明日への輪舞曲(ロンド)
普通 | すべて
3/3名
明日への輪舞曲(ロンド) 情報
担当 春夏秋冬 GM
タイプ シチュエーションノベル
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 なし
相談期間 0 日
公開日 2021-02-04 00:00:00
出発日 0000-00-00 00:00:00
帰還日 2021-02-04



~ プロローグ ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ 解説 ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
ダヌ様にお礼とお見舞いを
折角だから 久しぶりに皆でゆっくりできるといいな
エルリアさんやお姫様 ヴァーミリオンさんとも仲良くなれると嬉しい

まずはダヌ様へご挨拶
あの時はありがとうございました 
おの、お加減は…?
お元気そうな様子がわかれば 良かった、とほっと息を吐いて
皆で新年祭もかねて パーティをしようと思うんです
ご一緒にいかがですか?

楽しく食事をした後 ヴァーミリオンさんが取り出したチェロに目を輝かせ
軽やかな音楽に レオノル先生を誘ってダンス
シアちゃんも踊りましょう?楽しいわ
友人の手を取って3人でくるくると
入ってきたルシオさんと姫様に笑顔
ちらりと見えた 目を眇めたシリウスの横顔が優しくてどきり
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
ダヌ様、お怪我は大丈夫、だったでしょうか
傷はもう、癒えたんでしょうか…

お元気そうな様子にホッと一安心
いつも見守って下さって、ありがとうございます
今日は、お礼を兼ねて、おもてなし、させていただきます

みんなと一緒にお茶会の準備
姉様や姫様、ヴァーミリオンさん始めオクトの皆さん、魔女さん達
皆さんもお元気そうで良かった…

かき鳴らされる音楽
リチェちゃんとレオノル先生に引っ張られて見よう見まねで踊る
こんな風に踊るの初めてで楽しくて少し笑顔
クリスに手を取られてくるりと回され驚いて目を瞠って
でも嬉しい…たぶん、顔赤くなってる気が、します

クリスが少し離れた時に姉様の方へ
姉様も、ヴァーミリオンさんと、踊ったら……?
ショーン・ハイド レオノル・ペリエ
男性 / アンデッド / 悪魔祓い 女性 / エレメンツ / 狂信者
ダヌ様の様子を、か……あの時はだいぶ創造神に狙われたしな……。神とはいえ、傷は回復されただろうか?
るんるんのドクターを見て小さく笑み。そんな跳ねてこけないで下さいねー?
ダヌ様達とキャッキャとはしゃぐドクターを見ていてこちらも一安心。ヴァーミリオンとよかったなと顔を見合わす。
音楽が始まり嬉しそうに踊る女性陣をぼうっと見ていたら、ドクターとふと目があっ……
次の瞬間強烈なタックルが。
踊りに誘うのに相手にタックルをかまされるなんて後にも先にも俺だけじゃなかろうか???
…まぁ、いつもの日々が戻ってきてくれた証拠か。
こらそこヴァーミリオン、茶化すな!


~ リザルトノベル ~

 親しい皆を前に『リチェルカーレ・リモージュ』は提案した。
「ダヌ様にお礼とお見舞いをしに行こうと思うんです」
「好いね、行こう!」
 真っ先に返したのは『レオノル・ペリエ』。
 今にも踊り出しそうな弾んだ声で賛成する。
「楽しみだね!」
 これに『アリシア・ムーンライト』も笑顔で頷く。
「良いと、思います。ダヌ様、賑やかなことが、お好きなようですし。お茶会とかも、喜ばれるかも」
「好いね! お菓子いっぱい持って行くよ!」
「それなら、手作りのお菓子を作りませんか?」
 リチェルカーレの提案に、レオノルとアリシアは笑顔を浮かべ応えていく。

