黒猫の唄
普通 | すべて
1/1名
黒猫の唄 情報
担当 春夏秋冬 GM
タイプ シチュエーションノベル
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 0 日
公開日 2020-11-30 00:00:00
出発日 0000-00-00 00:00:00
帰還日 2020-11-30



~ プロローグ ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ 解説 ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

スティレッタ・オンブラ バルダー・アーテル
女性 / ヴァンピール / 魔性憑き 男性 / 人間 / 断罪者
…つけてみたら、まさかこんなことしてたなんてね
全く、確かに調べてみなさいなっては言いはしたけども、ここまでするとは思いもしなかったわ
まあ今回ばかりはシロスケの愚直っぷりを読めなかった私の落度でもあるから責めはしないけど
何も言わないのね?私の過去を知っても

同情してくれるの?
そんなこと言われたの多分初めて

よく気ままに生きてる猫を見て羨ましいなんて言う人いるけど、猫には猫の苦労があるのよ
そもそも飼い主が優しいとは限らないしね
私達はそれと一緒
ライオンみたいに常に強くあり続けるのも辛いって知ってるつもりだけどね

バルダーと共に敵を退けた後、くたびれたような表情のバルダーに一言
無駄足だったんじゃないかしら?


~ リザルトノベル ~

「ここ、か……」
 うらぶれていながら、どこか喧騒を滲ませる場所に『バルダー・アーテル』は訪れていた。
「……ろくでもない街だな」
 ため息交じりに呟きながら、街へと踏み入る。
 入っただけで、どこか空気が変わるのが分かった。
 どろりと澱んでいながら、そのくせ妙な活気が感じられる。
 品定めするような視線が、どこからともなく投げかけられていた。
 それは警戒と、獲物を見詰めるような匂いが漂う。
 さりげなく視線を周囲に向ければ、まだ昼前だというのに酔いつぶれ道端に寝転がる年寄りや、扇情的な服装に身を包んだ女達。
(昼前だってのに、客の見定めか)
 かつて私設警護組織に所属していたバルダーとしては、荒事なら慣れているが、見た目に反して初心な所があるので、女に言い寄られるのは勘弁して欲しい所だ。
 こんな街など、すぐにでも離れたい所ではあるが、そうもいかない。
 彼の相棒である『スティレッタ・オンブラ』のことを知るためにも、この街を巡る必要があった。

 事の起こりは、スティレッタの過去について気になったことが始まり。
 スティレッタが『悪魔の女』と呼ばれていることを知り教団内の資料を探っていたのだが、調べきれなかったため、かつて彼女が保護されたという場所に訪れたのだ。

