~ プロローグ ~ |
そこは、あの世とこの世を繋ぐ塔だった。 |
~ 解説 ~ |
○目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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ネームレス・ワンと交戦 使徒は仲間に任せ、接近されたら反射魔術で対処 ルーノは支援優先 味方劣勢時、敵多数時に禁符の陣で妨害、体力6割以下で回復 体力の減った味方への攻撃は庇護+雷龍 余裕があれば防御魔法が無い時に火界咒 可能なら回復や反撃を【識神召喚・真龍】で妨害する ナツキは創造神に接近直後、黒炎解放 防御魔法が無い時にスキルで攻撃 勢いよく斬り込みつつ、戦いながら相手の行動を観察 防御や回避の癖を見つけて隙とし一気に攻め込む 獣牙烈爪突、氷結斬のBSも狙う 【不壊の剣】発動時、ヘスティアで2R黒炎解放 特殊能力+現時点で一番威力の高いスキルで反撃 ルーノはナツキへの反撃を【識神召喚・真龍】で妨害 攻撃を確実に届かせる |
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わたしはこの世界が好きよ 悲しいことも苦しいこともある 良いことばかりじゃない でもだからこそ わたしたちは人を想う大切さを知っている 神様 貴方の「愛」は自分の所有物に向けたものよ 生きている私たちへのものじゃない 魔術真名詠唱 …死なないで 小さな声でシリウスに ダヌ様へは ふたりともMP回復をお願い ネームレスワン対応 初手で周りの皆へ禹歩七星 鬼門封印や回復で皆の支援 使徒召喚後 参加者の負傷度平均が4割ほど溜まれば【世界樹の唄】 レオノル先生の予知に 怪我をした人はこちらへ! 絶対誰も死なせない 皆で生きて帰ろう 神の力なんてなくていいの 助け合って補い合って 大切なひとと手を取り合って そんな未来を紡ぐために わたし達はここにいるの |
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私は、私の大切な人を、護りたい… 誰かの大切な人も、護りたい… だから、神様がそれを奪うのなら、私は抗います もう、何も、失いたく、ないんです リア姉様の顔を見て静かに微笑んで 絶対に、護ります… 魔術真名詠唱 リチェちゃんや仲間の陰陽師の皆さんと禹歩七星 鬼門封印での支援と天恩天賜での回復 使徒が近づいてきた場合は禁符の陣で止めてリア姉様に合図 レオノル先生の予知が来たら【月光の護り】で味方を護る 動けなくなるけど、平気 だって姉様が、いてくれる… だからクリス、私のことは気にしないで 思いっきり戦って 神様、貴方のそれは、愛じゃない 名を呼ぶ事すらしない、その考えは 貴方も、ちゃんとした名前、つけて貰ったら、いいのでは、と |
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使徒対応 私の強情な性格は反省すべき点ですが ここまで生きてきた道筋を後悔はしていません。 イザークさんと共に歩むのなら、この先も多少の間違いはあっても道を踏み外すことはないと思います。 スキルを使いながら一体づつ確実に倒していく 回復はあれど長丁場は覚悟の上なので、隙を突かれないように他の人たちと連携 父と……母がくれた人形 ここにいないけれど、戦えるのは二人のおかげだ 私の道は、私だけの道ではない。 過去に生きた人達も…きっとこの日に繋がる為に 今ならできる気がする、皆さん力を貸して下さい 呪文は、私の知る、最強の呪文で 【紙華の炎】 イーザ・イーザ・イーザ 共に・共に・共に 儚く、激しく燃えた命の輝きを 再びこの地へ |
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俺はただ、生きるためにしか戦ってないつもりだ。神殺しなんて大それたもんじゃない ネームレスワン対応 ランキュヌで耐久を下げサンクシオン発動 アンチノミーショットと合わせて可能な限り削る 奴がドクターの未来視に勘づいたら一度は自分が盾になって防ごう 死霊の石で腕が飛ぼうが安いもんだ 未来視で仲間に大ダメージが飛ぶようなら事前にアンチノミーショットで対応 魔力回路をどこまで使っているかは知らんが食い止めにはなるかもしれん それ以外はポイズンショットで とにかく奴に回復の手を追いつかせたらまずい 酷い親ってのはどこにでもいるもんだな 親はいるだけでいいなんても言われるが、そんな奴はいない方がいい だから消えろ。 それだけだ。 |
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ダヌ様、MP回復お願いします 優先度はヨハネの使徒>ネームレスワン 創ってくれた事には、感謝してる でも、どう生きるか、どう死ぬか、そこまで面倒見てくれなくていいよ 流石に過干渉だよ? 親だったら、普通に反抗するよ、それ 普通に要らない 余計なお世話って奴だよ 確かに波乱万丈な道行きだったけど 振り返れるようになると、そんな道も楽しかったって思うよ 波乱万丈じゃなかったら、カグちゃんと出会う事もなかったろうし でも、やる事の規模が大きいからさ 1人で決めちゃうのって良くなかったんじゃないかな つまり、ほうれんそうって大事だよねってことだよね 友達居ない、彼彼女もなし、仲間もいない 生きてて楽しいの? 今度は友達出来ると良いね |
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世界で一番哀れな神様 あなたの作る新世界なんて誰も望んでないわ 私はあなたの箱庭のお人形じゃないのよ 魔術真名詠唱、ネームレスワンに対応 クリエイションで回避力を上げ、戦踏乱舞で前衛の支援 エフドの引き付けスキルとタイミングが被らないよう分担して、スポットライト使用 敵の注意を引きつつ敵の周囲を回るように動き、逃げ回る 絶対に止まるわけにはいかない クリエイションが切れたら、再使用できるようになったら即座に使う 攻撃は他の味方とタイミングを合わせ、敵の隙ができた時に蘭身撃 回避不能の攻撃を受けたら魔導書ネメシスの能力使用 叶花の能力は回避を選択 ダヌ様の加護はHP 正真正銘最後の戦い、出し惜しみは無しで行くわよ! |
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ネームレス・ワンを倒す 今を生きる皆でこの先の未来を掴む 魔術真名詠唱 ふたりで顔を見合わせ小さく頷く リ:これで最後… セ:ええ 決着をつけましょう いつもと同じ できることを精一杯に きっとそれが ヒトという種ができることだから ダヌ様にはふたりともMP回復 叶花ちゃんにはクリエイションの成功率増を 創造神対応 リ:戦闘開始後 【極光の刃】使用 クリスさん レオノルさん ナツキさんに火属性を付与 神対応のメインアタッカー中心に流麗鼓舞や戦闘乱舞 支援を中心 余裕があればヒットアンドアウェイ なんとか隙を作る セ:回復役や遠距離攻撃役の人の護衛 レオノルさんに【星辰の光】 カードで攻撃をしながら 封印使用時のヴィオラさんにはペンタクルシールド |
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サクラ:神様殺すかぁ キョウ:そうですね。 サクラ:まぁたそんなこと言っちゃって。 キョウ:スケール大きすぎますよ…… サクラ:いいから早く前に出なさいな。 キョウ:わかってますよ 【行動】ネームレス・ワン サクラ ほらほら、あなたの子ども達も行っているんだからさっさと死になさいよ。 子離れできない親みたいで嫌だわ。嫌がられる存在になってるわよ。 なるべく味方が私の視界に入っている状態(遠距離)で戦うわ キョウ いつも通りサクラの前に出ましょう。今回は理由が違いますが。 ああ、この間のお礼を言い忘れてました。花冠をありがとうございます。 もういらないので捨てました。 けど欲しいので今度は人となったあなた作った花冠を下さい。 |
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いよいよ最後の戦いになるか 一方的な歪んだ愛情を注がれるのは迷惑だとハッキリ神に突きつけてやるとしよう ダヌ:2人ともMP回復を アネモイ:【雷霆の帝】の力が貯まった時にネームレス・ワンの目の前に転移を 叶花:【雷霆の帝】の成功を 魔術真名詠唱 使徒が出てくるまでは神へ攻撃 使徒出現でそちらへ向かう 周りに人がいない場所を選んでグラウンド・ゼロ発動 敵が残り少なければ砕石飛礫で 使徒が減れば【雷霆の帝】の準備 世界中の人々よ聞いて欲しい 我らを滅ぼそうとする神を今、我らが追い詰めている だが倒すには貴方達の力も必要だ 貴方方の大切な誰かを護りたい想いを私達に貸して欲しい どうか声援を 力が最大限になれば転移 その力を叩きつける |
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ダヌ神にMP回復を頼む ネームレスワン主に対応 やる事はいつもと変わらん メルキオスが翻弄してる間に邪魔するだけだ 力不足は分かっている 己はそれほど強くない だが、声を大にして言いたいのだ 作り手の責任? そんなもの知るか 私たちは私たちが思う通りに生きたい、それだけだ 先に滅びしかないからと、殺されてたまるか! 例え、悪と断じられても 私は、私の思ったように生きる 相棒がどうしようもない奴だとしても 解ってるならば、傍で間違った事をしそうなのを止めればいいだけだ 間違っているなら正しい道に戻せばいい ただそれだけだ 寂しい生だったな、創造神よ 「所謂、ボッチだな」 生まれ変わったらもう少し周囲に目と耳を向けて生きると良い |
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よう、神様。ティーパーティーで呼ばれたから来てやったぜ。いかれた魔術師との勝手なゲームで怪物を放ちまくって、世の中を難民と孤児とならず者だらけにしやがった落とし前はつけてもらうぞ。 お前につきまとってGK6で攻撃させて、GK4とアベンジ、DE3を食らわせ続ける。空中にいればDE13だ。これで1Rに3回攻撃。だがこの戦法は同じく囮型のラディアータと同時に使うべきじゃない。 全体攻撃や範囲攻撃にはGK14でラファエラを庇う。勿論それにもアベンジだ。 あんたがどれだけ動こうと、ねちねち追い回して攻撃し続けるからな。デモン・オブ・ソウルの効果もすぐ使う。 ダヌの効果:エフドはHP、ラファエラはMP |
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親離れとか運命とかそういうのはさておき ガラクタ野郎どもお前等だここで全部殺す絶対殺す!! 対使徒へ ここまで来たら、最後まで徹底的に戦ってやる 一体でも使徒が残っていれば そのすべてを倒すまで使徒との戦闘に専念 存在していない場合はネームレスワンとの戦闘の援護を 開幕魔術真名詠唱 使徒創生発動時、すぐにクリエイション発動準備 次ラウンドで発動 クリエイションは現存機体が残り5体になるまで随時発動 さっさと堕ちろ!! 3回目の使徒創生時にヘスティアで強化後クリエイション MP切れ時はフチュールプロミス使用 ネメシスは至天の理が発動時に発動 それは 天を憎む叫び 衝撃波 というより単純なシャウト 命を懸けた 憎しみの叫び |
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魔術真名発動 和樹は敵引付と壁 庇った相手を気遣う 令花は補助と魔法攻撃の壁 戦況を観察し仲間に助言 上記行動に叶花発動 使徒対応優先 創造 ↓ 和樹【死への反逆】 戦いの中で朧気に芽生えた死神の権能を逆用して、降り注ぐ死を止める!邪魔する!!ブッ飛ばす!!! 一定範囲の仲間のダメージに反応して即移動し絶対防御の誓い+魑魅魍魎+慈愛天蓋でカバーリング出来る。 移動力を超えるカバーはMPが代償 令花【神算鬼謀】 目に見える範囲の過去現在未来そして森羅万象を知覚し演算し最適解を弾き出す。 仲間一人につき一度だけ任意の行動の成功度を上げる。 ただし、演算は「目に見える範囲」、効果を及ぼすのは「会話が届く範囲」に限られる アドリブA |
