桜の水面(みなも)
普通 | すべて
1/1名
桜の水面(みなも) 情報
担当 土斑猫 GM
タイプ シチュエーションノベル
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 0 日
公開日 2021-06-26 00:00:00
出発日 0000-00-00 00:00:00
帰還日 2021-06-26



~ プロローグ ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ 解説 ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

タオ・リンファ ステラ・ノーチェイン
女性 / 人間 / 断罪者 女性 / ヴァンピール / 拷問官
全てお任せします。


~ リザルトノベル ~

 隠れ里。
 人世と隔たれた、無間の神域。
 そこにユラリと揺蕩う、御殿一棟。
 連なる間。聞こえる声。
「何ぞやっとるなと思うたら、また妙な事を始めたもんじゃな」
「平和になりんしたらなりんしたで、どうにも退屈でありんすからぇ。道楽くらいは、自炊しんすよ?」
 呆れた顔をするのは、桜柄の十二単。『桜花の麗精・珠結良之桜夜姫』。清楚な姿の彼女の前で、大翼を掲げた妖艶な花魁。『覇天の雷姫・アディティ』。共に、高位八百万の二柱。座する場は遠けれど、神に然したる意味はなく。たまにこうして言葉を交わす。
「暇を持て余した……か。しかしなぁ、いくら近しくなったとは言え、我らがやたらと人に干渉するのは如何なモンかと思うぞ?」
 シレッと飛んできたブーメラン。笑って落とすアディティ。
「らしくない事をおっしゃいんすぇ。主とて、大好物でありんしょう? こなたの手の事は?」
「……ま、否定はせん」
 アッサリと肯定。
「しかしな?」
 杯を舐め、ニヤリと笑む桜夜姫。
「絡んどる面子が面子じゃ。表立って派手は出来まい。さて、裏で何を企んどる?」
「流石に鼻が利きんすね? いえね、そう悪い事ではありんせん。実は、少々気になる小娘がいまして……」
 そう言って、ヒソヒソと耳打ち。ふむふむと頷く。
「ほう、それはそれは」
「お好きでありんしょう?」
「そうじゃな、良いモノが見れそうじゃ。一枚、噛ませてもらおうか」
「はい、毎度あり」
 悪巧みの約を結び、固めの杯。漏れる妖しげな笑い声。肴を運ぶ小妖共が首を竦めた。

