【神契】弔いの氷精
とても難しい | すべて
8/16名
【神契】弔いの氷精 情報
担当 土斑猫 GM
タイプ マルチ
ジャンル イベント
条件 すべて
難易度 とても難しい
報酬 多い
相談期間 8 日
公開日 2020-08-29 00:00:00
出発日 2020-09-09 00:00:00
帰還日 2020-09-19



~ プロローグ ~

 見渡す限り広がる、昏い海原。アシッドが濃く混じり、魔の巣窟と化した筈の場所。けれど、この海域ではその支配は及んでいない。
 それは偏に、ここに住まう高位八百万の神、『毒潮(ぶすしお)の公爵・ナックラヴィー』の加護故。
 人の血肉を対価になされるそれは、猛毒と腐敗の霧による絶対領域。文字通り、毒を毒で制する危うい均衡。ピリピリと張り詰める気配の中で、住まう人々はひっそりと暮らしていた。

 ◆

 そんな場所の渚に、佇む人影が一つ。
 長い藍の髪。瑠璃の瞳。泉色の法衣。身長に比肩する巨盾を携えた、少女。
 濡れた眼差しを昏い海原の果てに向け、求める様に差し伸べた手。上、凝縮する冷気。形作られるのは、透麗な氷の華。
「トール様……」
 揺れる声は、氷精の囀り。
「御立派な、最期でした……」
 吹き去る海風に、氷の華が舞う。送る先は海の向こう。届く事叶わなかった想いが眠る場所。
「遺されし無念は、必ずや晴らしましょう。安息の園にて、御覧ください……」
 凪いでいた筈の水面が揺らぐ。少女の足元を中心に、凍てついてゆく海。大地。
「わたくしも、疾くそちらへ参ります。その時は必ずや……」
 その冷たい激情を具現する様に、突き上がる無数の氷槍。その様はまるで、氷の煉獄。
「奴らの頭骨に満たした美酒を、貴方様に捧げます……!!」
 軋む牙に、血の味を滲ませて。ベリアルの少女、『月影のアルテラ』は振り下ろした巨盾で凍る大地を砕いた。

 ◆

 朝からずっと、雨が降っていた。
 もっとも、雷姫が統べる空。『彼』の死を悼む筈など、ない筈だけれど。
「……全く……」
 シトシトと泣く空を見上げ、三強の一角、『最操のコッペリア』は小さく息を吐く。
「あれほど、脳筋は控えろと言っていましたのに。人の話を聞かないのだから。まあ……」
 消えた同胞に送る言葉。悲しみもなければ、憐憫もない。
「望み続けた強者との戦い。その果てに、逝けたのだから」
 ただ、祝う。ささやかに。
「本望、でしたわね……」
 雨が降る。ただ、シトシトと。
「……お姉様」
「……どうしましたの? アルテラ」
 振り返りもせずに、答える。まるで、全てを察してる様に。
「トール様が討たれた背景には、ダヌを始めとする八百万の神達の助力があります……」
 アルテラの声。いつもの様に冷静で。そして、らしくない激情が篭る。
「……だから?」
「これ以上、教団(彼ら)に協力する八百万を増やすのは危険です」
「それで?」
「……高位八百万の一柱、『毒潮(ぶすしお)の公爵・ナックラヴィー』が動いていません。しかし、奴が教団と接触を済ませている事は確認済みです。『儀』さえ済ませば、奴も敵に回ります」
「でしょうね」
「……その前に、ナックラヴィーを殺します」
 昏く沈んだ声が、告げる。
「奴は、己の領域から離れません。居場所は、明白。だから、わたくしが行って……」
「詭弁は、おやめなさいの」
「!」
 コッペリアの言葉に、ビクリと竦むアルテラ。
「分からないと思いますの? 貴女の目的はナックラヴィーではなく、奴を助けに来る浄化師達ですの」
「…………」
 俯き黙る、アルテラ。彼女に向かって、コッペリアは続ける。
「トールは、誰も憎んでいませんの。彼は主の……いえ、自身の信念に従い、正々堂々とそれに殉じましたの。その矜持を、貴女は汚す気ですの?」
 言葉の一つ一つが、アルテラを穿つ。言われるまでもない。分かっていた。理解していた。
 けれど。
「駄目、です……」
 震える唇が、紡ぐ。
「それでも、わたくしは……わたくしは……!」
 明確な、反意。それが、意味する事は理解しつつも。なお。
「……群を、貸しますの」
「!」
 不意の言葉に、顔を上げる。
「そも、ナックラヴィーは忌み神ですの。人の敵。奴だけの為では、教団は動きませんの。だから、群を使って周辺の居住地区を蹂躙するといいですの。そうすれば、教団は必ず動くでしょう」
「お姉様……」
「トールの矜持は彼だけのモノ。ならば、その願いは貴女だけのモノ」
 喜びに綻ぶ、アルテラの顔。と、彼女を守る様に周囲に浮かぶ、朱い呪字の螺旋。
「これは……」
「想いに殉じる、貴女への手向け」
 振り返りもせず、コッペリアは言う。
「その『雷帝呪帯』には、トールの力をラーニングさせてますの。纏う限り、彼の力が加護となって貴女を守りますの。彼と同様とまでは行かないけれど、相応の事は出来ますの」
「トール様の……」
 自身を包む螺旋をしばし見つめ、コッペリアの背に頭を下げる。
「貴女様に仕えられた事、誇りに思います」
 言葉と同時に広がる魔方陣。光に包まれて消えるアルテラ。誰もいなくなった筈の背後に、コッペリアが声をかける。
「……で、貴女も行きますのね?」
「そうっスね。姉貴とアチシは、二つで一つっスから」
 いつしか立っていた影。朱髪の少女、『陽光のアルメナ』。アルテラの、双子の妹。
「……貴女達には、あの『仕掛け』が仕込んでありますの。共にいれば、互いの力になりますの」
「……そん時には、どっちかがいないっスけどね……」
 苦笑いを浮かべるアルメナの前に、魔方陣が浮かぶ。それを潜ろうとして、止まった。
「おねー様」
「何ですの?」
「姉貴、泣いてたんスよ。トール様の知らせが入った時」
「…………」
「ベリアルって、泣けるんスねー……」
 コッペリアは、何も言わない。少しの、間。
「……何で、主は心(こんなモン)、アチシらに付けたんスか? 低スケールん時みたいに、何にも分かんないおバカの方が楽だったのに」
 少なからずの、非難がこもった声。けれど、コッペリアは咎めない。ただ、淡々と答える。
「それが、主が望む命の形だったからですの」
「……ふーん」
 ほんの少し考えて、歩き出す。
「めんどくせーっスよ……。こんなモン……」
 呟く声は、拗ねた子供。
 魔方陣を潜りながら、アルメナが言う。
「じゃー、ちょっとぶっ殺してくるっス」
 まるで、遊びに出かける少女のままに。
「夕ごはんには、帰ってくるっス」
 ――姉貴と、一緒に――。
 遺して、消える魔方陣。
 残されたコッペリアは、溜息をついて天を仰ぐ。
「ままならないモノですの……。ねぇ、トール……」

 答える者は、誰もいない。
 
 ◆

 濁った潮水。水底に、ポカリと開いた隔里世。その中に、何やら話し合う異形の影二つ。
『……と言った風に動く事が、予想されるのである』
 そう告げるのは、ペストマスクを被った黒衣の妖神。『無明の賢師・アウナス』。
『……ヴュ……予想だけで、良く余に言するもの……と言いたいがぁ゛、汝の予想は『予言』に等しき故……』
 ゴボゴボと、濁った声で応ずるのは異形の怪神。毒潮(ぶすしお)の公爵・ナックラヴィー。
『どぉれ……』
『何処へ行くのである?』
 重い腰を上げるナックラヴィーを、アウナスが呼び止める。ジロリと睨む、赤い単眼。
『知れた事故。この辺りの村々は、余の『畑』故。荒らすモノは、滅ぼす故』
『数が多いのである。それに、恋に狂った雌は危険である。故に、一案進ぜるのである』
『ヴュ……?』
 マスクの眼孔。闇の奥が、妖しく光る。
『良い機会である。これをもって、『あれら』との『儀』とするのである』
『ほう……』
 察した、怪神。赤い目が、グニャリと笑んだ。


~ 解説 ~

 【目的】
  海辺の村々に襲来したベリアルを全滅させる。

 【エネミー】

  スケール5・二体
 
  『月影のアルテラ』

   巨盾『スヴェル』(全ての攻撃ダメージを無効にする。近距離打撃系武器としても使用)
   氷系魔法・複数使用(オールレンジ・『凍結』付与)
   装備魔法『雷帝呪帯』(全てのステータスを倍化し、陽気の魔術を無効化する)
  
   概要
   EP『マーデナクキス決戦』に参加したチームがいる場合、該当チームを狙って戦闘を仕掛けてくる。
   基本、本群には同行せず、あくまで該当チーム攻撃を優先する。該当チームがいない場合は、本群と行動を共にする。

  『陽光のアルメナ』

   鎖回転鎌『イムフル』(オールレンジ。全ての防御効果を無効にする)
   火系攻撃魔法(近距離・『火傷』付与)
  
   概要
   アルテラの近くで戦闘行動。ただし、アルテラの戦闘には介入しない。

  『チェイン』
 
   陰陽の双子に仕掛けられた特殊魔法。
   双子のどちらかが先に撃破された場合、残った方のステータスに撃破された方の基本ステータスが加算される。


  スケール4・二体
 
  『デクステラ・シニステラ』
 
   シーモンク型。
  
  特殊能力:『エレバウル』
  二体の間で電磁界を発生させ、フィールド全体の魔喰器の特殊効果(黒炎含む)を無効化する。二体のうち、一体が倒されると使用出来なくなる。
 
  概要
  ベリアル群の実質的リーダー。本群を引き連れ、村々を襲う。
  補佐能力に特化しているため、戦闘能力はない。そのため、常にスケール3に守られている。
  両方倒す事で群の統率を崩し、抵抗力を大幅に下げる事が出来る。


  スケール3・四体。

  シャコ型。

  手甲装備。

  特殊能力:『ノックパウ』
  拳から『魔砲』を撃ち、当たった相手を1ラウンド行動不能にする。
  1ラウンドに一回しか使えない。

  概要
  近距離特化型の拳闘士。甲殻類なので、固い。
  常にスケール4を守れる位置にいる。


  スケール1~2・100体

  フナムシ型。

  概要
  大型犬くらいあってキモイ。
  高速で這い回り、集団で食い尽くす。 


~ ゲームマスターより ~

【召喚神】
 実装されている八百万神を召喚可能。
 今回は二柱まで召喚OK。

【ゲスト八百万】
 条件を満たす事で介入する。

 『毒潮(どくしお)の公爵・ナックラヴィー』

  条件:スケール3を全て撃破。

  効果:全ての敵の現ステータスを半減させる。


 『無明の賢師・アウナス』
 
  条件:3ラウンド以内に10体以上の敵を撃破する。

  効果:敵を四体まで指定する。対象の持つ特殊効果を全て永続無効化する。


【特殊ルール】
 アルテラに対し、攻撃対象に選ばれる可能性があるチームがプランにて決闘受諾の宣言をする事が出来る。
 その場合、アルテラの攻撃対象は宣言したチームに限定される。
 この決闘に対し、如何なる状況になっても他の敵は介入しない(『エレバウル』のみ例外)
 宣言可能なチームは二組まで。

【マスターより】
 どうも~。土斑猫です。
 今回は難易度高め。召喚神を上手く使ってクリアを目指してください。
 成功すれば、ナックラヴィーとアウナス+αが実装されます。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
スケール1-2の討伐
まずアディティ、リシェの全体攻撃
速攻でアウナスの加護を得る為に仲間の攻撃と合わせFN17からのFN20で焼く
残りはFN13JM11等でMP消費を抑えつつ倒す
スケール1-2を倒したのちアルメナの元へ

アルテナの様子に気を配りつつアルメナへ攻撃
先にとどめを刺さないように注意
そんな余裕を考える程ぬるい相手でもないでしょうけど

アルテラがベリアルトールを偲ぶ心
そんな姉の気持ちを推し測り尊重する貴女の心
私達はこうして運命を賭して争う仲ですが、その心から溢れる感情は紛れもなくあなた自身のもの
喜び、慈しみ、怒り、葛藤。抑えられない感情こそ人を人たらしめるのです
私達は貴方達であり貴方達は私達
ルーノ・クロード ナツキ・ヤクト
男性 / ヴァンピール / 陰陽師 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
【決闘受諾】宣言
他の敵は仲間に任せ、アルテラの動きに対応する為全意識を彼女へ注ぐ
回避・防御を重視する

ルーノは範囲魔法を警戒し少し離れ、回復担当
凍結を回復、体力半分以下なら天恩天賜を優先
ダメージは雷龍で軽減
アルテラを観察し攻撃の前兆を見極めナツキへ警告

ナツキは攻撃担当
接近してアルテラを押さえ、盾で狭まる相手の視界を利用、側面や頭上を取って攻撃
獣牙烈爪突で出血を狙う
氷魔法は回避に備え警戒

エレバウル解除後すぐ黒炎発動
特殊能力+爆裂斬で攻撃
直接ダメージが入らなくても命中させ火傷を通し、刀身の爆裂で盾を弾く
盾を弾き飛ばせたら完璧、隙が出来れば上々
その隙にルーノと同時に反応しにくい別方向から攻撃を仕掛ける
エフド・ジャーファル ラファエラ・デル・セニオ
男性 / 人間 / 墓守 女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い
低スケール一掃の為にアディティとリシェの全体攻撃使用後、すぐにスケール3・4に挑む。
ラファエラにGK14をかけてスケール3に突撃、ラファエラはDE6でスケール4を攻撃。護衛共の統率を乱す。俺と彼女のどっちを狙っても攻撃は俺が受け、GK4を受けてもらおう。
4・3を片付けたらアルメナへ。物理重視っぽいから比較的俺で受けやすいだろう。まずは重要な支援役であろうムーンライトにGK14するべきか。DE3で攻撃。デモン・オブ・ソウルの効果使用。
リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
海辺の村々を守る
精一杯生きる人たちを 巻き込みたくない

魔術真名詠唱
スケール3、4対応
禹歩七星を仲間に 回復と鬼門封印で支援
ノックバウに注意 使われそうなら仲間に周知
余裕があれば九字で攻撃 敵の軌道を逸らす
万が一行動不能になっても シリウスに気にしないでと
わたしは平気 村を守って!
スケール3殲滅後スケール4へ
ナックラフィー様 アウナス様をできるだけ早くお呼びできるよう

スケール3,4を倒せば チェイン防止のため消耗の少ない敵へ
仲間と回復と支援
愛しい人を想う 姉妹のことを思う
同じ心を持っているのね わたし達
戦わずにすめばいいと思うわ
だけど ええ
わたし達にも引けない理由がある
村の人たちは 本当に関係ないのだもの
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
アウナス様の条件を満たせた場合
対象はアルテナ・アルメナ・デクステラ・シニステラ
この4体のうちどれかが欠けていればその分をスケール3に

私達はアルメナの方へ
魔術真名詠唱
鬼門封印での支援、九字の印での攻撃を中心に
クリスの回復は本人の合図があるまで我慢
合図があれば天恩天賜3
火傷は四神浄光・肆で対応
自身が狙われたときは式神召喚

ベリアルにも、誰かを大切に想う心が、あったのですね…
大切な人を奪われたら、悲しむのは、当たり前で
私も、大切な人達がいるこの世界を、守りたいから……

共存することは、叶わない
分かっていても胸が締め付けられて

できれば、もうベリアルが産まれない、世の中に
みんなが手を取り合えるような、世界に
ラニ・シェルロワ ラス・シェルレイ
女性 / 人間 / 断罪者 男性 / 人間 / 拷問官
あらまー、ベリアルってのさえ無きゃ、中々に美人じゃない?
まぁ…本命はよそにあろうと、静かに暮らしてる人を脅かすならやってやるわよー!

