~ プロローグ ~ |
ブルーベルの丘の近くにある、星読みの祭壇。 |
~ 解説 ~ |
〇目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、留菜マナです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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幸せのうちに、であっても 本人が望んでない死を、勝手に与えるなんて…絶対、ダメです リシェ様を、助けたい だから、イヴルさん、よろしくお願い、します A 私達は、イヴルさんの護衛、そして、監視… 本当は監視は必要ない、と思ってます、けど 恩がある方に、仇なす事をさせて、ごめんなさい でも…お願い、リシェ様を… イヴルさんの演技が始まっても表情を変えないように 普段通りで大丈夫とクリスに言われたのでひたすら無表情 仲間が攻撃されれば本気で青ざめ慌てて回復 ギガス、さん…お願い、もうイヴルさんを、解放してあげて 誰も、滅ぶことなんて望んでは、いないはず、です 演技である事を忘れて悲しい表情に 逃げるイヴルを仲間と共に追いかけて |
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集落を壊滅させるだなんて どうしてそんな酷いこと… ええ リシェ様をお助けしましょう イヴルさんも守ってみせる これ以上 悲しい思いを増やさぬように A クリスさん達と連携して護衛 囮になるイヴルさんに あなたも無茶をしないでと リシェ様も、カノンちゃんも …ふたりのカタリナさんも 皆あなたを思っています イヴルさんは ・カタリナさんが信じた「滅びを受け入れる」に惹かれてしまう ・協力してくれたギガスへの恩義があり 裏切れない この思いから脱走したということに 逃げるイヴルさんを追いかける お願い止まって あなたと戦いたくないの 声をかけながら 傷つけたくないのでこちらから攻撃できないふり ギガス達が イヴルさんを攻撃することがあれば盾に |
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B 他でもないイヴルの願い…そしてカタリナの場所だ 必ずリシェ様を守るぞ ドクターの指摘に小さく頷く 苦しませないように、の筈が…これでは苦しむではありませんか 矛盾している せめてリシェ様にとって幸せな光景ならともかく… 早くこの世界から奪還しましょう ドクターのリシェ様捜索補助 具体的には魔力探知で探索に集中しやすいようにドクターの周りに襲い掛かる敵がいるなら排除する役割だ ぞろぞろ集まって来たらマッピングファイアで一網打尽にしてやる なぜ、こんな夢の世界になってしまったんだろうか 使われた魔結晶に理由でもあるのだろうか 実に奇妙な話だ まさか、聖女にとって幸せな光景、とでも…? そんな馬鹿な話が |
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B 終末世界でリシェを探す 水晶に触れ夢の中へ 生き残り達の所へ行き、魔力感知でそれらしい魔力を探ってみる それだけで見つからなければ、自分達が浄化師だと名乗り最終決戦に参加を申し出る 全員に…リシェにも聞こえるように 世界は終わるのかもしれない でも、私達はまだ生きている どんなに酷い世界でも、地獄でだって、私は死ぬまで生きる 全てを諦めて神様に最期を委ねるなんて、絶対に嫌 そのために戦ってきたし、これからもそうするわ …リシェ、どうか気づいて 私達はここにいるわ 発見できたらリシェに手を差し伸べ あなたを迎えに来たの 一緒に目覚めましょう、イヴルが待っているわ お目覚めに時間がかかるなら、それまで私達が食い止める |
