~ プロローグ ~ |
カーン、カーン |
~ 解説 ~ |
【概要】 |
~ ゲームマスターより ~ |
ご閲覧ありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目的 不明者2名の捜索、作業場にいる作業員の救援。巨大ワームの駆除 心情 ヨハネの使徒でもベリアルでもない害獣駆除ですか。 本来エクソシストのやる仕事ではないとは思いますが放っておくわけにもいきません。 安否の確認できない方もいるので急ぎましょう。 行動 空からの偵察と浄化結界の後、まずは安否不明の二人の捜索。 主に作業場の周りを。見当たらないようならベルトルドが高い足場や屋根の上から捜索。 発見出来たら怪我などの確認。負傷しているようなら仲間に応急処置を頼む。 動けないレベルなら担いでいく。 立てこもっている作業員の所へ向かい、戦闘が終わり安全が確認でたら皆と合流。 |
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*目的 ドレインワームの撃破 *行動 ワーム討伐を担当 戦闘前に仲間が状況確認するので、その後集合 アライブによるバフを受けてからワームへ向かう 敵を泥の少ない場所へ誘導 誘導後は囲んでの一斉攻撃などして奇襲を仕掛けてから戦闘 *戦闘時 ・セプティム 前衛となって【ブロンズーガード】で防御しながら叩きつけたりしてワームの動きを抑える 後衛だけに攻撃を任せず【クロス・ジャッジ】による連撃で心臓部の破壊を狙う 敵の攻撃は【ブロンズガード】による防御か回避で対応 ・ユウ 【簡易魔道書】を媒介に【プロージョン】の魔法弾を放って前衛が抑えてるワームの心臓部を攻撃 精密な攻撃はできないので、味方に注意しつつ魔法弾をバラまくように撃つ |
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討伐班を担当 ◆目的 敵の討伐、作業員救出 ◆準備 到着前 天空天駆で上空から状況確認 敵の様子。戦闘に向く泥の少ない場所や、救助者の居場所に目星 戦闘前に仲間と打ち合わせ ◆戦闘 パンプティ 前衛 敵を攻撃しボブの救助を確認してから 泥の少ない場所に誘導開始 声や音は積極的に出し敵を惹きつける 攻撃時は暴撃で敵の頭から尻尾まで割く 複数の心臓ごと壊してやるぜ 敵の攻撃パターンを記憶、基本は防御 中後衛には、指一本触らせねぇ! リトル 中衛。回復担当 救護班手伝い→討伐班へ ボブやビルが怪我をしていたら優先して手当てします 2人がある程度回復したら、次は戦闘中の仲間の回復へ 余裕があれば支援攻撃を行います 特に仲間に巻きつく敵を攻撃しますね |
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◆目的 ワームの駆除 作業員の安全確保 ◆振り分け 討伐班 (救護班から援護を頼まれた場合向かう事も視野に が、人数に偏りが出る場合は留まる) ◆戦闘 ・足音をわざと鳴らしたり等 救護班から離す為且つ戦いやすさで泥の少ないところへワームを誘導 ・中後衛(唯月:中衛、瞬:後衛) ・スペル詠唱 ・唯月はMG4をメインに、瞬はFN3をメインに攻撃 ・仲間との連携も大事に、同士討ち等回避を心がける ・自身の危機的状況の際は戦闘から離れ、サポートに徹する ・仲間と認識違いがあった場合は仲間に従う 唯「苦手だけど…困ってる人が…いる…頑張る…!」 瞬「うん!行こー!」 唯「はい!」 ◆戦闘後 ・周辺を警戒 唯「…何とか、倒せ…ました…か、ね…?」 |
