~ プロローグ ~ |
教団員セゴール・ジュノーは、貴族ザメオヴァ男爵邸の応接室にいた。 |
~ 解説 ~ |
男爵邸で襲撃者から男爵を守って下さい。 |

~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、ブラック北織です。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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★目的 敵味方問わず犠牲者を出さず男爵達を守る 『終焉の夜明け団』らしき黒い外套と奴隷達の関係を探る ★行動 私とエメは邸内の豪邸2階に配置 邸内を巡回、窓の外を眺めながら『リバティ戦線』『終焉の夜明け団』など敵や 奴隷達の様子を偵察 敵と対峙し戦闘態勢に入ったら魔術真名発動 ・アリアド 戦闘では通常攻撃で敵の武器を落としたり、盾で峰打ちを狙う等敵の無力化を狙う 怪我人がいたら「医学」と簡易救急箱で応急処置し、傷を軽くする ・エメラド 戦闘ではアルと同じ方法で無力化狙い 戦闘不能状態で尚且つ生きてる敵には縄で身動き取れなくする 連絡手段として信号拳銃を携帯、状況に合わせ窓の外から発砲(内容は味方プラン参考) |
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全体の流れ 護衛対象(滞在者、奴隷、金品)をダンスホールに集める 男爵邸外側から段階的に交戦。 準備 ・執事、使用人たちに協力を要請 「わたしたちは男爵様と御家族、使用人のひとたちそれから財産を守るつもりです。どうぞ協力してください」 男爵の目撃証言の信憑性や男爵家の奴隷の待遇等情報収集 証言の人影を見た人が他にいないか? 奴隷たちの衣食住は具体的にどうか?夜に外を歩けるか? 内通者がいないかこっそり警戒 手の甲を見せないとか、最近来たとか? ・階段の途中、足首の高さに縄を張る・正面、裏、ダンスホール扉の敷居に石鹸を塗って水で濡らす等罠設置 設置した場所は仲間に伝達 ・馬車は車輪を外して、車庫の扉に鍵または突っ支い棒 |
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シャルルと一緒に邸の玄関付近で敵を待ち伏せ 邸内に侵入しようとする敵の数をできるだけ減らす 手が塞がらぬよう明かりは邸から漏れてくるもので十分そうなら使わない 信号拳銃を使うタイミングと色についてはシンティラさんとの打ち合わせ通りに 初手で敵陣にワーニングショットを打ち込んで相手を威嚇射撃して 一瞬でも相手の意識をこちらに向けて動きを止められないか試みる 「私を敵に回したこと、後悔することね! 突破していった敵は深追いせず中の味方に任せる 数を減らすことを最優先に行動 奴隷開放に関する提案には参加しない 自分で面倒みられるわけでもないし責任持てないわ ま、世界が私のものになってからなら考えてあげなくもないけど? |
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■目的 終焉捕縛 奴隷待遇改善 ■行動 ∇昼 ・他屋敷の奴隷調査 待遇良、普通の所で雇用時間、衣食費、医療費、寿命、仕事の能率を聴取 ルーノ、リトル達に結果報告 ・馬略奪防止 棒、台置き高さ作り馬囲み厩舎車庫には鍵 ・金品確保 DHに集め、階段一つ残し他階段上も使用 布団等を被せ滑り落ち効果狙い ・警戒 ティ、魔力感知で魔力気をつけ 不審な使用人に声掛け様子を探る ・灯 外壁、庭と松明設置 ・信号拳銃、音駆付け、色加勢場所判断。皆と打合せ DH内へ=赤 DH外へ=青 屋敷外へ=緑 ∇夜 ティ:魔法詠唱し階段待機 上って来る敵から符で攻撃し捕縛 無理ならDHに上がり拳銃赤使用 ナツキと背合わせにし ナツキ対戦の武器を符で攻撃 自分への攻撃は盾で受止め |
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■準備 事前にルーノが男爵だけと話し作戦の為にと協力を仰ぐ ・男爵、滞在者、奴隷全員をダンスホールの、窓と扉から遠い壁際へ集めてもらう ・ウインクを合図に奴隷達に「大切な働き手だ」「皆が必要だ」と訴えてもらう 「時に言葉もかけなくては誤解を招きますからね」 ■護衛 屋敷内の明かり全て点灯 ダンスホールで行動 奴隷と滞在者をナツキが見張り不審な動きは妨害 男爵側・奴隷への被害は2人で阻止 ルーノは奴隷を護衛 リバティ戦線の扇動時は説得 「解放後の生活は? 戦線や団が全員を養う保障もない 魔術の材料にされるのがオチでしょう」 男爵へ合図 奴隷へ 「無責任に甘言を宣う者と皆さんを重用し生活を支えてきた男爵 どちらが信用に値しますか?」 |
