~ プロローグ ~ |
●アルバトゥルス駅舎にて |
~ 解説 ~ |
【目的】 |

~ ゲームマスターより ~ |
ついつい魔術やベリアルといったファンタジー部分にばかり注目してしまうので、今回は蒸気機関車のお話にしました。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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三号車でエッグを探すよ! だってすぐとなりは食堂車 ベイクドチーズケーキ見た?すっごく美味しそうだよね ケーキ♪ケーキ♪ とはいえ、ここはおちついた雰囲気だし 何より静かに演奏を聴きたい人いるだろうからお静かに。 エッグは二個探すよ だって食事は二人でとった方が美味しいもんね。 探しかたをジョシュアから教わった じゃあどこかに入れられてたり、柔らかいものにくるまれてる可能性が高いかな?そういうところを中心に見ていくよ。 食堂車 ケーキセットA! 凄く良いかおり、薔薇ジャムもお洒落だね いただきまーす!うん、美味しい! ジョシュアのケーキも深みのあるかおりで美味しそうだね えへへ…、ねえ、一口ちょうだいよ。 交換?勿論どうぞ! |
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◆リームス カロルが最も楽しみであろう三号車をメインに乗車。 後でレポートを提出するため装飾や車窓も観察しておく。 列車内の移動時はカロルの手を取り 彼女が揺れで転んだりしないよう配慮を。 「カロル。ここで少し待っていて」 三号車の演奏の邪魔にならぬよう小声で告げて 僕はイースターエッグを探しに行く。 一・二号車まで見に行こうとしたのだけど カロルがそう言うなら三号車内を隈なく探すよ。 花やカーテン、座席の裏。体格上低いところが探しやすい 懐中時計で時間を確認して ブルーベルの丘が見える頃になったらカロルに声を掛ける。 景色と演奏、楽しんでるかな。 見つけたエッグを手に四号車へ。 ふたつ? ……うん。たぶん今、僕も楽しんでる |
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■目的 ティ:景色と復活祭 ロス:ペット状態 「復活!」 「実に復活!」 ティは元気に答え ロスは人間時なら元気に、狼時は大人しく 向かうは1か2号車 ラブラブは大切に(拳握り締め そういう人達の邪魔にならないよう のんびり外を眺めながら縫い包みをふわふわ触って元に戻し 卵があるっぽいならチャック等から卵を取り出す 怪しい小箱があれば開ける 揺れて落ちそうな縫い包みは落ちないよう置き直す 可能な限り沢山の卵を持って食堂車へ 一個はケーキセットAでティ 他は全部ランチセットでロスに ロスは渋々人間戻って食事 ロスが食べきったらバックに入れ 食事が足りないだろうかとティはバック内のロスに非常食を差し出し 1か2号車に戻って景色見て和む |
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2人ともPC口調です 一号車 実に復活! いやぁ~いい知らせを聞いた! なんだよルド、ブツブツ言って 楽しもうぜ イースターエッグを探すか! 上の荷物置きとか、椅子の下、裏 あとは飾りに紛れてないかチェックだな 景色を見ているルドが目に入る (折角の祭りなのになぁ。こういうところ無愛想っていうか) ルドのところに行く 「一緒にイースターエッグ探そうぜ」 あっ、心底めんどくさそうな顔した 腕を引いて立たせる 「俺一人じゃ見つからないんだ。頼むから一緒に探してくれよ」 「ありそうなところを指示してくれれば見つけるから」 ルドの指示であちこち探しまわる 一度探したところも、落ち着いてみつけると 「あった!」 呆れたように笑われる |