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シキ、数が多いからって泣き言いうなよ …嘘つけ ・使徒メインに動く ・開幕魔術真名詠唱 ・祓魔人創造力 名称:ナガレボシ 1Rにつき 攻撃が2倍アップ すばやい一撃を敵一体に与える 一度発動すると5R経たなければ再発動できない ・使徒の数が増えてきたら スキル裁きⅡ使用後 ナガレボシ使用 次の創造力発動は5R経過関係なく使徒増加および必要に応じて使用する 別にしてない 放っておいたって死なないだろ …シキ それもう一回言ったら二度と口聞かない あとよそ見すんな 余計に悪いってことに気づけ |
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神だった奴は目の前にいるが、もしこの戦いの命運を決める神なんてものがいるなら …どうか手を貸さないで 決着は俺達の手で! 魔術真名詠唱後は リント達と離れてネームレスワン対応 他の味方が注意を引いてくれたり、攻撃している所を狙い、とにかく初撃だけでも命中させる 当たればクリエイション 命には限りがある だから皆必死で生きているんだ 今まで「どうせ転生させるから」と蔑ろにしてきた命の叫びを思い知れ! 使徒を出されても、基本はリントや他の仲間に任せて攻撃続行 叶花の能力は命中に ネメシスは攻撃を受けたらすぐ使う ヘスティアも攻撃開始時すぐに リント、マリー、マリエルがピンチ、且つ誰もカバー不能の時のみアネモイでそちらに転移 |
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~ リザルトノベル ~ |
決戦の時が来た。 それは全てを創りし神への反逆。 浄化師達は、全てを代表して創造神たるネームレス・ワンと対峙する。 「黄昏と黎明、明日を紡ぐ光をここに」 願いを表すように『リチェルカーレ・リモージュ』は『シリウス・セイアッド』と共に魔術真名を詠唱し、シリウスを見詰め祈るように小さな声で呟いた。 「……死なないで」 彼女の祈りに、シリウスは瞬きひとつ。 どこか苦笑するように応えた。 「――お前の方が危なっかしい」 お互いに見詰め合い小さく笑みを浮かべると、2人は魔導書の叶花に願う。 (誰も死なないように) (リチェが無事であるように) 願いを受け、叶花は応える。 それは祈りであり希望。 願いに応える奇跡の力となって皆の力となる。 祈りと願いと共に皆は戦いへと挑む。 「月と太陽の合わさる時に」 掛け替えのないパートナーと共に『アリシア・ムーンライト』は魔術真名を口にする。 視線を合わせるのは『クリストフ・フォンシラー』。 彼はアリシアを安心させるように微笑んでくれた。 アリシアと共にあるのは彼だけでなく、姉であるエルリアも傍に居てくれる。 「シア」 アリシアを見詰め、エルリアは言った。 「護るわ。今度こそ」 誓うように、エルリアは言う。 アリシアは姉の想いに応えたくて、同じように誓いの言葉を口にする。 「絶対に、護ります……」 エルリアの顔を見詰め、静かに微笑みながら応える。 それは彼女が、これまで歩んできた道のりの末に手に入れた強さのように見えた。 積み上げた強さと共に皆は立ち向かう意志を見せる。 「その牙は己の為に」 拳と拳を合わせ、『ルーノ・クロード』と『ナツキ・ヤクト』は魔術真名を唱える。 2人は共に、お互いを信じ笑みを浮かべていた。 「行こうか相棒、神を殺しに」 それは晴れ晴れとした笑顔。 ルーノの笑顔に応えるように、ナツキも笑みを強め応える。 「ああ! 行くぜ相棒、世界守るぞ!」 1人ではなく相棒と共にある力強さを感じながら、2人は神に立ち向かっていく。 神に立ち向かうは1人ではないと示すように皆はパートナーと共に立ち向かう。 「正しいことを為せ、真のことを言え」 望むべき未来を掴むため『ショーン・ハイド』と『レオノル・ペリエ』は魔術真名を唱え神と対峙する。 2人は静かな表情で前を見詰めていた。 (俺はただ、生きるためにしか戦ってないつもりだ。神殺しなんて大それたもんじゃない) 世界の命運の掛かったこの一戦にショーンは思う。 それは英雄ではなく、1人の人間としての想い。 彼と同じように、レオノルも人として、戦うべき神を見詰め呟く。 「私の体感なんだけど、愛だ愛だ言う人間ほどその本質から逸れる行為を取ってる気がするんだよね」 「……アレイスターも、そうでしたね」 「うん。だから、この戦いも、あの時の戦いと同じだよ」 レオノルの言葉に、ショーンは笑みを浮かべ返す。 「同じ、ですね……なら、一度は乗り越えた戦いです。この戦いも乗り越えましょう」 戦う意欲を見せるショーンに、茶目っ気のある笑みでレオノルは応えた。 パートナーと意思を重ね皆は戦いへと挑む。 「闇の森に歌よ響け」 歌うように魔術真名を響かせながら『リコリス・ラディアータ』は『トール・フォルクス』と共に神に挑む。 「正真正銘最後の戦い、出し惜しみは無しで行くわよ!」 神との戦いを前にして、リコリスは意欲を見せる。 いつもと変わらぬ彼女の様子に、トールは笑みを浮かべ言葉を返す。 「きっちりエスコートするよ、俺の大切なお姫様」 「ありがとう、トール。頼りにしてるわ」 リコリスも笑顔で返すと、次いで不敵な笑みを浮かべ神を見詰め戦いの意志を示した。 パートナーと言葉を交わし皆は戦いの意志を示していく。 「開け、九つの天を穿つ門」 ふたりで顔を見合わせながら、魔術真名を唱えた『リューイ・ウィンダリア』と『セシリア・ブルー』は小さく頷き合う。 「これで最後……」 「ええ 決着をつけましょう」 覚悟を込めるように呟くリューイに、セシリアは穏やかに、そしてしっかりとした声で応える。 「いつもと同じ、できることを精一杯に。きっとそれが、ヒトという種ができることだから」 「うん」 短く、けれど万感の想いを込めリューイは頷くと、戦いへと意識を向ける。 同時に2人は、戦いを少しでも有利にするべく、叶花にクリエイションが少しでも強く形になるように願う。 この戦いが始まる前に、メフィストから皆に創造神の力が結ばれていることは伝わっている。 そして本来なら難しいが、国土魔方陣を流用することで、浄化師達が創造神の力を汲み取り形にするクリエイションが可能なことも聞いていた。 想像力が決め手となる力を手に、皆は神へと挑む。 「cooking and science」 静かな声で『ニコラ・トロワ』と『ヴィオラ・ペール』は魔術真名を詠唱する。 視線は前に神へと向けながら、ニコラは言った。 「いよいよ最後の戦いになるか。一方的な歪んだ愛情を注がれるのは迷惑だとハッキリ神に突きつけてやるとしよう」 これにヴィオラは、小さく頷くと返す。 「厳しい戦いになりそうですね。でも私達の想いを分かって頂かなくてはですもの。頑張りましょう」 「ああ。物分かりの悪い神に、しっかりと分からせてやるとしよう」 戦いへの意欲を見せるニコラに、くすりと小さく笑みを浮かべながら、ヴィオラも戦闘体勢を整えていった。 皆はパートナーと共に戦いに向かう。 けれどこの場に居るのは浄化師達だけではない。 縁と絆で繋がった家族と共に、共に戦う者もいる。 「叫びよ、天堕とす憎歌となれ」 戦いへの強い意志を込め魔術真名を唱える『ラニ・シェルロワ』と『ラス・シェルレイ』に、この場に来ていたシィラが2人を見詰め言った。 「無茶はしちゃダメよ」 「大丈夫。無茶はしないって」 すぐに返したラニに対し、ラスは返すのが遅れる。 「ラス」 不穏なものを感じたシィラが声を掛けると、気まずそうに視線を逸らすラス。 「無茶しちゃダメなんだからね!」 心配して声を上げるシィラに、グリージョが宥めるように言った。 「心配しすぎは良くないぜ。ここにはシィラも、エフェメラさんも居るんだ」 「う、うむ。任せるがよい」 緊張したようにエフェメラは言うと、シィラとラニ達が一緒に居るのを見て涙ぐむ。 「メラ爺ちゃん?」 ラニが声を掛けると、エフェメラは応える。 「いや……シィラやラニやラス達と一緒に居れると思うと、それだけで涙が……」 本格的に泣きそうになるエフェメラを宥めるシィラ。 それを見ていたケイトとペトルが力強く言った。 「大丈夫! 私達も居るから!」 「そうだぜ。ラニちゃん達は、俺たちで守るから心配しなくても大丈夫だ」 2人の言葉にラスは頼もしげに笑みを浮かべたが、自分達よりも戦いを有利に進めるために頼みを口にした。 「オレ達は自分のことは自分でどうにかするよ。だから、みんなにはダヌ様の警護を頼みたい」 それは召喚する八百万の助力を最大限に保つための提案。 ダヌは皆の体力か魔力を継続して回復してくれるが、召喚された分身が一定以上傷を受けると消えてしまう。 これを受けグリージョは応える。 「分かった。俺達でダヌ様の警護は受け持つ。2人は思いっきりやりたいようにやれ」 「ありがと!」 「助かる」 ラニとラスが応えると、シィラが続けて言った。 「私は、2人の傍に居るわ」 これにラニとラスの2人が何か言うより早く、グリージョがシィラを援護する様に言った。 「2人は任せたぜ、シィラ」 「ええ」 ハッキリとした声で応えるシィラだった。 戦い方を組み上げながら、皆は神との戦いに挑んでいく。 その中で気だるげな様子を見せる者も。 「至高あれ、残花終影幻夢と消えよ」 魔術真名を唱えた『サク・ニムラサ』と『キョウ・ニムラサ』は、やる気満々で笑みを浮かべている神を見詰め言った。 「神様殺すかぁ」 「そうですね」 気だるげに応えるキョウに、サクラは盛り上げるような明るい声で返す。 「まぁたそんなこと言っちゃって」 「スケール大きすぎますよ……」 軽くため息をつくキョウに、サクラは蹴り出すような勢いで発破をかける。 「いいから早く前に出なさいな」 気のせいか、手にした両手弓の狙いが向いてる気がする。 「わかってますよ」 サクラに返しながら、キョウは神に向かい合う。 その眼は静かな殺意を湛え神に向いていた。 神を見詰め戦いへと向かう者は他にも。 「君守ると誓う」 誓いを込めた魔術真名を唱えながら『ヴォルフラム・マカミ』と『カグヤ・ミツルギ』は神に向かい合う。 ただ独りきりで、この場に集まった全てと戦おうとする神を、カグヤは無言で見つめる。 「……」 「カグちゃん?」 ヴォルフラムの呼び掛けに、カグヤは神を見詰めながら言った。 「寂しい人、よね」 それは憐れみよりも、神を知ろうとするかのような響きがあった。 「誰も理解することなく、誰にも理解される事無く、たった一人。悲しい未来にならない様に頑張っても、誰かがそれを認識することもない」 それはネームレス・ワンをひとつの側面から見た事実。 「客観的視点がないというのは、地図もない道で迷って、迷ってる事を教えてくれる様な人もいないってことよね」 そこまで言ってカグヤは、ネームレス・ワンの背後で佇んでいるメフィスト達に視線を向け、気付く。 「……いいえ。違う」 それはネームレス・ワンへと伝えるべき事実。 だからこそ、それを知らしめるためにも、カグヤは戦闘態勢を整える。 神へ言葉を届けるためにも皆は戦う意志を露わにしていく。 「ドント・フォーギブ」 魔術真名を『ラファエラ・デル・セニオ』と共に唱えた『エフド・ジャーファル』は、戦列に加わるドラゴンを景気づけるように叩きながら言った。 「あんたらが来てくれたのは心強い。助かる」 「礼はこちらこそだ」 竜の渓谷から呼び掛けに応じたドラゴンは、同じく参列するドラゴンたちを代表して礼を言う。 「世界の命運を決めるこの一戦、加わることが出来るは喜ばしい。なにより創造神と戦うなど、生まれ変わったとしてもないだろう。牙が折れようとも全力を尽くそう」 「うん、全力を尽くそう。そのために、みんなここに来てるんだから」 ドラゴンの言葉に返したのはフォー・トゥーナ。もちろん彼女のパートナーであるエノク・アゼルもここに居る。 「参戦の呼び掛けをしてくれたのは助かった。事後書類の作成が大変だが、存分にやらせて貰おう」 「その意気込みだ」 エフドは2人に笑顔を向け返す。 「世界救済って度々言ってるから、いいとこ見せてくれよ」 「全力は尽くす」 「足手まといにはならないよ」 そう言うと魔術真名を唱え戦闘態勢を整える2人から、エフドはパートナーであるラファエラに視線を向ける。 「やる気だな」 「当然でしょ」 自然体でラファエラは応える。 「ここで止まる気はないもの。まだ決着をつけなきゃいけない相手は残ってるんだから」 「その意気だ」 未来を見詰め前に向かおうとする相棒を楽しげに見詰めると、エフドは彼女の想いを成し遂げさせるためにも、神との決着に集中する。 パートナーの意志を確認しながら戦いへと挑もうとする者は他にも。 「イーザ・イーザ・イーザ」 3つの誓いを込めた魔術真名を『イザーク・デューラー』と共に唱えた『鈴理・あおい』は、戦う意志を込め神に視線を向ける。 