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◆目的 奴隷を含む男爵側の死守 ◆行動 準備 奴隷と一緒に金品をダンスホールへ移動 その間に奴隷とお話 親身になって普段の苦悩とか、相談とか、リバティをどう思うかとか… 出来れば仲間に…友達になりたい 自分達に協力していただけるよう説得 盗人注意 戦闘 庭担当 天空天駆で屋敷の屋根に上り見張 敵襲を発見し勢力予想をメモ 天空天駆で敵勢力が多い方角にいる仲間の支援へ 向かう途中、屋敷の窓から仲間へメモを投げ入れる 戦闘中、窮地になる前に屋敷内の仲間の元へ 外で敵戦力をそぐ→段階的に誘導し戦闘→最後は敵ごとダンスホールへ 合流に向かう際に信号銃で合図 リトルは中衛 通常攻撃で敵を翻弄 喰人は前衛 敵陣のキメラ・生成は優先して攻撃 無理はしない |
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◆目的 男爵側と金品守護、全敵戦闘不能 上記全力目標 ◆事前 ・昼間の内に屋敷内から敷地まで全体を男爵と共に確認 ・ダンスホールへ金品類を一箇所に集め守りやすくする ・男爵側の方々にダンスホールにいる間の注意を伝える (窓際に近づかない、出来る限り固まって行動してもらう等) 唯「リスクは大きい…です でも…わたし達は全力であなた方を守ります…ですから ご協力の程、よろしくお願いします…!」 ◆戦闘 ・屋敷で戦う際、火気には充分注意 ・唯月:中衛、瞬:後衛 ・敵接近を察知後、スペル詠唱 ・男爵側を守りながら唯月はMG4、瞬はFN3をメインに攻撃 ・援護要求の際は瞬が窓の外へ信号拳銃(赤)発砲 ・各携帯品は必要とあれば仲間に貸出可 |
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~ リザルトノベル ~ |
●序 襲撃予告時間の迫る晩、ザメオヴァ男爵邸2階のダンスホールには男爵とその家族に使用人、更には奴隷30人に男爵家の主要な金品までが一堂に会している。 シルシィ・アスティリアとマリオス・ロゼッティが事前に男爵の執事に協力を要請し、男爵所有の金品に男爵邸敷地内及び農地に出入りする関係者を全員一箇所に集めたのだ。 男爵邸内でそれだけの人数と金品を収容できる場所といえば、このダンスホールは最適の場所だ。 「くそっ、こんな下民共をこの邸に入れなければならんとは……」 人知れず毒づく男爵に、ルーノ・クロードが穏やかに話し掛ける。 「男爵、時に言葉も掛けなくては誤解を招きます。『その時』が来たら合図をしますので、皆さんに労りの言葉をお願いします」 その様子をパートナーのナツキ・ヤクトは複雑な面持ちで見守っていた。 (いくら衣食住があっても自由が無きゃな……でも、ここ出ても生活の保証は無ぇし、この男爵のやり方は他に比べりゃまだマシな方じゃねぇのか? ……解放ってのはちょっと非現実的だよな) 男爵がルーノと話している間、シルシィは使用人や奴隷たちを秘かに観察しながら改めて執事に声を掛ける。 「協力ありがとうございます。男爵様とご家族、働いている人たちそれから財産をしっかり守ります」 「浄化師の皆様にまでご足労頂き、恐縮です。どうぞよろしくお願い致します」 執事は目立たぬよう小さく礼をしながらシルシィにそう返した。 彼女による事前の調査では、男爵家の使用人は皆古参で、最も新しい洗濯係の女性でもかれこれ5年は務めているという。 つまり、男爵側の人間に敵と繋がっている者がいればもっと早くに事件は起こっていた筈で、内通者の類はまずいないと推測出来る。 更に、ロス・レッグとシンティラ・ウェルシコロルが昼間に近隣の者などから情報収集した内容によると、この辺りで農地経営に携わる貴族にとって奴隷は貴重な労働力ではあるが、賃金の支払い義務が無いため殆どの貴族が無賃で酷使しているらしい。 しかも、貴族社会の悪癖とでも言うべきか「横の繋がり」だの「協調性」だのという実に陳腐な理由でこの近辺では奴隷の扱いをほぼ統一しているとか。 要は、扱いの良い方の貴族に労働力が流れてしまう事を防止しているという事で、そのため、どの貴族も隣近所の同族の顔色を窺いながらせいぜい質素な衣食住の保証で奴隷を繋ぎ止め、他家で働く奴隷の流入も受け入れないのが実情だという。 