 そんな女性陣の賑やかさに、パートナーである男性陣も笑みを浮かべていた。

「みんな楽しそうで好いね」
「……そうだな」
 静かな声で『シリウス・セイアッド』は『クリストフ・フォンシラー』に応える。
 シリウスの眼差しはリチェルカーレに向かい、いつもよりも柔らかい。
(多少は、余裕が出来ているみたいだな)
 シリウスの様子に『ショーン・ハイド』は気付かれないように苦笑する。
 少し前、創造神との戦いで負った傷で寝込んでいたシリウスの世話をしてあげたショーンとしては、今のシリウスの様子は好ましい。
 だからリチェルカーレの提案も巧くいくと良いと思っていた。
(ダヌ様の様子を、か……あの時はだいぶ創造神に狙われたしな……。神とはいえ、傷は回復されただろうか?)
 創造神との戦いの際、浄化師達に助力していたダヌは、化身とはいえ上半身の右半分近くが吹き飛ばされていた。
 戦いの後も平然としていたのだが、気になっていたリチェルカーレは、お礼も兼ねてお見舞いに行こうと皆に提案したのだ。
 リチェルカーレたち女性陣の話を聞いていたクリストフが、ショーンとシリウスに言った。
「ダヌ様へのお見舞いについてはアリシア達に任せるとして、俺達は室長――じゃなかった、ヨセフ教皇に許可を貰いに行こうか」
 言い間違いを訂正しつつクリストフは提案する。
 ヨセフは創造神との戦いの後、各国の王とアークソサエティの貴族連合の支持により教皇となっているのだが、今も変わらず教団本部の室長室で執務を行っていた。
 彼に言わせると『実務に都合が良い』ということらしい。
 そもそもがヨセフに言わせると、教皇といっても実務面での権限を得ただけで雇われ社長のようなもの、ということらしい。
「ヨセフ教皇なら、今の時間帯なら室長室に居るだろう。なんなら俺が許可を貰いに行くが」
 ショーンの提案にクリストフが返す。
「それなら俺も付いて行くよ。シリウスはどうする? リチェちゃん達の話に加わるかい?」
「……いや、いい。俺も付いて行く」
 見ている分には好ましいと思ってはいても、そこに混ざるのは無理というように、シリウスは室長室に向かおうとする。
 そんなシリウスを見て、ショーンとクリストフは苦笑するように顔を見合わせた。

 その後、話をつけに室長室に向かうとヨセフは快く許可を出し、ついでとばかりに頼んできた。

「トゥーレに行くのなら船を用意しよう。転移方舟で行っても良いが、それだと物資は運べんからな。ダヌに会いに行くというのなら、バレンタイン家から彼女への捧げものとして物資を受け取っている。それを送り届ける特使として向かってくれ。それに――」
 少しばかり悪戯めいた表情でヨセフは言葉の最後を潜めると、トゥーレに向かう御膳立てを整えてくれた。

 次の日の早朝、皆は魔導蒸気船ホープ・スワローに乗ってトゥーレに向かっている。

「シリウス、見て。陸から随分と離れたのに、カモメが飛んでるわ」
「ああ、そうだな」
 船と並走する様に飛ぶカモメを見て弾んだ声を上げるリチェルカーレに、シリウスは苦笑するように応えた。
 今リチェルカーレも含め皆は甲板に居る。
 船内で皆で楽しく朝食を取った後、気分転換に甲板を歩いているのだ。
「リチェ、あまり覗き込むと危ない」
 船のへりから海面を覗き込んでいたリチェルカーレに、シリウスは近付きながら言った。
「もう、大丈夫よ。子供じゃないんだから」
 笑みを浮かべながら軽く拗ねたようにリチェルカーレは言うと、感慨深げに眼を細めた。
「リチェ?」
 不思議に思ったシリウスが呼び掛けると、リチェルカーレは静かな声で応えた。
「初めてこの船に乗った時とは違うなって思ったの」
「……ああ、そうだな」
 戦いのために造られた船で、今は穏やかに運ばれている。
(日常、か……)
 今はこれまでとは違うのだと、おぼろげにだがシリウスは感じていた。