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客車で景色を眺めながらエッグ探し ◆シュリ これが蒸気機関車…! 見て見てロウハ、景色が動いてる…! あ、そうね、イースターエッグも探さなくちゃ この子(ぬいぐるみ)かわいい…お持ち帰りしていい?だめ? なかなか見つからない…え、ロウハ見つけたの? すごいわ、さすがね…! 後で食堂車に行くとして…少し景色を眺めてていい? ブルーベルの咲く丘が見たいから ◆ロウハ お嬢、随分はしゃいでんな なんつーか、子供みてえ エッグハントってやつもするんだろ? あとそのぬいぐるみは戻しとけ お嬢、探すの下手だな こういうのは物陰に隠されてるって相場が決まって…ほら、あった …そーいや、お嬢とこんな風にどこかに出かけたことってなかったな |
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◆目的 エッグを探し、四号車のスイーツを食べる ◆一、二号車 ・座席の裏側や下、ぬいぐるみに隠されたエッグを探す 唯「イースターに参加する機会が二度も来るなんて…」 瞬「列車全体がイースター仕様なんて凄いねー!」 唯(こ、こんなにイースターに溢れた空間… 街も凄かったですが、列車も列車で素敵…です…!) 瞬(あ、いづ…目がキラキラだ!) ◆四号車 ・ケーキを食べる 唯「美味しそう…!」 瞬「良かったねぇ…。この前も思ったけど いづって甘いものの前だといつもより目がキラキラだね! 甘いもの、好き?」 唯「え!あ…はい…あの、わたしなんかが…その…」 瞬「何で申し訳なさそうなの!好きなものは目いっぱい楽しも!」 唯「!はい…っ!」 |
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イースター特別列車…!素敵ですね。 イースターの飾りつけはとっても可愛らしいので大好きです。 お花も綺麗ですしうさぎさんのぬいぐるみがとっても可愛らしいです。 イースターエッグ探ししてもいいですか? ぬいぐるみさんの影とかにあったりするんでしょうか?わぁこのうさぎさんのぬいぐるみすごく可愛いですーあっ、卵がありました! いろんな車両を見て回りましたが五号車はまた違った雰囲気ですね。 薔薇が沢山…アーモンドドラジェもピンクでどこかロマンチックです。 ノグリエさん連れてきてくださってありがとうございます。 お礼はアーモンドドラジェを食べさせてくれるだけでいい?ですか。 ふふっ、分かりました。それじゃあ、あーんです。 |
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一/二号車→四号車 季節限定の特別メニューですって 楽しみです。イースターエッグ探し、頑張りましょうね 二人で協力しあえば、きっと見つけることができるはずです 張り切って車内探索 内装も可愛らしいですねと楽しみながら歩いていると足元不注意で転びかけ 近くの座席に咄嗟に縋り付いて阻止 返す言葉もありません… うう、恥ずかしい ふとそのまま下を見ると卵発見 …あら、あそこにあるのってイースターエッグ? 見てくださいノア!私が転びかけたのも何かのお導きだったのかもしれません 喜びつつ早速四号車 ケーキセットA 思っていたより食べ方や作法が綺麗な事に驚いてつい見つめ あら、申し訳ありません。つい では私もいただきます ふふ、おいしい |
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~ リザルトノベル ~ |