それでは奴隷たちが不満を抱きリバティ戦線の甘言に乗せられるのもある意味当然で、しかも行き場のない奴隷たちがわざわざ脱走や逃走を図る事も無いという考えから労働時間外の奴隷たちの行動は自由、そうした背景から使用人たちは男爵の言うような人影を見た事はないものの連中が秘かに奴隷に接近してもおかしくないと口々に言っていた。 一方、アリアド・ルミナルとエメラド・ルミナルは窓から邸外を偵察しながら此度の指令と自身らの過去を重ね合わせる。 「終焉の夜明け団と繋がりがあったらどうしよ……仇討ち……になるのかな?」 エメラドの脳裏に、終焉の夜明け団に捕らえられ実験体として無残に散った両親の姿がまざまざと甦った。 「それに、訓練じゃない実戦は初めてだし……」 唯一の肉親である兄・アリアドを、護衛対象である男爵を、果たして自分に守り切れるのか……エメラドの双眸は不安に揺らぐ。 すると、アリアドは 「感情的な仇討ちなど馬鹿げている」 と鼻であしらうように息を吐きながら返した……が。 「……だが、死ぬまで狂うように踊らされる者を黙って見るしかないのは、二度と御免だ」 アリアドもまた、その内心では必死で激情を抑制しているのかもしれない。 続いてルーノは奴隷たちの元に移動しリバティ戦線の真相について話し始めた。 「皆さん、リバティ戦線に解放されたその先にはまともな生活なんか無いんです。今回リバティ戦線と絡んでいると思われる終焉の夜明け団は皆さんを養うどころか魔術実験の材料にするでしょう」 奴隷たちは顔を見合わせながらどよめく。 「結局俺たちの生活は何も変わらない、自由にはなれないのか……」 失望と反発に満ちた奴隷たちの顔に、リトル・フェイカーはいたたまれなくなった。 「本当の自由って、少し違う気がします。今のままでは男爵から解放されても身分からは解放されないですから……リバティ戦線や終焉の夜明け団がちらつかせる偽りの自由には必ず裏があります……どうか、騙されないで。僕は皆さんが心配なんです」 リトルの真摯な言動は、奴隷たちを現実と向き合わせ反抗する雰囲気を霧消させる。 そんな中、シルシィがさりげなく奴隷たちを見つめると、最前列中央に立つ男がずっと俯いたままだ。 奴隷たちが蜂起する危険性は回避出来そうだったが、それでもシルシィはその男をそっと呼び、ホールの隅で話し始める。 「リバティ戦線の言っている事は確かに魅力的かもしれません。ただ、背後に厄介な者が絡んでいる可能性があって、そうなると皆さんにも危険が及ぶかもしれないんです……どうか、わたしたちを信じてこのホールから決して出ないよう、お願いします」 「……自由が無いのなら、その『危険』とやらで死んだ方が余程マシじゃないのか?」 「わたしは……そうは思いません。他の浄化師たちも男爵と出来る限りの交渉をするつもりです。だから、束縛の中でも今は生きる事を優先して下さい」 「……お前の言葉に嘘が無いか、とくと見物させて貰う」 奴隷の男はそう言い残すと同僚たちの中に溶けていった。 ●開戦 邸の玄関では、メリッサ・クラルティとシャルル・グランジェが 「世界をこの手に」 と魔術真名を唱え襲撃に備えていた。 「なぁお嬢、魔術真名、実戦で唱えるの初めてだな」 シャルルは自身の中に力が漲るのを感じながら静かに笑む。 「……結構上がるもんだな、力も気持ちも」 男爵邸の屋根の上から索敵警戒していたパンプティ・ブラッディの耳に、邸の大時計が叩く鐘の音が聞こえた。 刻限はリバティ戦線の脅迫状にあった午前零時。 庭で待機するリトルが身構えて程なく、あちこちから駆ける足音が響き始める。 「ならず者の割には時間には随分と律儀なもんだ」 暗がりの中パンプティは目を凝らし人影の数を数えると、それをリトルから借りたメモに記載し邸の窓辺に投げながら屋根から強靱な脚力で跳躍した。 「アタシたちが相手だ!」 同じ頃、邸奥の厩舎に先回りしていたマリオスは、リバティ戦線襲撃前に急ぎ馬車の車輪を外したり車庫の扉に鍵を掛け突っ支い棒をしたりと忙しなく動き回る。 そして、後れて合流してきたシルシィと共に大時計の鐘を聞き、厩舎の陰に身を潜めた。 幸いにも動物好きな彼女に馬も警戒心を抱く事無く大人しくしてくれている。 二人の予測どおり、リバティ戦線の一味と思われる男が数人、車庫に忍び寄ってきた。 「……面倒な指令」 男たちの人影を見つめながらシルシィが呟くと、マリオスも苦笑する。 「ああ、でもリバティ戦線は解放するだけでその後の責任は持たないそうだ……止めても有り難くは思って貰えないかもしれないけどな」 マリオスの言葉に頷くと、シルシィはマリオスに手を差し出した。 