~ プロローグ ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ 解説 ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |

~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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バイオレンス作家の仕事場に最適ね、ここは。残虐なインスピレーションを刺激する物も記録する設備も満載じゃない。ついでに食欲も失せるから、ダイエットにもいいわよ。 「肝心なインスピレーションは全く沸かんがな。奴がどこに行くかとか何がしたいかとか」 「なぁラファエラ、実を言うと、取り組みたい別件があるんだ。こっちが行き詰ってることだし、……その顔はアクイの為にとっといてくれ。 頼む。俺の親友絡みの事なんだ。短い仕事だし、危険でもない」 |
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~ リザルトノベル ~ |
●Hell 検体番号Lxxx 頭蓋骨肥大化のため脳の多重養殖を中断、溶解処分。 次頁。 検体番号Lxyy 体組織の七割が眼球化したため素材として不適、焼却処分。 次頁、次々頁。 ああ、銀狼、銀狼、銀狼!! 愛しいキミをむかえにいくよ。 夢を魅ながら南瓜の夜を待っていておくれ。 ボクのはらわたに涎を垂らしていておくれ。 解へと繋がる美しい創生式はもうすぐだ。 絡繰時掛けのお菓子の家で踊る死人と赤頭巾。 愛食いを渇望する悪意の魔女が深紅の顎をパカリとあけた。 可哀想なヘンゼルと愚かなグレーテル。 白昼夢に視るほどボクに焦がれているだなんて。 残念だけどボクは道標のパン屑を撒いてやるほどお優しい魔女じゃない。 怒りの炎で焦げながら、ゆっくりと迷妄を愉しんでおいで。 「ラファエラ?」 名を呼ばれ、黒曜の少女ははたと現実に意識を引き戻した。 暗い部屋。大量の鋸や水槽。無機質ながらもどこか粘着性を帯びた空気。 脳に棲みついた幻影を振り払うように『ラファエラ・デル・セニオ』は手元の紙をひらりと振った。 「バイオレンス作家の仕事場に最適ね、ここは」 狂人の脳にいるような、そんな錯覚を覚える。 埃とカビとカンテラ油が燃える匂いしかないと言うのに、部屋に染み憑いた死の臭いに囚われそうだ。 ラファエラは眉間をつまみ、顔に浮かんだ嫌悪感そのままに読んでいた紙をつまはじく。 「残虐なインスピレーションを刺激する物も記録する設備も満載じゃない。ついでに食欲も失せるから、ダイエットにもいいわよ」 砂埃だらけの床に落ちたそれを無骨な手が拾い上げる。潰れた蟲に似た数式は質量を伴った悪夢に似ていた。 「肝心なインスピレーションは全く沸かんがな。奴がどこに行くかとか何がしたいかとか」 情報を精査する『エフド・ジャーファル』にむかってラファエラは皮肉げな笑いを吐き捨てた。苦い怒りは未だ彼女の眉間に燻り続け、美しいかんばせをよく煮込んだ殺意で彩っている。 「なぁラファエラ」 凪いだエフドの眸がラファエラの上を一撫ですると、彼女の視線は再び、はたと過去から現在へ焦点をあわせた。 このところ、ラファエラは思考に耽溺する時間が増えている。それは掴めない手がかりへの苛立ちか、それとも精神的な疲労の蓄積か。あるいはその両方か。 エフドはさりげなさを装って言葉を続けた。 「実を言うと、取り組みたい別件があるんだ。こっちが行き詰ってることだし、……その顔はアクイの為にとっといてくれ。頼む。俺の親友絡みの事なんだ。短い仕事だし、危険でもない」 「その顔ってどんな顔よ」 柔らかな低音に、ラファエラは拗ねるように唇を尖らせた。 『アクイの魔女』とは二人が追う獲物の名である。 見た目は十かそこらの無垢な子供。しかしその狡猾さと残忍さは魔女の中でも突出した存在である。あの恩讐派でさえも距離を取っていると云う事実から如何に異端であるか分かるというものだ。 