平安なき約束の地
普通 | すべて
1/1名
平安なき約束の地 情報
担当 土斑猫 GM
タイプ ショート
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 2 日
公開日 2022-05-05 00:00:00
出発日 0000-00-00 00:00:00
帰還日 2022-05-05



~ プロローグ ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ 解説 ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

エフド・ジャーファル ラファエラ・デル・セニオ
男性 / 人間 / 墓守 女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い
「やぁセニョール。義理の息子になりそうだから挨拶に来たよ」
「結婚が決まったような言い方ですね」
「違うのか?」
この親子は揃いも揃って、やることがいちいち仰々しいな。確かに俺はそのつもりだ。多分あいつも、わざわざこんな所を用意するぐらいには本気だろう。

俺は戦士でいるのが嫌じゃない。そういう奴でなきゃ彼女は預かれないでしょうし、そういう奴はザラにはいないはずだ。それに俺には主体性がないので、彼女がいないとやることを見つけれないんですよ。
「止やしないさ。俺にはもう止められんからな」

ラファエラ、いや、ラフィー。俺はまだ戦えるぞ、お前となら。それに戦うだけで終わらせない。俺に道を示してくれ。


~ リザルトノベル ~

『アハ、あはハ、アははハはハハハ!』
 最期に響いたのは、苦痛の悲鳴でも屈辱の怨嗟でもなく。
 ただただ喜びに満ちた狂声。
『着いた! 辿り着いたよ! アははハはハ! 門! 解錠の儀! 銀狼! ボクの銀狼! 君の場所! 胎内!!! やっと! あは! 今日こそ今こそ今宵こそ! 秋の終わり冬の始まり死者の祭りボクの君のボク達の!』
 終わりを迎え。おわりを受け入れ。それでもヲワリは訪れない。
「五月蠅い!」
 『ラファエラ・デル・セニオ』は喚いて、貫いた心臓にさらに矢を。
 けれど。
『あはハハははは! 今行くよ! 迎えに来て! 向こう!! 此方! すぐ傍! 溶けよう! 混ざろう!! ウロボロスの輪環! 永久永遠永久無限銀狼ぎんろうアハハ、あはは、アハハハハ!!!』
 また、一刺し。
 頬を濡らす血。
 抉り取る様に引き抜いて。
 止まらない。
 怒りも。
 屈辱も。
『アハハハハははは、あは、はははははは!』
「黙りなさい!」
 殺すと、決めたのに。
 ずっと。
 ずっと。
 なのに、どうして。
『アは……』
 見ていた。
 アクイが。
 血塗れの顔で。
『ありガとう』
 声。
『ありガトウ、アリガトウ。綺麗な、君』
 感謝を。
 至上の謝意を。
『至れるよ。君のお陰で。ああ、何て愚かだったんだろう』
 そう、求めていたのは。
『死は摂理。絶対の理。神じゃないボクが、干渉する術など在りはしない。ねぇ、銀狼。ボクが君を手繰れないのなら、ボクが其処まで沈めばいい。簡単。あまりにも、基本。だから、だから気づけなかった。許しておくれ。愚かなボクを』
 やめろ。
『ありがとう、綺麗で浅慮で哀れな君。ボクの泥濘を救ってくれた。示してくれた』
 やめて。
『ありがとう有難うアリガトウ。返す対価は』
 求めてない。
『大好きな君に』
 嬉し涙の様に血を流し、最後で最期の贈り物。
『永久に輝く、燈火を』
 焔が灯る。
 心と言うランタン。
 絶える事無く溢れる、感情と言う種油。
 狂気は染みつき沁み込み。
 ソレを抉り取ろうと。
 また、手を振り上げた。
「ラファエラ」
 肩を掴まれ、我に返る。
「もう良い。終わった」
 同じ様に、血に顔を染めた『エフド・ジャーファル』。見れば、組み敷いていた筈の小さな形は既に崩れ。
「あ……」
「俺達の、勝ちだ」
「私達の……勝ち……?」
 込み上げるモノは何も無く。ひしゃげた弓矢が、コロリと落ちる。
 カラカラと泣く風の中、遠く近く。笑う声。
 復讐と言う、虚しい旅路。その終わり。

 ◆

「約束は果たした」
 夜、宿屋のバーカウンター。安物のジンを揺らしながら、エフドは告げた。
「次は、お前の番だ」
 大戦前夜に交わした盟約。
 断る権利も、理由も在りはしない。
「……分かってるわ……」
 虚ろに返して、グラスのカルーアミルクを舐める。
 誤魔化しを求めた甘味も、また虚ろ。

 ◆

「……この手の場所は任務では何度も来たが。主賓となると今だに落ち着かんな」
 週末、エフドの姿は郊外のコテージにあった。
 約束の履行の為、ラファエラはわざわざ場所を用意していた。
 父の庇護下にあった頃から所有していた別荘。相応に込み入った誘い。
 それならばと。