魔術真名詠唱
スケール1、2の早急な撃破を目指す
神様達の支援があるとはいえ、数は圧倒的に向こうの方が上…
袋叩きは流石に勘弁!孤立しないように味方と確実に撃破を目指し
裁きⅢは常時発動 自身に近い敵から攻撃
率いられてることからルートを変える敵にも警戒
撃破後は消耗が少ない方へ加勢
消耗に偏りが有れば離脱 峰打ちでダメージを最小限に

もしかして復讐?表情を見て
やらなきゃ気が済まないって顔してる
見覚えがある目をしてるから
いいんじゃないの どっちにしても
衝突はいつか来るし
サク・ニムラサ キョウ・ニムラサ
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い 男性 / ヴァンピール / 陰陽師
キョウ:どうしましたか?
サクラ:思考と行動がまるで普通の人みたい。
キョウ:ですがベリアルですから。
サクラ:だからそれに対して考えるの時間の無駄だなーって。
キョウ:その思考がベリアル向けなのでは?
サクラ:はっ倒すわよ。

【行動】
まずスケール1・2を対応しましょうか。
リンクマーカーⅡで命中力を上げてスウィーピングファイアで2体以上を狙って攻撃するわぁ。
無駄に数が多い。けど時間を取られるわけにはいかないからねぇ。
対応が終わったらスケール5の所へ向かうわ。人数が少ない方に混ざろうかしら。
だって私、ベリアルの思考に興味ないもの。涙とか仇とか笑っちゃう。
面倒な能力(チェイン)を使われないように調節しないと。

タオ・リンファ ステラ・ノーチェイン
女性 / 人間 / 断罪者 女性 / ヴァンピール / 拷問官
まず、スケール3と4の撃破に向かいます
焦スケール3を優先的に追い詰めます

魔術真名を詠唱し、挑みます
剛袈紅蓮撃で足止めをし、その瞬間を表裏斬で切り伏せる
ノックパウへは、初使用時の予備動作をよく観察し、二度目を使おうとしたタイミングでソードバニッシュにより確実にスケール3の動きを妨害します
怯ませたところを、ステラのパイルドライブで打ち砕きましょう
スケール4は、体力をより消耗している方を集中的に攻撃し、早期撃破を目指します

スケール5対応と合流時には使用可能なら黒炎を発動
仲間の戦力バランスと敵の余力を加味し、偏らぬ側へ参戦します
僅差はアルテラ優先

化蛇の力は、敵を拘束し仲間の攻撃チャンスに繋げるよう使用


~ リザルトノベル ~

 その日、『ソレ』は唐突に浄化師達の前に現れた。
 気怠い午後の日差しの中、白昼夢の様に伸び上がる『ソレ』が集まった皆に告げる。
『吾輩は、八百万が神の一柱。『無明の賢師・アウナス』。その影である』
 まるで、空筒が枯れ風に鳴く様な声。怖気震う、人外の気配。
『此れなるは、我が本体と同胞、『毒潮(ぶすしお)の公爵・ナックラヴィー』からの達しである。しかと、聞くのである』
 綴った言葉。
 海辺の村々を襲わんとする、ベリアル達の動き。
 その殲滅を契りの儀と定める、二柱の八百万の意向。
 それらは、さしたる驚きではない。
 ベリアルが人を襲うのは世の理であり。
 人から最も遠きにあると言われるかの二柱が、儀として難事を示すも覚悟の上だった。
 けれど。
 たった一つ。
 たった一つの事が、浄化師達の心を乱した。

「敵……討ち……?」
「『最強のトール』を……『愛して』、いたから……?」
『然り』
 驚きに目を見開く『アリシア・ムーンライト』と『リチェルカーレ・リモージュ』。彼女達を睥睨し、アウナスの影は言う。
『愛とやらの強さ・恐ろしさは、汝らが一番知っているである。人の子らよ』
「ベリアルが……そんな『心』を持ってるってのか……?」
『ベリアルは、『進化』するのである。『進化』とは、生きる為の『牙』を得る事である』
 『ナツキ・ヤクト』の問い。説く様に。
『ベリアルは人(汝ら)の敵として生まれたのである。心を武器とする人(汝ら)に抗する為、ベリアル(彼奴ら)が心を持つは必然である』
 象る闇。流す、視線の気配。
『とうに、気づいている者もいるのである?』
「…………」
 押し黙る、『タオ・リンファ』。そして、『ヨナ・ミューエ』。
 哂う気配を揺らし、影が蠢く。
『説明は以上である。顕界にて最強の牙、汝らの手にて折って魅せるのである』
 広がる闇。伸びてくる、無数の猿の手。
『其を持ちて、我らは汝らの刃となるのである』
 絡まる手が、闇へと引きずり込む。
「マー……」
 転移の瞬間、『ステラ・ノーチェイン』が呼びかける。呟く、様に。
「何ですか……? ステラ……」
「『アイ』って言うのは、『好き』ってコトか? ずっと一緒にいたいって、気持ちか?」
 真剣な瞳。どこまでも、無垢な問い。
 だから、答える。真っ直ぐに、その意味を。
「そうですね……。ええ。きっと、そうです……」
「そうか……」
 ちょっとだけ、俯いて。
 けれど、すぐに前を向く。
「マー。オレ、頑張るぞ」
「ステラ……?」
「やんなきゃいけない事が、出来た。オレが、やんなきゃいけない事だ」
 見据える瞳。どこまでも強く。そして、優しく。
 
 そして、暗転。

 ◆

 気が付けば、そこは濁った潮の香る丘。
 前には海原。
 背後には、小さな集落。
 灰色の厚い雲の隙間から、粛々と射す光の中に。
 彼女達が、いた。いつにも増して、紅い紅い眼差し。それを、爛々と燃やしながら。
 フナムシ型スケール1、2。恐らくは、百を下らない。襲い掛かれば、抵抗の術なき辺境の村々など、塵芥。
 時間は、十分にあった筈。けれど。
「……待っていたのか? 俺達を……」
「……いつの間に、『お預け』なんて覚えたのかしらね……」
 静かに控える魔群を見つめ、『エフド・ジャーファル』と『ラファエラ・デル・セニオ』が呟く。
「……アルテラ……」
「アルメナも、いるな……」
 『シリウス・セイアッド』と『ベルトルド・レーヴェ』。二人の視線の先。佇む、スケール5ベリアル。『月影のアルテラ』と『陽光のアルメナ』。
 感じる視線。怒り。憎悪。殺意。そして、悲しみ。彼女達が持つ事は、決してないと思っていたモノ。
「……誰か、来るぞ」
「あの格好……スケール4?」
 『ラス・シェルレイ』と『ラニ・シェルロワ』の言葉に添う様に、群れの中から近づいてくる僧衣姿のモノ。二体。
 正しく、その姿はスケール4.素体は恐らく、『シーモンク』。守る様に付き従うのは、四体のスケール3。素体は甲殻類。シャコエビだろうか。
 身構える浄化師達の前。声の届く距離まで近づいたシーモンク二体が、恭しく一礼する。
「随分と、礼儀正しいですねぇ」
「な~んか、イラつくわぁ。丁度いいし、撃っちゃいましょう」
「止めておいた方が良いよ」
 胡散臭そうに呟く『キョウ・ニムラサ』の横で、同意しながら弓を構える『サク・ニムラサ』。けれど、そんな彼女を『クリストフ・フォンシラー』が止める。
「撃てば、君の首も飛ぶ」
 示す先。冷ややかな眼差しで見つめる、アルメナ。彼女の横で、獲物を狙う毒蛇の様に鎌首を擡げる複刃の鎖鎌。
 『イムフル』。絶対殺戮の権能を宿す、悪しき神器。
「いくら君でも、晒し首なんて趣味じゃないだろ?」
「むう~」
 不満そうに弓を下ろすサクの肩を、ポムポムと叩くキョウ。
「拙僧らは、誉あるベリアルが子。『デクステラ』と」
「『シニストラ』と申します」
 頭を上げ、声を合わせて名乗るスケール4。紅い鰓蓋をコポコポと鳴らし、問いかける。
「浄化師の方々で、ありますな?」
「……ああ」
 答えるのは、一歩前に出た『ルーノ・クロード』。
「この度は、拙僧らが将の願いに応じ、御足労いただけた事。心より感謝申し上げます」
 また、一礼。
「……願い、とは?」
「お分かりでしょう」
 頭を上げたシニステラが、瞳を細める。
「我らが王の一柱。『最強』の御方様の無念を晴らす事」
 ルーノもまた、目を細める。
「……彼は、人を殺した。多くの、私達の同胞を殺した。そして、これからも殺し続けただろう」
 少なからずの憤りを込めた声。ベリアル達は、何も言わない。
「だから、私達は彼を討った。私達の同胞を、守る為に。それが、全てだ」
「トールの敵討ちと言うのなら、俺達にも言い分はある」
 クリストフも、続く。
「君達が仲間を殺されて怒るなら、それは俺達も同じだ。人だって生きているし、生きていたいと願う」
 鋭い眼光で射抜き、毅然と告げる。
「黙って殺されるなんて、ごめんだからね」
 叩きつけた言葉。けれど、海の導師は平然と返す。
「当然でございましょう」
 息を呑んで見つめていたアリシアとリチェルカーレが、ビクリと肩を震わせる。
「ベリアル(我々)は、人(貴殿ら)を滅ぼすモノ。その我々を貴殿らが憎む。何処に、間違いがありましょうや」
 淡々と語る、二重声。全ての道理と論理を、得た言の葉。
「殺しなさい。存分に。討ち滅ぼしなさい。思うまま。それは、人(貴殿ら)にある、当然の道理。確かな、権利。そして、其を余さず受け入れて。飲み込んで。初めてベリアル(我々)は、資格を得るのです」
 震える鰓が、血生臭い息を吐く。まるで、抑えられぬ激情を告げる様に。

――人(貴殿ら)を、呪う資格を――。

 途端、静観していたベリアルの群れが凄まじい殺気を放つ。
 今までの様な衝動でも。本能でもなく。
 確かな憎悪の宿った、意思ある殺意。
 例え様もない悪寒が、浄化師達の足を竦ませる。
「ルーノ!」
 咄嗟に飛び出したナツキが、ルーノとシニステラの間に割り込む。振り下ろす、ホープ・レーペン。けれど。
 弾け飛ぶ火花。
 同じ様に滑り込んだスケール3が、打ち放つ拳で刃を止めた。
「くっ……!」
「ベリアル(俺ら)ハ、人(お前ら)ヲ殺す……」
 丸く飛び出た眼球を回して、言う。
「ダカラ、お前ラは俺らヲ殺してイイ。ダカラ、とーる様ヲ殺したオ前らモ……」
 刃を止める方とは別の拳。腰に構えたソレが、妖しい光を纏う。
「俺らニ殺されロ!!」
 猛スピードで繰り出される拳。ホープ・レーペンを弾き、ナツキの鳩尾を抉る。
「『ノックパウ』!」
「はぐっ!!」
「ちょっ!」
「ナツキ!?」
 木っ端の様に吹き飛んだナツキの身体を、ラニとラスが慌てて受け止める。
「大丈夫か!?」
「グ……身体が……」
 身構えながら確認するルーノ。震えるナツキの身体を走る、青白い魔力光。
「お気を付けください」
 デクステラが、言う。
「スケール3(彼ら)の『ノックパウ』を受ければ、しばし動く事は叶いませぬ故」
「く……」
「それと、もう一つ」
 今度は、シニステラ。
「この周辺広域に、相応の数のスケール1が網を張っております。貴殿らが逃げれば、近在の民達は皆殺し。ご承知を」
「他の人達は、関係ないわ!」
 リチェルカーレが、叫ぶ。
「精一杯生きる人達を、巻き込まないで!」
「ならば、拙僧らを滅ぼしなさい。それだけの、話です」
「――――っ!」
 言葉に詰まるリチェルカーレの肩に、シリウスが手を置く。
「……やるしかない。奴らは、今までのベリアルとは違う」
 見つめる、緑の瞳。紅珠の視線と、ぶつかる。
「同胞を殺された怒り……。引けない事は、俺達が一番知っている筈だ」
「然り」
 シリウスの言葉を肯定する、シニステラとデクステラ。
「拙僧らは、貴殿らを殺します。復讐と言う、怨讐のままに。否定するならば、我らを殺しなさい。同じ、牙を持って。それが……」

――生きると言う事です――。

 放たれた言葉。群れが動く。
 疾走する、蟲の群れ。浄化師達をすり抜けて、手近な集落へ向かう。
「ちょ、ちょっとアンタ達!」
「村を狙う? けど……」
 慌てるラニを他所に、不審げな顔をするラス。隣で、エフドが呟く。
「誘い……だろうな」
「こちらを分散させるつもり……。見え見えですが、放っても置けない……」
「乗らなきゃ乗らないで、『一般人殺っちまうぞ』って事? 厄介ね……」
 眉を潜めるヨナと、舌打ちするラファエラ。溜息をついたベルトルドが、前方の二人に伺う。
「どうする? ルーノ。クリストフ」
「行ってくれ」
 一瞬の間も置かずに返ってきた、ルーノの答え。強い決意が、宿る。
「『彼女達』は、俺達が止めておくよ」
 クリストフの言葉に、視線をなぞるベルトルド。その先に見止めた姿に、眉を顰める。
「お前達……」
「心配はいらない」
「皆が来るまで、持ちこたえるさ」
 何かを言おうとした背後に、気配。
 何とか立ち上がったナツキ。そしてアリシアが、パートナー達の隣りに進み出る。
「大丈夫だ……。もう、遅れは取らねぇ」
「沢山の人が……待っています……。ベルトルドさん達は、どうか……」
 ほんの少しの躊躇。そして、頷く。
「死ぬなよ」
「元から、そのつもりはないさ」
 誓いを確かめ、ベルトルド達は蟲の群れを追う。
 残されたルーノ達。近づいてくる彼女らを見つめる。隣りのルーノに、視線を流したクリストフが皮肉めいた声で問う。
「まさか、償おうとか思っていないよね?」
「……論外だ」
 冗談と知りつつ、切って捨てる。
「戦いの中で恨みを買うのは、覚悟の上だ。斃した者は覚えている。この先も、忘れる事は無い。そして、斃した事で生まれた恨みを向けられるなら、逃げ隠れせず受けて立つと決めている!」
 強い、意思。戦友の決意に、微笑むクリストフ。
「ああ。全く、同感だ」
 暗雲に満ちる天を、ルーノが仰ぐ。
「私は。私達は、止まらない。例え、憎悪の炎に焦がされようと。守るべき同胞と、この手で絶った者達との約束の為に!」
 願いの元、吠え届けるはかの神名。
「力を、貸してくれ! 『リシェ』様! 『アディティ』様!」
 
