~ プロローグ ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ 解説 ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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「やぁセニョール。義理の息子になりそうだから挨拶に来たよ」 「結婚が決まったような言い方ですね」 「違うのか?」 この親子は揃いも揃って、やることがいちいち仰々しいな。確かに俺はそのつもりだ。多分あいつも、わざわざこんな所を用意するぐらいには本気だろう。 俺は戦士でいるのが嫌じゃない。そういう奴でなきゃ彼女は預かれないでしょうし、そういう奴はザラにはいないはずだ。それに俺には主体性がないので、彼女がいないとやることを見つけれないんですよ。 「止やしないさ。俺にはもう止められんからな」 ラファエラ、いや、ラフィー。俺はまだ戦えるぞ、お前となら。それに戦うだけで終わらせない。俺に道を示してくれ。 |
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~ リザルトノベル ~ |
『アハ、あはハ、アははハはハハハ!』 最期に響いたのは、苦痛の悲鳴でも屈辱の怨嗟でもなく。 ただただ喜びに満ちた狂声。 『着いた! 辿り着いたよ! アははハはハ! 門! 解錠の儀! 銀狼! ボクの銀狼! 君の場所! 胎内!!! やっと! あは! 今日こそ今こそ今宵こそ! 秋の終わり冬の始まり死者の祭りボクの君のボク達の!』 終わりを迎え。おわりを受け入れ。それでもヲワリは訪れない。 「五月蠅い!」 『ラファエラ・デル・セニオ』は喚いて、貫いた心臓にさらに矢を。 けれど。 『あはハハははは! 今行くよ! 迎えに来て! 向こう!! 此方! すぐ傍! 溶けよう! 混ざろう!! ウロボロスの輪環! 永久永遠永久無限銀狼ぎんろうアハハ、あはは、アハハハハ!!!』 また、一刺し。 頬を濡らす血。 抉り取る様に引き抜いて。 止まらない。 怒りも。 屈辱も。 『アハハハハははは、あは、はははははは!』 「黙りなさい!」 殺すと、決めたのに。 ずっと。 ずっと。 なのに、どうして。 『アは……』 見ていた。 アクイが。 血塗れの顔で。 『ありガとう』 声。 『ありガトウ、アリガトウ。綺麗な、君』 感謝を。 至上の謝意を。 『至れるよ。君のお陰で。ああ、何て愚かだったんだろう』 そう、求めていたのは。 『死は摂理。絶対の理。神じゃないボクが、干渉する術など在りはしない。ねぇ、銀狼。ボクが君を手繰れないのなら、ボクが其処まで沈めばいい。簡単。あまりにも、基本。だから、だから気づけなかった。許しておくれ。愚かなボクを』 やめろ。 『ありがとう、綺麗で浅慮で哀れな君。ボクの泥濘を救ってくれた。示してくれた』 やめて。 『ありがとう有難うアリガトウ。返す対価は』 求めてない。 『大好きな君に』 嬉し涙の様に血を流し、最後で最期の贈り物。 『永久に輝く、燈火を』 焔が灯る。 心と言うランタン。 絶える事無く溢れる、感情と言う種油。 狂気は染みつき沁み込み。 ソレを抉り取ろうと。 また、手を振り上げた。 「ラファエラ」 肩を掴まれ、我に返る。 「もう良い。終わった」 同じ様に、血に顔を染めた『エフド・ジャーファル』。見れば、組み敷いていた筈の小さな形は既に崩れ。 「あ……」 「俺達の、勝ちだ」 「私達の……勝ち……?」 込み上げるモノは何も無く。ひしゃげた弓矢が、コロリと落ちる。 カラカラと泣く風の中、遠く近く。笑う声。 復讐と言う、虚しい旅路。その終わり。 ◆ 「約束は果たした」 夜、宿屋のバーカウンター。安物のジンを揺らしながら、エフドは告げた。 「次は、お前の番だ」 大戦前夜に交わした盟約。 断る権利も、理由も在りはしない。 「……分かってるわ……」 虚ろに返して、グラスのカルーアミルクを舐める。 誤魔化しを求めた甘味も、また虚ろ。 ◆ 「……この手の場所は任務では何度も来たが。主賓となると今だに落ち着かんな」 週末、エフドの姿は郊外のコテージにあった。 約束の履行の為、ラファエラはわざわざ場所を用意していた。 父の庇護下にあった頃から所有していた別荘。相応に込み入った誘い。 それならばと。 ラファエラは、先に風呂に入っている。彼女の本気がどちらの方向にあるのかは不明だが、まあ結果にさしたる違いはない。 ベランダで夜風に涼みながら、大事の前に『邪魔者』にお暇して貰う。 「出て来い。場合によっては、見逃してやる。舞台を、血で飾る趣味はないんでな」 「結構な事だ。あんなじゃじゃ馬だが、悪趣味に溺れては外面が悪いからな」 現れた男を見て、少なからずの驚きを覚える。 「やぁセニョール。義理の息子になりそうだから、挨拶に来たよ」 『エフライン・デル・ゴダード』。アクイの居所を突き止めるにあたって、莫大な資金と広い人脈で多大な貢献をした協力者。そして。 かつて娘の告発によって監獄送りになった、重き業を重ねし父。 ◆ 熱いシャワーの雫を受けながら、ラファエラは考えていた。 アクイの息の根を止めてから、脳漿を揺らす笑い声。無視出来るでもなく、かといって狂気に至るまでもなく。まるで真綿で縊る様に逆撫で続ける。 これは、遺品。対価と言う名の、呪い。 正気は、負念へ。 狂気は、獣念へ至らせる。 共に彼女が嫌悪するモノ。 故にアクイは、その狭間が在るべき場所と。 喘ぐ様に息を吐き。コックを閉めて浴室を出る。 濡れた身体にバスローブを羽織り、エフドの待つ部屋へ。 今後の関係など、泡沫程にも。それでも、今は彼を求める。 情欲に溺れれば。一時は苦悩の忘却が叶うのではと。 辿り着いた部屋のノブにかけようとした手が、聞こえて来た会話に止まる。 「はっきり言っておく。あいつと暮らすなら、平和は諦めろ」 知り切った声。 「結婚が決まった様な言い方ですね?」 「違うのか?」 紡がれた単語に、震える。悟られる様子も無いのに、恐れて壁に張り付く。 彼が、身体の関係だけを求める男では無い事は理解していた。 全て、承知した上での筈だったのに。 「俺はあいつに自分ほど危ない橋を渡らない様にさせたかったが、伝わったのは腐った世の中の渡り方だけだった。俺自身が無難な暮らしを分かってなかったからな」 自嘲の笑みを浮かべながら、父は語る。 「俺の子育て方針のちぐはぐさは、あいつを見れば分かるだろう? 極端に男好みな見た目で気を惹きながら、舐めるなと突き落として手綱を握る。そんな風に仕込みながら、俺は自分と同じ生き方をさせまいとした。今思えば俺は妻がもういないのをいい事に、ラフィーを自分好みな女にしようとしていた。だからあいつは俺を見放したんだろうよ」 自身と娘が生きる為、敢えて人道を外れた男。彼が息子になる男に伝えるのは、そんな生き方が娘に嵌めた歪な翼。そして、もはや自身にその飛び方を矯正も制御する術も無い事実。 彼は娘の厄介さを話す事で、認めながらも覚悟を求める。 ラファエラは、眩暈を覚える。 自分が話すべきだった事。 話さねばならなかった事。 ソレを、話された。 此の世で最も蔑視していた父に。 (パパは君が思う程、愚かじゃなかった) 屈辱と罪悪感。 内なる悲観思考が蠢いて、『彼女』の声で嘲り出す。 (君はパパの籠を破ったつもりだったけど) 嘲笑か。 (備え付けの鍵で開けただけ) 哀れみか。 (自覚しなければならなかった。何せ君は) ソレまでが嘘の様に、理路整然と。 (綺麗過ぎて、分かり易い) いっそ、笑い続けてくれれば良いモノを。 (この親子は揃いも揃って、やる事がいちいち仰々しいな。確かに俺はそのつもりだ。多分あいつも。わざわざこんな所を用意するぐらいには、本気だろう) そんな事を思いながら、エフドは返すべき答えを返す。 「俺は戦士でいるのが嫌じゃない。そういう奴でなきゃ彼女は預かれないでしょうし、そういう奴はザラにはいない筈です。それに、俺には主体性がないので。彼女がいないとやる事を見つけれないんですよ」 満足気に、ニヤリと笑う。 「止やしないさ。俺にはもう止められんからな」 確かな、譲渡契約の履行。 (割り込めない?) 深層の、『彼女』は説く。 (正しく、此処で縮こまって無力な女子を演ずれば。彼を更に飼いならせよう。こんな格好で震えて魅せれば、効果的。雌としての戦略ならば正道。とは言え……) 講義は、冷ややかに。 (末長い契りを結ぶのに、なおこの様な獣式?) 五月蠅い。 (ソレならソレ。