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■目的 討伐 ■行動 スペル使用 靴は脱ぎ裸足で地面しっかりと リチェルカーレに魔法かけて貰ってから行動開始 ∇盾を前面に作業員と敵の間に割込み敵に当らないよう気をつけ ティは符も使い敵を牽制しつつ分断 ∇分断後ロス前衛ティ後衛 ロス泥の少ない方へ敵を ティ木材を背後に倒し敵が作業員の方へ行き辛く 前衛の手が届かない敵へ符や木材で牽制 ☆ロス 回避を主体に攻撃を避け距離を縮め 隙あらば乱打暴擲攻撃し目的地へ走り 盾と斧で音鳴らし引付け ティ様子を見て回復魔法を 魔力探知で敵弱点確認 ∇抑え 泥の少ない場所へと誘導後 シリウスに声を掛けた後 敵の気を逸らさせる為背後を取って拳銃を鳴らす 中後衛メンバーには戦闘前に奇襲・撹乱の話は伝えておく |
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現場についたら魔術真名詠唱 足元が悪いから気を付けて とシリウスに チームに分かれる前に 皆に浄化結界を 皆さん 無茶をしないでくださいね? 要救助者とドレインワームが引き離せれば ビル達の元へ駆け寄る お怪我は?痛い所はありませんか? 他のメンバーと協力して応急手当て(医学スキルと救急セット使用) 動けそうなら作業場へ移動 敵を刺激しないようできるだけ静かに 戦闘が終わるまで ここで待っていてくださいね 安心させるよう 笑顔で声かけ 戦闘合流 中衛位置から 仲間と連携して敵心臓位置を攻撃 一体一体倒していくよう 浄化結界が切れればかけ直します 戦闘終了後 作業場の皆さんの体調確認 攻撃:援護します お願い当たって! 被弾:っ、大丈夫 いけます! |
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~ リザルトノベル ~ |
●索敵 作業場の南側は川の流れる林に面している。一行は、報告にあった八体以外の敵影が無いことを確認しつつ、ドレインワームが残した泥の跡を追うようにして現場へと向かった。 「ま、またあの大きな……」 這いずった痕跡を見れば、おおよその大きさが想像できる。以前も対峙したことがある杜郷・唯月(もりさと・いづき)は、表情を曇らせた。 「いづ、大丈夫?」 隣を歩く泉世・瞬(みなせ・まどか)に声を掛けられて、ぱっと顔を上げ、口ごもる。 「え、えっとえっと……」 仮にも浄化師として戦う身で、仕事に際して苦手だとか気弱なことを言うのは気が引けた。返答に迷う唯月を励ますように、瞬は屈託なく笑いかける。 「誰にでも苦手はことはあるよ、一緒に頑張ろうね!」 「あ……は、はい……!」 気乗りしないという意味であれば、彼女たちの隣を歩くヨナ・ミューエも同様だった。報告通りであれば、今回のドレインワームはベリアル化していない。いわば、単なる害獣――害虫? ――だ。 「本来、浄化師のやる仕事ではないと思いますが……」 「俺もあまり良い気はせんな。知性の無い生き物ってのはどうも苦手でなあ」 黒豹の獣人、ベルトルド・レーヴェが同意して言う。 「そうなんですか? 意外です」 「ヨナこそ、ミミズなんかは苦手じゃないのか? しかもデカいぞ」 「本で読んだ知識しかないです。生まれ育ったサンディスタムでは見なかったもので」 へぇ、と相槌を打って、ベルトルドは背の高い草を掻き分けた。 ベリアルやヨハネの使徒が相手でないにしても、国民の安全を守ることが広義における浄化師の役割ではある。安否の確認がとれない作業員がいることもあり、先を急ぐ必要があった。 梢の向こうに工場の壁が見えてきたところで、一旦足を止める。 木々の合間から遠目にドレインワームを見て、ユウ・ブレイハートはさっと顔を蒼褪めさせた。大ミミズと聞いて嫌な予感はしていたが、想像以上だ。 「はい、私、後衛行きます! あれに接近とか無理です!」 「僕は前衛ですね」 慌てふためくパートナーを慰めるでも励ますでもなく、セプティム・リライズは底の見えない漆黒の瞳で敵を見据えている。便利屋の如く駆り出されたのは不満だが、仕事は仕事だ。仕方がないと彼は割り切っていた。 「位置関係を把握してから、割り振りを考えましょう。