 瞬間。昏き空を、光が切り裂く。

 ◆

 濁った潮の中を、涼やかな森の風が吹き抜ける。突然の気配に、乱れる蟲達。怪虫の群れの直中。緑の加護風を纏って顕現する、少女。
 可憐なる、栗鼠の八百万。
 ――『リシェ』――。
『……悲しい、声……』
 呟いて、囲むベリアル達を見回す。
「……そうだよね。悲しいよね。苦しいよね。仲間が、死んでしまったのだから……」
 キチキチと鳴る音。蟲達が、牙を鳴らす。怨嗟の音。啜り泣き。
『少しだけ、嬉しいよ。ベリアル(あなた達)が、そんなモノを持てる存在である事が分かって。でも……』
 跳ね上がる蟲達。大型犬程もある身体が、小柄なリシェに襲い掛かる。
『それでも私は、まだ『人』の心に賭けたいの』
 想いと共に輝く、リシェの身体。新緑の光が刃となって、戦場の全てを照らし駆け抜ける。あちこちで上がる悲鳴。光に貫かれたベリアル達が、苦悶にもがく。
『御免ね……』
 呟くリシェの頭上で、轟く雷鳴。
『相変わらず、お優しいでありんすねぇ。リシェさんは』
 聞こえた声に天を仰げば、雷を纏って羽ばたく七色の大翼。妖艶な笑みで、美貌を彩る遊女の装。天空を統べる、不敵の八百万。
 ――『覇天の雷姫・アディティ』――。
『敵は敵。割り切ればいいモノを。喰らう獲物を哀れんでいては、大概身も心も持ちんせんよ?』
 弱肉の摂理を説いてケケケと笑い、七彩の翼を打ちはたく。舞い散った羽、昏い世界を彩って。
『さて。早々早々、片付けんしょう』
 瞬間、天を覆う羽々が弾ける。虹の輝きを纏って堕ちる稲妻、幾条。違う事なく、地に這うベリアル達を軒並み撃ち貫ぐ。
 再び響く悲鳴。
 先の光閃に加わる、雷禍の苦痛。力尽きた蟲達が次々と弾け、砂と散じる。
『おや?』
 見下ろすアディティが、感心した様に声を漏らす。
『存外、余りんしたね』
 焼け焦げた土の上。呻きながらも這いずる蟲達、まだ多数。
『……心が、身体の限界を凌駕してる。低スケール……。自我なんて、無きに等しい筈なのに……』
『まあ、獣でも主を慕う心は持ちんすから。そう変わった話でもないでありんしょう。とは言え……』
 リシェの言葉に答えながら、視線を流すアディティ。先には、自分を見上げる浄化師達。微笑んで、告げる。
『『アレ』は、怖いモノでありんす。せいぜい、気張りなんしな』
 またケケケと笑い、爆ぜる雷燐。消える彼女を追う様に、リシェもまた。
『気を付けて……』
 残滓を残し、己の座へと帰る二柱。
 謝意を敬意を持って見送る浄化師達。見回せば、なお戦いの意思を見せる蟲の群れ。焦げた身体を引きずる様に、己に託された役に殉ずる。
「……アディティの言う通りね。蟲だ低スケールだって甘く見たら、掬われるかしら?」
「スラムで見たな。宿無しの爺さんを嬲った悪ガキが、飼い犬に咬み殺された。同じ目だ」
 警戒を強めながら武器を構える、ラファエラとエフド。並ぶベルトルドが、ガチンと拳を打ち合わせる。
「どうやら、相手をしてやる限り村には向かわない様だな。重畳だ。ヨナ」
「?」
 物思いに沈むヨナに、呼びかける。
「思う所があるんだろう? 早くケリを付けて、戻るぞ。だから今は、集中しろ」
「……はい」
 頷き、握り締める手。中に残る、あの白砂の感触。
 受け止めた、彼らの誇り。今も、確かに。

 ◆

「……そんなに、打たれ強かったかな? 君は……」
 尋ねるルーノの前には、身体から白煙を上げて佇むアルテラの姿。蝕む苦痛に呼吸を乱しながら、答える。
「トール様の苦しみに比べれば、如何程のモノでもありません……」
 身構えながら見るのは、彼女が携える巨盾。魔盾、『スヴェル』。アルテラの、戦いの要。
 先の攻撃での破損を期待したが、多少の曇りこそあれ健在。甘くは、ない。
「その盾、攻撃無力化の権能があった筈だが……。流石に神の権能までは無効化出来ないか」
 それでも、多少の動揺を狙って揺さぶって見るが、彼女は血の滲む口を拭って言い捨てる。
「些事です」
 リシェとアディティ。二柱の神に与えられたダメージが、軽い道理はない。先の戦いの時は、その高慢故に不測の痛みに容易く揺らいでいた彼女。
 けれど、今はその弱さは微塵もない。
 気高いとすら思えるその覇気に、ルーノは畏怖する。
(易くはない。あの時、以上に……)
「……貴方方を殺す前に、伺っておきたい事があります……」
 静かな声が、問う。内に、氷の苛烈を込めて。
「……何だい?」
「先の、マーデナクキスでの戦い……。トール様を討った方々は、今ここに居られますか……?」
「!」
 隣りのナツキの尾が、緊張に逆立つ。視線を送る。確認の意。冷たい汗を流しながら、それでもナツキは躊躇なく頷く。
「如何です? どの道逃がしはしませんが、答えて頂ければ痛み無く送る程度の便宜は……」
「私達だ」
「!」
 強く放つ答え。アルテラの顔が、強張る。
「あの時、トールを討った場所。そこに、私達はいた。私達が、『彼を討った』」
「…………」
 しばしの沈黙。やがて、アルテラがまた訊く。
「……トール様が、貴方方だけに後れを取る筈がありません……」
 紡ぐ声。冷たい。まるで、地の底の底。氷極(ジュデッカ)に満ちる冷気の様に。
「……他にも、居るでしょう……? 教えてください……。わたくしの爪が、その御綺麗な顔を引き裂く前に」
「……私達だけだ」
「…………」
「彼は、私達だけで討ったのだ」
 また、沈黙。
 アルテラが、薄い笑みを浮かべる。
「……結構な、事です……」
「…………」
「易く仲間を売る様な下衆に討たれたとあっては、トール様の御威光が汚れる所です……」
 ピキピキと、小さな音が響く。彼女の足元。周りの、大気。孕む水気。凍てついてゆく。呪いを穿つ、毒槍の様に。
「要は、浄化師(貴方方)全てを殺し尽くせば良いだけの事……。ならば……」
 ガウンッ!
 振り下ろすスヴェルが、凍てついた大地を砕く。
「先ずは! 目の前の貴方の頭骨から捧げましょう!!」
 穿つスヴェルが、凍て土を砕いて走る。身構えたルーノ。用意していた、禁符の陣。けれど、刹那すら持たずに弾かれる。飛び散る氷片が、頬を削る。飛び散る、紅。
「ルーノ!」
 滑り込むナツキ。ホープ・レーベンで受ける。一瞬の拮抗。膂力は、僅かばかりナツキが有利。そのまま、渾身で押し切ろうとしたその時。
「トール様! 御力を!」
 アルテラの願い。答える様に浮かぶ呪言の輪。『雷帝呪帯』。輝き散らす雷燐の中、ナツキは確かにその姿を見る。
「トール!?」
「キァアァアアア!!」
 吼えるアルテラ。異常に増幅する力。氷風と雷禍を纏ったスヴェルが、ホープ・レーペンごとナツキを弾く。
「ぐぅ!!」
「ナツキ!」
 血反吐を吐いて、後ずさる。駆け寄ったルーノが、天恩天賜で回復を図る。
「……ルーノ……」
「何だ?」
 追撃を警戒しながら回復を続ける彼に、苦しい息でナツキが伝える。
「アイツは……アルテラは、一人じゃない……」
「え……?」
「トールが、居る……。守る為に……一緒に……」
「!」
 驚愕と共に見つめるルーノ。そんな彼に、荒い息をつきながらアルテラは『ええ』と返す。
「今、トール様とわたくしは共にあります……。この御力を、トール様の御霊と共に……わたくしは……」
 己を囲む呪帯を愛しげに見つめ、宣告する。
「貴方方を、滅ぼします……!」
 吹き上がる氷嵐。爆ぜる電光。トールとの対峙を遥かに凌駕する脅威が、ルーノとナツキの背筋を凍てつかせた。

 ◆

 アルメナは、見つめていた。トールの加護を纏い、戦う姉を。
 小さく小さく、息を吐く。
「……見つけたっスね。姉貴……」
「……何処を、見てるんだい?」
 かけられた声に、目を向ける。
 立っていたのは。アリシアとクリストフ。
「アルメナ、君の相手は俺達だよ」
 ロキの切っ先を向けて、告げる。
「他の仲間に、手出しはさせない」
「……あ~、心配ないっスよ。余計な事したら、姉貴に怒られるっス。それより……」
 答えて、しばし見つめる。
「……お初の、お顔っスね~」
「……え……?」
「アンタらはアチシの事知ってるっぽいスけど、アチシはアンタら知らないっスから。お名前は~?」
 ポカンとするアリシアに向かって、ニパリと笑うアルメナ。余りに無邪気なその様に戸惑いつつ、答える。
「アリシアとクリス……クリストフです……。どうぞ、よろしく……」
「は~、アリシアさんとクリスさんっスか。ありがとさんっス。覚えとくっス」
 ケラケラと笑うその横で、殺戮の神器『イムフル』がゆっくりと鎌首を上げる。鈍く輝く刃からアリシアを守る様に前に出るクリストフ。
「変わってるね? 獲物の名前を尋ねるベリアルなんて、あまり記憶にない」
「べっつにぃ~? 殺したら、お墓くらいおっ建ててあげようとか思っただけっスよ。何てったって、ウチの大旦那を殺ったお方達っスから。そんくらいの敬意は払うっスよ?」
 アルメナの手が、イムフルの刃を掴む。朱い光。熱が、飢える刃を染めていく。
「随分と、面白味のない理由だ」
「そりゃそっスよ~。アチシは姉貴と違って、おバカっスからね。気の利いたお言葉なんか、出てこんス」
 皮肉られ、それでもアルメナは笑う。まるで、旧知の友と話す様に。
「……お姉さんが……大好き……なんですね?」
「……あん?」
 アリシアがかけた言葉。それに、アルメナの顔から色が消える。瞬間。
「アリシア!」
「!」
 アリシアの肩を、クリストフがグイと引く。バランスを崩して尻もちを着くアリシア。そんな彼女の頭があった空間を、灼熱した回転刃が轟音と共に通り過ぎる。餌を逃した刃は蛇の様にうねり、倒れたアリシアを追尾する。
「くっ!」
 ロキを走らせるクリストフ。神器同士の激突は互角。弾かれあい、跳ねたイムフルはアルメナの手に戻る。
「大丈夫かい?」
「は、はい……」
 衝撃に残る痺れを堪えながら、アリシアを抱き起す。と。
「……気味悪ぃ事、言わないでくれんスかね……?」
 打ち付けられる、昏い声。見下ろすアルメナが、ギリッと牙を軋ませる。
「アチシはベリアルなんスよ? 好きだとかンな感情、持ってる訳ネーでしょ?」
「…………」
「今度可笑しな事言ったら、その綺麗な髪、頭の皮ごと丸剥きにするっスからね? アリシアさん。まあ、もっとも……」
 イムフルを掲げる手に、炎が灯る。ジリジリと焼けていく刃の朱光。その光の中で、同じ色の瞳が歪む。
「どの道、殺すっスけど……」
 災禍に彩られたイムフルが、再び回転を始める。ロキを構え、立ち上がるクリストフ。
「アリシア、後ろへ……。援護を、頼む」
「……はい……」
 答えて、下がる。進み出たクリストフを眺め、アルメナが思い出した様に尋ねる。
「そういや、訊いとくの忘れてたっス。トール様を討った時、いたんすかスか? クリスさん達は?」
 背後でアリシアが震える気配を感じながら、尋ね返す。
「……君も、トールを?」
「だから~、違うっつってんでしょーが!」
 苛立たしげな、声。弾けた火の粉が、舞う。
「まあ、トール様には良くしてもらったっスけど。そんなんじゃねーっスよ。ただ……」
 チロリと見るのは、向こうで戦うアルテラの姿。
「面白くねーんスよ。姉貴が、泣いてんのは……」
「……アルメナ、さん……」
「そうか……」
 呟く声を聞きながら、少しだけ視線を緩める。気づいたアルメナが、ガリガリと頭を掻く。
「あー!! もういいっスから! 答えは!?」
「いたよ」
 隠す意味も。意思もなかった。
 それは酷く卑怯な事と、分かり切っているから。
「トールを討った時、俺達もいた。確かに、介入した」
 真っ直ぐに。
「……ほうほう、そっスかー」
 アルメナが、微笑む。とても、とても。嬉しそうに。
「なら……」
 ペロリと、舌なめずり。
「アンタ達の首を持ってけば! 姉貴はまた、笑ってくれるっスかねぇ!!!」
 吼えて、走る。魔術真名、詠唱。クリストフも、また。ぶつかり合う、炎と焔。熱い風の中に髪を舞わせ、アリシアは呟く。
「アルメナさん……。どんなに、否定しても……貴女の、その想いは……」
 届く筈もない声を、唸る紅蓮がかき消した。 

 ◆

「あらまー、ベリアルってのさえ無きゃ、中々に美人じゃない?」
 魔術真名を唱えたラニは、初めて見るアルテラ達の姿にそう呟く。特に目を引いたのは、アルテラ。彼女の、目。深い負の想いと激情を孕んだ輝き。
 とても。
 とても、よく知る光。
「復讐……か。やらなきゃ、収まらないって顔してる……。見覚え、ありありね……」
 理解する。理解出来る。それは、自分も。
 だから、否定しない。全てを、受け入れる。
「いいんじゃないの? どっちにしても……」
 あれは。あの想いは、他人がどうこう言って癒されるモノじゃない。
 ならば、受け止めるだけ。
「衝突は! いつか来るし!」
 そう言って、まず迎え撃つは満身創痍でなお猛る蟲の群れ。目的はこちらなれど、意識を逸らせばすぐに村へと向かう。村人を、復讐の道具と見ている事は明らかで。
「本命は他所にあろうと、静かに暮らしてる人を脅かすならやってやるわよー!」
 そう。咎も憎しみも、負うべきは自分達。何も知らない無辜の人々を巻き込む事は、決して許される事ではないのだから。

「成程、アレが……って、何を言い出すんだお前は……」
 ラニの美人発言に溜息つきつき、魔術真名を唱えたラス。発奮して駆けていく相棒を追いながら、もう一度彼女達を振り返る。
「トールもあの二人も、報告書でしか知らなかったが……」
 文面から読み取った印象。暴虐・冷酷・残虐。確かにそれは、間違いではなかったのだろう。事実、彼らは数知れぬ程の人々を殺している。決して、同情出来る相手ではない。
 けれど、今そこに在る姿は……。
 先を行く、相棒。微かに聞こえた、彼女の呟き。
「……見覚えというより、身に覚えがある……だろ? ラニ……」
 それは、自分も同じ。けれど、暴虐を許すつもりも、やられるつもりはないのも。また、同じ。
「……さて、やるか」
 構える、シーラビリンス。迎え撃つ様に走って来た蟲達が、牙を剥いて跳ね上がる。