 ラファエラは、先に風呂に入っている。彼女の本気がどちらの方向にあるのかは不明だが、まあ結果にさしたる違いはない。
 ベランダで夜風に涼みながら、大事の前に『邪魔者』にお暇して貰う。
「出て来い。場合によっては、見逃してやる。舞台を、血で飾る趣味はないんでな」
「結構な事だ。あんなじゃじゃ馬だが、悪趣味に溺れては外面が悪いからな」
 現れた男を見て、少なからずの驚きを覚える。
「やぁセニョール。義理の息子になりそうだから、挨拶に来たよ」
 『エフライン・デル・ゴダード』。アクイの居所を突き止めるにあたって、莫大な資金と広い人脈で多大な貢献をした協力者。そして。
 かつて娘の告発によって監獄送りになった、重き業を重ねし父。

 ◆

 熱いシャワーの雫を受けながら、ラファエラは考えていた。
 アクイの息の根を止めてから、脳漿を揺らす笑い声。無視出来るでもなく、かといって狂気に至るまでもなく。まるで真綿で縊る様に逆撫で続ける。
 これは、遺品。対価と言う名の、呪い。
 正気は、負念へ。
 狂気は、獣念へ至らせる。
 共に彼女が嫌悪するモノ。
 故にアクイは、その狭間が在るべき場所と。
 喘ぐ様に息を吐き。コックを閉めて浴室を出る。
 濡れた身体にバスローブを羽織り、エフドの待つ部屋へ。
 今後の関係など、泡沫程にも。それでも、今は彼を求める。
 情欲に溺れれば。一時は苦悩の忘却が叶うのではと。
 辿り着いた部屋のノブにかけようとした手が、聞こえて来た会話に止まる。
「はっきり言っておく。あいつと暮らすなら、平和は諦めろ」
 知り切った声。
「結婚が決まった様な言い方ですね?」
「違うのか?」
 紡がれた単語に、震える。悟られる様子も無いのに、恐れて壁に張り付く。
 彼が、身体の関係だけを求める男では無い事は理解していた。
 全て、承知した上での筈だったのに。

「俺はあいつに自分ほど危ない橋を渡らない様にさせたかったが、伝わったのは腐った世の中の渡り方だけだった。俺自身が無難な暮らしを分かってなかったからな」
 自嘲の笑みを浮かべながら、父は語る。
「俺の子育て方針のちぐはぐさは、あいつを見れば分かるだろう? 極端に男好みな見た目で気を惹きながら、舐めるなと突き落として手綱を握る。そんな風に仕込みながら、俺は自分と同じ生き方をさせまいとした。今思えば俺は妻がもういないのをいい事に、ラフィーを自分好みな女にしようとしていた。だからあいつは俺を見放したんだろうよ」
 自身と娘が生きる為、敢えて人道を外れた男。彼が息子になる男に伝えるのは、そんな生き方が娘に嵌めた歪な翼。そして、もはや自身にその飛び方を矯正も制御する術も無い事実。
 彼は娘の厄介さを話す事で、認めながらも覚悟を求める。

 ラファエラは、眩暈を覚える。
 自分が話すべきだった事。
 話さねばならなかった事。
 ソレを、話された。
 此の世で最も蔑視していた父に。
(パパは君が思う程、愚かじゃなかった)
 屈辱と罪悪感。
 内なる悲観思考が蠢いて、『彼女』の声で嘲り出す。
(君はパパの籠を破ったつもりだったけど)
 嘲笑か。
(備え付けの鍵で開けただけ)
 哀れみか。
(自覚しなければならなかった。何せ君は)
 ソレまでが嘘の様に、理路整然と。
(綺麗過ぎて、分かり易い)
 いっそ、笑い続けてくれれば良いモノを。

(この親子は揃いも揃って、やる事がいちいち仰々しいな。確かに俺はそのつもりだ。多分あいつも。わざわざこんな所を用意するぐらいには、本気だろう)
 そんな事を思いながら、エフドは返すべき答えを返す。
「俺は戦士でいるのが嫌じゃない。そういう奴でなきゃ彼女は預かれないでしょうし、そういう奴はザラにはいない筈です。それに、俺には主体性がないので。彼女がいないとやる事を見つけれないんですよ」
 満足気に、ニヤリと笑う。
「止やしないさ。俺にはもう止められんからな」
 確かな、譲渡契約の履行。

(割り込めない?)
 深層の、『彼女』は説く。
(正しく、此処で縮こまって無力な女子を演ずれば。彼を更に飼いならせよう。こんな格好で震えて魅せれば、効果的。雌としての戦略ならば正道。とは言え……)
 講義は、冷ややかに。
(末長い契りを結ぶのに、なおこの様な獣式?)
 五月蠅い。
(ソレならソレ。先に述べた通り、雌の生存戦略としては頗る正しい。ただ、人と見れば下賤の一言)
 黙れ。
(それでも構わぬと言うのなら、一興。精々、身体磨きを頑張る事)
 堪らず上げようとした声を制する様に、ドアが開いた。
 竦む前に立ったエフドは、穏やかな声で言った。
「お節介な父上殿は、お帰りになったぞ?」