その眼差しは強く、けれどそれゆえに、緊張したかのように強張りを見せている。 そんな彼女に、イザークは静かに声を掛けた。 「なにか、思う所があるのか? あおい」 静かなイザークの呼び掛けに、あおいは息を抜くように余計な力みをほぐすと、自分の考えを告げるように言った。 「創造神が、私達にしようとしていることについて考えていたんです」 「それは善悪を含めて、ということなんだろうか?」 イザークは、あおいの考えがまとまるよう、導くように問い掛ける。 彼の言葉の助けも借りながら、彼女は自分の考えを形にしていった。 「私の強情な性格は反省すべき点ですが、ここまで生きてきた道筋を後悔はしていません」 イザークを真っ直ぐに見詰め、あおいは想いも込め口にする。 「イザークさんと共に歩むのなら、この先も多少の間違いはあっても道を踏み外すことはないと思います」 「性格は特に変える必要はないと思うんだが……――」 イザークもあおいを見詰めながら、微笑むように苦笑し言った。 「――それでも、共に歩んできたことを後悔していないと言ってくれるのなら、それにまさる喜びはない。これからも共に歩むためにも、戦おう、あおい」 「はい」 想いを込め頷くあおいだった。 1人ではなくパートナーと共に。 想いを込め皆は魔術真名を唱えていく。 「共に」 これからの戦いを体現するかのような魔術真名を唱え『アルトナ・ディール』と『シキ・ファイネン』は神と対峙する。 (勝たないと、な……) 世界の命運が決まる一戦に、アルトナは静かに思う。 意気込みが強くなっているのか、僅かだが緊張したように強張っていた。 そこにシキの声が聞こえてくる。 「……よろしくな、テンちゃん」 「テンちゃん?」 「テンペストのことだよ」 自分の黒炎魔喰器を見せるシキ。 「一緒に戦うんだし、言葉ぐらいかけてあげないと」 シキの言葉に、テンペストは僅かだが小さく唸るような音を立てた。 「返事した!?」 「……そういうものなのか?」 「きっとそうだよ! これなら勝てる! テンちゃんと一緒に、アルくん援護するからね!」 共に戦おうと、シキは笑顔を向ける。 以前のアルトナなら、その言葉を受け入れることは無かっただろう。 誰かを頼ることを考えられなかったからだ。 でも今は違う。 シキと共に過ごした日々がアルトナの今を変えている。 だからこそ苦笑と共に想う。 (悪くない) けれど言葉にするほど素直ではなくて、それでも信頼する様に返した。 「勝つぞ、シキ」 「もっちろん! やっちゃおう、アル!」 共にある絆を支えに皆は神との戦いに挑む。 「コード・ステラ」 愛するパートナーと魔術真名を唱えながら『リントヴルム・ガラクシア』と『ベルロック・シックザール』は、愛する2人に向かい合う。 「さっさと神さま倒しちゃって、みんなでデートしようね」 リントヴルムはいつもと変わらぬ笑みを浮かべ未来を約束する。 「一緒に戦って、勝とう」 ベルロックは共にあることを誓うように愛する2人に言った。 リントブルムとベルロックの想いを込めた言葉にマリエルとマリーは返す。 「うん、勝とう。勝って、これからも一緒に居たい」 「全力を出して、勝ちましょう。デート、楽しみにしてますね」 明日を約束し誓い合い、マリエルとマリーは笑顔で応える。 それを笑顔で受け止め、リントヴルムはマリエルに願った。 「マリー、お願いがあるんだ。この戦いの間は、一緒に生きて、死んで欲しい」 「うん」 迷わず頷くマリエル。 これにべルロックが返す。 「何するつもりだ」 「クリエイションを、するつもり」 そう言うとマリエルに手を差出し、続ける。 「命の共有をしようと思うんだ。そうすれば僕を介してマリーも回復することが出来ると思うし」 カルタフィリスであるマリエルは、通常の手段では外部からの回復を受け付けない。 だが命の共有をすれば、それが叶うかもしれない。 「僕はこの戦い守りに徹するよ。マリーもリーちゃんも僕が守る。だから2人は存分に戦って欲しい」 リントヴルムの言葉に応えるように、マリエルは差し出された手を取り、指を絡め繋ぎ合う。 そして額と額を合わせ、命を繋いだ。 クリエイション【愛の鎖】。 お互いを求め合うように縛り合う。 そんな2人を見詰めていたマリーは、ベルロックと手を繋ぎ、願うように言った。 「みんなで、生きて帰りましょう」 「ああ」 繋いだ手に力を籠めベルロックは強く返した。 明日を生きるため皆は戦いへの意志を高めていく。 その意志には怒りにも似たものも込められていた。 「我ら、闘争の中に生を見出す者なり」 自分達の在り様を示すような魔術真名を唱えながら『クォンタム・クワトロシリカ』と『メルキオス・ディーツ』は神を見詰める。 「わぁ、いつもより、やる気だね」 激情を滲ませるクォンタムに、漂々と返すメルキオス。 「ひょっとして、名無しの権兵衛に言いたいことでもあるのかな?」 「……名無しの権兵衛?」 「うん。アレのことだよ」 神を視線で示しながらメルキオスは続ける。 「名前ないなら、ネームレスワンなんて何かかっこいい感じじゃなくて、名無しの権兵衛でよくない?」 「好きに呼べば良い……それよりさっきの問い掛けだが、そうだな……」 神に視線を向けたまま、クォンタムは続ける。 「力不足は分かっているし、己がそれほど強くないことも自覚しているが、それでも声を大にして言いたいことはある」 「いいんじゃない。僕も同じだし」 けらけらと笑いながらメルキオスは応える。 「これでみんなお終いかもしれないし、存分に斬りつけて言葉をぶつけてやれば好いんだよ。その程度の楽しみを味わうぐらい、この場に来た役得だと思わなきゃ」 「……そうだな」 苦笑する様にクォンタムは返すと、己の意志をぶつけるため神との戦いに挑む。 皆の準備は整っていく。 「君を二度と失わない――」 「――大切な人を守る」 魔術真名を唱え『桃山・令花』と『桃山・和樹』は神へと視線を向ける。 何の気負いもなく浄化師達の総攻撃を待つ神は、見ているだけでも力の差があるのが分かってしまう。 「……ママ」 ぎゅっと令花の服の裾を小さな手で掴み、叶花が心配そうに見上げて来る。 これに令花と和樹は無理やり笑顔を浮かべ、安心させるように返した。 「大丈夫よ。だから叶花は後ろに下がって応援してくれる?」 「カッコいい所見せてやるからな! だから心配すんな!」 「……うん」 2人に言われ後ろに下がる叶花。 そんな叶花を心配させないよう無理やり笑みを浮かべ続ける2人に声が掛けられる。 「それで良い。空元気でも笑え」 声の主はラヴィ。 笑みを浮かべたまま、元気付けるように言った。 「気張るのは、みんなで分け合えば好いんじゃ。独りじゃない。皆で戦うんじゃからの」 ラヴィの言葉に、和樹と令花は頷きながら前を向いた。 皆の覚悟は決まった。 戦いへの意志が高まり、弾ける。 それを神は嬉しげに見詰め、開戦を告げる。 「準備は出来たね。なら始めようか」 一歩、神は前に進む。 それを切っ掛けに浄化師達は一斉に動いた。 リチェルカーレやアリシア、そしてカグヤ達、禹歩七星を用意していた陰陽師達が仲間の強化に動く。 並行して八百万の神の召喚。 始まりに喚ぶのはミズナラとダヌ。 「微力ではあるが力を貸そう」 ミズナラは召喚されると同時に、火気属性が強化される領域を展開。 同時にリューイがクリエイションを発動させた。 「クリスさん、レオノルさん、ナツキさん。火気属性を付与します」 リューイが双剣を振るうと、その軌跡が輝く刃となって名前を呼んだ仲間に届く。 それは仲間の元に届くと身体に融け込み、本来の属性とは別にリューイの望んだ属性を付与する。 クリエイション【極光の刃】。 仲間の援護を第一とするような能力だった。 次々と強化を行い、即座に皆は神へと向かっていく。 いち早く出たのはシリウス。 「光は降魔の剣となりて、全てを切り裂く」 黒炎解放。 さらにベリアルリングのブーストも掛け、初手から全力を叩き込むべく突進する。 神との距離が一瞬で縮まる。だが―― 「まずは補給線から潰さないとね」 神が視線を向けているのは、後方で守られているダヌだった。 その瞬間、レオノルに致死へと繋がる未来が浮かぶ。 それは彼女のクリエイション【未来視】の効果。 (まずい!) ダヌの胸に大きく風穴があく未来を『視た』レオノルは、用意していたマドール・ジャックを使ってセシリアに連絡した。 「セラちゃん! ダヌ様が危ない!」 セリシアは即座に、ダヌを守るエフェメラ達に連絡する。 「気をつけて! ダヌ様が攻撃されるわ!」 これを受けケイトとペトルが魔銃を使い結界を形成。そこに防御魔術を込めた双剣の効果を付与。さらにエフェメラが強化。 それとほぼ同時に神は攻撃した。 何も無いはずの前方の空間を殴りつけると、ダヌの右肩から先が吹き飛んだ。 「やんちゃすぎますお父さま」 軽くため息をつくように言うダヌ。 そんな彼女を見て神は言った。 「ちぇ~、一発じゃ無理か。なら、これでどうだ」 神が両手を掲げると地面が変形。それは瞬く間にヨハネの使徒を形作っていく。 「ガラクタ作るつもり!?」 ヨハネの使徒に故郷を滅ぼされたラニが怒りの声を上げる。 彼女にとってヨハネの使徒は怨敵だ。 もちろんそれはラスにとっても変わらない。 「させるか!」 激情と共に、ラスは手にした両手斧で自分の喉を薄く切る。 それがトリガーとなり能力は発動された。 天を堕とすような歌が、波のように広がる。 それは泡沫の禁呪の模倣。ラスが生み出したクリエイション【天墜波歌】。 ヨハネの使徒の固有振動に干渉する歌音は、形成途中のヨハネの使徒の1体を粉砕。 だが同時に反動で体力が大きく削れる。 しかしお構いなしに歌を響かせ、ヨハネの使徒が完全に生成される前に合計3体を破壊した。 「ラス!」 「大丈夫だ、まだやれる」 「そういう問題じゃないでしょ!」 ラニとシィラに怒られるラス。シィラに至っては涙目だ。 けれど今は2人に返す余裕はない。 「話は後でちゃんと聞く。だから今はガラクタ野郎に集中させてくれ」 「……無茶はダメよ」 涙を堪えながらシィラは禁術を発動し使徒達を波で飲み込む。 ラニもラスに怒りつつも使徒の破壊を優先して戦いに集中する。 「ラス、やるわよ」 「ああ、分かってる」 2人の戦う相手は使徒が最優先。神へは視線すら向けず使徒に集中する。 「親離れとか運命とかそういうのはさておき」 「絶対に負けられない、な」 「特にガラクタ野郎どもなんかに負けられない! ガラクタ野郎どもお前等だここで全部殺す絶対殺す!!」 「ガラクタ野郎は残さず殺す全部だ!!」 激情を胸に2人は戦う。 2人の激情に応えるように新たなる八百万の神が召喚される。 「みんな、頑張って」 リスの八百万の神リシェが祈りを捧げると、使徒と神を押し潰そうとするかのような重圧が放たれる。 使徒の身体が軋み罅が入り、神はリシェを愛でるように見詰める。 そして神は楽しげに言った。 「八百万の召喚だけじゃなく、みんな巧く創造神の力を使いこなしてるじゃん。手放しで褒めたい所だけど、そうも言ってられないね」 そう言うと神は仙術を発動。 対象は作り出した使徒達。 指先を向けると、全ての使徒を強化した。 「作る前に壊されちゃうなら、出来あがった物を強くしないとね」 強化された使徒達は、より力強く速く浄化師達を仕留めようと動く。 そこに神が加勢に向かおうとした所に、シリウスの刃が襲い掛かった。 「危ないな」 斬撃に視線を向けることさえなく神は避けると、神は棍を創り出し反撃の一撃を放つ。 抉り込むように放たれた突きをシリウスは回避。 そこからカウンターの制裁を放つも、神も再び避ける。 お互い攻撃を躱し、その状態でシリウスは連続攻撃。決して離れることなく斬撃を重ね続ける。 「やる気だね。それに何か言いたそうだ」 煽るのではなく純粋に興味深げに神はシリウスに尋ねる。 一歩も退くことなく攻撃を続けながらシリウスは言った。 「……適度に反抗心を持ってもいい。だけど最終的に、自分の思い通りにならないなら死んでしまえ――これのどこが愛だと?」 「別に思い通りにならないから殺す訳じゃないけどね」 お互い攻撃の手を休めることなく、神はシリウスに応える。 「放置してたら手遅れになるから殺すんだよ」 「ふざけるな」 平然と応える神に、シリウスの斬撃は鋭さを増す。 それでも避け続ける神に、皆は攻撃を叩きつけていく。 「人になったと言ってもデタラメだよなこの強さ」 シリウスの攻撃に合せるように斬りつけながら、クリストフは斬撃を放つ。 それすら棍で弾きながら、神はカウンターを放とうとする。 「だめ、です」 神が放ったカウンターにアリシアが雷龍を放ち抑える。 「貴方の、思い通りには、させません」 「そんなに嫌がらなくてもいいじゃんか」 殺し合いの最中でも軽口を叩くように神は言う。 