 日常に包まれているのは、アリシアも同じだった。

「船旅も、良いものですね」
 穏やかな時をクリストフと過ごしながら、アリシアは呟く。
 それにクリストフは応えた。
「そうだね。エルリアや、母さんや父さんと一緒に、いつか家族旅行で巡る時に乗っても良いかもしれないね」
「家族旅行、ですか?」
 思ってもいなかった、というようにアリシアは聞き返す。
 くすりと笑いながらクリストフは言った。
「うん。いつになるかは分からないけど、それも良いかもしれないって思ってね。みんな喜ぶんじゃないかな?」
「……そう、ですね。はい、喜ばれると、思います。とても、素敵です」
 少し前、エルリアと共にクリストフの両親に会いに行った時のことを思い出しながら、アリシアは夢見るように呟く。
「いつか、そう出来れば、良いです」
 嬉しそうなアリシアに、くすりとクリストフは笑みを浮かべると悪戯っぽく続けた。
「そうだね。でもその前に、2人っきりでしないとね」
「え?」
「新婚旅行。船旅も良いと思わない?」
「ぁ……」
 恥ずかしげに頬を染めるアリシアを、楽しげに見詰めるクリストフだった。

 ひとときの日常を皆は過ごす。
 それはレオノルも変わらなかった。

「ダヌ様、お元気かなぁ?」
 ショーンと一緒に甲板を散歩しながらレオノルは言った。
「神様とはいえ怪我を負ったら辛いと思うんだ」
「ええ、確かに」
 レオノルの歩幅に合せながらショーンは応える。
「戦いが終わった後も平然とされていましたが、それだけでは分かりません。会いに行くにはちょうど良い機会だと思います」
「うん、そうだね」
 レオノルは静かに頷くと、沈みかけた気持ちを盛り上げるように明るい声を上げる。
「でも、みんなが会いに行ったらきっと元気になって貰えると思うんだ。お菓子も一杯、用意しているしね」
 そういって彼女は手にしたバスケットをショーンに見えるように掲げてみせる。
 中にはリチェルカーレとアリシアと一緒に作ったお菓子が入っていた。
 明るい声のレオノルに、ショーンも合わせるように茶目っ気のある声で言った。
「ドクター。ダヌ様に逢いに行くのは、お菓子が目当てなんじゃないですか?」
「お、お菓子は楽しみだけどさぁ……違うんだって」
 ギクリ、とするように、僅かに視線を逸らして応えるレオノル。
 そんな彼女にショーンは苦笑する。
 彼の穏やかな表情に、レオノルも苦笑する様に笑みを浮かべ、視線を合わせながら続けた。
「ふふふ……でも楽しみなんだよねー。だってこんな風にしてみんなでお茶会なんて、とっても久しぶりな気がしてさ」
「そう……ですね」
 ショーンは感慨深げに頷くと続けて言った。
「これからは、いつでもできますよ」
「……うん」
 ショーンと寄り添うようにしてレオノルは頷いた。