 ◆

 差し出された指輪を前に、ラファエラは動く事も出来ずにいた。
「俺達が生きてる内は、戦うべき奴らは無数にいるだろう。実の所、俺も平和な暮らしって奴に覚えがない」
 そんな彼女を前に、エフドは告げる。
「地獄行きも決まってる。だから、道連れが欲しいんだ」
 ただ、ハッキリと。
「一緒に、なってくれ」
 答えは、出なかった。何を出しても、愚劣と思えた。こう言うのが精一杯だった。
「今は……もっと目先の目的を果たして。あいつを黙らせれれば、考えれるから……」
 精一杯に絞り出し、逃げ出した。
 『あいつ』が誰の事なのかすら、曖昧なのに。

 ◆

 逃げ込んだ自室の中で、嗚咽を零した。
 響くアクイは、また遠い笑い声。見放された気がして、それさえも。

「随分と酷いザマじゃないか」

 声に、身が凍る。
「本懐は遂げたのだろう? なら、万々歳じゃないか」
 エフドではない。父でもない。アクイですらない。

 琥珀の、姫。

「そう言う事ね……」
 振り返る事は出来ず。
「パパを、連れて来たのは……」
「大事な娘をやるんだ。当然の権利だろう?」
 テーブルにあった花瓶を掴んだ瞬間。
「消してやろうか?」
 ビクリと、止まる。
「消してやろうか? その、呪い」
「何を……?」
「簡単だ。 『上書き』すれば良い」
「上書き……?」
「ソレは、アクイの命の残滓を媒体にした呪いだ。より強い命で上書きすれば、容易に消える」
 嫌な予感がした。
 とてもとても、嫌な予感。
「丁度良いのが、手近にあるな」
 待て。
「『アレ』なら、強さ、執着、嗜好性。全てにおいて、申し分ない」
 何を。
「アレの命なら、呪いに変えても君の害にはならない。寧ろ、『護呪』となるだろう」
 何を。
「アレとしても、本望だろうさ」
 何を!

「エフドの、命ならな」

「やめろ!!!」
 激昂と共に投げつけた花瓶が、琥珀の粒子と化して溶け消える。
 その残滓の向こうで、『麗石の魔女・琥珀姫』はクスクス笑った。
「そうそう、ソレで良い」
 目深に被った魔女帽子の奥で、とてもとても嬉しそうに。
「そんな方法に逃げた所で、君の屈辱も怒りも消えやしない。結局は、『魔女に対する敗北』に変わりは無いからな」
 睨みつける瞳を、愛しく愛でて。
「そうさ、その目のままで這いずり回れ。命の限り足掻いて、アクイを捻じ伏せろ。それを成して初めて君は勝利し、屈辱や怒りから解き放たれる」
 クイと動く人差し指。
「何、そう気張る事は無い。共に戦う伴侶は決まっているのだから」
 小さく弾ける音。壊れた戸の鍵が、床に落ちる。
「さて、私もお暇しようか。後は若い者同士、よろしくやると良い」
 笑う小さな姿が、琥珀の煌めきと共に消える。
 入れ替わる様に、ドアが開く。見れば、戸口に立つ彼の姿。
 つかつかと近づいたエフドが、彼女の前に跪く。
「ラファエラ……いや、ラフィー」
 初めて、その名で呼ぶ。
「俺はまだ戦えるぞ。お前となら。それに、戦うだけで終わらせない」
 そして、再び差し出す証の輝石。
「俺に、道を示してくれ」
 今度こそ、真正面から見つめ。
「終わらないの……」
 こちらも初めて、曝け出す。
「怒りも、屈辱も……」
 弱さと共に、最後の尋問。

「いつまで、付き合えるの?」
「地獄の、底の底まで」

 一瞬の躊躇も無く、返った言葉。
 微笑んで、受け取る指輪。
「なら、始めましょう。永遠の、腐れ縁を結ぶ儀式を」
 指輪が光る指で誘う先は、悪趣味な程に飾り立てた寝具。
 その意地汚さが、正しく相応しい。
「望むところだ」
 ニヤリと笑い、誘いに応じる。
 妖しく燃える燭台の焔。影の向こうで、軋む音。
 混じる呼気が紡ぐ約束は、ただ一つ。

 ――Dont forgive――。



平安なき約束の地
(執筆:土斑猫 GM)



*** 活躍者 ***

  • エフド・ジャーファル
    駄目なもんは駄目だ
  • ラファエラ・デル・セニオ
    私は殺し屋よ。それも自発的な。

エフド・ジャーファル
男性 / 人間 / 墓守
ラファエラ・デル・セニオ
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い