「「我らの意志の元に」」 満を持して二人はランタンと共に賊の前に躍り出た。 ●乱戦 庭でリバティ戦線と対峙するパンプティは、斧を振り回す男に自身もまた斧を構え先制攻撃を仕掛けた。 斧の男は彼女の攻撃を斧の柄で受け止める。 パンプティと斧の男との押し問答が始まると、そこに一発の銃弾が飛んできた。 リトルが予め立てていたたいまつの灯が、庭の花木の影から覗く銃口を照らす。 猟銃を用いた男が潜伏していたようだ。 猟銃の男は容赦なく次の一発を放つが、パンプティは斧の男と交戦中で一歩たりとも動けない。 そこでリトルが援護に入り、猟銃の男に呪符を投げる。 男は狙撃を妨害されたが、それでもまだ銃を持つ手を放さずリトルに全力疾走で突進し銃身で彼女を横殴りにした。 リトルは回避が間に合わず側頭部から血を流しながらも抵抗、息を切らしながら捕縛するが、敵はまだいる。 更に今度はナイフ持ちがリトルの背後に迫った。 パンプティはさすがに看過出来ず斧の男から離れリトルとナイフ男の間に割り込み迎撃する。 「アタシらだけじゃ厳しいか!」 パンプティは信号拳銃から緑の信号弾を発砲した。 車庫の前でもシルシィとマリオスがならず者相手にまさかの苦戦を強いられていた。 マリオスらの戦術は決して拙くはない。 作戦も良く練られており、事実リバティ戦線の者たちは馬を放して混乱を招く事も馬車を暴走させる事も強奪する事も出来ずにいるのだから。 ただ、二人は「数の暴力」に押されているのだ。 厩舎付近の配置はシルシィとマリオスだけ、それに対し武装したならず者はざっと数えても5、6人はいる。 厩舎を背にして背後だけは守っているが、マリオスが剣で敵の得物を受け止めれば別の敵がシルシィに投石、光明真言の効果で冷静に見極め凌ぐが、別方向から敵の接近を許し彼女の肩にツルハシが振り下ろされた。 「シィッ!」 「……っ、まだ……大丈夫」 攻撃を受け止めるマリオスには救援出来ず、シルシィは肩に出来た裂傷から鮮血を流しふらつきながらも必死で呪符で反撃し何とか距離を取り緑の信号弾を発砲した。 「これはもう、応援呼ぶしかないね」 ●激闘 緑の信号弾をほぼ同時に2箇所から確認したロスは焦りを覚える。 獣人変身しシンリンオオカミの姿となって敷地内を走り回りその視覚嗅覚をフル活用して警戒に当たり、遊撃勢力として準備していたロスだったが、同時に二箇所の援護には行けない。 「参ったなー、けど玄関にはメリッサが控えてっから先に厩舎のマリオスんとこ行っとくか!」 悔しさを滲ませながら、ロスは厩舎に疾駆した。 厩舎前の現場に到着したロスは、マリオスが剣で鍔迫り合いをしている敵の背後に回り込み飛び付いて牙を立てる。 新手の出現に、今度はリバティ戦線の方が焦り出した。 元々好き勝手に暴れ回っていた敵の動きは益々乱れ、隙が生まれる。 「今だーっ!」 ロスの援護を受け、マリオスが剣を十字に振り二連撃を加え敵を伸した。 「くそっ、話が違うじゃねーか!」 怒号を上げながら、まだ動けるリバティ戦線の男たちが逃走を始める。 だが、マリオスが倒れた男たちを縄で捕縛しているその時、リトルらのいる方角から再度緑の信号弾が上がった。 「さすがに持たなくなってきたかぁ!?」 厩舎の方はもう問題なさそうだと判断したロスは、マリオスに手負いのシルシィを任せリトルたちのいる庭に急ぎ転進を始める。 ……だが、パンプティが二発目の緑の信号弾を発砲した本当の理由は、リバティ戦線に苦戦していたからではなかった。 援軍として駆けつけたロスらが目にしたのは……。 「キメラァ!?」 リバティ戦線の者たちは 「こんなのが出てくるなんて聞いてねーぞ!」 と叫びながら四散し、数人の人影が闇に消えていく。 「でも、何も盗らねーでおめおめと引き下がれるかよ! こうなったら、この怪物が暴れてるうちに肥えたブタ野郎んとこに行くぞ!」 残ったならず者たちは邸の玄関に突入した。 玄関ではメリッサとシャルルが賊を待ち伏せていたが、意地でも何かしら強奪しないと気が済まない敵はメリッサらに1対1で挑み、足止めしている間に仲間を侵入させる。 「あっ、待ちなさいよ!」 「お嬢、深追いするな。俺たちは目の前の敵を抑えるぞ」 シャルルは牛刀に似た刃物で向かってくる男にクロス・ジャッジを叩き込むが、敵は得物の重量に物を言わせ押し切る。 「調子に乗らないで!」 メリッサはすかさずボウガンでワーニングショットを放ちシャルルを援護するが、その隙に自身が対峙する敵の接近を許してしまい、棒でボウガンを弾き飛ばされてしまった。 メリッサは慌てて盾で次の棒撃を防ごうとしたが間に合わず、敵は彼女を横薙ぎに払う。 メリッサの脇腹から、ミシミシッと不穏な音がした。 