パンプティさん」 「はいよ」 リトル・フェイカーの呼びかけに、パンプティ・ブラッディは慣れた仕種で片手を差し出した。二人の手の甲が触れ合う。 「希望の花束を」 魔術真名を唱え万全になったところでパンプティは低く身を屈め、次の瞬間には天高く跳躍していた。天空天駆――半鬼の人並み外れた脚力が、尋常ならざる高度と滞空時間をもたらす。 「ざっとこんなもんだな」 地上に降り立ったパンプティは、フェイカーからメモ帳とペンを借りると、簡単に工場周辺と敵の位置を描き記した。 工場の扉の前にドレインワームが二体。そのすぐ側に倒れているのが、ボブ・パークだろう。左右に資材置き場。中央の開けた場所で蠢いているドレインワームが四体。泥の甚だしい場所と、少ない場所も描き加える。 「極端に興奮してるのは内の三体だ。残りの二体と、ビルって奴は見当たらなかった」 「資材の陰に隠れてしまっているのかもしれませんね」 姿の見えない二体がビル・カーニーを襲っていたり、工場に入り込んでいたりしたら一大事だ。一同は表情を引き締めて、各々の行動を打ち合わせた。 「皆さんに結界を張りますね」 リチェルカーレ・リモージュとシリウス・セイアッドが手を合わせ、瞑目して魔術真名を唱える。 「黄昏と黎明、明日を紡ぐ光をここに」 魔力が満ちたところで浄化結界の呪文が唱えられ、浄化師の身体を清浄な空気が包み込んだ。これで、ドレインワームの攻撃による麻痺を受けにくくなる。 「んじゃ、行くか」 ロス・レッグはゴーグルをかけ、準備運動のように軽く足踏みした。現場はドレインワームが撒き散らした泥溜りが点在している。足を取られないよう、注意する必要があった。シンリンオオカミのライカンスロープである彼は、いっそ靴が無い方が踏ん張りがきくと言って、裸足である。 「行きます」 散歩にでも行くような気楽さのロスとは対照的に、シンティラ・ウェルシコロルは硬い面持ちで頷いた。こちらもゴーグルを装備する。 二人は腕をクロスさせ、魔術真名を唱えた。 「守り抜けなかった自分達の心に楔を」 続けて、唯月と瞬も両手を握り合った。 「ペリドットアイリス」 魔力が全身にみなぎるのを感じながら、唯月はクラウド・ディスクを強く抱いた。 「苦手だけど……困ってる人が、いる……頑張る……!」 「うん! 行こ~!」 「はい!」 散開する前に、リチェルカーレは一同に注意を促した。 「麻痺を完全に防げるわけではないので、皆さん、無茶はしないでくださいね」 それから、パートナーへも視線を向ける。 「足元が悪いから、気を付けて」 「……そっちこそ」 シリウスは苦笑めいた溜息をひとつ返した。 ●ビル・カーニーの命運 黒い尾に触れようとしたドレインワームを、暗紫色の魔弾が弾き飛ばす。 「まずは、ビルとやらを見つけんとな」 ヨナの援護を受けながら飛び出したベルトルドは、しなやかな身のこなしで資材の上へ飛び乗った。地上で大ミミズがゆらゆらと頭部らしき部分を向けてくるのを視界の端に認めながら、資材の山を次々に飛び移って行く。 途中、一筋の泥が資材の間を這うのに気が付き、その跡を辿る。 ほとんど林に近い敷地の片隅に、その姿はあった。 「居たぞ!」 後方の仲間へ一声かけてから視線を戻す。 ドレインワームは一体。ひどく攻撃的に身をくねらせている。ビルはその間近で仰向けに倒れており、微動だにしない。 「ふん……ッ!」 ベルトルドは飛び降りざま、大ミミズの先端を狙ってバトルグローブを振り下ろした。 案外に硬い外皮が潰れ、びしゃりと体液が飛び散ったが、敵の動きは止まらない。反対側の先端をもたげて噛みつこうとして来るのを、あやうく受け流す。 「外れだったか」 急所である心臓は、頭部のすぐ下にある。だが、地に伏せている限りは、どちらが頭部なのか判別つかないのが厄介だ。 片脚を引くと、踵にビルの体が触れる。距離を取りたいところだが、と思ったところで、追いついたヨナの魔弾がわざと地面を抉った。 