少女ステッキって、創造神と戦うための物だったんですか?」 「元々は、そのつもりで作ったのでーす」 ヨナの疑問にメフィストは応える。 「もっとも今は、教団が捕まえた終焉の夜明け団に装備して貰ってー、色々と頑張って貰ってますけどねー」 「……そういえば、そうでしたね」 歴戦の終焉の夜明け団の男性が、プリティキュートな魔法少女にされていたのを思い出し、思わず胡乱な表情になるヨナ。 「貴女達が終焉の夜明け団を殺さず生かして助けたのでー、そういう事になってまーす」 「待って下さい! そうなんですか!」 「そうでーすよー。貴女達の行動が切っ掛けでーす。それで死んでた筈の人間が生き残れたんですからー、良かったと思いますよー」 「それは……んー……」 悩むヨナだったが、とりあえず棚上げにする。 その間に、メフィストは説明を続けた。 「とにかくー、貴方達が塔をクリアしたので、教団本部にゴーレムを召喚できるようになりましたー。召喚権限者は、シィラちゃんに設定しますよー」 「シィラに?」 「え、どういうこと?」 ラスとラニの言葉にメフィストは返す。 「あの子にはー、シルキーとしての性質を付与して安定して貰ってますからー、建物の中を活動場所にするゴーレムとは相性が好いのですよー。本格的にシルキーにランクアップ出来たら、召喚したゴーレムを自由に強化できるようになるでしょうしー」 メフィストの話を聞いている内に、お茶会の準備が整う。 「んごご」 ゴーレム達に勧めれ、それぞれ席につきお茶とお菓子を振る舞われた。 「ありがとう、ございます」 アリシアは礼を言うと、クリストフと席に座りお茶を一口。 口に含むと、爽やかな香りが広がっていく。 「美味しい、ですね」 「ええ、美味しいわ」 アリシアの言葉に、同じテーブルに座っていたリチェルカーレが応える。 「この香りは、何かのお花かしら?」 「だと、思います。ひとつじゃなくて、幾つか、組み合わせて、いるみたいですね」 これを聞いたゴーレムが、フリップにブレンドの配合などを書いて教える。 他のテーブルでも、ダヌを起こすために、同じようにお茶会をしていく。 「ルーノ、このクッキー美味いぜ。食べてみろよ」 「ああ、ひとつ貰うよ」 ルーノは手に取って食べてみる。 「うん、美味いな」 「だろ? これって、クリスマスの時のクッキーを思い出す味だよな」 「クリスマス……ああ、似ているかもしれないね」 他のテーブルでも、お茶会は続く。 「美味しいけど、ちょっと刺激が足らないわね」 上品な味わいのクッキーを食べながら感想を呟くリコリスに、ゴーレムが追加のクッキーを持って来る。 それは他の物よりも色合いが濃い。 「んご」 「くれるの? ありがとう」 礼を言って一口。 今までよりもくっきりとした濃い味わいに、リコリスは笑みを浮かべた。 そうして和やかで、楽しいひとときを過ごしていく。すると―― 「皆さん、ダヌ様が――」 ヨナの呼び掛けで、皆はダヌに視線を向ける。 「……ん……あら?」 寝ぼけ眼を瞬かせ、浄化師達が居ることに気付いたダヌは視線を向けて来る。 「ダヌ様、おはようございます」 セシリアが呼び掛けると、ダヌはベッドから起き上がり浄化師達に近付き尋ねた。 「貴方達は、誰かしら? 試練の塔を、クリアした子なの?」 「はい、そうです」 リューイが応える。 「メフィストさんに、塔をクリアすればダヌ様に会えると聞いて来ました」 「あら、おじさまの知り合いの子なの?」 そう呟いた所で、ダヌはメフィストが居ることに気付く。 「おじさま、なんで居るの? 前は、もう会えるかどうかわからないって言ってたのに」 「状況が好転してるのでーす」 メフィストはダヌの言葉に返す。 「貴女と別れる100年前に予測した頃より、今はかなり良いのですよー」 「そうなの? 革命に巻き込まれて、ギロチンで首を切り落とされる可能性は、もうないの?」 「この子達のー、浄化師のお蔭でー、その可能性は潰れてまーす。好い子達ですよー。だから、力になってあげて下さーい」 メフィストの言葉に続けるようにして、ショーンがここに訪れた理由を言った。 「ダヌ様。貴女は、アレイスターに捕らわれている守護天使を、解放する事が出来ると聞きました。その力を、貸していただけませんか?」 ショーンと同じように、皆も頼み込んでいく。 「お願い。力を貸して欲しいの」 「天使を解放するためにも、貴女の力をお借りしたい」 ラニとラスが呼び掛け、ヨナも懇願する。 「どうかアークソサエティの守護天使の為にお力をお貸しください」 他の浄化師達も、真摯に頼む。 その願いに、ダヌは応えた。 「ええ、分かりました」 ダヌがそう言うと、ふわりと1本の枝が宙を浮かびながらやって来る。