「お嬢っ!」 シャルルは牛刀相手に木刀で果敢に十字切りを連発、牛刀男を気絶させるとすぐにメリッサの加勢に入り、残りの気力を振り絞りクロス・ジャッジによる十字の斬撃を見舞い棒の男を払いのけ、とどめに脳天を峰打ちにして昏倒させた。 「お嬢、アバラやられてんな……」 敵を成敗したシャルルはうずくまるメリッサを気遣うが、彼女の方は脂汗を滲ませながらも玄関を突破していった敵に向かって叫ぶ。 「何で私のとこに来ないのー!?」 「ハハ、お嬢に恐れをなして避けてったんだろ。けど、その怪我でこの気迫……敵ながら懸命な判断だぜ、色んな意味で」 敵もメリッサを怪我人と油断し手を出していたら……まぁ、ただでは済まなかったかもしれない。 だが……玄関を突破した連中がただのならず者だけならどうという事はなかっただろう。 メリッサらは気付かなかった。 戦闘中の彼らの横を薄暗がりに紛れてすり抜け、ダンスホールを目指す黒外套の姿に……。 邸内は、ダンスホールに至るあちこちにシルシィたちが事前に仕掛けておいたトラップがあった。 突入したリバティ戦線の者は足元低く張られた縄に引っ掛かりつんのめり、何とか体勢を立て直し階段を昇ろうとすればそこには石鹸が塗られており足を滑らせ顎を打ち付ける。 それでも這い上がり別の階段を使おうとすると、今度はその階段の上に敷かれた布団を踏み、階段で待機していたシンティラにそれを一気に引っ張られ宙に浮いた後盛大に尾てい骨を強打、ある意味捕縛されるよりも散々な目に遭わされた。 一方、男の後を追うように邸に入った黒外套は、次々と罠にはまる男たちを踏み台にダンスホールへと接近する。 魔力感知の出来るシンティラは黒外套が醸し出す不穏な魔力にいち早く気付き、 「皆さん、敵が向かいます、注意して下さい!」 と懸命に声を張ると、光明真言により冷静さを維持した状態で呪符を飛ばし足止めしようとするが、黒外套はそれを回避しとうとうその扉を開けてしまうのだった……。 ●死闘 階段から男の悲鳴やシンティラの警告が聞こえるや否や、キメラの放った火球が突如ダンスホールの窓を突き破った。 ホール内には男爵一家や使用人、奴隷たちの悲鳴が飛び交うが、ルーノが予め人々を窓から遠ざけて待機させていたお陰で負傷者は出ずに済む。 「リスクは大きい……です。でも……わたしたちは全力であなた方を守ります……ですから、ここからいなくなったりしないよう……ご協力の程、よろしくお願いします……!」 その宣言どおり、杜郷・唯月(もりさと・いづき)は泉世・瞬(みなせ・まどか)と並びキメラの攻撃に備え、ルーノは奴隷たちを、ナツキは男爵らを背に庇い防御の構えを取った。 「キメラが暴れてるって事は、当然終焉の夜明け団信者も絡んでるって事だよね!?」 「確認するまでもないだろうが」 慌ただしく魔術真名を唱えホールに突入したエメラドとアリアドの推測が見事的中と分かるには、そう手間は掛からなかった。 何故なら、玄関でメリッサらがならず者と戦っている横をすり抜け、シンティラの攻撃を回避した「黒外套」が、ホールに姿を現したからだ。 「ご機嫌よう、実験材料たち」 黒外套の「信者」は薄気味悪い笑みを浮かべながら片手本を開き魔術を発動させる。 途端に浄化師たちの動きが重くなった。 「何だ、これ……!?」 動きを阻害されている間に、黒外套が距離を詰め迫る。 至近距離まで来て、敵は外套の袖から左手を出して浄化師たちにかざした。 その手の甲には埋め込まれた十字架、まごう事なき「終焉の夜明け団」信者の証である。 それを見た唯月の顔色が一変した。 「終焉の夜明け団……わたし、また……」 家族を奪った憎き仇の同胞を前に再び自我を失うのではないかという恐怖に唯月の指先が震える。 「大丈夫、その時はまた俺が呼び戻すから!」 瞬は自信に満ちた笑みで唯月を励ました。 「瞬さん……ありがとうございます!」 だが、信者は不敵に微笑みながら迫る。 「折角だ、君たちにも『材料』になってもらおう」 信者は魔力弾を発しようとしたが、唯月は鈍い動きながらも抵抗し攻撃を仕掛けた。 「……許しませんっ!」 唯月は歯を食いしばりながら足を前に出し占星儀から攻撃を繰り出す。 「元魔術師の私に無駄な抵抗は止めたまえ」 信者は唯月めがけ特段大きな魔力弾を形成し発した。 「いづっ!!」 ……あまりに咄嗟だった。 唯月を守ろうと彼女の前に踏み込んだ瞬の腕が魔力弾によって吹き飛ぶ。 「……ぐあぁっ!」 瞬は気絶しそうな激痛に耐えながら残った腕で杖を振り、魔力弾を放った直後で隙の出来た信者に攻撃を加えると、信者が怯み重力場が解除された所で吹き飛んだ腕の所まで走り、どうにかその肉体を再生させた。 