家屋敷を捜索して見つかったのは未来永劫不必要な研究だけ。 凄惨な現場に慣れている教団員を文字だけで嘔吐させた描写の正確性と筆力が判明した所で、行き先のヒントがなければ意味がない。 唯一の証言者である琥珀姫も紅茶に溶ける砂糖のようにゆらゆらと首を横に振るばかり。 手あたり次第に古い死霊術に纏わる場所や資料を調べ続けたラファエラは、悔しい事にすっかり伝説やオカルティズムに満ちた歴史に詳しくなってしまった。 「おじさんに借しを作っておくのも悪く無いわね」 「その言い方だと後で何を請求されるのか少しばかり怖いんだが」 簡素な物言いの中でチョコレート色の瞳がきらりと光っている。さり気なさを装っているのはラファエラも同じ。エフドの親友という単語に、明らかな興味を示していた。 「短い仕事なら気分転換に受けてもいいわ。ルネサンスまで来て収穫が三文小説だけって言うのも癪だし」 アクイを追いかける旅だがそう悪い事ばかりではない。 相棒の精神的な成長を見る事はエフドの密やかな楽しみの一つだった。 ●o 錆びついた工場から幾筋もの黒煙が昇り、その根元は枯葉色のバラックに埋め尽くされている。 ルネサンス南部、スラム街。その一区画では木槌の音楽に子供の声が混ざっている。整備されていない剥きだしの広場には幾つものテントが張られ、港に浮かぶ帆船のようにひしめきあっていた。その中でも一際巨大な帆柱が完成した事で大きな歓声があがる。 「アマール!」 作業指示をしていた狼の耳が立ち上がり自分を呼んだ誰かの姿を探した。 「エフド!」 ライカンスロープの男が大きく破顔する。 『アマール・クースキ』は教皇国家アークソサエティを中心とする活動家だ。今回ルネサンスで開催される労働争議を発起し、エフドたちにデモの警備を頼んできた人物でもあった。 「忙しいところをすまなかった」 「お前の頼みなら時間をつくるさ」 エフドの言葉にアマールは可笑しそうに笑った。 「久しぶりに顔を見せたかと思えば行儀良くなっちまって。ヤンチャ坊主はどこへ消えたんだ?」 「此処だよ。残念ながら俺も大人になるんでな」 「違いない」 記憶よりも太くなった互いの二の腕を叩き抱擁を交わす。 「おかえり。無事で良かった」 「ただいま」 年齢を重ねても変わらない同郷人はエフドにとって土地では無い故郷の一つだった。少年のように笑うエフドにラファエラは驚いたような視線を向けている。 「紹介するよ。俺のパートナーのラファエラだ」 「来てくれて有り難う。俺はアマール、エフドとは子供の頃からの知り合いでな。今回は君にも無理を言った」 「どうも」 差し出された手をラファエラは取った。無骨で大きな、古傷まみれの手だ。細められた活動家の瞳はどこか年老いた哲学者に似ている。 「早速だが仕事の話をしたい。時間はあるか」 「勿論だ。ここは人が多い、テントに移動しよう。打ち合わせついでに会わせたい人もいる。おーい、少し抜けるぞ!」 「ついでに酒持ってきてくれー」 作業する人々に声をかけるアマールの背を見ながらラファエラは唇を開いた。 「善人みたいね」 「ああ、それは保証する。あの人以上に公正な奴を、俺は知らない」 「随分と高評価。何か恩でもあるのかしら」 軽口というより純粋な好奇心から出てしまった問いかけなのだろう。しまったという顔をしたラファエラに、エフドはそうだと答えた。 「あの頃、俺が道を誤らなかったのもあの人が居たからだ」 「着いたぞ。少し狭いが入ってくれ」 日焼けしたテントを捲ると見慣れた翠の双眸がラファエラとエフドを待っていた。 「ンだよ、やっと来たのか」 「あなたも来ていたのですか、ロードピース」 椅子に座っていたのは薔薇十字教団の寮母であり副料理長でもある『ロードピース・シンデレラ』だった。 何故を滲ませたエフドの問いにロードピースは億劫そうに舌打ちをする。 「最近、教団の連中がこういう活動しろって煩せぇンだよ。それに、今は無敵なアタシ様だが少しはコイツらの境遇も理解できっからな」 どちらかと言えば小さく付け加えられた後者の方が本音なのだろう。