先に述べた通り、雌の生存戦略としては頗る正しい。ただ、人と見れば下賤の一言) 黙れ。 (それでも構わぬと言うのなら、一興。精々、身体磨きを頑張る事) 堪らず上げようとした声を制する様に、ドアが開いた。 竦む前に立ったエフドは、穏やかな声で言った。 「お節介な父上殿は、お帰りになったぞ?」 ◆ 差し出された指輪を前に、ラファエラは動く事も出来ずにいた。 「俺達が生きてる内は、戦うべき奴らは無数にいるだろう。実の所、俺も平和な暮らしって奴に覚えがない」 そんな彼女を前に、エフドは告げる。 「地獄行きも決まってる。だから、道連れが欲しいんだ」 ただ、ハッキリと。 「一緒に、なってくれ」 答えは、出なかった。何を出しても、愚劣と思えた。こう言うのが精一杯だった。 「今は……もっと目先の目的を果たして。あいつを黙らせれれば、考えれるから……」 精一杯に絞り出し、逃げ出した。 『あいつ』が誰の事なのかすら、曖昧なのに。 ◆ 逃げ込んだ自室の中で、嗚咽を零した。 響くアクイは、また遠い笑い声。見放された気がして、それさえも。 「随分と酷いザマじゃないか」 声に、身が凍る。 「本懐は遂げたのだろう? なら、万々歳じゃないか」 エフドではない。父でもない。アクイですらない。 琥珀の、姫。 「そう言う事ね……」 振り返る事は出来ず。 「パパを、連れて来たのは……」 「大事な娘をやるんだ。当然の権利だろう?」 テーブルにあった花瓶を掴んだ瞬間。 「消してやろうか?」 ビクリと、止まる。 「消してやろうか? その、呪い」 「何を……?」 「簡単だ。 『上書き』すれば良い」 「上書き……?」 「ソレは、アクイの命の残滓を媒体にした呪いだ。より強い命で上書きすれば、容易に消える」 嫌な予感がした。 とてもとても、嫌な予感。 「丁度良いのが、手近にあるな」 待て。 「『アレ』なら、強さ、執着、嗜好性。全てにおいて、申し分ない」 何を。 「アレの命なら、呪いに変えても君の害にはならない。寧ろ、『護呪』となるだろう」 何を。 「アレとしても、本望だろうさ」 何を! 「エフドの、命ならな」 「やめろ!!!」 激昂と共に投げつけた花瓶が、琥珀の粒子と化して溶け消える。 その残滓の向こうで、『麗石の魔女・琥珀姫』はクスクス笑った。 「そうそう、ソレで良い」 目深に被った魔女帽子の奥で、とてもとても嬉しそうに。 「そんな方法に逃げた所で、君の屈辱も怒りも消えやしない。結局は、『魔女に対する敗北』に変わりは無いからな」 睨みつける瞳を、愛しく愛でて。 「そうさ、その目のままで這いずり回れ。命の限り足掻いて、アクイを捻じ伏せろ。それを成して初めて君は勝利し、屈辱や怒りから解き放たれる」 クイと動く人差し指。 「何、そう気張る事は無い。共に戦う伴侶は決まっているのだから」 小さく弾ける音。壊れた戸の鍵が、床に落ちる。 「さて、私もお暇しようか。後は若い者同士、よろしくやると良い」 笑う小さな姿が、琥珀の煌めきと共に消える。 入れ替わる様に、ドアが開く。見れば、戸口に立つ彼の姿。 つかつかと近づいたエフドが、彼女の前に跪く。 「ラファエラ……いや、ラフィー」 初めて、その名で呼ぶ。 「俺はまだ戦えるぞ。お前となら。それに、戦うだけで終わらせない」 そして、再び差し出す証の輝石。 「俺に、道を示してくれ」 今度こそ、真正面から見つめ。 「終わらないの……」 こちらも初めて、曝け出す。 「怒りも、屈辱も……」 弱さと共に、最後の尋問。 「いつまで、付き合えるの?」 「地獄の、底の底まで」 一瞬の躊躇も無く、返った言葉。 微笑んで、受け取る指輪。 「なら、始めましょう。永遠の、腐れ縁を結ぶ儀式を」 指輪が光る指で誘う先は、悪趣味な程に飾り立てた寝具。 その意地汚さが、正しく相応しい。 「望むところだ」 ニヤリと笑い、誘いに応じる。 妖しく燃える燭台の焔。影の向こうで、軋む音。 混じる呼気が紡ぐ約束は、ただ一つ。 ――Dont forgive――。
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*** 活躍者 *** |
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