「……わ、わたしが冷静さを失ったから……」 唯月は顔面蒼白で瞬の元に駆け寄るが、瞬はいつものように笑う。 「約束したでしょ、『呼び戻す』って。もう大丈夫だから、そんな顔しないで? ほら、敵はまだ動いてるよ」 「瞬さん……わたし、負けたくありません……抱くこの感情にも、彼らにも!」 「うん……いづなら出来るよ」 唯月は瞬にこくりと頷くと、痛みと衝撃でまだ動けずにいる彼が見守る中信者に立ち向かった。 唯月が戦線に戻るまでの間はナツキが信者と決死の攻防を繰り広げ何とか時間を稼ぐ。 その一方で、アリアドはエメラドと連携しながら何とか信者の無力化を図ろうと片手に持つ本を取り落とさせようと狙った。 だが、信者は小さな魔力弾を連発させながらそれを躱す。 小さいとはいえ、間隙無く放たれる魔力弾を回避しきれず、アリアドらは徐々に傷を負っていった。 更に、追い打ちを掛けるように窓の外からキメラの火炎球がまたも乱入、エメラドは咄嗟にアリアドを庇う。 「エメ……ッ!」 エメラドは肩に衝撃を食らいながらもアリアドに微笑んだ。 「大丈夫、キメラの体はそう長持ちはしない、命が尽きるまでこっちも耐える! だからアルは信者をっ!」 ナツキは戦線復帰した唯月と共に信者に挑む。 信者は変わらず魔力弾を放つが、その肩は激しく上下し始めた。 「消耗してるな……ならばこちらも畳み掛ける!」 アリアドは負傷したエメラドと共に気力体力を振り絞り信者に攻撃する。 そこに、肉体を再生させ何とか人心地ついた瞬が合流、援護に入った。 いよいよ追い詰められた信者はなりふり構わず片手本を振り回し抵抗しながら割れた窓から逃走を図ろうとするが、生憎ここは2階、一瞬躊躇ったその瞬間にエメラドが縄を持ち突進、肩の痛みに耐えながら信者に巻き付ける。 「なっ、何をするっ!」 藻掻く信者に唯月らも馬乗りになって制止に入り、信者の捕縛に成功した。 程なくして、外での対キメラ戦にも終止符が打たれる。 キメラは徐々に動きに精彩を欠き始め、攻撃するというよりは意義も方向性も見失いただもがき暴れているように見えた。 「キメラは短命と聞いてますが、あれはつまり終焉の夜明け団の失敗作……という事でしょうか」 「だとしたら、アタシたちが早く止めてやるのがせめてもの情けだよ!」 前後不覚となり暴れるキメラに、リトルとロスの援護を受けながらパンプティがとどめの一撃を刺す。 キメラは虚空に火球を吐きながら、その場に倒れ絶命した。 ●終 エメラドが信者を拘束すると、ルーノは男爵にウインクで合図を送る。 「ぐぬぬ……」 男爵は釈然としないながらも奴隷たちに向け口を開いた。 「お、お前たちは儂にとって大切な働き手だ……儂にはお前たちが必要なのだ」 だが、奴隷たちが男爵の憮然とした顔から誠意を感じ取る事は無く、彼らの中からは舌打ちや溜め息と言った「無言の抵抗」が聞こえるばかりだ。 ルーノは機転を利かせ男爵のフォローに入る。 「皆さんを貴重な働き手と思っているからこそ、男爵は今宵皆さんをホールに避難させるという私たちの作戦を許してくれたのだと思いますよ。無責任に甘言を宣う者とどんな形であれ皆さんの生活を支えてきた男爵、どちらが信用に値しますか?」 男爵に対しては、キメラとの死闘を終え負傷しながらも仲間たちに応急手当を施そうと駆けつけたリトルが説得を始めた。 「この辺りの事情を鑑みると男爵が個人の判断でここにいる皆さんに人権を与え身分を撤廃するのは難しいでしょうが、それでもせめて待遇を改善しては貰えませんか? 僕にとってこの方々はもう友達同然です。襲撃前にも色々なお話を聞かせてくれました。皆さんは厳しい待遇の中懸命に働いていますが、不平不満が溜まればそれを逆手に取る者に付け入る隙を与えてしまいます。それを防ぐにはやはり皆さんの待遇や環境を良くする事ではないでしょうか?」 「成程、好待遇は質の良い仕事にも繋がります。男爵、これは謂わば未来への投資とも言えますね」 ルーノも微笑しながらリトルの発言に畳み掛ける。 満身創痍になりながら危機から救ってくれた浄化師の言動を突っぱねる事は、さすがに今の男爵には出来なかった。 「……善処する」 男爵は苦虫を噛み潰したような顔を見せながらも、奴隷たちに定期的な休暇と少額ながらも賃金の支払いを約束した。 それを聞いたナツキはニッと笑いながらルーノの肩を叩く。 「何だよ、最初はあんなに乗り気じゃなかったくせに」 「別に、気が変わっただけだよ」 ルーノが再び浮かべた微笑からは、男爵に対するそれとは違い打算の色は消えていた。 