時と共に風化したとは言え、彼女が奴隷であった頃の記憶は消えないままだ。 「彼女には集合場所と目的地を中心に炊き出し所や露店の運営を任せている。デモ当日にも来てもらう予定だ」 「人を焚きつけておいて来ねえアゼルとトゥーナからガッポリ軍資金をブン取って来たからな。これを元手に、祭りに浮かれた能天気どもから金をむしり取ってやるぜ」 「相変わらずね、この人」 黒い笑みを浮かべるロードピースにエフドは苦笑し、ラファエラは呆れた眼差しを向けた。何だかんだ言ってロードピースの面倒見が良い事は二人ともよく知っているのだ。 「デモ隊は所定のルートを練り歩き、件の企業の本社前に到着。そして企業側代表者の前で今まで行ってきた数々の非道や法令違反を訴え、既に訴訟を起こしたことを宣言する。極めて穏便な、いつも通りの抗議活動だ」 黒板の警備ルートを消し始めたアマールに聞いていた三人は頷いた。 「打ち合わせは終わったな? おい、エフド。ラファエラ借りるぞ」 「えっ」 突然立ち上がったロードピースにラファエラは目を丸くする。 「ここ、金の計算係がいねえんだよマジで」 「そういう事なら手伝ってあげなくも無いけど」 ロードピースに手を引かれたラファエラは不安な表情を一瞬だけ見せたが、すぐさま余裕の仮面をかぶりなおした。 「気をつけてな」 テントの布がカーテンのように翻り、白と黒の背中が姿を消した。 外の喧騒が再び布一つ隔てられる。 「気を使ってくれたんだろうな」 「ラファエラもな。普段はあそこで素直に従うような奴じゃないんだ」 ことりと懐かしい安酒の瓶の色。囁くように乾杯の音頭を打ち合わせる。 「俺の言った通りになったな。麻薬の売り子なんぞになってたら、新政権の戦士になれず、可愛い相方もつかなかっただろう」 「そしてむさいチンピラごと、あいつに殺されてただろうよ」 「過激だな」 「ああ、そこがいい」 喉を灼くような刺激はお世辞にも美味いとは言えない品質だと今のエフドは知っている。けれども郷愁に浸るにはもってこいの味だった。 「今やお前が止め役とはな」 「ああ、自分でも信じられんよ」 アルコールの力を借りて軽くなった口は、長年咲かずにいた花のように次々と話題を変えた。 「追いかけている敵はまだ見つからないのか」 「まるで尻尾がつかめなくてな。正直、今はお手上げ状態だ」 笑って肩をすくめるエフドに小さな頃の面影が重なった。弱気になっている時ほど飄々と笑い、大丈夫だと強がっていたかつての子供。 「諦めるなよ。ベリアルや使徒との戦争状態とそれによる抑圧が終わりつつある今、世の中はマシになり始めているはずだ」 世界に猟奇が溢れているなら一つを見つけるのは至難の業だ。 けれども世界が穏やかになったのならば異端は必ず浮かび上がる。 「細々とでも続けることだ。道はいずれ見えてくる。創造神はそうやって倒したんだろ?」 「あんたは変わらないな。相変わらず気が長い」 「忍耐強いと言ってくれ」 笑ったアマールの口元に疲れが滲んでいる。エフドは手元の瓶に視線を落とした。 「なあ、アマール。お前、何か俺たちに隠していないか」 「ん? 何のことだ」 「いつも通りとお前は言った。だが俺たちに警備を頼むのは初めてだ」 想い出に緩んでいたテントの空気に少しばかりの隙間風が通り抜ける。 「今までは忙しそうだったからな」 「誤魔化すな。警備ルートを知らせる人物は最小限。場所を変え板書のみで済ませる。お前が何かを警戒している時の癖だ」 「相変わらずエフドに隠し事は出来ない、か」 真剣な表情のエフドに遂にアマールの耳が下がった。 「俺の気のせいかもしれない。本当にいつも通りなんだ。何がおかしいと聞かれても分からない。具体的に何かが起こる確証もない。何事もなく終われば心配が過ぎたと笑って済む話だ。だけどな、どうにも」 ――嫌な予感がするんだよ。
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*** 活躍者 *** |
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