 船旅は進み、お昼前にはトゥーレに辿り着く。
 以前、島の設備の手伝いで訪れた時よりも整備された港に接岸し、船の揺れが収まった所で下船することに。
「到着ー! さあ、ダヌ様に会いに行こう!」
 るんるん気分で小躍りするようなステップで降りようとするレオノルに、ショーンは微笑ましげに小さく笑みを浮かべ声を掛ける。
「そんな跳ねてこけないで下さいねー?」
「大丈夫だって、うわわっ」
「ドクター!?」
 船が急に揺れて少しバランスを崩したレオノルを、慌てて支えに行くショーン。
「ありがとう、ショーン」
 くすりと笑みを浮かべながら礼を言うレオノルに、軽くため息をつきながら安堵するショーン。
 2人の様子に皆は微笑ましげな笑みを浮かべながら降りて行くと、嬉しそうな声で出迎えられた。
「シアお姉ちゃん!」
「姫さま?」
 桟橋に小走りで駆け寄って来たトゥール王国王女メアリーに、アリシアは驚いたように返す。
「迎えに来て、くれたんですか?」
「うん! お姉ちゃんと、みんなで来たの」
 視線をメアリーの後ろに向ければ、エルリアやヴァーミリオン、そしてルシオとカミラが迎えに来てくれていた。
「いらっしゃい、シア。皆さんも、よく御出で下さいました」
 エルリアが皆を改めて迎え入れる。
 姉の出迎えにアリシアが嬉しさを感じていると、メアリーの視線に気づく。
 期待するような眼差しで、他のメンバーを見詰めていた。
 くすりとアリシアは小さく笑うと、メアリーに皆を紹介する。
「姫さま。リチェちゃんと、レオノル先生です」
 アリシアの紹介に合せ、2人は挨拶する。
「リチェルカーレと言います、姫さま。リチェと呼んでください」
「私はレオノルだよ。姫さま、よろしくね」
 2人に挨拶され、はにかむように笑顔を浮かべ、メアリーは応えた。
「リチェお姉ちゃんと、レオノル、先生?」
 少し不思議そうに首を傾げるメアリーに、アリシアは応える。
「レオノル先生は、色々なことを知っている、先生なんです」
「先生は、先生なの? なら、算数とかも、知ってるの?」
 じっと見上げてくるメアリーに、レオノルは笑顔で応える。
「うん。専攻は物理学だからね。姫さまは、算数は好きかな?」
「嫌いじゃないけど……難しいの」
 恥ずかしそうにもじもじしながらメアリーは言った。
「難しいから、覚えられなくて……」
「覚えるのも大事だけれど、算数で大切なのは気付きなんだ」
 レオノルは優しい声で言った。
「算数は沢山の気付きに溢れてるんだ。それに気付くことが出来たら、もっともっと楽しくなれる。もし良かったら、その気付きの手伝いならしてあげられるよ」
「そいつは良い」
 レオノルの言葉に返したのはヴァーミリオンだった。
「嬢ちゃんが姫さまに勉強を教えてくれるなら、姫さまは勉強が捗る。俺はショーンと酒が飲める。一挙両得だな」
「……おい」
 呆れたように突っ込むショーンに楽しげな笑みを浮かべるヴァーミリオン。
 2人のやり取りにレオノルとメアリーは、お互いを見合わせ笑い合う。
 そしてメアリーは言った。
「算数、教えてくれますか?」
「うん。分からない所があったら教えてあげるよ」
 レオノルの応えに、メアリーは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
 和気藹々とした空気が漂う中、シリウスにルシオが声を掛ける。
「よく来たね、シリウス。疲れてないかい? 荷物があったら持つよ」
「大丈夫だ」
 気安い声で返すシリウスに、隣りに居たクリストフが少し驚く。
(シリウス、彼が相手なら、人見知りせずに話せるんだ)
 物珍しげに見ていると、ルシオに声を掛けられる。
「クリストフさん、ですね? いつもシリウスがお世話になってます」
 親しげに呼び掛けるルシオに、クリストフも柔らかな声で返す。
「クリスって呼んで良いよ。シリウスとは、お互い助け合ってるよ。彼女は、カミラちゃん、だよね?
「……」
 ルシオの背中を護るようにしていたカミラに声を掛けると、すぐには応えが返ってこない。
 拒絶しているというよりは、どう返せばいいか悩んでいるようだった。
 どこかシリウスに似た彼女に、クリストフが苦笑を堪えていると静かな声が返ってくる。
「……カミラだ……よろしく頼む」
 不器用な彼女の応えに、クリストフは笑みで応えた。

 ひと通り出迎えが終わると港の少し先に向かう。
 そこには一台の魔導蒸気バスがあった。

「これに乗って、ダヌさまに会いに行けるんだよ」
 嬉しそうに言うメアリー。
 話を聞くと、島の全周を巡るバスを運用しており、今回は特別に貴賓用の物を用意してくれたとのことだった。
 それに乗ってダヌの祀られている森へ向かう。
 道中、皆で楽しくお喋りをしている内に辿り着き、バスから降りてダヌの元へと辿り着いた。