●贅沢なひととき シンティラ・ウェルシコロルは、イースター特別列車のビラをじっと見つめた。 「ラグナロクがあった後では、こう、祈りを込めて祝いたいものです」 「祭じゃねえの?」 ロス・レッグにとって祭といえば文字通りお祭騒ぎの賑やかさだ。祈りという静かな言葉はそぐわない気がして、首を傾げる。 「祭です。頑張りましょう」 「んで、この特別列車の試乗に行ってみてぇと」 ずい、と差し出されたビラを受け取り、紙面に目を走らせる。 「……パス。こんな可愛いトコ、俺が似合っワケねぇじゃん」 はっきり断ったはずなのだが、ロスのパートナーは諦めなかったらしい。 「復活!」 「実に復活!」 翌日、気が付いた時には、シンティラが抱える鞄に詰められ、汽車に乗車するところだった。イースターお決まりの文句が頭上を飛び交っている。 (……まぁ、良いか) 狼姿のままで良いなら、何も面倒はない。鞄から鼻先だけを出して再び微睡んだ。 一方シンティラは、汽車が動き出して暫くすると、眠るロスを座席に残し、一人エッグハントへと繰り出した。とはいっても、仲睦まじげな他の乗客たちの邪魔にならぬよう、のんびりとだ。 装飾のぬいぐるみをふわふわと触って、何もなければ戻し、硬い感触があれば、中身を取り出す。走行の揺れで落ちてしまいそうなものがあれば、きちんと置き直し、怪しい小箱があれば、一つ一つ開けていく。 そうするうちに、両手いっぱいの卵が集まった。赤、青、黄色。色とりどりの卵は、見ているだけでも楽しいが、狙いは食堂車で交換してもらえるランチである。 「ロス、食事の時間です」 食堂車に連れてこられたロスは、渋々トランスを解除した。テーブルの上には、所狭しと食器が並べられている。シンティラの分と思わしきケーキがひとつあるきりで、後は全部ランチセットだ。アスパラガスのキッシュに、スコッチエッグ。見ているうちに、食欲が湧いてくる。 シンティラはゆっくりケーキを味わいながら、満足げに息を吐いた。車両を飾る沢山のぬいぐるみと、同じくらいふわふわのロスと、口どけの良いチーズケーキに見た目も華やかな薔薇のジャム。 「贅沢な時間です」 「ああうん、ああいう青紫尽くめの花も」 夢中でキッシュを頬張りながら、ロスはぞんざいにフォークで窓の外を指す。 ブルーベルの丘に差し掛かっていたのだ。 「大好きです」 「俺は、とりあえず大量の飯がいっなー」 すべての皿を空にして客車に戻ると、ロスはさっさと狼姿になって鞄に潜り込んでしまった。食べ足りなかっただろうかと、シンティラは追加の非常食を差し出して、自分は移り変わる景色を存分に楽しむことにする。 好みのかみ合わない二人ではあるけれど、時間は穏やかに流れていくのだった。 ●新発見、ひとつ 「季節限定の特別メニューですって」 座席で発車を待ちながら、リリアーヌ・サヴェリーはチケットを見返し、期待に声を弾ませる。 「楽しみです。イースターエッグ探し、頑張りましょうね」 同意を求められたノア・ネシャートは、曖昧に返事を濁した。 (女ってこういうの好きだよな……) 姉もこんなだったな、と思い出していると、一度大きく揺れてから汽車が動き出す。 駅舎を離れて速度が安定すると、揺れも小さいものになった。これなら車内を立ち歩いても大丈夫そうだ。 「二人で協力し合えば、きっと見つけることができるはずです」 「はいはい。さっさと見つけるぞ」 速攻で終わらせて休もうと決意して、ノアは天井近くの荷棚や照明の陰を探る。残念ながら、二人が最初に腰かけた座席付近には、見当たらないようだった。 「後ろの方の席を見てきますね」 車内は、パステルカラーの花やうさぎのぬいぐるみがそこかしこに飾られて、お祭り気分を盛り上げている。 「おい、ちゃんと前も見ないとあぶな……」 「きゃっ……?!」 ノアが華やかな内装に気を取られている少女に注意を促すのと、リリアーヌが転びかけるのとは、ほとんど同時だった。幸い、咄嗟に背凭れを掴んだので、倒れ込まずに済んだ。 「お前って、結構そそっかしいのな……」 「返す言葉もありません……」 うう、と恥ずかしさに呻いたリリアーヌは、ふと、座席の陰に丸いものを見つけて目を輝かせる。 「見てください、ノア!」 手に取れば、間違いなくイースターエッグだ。絵具で、赤い地に可愛らしい白兎が描かれている。 「私が転びかけたのも、何かのお導きだったのかもしれません」 「荒っぽい導きだな」 内心、転ばなかったことにほっとしつつも、ノアは呆れ顔で言った。 無事にふたつめの卵も見つけたところで、二人は食堂車へと移動した。 給仕にイースターエッグを渡し、リリアーヌはチーズケーキのセットを、ノアはキッシュのランチセットを頼んだ。 「いただきます」 手を合わせてから、フォークを取る。結構いけるな、と無言で咀嚼するノアを、リリアーヌは驚きの目で見つめた。 「……なに?」 「あら、申し訳ありません。つい」 黄金色に見つめ返されて、リリアーヌはその青い瞳を瞬かせた。思っていたよりも綺麗な作法で食べるものだから、意外だったのだ。 「では、私もいただきます」 薔薇ジャムを絡めたチーズケーキを口へ運ぶ。濃厚なチーズの風味に、甘さ控えめのジャムがよくあう。 「ふふ、おいしい」 つい、で済まされたノアは釈然としなかったが、にこにことケーキを楽しむリリアーヌを見ているうちに、まあ、良いかという気分になった。 「……うまいな、これ」 うららかな空の下を、汽車は進む。 ●ブルーベルが見せる夢 「見て見て、ロウハ。景色が動いてる……!」 窓ガラスに手を当て、シュリ・スチュアートは、はしゃいだ声を上げた。何しろ汽車もイースターの祭も、今回が初体験なのだ。 駅舎についた時からずっとそわそわしていた少女に、ロウハ・カデッサは小さく笑う。 「お嬢、随分はしゃいでんな。なんつーか、子供みてえ」 「わたし、子供じゃないし……」 シュリはむくれて否定したが、別に、ロウハはそれが悪いと言っているわけではなかった。 「景色を見るのも良いが、エッグハントってやつもするんだろ?」 「あ、そうね。イースターエッグも探さなくちゃ」 キッシュを食べるために! と気合を入れたものの、シュリのエッグハントは順調とは言えなかった。車窓を流れる風景も気になるし、車内の飾りつけにも目移りしてしまう。大きなリボンを付けたうさぎのぬいぐるみを見つけ、思わず抱きあげる。 「この子可愛い……お持ち帰りしていい? だめ?」 「戻しとけ」 あえなく却下され、シュリは渋々ぬいぐるみを手放した。 「なかなか見つからない……」 「お嬢、探すの下手だな。こういうのは物陰に隠されてるって相場が決まって……ほら、あった」 「え、ロウハ、もう見つけたの?」 シュリは座席の上や窓の周りばかり見ていたので、気が付かなかったのだろう。軽く屈んで座席の下を探ると、すぐに一つ見つかった。 「すごいわ、さすがね……!」 素直に感心するシュリに、ロウハは卵を手渡し、再び別の座席を探りにかかる。なんだかんだ、ロウハもシュリ同様、お祭気分を楽しんでいるのだった。 ほどなく、ふたつめの卵も見つかった。 「後で食堂車に行くとして……少し景色を眺めてていい?」 ブルーベルの丘が見たいから、と言うシュリに、ロウハは頷いた。 発車した時の興奮がまだ続いていて、まったく退屈しない。時間はあっという間に過ぎていった。 「あっ、ロウハ、見て!」 すぐ隣にいるのだから同じ物が見えているとわかっていても、シュリは呼びかけずにはいられなかった。 草原の中へ点々と青いものが見えたかと思うと、次の瞬間、目の前が鮮やかに染まった。小さな花が無数に咲きそろって、丘一面を青紫に染め抜いている。 「こんなに綺麗な景色があるなんて……知らなかった」 呟くシュリの横で、ロウハも初めて見る光景に感心していた。 (……そーいや、お嬢とこんな風にどこかに出かけたことってなかったな) 教団に入るまでシュリは正しく箱入り娘と呼ぶに相応しい生活をしていたし、浄化師となってからも、こんな風に気楽な遠出をする機会は無かった。 「わたし、もっと世界を見たいわ」 「……見ればいいさ。これからいくらでも時間はあるんだ。……俺にも、お嬢にもな」 青い花の丘は、幸福な夢に似た余韻を残して通り過ぎて行った。 ●ふたつの卵 「復活!」 「おめでとう。復活!」 祭日は、見知らぬ者同士でも気安く決まり文句が交わされる。 カロル・アンゼリカは、リームス・カプセラに導かれながら、すれ違う人々へ優雅に挨拶を返した。 一号車、二号車と抜けて、落ち着いた雰囲気の三号車へ。ゆったりとした旋律が流れる中、エスコートされてテーブル席のひとつに腰を下ろす。 「カロル。ここで少し待っていて」 小声で告げるなり踵を返そうとしたリームスを、カロルは引きとめた。 「待つのはいいけれど、目の届かない所に行っては駄目よ」 音楽を好む彼女を残して客車へ引き返すつもりだったのだが、他ならぬカロルがそう言うなら否やはない。リームスは予定を変更し、この場でエッグハントに勤しむことにした。 カーテンのひだや、飾り付けの陰をひとつひとつ探っていく。小柄なリームスでは探せる場所が限られるが、ひとつ見つかればそれで良いのだ。 演奏は、いつのまにか賑やかな曲調へと変わっていた。豊かな音色のバイオリンは、驚くほど華やかな音を愉快に響かせている。これなら卵を探す物音も邪魔にならないだろうと安心して、リームスは捜索を続けた。 「ねえ。奏者さん。賑やかな曲がいいわ」 そうリクエストしたカロルは、望み通りの曲が流れるのを聞きながらパートナーの様子を伺う。リームスは、カロルに背を向けて長椅子を探っているところだった。 聞き手の様子に敏感な奏者へ向き直り、そっと口元に指を当て、ひみつのジェスチャーを送る。察しの良い奏者は心得た仕種で応え、演奏を続けた。 (彼が自分のために卵探しをしているのではないのは、お見通し) 軽快な音楽を隠れ蓑に、こっそりとテーブルの裏を覗く。その次は椅子の下を。すぐに見つからなくとも、焦ることはない。 たったひとつ、見つかれば良いのだ。 桃色の卵をひとつ持って、リームスはカロルの隣に座っていた。懐中時計を開き、もうすぐだな、と車窓を見遣る。 「カロル、そろそろ丘が見える頃だよ」 窓側へ座り直した二人の前に、鮮やかな青い花の絨毯が広がった。この時ばかりは演奏も控えめになって、束の間の静けさが舞い降りる。 楽しんでいるかな、とリームスが伺った視線の先では、カロルがその鉱石のような瞳を煌めかせていた。 「甘いものが食べたいわ」 青い丘を見送ったカロルは、リームスに手を取られて立ち上がり、食堂車へと移動する。 「ケーキセットAを、ふたつ」 「ふたつ?」 先んじて注文すれば、リームスが不思議そうにする。それに微笑み返して、隠し持っていた青い卵を桃色の卵と並べた。 ひとつとひとつ。これで二人分だ。 「あなたも楽しんで頂戴ね」 「……うん。たぶん今、僕も楽しんでる」 これから始まるティータイムも、きっと楽しいものに違いなかった。 ●ふたりでケーキを 「三号車に行こう。そこでエッグを探すよ!」 ベアトリス・セルヴァルは宣言して、ずんずんと車両を移動する。 「ベイクドチーズケーキ見た? すっごく美味しそうだよね」 話を振られたジョシュア・デッドマンは、彼女の後に続きながら頷いた。 「チーズケーキ狙いね、了解」 「がんばって、卵二個見つけようね」 ケーキ、ケーキ、と語尾に音符が見えるような調子で繰り返すベアトリスに、ジョシュアは首をひねる。 「二個探すのか?」 ベアトリスはあっさりと、ひとつはジョシュアの分だよ、と答えた。 「私のぶん、か」 「だって、食事は二人でとった方が美味しいもんね」 「はは……じゃあ、食べたいものを決めておくかな」 「うんうん!」 三号車までくると、ベアトリスは途端に口をつぐんで、心なしか足音まで大人しくなった。前の二両と違い、バイオリン奏者のいるこの車両は、ゆったりと落ち着いた雰囲気である。