 ◆

「どうしましたか?」
 不思議そうな顔でアルテラ達を見ていたサクに、キョウが尋ねる。
「思考と行動が、まるで普通の人みたい」
 はあ? と言って、キョウも彼女達を見る。まあ、言わんとする事は分かる。感じる違和感は、確かなモノ。
「ですが、ベリアルですから」
「だから、それに対して考えるの時間の無駄だなーって」
 変な感情でも持たれたら面倒だと思って、一応釘を刺す。刺したと思ったら、盛大に流される。
 サクの目。その色に、揺らぎはない。ほんの、一欠片も。
 ――その思考傾向、どちらかと言ったら『こっち』側でしょうに――。
 いつか、『アレ』に言われた事が、脳裏を過ぎる。
 嫌悪もなければ、憤慨もない。
 まあ、そうだなとしか。
「その思考がベリアル向けなのでは?」
「はっ倒すわよ」
 揶揄うと、割と本気で怒った。その辺り、まだ自分よりは『あっち』側なのかもしれない。
 そう。彼女達を見て。
(我が身に置き換えれば、分からなくはありませんが。まあ……)
 ――笑ってしまいますね――。
 等と、普通に思った自分に比べれば。
 と、こっちを睨んだまま撃った。
 甲殻の隙間を穿たれた蟲が、濁った血を吐いて転がる。
「お見事」
 パチパチと手を打つと、砂に還る蟲を踏んづけながら言う。
「無駄に数が多い。けど、時間を取られるわけにはいかないからねぇ」
 向かってくる蟲達の中に、リンクマーカーで命中力を上げたスウィーピングファイアを放り込む。
 息絶える蟲達。
 キチキチ呻く、呪詛。
 気にも、かけない。
「対応が終わったらスケール5の所へ向かうわ。人数が少ない方に混ざろうかしら。だって私、ベリアルの思考に興味ないもの」
 一瞥するのは、かの姉妹。
 薄く、笑って。
「涙とか仇とか、笑っちゃう」
(……ですよねぇ)
 心の中で、相槌。やっぱりこの人も、『こっち』側。
 踏ん切りつかなくて、たまに揺れるのもご愛敬。
 いと、おかし。
 全く。
 本当に。
 ベリアルのくせに、何でそんな感情持っているんだろう。
 ほんの少し、倒しにくくなってしまう。
 まあ、それでも。

 殺すけど。 

 ◆

「ベリアルでも、復讐するのね。攻撃が随分と、ねちっこいわ」
 撃ち落とされて、尚もがく蟲。とどめを刺しながら、ウンザリした表情でラファエラが呟く。
「それでも、アディティとリシェの攻撃は功を成してる。数も減ったし、残った低スケール共は瀕死状態。程なく、殲滅出来る。問題は……」
 チラリと背後を見るエフド。視線の先には、高位のベリアル達の姿。
「……連中も、さっきの攻撃を食らってる筈なんだが……。元気なこった」
 正しく、神々の力はアルテラを始めとする高位ベリアル達も穿っている。それでも、その膂力に陰りは見えない。
 アルテラ・アルメナのスケール5はまだしも、劣る筈のデクステラ・シニストラのスケール4。そして彼らを守るスケール3達も。
 対応に回ったのは、リチェルカーレとシリウス。そして、リンファとステラの二チーム。双方とも、スケール4との交戦経験があり、撃破もこなしている。
 そんな彼らが、満身創痍の筈のスケール3を攻めあぐねている。否。むしろ、押されている。
(……気にした事もなかったが、使われると厄介なモンだな。『心の力』ってのは……)
 人が、当然の様に持っていた心。正であれ、負であれ。それが、ベリアルにとってどれほどのアドバンテージだったかを思い知る。
 そんな力を、今や地力で勝るベリアル達が持っている。
(全く、悪いジョークもあったもんだ……)
 胸の内で愚痴りながら、エフドは飛びかかって来た蟲を薙ぎ払う。

「あんまりいい感じじゃないわね。早く片付けて、あっちに行かないと」
 仲間の劣勢を見たラファエラが言う。
 思いは、エフドも同じ。
「あの側近共は、黒幕女(コッペリア)がいないうちに片付けたいわ。……いないわよね、あいつ」
「……あんまり不吉な事を言うな。言霊が飛んだらたまらん。それに……」
「……何?」
 エフドの視線を追う。先には、二体のスケール4。
「……妙だ」
「あいつら? そうね。シャコ共の影に隠れてばかり。やる気、あるのかしら?」
「そうだ。何故、何も仕掛けてこない?」
「え?」
 正しく。スケール4は5に次ぐベリアルの高位種。持てる力は、スケール3を遥かに凌駕する筈。そんな存在が、何故自ら戦闘に介入しないのか。
「何か、企んでるのか……?」
 エフドの言葉に、ラファエラは気味悪そうに汗を拭った。

 ◆

「キュキュきゅきゅキュ!」
 素早いフットワークで間合いを詰める、スケール3。放たれる無数の拳打が、リンファとシリウスを揺さぶる。
 防御に集中し、反撃の機会を探る。けれど、拳の嵐は途切れない。そも、甲殻類の体力は無尽蔵。それが、ベリアル化で強化されている。さらに、後押しする執念。確実に防いでいる筈なのに、衝撃が身体を貫く。ジワジワと削られる、体力。
(強い……)
(今までの、どのスケール3よりも……)
 魔術真名と禹歩七星で底上げした能力。それでも、なお押し返せない。
 心の力。
 その激しさを、思い知る。
 巨岩の直撃の様な衝撃に耐えながら、シリウスは思う。
(悲しんだり恨んだりする心を、ベリアルも持つ……)
 間近で光る、スケール3の眼球。確かに見える、悲しみ。怒り。憎悪。
 間違いなく、自分の中にも宿るモノ。闘志の、戦う意思の、根源。
(……創造神は、お前達をどういう生き物にしたいんだろうな……)
 呟き。
 答えは、返らない。
 期待も、していない。
 気持ちを、切り替える。
 自分達の目的。使命。
 村を守る事。罪なき人々を、守る事。
 引く事は、出来ない。
 決して。
 ベリアルリングのブーストで、さらに底上げ。
 シリウスもまた、闘志を燃やす。

「ドウしタよ!? 女! トール様ヲ討った力ってヤツ、見せてミロ!」
「くぅっ!」
 息つく間もなく叩きつける拳打の嵐に、圧倒されるリンファ。堪らず息を吐いた所を強く打たれ、姿勢を崩す。
「しまった!」
「ソコぉ!」
 甲殻に覆われた拳に収束する魔力。
 ――ノックパウ――。
(まずい!)
 防ごうにも、この距離では間に合う筈もない。
「砕けちマえ! トール様ミタイニ!」
 砲弾の様に打ち出される、魔装の拳。リンファの胸を抉ろうとした瞬間。
「させないゾ!」
 渾身で振るわれたスタンピングハンマーが、それを相殺する。
「ギュ!?」
「ステラ!」
 必殺を挫かれ、大きく体勢を崩すスケール3。すかさず、追撃をかますステラ。
「もういっちょ!」
 剛袈紅蓮撃。硬い外殻を抜いた衝撃が、スケール3の脳を揺らす。
「ぐぁア!?」
「マー!」
「はい!」
 隙は逃さない。繋ぎを受けて繰り出す表裏斬。今度は、スケール3が逃げられない。
(入る!)
 絶対の、確信。けれど。
「さセるかァ!!」
 上から飛び込んできたのは、別のスケール3。叩きつけた拳が、地面を粉砕する。
「うわわっ!?」
「くっ!」
 吹き上がる土砂に巻き込まれ、後ずさるリンファとステラ。
「下がレ!」
「スマねぇ!」
 その隙に入れ替わる、スケール3。ダメージを受けた個体が下がり、新たな個体が前に出る。
「マー、こいつら……」
「ええ……連携も、隙が無い……」
 今までの様に、上位種に繰られる連携ではない。確かな、意思の疎通が生み出すモノ。
(このままでは、埒があきませんか……)
 離れた所から聞こえる、せめぎ合いの音。二体のスケール5と戦う、ルーノ達。彼女達の強さは、先の戦いで身に刻んでいる。いかな手練れでも、浄化師一組では到底敵わない。一刻も早く、加勢する必要があった。
 主の焦燥を悟る様に、手にした化蛇がカチリと鳴く。

 ◆

 愛しい人を想う。
 姉妹の事を、思う。
 同じ心を、持っているのね。
 貴女達も。わたし達も。
 戦わずにすめば。
 共に、生きれれば。
 だけど。
 ええ。
 わたし達にも、引けない理由がある。
 村の人達は、本当に関係ないのだもの。
 そんな人達を、貴女達が釣り餌にすると言うのなら。

 デクステラを狙って放った鬼門封印が、またスケール3に遮られる。眉を潜めるリチェルカーレ。嘲笑う様に、デクステラが目を細める。
 デクステラとシニステラ。二体のスケール4には、常に四体のスケール3が付き従い、護衛する。そんな彼らの影に隠れたまま、海の怪僧達は仕掛けてこない。
 強大な力を持つ筈の、スケール4。それが、一足飛びの範囲にいる獲物をただ見つめる。意図の知れないその所作が、ただただ不安を煽る。
 シリウスに向かって放たれる拳撃。咄嗟に九字を放って、軌道を逸らす。距離を取る、シリウス。礼を伝える息が、荒い。消耗が、激しい。天恩天賜で回復を図りながら、考える。
 このままでは、ジリ貧。
 黒炎の発動を促すべきかもしれない。けれど、その力は一時のモノ。倒すべき相手は、目の前のスケール3で終わりじゃない。
 二体のスケール4。意図の読めない、不気味な存在。
 そして、アルテラとアルメナ。二人のスケール5。圧倒的な、破壊者。
 彼女達との戦いに、黒炎の力は必須となる。ここで消費してしまう事は、間違いなく悪手。
 けれど。
 それもまた、悪手なのではと思わせる程に。スケール3達は強い。
 近くで戦うリンファ。彼女の顔も険しい。決めかねているのだろう。彼女も、また。
(どうすれば、いいの……?)
 何とか答えを導き出そうとした、その時。
「……良いのですか?」
 昏い声が、聞こえた。
 ハッと前を向くと、真っ赤な目と視線があった。
 海の怪僧。デクステラが此方を見ていた。ゆっくりと蠢く、目。
「良いのですかな? 黒炎とやらを、使わなくて」
「……え?」
「見誤れば、取返しは利かせませぬぞ?」
 ゾッと悪寒が走った。
 不味いと思った。
 今のままでは、何かが不味い。
 ――黒炎を、使って――!
 シリウスとリンファに伝えようとした、その時。
 離れた場所で、黒の焔柱が二本。
 雄叫びを上げた。

 ◆

「キァアアアアアッ!!」
 鋭い気合と共に繰り出される、氷の刃を纏った貫手。スレスレで躱すナツキ。
「ナツキ! 右だ!」
「!」
「遅いです!」
 ルーノの声よりも早く、逆方向から薙ぎ払われたスヴェルがナツキを張り飛ばす。
「ぐぁっ!」
「そこ!」
 地べたに転がった所を、追撃する蹴り降ろし。心臓を狙う踵には、貫手と同じく氷柱の切っ先。
「くっ!」
 咄嗟に召喚する、式神・雷龍。
「ちっ!」
 阻まれたアルテラが、バックステップで距離を取る。凍結に軋む身体を、無理矢理起こすナツキ。凍てつきかけた身体から、パラパラと霜が落ちる。
「無事か!?」
「ああ、何とかな……」
 四神浄光で回復を図りながら確認するルーノに、ナツキは白く染まる吐息と共に頷く。
「……強いな」
「ああ。前ん時よりも、ずっとだ……」
 話す二人の目の前。佇むアルテラは、見つめたまま動かない。まるで、ナツキの回復が終わるのを待つ様に。
「……舐められてんのかな……?」
「或いは、楽に殺す気がないか、だろうな……」
 回復が終わる。ホープ・レーペンを支えにして立ち上がる、ナツキ。ルーノが、尋ねる。
「……行けるか?」
「ああ……」
 再び構えを取るアルテラを見つめながら、頷く。
「大切なモノを失くした気持ちは分かる。だからこそ、全力で戦う!」
「ナツキ……」
「トールに勝った俺達が弱かったら、アルテラも納得できないだろうし! トールにも失礼だろ!? 絶対、負けられねぇよ!」
 決意の咆哮と共に、走り出す。受け止める様にスヴェルを構えるアルテラ。
 それこそが、狙い目。
 身の丈に等しい程の大きさを誇る、スヴェル。絶対防御の恩恵の代償に、視界はかなり狭められる筈。接近して押さえ、狭まった視界を利用して側面や頭上から攻撃。獣牙烈爪突を決められれば、出血誘発の呪いでハンデも埋まる筈。
 突撃してくるナツキに向かって、アルテラが氷弾を放つ。怯まない。躱して、間に合わない部分は捨て置く。氷弾が当たる度、ドライアイスを素肌に押し付けられたかの様に痛む。けれど、それも無視。見る見る詰まる距離。アルテラが、スヴェルを構える。
――作戦通り――。
 直前で、横に逸れる。完全に、死角。
 少しだけ驚いた様な、アルテラの顔。
「貰った!」
 振り薙ぐ、ホープ・レーペン。避けられない。絶対に。
 無骨な刃が、氷精の肌を襲う。そして――。
 響いたのは、硬い金属音。
「な……!」
 アルテラが纏う、雷帝呪帯。回転し、ホープ・レーペンを受け止める。呪言の空間羅列に過ぎない筈のそれは、まさに不可侵の鎧。
「……言った筈です」
 冷ややかな視線を向けながら、アルテラは笑む。とても。とても、嬉しそうに。
「トール様は、わたくしと共にあると!」
 鋭い貫手。鳩尾を抉る。血反吐を吐いて吹き飛ぶナツキ。
 返り血に添む顔は、壮絶な笑顔。
 ルーノの頬を、酷く冷たい汗が滑った。