「お久しぶりです、ダヌ様」
 ダヌに会い、リチェルカーレは礼を告げた。
「あの時はありがとうございました」
「気にしないで良いのよ。貴女達のお蔭で、今があるんだから」
 おっとりとした声で返すダヌは、あの時とは違い体が欠けた様子は無い。
 とはいえ見た目だけで量ることは出来ないので皆は尋ねる。
「おの、お加減は……?」
 リチェルカーレが心配そうに訊くと、アリシアも同じように声を掛ける。
「ダヌ様、お怪我は大丈夫、だったでしょうか。傷はもう、癒えたんでしょうか……」
 これにダヌは笑顔で応える。
「ありがとう。大丈夫よ。少し寝たら、すっかり良くなったわ」
 ダヌの笑顔に皆はほっとする。
「良かった」
 リチェルカーレは安堵するように息をつき、同じように安心したアリシアはダヌに言った。
「いつも見守って下さって、ありがとうございます。今日は、お礼を兼ねて、おもてなし、させていただきます」
 そう言うとリチェルカーレに視線を合わせる。
 リチェルカーレは笑顔を浮かべ頷くと、今日訪れた目的を告げた。
「皆で新年祭もかねて、パーティをしようと思うんです」
 周囲の広々とした公園を示し続ける。
「ここなら小さなガーデンパーティーも開けると思うんです。ご一緒にいかがですか?」
「嬉しいわ。みんなでお祭りね」
 にこにこ笑顔のダヌに、皆も笑顔を浮かべる。
 するとダヌは、茶目っ気のある声で続けた。
「なら準備をしなきゃダメね。貴方達はお客さまだから、準備が整うまでお茶をしておきましょう」
 そう言うと、ぽんっという音と共にドーム状のテントが現れる。
「さあ、どうぞ」
 ダヌに招かれるも戸惑っていると、ヴァーミリオンがショーンの肩に腕を回し引っ張っていく。
「ダヌ様のご招待だ。ありがたく招かれようぜ」
「……お前、何か知ってるだろ」
「秘密だ。それよりお茶しようぜ。なぁ、嬢ちゃん」
 レオノルを誘うと、笑顔で頷く。
「もちろん! ダヌ様、お茶しましょー! たくさんお菓子も持ってきましたよ!」
「あら嬉しい」
 笑顔のダヌと一緒に中に入り、皆も続いていく。
 中に入り、リチェルカーレは歓声を上げる。
「わぁ――絵本の中みたい」
 天幕の中は陽光で明るく、見事に編み上げられた絨毯が広々と敷かれている。魔法で中の空間が拡張されているのか、全員が入っても余裕があった。
 内装は座り心地の好さそうなクッションや素朴な味わいのテーブルなどが用意され、外とは違い温かい。
 目を輝かせるリチェルカーレに、シリウスは苦笑する。
「……子どもだと言うと怒るくせに……」
 小さく呟くが、楽しそうな様子に無自覚に表情が和らいでいた。
「さぁ、お茶にしましょう」
 ダヌに呼び掛けられ、皆はティータイム。
「ダヌ様、お菓子どうぞ」
 早速レオノルは、持って来ていたバスケットからみんなで作った手作りクッキーを取り出す。
「かわいいー! お姉ちゃん達が作ったの?」
 ネコの形のクッキーを手に取ったメアリーが歓声をあげると、アリシアが微笑ましげに見詰めながら応える。
「動物の、形をしたものは、私とレオノル先生で。お花の形のものは、リチェちゃんが作ったんです」
「これもあれも全部お姉ちゃん達が作ったの!?」
 目を輝かせるメアリーに、リチェルカーレはは応える。
「姫さまも、今度は一緒に作ってみますか?」
「いいの!? うん!」
 満面の笑顔でメアリーは言うと、クッキーを食べる。
「美味しい!」
 嬉しそうな笑顔に、皆の表情は緩んだ。

 そして楽しくお茶をしていると、外で人の気配が。
 同時に作業音。
 不思議に思っていると、やがて心地好い音色が聞こえてきた。

「準備が出来たみたいですね」
 ルシオは席を立つと、皆を外に招く。
 外に出るとそこでは、妖精楽団が音楽を奏でていた。
「アリバさん!」
 リチェルカーレが驚いて声を上げると、アリバは応えた。
「ヨセフ教皇に頼まれてねぇ」
 話を聞くと、ヨセフが手配したらしい。
 アリバは本来、浄化師一組以上と一緒でなければ外に出られないが、リチェルカーレ達を担当浄化師ということにして手続きをしてくれたようだ。
「ダヌ様の祭なら、ぼく達妖精が馳せ参じないと。なにより、きみたちに少しでも恩返しが出来るチャンスだからねぇ」
 今日、この場に居る皆は、アリバが消滅しかけたあの時に関わっている。
 その時を思い出し、そして今の彼を見て、皆は喜びを浮かべた。

