~ プロローグ ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ 解説 ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
~ ゲームマスターより ~ |
※イベントシチュエーションノベル発注のため、なし。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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詳細はお任せします。 | ||||||||
~ リザルトノベル ~ |
とある夜の山中。小さな小さな小屋が一つ。窓には、まだ灯り。 『お休みにならないのですか?』 「式までもう間がないからね。頑張るんだ」 かけられた声にそう答え、『ハニー・リリカル』は手の中の布に針を通す。 『にしても、何でまた手縫いなんでっか? 魔法使えば、あっという間でしょうに』 カップを渡しながらの問い。『ありがと』と、啜る。 「確かに、魔法使えば一発だけどさ」 見つめる、出来かけのドレス。 「でも、コレだけはこの手で。だって……」 ――大切な、友達だから――。 『……そうですわね……』 理解してくれる仕事仲間に、訊く。 「君達は、やっぱり行かないの?」 まとめ役の、彼が言う。 「ええ、流石に某共が顔を出しては穏やかでいられない方々もいらっしゃるでしょうし」 「折角の姐さんの晴れ舞台や。わざわざ空気腐らせる必要はあらへん」 「招待状をいただけただけで、十分ですわ」 笑う彼ら。正直、寂しい。でも、気遣いは嬉しくて。 「じゃあさ、落ち着いた頃にお邪魔しよう? 琥珀様に頼めば、人に見られない様に飛ばしてくれるから」 「ああ、それなら問題ナッシングや」 「なら、とびきり美味しい蜜菓子をお土産に」 「楽しみですな」 嬉しそうな顔の『蜂狩り三獣士』。ソレでもハニーは願う。『いつかは』、と。 だってソレが、君達が遺された意味だから。 「……ね? ヨセフさん、リンファさん……」 彼方の空が白んでいく。 さあ、もう一踏ん張り。 ◆ 「あの娘らしいねぇ……」 合鍵で入った寮室。綺麗に整えられた様を見て、寮母の『ロードピース・シンデレラ』は感心した様に、けれど少しだけ寂しそうに独り言ちた。 「最後くらい、甘えてくれても良かったのに……」 この部屋は、ついこの間まで『タオ・リンファ』と彼女のパートナー『ステラ・ノーチェイン』が暮らしていた部屋。 でも、彼女達が此処に帰ってくる事はもうない。 それでも、この空っぽにロードピースが虚しさを覚える事もない。 住人が消えた部屋の整備は、彼女にとって最もやり慣れた仕事の一つ。けれど、その理由はいつもろくでもない事ばかりで。 寮母になりたての頃は、幾度片付ける毛布を涙で濡らした事か。 そんなもの、泥沼を泳ぐ様な生活の中でとうに枯れたと思っていたのに。 それほどまでに、寮で暮らす浄化師達は彼女にとってかけがえのない子供達。帰らぬと知らされる度に、どうかコレで最後にと。そう願いながら思い出の残る部屋を掃除した。 そんな、悲しみと抱き合わせの作業。 けれど、今回は違う。 彼女は正しく、この巣箱から巣立っていった。悲しみと苦しみの煉獄を生き抜き、新しい空へと飛び立って行った。 窓に歩み寄り、開け放つ。吹き込むそよ風と、初夏の日差し。遠い空の向こうに聞こえる鐘の音に、これでもかと言う祝福を。 「リンファ、幸せになれよーっ!!」 歩いていた浄化師達が、吃驚して見上げる。けれど、すぐに察して。同じ様に空の果てに向かって。 オーディンよ。アディティよ。世界の風を統べる神々よ。 どうか。 この祝福を、今日旅立つ彼女の元へ。 「よしっ……と!」 満足気に頷いて、ロードピースは仕事に取り掛かる。 思い出の向こうに在る、新しい出会いの為に。 哀しい涙は、もう流ない。 ◆ 鋭い、けれど逸した威力の剣閃を紙一重で避ける。 追撃する刺突。何とか躱して距離を取る。 