「君達なら死んだあとは天界に行けるよ。そこで飽きるまで居れば良い」 「そういう、問題じゃ、ないんです」 神の提案にアリシアは返す。 「私は、私の大切な人を、護りたい……誰かの大切な人も、護りたい……だから、神様がそれを奪うのなら、私は抗います。もう、何も、失いたく、ないんです」 アリシアの想いに応えるように、彼女に向かってきた使徒の1体をエルリアが迎え撃つ。 双剣で使徒の足を弾くと、横手からヴァーミリオンが追撃。 アリシアとエルリアから引き離すと笑みを浮かべながら言った。 「エルリア! 護ってやれ! こっちは俺達でどうにかする!」 そう言うとオクトと共に使徒を制圧していく。 オクト達の助けを借りて、エルリアはアリシアの傍に居る。 「シア」 護るから、というように。 安心させるような笑みを向けるエルリアに、アリシアも静かに微笑んで応えた。 「絶対に、護ります……」 アリシアとエルリア2人の笑顔を見たクリストフは、好戦的な笑みを神に向け言った。 「そうだよ、俺達からはもう何も奪わせない」 クリストフはエルリアに視線を向け信頼する様に言う。 「エルリア、アリシアを頼むよ」 頷くエルリアに頼もしさを感じながら神へと肉薄する。 「お前の力を示せ、ロキ!」 黒炎解放。 「首を取りに来たよ、ネームレス・ワン」 クリストフの宣言に神は楽しげに笑みを浮かべ、さらに苛烈に動く。 あまりの勢いにシリウスとクリストフは弾かれ体勢が崩れた所に、神はカウンターの追撃を放とうとする。 しかしそこをカミラが迎撃。 双剣の右で棍の軌道をズラし、左で首に斬撃を放つ。 それを神は身体を深く沈め回避すると、これまで受けた攻撃の威力を衝撃波として反射させた。 カミラに当たる寸前、雷龍が間に入り迎撃。 「カミラ、合わせるよ」 ルシオはカミラと共に前に出ようとする。 反射的に視線を向ける神。 しかしそれは悪手だった。 「あ、ヤバ」 即座に気付くも遅い。 ルシオとカミラが引き付けている間に背後に移動したシリウスが一気に距離を詰めて来た。 その状態で、なおも神は反応する。 振り返ることすらなく、棍をシリウスに向け突き放つ。 カウンターとして命中する――かに思われた一撃は空振りになる。 魔女の魔法スカイウォークを掛けて貰っていたシリウスは、空中を駆け上がり棍の一撃を回避すると、弧を描くようにして神の頭上を越え、擦れ違いざまに全力の一撃を叩き込む。 氷結斬に蒼剣アステリオスの特殊能力『防御無効』を乗せた一撃は、神の肩を深く斬り裂くと全身を凍りつかせた。 しかも、斬りつけると同時に動きが増している。 それはシリウスのクリエイション【蒼華の閃雷】の効果。 相手を斬りつけるという条件発動型であり、護りと体力を代償にすることで動きを加速させる。 僅かずつだが確実にダメージを叩き込んでいく浄化師達。 それを加速させるように皆は動く。 「希望を守る牙になれ。解放しろ、ホープ・レーベン!」 黒炎解放し、ナツキは神に肉薄する。 獣の如き勢いで突進して勢い良く突きを放つ。 獣牙烈爪突。 それを神は避けカウンターを放とうとするが、すでにナツキは距離を取っている。 攻撃は鋭く深く。それでいて自分の間合いを維持していた。 「よく見てるなナツキ! その調子だ!」 火界咒を放ち援護するルーノに、ナツキは戦いながら返す。 「敵をよく見ろってルーノが教えてくれたからな! 前も今もずっと、頼りにしてるぜルーノ!」 信頼できる相棒の助けも借りてナツキは神に肉薄する。 一撃一撃を鋭く、それでいて冷静に。仲間と共に攻撃を重ねていく。 集中攻撃を受ける神の援護をしようと使徒が動こうとするが、それを真神武士の一団が迎え撃つ。 「こちらは任せろ従兄弟殿!」 「そちらに集中してください!」 ナツキの従兄妹である茜や葵だけでなく、他の武士団も一丸となって使徒を破壊していく。 「カミサマ! 見てるか! 俺達は独りじゃないんだ!」 神と戦いながらナツキは想いをぶつける。 「絶望だってみんなとなら変えられる。カミサマが創ったこの世界は、絶対に失敗なんかじゃない!」 これに神は返さない。 けれど浮かべる笑顔は楽しげで、嬉しそうだった。 それでも神は攻撃の手を緩めない。 その中で、神が強力な攻撃を放つ未来をレオノルは察知した。 「セラちゃん! みんなに連絡して! 全員に何か大きい攻撃が来る!」 使徒の対応をしていたセラは、即座に魔術通信で皆に連絡。 「防御に備えて」 それを受けアリシアがクリエイションを発動する。 (誰も、傷付かないように) 祈りと共に彼女のクリエイション【月光の護り】が発動した。 淡い月光のような輝きに皆は包まれる。 それは正に、アリシアの祈りを体現したかのような能力。 神の放つ一撃すら防ぐ守護の光。 この場に居るすべてに届く筈の振動波を【月光の護り】が防ぎ切る。だが―― 「――っ」 反動の大きさにアリシアの動きが止まる。 すぐに動くことが出来ないほどの虚脱感。 いま攻撃されれば致死へと至る。 けれどアリシアに恐れは無い。 (動けなくなるけど、平気。だって姉様が、いてくれる……) それは事実。 今まさにエルリアはアリシアの傍で、彼女を守るため身体を張っている。 それを神は楽しげに眼を細めてみていたが、すぐに襲い来る浄化師達の攻撃を捌きつつ視線を動かす。 「補給線と『眼』の、どっちを先に潰した方が良いかな?」 視線の先はレオノル。 それにレオノルは気付くも、真っ直ぐに睨み返し攻撃魔術を放つ。 (今ネームレス・ワンに攻撃したらみんなを撒き込んじゃう。なら――) 使徒に狙いをつけ、レオノルはオーパーツグラウンドを放つ。 今のレオノルは、捧身賢術を3重に掛けた上に、リューイの極光の刃で火気属性が付与され、ミズナラによる強化も加わっている。 放たれた一撃は今までにない威力を見せ、巨大な武器の集団が使徒を打ち据え、動きが鈍るほどの衝撃を与えた。 それを見ていた神は、今まで以上に楽しげな視線をレオノルに向ける。 僅かではあるが、それが隙になる。 その隙をショーンが突いた。 「Fiat eu stita et piriat mundus.」 黒炎解放と同時に針の穴を射抜くような精密狙撃。 神は気付くも避け切れない。 それはショーンのクリエイション【サンクシオン】の効果を乗せた一撃。 3割もの魔力と貯めの時間を消費することで、狙撃の精密さを破壊力に転化する。 放たれた青い鬼火の弾丸は神の肩に命中し貫く。 同時に神に衝撃が走る。 それはショーンが狙撃の一撃に乗せたアンチノミーショットの効果。 並の相手であれば魔力回路が一時的に停止する。だが―― 「危ないな~」 即座に神は受けた傷を回復した。 「せっかく張っておいた仙術の守りが、ひとつ消し飛んだよ。代わりを増やさないと」 そう言うと神は、自身の周囲に手の平サイズの人形を浮かべる。 (やっかいな) 神の対応力に眉を顰めながらも、ショーンは攻撃の手を止めない。 (攻撃だけでなく守りもずば抜けている。その上、奴に回復の手を追いつかせたらまずい) 少しでも神の手数を減らすために、ショーンは攻撃の手を止めず叩きつけていく。 絶え間ない攻撃に神は力の限りを尽くし迎撃する。 僅かな隙も食いつかれる中で、神は攻撃を優先させる相手を見定めた。 「やっぱり補給線を叩かないと」 視線の先はダヌ。 使徒達が近付かないようエフェメラ達が守るが、先ほど吹き飛んだ腕は回復していない。 「あと1発撃ち込めば消えそうだね」 攻撃準備に入る神。 そこにリコリスが突進する。 「どこを見てるの!」 跳び込むと即座に蘭身撃。鋭い蹴りを叩き込む。 それを神は足で受け、リコリスの頭部に向けハイキック。 リコリスは体を沈め避けると、神に視線を向け切っ先を突きつける。 「世界で一番哀れな神様。あなたの作る新世界なんて誰も望んでないわ」 「それが僕を殺す理由?」 「それだけじゃないわ」 斬りつけながらリコリスは言った。 「私はあなたの箱庭のお人形じゃないのよ」 「そういうつもりはないんだけどね」 苦笑するように神は言うと、大きく跳びリコリスから距離を取る。 あくまでも狙いはダヌのつもりなのか、そちらに視線を向けた。だが―― (させない!) リコリスはスポットライトを使い強制的に意識を向けさせる。 「やっかいだな」 神は眉を寄せると攻撃の優先順位をリコリスに変更。威力よりも攻撃を当てることを考えた仙術を発動させる。 「射抜け、千剣弾雨」 詠唱と同時に、神の頭上に無数の剣が発生。 その全てがリコリスに向け放たれる。 高速、かつ1本1本が軌道を変えて飛翔。 とてもではないが避け切れるものではない。 だからこそリコリスはクリエイションを発動した。 スポットライトの舞踏のステップを、さらに速める。 一歩ステップを踏むごとに速く、加速していく。 その速さと俊敏さは、剣の豪雨を置き去りにした。 それがリコリスのクリエイション【プリマドンナ】。 踊るように常にステップを踏み移動し続けることで、自らに降りかかる害威から逃れることが出来るのだ。 一度でも足を止めれば効果が切れるため、常に加速した状態で動き続けねばならず体力と魔力の消費も大きいが、この状態で攻撃を当てることは難しい。 しかも今、叶花に攻撃から逃れることを願っていることもあり、ぼほ捕えることは不可能に近かった。 「うっわ、もうほんとに厄介な」 捉えきれないと悟った神は、リコリスのクリエイションに干渉するような仙術を放とうとする。 しかしそれを防ぐため、リューイが跳び込んだ。 神は気付き避けようとするも避け切れない。 それはヴィオラの援護のお蔭。 ルーナーエヴァージョンにより動きが鈍った神は、リューイに手を斬り裂かれる。 その瞬間、神はカウンターを発動。 今まで受けた傷のダメージを衝撃波に変え周囲に放つ。 攻撃直後のリューイは避け切れないがダメージは軽微。 それはセシリアのルーナーディフェンスのお蔭。 1人ではなく皆と連携して戦う浄化師に神は傷を負わされていく。けれど―― (楽しそうですね) ウィッチ・コンタクトで神の挙動を見極めようとしてるヴィオラは思う。 (遊んでるみたいです) まるで子供がはしゃいでいるようにも見える。 しかし振るう力は大きく、ここで止めねばならないことは変わらない。 だからこそヴィオラは力の振るい所を見極めようとしていた。 それを神は気付いていないのか、変わらず強大な力を雑に使う。 「吹っ飛べ!」 腕を振るう動きと合わせた衝撃波を飛ばす。 皆は避けようとするが何人かは避け切れない。だがすぐさま態勢を整え戦いに戻る。 「む~、みんな粘るなー。そんなに頑張らないでも良いじゃん」 神の言葉を聞いたセシリアは、ため息をつくように言った。 「人と変わらないわね」 それを聞き分けたのか神が視線を向けて来る。 セシリアは注意を引くために言葉を続けた。 「愛しているとか、好きに生きればいいといいながら、思い通りにならないと力尽くで修正しようとする。……ねえ神様、それはあなたが失敗と断じたヒトの生き方そのものよ」 「そりゃそうだよ。君達創ったの僕なんだし」 楽しげに神は返す。 「子供は親に似るもんでしょ。君達に悪い所があるなら僕に似ちゃったからだろうし、だったら責任を持ってどうにかしないと」 「そういうのは責任を取るとは言わないわ」 呆れたように返しながらセシリアも攻撃に加わる。 幾度となく攻撃を喰らった神は、またもや受けたダメージを衝撃波に変え、周囲を取り囲む浄化師達を吹っ飛ばす。 周囲がガラ空きになった瞬間、レオノルに突進しようとする。 「『眼』は厄介だから潰せる時に潰さないとね」 距離を詰めようとしたが、一条の矢が阻む。 神は防ごうとするが、防御を貫き膝に突き刺さる。 その一矢はトールの一撃。 彼のクリエイション【アンサンブル】の効果が乗せられた矢は、周囲に残る仲間が放った攻撃の余波を取り込み威力を増している。 膝から矢を引き抜くために動きが止まった神は、トールに視線を向け拗ねたように言った。 「もー、そんなに天国に行くの嫌なわけ?」 「そういう問題じゃないんだよ、神様」 トールは矢を放ち続けながら返す。 「もしかしたら、まだあなたに従いたいという奴もいるかもしれない。でもその可能性を蹴ってでも俺達は神に反逆する、仲間達とそう決めた。それに、例えどんな理想郷でも、そうやって押し付けられるよりは地獄の方がマシさ」 「むー、1回行ってみれば気持ちが変わるかもしれないじゃん。お試しで死んでみなよ」 「謹んで遠慮させて貰うよ」 言葉と共に矢を放ち応えるトールだった。 浄化師達の連携攻撃で神は思うように動けない。 それを打開するため神は使徒を動かそうとするが、そちらも浄化師が抑えている。 『グラウンド・ゼロを放つ。