大きな衝撃音にドレインワームが身をひねる。ヨナに飛びかかろうとするが、 「援護します!」 陽気の魔弾が迎え撃ち、勢いを殺した。 片手杖を掲げるリチェルカーレの脇を追い越してシリウスが敵前に立ち、追撃する。あえて足音を高く鳴らし、浅く切りつけては後退することで、大ミミズを誘い出す。 ある程度距離をとれたところで、シリウスはかちん、と小さく音を立てて剣を収めた。攻撃準備ではない。終了の合図だ。魂洗い――目にもとまらぬ速さで敵の首を落とす断罪者の技である。袈裟切りにされたドレインワームの長い体が、惑うように揺らめく。 念押しに、切り口から覗く心臓部をベルトルドの拳が鋭く打ち砕いた。 リチェルカーレはすぐさまビルに駆け寄った。 「お怪我は? 痛いところはありませんか?」 目は開いており意識はあるが、返答がない。麻痺毒を食らったのだろう。手早く触診を行い、酷い打撲と骨折はあるものの命に別状はないことを確認する。 「所在のわからないドレインワームがもう一体いるはず。ここは物陰が多くて危険です」 あたりを見回したヨナの提言に、ベルトルドは頷いた。 「ふむ。その男は俺が担ごう。怪我人は一所に居た方が守りやすい」 今頃、他の仲間がボブからドレインワームを引き離しているはずだ。手足も羽もない敵であるから、一旦距離をとってしまえばそう恐れることはない。それよりも目につかない場所で襲撃を受ける方が危険だ。 少しばかり思案したシリウスは、別行動を申し出た。 「俺は、正面に回り込んでセプティム達に合流しようと思う」 ビル一人の護衛に戦力が固まる必要は無く、妥当な選択だった。一人と四人に分かれ、それぞれの目的地へと向かった。 ●ボブ・パークの命運 二体のドレインワームが、気が狂ったように何度も何度も工場の扉へ体当たりしていた。鉄の扉が易々と破られることはないだろうが、立てこもっている作業員にとってはさぞかし恐ろしいに違いない。 その体の後部を、貼りついた呪符が吹き飛ばす。 「離れろっつの!」 シンティラが作った隙を利用し、ロスは盾を捻じ込むようにして扉の前から敵を引き剥がした。なんとか、ボブと敵の間のポジションを確保する。 もう一体が剣呑な動きを見せるのを、パンプティの斧が阻んだ。噛みつこうとする頭部を斬りつけ、跳ねのける。 「待たせたな! コイツらはアタシが引き受けた!」 大音声で言い放てば、倒れ伏すボブの指先がぴくりと動いた。生死不明との話だったが、まだ命がある。手当てを急がなければならない。 シンティラは、準備してきた縄を思い切ってドレインワームへ投げつけた。くねる相手に縄が絡んだところで、強く引き寄せる。女性の力では三十キロの体躯を動かすことは容易ではないが、怒気を発した敵は自らシンティラに向けて飛びかかった。 「っ……!」 予想以上の勢いに躱し損ね、腕を掠める。浄化結界のおかげか、痺れはない。 「ティ、下がれ!」 ロスの声に縄を離して飛びずさると、すぐさま九字を切る声が聞こえ、ドレインワームが横倒しになった。 「今のうちに、ボブさんのもとへ!」 「はい……!」 フェイカーと共に倒れた敵の脇を通りすぎ、ボブに駆け寄る。 直後、がらがらがらっと驚くほど大きな音があがった。咄嗟に目を遣ると、資材の山が一つ崩れている。 「わがまま言ったんだから、せめてこれぐらいは……!」 ユウとセプティムの仕業だった。木材が入り組んだ資材置き場への道を塞ぎ、敵の行動範囲を狭めると同時に後衛であるユウの砦ともなる。 この場にいる全てのドレインワームの意識が、その落下音に引きつけられていた。 パンプティは、すかさず斧を大上段に振りかぶる。 「喰らいな!」 拷問官の苛烈な一撃が大ミミズの全身を縦に引き裂いた。こうなっては流石のドレインワームも再生は出来ない。視界に映る大ミミズは残り五体。一体は縄を絡ませたまま、ユウとセプティムの方へ向かっている。中央で戦う唯月や瞬も派手に物音を立てて、敵を作業場から引き離しにかかっていた。 