「皆、ご苦労だった」 教団員セゴール・ジュノーが終焉の夜明け団信者を連行すべく男爵邸に駆けつけた。 「やはり終焉の夜明け団が一枚噛んでいたようだな。リバティ戦線の構成員は何名か逃走したようだが、君たちは実に良くやってくれた。その様子を見る限り、相当やり合ったんだろう? 病棟に立ち寄って手当を受けてくれ」 「大丈夫ですか……?」 唯月は瞬に肩を貸しながら男爵邸を後にする。 「どうって事ないよ。セゴールは大げさなんだよ~」 そう言う瞬の腕をアリアドが軽く突くと、瞬は思わず絶叫した。 「やせ我慢はしない事だな」 「……瞬さん、全然大丈夫じゃないじゃないですか! ……病棟、行きましょうね……?」 「お嬢もな」 シャルルはおんぶしているメリッサに声を掛ける。 「……僕たち、ボロボロですね」 「けど、みんなイイ顔してんじゃねぇか!」 傷の痛みに苦笑するリトルに掛けたロスの一言に、皆は頷きながら教団の用意した馬車に乗り込み本部に帰るのだった……。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[72] 泉世・瞬 2018/05/07-23:59
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[71] ロス・レッグ 2018/05/07-23:56
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[70] 泉世・瞬 2018/05/07-23:50
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[69] ロス・レッグ 2018/05/07-23:25 | ||
[68] 泉世・瞬 2018/05/07-23:01
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[67] シルシィ・アスティリア 2018/05/07-22:53
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[66] ルーノ・クロード 2018/05/07-22:49 | ||
[65] リトル・フェイカー 2018/05/07-22:37 | ||
[64] ロス・レッグ 2018/05/07-22:17
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[63] メリッサ・クラルティ 2018/05/07-22:06 | ||
[62] アリアド・ルミナル 2018/05/07-22:02 | ||
[61] 泉世・瞬 2018/05/07-20:43
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[60] ルーノ・クロード 2018/05/07-20:35
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[59] ロス・レッグ 2018/05/07-20:01
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[58] ルーノ・クロード 2018/05/07-19:29 | ||
[57] ロス・レッグ 2018/05/07-18:35 | ||
[56] リトル・フェイカー 2018/05/07-13:59
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[55] リトル・フェイカー 2018/05/07-12:29 | ||
[54] エメラド・ルミナル 2018/05/07-10:18 | ||
[53] ルーノ・クロード 2018/05/07-09:42 | ||
[52] ロス・レッグ 2018/05/07-08:00
| ||
[51] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/07-05:49 | ||
[50] 泉世・瞬 2018/05/07-03:49 | ||
[49] シルシィ・アスティリア 2018/05/07-01:02 | ||
[48] リトル・フェイカー 2018/05/06-22:19 | ||
[47] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/06-21:53
| ||