既に数人が寛いでいるので、気を遣ったようだ。 そんな彼女に、ジョシュアはひそかに驚いた。 「……淑女っぽいところもあったんだねぇ」 食堂車が近いから、という理由はいささか食い気に走っているが。ちょこまかと動いてはカーテンの裏や椅子の陰を覗きこむベアトリスの肩をつつく。 「闇雲に探しては、静かにしてるのが無駄になってしまう。目星をつけよう」 どうやって? と青い瞳が問い返してくる。 「この列車は発車時に揺れるから、そこで転げ落ちたり割れたりする心配のないところを探すんだ」 「なるほどね」 小声のやりとりを済まし、手分けしてエッグハントに取り掛かった。 無事ふたつのイースターエッグを獲得した二人は、食堂車へと移動した。 「ケーキセットA!」 「私は、ケーキのBセットにするかな」 ほどなく、テーブルクロスの上へ手際よく飲み物とケーキが並べられる。 「凄く良いかおり、薔薇ジャムもお洒落だね。いただきまーす!」 ベアトリスは上機嫌にフォークを手に取った。 「うん、美味しい!」 きつね色に焼かれたチーズケーキは濃厚で、薔薇ジャムは甘さこそ控えめだが華やかな香りがする。 「ジョシュアのケーキも深みのあるかおりで、美味しそうだね」 Bセットのケーキはブランデーケーキ――熟成された果物と蒸留酒の香りだ。 「なんだ子豚、食べたいのか」 「えへへ……。ねえ、一口ちょうだいよ」 ジョシュアは呆れたような顔をしながら、それでもケーキ皿をベアトリスの方へ軽く押しやった。 「まったく……酒が入ってるから、沢山はあげられないぞ。それと、チーズケーキのかけらと交換してくれ」 交換の申し出に、ベアトリスはぱっと顔を輝かせる。 「勿論、どうぞ!」 良い香りに包まれて、ふたりでケーキを。百点満点のティータイムだった。 ●きみの好きなもの 客車に座った杜郷・唯月(もりさと・いづき)は、落ち着きなくあたりを見回した。 「イースターに参加する機会が二度も来るなんて……」 「列車全体がイースター仕様なんて凄いね~!」 唯月の隣で、泉世・瞬(みなせ・まどか)も同意する。 優しい色合いのリボンや花、うさぎのぬいぐるみ。ふんだんに飾り付けられた車内は、ちょっとした非日常空間だ。 (こ、こんなにイースターに溢れた空間……街も凄かったですが、列車も列車で素敵……です……!) 声に出していなくとも、そばかすのある頬が赤らんでいるのを見れば、唯月がすっかりイースターに魅了されているのは明白である。その横顔に、瞬は俄然エッグハントにやる気を出した。 「そろそろ揺れも小さくなったし、俺たちも卵を探そ~!」 「え! あ、あの……」 ひそかにケーキセットが気になっていた唯月は、屈託のない笑顔を向けられて口ごもる。嫌なわけではない。むしろ、やりたいからこそ、自分がやってもいいのだろうかと不安になるのだ。 「座席の裏側とか、下はどうかな~。いづは、どういうところを探したら良いと思う?」 「えっ、えっと……ぬ、ぬいぐるみの中とか……?」 参加するのが当たり前のように問われて、反射的に答える。まったく自信は無かったが、瞬はうんうんと頷いている。 「まだ出発したばかりだし、焦らずに探そうね!」 楽しそうに言う瞬につられて、唯月も自然と卵探しに加わったのだった。 結果は上々。それぞれひとつずつイースターエッグを見つけた二人は、食堂車へと赴いた。 「美味しそう!」 「良かったねぇ。この前も思ったけど、いづって甘いものの前だといつもより目がキラキラだね! 甘いもの、好き?」 「え! あ……はい……あの、わたしなんかが……その……」 言いよどむ唯月に、瞬は首を傾げた。好きなものがわかって嬉しいのに、どうして唯月自身がその『好き』を否定してしまうのだろう。 「なんで申し訳なさそうなの! 好きなものは目いっぱい楽しも!」 「! はい……っ!」 今度はしっかり同意を得られたのに満足して、フォークを手に取る。 