「よっし、残りをもうちっと向こうへ追い込むとすっか!」 「怪我人は任せた!」 盾を打ち鳴らしながら敵の誘導に駆けだしたロスとパンプティを見送り、シンティラとフェイカーは意識の無いボブの診察にあたった。 「巻き付かれた時に、右の上腕骨が折れたようです」 「あばらも折れているかもしれません。肺に刺さってないと良いのですが……」 早いうちに失神したのが功を奏して、追撃を受けずに済んだのだろう。麻痺の症状はないようだ。 フェイカーは一旦深呼吸をし、集中集中、と心の中で繰り返した。初めての魔術を使うのは緊張する。気持ちを整えたところで、ボブの身体に手をかざした。 「天恩天賜」 ふわ、と魔力の光が吸い込まれていく。回復魔術だ。これで少しは楽になるだろう。 ボブの瞼が震え、うっすらと目が開く。 フェイカーは、努めて穏やかな声音で話しかけた。 「僕たちは浄化師です。あなた方を助けに来ました」 あ、う、と小さく声を漏らすのへ、無理に喋らなくていい、と手で制す。 「親方に頼まれたのです。……心細いところを、よく耐えてくださいました」 ようやく状況を把握したのか、男の身体からこわばりが抜けた。 「丁度いい、こちらも頼む」 ヨナ、リチェルカーレと共にやってきたベルトルドが、担いでいたビルをボブの横へ下ろした。 「俺は姿の見当たらん一体を探してくる」 「私はここに残ります」 「ああ。ではな」 ヨナに頷き、ベルトルドはさっと駆けだした。 「麻痺と骨折と……打撲が酷いですね」 ビルを診たシンティラの見立ては、リチェルカーレのそれと同じだった。 「はい。回復魔術をお願いできますか」 「麻痺の解除までは出来ませんが……」 それでも打撲の腫れや痛みを軽くすることはできるだろう。シンティラは天恩天賜を唱えた。 「作業場の中の方が、落ち着いて治療できるのですが」 ヨナは扉に向き合い、その向こうへ声を掛ける。 「扉を開けてください。怪我人を中へ入れます」 わあわあと複数の声が交錯した後、一際大きくしゃがれた男の声が聞こえてきた。親方のものだろう。 「浄化師さん方、すまねえが、やつらが全部おっちぬまでそこを開けることはできん。すっかり神経がまいっちまってる馬鹿どもには、その扉が最後の砦なんだ」 ドレインワームは仲間が引きつけているので工場へ侵入する危険は無いと説いても、無駄だった。親方は負傷した二人の作業員よりも、作業場の中にいる大勢の精神的安全を選んだようだ。 「……実際、一体の所在がまだ不明です。中へ入るのは諦めましょう」 恐怖の前に理屈は無力だ。人々の心理がわかるフェイカーは、早々に判断を下した。 「ここを護れば、怪我人も中の人たちも護れます」 シンティラが言うのに頷き、リチェルカーレは所持していた簡易救急箱と、資材置き場で見繕ってきた短い角材を添え木として託した。 「私は援護に行ってきます」 そろそろ浄化結界の効力が切れる頃だ。 「僕も手当が済んだらそちらに行きます。お気を付けて」 「皆さんも。……戦闘が終わるまで、ここで待っていてくださいね」 二人の作業員へ笑顔を向け、リチェルカーレは大ミミズを追い込む仲間たちのもとへ向かった。 ●大ミミズの末路 木材の落下音に引き寄せられたドレインワームを、セプティムは淡々と斬り下げた。斬撃では心臓部を的確に潰すのは難しいが、繰り返し斬りつけ、吸血を狙う頭部を盾で押し返して動きを阻む。 「うぅ……後ろから見てても地獄絵図すぎる」 ユウの位置からは、全てのドレインワームが自分達へ向かって来るように見える。怖気に身を震わせながら、魔導書に意識を向ける。精密な攻撃は苦手だが、セプティムに牽制されたドレインワームは動きが小さく狙いやすい。 「味方に当てないように……でも、さっさと倒すようにして撃つべし!」 増幅された木気の魔力が炸裂し、大ミミズの上体が吹き飛ぶ。仮にドレインワームが声帯を持っていたとしても、断末魔を上げる暇も無かっただろう。 やりますね、とでも言いたげな一瞥をセプティムが寄越したが、方陣相生の効果を失念していたユウは、むしろ狼狽えて息を呑んだ。 「い、いえ、でも、威力が高いのは良いことです」 気を取り直し、味方に当てないよう細心の注意を払って魔力弾を方々に撃ちこむ。 「そ、それっ」 唯月の投擲したワンドのカードが、ブーメランに似た軌道を描いて敵の体を穿った。 ダメージを受けたドレインワームは怒り狂って反撃に出るが、 「行くよ~!」 瞬の明るい声と共に放たれた魔弾を浴び、動きを止めた。すかさずタロットと、魔力弾が追撃を加える。 連携は順調だったが、いささか目前の一体に気を取られすぎていた。 「う、うぅ……!」 脇から別の個体による攻撃を受けて、唯月がよろめく。 「エアーズ!」 瞬の圧縮された魔力が鎌鼬のような斬撃となり、ドレインワームを唯月から引き離す。さらに反対側からセプティムが斬りつけて、敵の関心を引きつけた。 「大丈夫?!」 「は、はい。なんとか……」 少々血を吸われたようだ。深手ではないが、念のため唯月は後退し、サポート態勢に切り替える。 彼女に入れ替わるようにしてドレインワームの前に出たのは、シリウスだった。資材置き場を迂回し、正面へ戻ってきたのだ。 手近にいるのが二体。他のもう二体も、ロスとパンプティが音と攻撃で引き寄せつつある。 麻痺と吸血を警戒しながら、傍目には正確な位置のわからぬ急所を狙うのは中々に困難だ。だが、事前にロスとシリウスは策を立てていた。セプティムと並んで剣をふるいながら、タイミングを待つ。 ユウや唯月、瞬が放つ後方からの攻撃もあって、ドレインワームは思うように身動き取れないでいる。途中、合流したリチェルカーレが二度目の浄化結界を唱えたことで、麻痺のリスクも抑えられた。 「シリウス!」 「ああ……!」 シリウスは腰に下げていた信号拳銃を空に向け、引き金を引いた。通常は色つきの硝煙で居場所などを知らせるものだが、今必要なのは煙ではない。 パパパンッ。 上空で炸裂した信号弾が、耳をつんざくような音を立てる。ぐりんと首を向けたドレインワームに、シリウスはあえて間合いを詰め、さらに引きつける。 パパパンッ。 同じ音がもう一度響いた。今度は、大ミミズの背後に回り込んだロスが信号拳銃を撃ったのだ。 前後に響いた破裂音に攪乱され、ドレインワームは立ち竦んだように停止する。 躊躇なく、シリウスは目の前の大ミミズの頭部を斬り飛ばした。 「その隙、討たせてもらいます」 「トドメだ!」 セプティムが十字の斬撃を浴びせ、パンプティが渾身の一撃を見舞う。 「ははは!」 うまく行ったとばかりに笑うロスの乱れ打ちが、一際派手に大ミミズの心臓部を破壊した。 べちゃり、と無残な姿になったドレインワームが地面に倒れ伏す。 「も、もう動かない?」 「……何とか、倒せ……ました、かね……?」 「そのようですね」 ユウと唯月が恐る恐る確認するのに、リチェルカーレが頷く。 「やったね~!」 瞬は喜びの声を上げてから、あれ、と瞬いた。 「全部で八体、だったよね?」 「そろそろ片付きそうですね」 ヨナは負傷した二人の作業員の側に立ち、赤い硝煙が風に流されるのを眺めていた。すぐ前方ではシンティラが呪符を構えて警戒にあたっていることもあり、気の緩みがあったのは否めない。 「!」 気配に振り返ったとき、ヨナに齧りつかんとするドレインワームの頭部がすぐ間近に迫っていた。 魔弾の生成も追いつかない――と瞠った目の前で、大ミミズは鉄の扉へと叩きつけられていた。バトルグローブをはめた拳が、その心臓部にめり込んでいる。 緑色に煌めく獣の目が、にやりとした笑みを浮かべてヨナを見た。 「今、完全に油断してたろ」 「……そうですね」 ヨナは言い返そうとして口を開いたが、一拍置いて諦め、小さく頷いた。 「大丈夫ですか」 驚いたシンティラが駆け寄ってくるのに、ベルトルドは肉片に汚れた手を振りながら答えた。 「いや、なに。