[46] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/06-19:40 | ||
[45] シルシィ・アスティリア 2018/05/06-17:48 | ||
[44] ロス・レッグ 2018/05/06-15:46 | ||
[43] ルーノ・クロード 2018/05/06-14:51 | ||
[42] ルーノ・クロード 2018/05/06-14:31 | ||
[41] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/06-12:25 | ||
[40] リトル・フェイカー 2018/05/06-01:05
| ||
[39] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/06-00:17 | ||
[38] アリアド・ルミナル 2018/05/05-20:50
| ||
[37] 泉世・瞬 2018/05/05-19:57
| ||
[36] シルシィ・アスティリア 2018/05/05-16:54 | ||
[35] メリッサ・クラルティ 2018/05/05-15:11 | ||
[34] ルーノ・クロード 2018/05/05-14:31 | ||
[33] ロス・レッグ 2018/05/05-13:27 | ||
[32] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/05-13:27 | ||
[31] シルシィ・アスティリア 2018/05/05-10:56
| ||
[30] 泉世・瞬 2018/05/05-10:47 | ||
[29] ロス・レッグ 2018/05/04-21:36 | ||
[28] シルシィ・アスティリア 2018/05/04-01:19 | ||
[27] リトル・フェイカー 2018/05/03-21:10 | ||
[26] ロス・レッグ 2018/05/03-19:48 | ||
[25] ルーノ・クロード 2018/05/03-11:07 | ||
[24] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/03-08:13 | ||
[23] アリアド・ルミナル 2018/05/03-07:28 | ||
[22] アリアド・ルミナル 2018/05/03-07:02 | ||
[21] 泉世・瞬 2018/05/03-06:49 | ||
[20] メリッサ・クラルティ 2018/05/03-01:34 | ||
[19] ロス・レッグ 2018/05/03-01:29 | ||
[18] リトル・フェイカー 2018/05/03-01:20
| ||
[17] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/03-01:14 | ||
[16] リトル・フェイカー 2018/05/03-00:49 | ||
[15] メリッサ・クラルティ 2018/05/03-00:34
| ||
[14] ルーノ・クロード 2018/05/03-00:21 | ||
[13] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/03-00:12 | ||
[12] ルーノ・クロード 2018/05/03-00:04 | ||
[11] シルシィ・アスティリア 2018/05/02-23:35 | ||
[10] シャルル・グランジェ 2018/05/02-23:17 | ||
[9] メリッサ・クラルティ 2018/05/02-23:07 | ||
[8] エメラド・ルミナル 2018/05/02-19:50
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[7] メリッサ・クラルティ 2018/05/02-17:46 | ||
[6] エメラド・ルミナル 2018/05/02-06:50 | ||
[5] シルシィ・アスティリア 2018/05/02-00:17 | ||
[4] アリアド・ルミナル 2018/05/01-17:32 | ||
[3] アリアド・ルミナル 2018/05/01-17:32 | ||
[2] アリアド・ルミナル 2018/05/01-13:00
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