距離を取ってくれ』 魔術通信でニコラが連絡すると、それに合わせて皆は跳ぶ。 周囲に味方が居ないことを確認してから使徒の群れに跳び込むとグラウンド・ゼロ。 まとめて打撃を与えると、即座に立ち直った使徒が反撃して来ようとするが、仲間のお蔭で問題なく距離を取ることが出来た。 (まだ今はタイミングが合わんな) ニコラは周囲の状況を把握しながら切り札を使う時を見極めていた。 彼と同じように、皆は戦術を組み立てながら戦っていく。 「ほらほら、あなたの子ども達も言っているんだからさっさと死になさいよ」 距離を取り矢を射続けながら、サクラは神に声を掛ける。 「子離れできない親みたいで嫌だわ。嫌がられる存在になってるわよ」 「まったくです」 サクラに同意するように続けながら、いつもより前に出ているキョウは攻撃のタイミングを計っている。 それに気付いた神は言った。 「なにか仕掛けようとしてる?」 「秘密です」 「ネタバレを聞きたがるなんて嫌ねぇ」 すっとぼける2人に神は面白そうな笑みを浮かべ言った。 「楽しそうだけど、そうも言ってられないから潰すよ」 リコリスのスポットライトの効果が切れた瞬間を見計らって、神はサクラとキョウを集中攻撃で潰そうとする。 けれどそれより先にエフドとラファエラが抑えに入った。 「よう、神様。ティーパーティーで呼ばれたから来てやったぜ」 エフドは距離を詰めると同時にデモン・オブ・ソウルで斬りつける。 斬り裂かれた腕には呪いが浸透。じわじわと体力を蝕む。 しかし神は平然とカウンターを放とうとした。 その瞬間、ドラゴン達のブレスが集中砲火。 神は仙術で防ぐも、その隙を逃さずアゼルとトゥーナが息の合った連携攻撃。 さらにラファエラが容赦なく追撃。 「ちょ、酷くない!?」 「今までやって来たことを考えろ」 神に突っ込みを入れるエフド。 「いかれた魔術師との勝手なゲームで怪物を放ちまくって、世の中を難民と孤児とならず者だらけにしやがった落とし前はつけてもらうぞ」 「むー、それはそうだけどさー、僕とアレイスターがやり合ってなかったら、もっと性質の悪い未来しかなかったんだぜ」 「だったら、ひと思いに滅ぼせば良かったのよ」 矢を射続けながらラファエラは言った。 「あなたってなまじ優しすぎて優柔不断ね。ほんとに駄目だと思うなら、有無を言わせず一思いにやるべきだったのよ」 「君達の可能性を信じたかったからね。ま、その果てが今の有り様なんだけど」 絶え間ない攻撃を躱しながら神は続ける。 「今も可能性を信じてないわけじゃないよ。それより確実に安全な方法を取りたいだけでさ」 「そんなの、お断りよ。こっちは、やらなきゃいけない事があるの。私の手で。その前に終わりにはさせない」 「なら、その意地を通してごらん」 神はラファエラに応えると、あえて幾らかの傷を受けることを覚悟してサクラとキョウに攻撃を集中しようとする。 しかしエフドがそれを許さない。 クリエイション【仁王立ち】。 身動きが出来なくなることを制約に、亡者ノ呼ビ声と挺身護衛を同時に使い、さらにその効果が強化されたうえで耐久力も増している。 「あーもー!」 無理やり攻撃対象を変更させられた神はエフドを攻撃。 それを耐えきったエフドは迎エ討チでカウンターを叩き込み、同時にラファエラのクリエイションも発動される。 「まぶしっ!」 光線が神の目を焼き、同時に放たれた矢が突き刺さる。 ラファエラのクリエイション【アベンジ】は、自身の射程内からの攻撃で自身かエフドがダメージを受けた際、魔力を消費して光線を放つ。 結果、同時に3連撃を食らい、僅かだが動きが止まる。 そこにサクラとキョウの連携が入った。 「キョウヤ、行きなさい」 「わかってます」 キョウが前に出るのに合わせ、サクラは全体を『視る』事の出来る後方に移動。 その瞬間、サクラは自身のクリエイションを使う。 ざわりっ、と魂が変質するような感覚と引き換えに【心蜜】を発動する。 それは自身をべリアルへと近付ける代わりに、視界内の味方の命中力、あるいは体力を上昇させる。 「ふふふっ貴方を倒すために私達を殺そうとしていたベリアルに近づくのはとっても皮肉よねぇ」 自身が変質していくのが分かる。 それを抑えるためにカタルシス・ドラッグを飲み干しカタルシス・ドリップの針を腕に突き刺す。 (加減は見極めないと。こんな所でベリアルになったらそれこそ笑えないもの) 予想以上にゴリゴリと精神が変質していくのが分かる。 だがそれだけのリスクを取るだけのリターンは確実にあった。 必中に近いほど命中力を上げたキョウは黒炎解放した状態で、さらにクリエイションも乗せ投擲する。 神は避ける事など出来ず切り裂かれ、傷口からは血が止まらず毒で黒ずむ。さらに至る所が凍結した上に、マヒしたのか動きが鈍くなっていた。 それがキョウのクリエイション【欠落万乱】の効果。 自然には決して癒えない負荷を3つ与える。境ノ夜符・斬の特殊効果も合わせれば4つもの負荷が与えられた。 それを癒すべく神は仙術を使おうとする。 だがその余裕を与えないというように浄化師達は連続攻撃。 「ヴォル」 「任せてカグちゃん」 カグヤと連携してヴォルフラムが距離を詰める。 負荷を癒していた神は、全てを癒し切る余裕もなく回避に動く。 だがそれをカグヤの鬼門封印が阻む。 動きが鈍った所にヴォルフラムのクリエイション【葡萄蔓】が放たれた。 それは彼の祖となる者の記憶を元にした力。大口真神の眷属たる彼の生涯で一番身近にあった植物。 周囲一帯を覆うほどの勢いで現れた葡萄蔓が神に撒きつき拘束する。 身動きできない神に渾身のパイルドライブ。 それでも平然と神は動き、ヴォルフラムに言った。 「容赦がないね。そんなに死にたくない?」 「当たり前だよ」 ヴォルフラムは攻撃を続けながら返す。 「創ってくれた事には、感謝してる。でも、どう生きるか、どう死ぬか、そこまで面倒見てくれなくていいよ」 そこまで言うと、ため息をつくように続ける。 「流石に過干渉だよ? 親だったら、普通に反抗するよ、それ。普通に要らない。余計なお世話って奴だよ」 「余計なお世話って言ってもね。苦しい目に遭うなら止めたいと思うよ。楽な生き方の方が良いじゃん」 「それじゃ僕は独りになるじゃないか」 攻撃の手を止めずヴォルフラムは続ける。 「確かに波乱万丈な道行きだったけど、振り返れるようになると、そんな道も楽しかったって思うよ。波乱万丈じゃなかったら、カグちゃんと出会う事もなかったろうし」 ぶどうの蔓を引き千切った神から距離を取りヴォルフラムは続ける。 「貴方のやろうとしたことの根本までは否定しないよ。でも、やる事の規模が大きいからさ。1人で決めちゃうのって良くなかったんじゃないかな。つまり、ほうれんそうって大事だよねってことだよね」 「しょうがないじゃん。賛同してくれるの居なかったし」 「それは、あなたのせい」 ヴォルフラムの援護をしながらカグヤが指摘する。 「間違いを指摘してくれる人、は居たのよ。でも、あなたが自分でその人を自分の傍から排除してしまった。……覚えがないかしら? 言っても聞かないから、今の状況になってると言える」 そこまで言うと、ため息をつくように言った。 「前に、誰かにも言った気がするけど。自業自得よね」 「だよね」 カグヤに同意する様に、ヴォルフラムも言った。 「友達居ない、彼彼女もなし、仲間もいない。生きてて楽しいの?」 「君達が居れば、それだけで楽しいよ。だから手遅れになる前に殺すんだ」 その言葉に対する反論は空から落ちてきた。 「勝手なことを」 それは天空天駆で空中に駆け上がったイザークの一撃。 一気に急降下すると渾身の力で斬りかかった。 それまで地上からの攻撃に集中していた神は対応が遅れる。 イザークは神を斬りつけると、再び天空天駆で上空へ舞い上がり黒炎解放。 「汝冠するは氷精の王覇! 凍て尽くせ! ライム・ブルーム!」 膨れ上がった力を叩きつける。 神は迎撃しようとするが、地上の浄化師達の連続攻撃で対応しきれない。 斬り裂かれ身体を凍りつかされる。 「頑張るねぇ。そんなに死ぬのは嫌かい?」 殺し合いをしながらも、どこか親しげに問い掛ける神に、イザークは誇りを告げるように言った。 「私が今ここで戦うのは、私が歩んできた道のりを奪われないためだ」 それは彼が選び、あおいと共に歩んでいこうとする未来。 「これは私の選んできた道だ、痛みも責任も自分で負う」 誓うように宣言し攻撃を重ねていった。 繰り返される攻撃に使徒が援護に向かおうとするが、あおいが仲間と共に食い止める。 (1体ずつ、確実に) あおいは長丁場は覚悟した上で、隙を突かれないように仲間と連携し倒していった。 1人ではなく皆の力を合わせ、浄化師達は神に傷を重ねていく。 だが神は健在。 僅かな隙を見て大技を放つ。 しかしそれも次々防がれる。 至天の理を放とうとすれば、気付いたレオノルが皆を代表して珠結良之桜夜姫を召喚。 舞い散る霊桜の花弁が浄化師達を守る。 使徒創生で新たな使徒を生み出せば、その瞬間、召喚されたオーディンがワイルドハントを伴い使徒を粉砕。 さらに追加召喚されたナックラヴィーが毒霧で使徒を溶かし、脆くなったところを浄化師達が次々撃破していった。 「シキ、数が多いからって泣き言いうなよ」 「言いませんー! 言ったこともないでしょ!」 アルトナとシキは軽口を交わしながら使徒へと向かっていく。 前へ出るのはアルトナ。 疾風の如き勢いで踏み込むと斬撃を叩き込んでいく。 斬りつける毎に傷跡をつけてくるアルトナに、使徒は反撃するように突進。 それを後方に跳びながら躱すアルトナは、使徒を誘導する。 誘導された使徒に照準をつけるシキ。 深く息を吸い、ゆっくりと吐く。 それをトリガーに意識を狙撃に切り替えたシキは、自らの黒炎魔喰器テンペストに呼び掛けるように解号を口にした。 「星の導く先、護る」 シキに応えるようにテンペストは鳴動。黒炎を放出しシキを包むと、理性を持ったまま疑似べリアル化。 膨れ上がった戦力に特殊能力を乗せ、さらに自身のクリエイションを加え引き金を引く。 風が渦巻く。 それはテンペストの銃口の先に収束すると、圧縮された暴風は断熱圧縮効果により高温高圧化。 プラズマ弾頭と化した一撃が、アルトナの誘導した使徒を狙う。 シキのクリエイション【ネガイボシ】の効果は、敵1体に対し強力な射撃が可能になるというもの。 そこにテンペストの特殊能力である、大嵐のような鋭い一撃を敵1体に浴びせる効果が合わさり、常よりもはるかに強力な一撃となる。 一度撃てば、しばらくは同様の攻撃は叶わない。 外すことが出来ないその一撃を、シキは命中させた。 空に輝く星の如き煌めきと共に、シキの放った一撃は使徒の胴体を貫く。 コアの半分を溶かすように貫いた一撃は、使徒の機能の大半を奪い、その場に崩れるように倒れ込ませた。 だがそれでも最後のあがきとばかりに暴れようとした使徒を、アルトナはクリエイションを使い破壊する。 (これで仕留める) クリエイション【ナガレボシ】発動。 一度発動すればしばらくは再使用できなくなるが、一時的に自身の身体能力を大きく強化する。 手にした刃に魔力を込め、疾風迅雷の勢いで連続斬撃。 流れ星の如き閃きを刃に宿し、使徒のコアを斬り裂き破壊した。 「さっすがアルくん!」 「余計なことはいい。それより早く他のも倒すぞ」 少しばかり思い詰めたように応えるアルトナに、察したシキが返す。 「アル。ツェーザルさんのこと心配してる?」 「……なんでそう思う」 「アルがそんな顔してるときは……! って思った」 「別にしてない。放っておいたって死なないだろ」 「でも心配でしょ? アル、ツェーザルさんのこと大好きだし」 「……」 「だよねー! 大好きって合ってるでしょー?」 「……シキ。それもう一回言ったら二度と口聞かない。あとよそ見すんな」 「うわーん、からかっただけなのに塩対応……!」 「余計に悪いってことに気づけ」 戦いの中で2人は変わらず、いつものように言葉を交わし敵に立ち向かっていく。 共に手を取り合い戦う者は他にも。 「リーちゃん! 後ろは気にせず前に集中して! 絶対に守るから!」 「ありがとう」 マリーは信頼するように短く応え前に出て使徒を叩く。 魔法少女ステッキが変化した手甲を叩き付ける度、使徒の身体は罅割れ砕けていった。 それを見て脅威と判断した他の使徒が横手から突進しようとするが、そこにマリエルのシャドウバインドが放たれる。 動きが一瞬封じられた使徒の隙を逃さず、マリーがカウンターの拳打を撃ち込んでいく。 マリエルのシャドウバインドを邪魔と見た使徒が光線を放つが、そこにタロット・ウォールを展開したリントヴルムが前に立ち、自身を盾にしてマリエルを守る。 「リント!」 「大丈夫! マリーのお蔭で平気だよ!」 リントヴルムの言葉は強がりではない。 マリエルと命を共有していることで、今のリントヴルムの体力は跳ね上がっていた。 しかも今、ダヌにより時間経過と共に自動回復が行われている。 これにより、仮にマリエルがダメージを受けても自動回復が行われ、リントヴルムは通常なら一撃で死んでしまうような攻撃にすら耐えられる。 ダヌによる自動回復がある以上、非常に効率が良く相性の良いクリエイションになっていた。 マリーは対象ではないので直接恩恵は無いが、元々彼女とマリエルは2人で一人のカルタフィリス。 お互いの肉体を持っている今でもその繋がりはあるので、どちらかが生きていれば、もう1人も死ぬことは無い。 しかもリントヴルムが盾になって庇うので傷を受けることも少ない。 今回の戦いの中で耐久力という点で言えば、彼らはトップクラスになっていた。 だがそれでも油断することなくリントヴルムは戦いに挑み続ける。 (過保護はうちの母さんだけでお腹いっぱいなんだよね) 仲間と激戦を続ける神に一瞬視線を向け、リントヴルムは思う。 (それに、マリー達と和解できるのは今生だけの気がするんだ。彼女達は絶対に離さない) 愛する者達と生きていくために、リントヴルムは全力を振り絞っていった。 使徒達は完全に抑えられる。 援護のない神を追い詰めていった。 神へと突進しながらクォンタムは譲れぬ想いをぶつける。 「声を大にして言いたいのだ」 仲間の攻撃で動きが鈍った神にソードバニッシュ。 それを受け止めた神は、面白そうに言った。 「言いたいことがあるなら言ってごらんよ。死ぬ前にね!」 神に双剣を弾かれながらも、クォンタムは退くことなく前に出る。 「お前が私達を殺そうとする理由が気に入らない」 双剣を振るい抗いながら、クォンタムは己の意志を口にする。 「作り手の責任? そんなもの知るか。私たちは私たちが思う通りに生きたい、それだけだ。先に滅びしかないからと、殺されてたまるか!」 「悪徳に溺れて、苦しんで滅びるとしても?」 「だからなんだ!」 神から棍で打ち据えられながらも、クォンタムは譲らない。 「例え、悪と断じられても。私は、私の思ったように生きる」 「良いこと言うね」 クォンタムの言葉を継ぐように、メルキオスは神を斬りつけた。 これに神は反撃しながら興味深げに問い掛ける。 「悪でも良いわけ?」 「良いも悪いも、そういうものってだけさ」 神に打ち据えられながらも、不遜な笑みを崩さずメルキオスは言った。 「僕がいい奴だなんて思ってないよ。寧ろ僕は悪い奴だろうさ。ヒトの理で見ても、神の理で見てもね。同族を殺さなきゃ生を実感できないのだから」 自らの在り様をメルキオスは神に叩きつける。 「まぁ、でも生物しては間違ってないだろう? ヒトも、その他の動物も、他者を害してそれを糧にして生きるんだから。何物も害さず生きる生物なんて居るかい? そもそも――」 神に殺意を叩きつけながらメルキオスは問い掛ける。 「君がそういう風に創ったんじゃないの?」 「うん、そうだよ」 神は攻撃の手を緩めることなく応える。 「殺し奪い喰らい生きる。それを識ることは必要だよ。悪を知らずに生きる者は儚く脆い。そうならないよう、強く君達生物を創ったんだ。でもね、だからといって悪に溺れて自滅するなら本末転倒だ」 「それが間違いだというのなら! 正せば良い!」 神の言葉にクォンタムは抗い続ける。 「相棒がどうしようもない奴だとしても、解ってるならば、傍で間違った事をしそうなのを止めればいいだけだ。間違っているなら正しい道に戻せばいい。ただそれだけだ」 クォンタムの言葉を正しいというように、メルキオスは斬撃を繰り出しながら神に言った。 「君には、間違いを指摘してくれる友は居ないのかい? 寂しい生だね」 「独りでも在り続けられるから、神なんだけどね。ま、それじゃつまらないから君達を創ったけどさ」 神の言葉を笑うようにクォンタムは返す。 「寂しい生だったな、創造神よ。所謂、ボッチだな。生まれ変わったらもう少し周囲に目と耳を向けて生きると良い」 「だから死になよ」 強笑を浮かべメルキオスは続ける。 「君は間違えている。でも、だからこそ感謝だよ。致命的に間違えてくれてありがとう。お陰で僕は神を殺すという他の人が成しえない最高の愉悦を味わえるよ」 そう言うとメルキオスは後方に跳ぶ。 彼の動きに合わせて、クォンタムは自身のクリエイション【躰の記憶の森】を発動させた。 周囲一帯に、突如森が発生する。 それはクォンタムの記憶には無い、けれど五感が覚えている記憶の森。 木々の臭いは色濃く、捕えた神の動きと知覚を妨げる。 そこにメルキオスは一撃を食らわせた。 「血の花を咲かせなよ!」 メルキオスの一撃を、神は反応できない。 それは彼のクリエイション【血の花を咲かせ!】の効果。 盲点を突いたその一撃は、認識することが出来ずまともに食らう。 斬り裂かれ、飛び散る血が花弁のように広がる。 常人ならば致命へと繋がる一撃を受けて、神は笑っていた。 「迷いない殺気だね。ふふっ、好いね。殺る気が湧いて出るよ!」 歓喜と共に神は殺意を膨れ上がらせる。 そして今まで以上の力で、全てを殺すために動き出した。 自らが傷つく事などお構いなしに駆け回り、次々薙ぎ払っていく。 至天の理で全てを打ちのめし、使徒創生で創り上げた使徒達を仙術で多重強化。 そちらに人手が向かった僅かな隙を活かし仙術で回復。 回復すれば即座に戦場を駆けまわり、底抜けの体力でごり押しの攻撃。 神に傷を与えられないわけではない。 だが要所要所で回復される上に、一定間隔で使徒を次々生み出してくる。 持久戦に成り始める中、ダヌと陰陽師や魔女達だけでは回復が追い付かず、シャオマナを召喚。 全員の体力と魔力を回復させ全力で当たるも、神は変わらず健在だった。 (ヤベェ、このままじゃ) じわじわと押され始める戦況に、皆の盾役として動いていた和樹は焦りを覚える。 (もっと強力な攻撃を連続して叩き込まないと。ちまちまダメージを与えても回復される) 勝てない、とは思わない。 けれど今のままでは足らないという確信がある。 (俺の攻撃じゃ、致命傷は与えられねぇ。それが出来る人達の攻撃が通るよう、俺が盾にならないと) 焦る和樹の耳に聞こえて来るのは、戦闘音と姉である令花の声。 「右手から来ます!」 ルーナープロテクションを使い皆の援護をしながら、戦況を知らせるために声を張り上げる。 その声には和樹と同じく焦りが滲む。 だからこそ、その焦りを少しでも軽くするため、和樹は前に出て皆の盾になろうとする。 (俺の命に懸けても) 決死の覚悟で跳び出し、使徒の動きを止めるため盾を構える。そこに―― 「っだっっらあっ!」 狂犬の如き勢いで、和樹の見知った顔が使徒を横から殴りつけた。 「何してんだテメェ!」 「源!?」 源は殴りつけた使徒を放り捨て和樹に突進。胸倉を掴んで吠えた。 「テメェ! なに死にそうな目で敵に突っ込んでんだ! つか死ぬつもりだっただろうがテメェは!」 歯を剥き出しにして、敵なんぞ知らぬとばかりに言い切った。 「死ぬ気で守ろうとするのは好い! でも死ぬな! ぶん殴るぞ!」 そう言って殴る源。 「殴ってんじゃねぇか!」 「おう! むかつくなら殴り返して来い!」 そう言って源は涙目になりながら続ける。 「死んだら喧嘩も出来ねぇだろうが。死ぬな、バカ野郎」 源の必死の呼び掛けに和樹は息を飲む。 そして源に返そうとした時、使徒が突進して来ようとしたが―― 「馬鹿野郎。若けぇのの邪魔すんじゃねぇよ」 柳沢轟修が突進して来ようとした使徒を投げ飛ばした。 あっけにとられる2人に、轟修はギタリと笑みを浮かべ言った。 「男同士でイチャイチャしてねぇで、とっとと手伝え。あんまり遅ぇと、俺達で平らげちまうぞ」 不敵に笑い、使徒の群れに跳び込む。 あまりの豪胆さに和樹と源は思わず笑い。 お互い笑みを浮かべ戦いへと戻る。 「ありがとな、源」 和樹は礼を言い、自分が出来る最善を。そして絶対に生き残るという強い意志と共に戦いを続ける。 その中で和樹は濃厚な死の予感を嗅ぎ取った。 予感に従い視線を向ける。その先にはレオノル。そしてレオノルに狙いをつけた神。 (まずい!) 和樹は予感に従い全力ダッシュ。 その時には既にセシリアが動いている。 「星辰の輝きよ、その光を今ここに」 セシリアはレオノルからの連絡を受け、自身のクリエイションの準備に入っていた。 彼女のクリエイション【星辰の光】は、指定した相手のダメージを肩代わりすることが出来る。 既に神は疑似・全界弾頭の予備動作に入っている。レオノルの未来予知は、味方の誰かが大きく負傷する未来を見通すことが出来るが、自身の未来は予見できない。 この状況で、レオノルは誰かが大きなダメージを受ける未来を予見できなかった。それはつまり、彼女に強力な攻撃が向かうということ。 予測したレオノルは、八百万の神であるアウナスを召喚。 「弄り甲斐のある相手である」 召喚されたアウナスは、嬉々として神の疑似・全界弾頭に干渉し特殊効果を封印。 過去へと遡る能力を失った一撃は、ただの弾丸となってレオノルに向かう。 それより早く、セシリアの【星辰の光】が掛けられ、ダメージの肩代わりの準備が整う。しかし―― (駄目だ! 死んじまう!) それは一度死を経験したからか、和樹は死の気配を感じ取る。 セシリアの【星辰の光】により、確かにレオノルがダメージを受けることは避けられる。 けれど威力が大き過ぎるため、肩代わりするセシリアがただでは済まない。 (誰も、死なせねぇ!) 護る意志と死なせたくないという願い。それが合わさった時、和樹のクリエイションは創り上げられた。 レオノルが受けた疑似・全界弾頭のダメージを、セシリアが【星辰の光】で肩代わりした瞬間、和樹のクリエイション【死への反逆】が発動。 それは仲間の誰かが大きくダメージを受けた際に効果を発揮する。 魔力を消費して効果範囲に入るよう移動すると結界を形成。 結界範囲に居る仲間が受けたダメージを引き受ける。 引き受けたダメージは結界が中和。絶対防御ノ誓イと魑魅魍魎、そして慈愛天蓋が合わさったような結界は、ダメージを中和しきるまで展開を継続。 その間は動けない上に、魔力も体力もゴリゴリ削られる。 けれどその代り、決して死ぬことは無い。 みんなを護って絶対に生き延びる! その想いが形になったような能力だった。 幾らか時間をかけ中和しきった和樹は、傷は無いものの全身を襲う疲労感に崩れるように座り込む。 (ヤベェ、動けない……) 疲労困憊でへたり込んでいる所にカグヤが助けに来てくれる。 「回復する」 カグヤはクリエイション【布留の言】を使用する。 「ひとふたみよいつむななやここのたり、ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ」 それは死者蘇生をもたらすと言われた祝詞。 しかし今カグヤによりもたらされているのは絶対回復。 一度使用すれば再使用に時間が掛かるが、死んでさえいなければ全快させることのできる能力。 「ん、これで大丈夫」 「すげー! ありがとう!」 「どういたしまして」 カグヤは静かに返すとヴォルフラムの元に戻る。そして和樹も皆の盾になるべく走り出す。 それを見ていた令花は胸をなでおろすと当時に、ふがいない自分に焦る。 (私も、みんなの役に立たないと) 焦燥に促され、令花は自分のクリエイションを創り出そうとする。しかしイメージが固まらない。 (どうすれば――) 最善を求めるあまり何も形になってくれない。そんな彼女にマチ子が声を掛けた。 「どうしたの。貴女らしくないわよ」 「マチ子さんっ」 マチ子は笑顔を浮かべ言った。 「貴女、自分の本質を見失ってる顔をしてるわよ」 「私の、本質……?」 「ええ。策も良いけど貴女の本分は物書き。物語りなさいな。それがきっと、貴女の力になる」 その言葉が令花の迷いを晴らした。 「そう、ですよね。私は、物語を紡がないと」 そしてクリエイションを創り出し発動する。 「皆さんが勝利し創造神に思いが届く物語のハッピーエンドが私には見えます!」 それは世界を観測し、望む未来を認識することで、今この場にいる仲間全てを望む未来に近付ける。 それは願望の魔導書、叶花の能力と同系統の能力。 だからこそ数百年後の未来の欠片を、いま喚び寄せた。 「ママ」 「叶花!?」 令花が見たのは、20歳ほどに成長した叶花の姿。 本来なら数百年先の未来でなければ叶わない力と姿で、令花の傍に寄り添った。 「ママ、みんなの願いを叶えよう」 「ええ、叶えましょう」 2人は手を繋ぎ能力を接続。 より強い願望実現の力で皆の願いを叶えていく。 「素敵な【物語】ね」 マチ子の言葉に、にっこりと笑顔を浮かべる叶花だった。 皆の力が大きく強化され、神へと一斉にぶつける。 絶え間ない連続攻撃に神は耐えきれず後退。 