トドメを刺す寸前で逃げられてな」 資材の上を飛び移って移動していたベルトルドは、工場の裏手へ回り込もうと蠢くドレインワームを見つけた。立てこもる作業員たちの声に反応してか、窓を割ろうとするのを引き離し、その場で始末をつけるつもりだった。実際、あと一撃というところまで追いつめたのだが、信号弾の音に反応したドレインワームが急にこちらへ飛び出したというわけだった。 「ドレインワーム八体、全て駆除できたようです。扉を開けてもらいましょう」 仲間の怪我の有無を見て回っていたフェイカーが、入り口の前へ戻ってきて言った。 ●黄昏を生き抜く術 閂が外され、鉄の扉は広々と解放されていた。だが、作業員のほとんどは中から出てこようとしない。 浄化師を出迎えた親方が怪我をした作業員二人を運ぼうとするのへ、瞬と唯月は声を掛けた。 「一人じゃ大変でしょ? 手伝うよ~」 「わたし、簡単な救急セット持ってますので……良ければ……」 親方は言葉少なに頷いた。 他の浄化師も手伝って、骨折部分をなるべく刺激しないように気を付けながら、作業場の中へボブとビル両名を運び入れる。周囲の安全が確保できたため、すぐに本職の医者が駆けつけてくれるだろう。 「体調のすぐれない方がいましたら、仰ってくださいね」 直接攻撃を受けていなくても、不安と恐怖で顔色が優れない作業員も多い。リチェルカーレは、ひとりひとりに声をかけて回った。 「すみませんでした」 フェイカーとパンプティの二人組に謝罪されて、親方は緩慢に顔を上げた。 「大切な資材を無断で使ってしまいました」 「だいぶ汚しちまった」 ドレインワームの進路妨害に使っただけでなく、攻撃の余波で破損したものや、ドレインワームの肉片を浴びたものもある。 親方は険しい顔をさらに顰めて口を開いた。 「何言ってんだ。謝らなきゃいけねえのは、俺の方だ。俺が礼を言わなくちゃならねえんだ。……あんたがたは、俺が見捨てた二人の命を助けてくれたんだからな」 そう言って、ちらりと横たわる作業員を見遣る。 ドレインワームが川伝いに現れることはそう珍しいことではない、と彼は語った。時には、ベリアル化していることもある。工場に立てこもるのも、逃げ遅れた作業員を見捨てるのも、一度や二度ではない。 なにもこの工場に限ったことではなく、ラグナロク以降、戦力を持たない庶民はどこも同じようにして日々を生きているのだった。救援を待つ間に潰える集落もあるほどだ。 そんな世の中だから、勤めの長い作業員なら災禍のやり過ごし方も心得ている。 だが今回は、不運にも新人が多かった。 「ぜんぶ、野郎どもの教育が甘かった俺が悪い」 教団への救援は、駄目で元々だった。ボブとビル、どちらもまだ若い。将来のビッグ・トーマスを担う従業員として育てている最中だった。見捨てておきながら、諦めきれなかった。 「だからな、本当に、……本当に、ありがとよ」 フェイカーとパンプティは、神妙に頷いた。 「……ところで、あの嬢ちゃんは何してるんだ?」 親方が示したのは、扉の外だった。 崩れた木材を積み直したり、ドレインワームの遺骸を林に捨てに行ったりする作業員と、それを手伝う浄化師の姿が見える。その一番手前に、銀髪の少女が屈みこんでいた 「荒れた地面を盾で均そうと思いまして」 問われたシンティラは、大真面目な顔で応えた。そして黙々と、ブロンズガードを地面に押しつける。 「ふ……ふは、はははっ! 止せ止せ、日が暮れちまうぞ」 親方はひとしきり笑うと、工場内で未だ沈んでいる作業員をどやしつけた。総出で片付けにあたるよう命令を下す。喝を入れられた男たちは、悪夢から醒めたような面持ちになって、きびきびと働き出した。 俄かに日常の気配が戻ってくる。 浄化師たちのやることはあっという間に無くなった。 「何から何まで、世話になったな。報酬でたんまり美味いもんでも食ってくれ」 親方は厳つい笑顔で浄化師たちを送り出した。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[27] リトル・フェイカー 2018/05/24-23:59