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サクラ:イヴルって誰かしら。 キョウ:さぁ?誰でしょう。あの人では。 サクラ:知らない人とだなんて面倒だわぁ。 キョウ:面白い話をしましょう。まず自己紹介から。 サクラ:……冗談よ。 キョウ:冗談ですよ?ちゃんと誰か知ってますよ。 【行動:Aパート】 サクラ 楽しそうなお喋りをした方が良いかしら? 私達は気分屋だからちょっとイラっとするような事を言うかもね。 そのくらい仲が良いって事じゃないかしら。 キョウ サクラはともかく監視対象の情報を持たずに来るなんてありえないでしょう。 達は余計です。達は。おかしいのはサクラだけなので後で殴っておいてください。 喧嘩するほど仲が良いというものでしょう。もちろん自分は含みませんよ。 |
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~ リザルトノベル ~ |
「集落を壊滅させるだなんて。どうして、そんな酷いこと……」 祭壇を見上げた『リチェルカーレ・リモージュ』は悲しみを募らせる。 「リシェは必ず、助けてみせる」 「ええ。リシェ様をお助けしましょう」 イヴルの静かな決意に、リチェルカーレは応えた。 「イヴルさんも守ってみせる。これ以上、悲しい思いを増やさぬように」 「……ああ」 リチェルカーレの祈るような願いに、『シリウス・セイアッド』は決意を固める。 「幸せのうちに、であっても。本人が望んでない死を、勝手に与えるなんて……絶対、ダメです」 『アリシア・ムーンライト』は確かな意思を抱き、想いを口にした。 「リシェ様を、助けたい。だから、イヴルさん、よろしくお願い、します」 「ああ、ありがとう」 イヴルは強張っていた表情を緩める。 しかし、続けられたイヴルの言は慄くように掠れていた。 「ここからは、私一人で行かせてほしい」 「はい……。イヴルさん、気を付けて下さい……」 アリシアは、前を見据えたイヴルの想いを汲み取る。 「サクリファイスの残党達か。あの様子だと、俺達の事はギガス達も気づいてるみたいだね」 「そうだろうな」 『クリストフ・フォンシラー』は、遠巻きに周囲を徘徊するサクリファイスの残党達の姿を視界に捉える。 ギガス達も気づいているはず――。 指令を受けた際に教団から伝えられたその情報に、シリウスは苦慮するようにため息を吐いた。 「教団の考えることなんてバレバレ、ってね。さて、どうしたもんだろうね」 クリストフは、イヴルに挨拶するアリシアを見ながら首を捻る。 「イヴルが迷っているのも、教団が信用できないのも本当。本音を前に出した演技なら、怪しいと思っても興味をひくかもしれない」 これまでのイヴルの言動から、シリウスはある確信を胸に秘める。 「……そこにかけよう」 「そうだね」 シリウスの挑むような声に、クリストフは祭壇へと視線を向けた。 「イヴルって誰かしら」 「さぁ? 誰でしょう。あの人では」 『サク・ニムラサ』が発した疑問に、『キョウ・ニムラサ』はこちらに歩み寄ってくるイヴルを示す。 「知らない人とだなんて面倒だわぁ」 「面白い話をしましょう。まず、自己紹介から」 キョウの提案に、サクは返す。 「……冗談よ」 「冗談ですよ? ちゃんと誰か知ってますよ」 そこで2人は、目の前まで迫ってきていたイヴルに視線を向ける。 「……教団では顔を合わせたきりで、こうして話すのは初めてだったな。私はイヴルだ」 「あら。私はサクラよ」 「キョウヤです」 イヴルの挨拶に呼応するように、サクとキョウは応えた。 「楽しそうなお喋りをした方が良いかしら?」 「お喋りか……」 「サクラはともかく、監視対象の情報を持たずに来るなんてありえないでしょう」 サクの問い掛けに、イヴルは何を話せばいいのか思い悩む。 そこに、キョウは言葉を足した。 「私達は気分屋だから、ちょっとイラっとするような事を言うかもね」 「達は余計です。達は。おかしいのはサクラだけなので、後で殴っておいてください」 サクの意見に、キョウは即座に返す。 「そのくらい、仲が良いって事じゃないかしら」 「喧嘩するほど、仲が良いというものでしょう。もちろん、自分は含みませんよ」 サクの艶やかな笑顔に、キョウは応える。 「後の事は頼む」 「分かったわ」 周囲に注意を走らせながらも、イヴルはサク達と別れて祭壇へと歩いていった。 ● イヴルが向かった祭壇の入口には、ブリジッタを筆頭にサクリファイスの残党達が待ち受けていた。 イヴルは顔を俯かせて、伝葉でシリウス達に状況を伝える。 「入口に、高位ベリアルらしき存在とサクリファイスの残党達がいる」 『ギガスに恩があると言う気持ちを前面に出して。浄化師から逃げたい、手伝ってくれと言って聖樹森まで逃げてくれ。俺達は、それに合わせて動く』 イヴルからの連絡に、クリストフは助言を伝える。 クリストフ達は周囲を警戒しながら、連携してイヴルを護衛していた。 「分かった。だが――」 『大丈夫、演技は得意だ、任せてくれ。何なら、俺が仇だって事も言ってしまって構わないよ。信憑性が増すだろう』 「……ありがとう」 クリストフの気遣いに、イヴルは感謝を述べた。 『私達は、イヴルさんの護衛、そして、監視……。本当は監視は必要ない、と思ってます、けど』 アリシアはイヴルの心境を察し、心を痛める。 『恩がある方に、仇なす事をさせて、ごめんなさい。でも……お願い、リシェ様を……』 「ああ。リシェは必ず、救ってみせる」 アリシアの願いに応えるように、イヴルは言葉を継いだ。 「皆、無茶はしないでくれ」 『あなたも無茶をしないで』 リチェルカーレの真剣な声音に、イヴルは驚きを滲ませる。 『リシェ様も、カノンちゃんも、……ふたりのカタリナさんも、皆、あなたを思っています』 「ああ、約束する。無茶はしない」 リチェルカーレの願いの込められた囁きに、イヴルは肩の力を抜く。 その後の話し合いで、アルフ聖樹森までの段取りを立てる。 カタリナが信じた『滅びを受け入れる』に惹かれてしまう。 協力してくれたギガスへの恩義があり、裏切れない。 この思いから、イヴルは教団を脱走したという事に話が纏まる。 『どうせ、奴らは見ている。隠れて護衛するより、追いかけるふりをした方が効率がいい』 「追いかける?」 シリウスの発案に、イヴルは明確な硬さを表情によぎらせた。 『……抵抗した方が真に迫るだろう。捕えにいくから、攻撃をしてもらって構わない』 「分かった」 前向きな意思を持って告げるイヴルに、サクは語り掛けた。 『別々に借りを持つなんて浮気者ねぇ。浮気者は嫌われるのよぉ。誰にとは言わないけど』 「――っ」 カタリナの姿を思い浮かべ、イヴルは舌打ちする。 『ギガスに決意を見せろ。あれは、そういうのが好きなタイプだと思う』 『死ぬ気でやるより、生きるためにやって下さい』 「ありがとう」 サクとキョウの激励に、イヴルは背中を押されたように頷いた。 「皆を攻撃する事になると思う。すまない」 『あなたとの偽装戦闘になるのねぇ。あなたが、教団を裏切ったように見せ掛ける演技かしら』 「ああ」 イヴルのその明眸には、確かな決意が宿っていた。 ● 「ギガスに会わせてほしい」 ブリジッタは訝しげに、訪問してきたイヴルを一瞥する。 「浄化師に言われて来たものの、実はまだ迷ってる」 「知らんっちゃ。ギガス様は忙しいけん。夜明け団なんかと話す事はないんよ!」 覚悟を込めて発した言葉は、ブリジッタによって軽くあしらわれた。 終焉の夜明け団の行動とかけ離れた行動を取っていたとはいえ、イヴルが夜明け団の一員である事は変わりない。 ベリアルの存在理由、魂の捕獲を邪魔する者の一人だ。 嫌悪の眼差しを向けてきたブリジッタに対して、イヴルは必死に言葉を紡ぐ。 「ギガスには恩がある。カタリナも、人の滅びこそが救いと信じた。それなら自分は、その想いを無視できない。……だから、浄化師の元を逃げたんだ」 イヴルは頭を深々と下げ、すがるように懇願する。 「帰るっちゃ! 帰らないっち、言うなら……」 「頼む。ギガスに会わせてほしい!」 怒気を孕んで叫んだブリジッタに、イヴルは真摯に訴えた。 「しゃーしい! はよ、死ぬっちゃ!」 「――っ」 ブリジッタは煩そうに虫を追い払うような感覚で、魔力を込めた大剣をイヴルの首筋に突き付ける。 (イヴルさん……!) イヴルが息を呑み、様子を窺っていたリチェルカーレ達にも動揺の波が広がった。 「主は、カタリナと縁があった者だな」 「ギガス様、知っとーと?」 剣呑な雰囲気に包まれたその時、ギガスが発した言葉がブリジッタの動きを止めた。 ● 「ドクター、もう追ってこないようですね」 「そうだね。ようやく、振り切る事が出来たみたいだよ」 『ショーン・ハイド』の呼び掛けに、『レオノル・ペリエ』は安堵するように応える。 リシェが囚われている水晶に向かう途中、周辺を索敵していたサクリファイスの残党達は追い縋るようにショーン達の元に向かってきた。 その度に追っ手を振り切ったショーン達は、リシェが囚われている水晶を発見していた。 「この水晶の中に囚われているのが、リシェ様ね」 「他でもないイヴルの願い……。そして、カタリナの場所だ。必ず、リシェ様を守るぞ」 「ええ、もちろんよ」 『リコリス・ラディアータ』がショーンの言葉に応え、リシェの囚われている水晶に触れた途端、周囲に溢れんばかりの光が放たれる。 その瞬間、ショーン達の視界は白く塗りつぶされていった。 ――意識が切り替わる。 ショーン達の眼前に広がったのは、荒れ果てた大地。 しかし、そこが元の世界ではない事は、目の前に広がる光景で一目瞭然だった。 「ここが、終末の世界……」 『トール・フォルクス』は驚きを滲ませて呟く。 「それより、まずはリシェ様を探さないと。どんな姿をしているんだろう?」 トールは表情を曇らせ、周囲に気を張る。 「こないだの件に似てるような……」 周辺の状況を把握したレオノルは、この夢の世界のからくりを図りかねていた。 「あれ。でも、おかしいな? 聞いた話だと、すごく幸せな夢に囚われるんじゃなかったっけ……?」 「……はい」 レオノルの指摘に、ショーンは小さく頷く。 光の檻に捕らわれていた人達の話では、瑞夢――幸せな夢に囚われると聞いたからだ。 「苦しませないように、の筈が……これでは苦しむではありませんか」 ショーンの視界の先には終焉の大地。 光の檻の中に捕らえられていた者達が語った夢とは、明らかに異なる世界。 ここには笑顔も幸せも安らぎも無い。 無限地獄だけが広がっている。 「何で、こんなに荒れ果てた中で終末を迎えているんだろう。これじゃ、安楽死じゃないじゃん。リシェ様が望んでいる訳あるまいし……。この方法でしか殺せない、とか……?」 「矛盾している。せめて、リシェ様にとって幸せな光景ならともかく……。早く、この世界から奪還しましょう」 レオノルの懸念に同調するように、ショーンは確かな意思を伝えた。 レオノルは周辺を探索し、まずは夢の中のロジックを可能な限り、早急に調べ始める。 「現実世界と同等だとは思うけど、あくまで夢だしね。空が飛べるとかはないとは思うけど、何らかの特別なルールがあるかもしれない」 「そうですね」 どこか確かめるような物言いに、ショーンは応える。 レオノルが調査をした結果、この世界の法則は現実世界と同等ではあったが、本来有るべきの国家、町も村も既に滅びてしまっている事が判明した。 「リシェ様、何処にいるのかしら?」 『神様の魔力ともなれば、相当強いはず……だけど』 リコリスとレオノルは手分けして、伝葉で通信をしつつ、魔力探知を使いながら捜索を開始する。 レオノルが魔力探知で探索に集中しやすいように、ショーンは彼女の周りに襲い掛かってくるかもしれない敵の索敵に徹した。 リコリスは近くに居る生き残りの者達の所へ行き、魔力感知でそれらしい魔力を探ってみた。 感覚を研ぎ澄ませると、強い魔力が遠くで感じられる。 「どうしたの?」 伝葉で連絡し、リシェの魔力を感じた場所に向かっている途中、風誘う枯木で子供達が泣いている。 名も知らぬ子供達のもとに、リコリスは咄嗟に駆け出した。 「みんな、いなくなっちゃった……」 「家族がいないの、辛いよね……」 家族を目の前でベリアルに殺されて、その傷が癒えない子供達を見て、リコリスの胸が痛む。 「人を探しているんです。リシェというんですが、心当たりはありませんか?」 「分からないね」 トールは、リコリス達が感じ取った魔力を頼りに、リシェの行方を生き残りの人達に聞いて回っていた。 (生き残り……やっぱり、絶望したり嘆いたりの人が多いのかな。だけど、下手な慰めや励ましは多分、逆効果だと思う) 立ち去っていった生き残りの人達の表情を見て、トールは確かな思いを抱く。 