 そして祭りが始まる。
 妖精達は、魔法も使い音楽を奏でていく。
 それは寒い冬から、命の芽吹きである春を喜ぶような明るい曲。
 楽しげな旋律が広がる中、美味しそうな料理も並べられる。
 島民でもある魔女達が、魔法でテーブルを設置すると、良い匂いの料理が載った皿を、ふわりと浮かべテーブルに置く。
「さぁ、楽しみましょう」
 ダヌの呼び掛けで、皆はお祭りを満喫していく。
「リチェちゃん、このマリネ、美味しいです」
 色とりどりの野菜と果物で出来たマリネを小皿に乗せて、アリシアは勧める。
 リチェルカーレも食べてみると笑顔が浮かぶ。
「美味しい。さっぱりしてて、幾らでも食べられちゃいそう」
「こっちのエビの料理も美味しいよ」
 レオノルも加わり、料理談義。
 そんな彼女達の様子を離れて見ているのはシリウス。
 人の多い場所を避け、なるべく目立たないようにしていたが――
「シリウス、食べてる?」
 彼の様子に気づいたクリストフが声を掛けた。
「お茶会の時も何も食べてないし、何か食べなきゃ」
 そう言って美味しそうな料理をきれいに盛り付けた皿を差し出す。
「いや、俺は――」
「食べておけよ、シリウス」
 シリウスの言葉を遮り、ショーンも大盛りの皿を持って言った。
「怪我は回復してるかもしれないが、体力までは違うだろう。食べないと大きくなれないぞ」
「……もう、子供じゃない」
 山盛りのお皿に遠い目をした後、どこか拗ねるようにシリウスが言うと――
「子供じゃないなら、食べれるだろ? シリウス」
 にこやかな笑みを浮かべたルシオが近付き、蒸し鶏を刺したフォークを差し出す。
「はい、あーん」
「……」 
 軽くため息をつくように、そして断りきれず、無言で食べるシリウスだった。

 そうして食事を楽しみ終る頃、妖精楽団の曲調が変わる。
 より軽快でアップテンポな物に代わり、それを聞いていたヴァーミリオンが笑みを浮かべながら言った。

「そろそろ、俺も加わらせて貰うとするか」
 そう言って、口寄せ魔方陣でチェロを取り出す。
 取り出されたチェロを見て目を輝かせるリチェルカーレに、ヴァーミリオンは笑顔を浮かべ言った。
「嬢ちゃん、どんな曲が好きだ?」
 これにリチェルカーレは笑顔のまま応える。
「みんなで楽しくなれるような曲が好いです」
「お、好いね。じゃ、こんなのはどうだ?」
 そう言うとヴァーミリオンは、妖精楽団の曲に合わせながら、途中からリズムカルで弾んだ音を響かせていく。
「昔、冒険者が集まる酒場で、こういうのを弾いたもんだ。あいつら酒を飲みながらグラスを打ち合い、よく踊ってたぜ」
「素敵。レオノル先生、踊りませんか? シアちゃんも踊りましょう? 楽しいわ」
「好いね! 踊ろう!」
「はい」
 誘われたレオノルは笑顔を浮かべ、アリシアは少し恥ずかしそうにして、リチェルカーレとダンスを楽しむ。
 彼女達のダンスを盛り上げるように、妖精楽団もヴァーミリオンの演奏に合わせ軽快な音を響かせる。
 曲に合わせ、3人は友人の手を取ってくるくる踊っていく。
 楽しげな様子に、メアリー達が走り寄る。
「お姉ちゃん、私も一緒に踊って良い?」
 メアリーが期待感に目を輝かせ、彼女を保護者のように連れて来たルシオも頼む。
「一緒に、躍らせて下さい」
 もちろんリチェルカーレたち3人は快く頷き、楽しく踊っていく。
 その踊りの最中、リチェルカーレは気付く。
(シリウス)
 ちらりと見えた、目を眇めたシリウスの横顔が優しくて、どきりとしてしまう。

 大切な人を見詰めているのは、シリウスだけじゃない。

「ドクター、楽しんでるみたいだな」
 踊りの途中からダヌも加わり、はしゃぐレオノルを見てショーンは安堵する。
「良かったじゃねぇか」
「……ああ」
 ヴァーミリオンと顔を見合わせ、安堵する様に頷く。