「にしゃら、逃げろ!」 少女の声に、躊躇いながらも逃げ出すのは数匹の鹿。ただ、普通の鹿ではない。刻まれた赤い文様と魔方陣。 ――ベリアル・スケール2――。 彼らの姿が森に消えるのを確認し、ホッと息を吐いたのも束の間。凄まじい殺気が『ブリジッタ』に迫る。 「このぉ!」 咄嗟に弾くが、ケタ違いの威力に手が痺れる。 「にしゃ、ほんなごと人間か……?」 「ベリアル(貴様ら)を狩る者が、人以外の何だと言うのだ?」 手にした豪剣を一振りし、『サー・デイムズ・ラスプーチン』はそう告げる。 同時に、また一撃。 「んぎっ!?」 衝撃を流し切れず、背後の木に叩き付けられるブリジッタ。彼女を、冷めた目で見下しながら。 「スケール5……。弱体化したモノだ。魂を喰らう事をやめた故か?」 「そーだ……」 何とか立ち上がりながら、ブリジッタは言う。 「ベリアル(うち達)ん役目は終わった。もう人ば喰う理由はなか。なんに……」 「だから何だと言うのだ? 貴様らが人を喰らった事実は変わるまい」 「……」 「如何に上部を取り繕った所で、罪禍は消えぬ。償うと言うのならば、大人しく滅びるが良い。ソレのみが、貴様らが遺した怨嗟を癒す術だ」 押し黙るブリジッタを見つめ、冷たく笑む。 「そう言えば、貴様は『最硬』の付き人であったな。ならば、奴も此処に来るか?」 「……!」 「丁度良い。一人で逝くのが寂しいと言うのならば、奴も共に逝かせてやろう」 敬愛する……否。『愛する者』へ向けられる殺意。諦めかけた心に、火が灯る。 「ギガス様に、手ば出しゅな!!」 武器を構え、突貫する。けれど、なお高みに達した闘将の剣技。ありったけの魂を込めたソレさえも、容易く打ち伏せる。 「カハッ!」 「終わりだ」 地面に転がったブリジッタの魔方陣に、刃を落とす。けれど。 「む?」 すんでで刃を止めたのは、琥珀が模るイバラの蔓。誰の仕業かを察したデイムズが問う。 「何の真似だ? 琥珀」 「いや、大した事ではないが……」 いつの間にか背後の大岩に腰掛けていた『琥珀姫』が笑う。 「今日は特別な日なんでね、血生臭い事は控えて貰いたいのさ。特に、『君』にはね」 「……言っている事が分からんな。邪魔すると言うのなら、貴様も切り捨てるぞ」 餓虎の殺気を軽く受け流し、琥珀の姫はまた笑う。 「まあ、そうガッツくな。コレは私だけの頼みじゃない。その子も、込みだ」 「何?」 瞬間、デイムズとブリジッタの間で閃く六彩の光。現れるのは、龍翼を羽ばたかせる巫女姿の少女。 「いんたは……」 「シャオマナ……」 二人の間に舞い降りた『太陽の命姫・シャオマナ』が、デイムズに向かって語りかける。 (猛き人よ。かの音をお聞きください) 「音……?」 念話に促され、耳を澄ます。聞こえて来たのは、遠く、けれど高く響く教会の鐘の音。 (婚姻の鐘の音でございます。ヨセフ様と、リンファ様の……) 二人の名に、デイムズの隻眼が細まる。 (人の怨嗟は、正しく道理の通るモノ。されど、どうか今日だけは……) 言葉が終わる前に、音が鳴った。 剣を収めたデイムズが、クルリと背を向ける。 「興が殺がれた。ベリアル、次は無いぞ」 言い残し、森の中へ消えていく。その背に、シャオマナは黙って頭を下げた。 「……助けてくれたと? お礼な、言わんけんっちね」 立ち上がったブリジッタが、そう言いながら礼をする。 「感謝するなら、新郎新婦にするんだな。でなけりゃ、正味知ったこっちゃなかったぞ?」 意地悪く笑う魔女を無視して、鐘の音の方向を見つめるシャオマナに問う。 「教皇しゃん、結婚しゅると? 相手ん名前にも憶えのあっけん。浄化師やったっけ?」 (うん) 「よかよかなと? 教皇っち部下の結婚げな、色々言われそうばってん」 その言葉に、嬉しそうに微笑むシャオマナ。 (心配してくれるの?) 「まいね。なんだかんだ、三強ん御方様達の託したばい人達やし……」 (ありがとう……) そして、友達に言う様に。 (なら、私もお祈りさせてもらうね。貴女が、大好きな方とずっと共に在れる様に) 「はい!? なん言うてると!!?」 (良いでしょ?) 「ぐ……ぐむ……。ま、まあ……) 真っ赤な顔をするブリジッタを見て、シャオマナは笑った。 並んで果てを見つめる二人。眺めながら、琥珀姫は思う。 神と魔が並び、共に人を祝福する。本当に小さな、けれど確かな奇跡。 それも全て、彼ら彼女らが痛みと願いの果てに辿り着いたモノ。 「託した甲斐は、それなりにあったろう? なぁ、ネームレス・ワン」 語り掛けるのは、今は此の空の下。共に在る筈の『彼』。 その耳にも、どうかこの鐘が届く様に。 ◆ 出席した者達は、正しく世界の喜びを受けた式であったと口を揃えて言った。 雲一つ無く晴れ渡った空。注ぎ降る優しい日差し。吹き渡る新緑の香満ちる涼風に、桜を始めとした彩とりどりの華が舞い踊る。 神々の慈愛と加護に包まれたヴァージンロードを、故郷の民族衣装の趣彩るドレス(ハニー渾身作)を纏ったリンファが歩く。手を引くのは、同じ趣の衣装で飾ったステラ。本来は両親が務める役なれど、此度に関しては彼女こそが相応しかろうと。 カチコチに緊張して手と足が一緒に出てるステラに微笑むリンファに、集った仲間達が心からの祝福を送る。 共に戦った者。時に衝突した者。一緒に、涙を零した者。 心に焼き付いたその顔が、今は至上の歓喜に満ちて。 囁く様に呼びかける声。顔を上げれば、先に壇で待つ彼の姿。かつての上司。永久の憧れ。そして、いつかの想い。その全てを抱き集め、今はただ彼女一人の為に。 差し出される手。取った手が引かれ、そのまま抱き止められる 沸き起こる拍手。 未来への歩み。示す扉。 最後に投げるブーケは、次へのバトン。 さあ。続くのは、誰? ◆ その夜、関係者に提供された寝室の一つ。『カレナ・メルア』は微かな泣き声に目を開けた。 「盟友……?」 隣りのベッドを覗き込めば、枕を涙で濡らすステラの姿。 「……どうしたの?」 「……マーと離れて寝るの……はじめてなんだゾ……」 「……そっか」 ふふ、と笑って。ステラの隣りに潜り込む。 「じゃあ、今晩はボクが代わりかな?」 「めいゆう……」 小さな身体を抱き締めながら、囁く。 「大丈夫だよ。リンファさんは、君を置いてったりしないから。そして、ヨセフさんも君からリンファさんを奪ったりしない……」 「…………」 「家族が増えるんだ。君を包む、愛が増える。ボク達が、そうだったみたいに」 「…………」 「心配しないで。皆、一緒だよ。これからも、ずっとずっと」 「かれな……」 「幸せになろうね。皆で。『大好きな、ステラ』……」 「うん……」 程無く、安らかな寝息を立て始める二人。反対側で寝たふりしてた『セルシア・スカーレル』がギリギリ毛布を齧りながら、怨嗟を漏らす。 「……五年したら、容赦しないわよ……泥棒猫ぉ……」 コワイ。 「あ……」 「どうした?」 ふと声を漏らしたリンファに、ヨセフが訊く。 「ステラの声が、聞こえた様な気がして……」 その言葉に、フムと頷くヨセフ。 「一応、カレナ達が同室しているが……。気になるか?」 「はい……。別々の夜を過ごすのは初めてですから……」 フムフムと頷く。 「全く、お前達の絆は深い。さて、俺の割り込む隙など在るモノか……?」 「あ、いえ。ソレとコレとは……」 言い繕おうとした瞬間、スルリと抱き上げられた。ポカンとする間もなく、優しく置かれるベッドの上。 「へ? あ??」 混乱するリンファの上に、そっと覆い被さるヨセフ。 「まあ、ソレについては誠心誠意立ち向かうとしよう。取り合えず……」 リンファの寝間着のボタンを、手早く外す。手際が、良い。 「あ、あの……」 「拒否権はないぞ? 今夜だけは、俺一人のモノだ」 「は……」 『はい』と言おうとした口が、塞がれる。 甘く蕩ける熱の夢。リンファの切ない声。淡い光の中で、微かに鳴いた。
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*** 活躍者 *** |
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