リシェの魔力を辿っていくと、やがて、決戦の為に召集された人達から感じ取れる事が判明した。 「なぜ、こんな夢の世界になってしまったんだろうか。使われた魔結晶に理由でもあるのだろうか。実に奇妙な話だ」 ショーンは、悲しみを量産させている深淵と崩壊の世界を沈吟する。 「まさか、聖女にとって幸せな光景、とでも……? そんな馬鹿な話が」 だが、ショーンはそれを否定する事は出来なかった。 (リシェ様が、このような世界を望むはずがない。なら、この夢は、聖女の願いが成就した――聖女にとって幸せな世界だというのか) ショーンには心当たりがあった。 機関車の火災事故が発生した場所で、聖女に仕えていた者が発した理想郷。 魔結晶を持っている聖女の望みの方が反映された世界。 それはまさに、この夢の世界に通じるものがあったからだ。 「この戦いには、世界の命運がかかっている」 岩の上に上がった男の口上に、この場に召集された人達の顔には一様に不安と戸惑いの色が浮かんでいた。 これまでとは、双肩にかかる重みも違う。 周囲に、痛ましい沈黙が満ちた。 「ここに、リシェ様がいるのかしら」 リコリスには先程、見た子供達の不安そうな顔が残像のように残っている。 あの子供達と同じように、不安を抱えながらリシェがこの場にいる。 リコリスはそう思った瞬間、決心した。 「私は参加するわ」 「俺もだ」 リコリスは自分達が浄化師だと名乗り、最終決戦に参加を申し出る。 トールもまた、彼女と共に立ち上がった。 この場にいる人達の視線が、一斉に彼女達に集中する。 「世界は終わるのかもしれない。でも、私達はまだ、生きている。どんなに酷い世界でも、地獄でだって、私は死ぬまで生きる。全てを諦めて、神様に最期を委ねるなんて、絶対に嫌」 全員に……リシェにも行き渡るように、リコリスは自身の想いを口にする。 「そのために戦ってきたし、これからもそうするわ」 「例え、夢の中でも、俺達は絶対に諦めたくない。 大切な人達のために……そして、何より自分のために」 トールの願いに、絶望に押し潰されそうになっていた人達に生気が戻る。 「例え、どんな終わり方でも、自分の信じた通りに最後まで生きたい」 トールは、この場にいる人達を勇気付けるように言った。 (……リシェ、どうか気づいて、私達はここにいるわ) それはリシェが気付いてくれる事を願っての問い掛け。 リコリスのその想いは実を結ぶ。 「浄化師の人達……」 リスから人の姿に変わったリシェが、彼女達のいる岩の近くまで訪れたからだ。 「あなたを迎えに来たの」 「私を?」 リコリスは、戸惑うリシェに手を差し伸べる。 「一緒に目覚めましょう、イヴルが待っているわ。お目覚めに時間がかかるなら、それまで私達が食い止める」 温かく包み込むようなリコリスの微笑みに、リシェは表情に希望を刻む。 「リシェ、もう夢は終わりだ。現実では、こんな終わりにはさせない。それには、君の協力が必要なんだ」 トールの言葉は、リシェの心を奮い立たせる。 「だから、一緒に帰ろう。どうか、俺達に力を貸して欲しい」 「私、皆の力になりたい」 トールの気概に応えるように、リシェは自身の願いを口にする。 「でも、どうしたら……」 「リシェ様! これは悪夢でしかないんだ! 目を開けば、まだ、大きな希望はある!」 「希望……。私、皆と一緒に……生きたい!」 レオノルの呼び掛けに応えるように、リシェ達は忌まわしい悪夢から解放される。 轟音と共に、光柱が水晶に屹立した。 ● 「つまり、お主は、浄化師達の追っ手を振り払って、聖樹森まで行きたいというのだな」 「……ああ」 戒めを解かれたイヴルは立ち尽くし、困惑のまま、ギガスに訴えた。 「私は、浄化師から逃げたい」 イヴルは恐怖を振り払い、ギガスを真っ直ぐに見据える。 「手伝ってくれ」 (これは誘いか) 決意に満ちた顔。 その表情を見た瞬間、ギガスはイヴルの思惑を理解した。 だが――。 「うむ、善かろう。主を聖樹森まで送り届けよう」 ギガスは誘いだと気付きながらも、敢えてその提案に乗る。 それは、一度は死を望み、周囲を巻き添えにしようとしたような男が、『リシェを生かしたい』という気持ちで、3強である自分を騙そうとしてまで動く事に興味を持ったからだ。 (うわー、ギガス、嫌いだわ。本当にそういうのが好きなタイプだったのかしら) (まるで、わざと誘いに乗ったみたいです) その様子を探っていたサクが不満を抱き、キョウは緊張を走らせる。 『普段どおりで大丈夫だよ、アリシア』 (表情を動かさず、何も言わず……普段どおりですね) イヴルの演技が始まっても、アリシアはクリストフからのアドバイスを思い返して、ひたすら無表情を徹した。 「浄化師達。悪いが、私は『こちら』側に協力させてもらう」 面と向かってイヴルが口にしたそれは、決別と宣戦布告。 イヴルとの偽装戦闘開始の合図。 それを聞いたサク達は手筈どおりに動いた。 「キョウヤ、いつも通りにやるわよ」 「言われなくても分かっています」 サクの呼び掛けに、キョウは戦闘準備を整えた。 そこに、イヴルがサク達を振り払うように駆け出してくる。 「サクラ、今です」 「分かってるわぁ」 イヴルが進もうとした道先に、絶妙のタイミングでサクの攻撃が放たれる。 動きを阻害されたイヴルは、即座にサク達に対して魔術を連打してきた。 「イヴルさん……!」 仲間が攻撃された事で、アリシアは本気で青ざめる。 「回復、します。サクラさん、キョウヤさん、大丈夫、ですか……!」 「ええ、大丈夫よ」 「はい、ありがとうございます」 アリシアは慌てて駆け寄り、サク達を回復した。 「ギガス、さん……お願い、もうイヴルさんを、解放してあげて。誰も、滅ぶことなんて望んでは、いないはず、です」 これが演技である事を忘れて、アリシアは悲しい表情でギガスに懇願した。 必死に希求しながら、逃げるイヴル達をクリストフ達と共に追いかける。 「まて、イヴル! 話が違うだろう! お前が協力すると言うから、こっちは信用したのに! そんなに、協力するのが嫌だと思うくらい、俺達が……俺が憎いか?」 「当たり前だ。貴様のせいで、カタリナは死んでしまった……。貴様だけは絶対に許さない」 むき出しの憎悪を、イヴルは迷う事もなく、クリストフにぶつけてくる。 「なら、逃げないで掛かって来いよ! 相手になってやるから!」 「上等だ!」 復讐の矛先は、クリストフに向いた。 睨み合う2人の視線が、不可視の火花を散らす。 イヴルが放ってきた魔術を回避して、クリストフは距離を詰めていく。 「お願い、止まって。あなたと戦いたくないの」 リチェルカーレは疾走しながら、悲痛な声を上げる。 しかし、イヴルを傷つけたくないので、こちらからは攻撃出来ずにいた。 「――ベリアルに義理立てする必要はないだろう。今なら、上層部も誤魔化せる。……戻れ」 シリウスは腕を伸ばして、イヴルを捕えようとする。 だが、伸ばされたシリウスの手を、イヴルは即座に払い除けた。 「黙れ! 教団の人間は信用出来ない!」 それだけで敵と断ずるには十分過ぎると、イヴルの眼差しが訴えてくる。 その時、伝葉を介して、ショーン達からリシェを救出する事が出来たという連絡が入った。 だが、プリムローズ達によって追われている為、すぐには合流出来ない。 その事を知ったシリウス達は、自分達がギガス達を、ショーン達はプリムローズ達を誘き出す事で話が纏まる。 アルフ聖樹森で落ち合う事を交わし、連絡を切った。 アルフ聖樹森までの攻防戦。 イヴルの追跡は陸を渡り、守護天使達の結界が張られた森にまで及ぶ。 (……聖樹森に入ったみたいだな) シリウスの視界に、鬱蒼と茂った森が広がってきた。 「これ以上は行かせない。無理にでも止まってもらう……!」 「――くっ」 シリウスが瞬速の踏み込みと共に、イヴルに斬撃を叩き込む。 そこに間髪入れず、クリストフの攻撃が入る。 そのタイミングで、ギガスは2人の間に割って入った。 胸に当たっても、ギガスは何事もなく戦局を見続ける。 「随分、余裕ねぇ!」 イヴルがシリウス達の連撃に集中している隙を突き、サクは死角からの攻撃を放つ。 形の上ではイヴルに言葉を向けながら、サクはギガスにそう語り掛けていた。 「くっ……」 度重なる攻撃に、イヴルの動きが止まる。 そこに至近距離から、シリウスの攻撃が迫った。 「まだだ……!」 イヴルは起死回生とばかりに、水の魔術を発動させた。 