そこに今まで能力を温存していた浄化師達が一斉に動いた。 「セラちゃん。護りをお願いします」 「ええ、大丈夫。護るわ」 クリエイションを発動するため、ヴィオラは能力の効果範囲に移動。 能力の準備に入るヴィオラを、セシリアはペンタクルシールドを展開し護る。 セシリアに護られながら、ヴィオラはクリエイション【死神の軛】を発動した。 タロットカードの死神を神に向け投げつけると、それは鎌を持った死神の姿となって顕現。 斬り裂くと同時に、神の疑似・全界弾頭を封印した。 それが【死神の軛】の能力。 集中を要するため術者はその場から動けず、攻撃を受けると封印は解かれる上に、使用中は魔力を消費し続ける。 だが今はダヌの加護のお蔭で、護られ続ける限り封印し続けることが出来るのだ。 切り札のひとつを失った神に浄化師達は連続攻撃。 飽和攻撃に対応しきれずダメージを受け神の動きが鈍る。 その隙を逃さず、イザークは天空天駆で急降下斬撃を吶喊。 隙を突いた絶好のタイミング。 だがそれすら神は反応し迎撃態勢を取る。しかし―― (望むところだ) イザークは恐れを見せず、さらに突撃の勢いを加速。 「相打ちを狙う気か!」 「言っただろう痛みも責任も自分で負うと」 覚悟と共に、イザークは神に三身撃。 素早く三連撃で斬り裂くと、神がカウンターで攻撃。 肋骨を砕きながら棍が叩きつけられる。 その激痛を無視し、イザークはスイッチヒッターを発動。 魔術により最適化された動きでカウンターを叩き込む。 しかもその一撃は、叶花の能力により会心の一撃になっている。 護りの薄い部分を斬り裂き大きくダメージを与えた。 その瞬間、イザークは自身のクリエイションを発動。 「惑わせる運命を、神の審判を。その意思で反転させろ」 神は仙術の内、回復に関わるものを封印された。 それがイザークのクリエイション【ドゥーム・リバース】。 発動までに封じる能力に応じて攻撃を重ねる必要があるが、一度発動すれば、少なくとも戦闘中に封印が解けることは無い。 仙術全てを封じるには当てる攻撃回数が多くなり過ぎるため無理だと判断したイザークは、回復を封印した。 「回復は封じた! あとは押し切るだけだ!」 イザークの呼び掛けに皆は攻撃に集中する。 斬られ焼かれ撃ち抜かれ、多種さまざまな攻撃を神は受け―― 「まだまだだね」 笑みを浮かべ至天の理を発動。 全員が衝撃を受け動きが止まった、僅かな瞬間。 それを逃すことなく、神は大規模仙術の準備に入る。 「混沌よ、在れ」 それは一手では発動できない大仙術。だからこそ―― 「発動させちゃダメだ!」 レオノルが全力で警告。 その声に込められた焦りに皆は全力で神を攻撃。 しかし神は防御に徹し詠唱を続ける。 「陰陽分かれ四象八卦に転じ」 仙術を構築しながら的確に逃げつつ術を完成させる。 「陣となり形を成せ、太極陣」 発動した瞬間、この場に居る全員の魔力と体力が消し飛んだ。 傷は無く、けれどその場に倒れ伏しそうになるほど消耗させられる。 「みんな頑張ったね。でも、これでお終い」 優しい声で神は皆に呼び掛けると、全員を殺すべく歩き出す。そこに―― 「いいえ……まだよ」 リチェルカーレは崩れ落ちそうになる自身を奮い立たせ、神と対峙する。 「そんなに頑張らなくてもいいんだよ。大丈夫。死ねばみんな苦しくは無くなるよ」 「そんなに、今の世界が嫌いなの?」 神の言葉に、リチェルカーレは自身の想いを込め返した。 「わたしはこの世界が好きよ。悲しいことも苦しいこともある。良いことばかりじゃない。でもだからこそ、わたしたちは人を想う大切さを知っている」 神に視線を真っ直ぐに向け、リチェルカーレは言い切った。 「神様。貴方の『愛』は自分の所有物に向けたものよ。生きている私たちへのものじゃない」 「別に所有物扱いをする気はないんだけどね。ただ、危なっかしくて見てられないだけだよ」 それは神の偽らざる本音。 けれど同時に、今を生きている者達だけを『視た』ものではない。 今だけでなく、未来と過去を。生きる時だけでなく、死んだ後のことを。 それは『生物』とはズレた視点。 だからこそリチェルカーレは、今を生きる生者として想いを告げた。 「神の力なんてなくていいの。助け合って補い合って、大切なひとと手を取り合って。そんな未来を紡ぐために、わたし達はここにいるの」 今とこれからを皆と生きていくために。 リチェルカーレはクリエイションを発動する。 「――」 歌を奏でる。 それはリチェルカーレを中心とした癒しの領域を発生させた。 彼女のクリエイション【世界樹の唄】は、自身の体力を大幅に削り移動も出来なくなる代わりに、領域に包み込んだ人物の体力と魔力を自動で回復し続ける。 それを見た神は呟く。 「……焼け石に水だね」 神の言う通り、いま体力と魔力を消耗した者はあまりにも多い。 しかもリチェルカーレ自身の体力が、もはや限界だ。 今にも倒れそうになりながら必死に歌を紡ぐ彼女の姿を痛ましげに見詰めながら、神は全てを終わらせるべく一撃を放ち―― 「させません、お父さま」 リチェルカーレの歌声に惹かれ集まった世界樹が防いだ。 「へ? なんでお前達がここに来てるの!?」 それはダヌを始めとした12本の原初の古木の化身達。 「この子の歌に惹かれたからです。お父さま」 なんじゃもんじゃが、リチェルカーレに微笑みながら言った。 それを聞いた神は、叶花と令花に視線を向け言った。 「魔導書のブーストか」 「それだけではありません。この子が紡いできた縁があったればこそです」 ダヌの言葉通り、世界樹たる原初の巨木が集えたのは、リチェルカーレの今までの行動が影響している。 これまで数多く指令をこなし多くのモノとの縁を繋いできた。 その中には原初の巨木達も含まれる。 叶花の能力を令花が強化することで願いが叶い易い領域が創られ。 リチェルカーレが繋いできた縁が彼女の唄を原初の巨木達に伝え。 応えるために集まった。 「さあ、歌いましょう」 煉界たるディスメソロジア。その自然を作り出した自然創生神。12の世界樹たる原初の巨木の化身達が、リチェルカーレと共に歌を響かせる。 それは命の唄。 神話ならざる命の物語を言祝ぐ旋律。 命の唄は皆を祝福し、体力と魔力を完全回復。その上で自動回復を付与した上で、基本能力を強化した。 焦った神は使徒創生を発動。 だがその瞬間、ラスが【天墜波歌】で3体創生されるのを防ぐ。 さらにアディティを召喚。 けらけらと笑いながら轟雷を降り注がせ、神と使徒を焼き払う。 それでも神は健在。使徒も、今まで生成され破壊を免れた物が一斉に襲いかかって来る。 その前に立ちはだかり、ラニは自身のクリエイション【天憎叫歌】を発動した。 「ガラクタ野郎ども!! さっさと堕ちろ!!」 それは天を憎む叫び。放たれるのは衝撃波ではなく単純なシャウト。 ラニの命を懸けた、憎しみの叫び。 それは使徒のみを傷つけ破壊していく。 さらに合わせて、シィラの禁術が放たれる。 2人の憎悪を乗せた魂の波濤は、一時的とはいえ全ての使徒の動きを止めた。 その隙を逃さず、皆は神に攻撃を集中する。 全力を振り絞る攻撃の中、ニコラは神に致命打を与えるために温存していたクリエイション【雷霆の帝】を発動した。 「世界中の人々よ聞いて欲しい」 それはマドールチェの魔術通信を利用した、世界中全ての人に向けた呼び掛け。 「我らを滅ぼそうとする神を今、我らが追い詰めている。だが倒すには貴方達の力も必要だ」 声が届いていく。そして聞き届けた皆の声が、この場に繋がっていく。 「貴方方の大切な誰かを護りたい想いを私達に貸して欲しい。どうか声援を」 一度使えば、少なくともこの戦いの中では2度と使えない能力。 それに皆は応えた。 ――がんばれ! その声は教団本部から。 今も地上の守りのために動いている教団員達。そしてアリエンス達の様な、人間以外の者達の声援。 その声援は、この場に居る皆の親しい者達の声も含まれている。 声援を通じ集まる力はニコラの元に向かい、皆を応援する声援自体が、皆の戦う意志に火を灯す。 独りではなく皆と共に。 それが皆の力になり前へ踏み出す勇気をくれる。 明日を望む意志の元、皆は神に向かった。だが―― ――止めろ! この場に向かった声は声援だけでは無かった。 ――神を殺すな! それは神を望む声。 全ての人々に声が繋がり、彼ら、あるいは彼女達の声もこの場に届いた。そして―― ――神よ! 救済を!! 人間は自由で。だからこそ、ひとつではない。 死の果ての安息を望む者もいる。 その全てを神は受け止め苦笑するように応えた。 「勘違いしちゃいけないよ。誰も、何だろうと、神であろうとも、誰かを救うことなんかできないんだ」 神は自らに縋る者達も含め、全ての生き物に応えた。 「救いは自分の中にしかないんだ。自分を救えるのは自分だけ。でも、そうだね」 救済を求める者達に、人化した神は、初めて己がクリエイションを創り出し発動した。 「希望の種を」 それはささやかな、けれどいつか芽吹くかもしれない希望の種子。 「君達はみんな、誰かを助けるために手を伸ばすことが出来るんだ。その時、その希望の種は芽吹くかもしれない。それは、君達自身次第だよ」 全てに、この場にいる者達も含め、それは与えられた。 そして神は、ネームレス・ワンは、ギタリと獰猛な笑みを浮かべ言った。 「さあ、決着をつけよう! 僕を殺すというのなら! 僕の代わりを君達自身で成し遂げなけりゃならない! 手を伸ばせ! 諦めるな! 実現してみせろ! それが出来ないなら、終わりのない安息を受け入れろ!」 全てを殺す殺意と共に、神は浄化師にぶつかって来た。 それに浄化師達は返す。 レオノルは神に宣言する。 「物理学に神も天地創造もいらない。光あれという言葉もいつか数式にしてみせる」 そして今この場に居る理由を、高らかに告げた。 「世界とか人々とか、そんな大仰な物のためじゃない。私はただ、自分のそばにいる人たちが笑顔になるためだけにここにいる!」 それは多くの皆の思いを代弁した言葉。 その想いを胸に、皆は全力をぶつける。 「今まで受けた全てを、お返しするよ!」 クリストフは温存していたクリエイション【反撃の陽光】を発動する それは今まで神と斬り結んだ際のエネルギーを剣身に蓄積し一度に放つ能力。 渾身の振り抜きと共に放たれた一撃は、まさしく太陽の如き煌めきを伴い神に命中。 周囲に地響きをさせるほどの威力を見せた。 ぐらりと神が揺らぐ。 そこに追撃を掛けようとした所で使徒達が一斉に突っ込んでくる。 その中で、あおいは祈りと共に己がクリエイション【紙華の炎】を発動した。 自らの人形、マヤを抱きしめ、あおいは祈りを捧げる。 (父と……母がくれた人形。ここにいないけれど、戦えるのは2人のおかげだ。私の道は、私だけの道ではない。過去に生きた人達も……きっとこの日に繋がる為に) 思い浮かぶのは、かつて教団本部で、亡くなった人々に造花と共に捧げた想い。 「今ならできる気がする、皆さん力を貸して下さい」 イザークと指切りをし、約束した誓いの言葉と共に能力を解放する。 「イーザ・イーザ・イーザ(共に・共に・共に)。儚く、激しく燃えた命の輝きを、再びこの地へ」 詠唱を完了させると同時に、空から幻の紙の花が降り落ちる。 それはゆっくりと燃え上がり、亡くなった者達の魂を一時喚び寄せた。 多くの、数えきれないほど多くの魂が、浄化師達と共に使徒に立ち向かう。 その助けを受け浄化師達が、クロートやセパルやウボーにセレナ達も力を合わせ粉砕していく。 神に助けは無い。 それでも神は暴れ浄化師達に反撃してくる。 傷を受ける浄化師達。それでも戦う意志は滾っている。 「まだ、だ――」 神の一撃を受け深く傷を受けたルーノは、それでも立ち上がる。 それに気付いたナツキは自らも負傷した腕を差し出す。 いまナツキは黄昏ストレッロを装備している。ルーノが吸血をする事で体力を回復できるのだ。 吸血をためらうルーノにナツキは笑顔を浮かべ促した。 「使えるものは使う、だろ?」 「……ああ」 ルーノはナツキと同じく不敵な笑みを浮かべ、血を吸う。 そして2人で神へと立ち向かう。 「いくぞ、ナツキ」 「おう!」 ナツキと共にルーノは走る。 (不思議と今は強敵にさえ立ちむかおうとさえ思える……ナツキの諦めの悪さがうつったか) 吹っ切れたような表情をみせるルーノ達に危険を感じたのか神は防御用の仙術を発動。 それをルーノのクリエイション【識神召喚・真龍】が食い破る。 (神の力でも使えるものは全て使って勝利をもぎ取る。ネームレス・ワン、私達の在り方を貴方に認めさせてみせる) ルーノが精神力を注いだ識神が召喚され、神の防御用仙術を食らい仲間への加護へと変換した。 さらに守りを固めるためエリニュスを召喚。 