 ◆

「そらそらそらそら!」
「くっ!」
 縦横無尽に宙をうねるイムフルが、四方八方から牙を剥く。対するクリストフは、限界まで集中して打ち払う。
 イムフルの権能は『防御の無効』。物理現象ではなく、防御の概念そのモノを無視する。つまり、防御を意識して受けたが最後。如何に頑強な武具であろうと。如何に強力な魔術であろうと。その刃は全てを無意にして獲物を切り裂く。
 幾度かの危うい攻防の後。理解したクリストフは、決して受けに回らない。回れない。攻撃だけに意識を回し、攻めの剣撃で襲い来る刃を撃ち返す。
 少しでも気圧され、受けを意識すれば終わり。体力以上に、消耗していく精神。
 加えて。
「ほらほら、何処見てるっスか!?」
 刃の嵐の向こうから突進してくるアルメナ。伸びてきた手が、クリストフの胸倉を掴む。
「吹き飛ぶっス!」
 浮かび上がった魔方陣が、紅蓮に輝いて爆発する。衝撃で浮き上がる身体を、追い打ちの蹴りが抉る。吹き飛ばされ、咳き込むクリストフ。胸には、痛々しい火傷。
「クリス!」
 思わず回復を施そうとするアリシアを、クリストフが止める。彼の目から意図を察したアリシアが、唇を噛んで立ち止まる。
「何スか? 回復してあげないんスか?」
 かけられた声に振り向けば、冷ややかに見つめるアルメナの姿。
「回復とかしないんなら、陰陽師(アンタら)なんか居る意味ねーじゃないっスか」
 言いながら、苛立たし気に地面を蹴る。
「戦るんなら、ちゃんと戦って欲しいんスけど? そんな中途半端な腑抜けにトール様が殺られたなんてなったら……」
 朱い瞳が、微かに揺れて。
「姉貴が、また泣くんスよ……」
「……!」
 見つめるアリシア。気づいたアルメナが、ジト目で睨む。
「……何スか……?」
 ほんの少しだけ躊躇して。口に、出す。
「……ベリアルにも、誰かを大切に想う心が、あったのですね……」
「……は?」
「大切な人を奪われたら、悲しむのは、当たり前で……」
「……何、言ってるスか……?」
「私も、大切な人達がいるこの世界を、守りたいから……」
 アルメナの牙が、ギシリと軋む。
「まだ言ってるスか!? アンタは!」
 怒号と共に、唸るイムフル。立ち尽くすアリシアを襲う。
「言ったっスよね!? 次言ったら、頭引ん剝くって!!」
「アリシア!」
 交錯するアルメナと、クリストフの声。
 回る刃が、アリシアの顔を両断しようとした時。
 甲高い音と共に、弾き返されるイムフル。
「んむぅ!?」
 呻くアルメナの前には、九字を放った姿勢のアリシア。悲しげな、けれど凛とした視線が見つめる。
「は、はは……」
 目をパチクリさせたアルメナが、笑う。
「そ、そう……。そうっすよ。何スか。出来るじゃないスか。そうっス。そうでなきゃ、トール様は……姉貴は……」
 アハハと笑うその声は、儚くて。押し殺し、誤魔化す想いは見え見えで。
 自分より幼い、子供っぽい顔。見つめて、アリシアは思う。
 共存する事は、叶わない。
 分かっている事。
 分かり切っている事。
 それでも。
 締め付けられ、痛む胸を押さえる。
 願わくば。
 叶うのならば。
 もう、ベリアル(貴女達)の様な悲しい矛盾が産まれない。
 そんな、世の中に。
 皆が手を取り合える様な、世界に。
 そして。
 だからこそ、立ち止まってはいけなくて。
 滲みかけた涙を拭い、キッと前を向く。
 目が合った彼女は、何故かとても嬉しそうに見えた。

 ルーノは、思う。
(やはり、出し渋って抑えられる相手ではない……)

 クリストフは、判断する。
(このままじゃ、機会を逃す。それなら……)

 答えは、一つ。
 二人の声が、響く。

「ナツキ!」
「お前の力を示せ!」

 確かな意思に、皆が身構える。

「黒炎を!」
「ロキ!」

「分かった!」
 頷き、解号を放つナツキ。
 主の呼びかけに、目覚める黒炎魔喰器。
 漆黒の焔柱二つ。咆哮と共に吹き上がる。

 けれど、見た。
 ルーノも。
 アリシアも。
 アルテラとアルメナ。二人の顔が、会心に笑む様を。

「デクステラ! シニステラ!」
「やるっス!!」
 放たれる指示。
 動く、スケール4。
「御意!」
「御心のままに!」
 二体の両手が、印を結ぶ。
 そして。
――『エレバウル』――!
 呪言と共に、二体の間に走る電光。次の瞬間、広がった不可視の力が辺り一帯を覆う。

「む!?」
 向かってくる蟲を磔刺で縫い付けたベルトルドが、気づく。
「何だ……? コレは……」
 腕にはめた竜哭が、急に重くなった。魔喰器から感じる筈の、命の気配を感じない。まるで、唯の鉄くれの様に。
「ベルトルドさん……」
 ヨナも、エクスプロージョンを放つ手を止めて言う。
「変です。魔力の流れが……」
 見れば、自分の持つ黄昏の魔導書も沈黙している。
「――っ! まさか!?」
 思い至った結論に、息を飲む。

「ちょ、ちょっと何!? 急に、重くなったんだけど!?」
 突然の違和感にバランスを崩したラニ。ここぞとばかりに飛びかかってきた蟲を咄嗟に裁きで叩き落とすものの、明らかに威力が弱い。
「こいつは……」
 自分の斧を見つめたラスが、目を剥く。
「魔喰器が……!?」

「何なの!? コレ!」
 手に馴染んでいた筈の武器。それの急な心変わりに狼狽えるラファエラを庇いながら、エフドは切れ味が極端に鈍った大鎌を見て歯噛みする。
「狙っていたのはコレか……。まるで、ただの鈍らと違わん……」
 遠巻きに見つめる蟲達の目が、嘲笑う様に光る。

「……シリウス……」
「……ああ、分かっている……」
 緊迫するリチェルカーレの声に、押し黙ったアステリオスを見つめるシリウス。
「リンファ、そっちは?」
「残念ですが……同じです……」
 問いかけられたリンファも、首を振る。
「黒炎が、発動しない……」
 傍らでは、ただの鉄塊と化した鉄槌に翻弄されるステラが『うわわ』とか『重いゾ~』とか言いながらあっちにフラフラこっちにフラフラしている。
「何を、したの……」
「……拙僧達が、いつまでもその忌物に狩られるだけとお思いか?」
 リチェルカーレの問いに答える、アリステラ。
「拙僧達の権能、『エレパウル』は貴殿らの魔喰器の命を麻痺させます。それは、黒炎であっても同じ事……」
「貴殿らは、もはや毒を抜かれた蠍も同義。貧弱な細針だけで、拙僧達の牙に抗えますかな?」
 哂うベリアル達を前に、それでも浄化師達は構えを取る。
「……随分と、甘く見られたモノです」
「なら、その蠍の針の鋭さを味あわせてやる」
「……挫けませぬか? 結構です。それでこそ、トール様が認めたる宿敵」
「そして、そんな貴殿らの御首を捧げてこそ、真にトール様への弔いとなるのです」
 折れる事もなければ、侮る事もない。
 睨み合う、両陣。
 真っ先に動いたのは、リンファ。
 眼前にいる、デクステラに仕掛ける。
「この術、貴方達二体で成すモノと見ました! ならば、どちらかを堕とせば!」
「見抜きましたか! されど、此方とて承知! 故に!」
 リンファとデクステラの間に素早く割り込む影。スケール3。
「俺達ガいるんだヨ!」
 叩きつける拳打が、リンファを押し戻す。
「ちっ!」
 咄嗟に追撃に備えるリンファ。けれど、ソレが来る事はない。妨害を済ませたスケール3はそれ以上追わず、デクステラを守る位置に下がる。
「お前達、まさか……」
 意図を読み取ったシリウスが呻く。
「然様」
 笑う、ベリアル達。
「この期に及んでは、我らの成すべきはこの領域の維持のみ」
「貴殿らを殺すは、拙僧らの役目にあらず」
「其は、違わずアルテラ様の権利。そう……」
「あの様に!」
 瞬間、鈍い斬撃が響く。

 ◆

「ぐ……あ……」
 氷を纏い、巨大な杭と化したスヴェル。それに胸を抉られたナツキが、鮮血を落としながら膝を屈する。
「ナツキ!」
 ルーノは咄嗟に駆け寄ると、彼と彼女の間に割り込む。
 冷ややかに見つめるアルテラ。飛ばした禁符の陣も、虚しく弾かれる。
「待って、いたのか……」
「貴方方が黒炎を使うのは当然の事。そして、発動の瞬間、隙が出来るのも確認済み。見逃す道理は、ないと思いますが?」
 黒炎発動の瞬間、使い手の意識は集中する。そこを、無効化によって崩された。
「く……」
 歩み寄ってくるアルテラを牽制しながら、後ろ手で施す天恩天賜。けれど、落ちる血は止まらない。今までで、最大のダメージ。回復に、時間がかかる。致命傷に至らなかった事だけが、救い。それすらも、意図的かもしれないけど。
「逃げ、ろ……ルーノ……」
 予想通りの、ナツキの言葉。無視する。
「仰ってますよ? 甘えないのですか?」
 淡々とかけられる言葉。応ずる事なく、ただ集中する。
「そうですね。分かっています。それが、浄化師(貴方方)。それが、『人』。」
 ゆっくりと掲げられるスヴェル。ナツキを抉った時よりもなお、厚く鋭利な氷を纏った様。正しく、氷精の断頭刃。
「トール様は、ベリアルの矜持に殉じました。ならば……」
 クワと見開く、氷蒼の瞳。
「貴方方も、人の矜持に殉じなさい!」
 ルーノの脳天目掛けて振り下ろされる、スヴェル。召喚する、式神・雷龍。ぶつかり合う、氷と雷。
「……雷の魔術……。忌々しいですね。その輝きは、トール様にこそ相応しいのに……」
 かけられる言葉。答える余裕は、ない。
「スヴェルの権能は、絶対防御。あらゆる抵抗を無にします。いつまで、持ちますか?」
 証明する様に、雷龍の鱗に沈んでいくスヴェル。
 逃げる気など、ある筈はなかった。

「とまぁ、そう言う事っスよ」
 胸を袈裟懸けに切り裂かれ、膝を突くクリストフ。寄り添い、懸命に回復を図るアリシア。彼女達を見下ろしながら、アルメナは言う。
「決まりっスよ? 今更回復なんて、間に合わねーっス。待つ訳だって、ないし」
 言い聞かせる様な言葉。けれど、アリシアは必死に回復を続ける。流れ出る血を、自分の手で押し留めようとする様に。
「アンタ達、好き合ってんスね……」
 呟く声。アリシアが、顔を上げる。静かな瞳。伝える、肯定の意。
「そっスか……。なら……」
 ゆっくりと掲げる、イムフル。
「一緒に、殺すっス。離れ離れに、なんない様に」
「アルメナ……さん……」
「置いてかれるのは、悲しいんスよね……」
 呟く声は、何故か酷く優しく響く。その音が、再びアリシアを揺り動かす。
 天恩天賜の光を、遺す様に彼に押し当てて。
「アリ……シア……」
 苦しい息の下から呼びかけるクリストフに、微笑む。
「大丈夫、です」
 向き直る先には、待つかの様に立ち尽くすアルメナ。
「……抵抗すっと、余計に痛いスよ?」
「それは、いつもの事、ですから……」
 アリシアの周囲を、電光が走る。雷龍召喚の、兆候。困った様な顔をするアルメナ。
「雷龍(それ)、防御術じゃないっスか。イムフルの権能は、『防御無効化』っス。意味、ないっスよ?」
「……試して、みますか?」
 自分でも驚く程に、透き通った声。ますます困った顔をする、アルメナ。
「……逃げれば、いいのに……」
 零れた言葉。きっと、自身でも気づいていない。
 そう。
 その想いは、彼女に初めて。芽生え始めたモノ。
 戸惑いが、ある筈で。
 だから、伝える。
 その、意味を。。
「アルテラさんが、同じ様に、なったら。貴女も、逃げないと思います……。それと、同じですよ……」
 朱い目が、キョトンと見開く。そして。
「あ~。そうっスね……」
「ええ……」
 ほんの少しだけ、笑い合う。
 滅びを与える者と、抗う者。
 交わる事は、決してない。
 この上なく、理解して。
 どうしようもなく、分かり切ってて。
 この一瞬の後には、血の華が咲く。
 だから。
 だからこそ。
 この、儚い奇跡を。

「あらあら。困ったわねぇ」
 滅法扱い辛くなった武器に、頭を捻るサク。キョウも同じく、う~んと唸る。
「元から蟲(これ)相手に使う気はありませんでしたが。勿体ないし。しかし、流石にズッとなると……」
「ヤバイかしら?」
「ヤバイですねぇ……」
 言いながら見やるのは、高位ベリアルと戦う仲間達。
「アッチも、やばそうねぇ……」
「そりゃ、魔喰器封じられてますからね。包丁でベリアルと戦ってる様なモンです。無茶ぶりもいいトコですよ」
「あ、あ。殺られちゃう」
「と思ったら、上手く捌きましたね。流石はセイアッドさんです。時間の問題かも知れませんが」
 キョウの言葉にフムと頷くと、弓を担いで歩き出すサク。
「どうするんです?」
「アッチに行きましょう。蟲(こっち)より、面白そうだし」
「行くんですか?」
「そりゃ、行くでしょう? あの坊さま殺せば、この可笑しな術も解けるみたいだし」
「自分達も魔喰器封じられてるの、忘れてません? ボコられますよ? フツーに」
「どの道、ボコられるわよ?」
「まあ、そりゃそうですが」
「それとも、向こうに行く? アルテラとアルメナの所」
「フツーに嫌です」
「ワガママねぇ」
「サクラより、マシです」
 何か、場違いな調子で場違いに言い合う二人。忍び寄った蟲達が、襲い掛かる。
「ああ、もう。煩いわねぇ」
「五月蠅いですねぇ」
 二人の攻撃で、あっさり落ちる蟲達。
「……魔喰器が死んでるから、魂が解放されないわねぇ」
 砂に還る蟲を眺めながら、呟くサク。
 さしたる感慨もなく、キョウが言う。
「まあ、仕方ないでしょう。戦況に影響はありませんし、気の毒ですが運が悪かったと……」
(キキキ……)
 慣れない声が、聞こえた。
 キョトンとする、二人。
「何か言った? キョウヤ」
「いいえ」
 訳が分からない二人の耳に、また響く。
(キキキキキ……。正しく正しく。敵を滅ぼすに、大事なき配慮など不要である)
「え? え?」
「だ、誰ですか!?」
 キョロキョロする二人。
 姿がなければ、気配もない。
(良い矢じりであるぞ。汝らは……)
 ただ、闇が蠢く。

 残り少なくなった蟲達が、最期の力を振り絞る様に跳ね上がる。雪崩落ちる先は、黄昏の魔導書の機能不全によって攻め手を失ったヨナ。
「くっ!」
 咄嗟に展開する、カース・ド・サークル。しかし、基本は魔法対策の為のアイテム。物理で攻める低スケールには分が悪い。
 彼女の肉を食い千切ろうと、蟲達が牙を開いたその時。
「破ぁっ!」
 気合と共に走った旋風が、数匹の蟲をまとめて弾いた。
「大丈夫か? ヨナ」
「は、はい……」
 尋ねるベルトルドの手には、ジェントルロッドという杖。それを巧みに操って、蟲達を次々に薙ぎ払う。
「ベルトルドさん……それ……」
「一応、じいさんから仕込まれてたんでな。得手じゃないが、今の魔喰器よりはマシだろう」
 何処か得意げに言いながら、最後の一匹。
「魂の解放こそ、叶わないが……」
 大きく息を吐き、そう呟いた途端。
『キキキ。人とは実に難儀である。狩る餌の都合なぞ気に病むだけ無駄と、アディティ(じゃじゃ馬)も言っていたのである』
「!」
「何!?」
 湧き上がる悪寒が、ベルトルドとヨナを怖気立たせる。
 満ち行く神気。浸食されていく、世界。
『まあ、其が人(汝ら)の興味深き所であれば。観察する価値は、それなりである』
 遠く。近く。聞こえる喧噪。猿の群れ。気配が、騒ぐ。
『宜しいのである。吾輩の力、貸して進ぜよう』
 ザワザワと騒ぐ影手の群れ。浮かび上がる黒影。見下ろす、疫病白面。
 場にいる皆が、息を飲む。
 先の影など及びもつかない威容。威圧。怖気。
 其は、万物の真理を繰りし無限識の八百万。
 
 ――真名、『無明の賢師・アウナス』――。

 ◆

「な……!?」
「こ、これは……!?」
 ルーノとアルテラ。相対する二人が、同義の戸惑いを露わにする。
 雷龍を切り裂いたスヴェルがルーノを斬り潰そうとした瞬間、『ソレ』が現れた。
 虚空から生える様に伸びた、無数の影絵の様な手。猿の手を模したソレが、悪夢の様に蠢いてアルテラを拘束していた。