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[26] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/24-23:53
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[25] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/24-23:53
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[24] ロス・レッグ 2018/05/24-23:22
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[23] ベルトルド・レーヴェ 2018/05/24-22:28 | ||
[22] ロス・レッグ 2018/05/24-22:12 | ||
[21] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/24-21:31 | ||
[20] ロス・レッグ 2018/05/24-20:58 | ||
[19] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/24-20:23 | ||
[18] 杜郷・唯月 2018/05/24-19:51
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[17] ロス・レッグ 2018/05/24-18:46 | ||
[16] セプティム・リライズ 2018/05/24-14:38
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[15] リトル・フェイカー 2018/05/24-10:48 | ||
[14] 泉世・瞬 2018/05/24-08:34
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[13] ロス・レッグ 2018/05/24-07:19 | ||
[12] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/24-00:13 | ||
[11] リトル・フェイカー 2018/05/23-22:42 | ||
[10] ロス・レッグ 2018/05/23-22:08 | ||
[9] ヨナ・ミューエ 2018/05/23-12:19 | ||
[8] 杜郷・唯月 2018/05/23-07:47
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[7] 泉世・瞬 2018/05/23-07:43
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[6] ロス・レッグ 2018/05/23-00:23 | ||
[5] リトル・フェイカー 2018/05/22-10:56 | ||
[4] セプティム・リライズ 2018/05/22-08:31
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[3] ヨナ・ミューエ 2018/05/21-11:44
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[2] ヨナ・ミューエ 2018/05/21-11:07
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