 ◆

「ここも、もうすぐ夏なのですね」
 見上げた空は青く遠く。少し厳しさを増した日の光を翳した手で遮りながら、『タオ・リンファ』は流れる北国の薫風(くんぷう)に微かな安らぎを見出す。
「リンファさんは、出ないの?」
「ふぇ!?」
 迂闊にも緩んでいた所に声掛けられて、思わず変な声が出た。
 振り向けば、同じく警備の役についていた『カレナ・メルア』が此方を見ていた。
「な、何ですか? カレナさん」
「だから、アレ」
 指差す先には、湯気を上げて広がる巨大な水面。
 ノルウェンディ名物、『巨大温泉プール・アイスラグーン』。そして、白気の中に見える複数の女性達。
 一様に身に纏うのは、ウェディングドレスの様な装飾を施した水着。所謂、ウェディング水着と言う代物。
 先にも述べた通り、ここは樹氷群ノルウェンディ。開催されているのは五月に行われた服をテーマにした博覧会から派生した、ウェディングドレステーマの祭り事。
 アイスラグーンを有するノルウェンディでは、それを利用したウェディング水着特化の催しとなっている次第。
「着ないの? リンファさん」
「な、何を言ってるんですか!?」
 継いで出てきた言葉に、目を丸くする。
「私達は警備に来てるんですよ!? 参加するなんて……」
「皆、出てるよ?」
 確かに、一般人に混じって浄化師達の姿もチラホラ。
「ヨセフさんも言ってたじゃない。ボク達も混ざって良いよって」
「そ、それはそうですが……」
 チラリと楽しんでる同僚達を見やる。
 ……まあ、綺麗だなとかは思う。総じて、良いデザインだ。さぞや有能なデザイナー達が監修したのだろう。
 しかし、それは良いのだが……何と言うか、その……。
「エロいよねー♪」
「ぶっ!!!」
 無邪気故か確信犯か。サラリとのたまうカレナに吹く。
 そう。何と言うかその、煽情的と言うか、センシティブなのである。流石に、ちょっと……。
「リンファさんカッコいいから、似合うと思うんだけどなー」
「……あのですね、女性相手にサラッとそういう事言う癖、直した方が良いですよ……?」
「何で?」
「いや、だって……」
 澄んだ目で見つめられ、言葉に詰まる。
 本人に全く他意がないのだから、たちが悪い事この上ない。この調子では、いつかあの『相方』に本気で刺されるのではなかろうか?
 そんな事を思いながら視線を向けた先では件の相方、『セルシア・スカーレル』が『ステラ・ノーチェイン』と顔付き合わせて唸っている。何と言うか、今だにステラを『泥棒猫候補』として警戒しているらしい。確かに、ヤバイ。
「ヨセフさんも来てるんだから、好機じゃないかな?」
「ぶふっ!?」
 またサラッととんでもない事を言う。
「な! ななな!! 言うに事欠いて何て事を言いやがるんでございますか貴女様は!!?」
 呂律がおかしい。
「好きなんでしょ? ヨセフさんの事」
「そ……それはその……モニョモニョ……」
 ガンガン責めてくるカレナ。どうにもいけない。前々から思っていたが、清純面して根は黒いらしい。やっぱ『アレ』の相方である。
「そ、そこまで言うのなら、貴女こそ参加すれば良いのでは!? セルシアさんというパートナーもいるのですし!!?」
 このままでは、勢いで更にとんでもない事に誘導されてしまいかねない。せめてもの反撃を試みる。けれど。
「ボク達は、ダメかなぁ……」
「!」
 返ってきたのは、とても透明な声と思いもよらない言葉。
「ボク達には、あの光はちょっと眩し過ぎるから」
「そんな……」
「ヨセフさんと、結婚するの?」
「ふぇ!?」
 馬鹿な事を言うなと言いかけた口を塞ぐ様に、カレナが問う。
 言葉も出ずにアワアワするリンファ。そんな彼女に、無垢の小悪魔はクスリと笑う。
「困らないで。言って見ただけ。それは、リンファさんが決める事。ただ……」
 流れる視線が、想う相手を見る。大好きな盟友と戯れる、愛しき人。
「ボクもボクのセルシアも、家族の事が分からない。作り方も、愛し方も分からない。だから、皆を見たい。皆の未来を、導にしたい。だから……」
 再び向けられた瞳は、真っ直ぐに。
「もしも許してくれるなら。貴女の光も、ちょっとだけ」
「……!」
 遠くで、彼女達が呼ぶ声。返事を返して走っていくカレナ。揺れる赤いポニーテールを、ただ見送る。
 確かに、だけど形に出来なかった言葉。
 自分は、何と答えようとしたのだろう。

 ◆

「何とか、無事に終わりましたね……」
 日も傾いた頃合い、警備の任を終えたリンファは当てがわれたホテルの一室で、ホッと息を吐いた。
「くろくろコゲコゲだな。マー」
 日焼けした肌を晒しながら、ニパリと笑うステラ。
「日差しが強かったですからね。随分と汗もかきましたし、シャワーでも浴びますか」
 などと言いながら制服に手をかけようとしたその時。
「そんな貴女にご朗報―!」
 やたら黄色い声と共に、天井の羽目板をバーンとぶち抜いて降ってくる何者か。
「ぎゃー!!!?」
 吃驚した。しない奴がいたらソイツがおかしい。で、鍛えた体は当然の様に反応。反射で振り抜いた蹴脚が、過たず侵入者の鳩尾を捕らえる。
「げぼぁー!!?」
 断末魔を纏って吹っ飛ぶ狼藉者。そのまんまベッドやら鏡台やらを巻き込んで沈黙する。
「おお、ハニーだゾ。どした?」
「む……むぅう……流石は我が同志にして宿敵……見事な、功夫……ごふっ!」
「しっかりしろ! キズは深いゾ!?」
 瓦礫の中からゴソゴソ這い出す蜂蜜色。引っ張り出すステラ。露骨に嫌な顔するリンファ。
「……何しに来たんですか? ハニーさん……」
「いや、シャワー浴びたいって聞いたから。良い事教えようと思って……」
 等と言いながらパタパタ埃を掃う『養蜂の魔女 ハニー・リリカル』。と言うか、聞いたっていつから居たのだろう。天井裏に……。
 怖くて突っ込めないリンファを他所に、話を続けるストーカー疑惑浮上魔女。
「ロロ様からの御好意でさ、今夜はアイスラグーンを一晩中皆に開放するから、好きに使ってくれて良いってさ」
「おお、ほんとうかー!?」
 目を輝かせて喜ぶステラ。対して、ちょっと困った顔のリンファ。
「それは有り難いお話ですが……。生憎、私達は水着が……」
「心配無用! こんな事もあろうかと……」
 ポンと取り出す、包みが二つ。
「用意してきたよ! お二人さんの『特製』水着!」
「おお! きがきくなー!」
「いつの間に……」
 あまりの手際の良さに胡散臭い気配を感じなくもないが、ステラが喜んでいる手前追及するのも野暮な気がする。
「マー、はやく行こう!」
「わ、分かりました。では、有り難く……」
 お礼を言って包みを受け取り、部屋を出ていく二人。
 実際、疲れていたのだろう。いつものリンファであれば、気づかない筈がないのだから。見送るハニーの顔に、邪な笑みが浮かんでいる事を。