「ブランデーケーキなんて、なんだかゴージャス~!」 「薔薇のジャムが添えられたチーズケーキなんて……初めて……」 唯月は絡めたジャムが垂れないように気を付けながら、ケーキを口に運ぶ。美味しい、と噛みしめながら前を見ると、瞬もブランデーケーキをぱくりとやっているところだった。彼も、甘いものが好きなのだろうか。 (あ、あちらも美味しそう……) 視線に気が付いた瞬が、ふふ、と笑う。 「ね、ちょっと食べる?」 「え?!」 「美味しーよ?」 瞬の笑顔とケーキの誘惑に負けるのに、そう時間はかからなかった。 「…………い、頂きま、す……っ」 「ふふ、どーぞ!」 誘惑は、甘い味がした。 ●癒しのひとこま 「復活!」 乗り合わせた乗客の間で、イースターの挨拶が飛び交う。 「実に復活!」 アシエト・ラヴは、上機嫌に決まり文句を返した。 「いやぁ~、良い知らせを聞いた!」 良い仕事があったもんだとにやつく彼の横では、パートナーのルドハイド・ラーマがこめかみを押さえている。 「なんだよ、ルド、ブツブツ言って」 「どうしてこういう祭りごとに目がないのか……」 平生の汽車ならともかく今の車内は花やリボン、ぬいぐるみで溢れており、どうにも場違いな感を否めなかった。無邪気なアシエトには、呆れる他ない。 「お、そろそろ発車するみたいだな。楽しもうぜ」 その言葉には決して同意出来なかったが、まあ、車窓の景色はそう悪くない。エッグハントにテンションを上げるアシエトをよそに、ルドハイドは窓辺の席に陣取ることにした。 天井付近の荷棚、座席の裏に下。アシエトはあちこちに顔を突っ込んで、卵を探していた。勿論、飾りに紛れていないか手でまさぐるのも忘れない。 自分ではくまなく探しているつもりなのだが、一向に卵は見つからなかった。おかしいな、と首をひねる。 次はどこを探そうかと思っていると、窓枠に頬杖を突いて外を眺めるルドハイドの姿が目に入った。 (折角の祭なのになぁ。こういうところ、無愛想っていうか) 気づけば、アシエトはルドハイドの前に立っていた。なあ、と呼びかければ、冷徹な顔が振り返る。 「一緒にイースターエッグ探そうぜ」 無言のしかめっ面が返事だった。心底面倒くさそうな表情にもひるまず、その腕を引く。 「俺一人じゃ見つからないんだ。頼むから一緒に探してくれよ」 冗談じゃないと言いたげなルドハイドに、さらに続けた。 「ありそうなところを指示してくれれば、見つけるから」 「……仕方のない」 アシエトが再度ぐっと腕を引くのに、ルドハイドは逆らわず立ち上がった。珍しい『頼み事』だ。たまには付き合ってやることにする。 「もう一度、同じ場所を探してみろ」 悪いのは場所ではなく、探し方だ。あちこちを伺ってはすぐに離れる白髪頭を横目に見て、なんとも雑な探し方だと思っていたルドハイドは、要望通り指示を飛ばした。 「あとはもっと丁寧に。特に物陰に注意しろ」 言われるまま、アシエトはさっきも覗いた座席の下を順に調べていく。すぐには見つからなかったが、落ち着いてじっくり探っていると、そのうちに目的の丸みに行き当たった。 「あった!」 がばっと立ち上がったアシエトに、ルドハイドは小さく笑った。床を這いずり回って、やっと見つけた一つに大喜びしているのが可笑しかった。呆れ顔に見えただろうが――実際、間違いでもないが――、嘲笑ったわけではない。 (この笑顔に癒されているかもしれないな) その眼差しは、心なしかやわらかかった。 ●甘やかな御礼 「素敵ですね」 客車に乗り込んだシャルル・アンデルセンは、スカートの裾を揺らしてくるりと回り、車内の装飾に目を輝かせた。 後から入ってきたノグリエ・オルトも、うん、と頷いた。 「思った通り、実にシャルル好みですね。きっと気に入ってくれると思ってました」 「イースターの飾りつけはとっても可愛らしいので、大好きです」 駅舎を離れてエッグハントがはじまると、二人もさっそく付近の捜索を開始する。 「ぬいぐるみさんの影とかにあったりするんでしょうか? ……わぁ、このうさぎさんのぬいぐるみ、すごく可愛いです」 音符のブローチを付けたぬいぐるみを見つけ、シャルルは思わず抱きあげた。長い耳を撫でれば、ふわふわとして心地良い。 (ぬいぐるみよりシャルルの方が断然可愛いのですが。後で、うさぎのぬいぐるみを買ってあげましょうか……) ノグリエがそんなことを考えていると、あっ、と嬉しそうな声が上がった。 「卵がありました!」 「あぁ、見つけましたか。ふふ、ボクもちゃんと探しますよ」 車両ごとの装飾や出し物を楽しんだ二人は、最後にコンパートメントが並ぶ五号車へとやって来た。 「いろんな車両を見て回りましたが、また違った雰囲気ですね」 「ここで少し休みましょうか」 ノグリエは個室席の扉を開け、シャルルを中へ促す。 二人掛けの席は決して広いとはいえなかったが、狭苦しいというより、親密な近さを感じさせる作りをしていた。他の車両が優しいパステルカラーで飾られていたのに対し、こちらには情熱的な赤い薔薇が活けられている。 「これは何が入っているのでしょう」 銀のボンボニエールが気になって、蓋を開けてみる。中には、ピンク色に色づけされたアーモンドドラジェが入っていた。 「ロマンチックなお部屋ですね」 正面に向き直ると、ノグリエはいつものように目を細めてシャルルに微笑みかけていた。 「楽しんでくれたのなら、嬉しいです」 「はい! ノグリエさん、連れてきてくださってありがとうございます」 ノグリエは満足げに頷き、それから、良いことを思いついたという風にボンボニエールを指差した。 「それじゃあ、お礼はそのドラジェを食べさせてくれるだけでいいですよ」 「ふふっ、分かりました」 楽しかった今日一日に、小さなことでもお礼が出来るなら嬉しい。 「それじゃあ、あーんです」 ノグリエは軽く身を乗り出して顔を寄せ、細い指先からドラジェを口で受け取った。 「じゃあ、ボクからも……はい、口を開けて……」 今度はシャルルが、ノグリエの手からドラジェを受け取る。ピンク色の糖衣を、同じく淡く色づいた唇が食む。一拍おいて、かりっとアーモンドを砕く小気味よい音がした。 「美味しいです」 「ふふ、楽しいものですね」 宣伝文句にのってみるのも、時には良いものだ。 ささやかなお礼は、とても甘かった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[8] リリアーヌ・サヴェリー 2018/05/19-21:22
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[7] リームス・カプセラ 2018/05/19-15:07
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[6] 泉世・瞬 2018/05/17-04:25
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[5] シャルル・アンデルセン 2018/05/16-14:23
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[4] ベアトリス・セルヴァル 2018/05/15-22:51
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[3] シンティラ・ウェルシコロル 2018/05/15-01:00
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[2] アシエト・ラヴ 2018/05/15-00:10
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