「な、何スか!? コレ!」
 同様の事態は、アルメナやスケール4達の身にも起こっていた。力ずくで引き千切ろうとしても、アルメナの膂力を以てしてもビクともしない。
 明らかに物理法則を無視した、何か。
 呆然と呟く、アリシア。
「『無明の、黒子』……」
 それは、魔術研究の過程で得た知識。とある神の、畏ろしき権能。

『ふむふむ。この力場が汝らの毒を奪っているのであるな。よろしい』
 アウナスの黒衣が、ザワリと蠢く。出てきたのは、奈落色の手。
「何を……?」
 問いかけるヨナを見下ろすペストマスク。光る、緑の目。
『見ていると良いのである。幼き探究者』
 嘲る声。見下す様に。
『全く拙き、児戯である』
 途端、ベリアル達を拘束する影手が変性する。包み込む、立方体。黒い黒い、漆黒の魔方陣。
『万象万理、全て我が手中なれば……』
 アウナスの前。かざした両手の中に、ベリアル達を包むモノと同じ立体魔方陣が浮かぶ。
 ――改変――。
 瞬間、猛スピードで回転し組み代わる立方体。他の魔方陣も、等しく。
「みゃあぁああああ!?」
「こ、これはぁ!」
 響く、ベリアル達の悲鳴。回る立体魔方陣。その様は、さながら人外の手によるルービックキューブ。
 呆然と見つめる浄化師達の前で、回転が止まる。弾ける様に消滅する魔方陣。そして。
「――!」
 手の中の感触に、ラスが気づく。
「これは……!?」
「ラス! 感覚が戻ったわ!」
 ラニの声に、頷く。
 魔喰器が、息を吹き返していた。

「おじさん!」
「ああ! あの妙な結界が解けた!」
 ラファエラの呼びかけに答え、エフドは周囲を見渡す。
 すでに、蟲の多くは砂と散じている。残っているモノも、文字通り虫の息。
 もはや、脅威ではない。ならば、次に成す事は一つ。
「いくぞ!」
「ええ!」
 踵を返し、走り出す。向かうのは、シリウス達の元。

「エレバウルが……破られた……」
「拙僧達の『理(ことわり)』を組み替えられましたか……。よもや、ナックラヴィ―のみならず、アウナスまで介入して来るとは……!」
 呻くデクステラ達の前で、衝撃が弾ける。
 見れば、スケール3とせめぎ合うシリウスの姿。
「形勢逆転だな……」
「ぬぅ……」
「通してもらうぞ!」
 生き返った魔喰器が、シリウスの覇気に呼応する。
「チぃ!」
 ノックパウの体勢に入る、スケール3。けれど、十分に既知。手元に飛び込み、腕を蹴って軌道をずらす。
「ヌぁ!?」
 すかさず、リチェルカーレが鬼門封印で縛る。
「終わりだ!」
 放つ、ソードバニッシュ。瞬間、しぶく鮮血。
「――――っ!」
 シリウスとリチェルカーレが、息を飲む。切り裂かれたのは、間に滑り込んだデクステラ。
「デクステラ……!」
 呻くスケール3に、血を吐きながら告げる。
「エレバウルが封じられた今……戦闘力のない拙僧達は無為……なれば……」
 砂に還る中、叫び遺す。
「アルテラ様の為に! せめても手傷を!!」
「ヌゥアああアアぁ!!」
 落ちる砂塵を貫き、走るノックパウ。驚きと砂塵での視認妨害。挙動が遅れるシリウス。けれど――。
「させない!」
 今度は、リチェルカーレ。その身を晒し、拳を受ける。
「カハッ!」
「リチェ!」
 血を吐き転がりながら、シリウスに叫ぶ。
「わたしは平気! 村を! 皆を!」
 唇を噛み千切り、向き直る。
「女ぁ……ガっ!?」
 追撃しようとしたスケール3の両腕を、星光纏うアステリオスが断つ。
 無念の表情で睨む眼球を見つめ返し、告げる。
「お前達にも、願いはあるんだろう……。だけど!」
 煌めくアステリオス。連ねる、氷結斬とソードパニッシュ。
「俺達も、負ける訳にはいかない!」
 声なく散じる戦士。せめても、至上の敬意を。

「改変を受けたは、アルテラ様達も同じ! なれば……せめても牙を折れ!」
 リンファの剣を受け、散じるシニストラ。その意を受け、走るスケール3。
「寄越せ! 貴様ノ腕! 足! 一本でモ!」
 受け止め、応えるリンファ。
「……貴方達の想い、否定はしません。けれど、私の答えもまた同じ!」
 ノックパウ、二度目。見抜く。タイミングを合わせ、ソードバニッシュで相殺。
「ヌぅう!」
「……とおしてもらうゾ?」
 怯んだ意識に、届く声。真上に跳んだ、ステラが告げる。
「オレは、『アルテラ(あいつ)』に言わなきゃなんない事があるんだ!!」
「!」
 何かを察した様に止まる、スケール3。交錯する視線。そして、渾身のパイルドライブが彼を天へと還した。

「まだダ!」
「通さン!」
 残った二体のスケール3が、行く手を阻む。
「く……」
「お前達……」
 シリウス達が歯噛みしたその時、超精密な軌道で飛んできた矢がスケール3達の胸を射抜く。
「ガぁ!?」
「こいつらは私達が片付けるわ! 貴方達は行きなさい!」
 突撃してきたのは、挺身護衛の加護を受けたラファエラ。撃ち放つハイパースナイプが、スケール3達を怯ませる。
「能力が封じられたとは言え、スケール5は膂力自体が化け物だ。クリス達だけじゃ限界だろう。行け!」
「分かった!」
「ご無事で!」
 追いついてきたエフドの言葉に頷き、駆け出すシリウス達。続いて、ラニとラス。
「ほらほら、このエビ人間は私達で十分だから! 貴方達も行きなさい!」
「オッケー!」
「頼む!」
 礼をいい、シリウス達を追う。
 最後は、ヨナとベルトルド。殿を担うエフド達に心配そうな眼差しを向けるヨナの肩を、ベルトルドが叩く。
「行くぞ」
「しかし……」
「やらなきゃならん事が、あるんだろう?」
「……はい」
 頷き、エフド達に一礼して走り去る。
 残された二人に襲い掛かる、スケール3。
「邪魔スルなぁ!!」
 繰り出される拳をわざと受けたエフドが、ニヤリと笑う。
「そう邪見にするな。締めのダンスだ。せいぜい楽しく踊ろうや。それに……」
 繰り出される、迎エ討チ。
「俺は、墓守だからな。未練の愚痴くらい、付き合ってやるよ」
 
 緑の眼球。嬉しそうに笑んだのは、気のせいだろうか。

 ◆

「うぁあ!!」
 黒い鬼火の様に舞う符が、アルテラの肌を裂く。
 キョウ・ニムラサの黒炎魔喰器、『境ノ夜符・斬』。傷つけた者の血を啜る、恐ろしの符。
 止まらない出血に喘ぐアルテラを冷ややかに見つめながら、キョウが言う。
「やっぱり、スヴェルの権能も改変されてる様ですね。結構な事です。で、そちらの様子は如何で? クロードさん。ヤクトさん」
「ああ……もう、平気だぜ……」
「そう? まだ血、出てるけど。頑丈ねぇ」
「いつまでも……へばってられねぇ……」
 呆れた様に言うサクの前で、ホープ・レーペンを支えに立ち上がるナツキ。その傍らで、回復を終えたルーノも疲労を堪えて立ち上がる。
「すまない。助かったよ……」
「いえいえ。こちらの肝である貴方達が殺られては、自分らもマジ困りますから。それよりも、アウナス様から言伝です」
 アルテラを注視しながらの言葉。訊き返す。
「言伝?」
「ええ」
 頷いて、伝える。
「この御二方、何やら仕込んでる様ですよ? 式が魂に直に組み込んである上に、発動前だからアウナス様でも改変が及ばなかったとか。式名は『チェイン』。効果は……」
 言わせまいとしたアルテラを符で弾き、キョウは告げる。
「『どちらか一方が死んだ時、その全ての力を残った方に受け継がせる術式』、だそうです」
 『厄介ですね』と笑うキョウに、ルーノは頷く。
 見ていたサクが、呼びかける。
「そっちも聞いてたぁ? メンドーだから、先に殺しちゃダメよぉ?」

「いや、聞いてたけど……。随分因果な代物持ってんのね。アンタら……」
「悪く言わんでくださいっスよ。一応、姉貴との『証』なんス」
「そう……」
「そうっス!」
「アウチッ!」
 振り上げたイムフルが、打ち合ったラニを身体ごと吹っ飛ばす。権能こそ失ったものの、膂力と魔力は今だ健在。
「ほらほら! まだまだっスよ!? もっと、ガンガン来るっス!」
 血に湿る手に炎を灯しながら、取り囲む浄化師達に向かって吼えるアルメナ。
「アイタタ……。話には聞いてたけど、ぶっ飛んでるわねぇ……」
「……と言うか、もう生き残る事を考えてないな。全部を、今だけに振ってる……」
「…………」
 自分を助け起こすラスの言葉に、ラニは黙って頷く。

「酷くやられたな……。少し休んでいろ。俺達で、持たせる」
「すまない……」
 手当を受けるクリストフにそう告げて、立ち上がるベルトルド。チラと見れば、悲しげな視線をアルメナに向けるアリシアの姿。
「……アリシア」
「?」
 かけた声に、見上げる瞳。
「アイツと……アルメナと、話したんだな?」
「……はい……」
「そうか……」
 少し間を置き、告げる。
「時間が、欲しい」
「え……?」
「アイツが、願ってる」
 言い残し、戦場に向かうベルトルド。見つめるアリシアに、クリストフが言う。
「何か、する気だね……」
「はい……」
「なら、俺達もやらなきゃな……」
 回復を続けるアリシアの手。掴んで、止める。
「クリス……まだ……」
「少し……少しだけど、交わせたんだ。なら、俺達が止めなくちゃ……。だろ?」
 微笑むクリストフに、アリシアは静かに頷いた。

 ……ずっと、思っている。
 ……ずっと、覚えている。
 あの、命生まれる戦場で。
 自分達を庇って散じた、彼ら。
 その残滓の感触も。
 そして、殉じたその誇りも。

「……貴女に、問いたい事があります」
「んあ?」
 せめぎ合っていた相手の突然の言葉に、キョトンとするアルメナ。
 構わずに、ヨナは問う。
「何故、彼らを……『死道凶蛇』を、殺したのですか?」
「!」
 何かを察した様に、アルメナの瞳が揺れる。
「彼らの誇りを、想えなかったのですか? 愛を抱ける貴女達が? 本当に?」
「何なんスか……? アリシアさんと言い、アンタと言い……。ベリアルに変な事言うの、流行りなんスか?」
「……答えてください」
 渋い顔をする、アルメナ。けれど、確信があった。
 今の彼女なら、答えてくれる。
「……ほっとけないでしょ……」
「?」
「戦場で、敵助けたんス。スケール4てのは、導く立場なんス。示しつかんでしょ。下位の連中が、命張ってんのに。その敵助けちゃ。だから……」
 そこまで言って、拗ねた様にそっぽを向く。
「……分かりました」
 最後の、つかえが取れた。

「……もう、やめろ」
 荒い息をつくアルテラ。
 黒炎を灯すアステリオスを下ろしながら、シリウスが言う。
「仲間は、壊滅している。いくら、お前達でも……」
 自分が、何を言おうとしているのか分からない。
 相手はベリアル。
 人を滅ぼすモノ。
 数多の悲しみを、もたらしたモノ。
 許すべきではない。
 生かすべきではない。
 分かっている。
 けど。
 だけど。
 リチェも。
 リンファも。
 ステラも。
 ルーノも。
 ナツキも。
 ただ、視線を送る。
 きっと、抱く感情は。
 同じ。
 ああ。
 誰か、教えてくれ。
 俺達は。
 何処へ。

「アルテラが、トールを偲ぶ心……」
 ヨナは、語り掛ける。
「そんな姉の気持ちを推し測り、尊重する貴女の心……」
 ただ戸惑う、彼女に向かって。
「私達はこうして。運命を賭して争う仲ですが、その心から溢れる感情は紛れもなく貴女自身のモノ」
 生まれたばかりの、心に向かって。
「喜び、慈しみ、怒り、葛藤。抑えられない感情こそ人を人たらしめるのです」
 説く。伝える。確かに芽生えたソレの、意味を。
「私達は貴女達であり、貴女達は私達」
 届くだろうか。届かないだろうか。否、例えそうだとしても。
「神が作り直した世界でこれらを捨てて、貴女は何になれるというの?」
 伝えよう。彼女達が確かに抱いた、其の尊さを。
「……今更それが、分からないと思って?」
 知らないままじゃ、悲し過ぎるから。

「ふざけないで!」
 アルテラが叫ぶ。
 吹き荒れる、激情のままに。
「何を、調子のいい事を! 貴方達が! トール様を殺した、貴方達が!!」
 吹き荒れる覇気。全ての命を、力に変え行く様に。
 凄まじさ。息を飲む、浄化師達。
「もういい! 主の理想なんて、どうでもいい! わたくしの命だって、どうでもいい! 意味なんてない! トール様がいないのに、意味なんて!!」
 地面が。大気が。凍てついてゆく。全ての滅びを願う、彼女の心の様に。悲しみの様に。
「殺してやる! 壊してやる! 皆! 皆! トール様みたいに!」
 狂い荒び、襲い来るアルテラ。
 凄まじい猛撃の中、皆が悟った。
 もう、止まれないのだと。

「泣いてるんスよ……」
 疲れた声で、アルメナが言う。
「姉貴が、泣いてるんスよ……。ずっと、ずっと……」
 ダラリと下がっていた、手が動く。
「駄目なんスよ……。このままじゃ、壊れちまうんス……。壊さないと、壊れちまうんス……。でも……」
 権能を失ったイムフル。揺れる鎖が、カチャリと泣く。
「そしたら、アンタ達殺すでしょ? 守んなきゃいけないから、殺すでしょ? 姉貴の事……。だから、だから……!」
 振り上げる、イムフル。切っ先を向けるのは、自身の首。
「これしかないんスよ! 姉貴が生きるには! アンタ達を、ぶっ殺すしか!」
 狙いは、一つ。チェインの発動。己の命を持って、姉を生かす為。
「姉貴!」
 走る、刃。誰かが、叫ぶ。そして――。
「馬鹿こいてんじゃないわよ!!」
 響いたのは、肉の切れる音ではなく。甲高い、鋼の撃音。
 いつの間にか近づいていたラニが、素早く剣を差し入れてイムフルの刃を止めていた。同様に接近していたラスが、反対側から押さえつける。
「な、何スか!? アンタ!」
「見え見えなのよ! 全部! 同じなんだから!」
 がなるアルメナ。
 がなり返す、ラニ。
「何、訳分かんねー事言ってるっスか!? 放せっス!」
「冗談じゃないわ! 気持ち悪いのよ! 自分らのIFルート見てるみたいで!!」
「だから! 訳分かんねーって!!」
「うっさい! ラス! 早くこの馬鹿から武器、とっちゃって!!」
「誰が馬鹿っスか!? この大馬鹿!!」
「黙れ! 超絶馬鹿!」
「こんの~!!」
 ラスを振り飛ばした左手が、ラニの頭を掴む。
「んぎ!?」
「死んじまえっス!!」
 込める力。遠慮なしに、潰しにかかる。
「ラニさん! アルメナさん!!」
 ヨナの声。虚しく響く。