 ◆

「……ロリオタ魔女が……」
 思わず漏れる、憤怒の呻き。果たして、リンファの身を包んでいたのは可憐なウェディング水着。上品かつ麗美な造りが、彼女の均整の取れた肢体を見事に彩る。養蜂の魔女の手腕、恐るべし(まあ、腕が無けりゃコスプレ衣装なぞ作れんし)
 しかし、そんな事は問題ではない。昼間の件以来、カレナの言葉が巡っていた事もあって。コレ自体は何となく答えられた気がしないでもなかったりする。……彼女の真意が、そんな事ではないと分かっていつつも。
「マー、きれいだな」
 スクール水着姿のステラが、羨望の眼差しで言う。正しく。素敵だな、とか思っているのも事実。
 そう。だから、此れ自体は問題ではないのだ。真の問題は……。
「何ですか……この状況は……」
 訪れたアイスラグーンは、人っ子一人いなかった。ハニーの言い様なら、他にも同僚達が来ていても良い筈なのに。
 不信に思った瞬間、気づいてしまった。
 離れた湯気の向こう。そこに立つ人影。
 間違える筈など、なかった。同様に気づいたステラが、彼の名を呼んで走っていく。呼び止める事も出来なかった。声を発せば、気づかれてしまうから。見られたくなかった。こんな、勝手な想いを曝け出した姿など。
 たまらず背を向けたその時。
「おや、逃げるのでありんすか?」
 上から降って来た声に、ギクリとした。
 見上げた先には、淡く輝く虹の大翼。岩壁に腰かけ、見下ろす艶美な笑顔。
「アディティ様……」
「折角、場を設えてあげんしたのに」
「……仕組んだのは、貴女ですか……」
 フワリと降りて来た女神に、食ってかかる。
「どう言うつもりですか!? 私は……」
「人は、儚いでありんすからねぇ」
 笑んだアディティが、煙管でリンファの顎をクイと上げる。
「大事にするのも自由。蹈鞴を踏むのも自由。けど、そうしていんす間に時は流れんす 。逸してしまうかもしれんせんよ? あまり、臆病ですと」
「貴女に、何が……」
「分かりんせんよ。でありんすから、知りたいんでありす」
 金の眼差し。酷く、優しげ。
「ぬし達は、古き創造を崩しんした。想いを持って。ならば、今度は見せて欲しいのでありんすぇ。同じ想いが成す、創造の形を」
 ふと過ぎる、友の願い。
「何、そう急かしはしんせん。ただ、歩む様だけは魅せてくんなましな」
 途端、朱染めの大気に別の彩。
 季節外れの桜と知るに、時は要らず。
「ま、其れを肴に美味い酒が飲みたいだけじゃ。大事には捉えるな」
 覚えのある声に『勝手な事を』とむくれれば、バツが悪そうに笑う。
「用意したのは、僅かでありんすぇ。じきに他の方々も来んすから」
「少しばかり、愛でて貰え。今日の駄賃にな」
 今日の駄賃。まあ、それくらいなら。
 ステラが呼ぶ声が聞こえる。
 さて、この姿。あの人は、何と言うだろうか。
 いつしか、怯えは消えて。
 そう、ほんのちょっとだけ。
 踏み出した先。揺れる水面。桜が誘う。



桜の水面(みなも)
(執筆:土斑猫 GM)



*** 活躍者 ***

  • タオ・リンファ
  • ステラ・ノーチェイン

タオ・リンファ
女性 / 人間 / 断罪者
ステラ・ノーチェイン
女性 / ヴァンピール / 拷問官