その瞬間、イヴルの周囲で、水滴が輝きを放ち、激しい衝撃と共に弾ける。 (これはあの時、最後に放った水の魔術か) イヴルが捕縛される前に放った水の魔術。 激情を込めた魔術が、目の前まで迫っていたシリウスに襲い掛かった。 シリウスは全てを回避する事は出来ず、魔力の篭ったその水滴を数発食らう。 「シリウス、待ってて。すぐに回復するわ!」 リチェルカーレは、傷を負ったシリウスの元へ歩み寄る。 「ギガス様! ブリジッタ様!」 その時、ショーン達によって誘き出されていたプリムローズ達がギガス達のもとへと訪れた。 「プリムローズ、どうしてここに?」 「リシェ様を追って来ました」 プリムローズが口にした内容に、騙されたと気付いたブリジッタは鋭い眼差しをイヴルに向ける。 「許さないっちゃ!」 「――っ!」 氷刀もかくやの声音が紡がれた時には、ブリジッタは既にイヴルの進行方向に回り込んでいた。 「……させない!」 「これ以上は行かせないわ。イヴルさんは守ってみせる!」 シリウスとリチェルカーレが、イヴルを守るようにして立ち塞がった。 「浄化師ども、邪魔やけん!」 ブリジッタの大剣の切っ先が、今度はシリウス達へと向けられる。 アルフ聖樹森まで誘き出されたという事実。 それでもなお、ギガスは超然とした態度を崩す事はない。 「続けるのなら、相手になるわよ!」 「同感です!」 余裕があるその態度に、サクは弓を構えた。 キョウもまた、サクと共に、ギガス達の前に立ち塞がる。 しかし、それでもギガスは動かない。 (仕掛けてはこないのかな) 間合いを取ったクリストフは逡巡する。 その迷った数瞬が、明暗を分ける一線だった。 「今は戦うつもりはない。汝らがこの地での決着を望むのなら、いずれ、また。苦しめず殺してやろう」 「信じろって言うのかい?」 「それは、そちらの自由。好きにせよ」 ギガスはクリストフにそう言い残し、ブリジッタ達と共に森の闇に溶けるように立ち去っていった。 空はいつの間にか、藍色に染まり始め、星々が煌めきと共にその存在を現しつつあった。
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*** 活躍者 *** |
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[11] サク・ニムラサ 2020/08/20-21:38
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[10] リチェルカーレ・リモージュ 2020/08/19-23:48
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[9] クリストフ・フォンシラー 2020/08/19-21:57
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[8] リコリス・ラディアータ 2020/08/19-08:58
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[7] レオノル・ペリエ 2020/08/18-22:44
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[6] リチェルカーレ・リモージュ 2020/08/17-22:43 | ||
[5] クリストフ・フォンシラー 2020/08/16-21:59
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[4] リコリス・ラディアータ 2020/08/15-23:59
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[3] クリストフ・フォンシラー 2020/08/15-22:01 | ||
[2] リチェルカーレ・リモージュ 2020/08/15-21:09
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