(さて、どこから調べるか)
 教団の資料では、街の名前は記されていたが、具体的にどこに住んでいたのかなどの詳細までは書かれていなかった。 
 ここから調べるのは苦労しそうだ。
 ため息ひとつ。
 どうせなら酒のひとつでも口にしたい所だが、それを堪え聞き込みに動く。
「よう、ちょっといいか?」
「あ~?」
 まずはダメ元で、道端で寝転がっている年寄りに声を掛ける。
「人を探してるんだ。知ってたら教えてくれないか?」
「あー、人? 人かぁ……ひひっ、なんだにぃちゃん、逃げた女でも探してんのか?」
 年寄りは酒でぼやけた視線を向けながらも、思ったよりも明瞭な声で返してきた。
「女はなぁ、追い駆けちゃダメだ。ひひっ、追い駆けさせねぇと。でねえと尻に敷かれちまうぞ」
「そんなんじゃねぇよ」
 げんなりしつつも、バルダーは尋ねる。
「スティレッタって女が、昔ここに居たって話だ。どこに住んでたか知らねぇか?」
「んぁ? なんだやっぱにぃちゃん、女探してんじゃねぇか。逃げられたんだろ、そうだろ」
「違ぇよ」
「ひひひっ、分かった分かった。そうだろそうだろ」
 何が楽しいのかケラケラと笑いながら、年寄りは彼なりに親身になって応えた。
「生憎と、俺は知らねぇけどよ、女のことは女に聞いた方が早ぇぜ。ほらほら、たちんぼのネエさん方に声かけてきなって」
「遠慮しとくよ」
 そう言ってバルダーは小銭を取り出し年寄りに握らせる。
「ありがとよ、爺さん。こいつで、俺が言えたこっちゃねぇが、酒以外の物を口にしな」
「ありがたいねぇ」
 喉の奥を鳴らすようにして年寄りは笑うと、よたよたとどこかに向かった。
(さて、撒き餌は終わったが、誰か引っかかるか?)
 バルダーが、わざわざ人の目に付くように金を掴ませたのは、周囲にちょっかいを出させるためだ。
 食いつき易い相手と思って突っかかって来たなら、それでよし。
 そこから手繰れば、何か分かるかもしれない。
 当てもなく聞きまわるよりはいいだろう。
 そう思って訊き込みをしていると、声を掛けられた。
「ねぇ、そこの、おにぃさん」
 ひきつりそうになる顔を無理やり押さえ、バルダーは声の主に体を向ける。
「なんだ?」
「人を探してるんだろう、アンタ」
 上目遣いで女が声を掛けて来る。
 コートを羽織っているが、その下は、今の時期は明らかに寒いだろうと言いたくなるような薄着姿。
(勘弁してくれ……)
 これなら荒事の方が良いと思いつつも、今の所スティレッタに繋がる情報は得られていないので話を聞く。
「俺が探してる女のことを知ってるのか?」
「知ってるよぅ。でも、ここで言うのはねぇ」
 女は甘えた声でしなだれかかってこようとする。
 ひょいっと女を避けながら、バルダーは返した。
「金か? 内容によっては、それなりに払う」
「ふふ、せっかちねぇ。知りたいなら、人目に付かない所に行きましょう」
 女の声は、変わらず甘い。
 けれどそれは、雌獅子が獲物を見つけた時の物と同じだと、バルダーは気付いている。とはいえ――
(こういうの、なんて言うんだっけか……欲しいものがあるならライオンの巣だろうと飛び込め……いや違うか。まぁ、このままじゃ埒が明かないしな)
「分かった。どこに行けば良い?」
 笑みを深めた女の後についていくと、人目から離れた路地裏に辿り着く。
「で、何を知ってんだ?」
 女に聞いていると、背後から数人の足音が聞こえてくる。
「……ま、こうなるか」
 ため息をつきながら、襲い掛かって来た男達をバルダーは叩きのめした。
「アンタ!」
 バルダーを嵌めようとした女が、叩きのめされた男達の1人に縋りつく。
「なにすんだい!」
 男を抱き寄せながら睨みつけてくる女に、うんざりした声でバルダーは言った。
「それはこっちの台詞だ。なんで俺を襲った」
 これに返したのは、新たに現れた男だった。
「そう責めないでくれ。アンタも悪いんだぜ。よりにもよって、あの女のことなんか聞いて回ってんだから」
「……誰だ、お前」
 バルダーが訊くと、二十歳そこそこに見える男は返す。
「ヘルシングってもんだ。ああ、そいつらの仲間じゃない。ただ、色々と揉め事を片付けることが多いだけでね」
「ヴァンのダンナ……」
 掠れた声で、女に抱き寄せられたままの男が名前を呼ぶ。
 するとヴァンと呼ばれた男は、手を振って去るように言った。
「ここは俺が預かる。怪我してるんだからさっさと治せ。ミオちゃんに心配かけんじゃねぇぞ」
 そう言うと、男達は静かに去って行く。
「……おい、勝手なことしてくれるな」
「まぁまぁ、にぃさん。この場を収める詫びと言っちゃなんだが、アンタが知りたがってたことを教えてやるよ」
「……どういうつもりだ?」
「心配しなさんな。こっちとしちゃ、これ以上余計に嗅ぎ回られて、無用な争いを起こさせたくないってだけだ」
 そう言うとヴァンは、にやりと笑う。
「まぁ、立ち話もなんだ。一杯やりながら話をしよう。いける口だろ?」
「……寝覚めの良い酒なら、な」
 手掛かりを知るらしいヴァンの後を付いて、バルダーは酒場に向かった。

 そこで手に入れた話を元に、バルダーは燃え尽きたまま放っておかれた古い教会の前に来ていた。

(ここにスティレッタが……)
 教会跡地を探りながら、バルダーは酒場で聞いた話を思い出していた。
(あの街の顔役の1人の愛人だった、か……)
 酒場でヴァンが話したことは、バルダーの想像を超えていた。