 同じようにアリシアを見つめていたクリストフは、安堵しつつも心が誘われる。
(ちょっとムズムズしてきたかな)
 見てるだけじゃ物足りないというように、アリシアの元に行くと、彼女の手を取って誘う。
「アリシア」
「クリス? ぁ……っ」
 くるりと回し引き寄せると、笑顔を向けながら言った。
「みんなで踊るのも良いけど、こうやって2人で踊るのもいいだろ?」
「……はい」
 アリシアは手を取られ、くるりと回され驚くと目を瞠り、クリストフに体を預けるようにして踊り始める。
(嬉しい……たぶん、顔赤くなってる気が、します)
 それを見たレオノルは、ショーン目掛けて突進。
「ショーン、踊ろう!」
「ドクター!?」
(踊りに誘うのに相手にタックルをかまされるなんて後にも先にも俺だけじゃなかろうか???)
 目を白黒させながら思っていると、ヴァーミリオンが楽しげに声を掛けて来る。
「ははっ、お姫さまのご指名だ。モテるなぁ、ショーン」
「こらそこヴァーミリオン、茶化すな!」
 そう言うと、軽くため息をつきながら思う。
(……まぁ、いつもの日々が戻ってきてくれた証拠か)
「ドクター、踊りますか?」
「うん、踊ろう」
 手を取り合って踊っていく。
「それにしてもドクター」
「なに?」
「タックルしてこなくても」
「だって君こうでもしないと動かないじゃん」
「……善処します」
 拗ねたように言うレオノルに、誠心誠意踊っていくショーンだった。

 そうしてパートナーとのダンスを楽しみながら、クリストフ達は親しい人達のことも気に掛ける。

(シリウス……)
 リチェルカーレを誘わず独りでいるシリウスに気付き苦笑すると、アリシアに言った。
「ごめん、少しだけ離れるけど良い? シリウスが気になるんだ」
 これにアリシアは頷きながら返す。
「はい。私も、リア姉様が気になりますから」
「じゃ、また後で」
「はい」

 2人は一端離れると、それぞれ向かい声を掛ける。

「シリウス何やってる」
 リチェルカーレに身体を向けさせ言った。
「こういう時は男が誘うもんだろう」
 肩を掴んでそのままリチェルカーレの方へぐいぐいと向かわせる。
「……リチェ」
「シリウス?」
 小首を傾げるリチェルカーレに、シリウスは手を差し出す。
「……上手く踊れはしないけど」
 シリウスの言葉に、リチェルカーレは花咲くような笑顔を見せる。
 彼女の笑顔に、シリウスは受け止めるような間を空けて、笑顔を返した。
 そして2人は手を取り合って踊り始める。

 同じように、アリシアはエルリアに声を掛けた。

「姉様も、ヴァーミリオンさんと、踊ったら……?」
「……私、は……」
 迷うような表情をエルリアが見せていると――
「ヴァーミリオンさんもリアちゃんと一緒においでよ!」
 レオノルがヴァーミリオンに呼び掛ける。
 するとメアリーが目を輝かせ――
「お姉ちゃんとおじちゃん一緒に踊るの!?」
 期待感一杯に、嬉しそうな弾んだ声を上げる。
 するとヴァーミリオンは苦笑すると、チェロを口寄せ魔方陣で収納。
 そして妖精楽団に演奏を任せ、エルリアの手を引いて言った。
「踊ろうぜ、エルリア」
「……はい」
 恥ずかしそうに応えると、ヴァーミリオンに体を預けるようにして、2人で踊っていく。
 それを見ていたルシオは、カミラの手を引っ張って――
「踊ろう、カミラ」
「……」
 言葉で返すことは出来なくて、恥ずかしそうに顔を伏せながら頷くカミラだった。

 そして妖精楽団の軽快な音楽に合せ、皆は踊っていく。
 顔には笑顔が浮かび、喜びが満ちている。
 それは新しい明日を感じさせるような、活力の溢れる舞踏。
 明日(みらい)へと繋がる今を共に、皆で過ごしていった。


明日への輪舞曲(ロンド)
(執筆:春夏秋冬 GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし