~ プロローグ ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ 解説 ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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春になり 沢山の花であふれる教団の庭を弾む足取りで歩く 庭の奥で 珍しい花の群生があると妖精にききそちらへ向かう 芝桜によく似た半透明の花群 光の加減で七色に変わる様子に小さく歓声 虹の花だわ…とても綺麗 そっと花に触れ 観察していると名前を呼ばれる 最近はなぜか逸らされることが多かった翡翠の瞳の縁が、少し赤い なあに?シリウス 続けられた言葉に目を見開く いつもと違う、少し訥々とした話し方 緊張からか震える手に、小さな指輪を渡される …っ、変なシリウス わたし ずっと言ってたじゃない あなたが側にいてくれないと嫌だって 嬉しいのに涙が零れる わたしだって あなたがいい これからもずっとずっと、側にいて 精一杯の笑顔で彼の腕に飛び込む |
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~ リザルトノベル ~ |
想い通じ合い心を重ね、言葉で形にしても、行動に移すとなると迷うのが人間というもの。 特にそれが、想い人の未来を決めてしまうようなものであれば―― ◆ ◆ ◆ 「それで、シリウスは、どうしたいのかな?」 「……」 笑顔を浮かべ尋ねる友人に、『シリウス・セイアッド』は言葉を返せない。 そんな彼を、眼鏡をかけた彼は『しょうがないな』とでも言いだけに、小さく苦笑した。 今シリウスは、友人達と教団の談話室に居る。 友人達が結婚し、指令も重なることも無くしばらく会う機会も無かったが、偶々指令終わりに出くわして、折角だからと引っ張られお茶をしてるのだ。 「指輪も、用意してるんだろ?」 「……」 察しの良い彼に指摘され、またもや無言で言葉を返せない。 そんなシリウスに―― 「変わらないな、お前は」 苦笑するように、同席するもう1人の友人が言った。 「もう、小さく力の無かった頃のお前じゃない。自分に正直に生きても良い筈だ」 諭すように言われ、いささかバツが悪くなる。 小さい頃、半ば実験体として教団の暗部に捕らわれていた頃、何かと気に掛けてくれた彼はシリウスにとって兄のようなものだ。 とはいえ、彼が言うようにシリウスも子供じゃない。 少しぐらい言い返すことは出来るのだ。 「俺だけで、決めて良いことじゃない」 「だからプロポーズするんだろ?」 眼鏡の奥で笑みを浮かべながら、ぴしゃりと友人に言われてしまう。 「……それは」 言いよどむシリウスに―― 「不安なのか?」 兄とも言える友人に、核心を突かれた。 「……ああ」 苦しげに、シリウスは思い悩む。 (本当に隣にいるのが俺で良いのか、分からない) シリウスは、想い人である『リチェルカーレ・リモージュ』の幸せを願う。だから―― (もっとリチェには相応しい人間がいるんじゃないか) その思いを振り払うことが出来ずにいた。 もしシリウス独りなら、その想いに囚われたままだったかもしれない。 けれど、友人達が背中を押してくれる。 「分かったよ、シリウス。それじゃ、こうしよう」 にこにこ笑顔で、けれど逃げ道を封じるように言った。 「10日以内に自分でプロポーズしないのなら、場所も台詞も全部おぜん立てして公開プロポーズをさせてやる」 「……っ」 思わず絶句するシリウス。 何か言おうとするが、押し切られる。 「リチェちゃんが俺達の結婚式でブーケを受け取ってから、どれだけ経ったか覚えてる?」 「それ、は……」 「あの時、時間が欲しいって言ってたから、みんな今まで待ってたんだ。言っとくけど、俺達だけじゃないからね」 そう言って、彼は一緒に合同結婚式を挙げた、もう一組の友人達のことも伝えた。 「この前、指令で偶々会ったけど、2人とも気にしてたよ」 合同結婚式の後、各地を巡っている友人夫婦だが、浄化師なので指令で協力することもあり、その時にシリウス達の話になったのだ。 「とにかく、これはもう、シリウス1人だけの問題じゃないんだ。なにより、リチェちゃんをこれ以上待たせちゃダメだ」 「…………」 発破を掛ける友人に、無言で応えられないシリウスだった。 それでも、友人達に背中を押された成果は確かにあった。 (……どうする……) 結婚指輪を携えてから、数日が経っていた。 それは『約束の石』で作って貰ったもの。 自分の想いをリチェルカーレに伝えるために用意した物だ。 けれど―― 「シリウス、どうしたの?」 何も言えずに数日過ごした挙句、リチェルカーレに気遣われる始末である。 「最近顔色が悪くない? 疲れでもたまっているの?」 小首を傾げ、心配そうに言う。 「大丈夫だ、問題ない」 言い訳するように応えるシリウスに、心配しつつも、それ以上は思い詰めそうになるので言わないリチェルカーレ。 実際、問題があるわけじゃない。 ただただ、シリウスが1人で思い悩んでいるだけだ。 大切で、放したくなくて。 ずっと側にいてほしい、と。 それが伝えたいだけなのに。 「……」 どうしても言葉に出せず、行動にも出れずにいた。そんな、ある日―― 「シリウス」 友人から宣言された期限の最終日に、ルシオに呼び掛けられた。 「……ルシオ」 穏やかな表情で見詰める彼に、シリウスは小さく応える。 「どうかしたのか……?」 「大華への渡航許可を貰いに来たんだ。向こうには、こちらにいない魔獣がいるというからね」 「そうか……」 そこで話を止めてしまうのが、シリウスらしい。 ルシオは小さく笑みを浮かべると、やわらかな声で言った。 「聞いたよ。今日、リチェちゃんにプロポーズするんでしょ」 「っ、それ、は……」 不意打ちのような言葉に、たじろぐシリウス。 「なんで、それを……」 「教えて貰ったんだ。みんなに」 穏やかにシリウスを見詰めながら、ルシオは力付けるように言った。 「幸せになって良いんだよ、シリウス」 「……」 無言で返せないシリウスに、ルシオは続けて言った。 「シリウスは幸せになって良いし、リチェちゃんを幸せにしてあげても良いんだ」 「幸せに……俺が……」 「自信が無い? だったら、みんなに助けて貰えばいいんだよ」 「助けて……」 「うん。そうだよ」 シリウスを見詰めながら、ルシオは語りかける。 「そうやって、みんなで助け合って、今があるんだ。俺やカミラが、今あるのも、そのお蔭だよ」 「……」 「俺やカミラは、シリウスやリチェちゃん、みんなに助けて貰った。だから、それを返したい。だって、いま俺達は幸せだから」 「……」 じっと見つめるシリウスに、ルシオは言葉を贈り続ける。 「いっておいで、シリウス。リチェちゃんが、待ってる」 「……でも、俺は……リチェを幸せになんか――」 「それを決めて良いのは、彼女だけだよ、シリウス」 「……」 「シリウスが出来るのは、リチェちゃんを幸せにしてあげようとすること。そして、一緒に幸せになって欲しいって、願うことだよ」 そう言ってルシオは、力付けるように背中を叩く。 「皆応援しているんだから頑張れ、シリウス」 笑顔で送り出される。 一歩踏み出し進むごとに、心臓を早鐘のように打ち鳴らし、高揚していくのが分かる。 けれど止まらず、リチェルカーレを求め歩き続ける。 それは背中をみんなに押して貰えているように感じたからだ。その背中に―― 「――にリチェちゃんはいる筈だよ。いっておいで」 応援するように、ルシオは言った。 ちょうどその頃、教団で書類仕事を提出し終えたリチェルカーレは、妖精の1人と話しているカミラと出会った。 「カミラさん」 久しぶりに出会え、笑顔で声を掛けて来るリチェルカーレに、カミラは言った。 「花が好きだったな」 「? ええ、好きよ」 唐突な話に少し不思議に思いつつも笑顔で返す。 するとカミラは、なぜか重大ミッションを遂行しようとしているかのような緊張感を漂わせながら言った。 「あちらの中庭に、妖精が世話する珍しい花が咲いたそうだ。見に行ってはどうだ」 カミラの提案に、リチェルカーレは嬉しそうに目を輝かせる。 「素敵。カミラさんも、見に行きましょう」 「え、いや、私は……」 予想外だったのか慌てるカミラに、傍に居た妖精――オベロンが笑顔で言った。 「残念。その子は用事があるんだ。だから先に見に行ってきなよ」 「そうなんですか? なら、先に見に行って来ます」 笑顔でリチェルカーレは応え、花を見に行った。 それを見送るカミラに―― 「御膳立ての準備は出来たけど、キミって不器用だね」 「……自覚はしている」 「正直だね。まぁ、いいんじゃない。それより見に行かない?」 「やめろ」 「え? なんで?」 「そんなの、分かるだろ」 「えー。あの子の友達も心配してるみたいだし、教えてあげるために見学しつつ映像も記録して――」 「絶対にやめろ!」 全力で止めるカミラだった。 そんなやり取りがあったとは知らないリチェルカーレは、沢山の花であふれる教団の庭を、弾む足取りで歩く。 春になり色取り取りの花が咲いているが、その奥に珍しい花の群生があるというのだ。 「わぁ……」 かわいらしく、そして鮮やかな花が広がっている。 「綺麗」 光の加減で七色に変わるその花々は、まるで―― 「虹の花だわ……とても綺麗」 近付くと腰を落とし、傷付けないよう、そっと花に触れる。 見惚れながら観察していると―― 「リチェ」 「シリウス?」 翡翠の瞳の縁を、少し赤くしたシリウスに呼び掛けられた。 「なあに? シリウス」 屈託のない笑顔を向けるリチェルカーレに、シリウスの鼓動は強く跳ねる。 彼女の笑顔に、友人の結婚式でブーケをもらい、頬を染めていたのを思い出す。 (あの時の、約束を) シリウスはポケットに入れていた指輪を取り出しながら、覚悟を決める。 (自信は今でも無いけれど) それでも、あの時の約束を果たしたかった。 「リチェ」 いつもと違う、少し訥々とした話し方で。 「……お前の隣にいてもいいのかとずっと思っていた」 悩みながら辿り着いた決意を口にする。 「本当は今でも、わからない。だけど、俺は、お前がいい」 指輪を差し出しながら、共に生きていこうと願った。 「こんな俺でよければ、これからも、ずっと側にいてくれないか」 頬を赤く染め、緊張で震えるリチェルカーレの手を取って、小さな指輪を渡した。 「……っ、変なシリウス」 溢れる感情と共に心を震わせながら、リチェルカーレはシリウスを求める。 「わたし、ずっと言ってたじゃない」 喜びを伝えたくて、精一杯の笑顔を浮かべる。 「あなたが側にいてくれないと嫌だって」 嬉しいのに涙が零れてしまう。 「わたしだって、あなたがいい」 大切に指輪を受け取りながら、リチェルカーレはシリウスに応えた。 「これからもずっとずっと、側にいて」 シリウスは、リチェルカーレの零れる涙に息を飲む。 数秒置いて返事が頭に入り、詰めていた息を吐くと―― 「……お前が、望んでくれるなら ずっと側に」 リチェルカーレが受け取ったくれた指輪を着けてあげると、そっと抱き寄せる。 「シリウス!」 リチェルカーレは、精一杯の笑顔で彼の腕に飛び込んだ。 シリウスは、リチェルカーレを抱きしめながら―― 「ありがとう」 小さく、彼女だけに聞こえるように、感謝の言葉を贈った。 その言葉に応えるように、ぎゅっと抱きしめるリチェルカーレだった。 苦しみと痛みを乗り越えて、2人は未来を共に歩む約束を果たす。 そんな2人を祝福するように、虹の花が鮮やかに咲いていた。 2人で好き日々を―― そう思えるような、2人だった。
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*** 活躍者 *** |
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