「この街の顔役の1人だったブラム・ストーカーが、アンタが探してる女を『住まわせていた』らしい。女が棺桶から見つかって、からの事らしいが」
「棺桶?」
 胡散臭げに聞き返すバルダーにヴァンは言ったのだ。
「そのまんまの意味さ。今じゃ燃えあとしか残ってない教会の下から掘り起こされたらしい。なんでそんなことをしたのかは、知らないけどね。棺桶に入ってた女は、一糸まとわぬ全裸だったってのに、スティレットを持ってたって話だ」
「スティレット、か……」
「何でそんなもんを握ってたのか、その辺は知らないがね。気になるなら場所を教えるから、行ってみたらどうだい?」

 そして今、バルダーは、そこに居る。

「……こいつか」 
 ヴァンに用意して貰ったスコップで地面を掘り起こしたバルダーは、棺桶を引っ張り出す。
(この中に居たってわけか。それにしても――)
「スティレットを持っていたからスティレッタ、か……」
「分かり易くて良いじゃない」
 背後から聞こえてきたスティレッタの声にバルダーは驚いて声を返す。
「!? スティレッタ、いつの間に!」
「……つけてみたら、まさかこんなことしてたなんてね」
 気だるげにスティレッタは言った。
「全く、確かに調べてみなさいなっては言いはしたけども、ここまでするとは思いもしなかったわ。まあ今回ばかりはシロスケの愚直っぷりを読めなかった私の落度でもあるから責めはしないけど」
「調べてみろって言ったのはお前だろうが!」
「そうね……で、感想は?」
「別に。お前の名前の由来が知れたってだけだ」
 平然と言うバルダーに、スティレッタは少しだけ惚けた顔をすると、普段と変わらぬ表情になって言った。
「何も言わないのね? 私の過去を知っても」
「お前がどんな生き方をしようが知ったことじゃない」
 ハッキリとバルダーは言い切ると、どこか気遣うように続ける。
「こんな世界を最初に見たんじゃ、大変だったろう」
「同情してくれるの? そんなこと言われたの多分初めて」
 くすくす笑い、スティレッタは続ける。
「よく気ままに生きてる猫を見て羨ましいなんて言う人いるけど、猫には猫の苦労があるのよ。そもそも飼い主が優しいとは限らないしね。私達はそれと一緒。ライオンみたいに常に強くあり続けるのも辛いって知ってるつもりだけどね」
「……猫には猫の苦労が、ね……」
 どこか心の柔らかな部分を話しているように感じたバルダーは、話を逸らすように続けて言った。
「そういえば、棺桶の中に入っていた時の記憶はあるのか?」
「棺桶の中から見つかったっていう記憶はあるわ」
 2人は話しながら、位置取りをする。
 それは不審な気配を感じたからだ。
 気配の主たちは、殺気を漲らせ襲い掛かってくる。しかし――
「ベリアルとかに比べりゃ、どうってこたねぇな」
 瞬く間に全員を叩きのめす。
「なんだ、お前ら」
 バルダーが訊くと、男達は憎々しげに言った。
「そいつのせいでボスは死んだんだ。悪魔の女め!」
「なに言ってんだ……」
 呆れたようにバルダーは、ため息をつく。
 スティレッタが教団に保護される直前、男達のボスであるブラムは死んだらしいが、それで襲い掛かって来るのはお門違いだ。
「そら自業自得だ。何でもかんでもヴァンピールのせいにするんじゃねぇ!」
 全員を改めて叩きのめし逃げ帰らせると、焼け跡の教会をぼんやりと見詰めながらスティレッタは言った。
「無駄足だったんじゃないかしら?」
「……」
 とこか自嘲を込めて呟くスティレッタに、バルダーは無言で黒猫のぬいぐるみを取り出し渡す。
 それはバルダーがヴァンから話を聞いたあと、それを頼りに聞いて回り、幾つかの情報と共に手に入れたもの。
 ぬいぐるみは、ところどころほつれてボロボロになっていたが、スティレッタは大事そうに受け取った。
「それには愛着あるんじゃないか? 大事なものが見つかったからいいだろ」
「……」
 無言でぬいぐるみを抱きしめるスティレッタに、バルダーは言った。
「それに、棺桶に手がかりがある気がしてな……後で教団に持ってって解析を誰かに頼むとするか……」
 バルダーの言葉を、受け止めるように静かに聞くスティレッタだった。


黒猫の唄
(執筆:春夏秋冬 GM)



*** 活躍者 ***


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