そして浄化師の前に差し出された。 「それは私の枝です。それを捕らわれている守護天使の近くにまで持って行けば、支配術式に干渉して破壊できます。そのための魔力を溜めるのに100年かかってしまったけれど、確実に効果が発揮されます」 最高位の八百万の神が、100年眠りにつくことで貯めることが出来た魔力。 それが込められた枝は、アレイスターとの決戦で切り札となるだろう。 「持って行きなさい。きっと、貴方達の力になるでしょう」 「ありがとうございます」 皆を代表して受け取ったリューイは、大事そうに受け取り礼を言った。 それをダヌは、微笑ましげに見詰める。そのあと、皆に尋ねた。 「教えて欲しいのだけど、今は、どういう状況になっているのかしら? 眠っていたから分からないの」 これに浄化師達は、自分達の知っていることを話していく。その中で―― 「貴方、なんじゃもんじゃと関わりがあるの?」 ダヌがナツキに尋ねる。 「なんじゃもんじゃ様? 会ったことはあるけど、なんで分かったんだ?」 これにダヌは、くすりと小さく笑みを浮かべ応えた。 「貴方が持っている、その根付け。なんじゃもんじゃの枝から作られた物でしょう?」 これを聞いてリチェルカーレは尋ねた。 「なんじゃもんじゃ様と、お知り合いなんですか?」 「ええ、妹なの」 ダヌは笑顔で応える。 「あの子も私と同じ、原初の巨木なの。それぞれの国に2本ずつ居るのだけれど、ひょっとして会ったことがあるの?」 「はい。富士樹海迷宮で、お会いしました」 以前、指令で会ったことのあるアリシアが応える。 彼女以外にも会ったことのある者は居たので、その時のことを話すと、ダヌは笑顔を深め言った。 「あの子達と、貴方達は縁があるのね。それなら、他にも何かしてあげないとダメね」 ダヌが悩んでいると、メフィストが提案した。 「それなら、契約してあげたらどうですかー。八百万との契約の選定は終わってるのでー、貴女が契約しても問題ないですよー」 「あら、すてき」 嬉しそうにダヌは言った。 「人の子と契約できるなんて、何百年ぶりかしら」 楽しげに笑みを浮かべ続ける。 「必要な時があったら、喚んでちょうだいね。力になるわ」 こうして浄化師達は、ダヌと契約することになった。 試練の塔をクリアすることで、捕らわれた守護天使を解放する手段を手に入れ、さらにダヌに助力を頼むことも出来るようになる。 そして皆が教団に戻ると、メフィストが色々と動いて、教団本部にゴーレムが現れるようになった。 半ばシルキーになっている幽霊、シィラが召喚権限者になることで、100体ほどのゴーレム達が教団にやって来る。 ゴーレム達は、シィラをボスと仰ぎ、色々と働いてくれた。 お蔭で、様々な雑用を肩代わりしてくれ、教団本部の快適性が増し、一般教団員も含めて、喜ばれるようになるのであった。
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*** 活躍者 *** |
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[9] レオノル・ペリエ 2020/07/27-00:40
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[8] リューイ・ウィンダリア 2020/07/26-18:17
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[7] ラニ・シェルロワ 2020/07/26-14:23
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[6] ヨナ・ミューエ 2020/07/26-07:44
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[5] リコリス・ラディアータ 2020/07/25-22:48
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[4] ルーノ・クロード 2020/07/25-12:24
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[3] リチェルカーレ・リモージュ 2020/07/24-21:04
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[2] クリストフ・フォンシラー 2020/07/24-15:19 |