「……何か、聞こえたわねぇ」
「アッチですね。ジャーファルさん達が、エビ……シャコを片付けたみたいです」
「あっそ」
 頭を掻きながら、荒ぶるアルテラを見るサク。
「どうにかなるかと思ったんだけど。どうにもなんなかったわねぇ」
「恋に狂った女性は怖いですから。ってか、何してるんです?」
 アルテラに向かって弓を構えるサクを見て、イヤ~な顔をするキョウ。
「決まってるじゃない。殺すの」
「空気、読んでます?」
「読んでたら、殺されるわよ?」
「そりゃ、そうですが」
 キリキリと弓を引きながら、薄く笑むサク。
「丁度いいじゃない。ピッタリよ。私達。殺す役」
「まあ、他の方達だと色々確執ありそうですけど」
「それに、見ててイライラするし」
「何がです?」
「分からなくなるじゃない」
「?」
「どっちが、人間か」
 ああ。
 拘るなぁ。
「じゃーねぇ」
 サクが、矢を放とうしたその時。
(ヴュヴュヴュ……)
 聞こえる、奇怪な笑い声。
 顔を見合わせる、二人。
「何か言った? キョウヤ」
「いいえ。サクラこそ」
「違うわよ?」
(ヴュヴュヴュ……。愚か故。浅はか故。滑稽故。無様故。故。故。故)
 あ、コレあれだ。
 気づく、二人。
 さっきと。
 同じ。
『愉快故!』
 泥沼の様に泡立つ地面。汚泥を散らし、いずる巨体。
 満ちる潮の臭いと腐臭に、サクとキョウは咽込んだ。

 突如顕現した『ソレ』に皆が、アルテラやアルメナさえもが息を飲む。
 悍ましい、異形。異神。怪神。邪神。極彩の、悪夢。
「……ナックラヴィ―……!」
 アルテラが、忌々し気に零す名。輩達から聞きはすれど、想像を遥かに超える恐怖。畏怖。嫌悪。
『姦しい小鳥故……。目障り故……。耳障り故……。故……』
 粘つく口を濁った声で泡立たせ、『毒潮(ぶすしお)の公爵・ナックラヴィー』は惨く告げる。
『羽を、腐らす故』
 瞬間、ナックラヴィ―を覆う黒色の血管が弾ける。吹き出た黒血はたちまち気化し、周囲広域を満たす。満ちるのは、潮とヘドロの混じる酢酸臭。
 流れ来た黒霧に包まれた、生き残りの蟲達。引き攣れる様に痙攣し、事切れる。たちまち腐敗し、溶け崩れる身体。
 毒。
 万物を犯す、忌み神の権能。
「く……あ……」
「けふ……」
 神の毒。スケール5と言えど、無事では済まない。犯され、侵され、冒されて。衰弱していく二人。
 けれど、止まらない。
 諦めない。
 それぞれの想い。
 捨てたく、ないから。
『羽は落とした故。されど、足は残した故』
 忌まわしの神が言う。わざと残した、卑小なる勇者達。
『止めて魅せる故。ぬしらの誇る、心とやらで』
 邪しき戯言。言われるまでも、ない。

 荒い息をつくアルテラ。それでも戦おうとする彼女の前に、誰かが立つ。
 ナツキ。
 黒炎を纏うホープ・レ―ペンを構えて、告げる。
「……終わりに、しようぜ。アルテラ……」
「……終わり? 終わりになんて、させない……」
 掲げるスヴェル。ただの鉄くれとなったそれが、氷を纏う。
「トール様を殺した貴方達が生きてる限り! 終わりなんて!!」
 叫びと共に、突撃するアルテラ。渾身の力で受け止める、ナツキ。せめぎ合う、黒炎と白氷。
「返して! トール様を、返して!!」
 子供の様に泣きじゃくるアルテラ。骨を軋ませる威力に耐えながら、ナツキは届ける。
「……分かるさ。お前の悲しみも、大事な人を亡くした苦しみも。詭弁って言われるかもしんねぇけど、全部分かる……。けど……けど、それなら!」
 噛み締める牙。滲む、血の味と共に。
「大切な人を失って悲しいって思えるならさ! 同じ事したら、同じ様に悲しむ人がいるかもって! 考えてやれなかったのかよ!!」
 息を飲む、アルテラ。
「馬鹿野郎ー!!」
 ホープ・レーペン、権能開放。弾ける炎。爆裂斬。
「トール……様……」
 砕け散る氷の欠片。綺羅綺羅と輝く中で、悲しい声が掠れて消えた。

「姉貴!!」
 倒れるアルテラの姿を見たアルメナが、イムフルを振り上げる。意地でも捧げる、己の命。全ては、たった一人の姉を生かす為。
 けど。
 突然ぶつかってきた衝撃が、その行為を止める。
「悪いけど、やらせないよ……」
 とても、静かな声。クリストフ。黒に染まるロキが、ギリギリとイムフルを咬み止める。
 喚くアルメナ。
「何で邪魔するっスか!? いいじゃないスか!? 減るんスよ!? ベリアルが! アンタ達の、憎い敵が!」
「…………」
「怖いんスか!? 姉貴が、生きる事が!? 駄目なんスか!? 生きていちゃ! アチシの、アチシの……」
 ――たった一人の、姉さんなのに――。
 その声に、少しだけ目を閉じて。クリストフは、告げる。
「……ベリアルは、沢山の人を殺した。そして、これからも殺すだろう。そう定められた、存在だから……」
 そう。ベリアルは、望んで人喰いになった訳じゃない。
 全ては、創造神にそう創られたから。
 狼が小鹿を喰らう事を、罪と責めるのは無意味な事。
 けど。
 それでも。
 例え、摂理であったとしても。喰われる小鹿を、親鹿は見捨てない。
 抗い、戦うだろう。
 愛する存在を、守る為に。
 この戦いは、そう言う事。
 アルメナが、駄々をこねる様に炎をぶつける。
 それをロキの権能で反射して、クリストフは続ける。
「だから、俺達はベリアルを許す事は出来ない。俺達の為にも。殺された人達の為にも。それが、『この世界』の定めだから」
 意を察して、アルメナの顔が歪む。
 まるで、泣きだしそうに。
 そして、告げる。
「だから、俺は抗う」
「……え?」
「俺は。俺達は、神に抗うと決めた。神の摂理に、抗うと決めた。なら、『コレ』もそうだ」
 驚きに強張る、アルメナの顔。間近で、見つめて。
「抗うよ。この、憎しみと言う摂理の連鎖に。そして、それが……」
 最後の決意は、酷く優しく。
「俺の、一番大事な人の願いなんだ」
 気づいた。目の前の青年の顔。その向こう。
 誰かの為に祈る、とても優しかった彼女の姿。
「あ……」
「止めるよ。君を」
 傷は敢えて、全てを癒さなかった。
 この痛みを。
 彼女の想いを、忘れない為に。
 そして、その想いを力にして。
 彼女を、繋ぎ止める為に。

 ――反旗の剣――。

 怨嗟の鎖が、砕けて散った。

 ◆

「勝者が、生き残る。それが、神の定めたルール……」
 戻った静寂の中に、ベルトルドの声が響く。
「でも、俺達が勝つ為には、そんな選択肢だけでは足りない」
 優しく。けれど厳しく。
 想いを。願いを。
「分からないか……?」
 伝える相手は、倒れて空を仰ぐアルメナ。
「神の用意した遊戯盤の上で、虚しいゲームをするのはもうやめよう……」
 拙い綴り。
 届くかは、分からないけれど。
「お前の、かけがえのないものは何だ……?」
 それは必ず、在るのだから。

「貴女が、貴女でたらんとするならば……」
 継ぐのは、ヨナ。
 彼女の性格上。
「人として。悪として。神に立ち向かいなさい」
 酷くぶきっちょで、ぶっきらぼうだけど。
「さあ、手を」
 その願いは違わず、真摯。
「迷うなら猶の事! この手を取りなさい! アルメナ!」
 
「……うっせーっスね……」
 倒れたアルメナ。チラリと、見る。
 差し伸べられた、傷だらけの手。
 泳がす、視線。
 見つめる、顔。顔。顔。
 やっぱり、傷だらけ。
 何故か可笑しくて、クスリと笑う。
「手なんか……上がんねーっスよ……。バーカ……」
「……馬鹿は、お互い様です……」
 ほんの少し、笑い合う。
 小さな、奇跡。
 二つ目。

「……受け入れなさい。アルメナ……」
 静かな声が、届く。
 姉として。
 最後の導き。
「この方達は、約束を違えないでしょう。何があろうと、貴女を受け入れて下さる筈です」
「姉貴……」
 『姉貴は……?』と尋ねられる前に、立ち上がる。
 ふらつきながら。けど、しっかりと。
「……殺して、ください……」
 向ける言葉は、ナツキ達。
 ビクリと震えるリチェルカーレを見て、ちょっとだけ笑う。
「わたくしの一存で、同胞を死なせました。自身が永らえる事は、出来ません。何より……」
 ――あの方のいない世界に、意味はありません――。
「アルテラ……」
 悲しげに言うナツキに、歩み寄る。
「どうしました? 出来ませんか? なら……」
 掲げる右手を覆う、氷の刃。
「これなら!」
 走り出す。不意を突かれる、皆。狙いは、ステラ。察したリンファ。けれど、術がない。唇を噛みしめ、化蛇を抜く。権能の発動も、間に合わない。出来る事は……。
 遠くで聞こえる、妹の声。
 優しく、微笑んで。
 そして――。
 刃と交錯しようとした身体が、ガクンと止まる。
「え……?」
 呆気にとられるアルテラ。リンファ。そして、皆。
 彼女の身体を、金色の呪言が縛り付けていた。
 動かない様に。
 進まない様に。
 終わらない、様に。
 雷帝呪帯。アウナスの手によって停止した筈のそれが、抱き留める様にアルテラを縛っていた。
「な、何で? どうして……」
 もがくアルテラ。けれど、呪帯はビクともしない。
「まさか……」
「トー、ル……?」
 ナツキとルーノの呟きに、アルテラが目を見開く。
「そ……んな……」
 雷帝呪帯は、亡きトールの記録を写したモノ。
 彼の心を、なぞるモノ。
 それが、彼女を止めるのならば。
「来るなと……来てはダメだと、言うのですか……? わたくしが、お傍に逝く事は……許さないと……?」
「そうだ……」
 かけられた声。アルテラの前には、シリウス。
「それが、トール(奴)の願いだ……」
「受け入れて、あげて……」
 隣りの、リチェルカーレも。
「それが、貴女の……」
 最後の言葉はなかったけれど。
 それで、十分。
 抱き締める遺志を、抱き締めて。 
 無垢なる氷精は、嗚咽と共に膝を落とした。

 ◆

「ここまでですの」
 不意に落ちてきた声に、皆が空を仰ぐ。
 いつしか昇った月の中、黒衣を纏った黄金髪の少女。
「コッペリア……!」
 クリストフが、呟く。
「何を、しに来た……?」
「日が、暮れましたので」
 問うシリウスに、笑いかける。
 何故か、とても優しく。
「その子達を、迎えに来ましたの」
「お姉様……」
「ごめん、なさい……」
 悪戯がバレた子供の様に。
 けど、咎める事はなく。
「主よ……」
 天頂の月に向かって、呼びかける。
「この子達は、至りました。どうぞ、お導きを」
 答える様に、零れる光。
 陰陽の双子を、包む。
「アルテラ! アルメナ!」
「何を!?」
「良い事を、教えてあげますの」
 身構える皆に、かける声。穏やかに。
「もし。万が一。ありえないけど。主が、あなた達に敗れた時……」
 クスリと笑う。
 優しい嘘を、解く様に。
「ベリアル(わたくし達)は皆、転生しますの。あなた達の創る、後の世界へ」
「え……?」
 皆が、驚きに息を飲む。
 コッペリア。秘密のプレゼントが届いた様に。
「無論、人ではないですの。そちらが、良しと思える形でもないですの。でも、確かにベリアルは、人と共に生きる事になりますの。争う事、なく」
 静まり返る中で、誰かが『あ』と声を上げる。
 双子を包む、月の雫が煌めいて。その中に、溶けていく二人。
 コッペリアが、労わる。
「先に行って、お待ちなさいの。きっと、すぐ」
「……はい」
 頷く二人。と、アルテラに駆け寄る小さな影。
 ステラ。
 不思議そうに見下ろす彼女を、ステラは見つめる。
「トール……だったよな」
「!」
「あいつ、最後に笑ってたんだ」
「……え?」
 戸惑う彼女に、届ける。精一杯を、乗せて。
「オレにはさ、その意味あんまりワカんなかったけど……なんていうか……」
 ちょっと、言葉を探して。
「嬉しそうだったんだ!」
「!」
「ホントーに、ホントーに! 嬉しそうだったんだぞ!」
「…………」
「だから……だから、きっと……」
 光の中から伸びた手が、ステラの頬を撫でる。
 優しく。愛しく。
「……ありがとう、ございます……」
 微笑みかける彼女を、ステラはポカンと見つめて。
 最高の笑顔で、頷いた。

 そんな二人を、光の中で胡坐をかいて見ていたアルメナが気づく。
 こっちを見ている二人。アリシアと、クリストフ。
 アリシアが、紡ぐ。
 ――いつか、また会えたらその時は――。
 大事に大事に。焼き付けて。
「……あー、そーっスね……」
 ニパリと笑って、小指を出した。

「勘違いはしないで欲しいですの」
 調子を戻して、コッペリアが言う。
「そも、譲る気はないですの。トールから教えられた筈。あなた達の創る世界は、十中八九、地獄。そんなのは、御免ですの。あなた達も、絶望するだけ。だから……」

 ――こちらに、来ませんか――?

 最後の、誘い。
 けれど、浄化師達は首を振る。
 それは、幸福ではあるけれど。
 望む世界ではないと、知っているから。
「全く、我儘ですの」
 クスリと笑んで、告げる。
「ならば、決めましょう。わたくし達と、あなた達。世界を継ぐべき、資格をかけて!」
 それは、初めてにして最後の。
 宣戦布告。
「場所は、あなた達の居城! アークソサエティ! 滅ぼすは、我が極大魔軍、『群魔の軍勢(レギオン・アーミー)』!」
 海の彼方が、朱く染む。
 感じるは、気配。
 無限無数の、声なき威容。
 神魔の願いを一手に背負い、三強・最操のコッペリアは言い放つ。
「打ち破って御覧なさい! 乗り越えて御覧なさい! 愚かで愛しき子羊達よ! 交える事無き、兄弟達よ! その矜持が、主を超えると信ずるならば!」
 世界を揺らす、声無き軍凄。

 その全てを見守る為に。
 二つの光が、月の中へと溶けて消える。
 
 時は近く。
 焔が、迫る。



【神契】弔いの氷精
(執筆:土斑猫 GM)



*** 活躍者 ***

  • ヨナ・ミューエ
    私は私の信じる道を
  • ベルトルド・レーヴェ
    行くか
  • ルーノ・クロード
    まぁ、ほどほどに頑張ろうか。
  • ナツキ・ヤクト
    よーし、やるか!