反射の加護を受ける中、ナツキが神の元に飛び込む。 幾つもの護りを纏ったナツキの突撃。 それを神は仙術で強引に破壊するとナツキに致命の一撃を加える。 しかしナツキは倒れない。 それが彼のクリエション【不壊の剣】。 絶対に倒れないという意志の元、致死の一撃だろうと立ち上がり、しかもこの場に居る仲間が多ければ多いほど、その一撃は強くなる。 「くっ!」 危機感を感じた神が防御障壁を出現させるが、その瞬間、ヘスティアの加護でナツキは黒炎付与される。 すでに黒炎の効果時間を使い果たしていたと油断した神は、跳ね上がったナツキの一撃を耐えきれない。 防御障壁ごと斬り裂かれる。 「がはっ!」 大きく傷を受けた神にベルロックが渾身の一撃を叩きつけるべく突撃。 (神だった奴は目の前にいるが、もしこの戦いの命運を決める神なんてものがいるなら……どうか手を貸さないで。決着は俺達の手で!) ベルロックが放つはクリエイション【想いの刃】。 対象に攻撃を命中させると、その対象に対する世界中の人々からの否定感情、反逆の意思を投影する。 それは投影イメージが強くなればなるほど威力を増すが、今ここではニコラの【雷霆の帝】により直接声が響いている。 ゆえにイメージはより強く、当たればただでは済まない。 それが分かっているのか神は仙術で逃げようとするが、デイムズが姉のラヴィの援護を受け、強化された魔眼で仙術を見切り叩き切る。 1人であればベルロックの一撃は届かなかっただろう。 しかし今ここには多くの仲間が居る。 「命には限りがある。だから皆必死で生きているんだ。今まで『どうせ転生させるから』と蔑ろにしてきた命の叫びを思い知れ!」 仲間の助けも借りた一撃が神を斬り裂く。 「ぅ……ぁ……」 もし神が人の想いなど、どうでも良いと思っていれば、その一撃はただ強力なだけで済んだだろう。 しかし神はそれだけに留まらず大きく力を減退させた。 そこにニコラが止めの一撃を叩き込む。 アネモイの力で神の目前に転移したニコラは、皆の全ての想いを込めた一撃を叩き込んだ。 とっさに防ごうとした神の守りの全てを斬り裂き【雷霆の帝】の一撃は神を切り殺した。 「やって、くれたね……これでもう、この世界の命運は君たち自身の手でどうにかしなくちゃいけなくなったよ」 さらさらと砂が崩れるように体を崩壊させながら、どこか心配そうに神は呟く。 そんな彼に浄化師は言った。 「神様さ、せっかく人間になったんだから、少し人間を学ぶといいんじゃないか?」 クリストフの言葉に目を細めるネームレス・ワンに、ヴィオラが続ける。 「神様。私達は出来の悪い子供かもしれません。でも、だからこそ面白いんだと思いませんか?」 「出来が悪いとは思ってないよ。僕を殺せたぐらいだからね。ただ心配なだけだよ」 「大丈夫。私達は、独りじゃないから」 ネームレス・ワンに返すカグヤに、ヴォルフラムが続けて言った。 「次に人に生まれ変わる時は、独りじゃなくて、今度は友達出来ると良いね」 「友達、ね……」 自嘲げな笑みを浮かべるネームレス・ワンに、キョウが言った。 「この間のお礼を言い忘れてました。花冠をありがとうございます。もういらないので捨てました」 「ん、なら――」 ネームレス・ワンが返すより早く、キョウは続ける。 「けど欲しいので今度は人となったあなたが作った花冠を下さい」 「……ははっ」 楽しげに笑い、ネームレス・ワンは応えた。 「いいよ。でも赤ん坊からやり直すから、しばらくは待ちなよ。それまでは、滅びちゃダメだよ」 この場に居る全員を見渡し、消え去りながらネームレス・ワンは言った。 そんな彼にエフドは返す。 「これからは、お前の望んだ、思い通りにならない結果を楽しめよ。なんなら、どういう形であれいつか返り咲いて戻って来い。それ見たことかってな」 エフドの言葉に楽しげに笑みを浮かべ、ネームレス・ワンは塵となって消え失せた。 神殺しを成し遂げる。 それは決着であり、しかし終わりではない。 「エフド、大仕事が終わっただけよ。私の本命はあくまであいつだから。付き合ってくれるわよね?」 ラファエラが言うように、それぞれの道は続いていく。 それは皆で勝ち獲ったもの。 神殺しを成し遂げ、皆は未来を掴んだのだった。
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*** 活躍者 *** |
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[69] ヴォルフラム・マカミ 2020/11/03-22:37 | ||
[68] ルーノ・クロード 2020/11/03-21:18 | ||
[67] ルーノ・クロード 2020/11/03-21:17 | ||
[66] リコリス・ラディアータ 2020/11/03-21:03
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[65] エフド・ジャーファル 2020/11/03-20:10
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[64] キョウ・ニムラサ 2020/11/03-19:55
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[63] シキ・ファイネン 2020/11/03-19:52 | ||
[62] レオノル・ペリエ 2020/11/03-19:19 | ||
[61] リコリス・ラディアータ 2020/11/03-19:03 | ||
[60] クリストフ・フォンシラー 2020/11/03-18:18 | ||
[59] エフド・ジャーファル 2020/11/03-17:53 | ||
[58] ニコラ・トロワ 2020/11/03-17:32 | ||
[57] リントヴルム・ガラクシア 2020/11/03-15:36 | ||
[56] 鈴理・あおい 2020/11/03-14:33 | ||
[55] ラニ・シェルロワ 2020/11/03-11:42 | ||
[54] リューイ・ウィンダリア 2020/11/03-11:35
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[53] ナツキ・ヤクト 2020/11/03-10:16
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[52] リューイ・ウィンダリア 2020/11/03-09:35
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[51] クリストフ・フォンシラー 2020/11/03-08:35
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[50] 桃山・令花 2020/11/03-02:55 | ||
[49] ルーノ・クロード 2020/11/03-02:10 | ||
[48] ルーノ・クロード 2020/11/03-02:08 | ||
[47] 桃山・令花 2020/11/03-02:08 | ||
[46] レオノル・ペリエ 2020/11/03-00:25
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[45] リューイ・ウィンダリア 2020/11/02-23:35 | ||
[44] ニコラ・トロワ 2020/11/02-23:22 | ||
[43] リチェルカーレ・リモージュ 2020/11/02-22:59 | ||
[42] リチェルカーレ・リモージュ 2020/11/02-22:57 | ||
[41] クリストフ・フォンシラー 2020/11/02-22:19 | ||
[40] ラニ・シェルロワ 2020/11/02-20:34
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[39] リューイ・ウィンダリア 2020/11/02-20:15
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[38] エフド・ジャーファル 2020/11/02-17:50
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[37] 桃山・令花 2020/11/02-17:42
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[36] ルーノ・クロード 2020/11/02-13:01 | ||
[35] リントヴルム・ガラクシア 2020/11/02-09:30 | ||
[34] 桃山・令花 2020/11/02-08:34 | ||
[33] クォンタム・クワトロシリカ 2020/11/02-01:06 | ||
[32] エフド・ジャーファル 2020/11/01-23:32
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[31] ニコラ・トロワ 2020/11/01-22:25 | ||
[30] サク・ニムラサ 2020/11/01-22:12
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[29] レオノル・ペリエ 2020/11/01-21:43 | ||
[28] リチェルカーレ・リモージュ 2020/11/01-20:28
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[27] リチェルカーレ・リモージュ 2020/11/01-20:15 | ||
[26] クリストフ・フォンシラー 2020/11/01-17:35
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[25] クリストフ・フォンシラー 2020/11/01-17:31 | ||
[24] リコリス・ラディアータ 2020/11/01-14:58 | ||
[23] ルーノ・クロード 2020/11/01-00:58 | ||
[22] 桃山・和樹 2020/10/31-23:13 | ||
[21] リューイ・ウィンダリア 2020/10/31-18:41 | ||
[20] 鈴理・あおい 2020/10/31-17:47 | ||
[19] リチェルカーレ・リモージュ 2020/10/31-08:36 | ||
[18] リチェルカーレ・リモージュ 2020/10/31-08:17 | ||
[17] シキ・ファイネン 2020/10/31-05:57 | ||
[16] ヴィオラ・ペール 2020/10/31-01:24
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[15] ヴィオラ・ペール 2020/10/31-01:06 | ||
[14] クリストフ・フォンシラー 2020/10/30-23:02 | ||
[13] レオノル・ペリエ 2020/10/30-21:27 | ||
[12] ルーノ・クロード 2020/10/30-01:31 | ||
[11] 桃山・和樹 2020/10/30-00:49
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[10] 桃山・和樹 2020/10/30-00:44 | ||
[9] 桃山・令花 2020/10/30-00:14 | ||
[8] クォンタム・クワトロシリカ 2020/10/29-23:51
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[7] リチェルカーレ・リモージュ 2020/10/29-23:29 | ||
[6] ヴィオラ・ペール 2020/10/29-22:50
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[5] ラニ・シェルロワ 2020/10/29-19:43 | ||
[4] クリストフ・フォンシラー 2020/10/29-00:28 | ||
[3] リコリス・ラディアータ 2020/10/28-22:53 | ||
[2] レオノル・ペリエ 2020/10/28-22:28 |