ヨナ・ミューエ
女性 / エレメンツ / 狂信者
ベルトルド・レーヴェ
男性 / ライカンスロープ / 断罪者

ルーノ・クロード
男性 / ヴァンピール / 陰陽師
ナツキ・ヤクト
男性 / ライカンスロープ / 断罪者




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2020/08/29-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[26] クリストフ・フォンシラー 2020/09/08-22:35

うん、俺の方もトドメが行けそうならルーノ達に合図を出すようにして、
同時にトドメを、としてあるよ。
上手くいってくれればいいんだけど。

一応、もう少しここは見ておくので何かあれば。  
 

[25] リチェルカーレ・リモージュ 2020/09/08-22:30

はい、わかりました。バランスを見て合流とプランにしてあります。
あと念のため、合流後もチェイン防止のためアルテラ・アルメラは同時に倒せるようにとプランには入れておきました。
出発まであと少しですね、がんばりましょう。  
 

[24] ルーノ・クロード 2020/09/08-21:51

ありがとう、タイミングの調整はクリスに任せるよ。
もし私達二人共が倒れた場合、攻撃が他へ及ぶ事になる。
もちろん、そうならないように全力を尽くすつもりではいるが、
その場合に不意打ちにならないように、という意味でも警戒はしておいてくれると助かる。

>加勢先
出来れば消耗の少ない方へ加勢してもらいたいが今回は『決闘』のルールもある、
ここで意見を曲げてもらったとして、想定通りバランスよく加勢が可能だと断言はできないのは懸念点だ。
幸い現時点での偏りは見られない事と、リチェルカーレ達とラニ達は消耗を見てバランスをとってくれる事。
これ以降の加勢も消耗の少ない方へとしてもらえるなら、それ程バランスは崩れず済むと思う。  
 

[23] クリストフ・フォンシラー 2020/09/08-21:07

あ、そうだ、さっきの属性の話。
陽属性の武器を装備してる人がいたら気を付けて。
武器が陽属性だと、武器依存のスキルに陽属性が乗ってしまうので。  
 

[22] クリストフ・フォンシラー 2020/09/08-20:58

昨夜の発言で間違いを見つけた。アウナス様をアナウス様と書いてたよ。
プランにはちゃんと書いてるので、あれ?と思った人がいたら安心してね。

んーと、それぞれ対峙したい相手がいるのは分かるんだけど、まずはルーノが言ったように『消耗の少ない方へ』向かってくれるとありがたいよ。
みんなが来てくれる時にどちらがどれくらい消耗してるかは分からないしね。
その上で、全員が揃って、そろそろトドメが刺せる段階で言いたい事がある方へ行く、とかどうだろう?
最初から好きな方に行くとバランスが崩れる気がするんだ。

あと、自分の属性が陽でも、攻撃に属性が乗るスキルはあまりないから気にしなくて大丈夫だよ。
例えば俺の場合、俺自身は陽属性だけどスキルは全部武器依存なので陽の攻撃ではない。
唯一、エッジスラストだけ自分の属性が乗るので、もしアルテラと対峙するときはエッジスラストを使わなければいいだけの話なんだ。
断罪者以外のスキルも、物理系はだいたいこんな感じだと思うよ。

あ、あと、俺は一応常にルーノ方を気にするようにしておくよ。
トドメ刺すタイミングを見計らえるようにね。  
 

[21] ラニ・シェルロワ 2020/09/08-20:38

あたしの属性が陽だから、1と2が倒せたらアルメナの方に行こうと思ってたけど
んー……そっかチェイン…こりゃまた中々厄介な…
様子を見つつ、あまりにも消耗に偏りがありそうなら、まだ元気な方に行くって感じでプランに記載しておくわね  
 

[20] リチェルカーレ・リモージュ 2020/09/08-20:24

わたしは一応、最初の予定通り消耗が少ない敵としてプランを書いてあります。もし分けることになるとしても、バランスのよい方でかまいません。
スケール3、4は倒しきりたいと思っていますので、合流タイミングはもしかしたら1.2側より遅くなるかもしれませんが、がんばりますね。  
 

[19] リチェルカーレ・リモージュ 2020/09/08-20:21

作戦の流れ、了解しました。人数も増えて心強く思います。
ええと…ルーノさんペア、クリスさんペア以外はアルメラかアルテラ、消耗が少ない方へ向かうのだと思っていたのですが…どちらに向かうか先に決めてしまいますか?スケール1.2とスケール3.4を倒す時はずれると思うのですが…。
それなら最初から、残りの人もどちらに向かうか決めてしまいます、か?  
 

[18] タオ・リンファ 2020/09/08-20:07

ギリギリの参加ですみません……断罪者のタオ・リンファと、拷問官のステラ・ノーチェインです。
少しでもご助力できればと思い、失礼しました。よろしくお願いします。

私達は厄介そうなスケール3・4の対応に向かいます。
なるべく早めに撃破して、スケール5の方に合流したいところですね……
私達は一応、アルテラに向かう予定です。二人とも陽気ではありませんし、伝えたいこともあるそうなので。  
 

[17] ヨナ・ミューエ 2020/09/08-16:26

アウナス様の効果指定はルーノさんの言っている選択で問題ありません。
スケール1-2の掃討が終わり次第スケール5への応援に向かいます。
合流はそうですね、名前を指定して宣言するよりは「消耗が少ない敵へ向かう」としておいたほうがバランスよく対応できそうですね。
その上でわたし達はアルメナへ向かうつもりです、と宣言を一応。  
 

[16] クリストフ・フォンシラー 2020/09/07-23:14

リチェちゃんは纏めを有難う。
では俺達はアルメナの抑えを。
俺達だけで倒すのは無理だろうから、何とか抑えながら応援待ってるよ。
スケール4が倒れるまでは黒炎も使えないだろうしね。

うん、スケール3、4は3優先で頼むね。

>アナウス様の効果の指定
ルーノが言う通り、アルテラとアルメナ確定、スケール4の2体優先でいいと思う。
この指定は俺の方でプランに入れておくよ。
ルーノは心置きなくアルテラと戦ってくれ。  
 

[15] ルーノ・クロード 2020/09/07-22:42

配置の希望はリチェルカーレの発言で間違いは無いはずだ、纏めをありがとう。
それに加えてサクラ達がスケール1、2へ加わって、現在の参加者は合計7組か。

スケール3・4の対応は、3を優先で良いと思う。
ナックラヴィー様の能力が早く発動できればこちらも助かる。

スケール5対応への合流は、希望が無ければ戦力が均等になるように向かってもらっていいと思う。
『チェイン』の無効化ができなかった場合を考えるなら、
消耗が少ない敵へ向かうようにすれば、どちらかを極端に早く倒してしまう危険も少ないかもしれない。

一点、改めて確認を。
アウナス様の効果の指定対象はアルテラとアルメナは確定、
残り2体はスケール4を優先、倒していれば3を選択で問題はないだろうか?
それから、対象の指定を誰かに任せてしまってもいいだろうか?
普段であれば自分で戦況を見て状況を確認した上で対象を選択できるが、今回はそんな余裕はおそらく無いだろうからね。  
 

[14] サク・ニムラサ 2020/09/07-21:29

悪魔祓いのサクラと陰陽師のキョウヤよ。よろしく。

スケール1・2の対応に混ざらせてもらうわぁ。  
 

[13] リチェルカーレ・リモージュ 2020/09/06-23:08

参加者が増えましたね。心強いです、よろしくお願いします。
現時点での配置
アルテラ:ルーノ、ナツキ
アルメラ:クリストフ、アリシア
スケール3・4:エフド、ラファエラ リチェ、シリウス
スケール2・1:ヨナ、ベルトルド ラニ、ラス
(敬称略)

こんな感じでしょうか?間違いがあれば教えてください。
2柱の八百万の神様をお呼びするには、全てのスケール3の撃破と3R内での敵10体以上の撃破が条件ですから…スケール3・4対応のわたし達は、まずスケール3から倒していかないとですね。
召喚条件を早く達成できるよう頑張ります。
アルテラ、アルメラ組への合流は、その時点で向かう浄化師が均等になるようにすればいいでしょうか?  
 

[12] ルーノ・クロード 2020/09/06-16:31

参加者が増えたようだね、改めてよろしく頼むよ。
スケール1と2は数が多い、範囲攻撃は助かる。

では、アルテラの方には私達が向かおう。
厳しいとはいえ、能力値が倍になった強敵を自由にしておくわけにはいかないからね。
少なくとも加勢が来るまでは持ちこたえられるように、行動を考えてみるよ。

陽気の魔術を無効化とあるから属性には注意する必要がありそうだ。
武器依存の魔術の多さが、今回は有利に働くかもしれないな。  
 

[11] ラニ・シェルロワ 2020/09/05-21:37

はいはーい!断罪者のラニと拷問官のラス、今回もよろしく!
…まぁ、向こうにも思うところはあるでしょーけど
あたし達は、あたし達がやれることを全力でやらなきゃね

とりあえず、今までの相談の流れは把握したわ
アディティ様とリシェ様ってのもOK、異議なしよ
あたし達は…そうね、ラスが範囲攻撃持ってるからスケール1・2の相手に行くよ  
 

[10] エフド・ジャーファル 2020/09/05-03:46

俺達も4・3から行く。急いで片付けてから、スケール5の方に行こう。
どっちに入るかはまだ決めてないが。  
 

[9] ヨナ・ミューエ 2020/09/04-23:40

狂信者ヨナ・ミューエおよび断罪者ベルトルド・レーヴェ。宜しくお願いします。

あら、ベリアルにもずいぶんと感情がおありのようで。
ともあれその為に村の人々を犠牲にするわけにはいきませんね。

召喚は異論ありません。
であればスケール1-2は私達が向かいましょう。威力の高い範囲攻撃があるので適任でしょうし。  
 

[8] リチェルカーレ・リモージュ 2020/09/04-22:10

ルーノさんやクリスさんの言うような役割分担で良いと思います。今の分担で行くのなら、わたし達はスケール4と3の対応を希望しますね。できるだけ早くスケール4を倒して、アルテラ、アルメナ組の応援に回れたらと思います。  
 

[7] クリストフ・フォンシラー 2020/09/04-21:17

うん、そう言って貰えると嬉しいよ。精一杯の事をさせて貰うね。

ナックラヴィー様とアナウス様は条件を満たすことで介入するらしいからね。
条件が満たせればいいなと思ったんだ。
でもそうだね、条件満たせない可能性も大きいし、まずはそこをアテにしない作戦を立てないとだよね。

アルテラは決闘で縛るとして、アルメナも放置はできないし、ルーノが言ってる役割分担がいいと思う。
人数が少ないから、アルテラとアルメナの対応が1組ずつになるのはもう仕方ないね。
スケール3・4対応班は、なるべく早くスケール4を潰して応援に行くようにするのがベストかな。
決闘が1組なら、回復が使えるルーノ達は適任なんじゃないかな。
回復なしではキツイだろうと思うし。

決闘にルーノ達(あるいは他の希望者)が向かうのなら、俺達はアルメナの抑えに回ろうか。
先に倒してしまったり、アルテラより後になってしまったりしないように気を付けてみるよ。  
 

[6] ルーノ・クロード 2020/09/03-23:38

クリスたちは参戦ありがとう、助かるよ。
よろしく頼む。

なるほど、今回はこれまでのような契約ではなく介入。
条件を満たせばその場で力を貸してくれる、という事になるのだろうか?
それならクリスの言うように、アルテラとアルメナ、二体のスケール4の無効化を狙いたい。
ただ、アウナス様が無効化できる「特殊効果」が、今回の特殊魔法や特殊能力を含むのかは明記されてはいないから、
現状では、確実に無効化できると断言はできないな。

役割を分けるなら、アルテラ対応、アルメナ対応、スケール3・4対応、スケール1・2対応だろうか。
戦闘能力の無いスケール4をスケール3が守っているようだから、ここはまとめさせてもらっている。

今の敵と味方の数を考えると、確かに決闘に二組割くのは厳しいか…
スケール3と4を優先しようとすると、最初はアルメナとアルテラには一組ずつになるかもしれない。
ちなみに、決闘の希望者は居るだろうか?
居ないようなら初めに言い出した私達が向かおう。  
 

[5] クリストフ・フォンシラー 2020/09/02-21:49

断罪者のクリストフと陰陽師のアリシアだよ。
遅ればせながら参戦する、よろしくどうぞ。
とても難しい状況のようだけど、力を尽くさせて貰うよ。

召喚する二柱はアディティ様とリシェ様に賛成だよ。
敵の特殊能力を封じるのに『無明の賢師・アウナス』様の力は借りたい所だし、
条件を満たすには攻撃系の神様の方が良いと思う。
この条件が満たせればスケール4の特殊能力は封じられるんじゃないかな。
4体分の特殊能力が封じられるそうだけど、アルテラとアルメナの特殊魔術はこの特殊能力に入るのかな?
入るなら少し楽になりそうな気がするんだけど。

決闘を使うのも手だとは思うけど、一組だとさすがに危険な気がする。
ただ、今の人数だと二組をそちらに割くのも悪手な気がするね。
一組で堪えて貰ってる間に他を殲滅するべきだろうか。
もう少し考えてみるね。  
 

[4] リチェルカーレ・リモージュ 2020/09/02-18:36

リチェルカーレです。パートナーはシリウス。
アライブは陰陽師と断罪者です。
どうぞよろしくお願いします。

できるだけ早く敵の数を減らすこと、ですね。わたしたちもアディティ様とリシェ様をお呼びする方針でよいと思います。
スケール4の一体を早めに倒す、というのも賛成です。黒炎や武器効果を打ち消されてしまうと、たいへんですから。
今の人数ですと、アルテラを対応する組とその他に別れる感じでしょうか?それですと危険もありますが決闘を使うのも手かもしれませんね。  
 

[3] ルーノ・クロード 2020/09/01-23:10

陰陽師のルーノ・クロードと断罪者のナツキ・ヤクトだ。
よろしく頼むよ。

敵の能力を見ると、おそらく今回は持久戦では分が悪い。
スケール1、2とはいえ数が多ければ動きにくい。
おまけにスケール3、4と面倒な特殊能力が揃っている。
特にスケール4は早めに1体を撃破して使用を妨害したい。

そう考えると、敵を減らす為にアディティ様とリシェ様(A選択)を選ぶのは有効だと思う。
特に今回、二人の八百万の神は条件を満たさなければ味方に付いてはくれないらしい。
条件はどちらも敵の撃破に関わるもの、契約の為にも攻撃を優先させる価値はありそうだ。

二体のスケール5は、特殊魔法を発動させないように出来れば同時に倒したい。
ダメージの調整を楽にさせてもらえる相手ではないが、仮にアルテラが強化されてしまった場合、非常に厄介だ。

それ以外で気になるのは『決闘』だろうか。
アルテラの攻撃対象を絞り、アルメナと実質分断できるのは大きい。
簡単な役割ではないと理解しているが、できれば利用したい。  
 

[2] ラファエラ・デル・セニオ 2020/09/01-21:24

悪魔祓いのラファエラと、墓守のエフドよ。
ベリアルでも復讐心はあるのね。あのゴロツキの所に送ってやりましょう。

まず神様2柱の提案。アディティとリシェの全体攻撃を立て続けに使えば、フナムシ共をすぐに一掃できないかしら。
人を襲いかねない(しかも気色悪い)大群が消えれば、大分やりやすくなりそうじゃない?補助効果なしに強敵と戦う事になるけど、そいつらの体力も半分以下になるし。